JP3678311B2 - ヒドラゾン系化合物およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

ヒドラゾン系化合物およびそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なヒドラゾン系化合物およびそれを用いた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体を用いて複写画像を形成する場合には、カールソンプロセスが広く利用されている。カールソンプロセスは、コロナ放電により感光体を均一に帯電させる帯電工程と、帯電した感光体に原稿像を露光することにより、原稿像に対応した静電潜像を該感光体表面に形成する露光工程と、該静電潜像を、トナーを含有する現像剤で現像して、トナー像を形成する現像工程と、該トナー像を紙などの基材に転写する転写工程と、基材に転写されたトナー像を定着させる定着工程と、および、該転写工程の後、感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程と、を含んでいる。
【0003】
このカールソンプロセスにおいて高品質の画像を形成するには、電子写真感光体が帯電特性および感光特性に優れていること、ならびに、露光後の残留電位が低いことが要求される。
【0004】
従来より、セレンや硫化カドミウムなどの無機光導電体を電子写真感光体材料として用いた感光体が公知であるが、これらは毒性があり、かつ、生産コストが高いため、好ましくない。
【0005】
そこで、これらの無機物質に代えて、加工性および経済性に優れ、機能設計の自由度が大きい種々の有機物質を用いた、いわゆる有機電子写真感光体が提案されている。このような有機電子写真感光体は、通常、露光により電荷を発生する電荷発生材料と、発生した電荷を輸送する機能を有する電荷輸送材料とを含む感光層を有する。
【0006】
このような有機電子写真感光体に要求される各種の条件を満足させるためには、この種の感光体に使用される電荷輸送材料として、キャリア移動度が高いものや化学的安定性に優れたものが要求される。
【0007】
従来、電荷輸送材料としては、種々の有機化合物が提案されており、例えば特開平4−4260号公報に開示されたヒドラゾン系化合物が知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電荷輸送材料はまだ十分な化学的安定性を有しておらず、そのため、これらの電荷輸送材料を用いた感光体は、感度が悪く、かつ、繰り返し特性が充分でない。その理由を、以下に示す。つまり、感光体製造時において、感光層用塗布液を調製する際、現状ではどうしても製造された感光体中に微量の不純物が含まれてしまう。また、感光体は、複写画像形成時において、帯電工程でコロナ放電によって発生するオゾンや窒素酸化物に曝され、露光工程では光に曝されてしまう。
【0009】
すなわち、化学的安定性の悪い電荷輸送材料は、上述の感光層中の不純物や外的攻撃物であるオゾン、窒素酸化物、および光などによって分解してしまい、電荷輸送能力を失ったり、化学反応を起こして電子写真特性を阻害してしまうディープトラップとなる物質に変化してしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、電荷輸送材料として、化学的安定性に優れた新規なヒドラゾン系化合物を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、該ヒドラゾン系化合物を含有することによって、高い感度を有し、かつ繰り返し特性に優れた電子写真感光体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のヒドラゾン系化合物は、下記一般式(1)で表されるヒドラゾン系化合物であり、そのことにより上記目的が達成される:
【0012】
【化3】
Figure 0003678311
【0013】
式中、R1、R3は、同一または異なって、アルキル基またはアリール基を表し;R2、R4は、アリール基を表す。
【0014】
本発明のヒドラゾン系化合物は、下記一般式(2)で表されるヒドラゾン系化合物であり、そのことにより上記目的が達成される:
【0015】
【化4】
Figure 0003678311
【0016】
式中、R1、R3は、同一または異なって、アルキル基またはアリール基を表し;R2、R4は、アリール基を表す。
【0017】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、該導電性基体上に形成された感光層と、を有する電子写真感光体であって、該感光層は、電荷輸送材料、電荷発生材料、および結着樹脂を含有し、該電荷輸送材料は、上記一般式(1)および(2)で表されるヒドラゾン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】
【作用】
本発明のヒドラゾン系化合物は、電荷輸送材料、特にホール輸送材料として有効であり、従来公知のヒドラゾン系化合物などの電荷輸送材料に比べて高い化学的安定性を有する。
【0019】
すなわち、本発明のヒドラゾン系化合物は、長いπ電子共役系を有しているので、正孔輸送能力に優れている。さらに、中心にナフタレンまたはアントラセン構造を有した構成により、共役系の空間的な広がりが大きくなるため、電荷発生材料と接触する容積が大きくなる。従って、注入度が向上する。また、これらナフタレンまたはアントラセン構造によるクエンチャー効果およびこれらの立体障害のため、感光層中に存在する微量の不純物、帯電時に発生するオゾンや窒素酸化物、露光時の光などの攻撃からヒドラゾン系化合物が保護され、化学的安定性が向上する。すなわち、本発明のヒドラゾン系化合物は、上述の攻撃によって分解したり、反応を起こして電子写真特性を阻害してしまうディープトラップとなる物質に変化するという劣化に対して抑制作用が働く、化学的安定性を持つ構造を有していると言える。特に、上記一般式(1)、(2)のR2がナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基の場合には、クエンチャー効果により、さらに化学的安定性が向上する。
【0020】
本発明のヒドラゾン系化合物は、上記のように電子写真感光体の電荷輸送材料として用いられるほか、有機太陽電池、EL素子などの電子デバイスの電荷輸送材料として用いられ得る。
【0021】
本発明の電子写真感光体は、上記ヒドラゾン系化合物を含有する感光層を備えているので、高い感度を有し、かつ、耐久性に優れている。
【0022】
【好適態様】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0023】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。これらは、置換基を有していてもよい。
【0024】
上記一般式(1)で表されるヒドラゾン系化合物の具体例としては、式(1)中、R1〜R4が以下の置換基を有する化合物が挙げられる。
【0025】
1.化合物1
R1=メチル基、R2=フェニル基、R3=メチル基、R4=フェニル基、
2.化合物2
R1=メチル基、R2〜R4=フェニル基
3.化合物3
R1〜R4=フェニル基
4.化合物4
R1=メチル基、R2=ナフチル基、R3=メチル基、R4=フェニル基
5.化合物5
R1=メチル基、R2=ナフチル基、R3、R4=フェニル基
6.化合物6
R1=フェニル基、R2=ナフチル基、R3、R4=フェニル基
7.化合物7
R1=フェニル基、R2=ナフチル基、R3=フェニル基、R4=ナフチル基
8.化合物8
R1〜R4=ナフチル基
9.化合物9
R1=フェニル基、R2=フェナントリル基、R3、R4=フェニル基
10.化合物10
R1=フェニル基、R2=ピレニル基、R3、R4=フェニル基
11.化合物11
R1=エチル基、R2=フェニル基、R3=エチル基、R4=フェニル基
12.化合物12
R1=メチル基、R2=フェニル基、R3=エチル基、R4=フェニル基
13.化合物13
R1〜R4=o−トリル基
14.化合物14
R1〜R4=m−トリル基
15.化合物15
R1〜R4=p−トリル基
16.化合物16
R1=m−トリル基、R2=p−トリル基、R3=m−トリル基、
R4=p−トリル基
17.化合物17
R1〜R4=m−クロロ−フェニル基
18.化合物18
R1〜R4=m−ブロモ−フェニル基
19.化合物19
R1〜R4=m−エチル−フェニル基
20.化合物20
R1〜R4=m−フルオロメチル−フェニル基
21.化合物21
R1〜R4=m−メトキシ−フェニル基
22.化合物22
R1=トリフルオロメチル基、R2=フェニル基、R3=トリフルオロメチル基、R4=フェニル基
上記一般式(2)で表されるヒドラゾン系化合物の具体例としては、式(2)中、R1〜R4が以下の置換基を有する化合物が挙げられる。
【0026】
23.化合物23
R1=メチル基、R2=フェニル基、R3=メチル基、R4=フェニル基、
24.化合物24
R1=メチル基、R2〜R4=フェニル基
25.化合物25
R1〜R4=フェニル基
26.化合物26
R1=メチル基、R2=ナフチル基、R3=メチル基、R4=フェニル基
27.化合物27
R1=メチル基、R2=ナフチル基、R3、R4=フェニル基
28.化合物28
R1=フェニル基、R2=ナフチル基、R3、R4=フェニル基
29.化合物29
R1=フェニル基、R2=ナフチル基、R3=フェニル基、R4=ナフチル基
30.化合物30
R1〜R4=ナフチル基
31.化合物31
R1=フェニル基、R2=フェナントリル基、R3、R4=フェニル基
32.化合物32
R1=フェニル基、R2=ピレニル基、R3、R4=フェニル基
33.化合物33
R1=エチル基、R2=フェニル基、R3=エチル基、R4=フェニル基
34.化合物34
R1=メチル基、R2=フェニル基、R3=エチル基、R4=フェニル基
35.化合物35
R1〜R4=o−トリル基
36.化合物36
R1〜R4=m−トリル基
37.化合物37
R1〜R4=p−トリル基
38.化合物38
R1=m−トリル基、R2=p−トリル基、R3=m−トリル基、
R4=p−トリル基
39.化合物39
R1〜R4=m−クロロ−フェニル基
40.化合物40
R1〜R4=m−ブロモ−フェニル基
41.化合物41
R1〜R4=m−エチル−フェニル基
42.化合物42
R1〜R4=m−フルオロメチル−フェニル基
43.化合物43
R1〜R4=m−メトキシ−フェニル基
44.化合物44
R1=トリフルオロメチル基、R2=フェニル基、R3=トリフルオロメチル基、R4=フェニル基
上記一般式(1)で表される本発明のヒドラゾン系化合物は、例えば以下のようにして合成され得る。
【0027】
まず、tert−ブトキシカリウムが混合されたDMF中で、式(a)で表されるアルデヒド化合物と、式(b)で表される化合物とを反応させて、式(c)で表される化合物を得る。
【0028】
【化5】
Figure 0003678311
【0029】
【化6】
Figure 0003678311
【0030】
【化7】
Figure 0003678311
【0031】
式中、R1はアルキル基またはアリール基を表し;R2はアリール基を表す。
【0032】
次に、式(c)で表される化合物が混合されたテトラヒドロフラン中に、ビトリッドを滴下し、反応させて、式(d)で表される化合物を得る。
【0033】
【化8】
Figure 0003678311
【0034】
その後、式(d)で表される化合物と式(e)で表される化合物とを、エタノール中で加熱還流させることによって、上記一般式(1)で表されるヒドラゾン系化合物を得る。
【0035】
【化9】
Figure 0003678311
【0036】
式中、R3はアルキル基またはアリール基を表し;R4はアリール基を表す。
【0037】
本発明の電子写真感光体は、感光層として、単層であっても、または機能分離した複数の層から構成されている積層であってもよい。
【0038】
感光層が単層である場合は、感光体は、導電性基体上に感光層が形成される。この感光層は、同一層に電荷輸送材料としての本発明のヒドラゾン系化合物と、電荷発生材料と、結着樹脂と、を含有する。
【0039】
感光層が機能分離型の積層である場合は、感光体は、導電性基体上に、電荷発生層を形成し、さらにこの電荷発生層上に電荷輸送層を積層して形成される。電荷発生層は、蒸着または適当な結着樹脂中に電荷発生材料を分散させて塗布手段により形成される。電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂とを含有する。あるいは、感光体は、電荷発生層と電荷輸送層とを逆の順序で形成してもよい。
【0040】
単層型の感光層の場合、この感光層は、結着樹脂100重量部に対して、電荷発生材料を2〜20重量部含有し、好ましくは3〜15重量部含有する。さらに、この感光層は、結着樹脂100重量部に対して本発明の電荷輸送材料を40〜200重量部含有し、好ましくは50〜150重量部含有する。
【0041】
一方、積層型の感光層の場合には、電荷発生材料と結着樹脂とを種々の割合で含有し得る。一般に、結着樹脂100重量部に対して、電荷発生材料を5〜500重量部含有し、好ましくは10〜250重量部含有する。さらに、この感光層は、電荷輸送材料と結着樹脂とを種々の割合で含有し得る。光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、本発明の電荷輸送材料を10〜500重量部含有し、好ましくは25〜200重量部含有する。
【0042】
上記感光層の厚さは、単層型の場合で10〜50μmであり、好ましくは15〜30μmである。一方、積層型の場合には、電荷発生層の厚さは、任意の膜厚を有し得るが、一般に0.01〜5μmであり、より好ましくは約0.1〜3μmである。一方、電荷輸送層の厚さは、一般に2〜100μmであり、好ましくは約5〜50μmである。
【0043】
以下に、本発明の電子写真感光体における構成材料について、それぞれ説明する。
【0044】
(導電性基体)
上記導電性基体としては、例えば、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属単体、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラスなどが挙げられる。
【0045】
上記導電性基体は、シート状、ドラム状などのいずれでもよく、基材自体が導電性を有するか、または基材の表面が導電性を有していればよい。この基材は、その使用に際し、十分な機械的強度を有することが好ましい。
【0046】
(電荷発生材料)
電荷発生材料は、従来より使用されているセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、アモルファスシリコン、ピリリウム塩、アゾ系化合物、ジスアゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、アンサンスロン系化合物、ペリレン系化合物、インジゴ系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スレン系化合物、トルイジン系化合物、ピラゾリン系化合物、キナクリドン系化合物、ピロロピロール系化合物などが挙げられる。これらの電荷発生材料は、1種または2種以上混合して用いられる。
【0047】
(電荷輸送材料)
電荷輸送材料として、本発明の新規なヒドラゾン系化合物を1種または2種以上混合して用いる。あるいは、本発明の新規なヒドラゾン系化合物を、従来公知の他の電荷輸送材料と組み合わせて使用し得る。従来公知の電荷輸送材料としては、例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなどのスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物などの含窒素環式化合物、縮合多環式化合物3,5,3’,5’−テトラフェニル−4,4’−ジフェノキノン、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジフェノキノン、3,5,3’,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジtert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジtert−ブチル−4,4’−ジフェノキノン、3,3’−ビス(α,α,γ,γ−テトラメチルブチル)−5,5’−ジフェニル−4,4’−ジフェノキノン、3,3’−ビス(α,γ−ジメチルブチル)−5,5’−ジフェニル−4,4’−ジフェノキノン、3,3’−ジメチル−5,5’−ビス(α−メチルベンジル)ジフェノキノン、3−tert−ブチル−3’,5,5’−トリメチル−4,4’−ジフェノキノン、3,5−ジイソプロピル−3’−tert−ブチル−5’−フェニル−4,4’−ジフェノキノン、3,5−ジイソプロピル−3’−(α,α,γ,γ−テトラメチルブチル)−5’−フェニル−4,4’−ジフェノキノン、3,5−ジ(第二ブチル)−3’−tert−ブチル−5’−フェニル−4,4’−ジフェノキノンなどのジフェノキノン誘導体が挙げられる。なお、ポリビニルカルバゾールなどの成膜性を有する電荷輸送材料を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要ではない。
【0048】
(結着樹脂)
上記結着樹脂としては、種々の樹脂を使用し得る。例えば、スチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;さらに、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂などが挙げられる。これらの結着樹脂は、1種または2種以上が混合して用いられる。
【0049】
(増感剤およびその他添加剤)
上記電荷発生層の感度を高めるために、例えば、ターフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレンなどの公知の増感剤を上記電荷発生材料とともに用いてもよい。
【0050】
さらには、電荷輸送材料および電荷発生材料の分散性、塗工性などをよくするために界面活性剤、レベリング剤などを使用してもよい。
【0051】
(有機溶媒)
後述するように、電荷発生材料、電荷輸送材料、および結着樹脂を溶解して塗布液を調製する場合には溶剤が使用される。この溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種または2種以上混合して用いられ得る。
【0052】
(成膜)
上記電荷発生層および電荷輸送層を有する感光層を塗布手段により形成する場合には、電荷発生材料または電荷輸送材料と結着樹脂とを、従来公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、または超音波分散器などを用いて塗布液を調製する。
【0053】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0054】
(実施例1)
<化合物2の合成>
【0055】
【化10】
Figure 0003678311
【0056】
(1)tert−ブトキシカリウム4gが混合されたDMF60ml中に、下式(A1)で表される化合物3.62g(20mmol)と下式(B1)で表される化合物4.84g(20mmol)とを投入し、100℃で6時間攪拌して反応させた。
【0057】
【化11】
Figure 0003678311
【0058】
【化12】
Figure 0003678311
【0059】
次に、得られた反応物を水に注ぎ、濾過水洗し、さらにエタノールで洗浄乾燥させることによって、下式(C1)で表される淡黄色結晶の化合物3.39gを得た。収率は62.4%であった。
【0060】
【化13】
Figure 0003678311
【0061】
(2)上記得られた化合物(C1)2.71g(10mmol)をテトラヒドロフラン100ml中に溶解した。得られた溶液に、ビトリッド(ナトリウム・ビス(2−メトキシ)アルミニウムハイドライド)の70%トルエン溶液1.38g(5.0mmol)を、5℃に冷却しながら10分間滴下した。これを、そのまま5℃で5時間攪拌した後、30%H2SO450mlを滴下して、さらに15時間攪拌して反応させた。得られた反応物を40%NaOH水溶液で中和し、ベンゼンで抽出することによって、下式(D1)で表される淡黄色結晶の化合物1.40gを得た。収率は51.1%であった。
【0062】
【化14】
Figure 0003678311
【0063】
(3)上記得られた化合物(D1)1.37g(5mmol)と下式(E1)で表される化合物1.10g(5mmol)とをエタノール100mlで還流下、少量の酢酸を加え、3時間加熱還流を続けた。
【0064】
【化15】
Figure 0003678311
【0065】
反応後、水を加え、析出物を濾過してn−ヘキサンで洗浄することによって、化合物2で表される黄色結晶の化合物1.37gを得た。収率は62.2%であった。
【0066】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0067】
マススペクトル:439
元素分析値:C32262として、
理論値(%):C=87.64 H=5.98 N=6.39
測定値(%):C=87.66 H=5.84 N=6.42
(実施例2)
<化合物6の合成>
【0068】
【化16】
Figure 0003678311
【0069】
(1)上式(B1)で表される化合物の代わりに下式(F1)で表される化合物7.09g(20mmol)を用い、反応条件を100℃で6時間の代わりに120℃で5時間としたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(G1)で表される淡黄色結晶の化合物4.76gを得た。収率は62.1%であった。
【0070】
【化17】
Figure 0003678311
【0071】
【化18】
Figure 0003678311
【0072】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(G1)で表される化合物3.83g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(H1)で表される淡黄色結晶の化合物1.74gを得た。収率は44.9%であった。
【0073】
【化19】
Figure 0003678311
【0074】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(H1)で表される化合物1.5g(3.88mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物を1.10g(5mmol)の代わりに0.856g(3.88mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物6で表される黄色結晶の化合物1.36gを得た。収率は63.4%であった。
【0075】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0076】
マススペクトル:551
元素分析値:C41302として、
理論値(%):C=89.42 H=5.49 N=5.09
測定値(%):C=89.36 H=5.61 N=5.19
(実施例3)
<化合物14の合成>
【0077】
【化20】
Figure 0003678311
【0078】
(1)上式(B1)で表される化合物の代わりに下式(I1)で表される化合物6.65g(20mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(J1)で表される淡黄色結晶の化合物4.14gを得た。収率は57.3%であった。
【0079】
【化21】
Figure 0003678311
【0080】
【化22】
Figure 0003678311
【0081】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(J1)で表される化合物3.61g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(K1)で表される淡黄色結晶の化合物1.74gを得た。収率は47.7%であった。
【0082】
【化23】
Figure 0003678311
【0083】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(K1)で表される化合物1.7g(4.66mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物の代わりに下式(L1)で表される化合物1.16g(4.66mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物14で表される黄色結晶の化合物1.36gを得た。収率は52.1%であった。
【0084】
【化24】
Figure 0003678311
【0085】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0086】
マススペクトル:557
元素分析値:C41362として、
理論値(%):C=88.45 H=6.52 N=5.03
測定値(%):C=88.36 H=6.45 N=4.94
(実施例4)
<化合物17の合成>
【0087】
【化25】
Figure 0003678311
【0088】
(1)上式(B1)で表される化合物の代わりに下式(M1)で表される化合物7.46g(20mmol)を用い、反応時間を6時間の代わりに5時間としたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(N1)で表される淡黄色結晶の化合物4.11gを得た。収率は51.1%であった。
【0089】
【化26】
Figure 0003678311
【0090】
【化27】
Figure 0003678311
【0091】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(N1)で表される化合物4.02g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(O1)で表される淡黄色結晶の化合物2.16gを得た。収率は53.4%であった。
【0092】
【化28】
Figure 0003678311
【0093】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(O1)で表される化合物2.03g(5mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物の代わりに下式(P1)で表される化合物1.45g(5mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物17で表される黄色結晶の化合物1.40gを得た。収率は43.6%であった。
【0094】
【化29】
Figure 0003678311
【0095】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0096】
マススペクトル:635.636
元素分析値:C37242Cl4として、
理論値(%):C=69.53 H=3.78 N=4.39
測定値(%):C=69.54 H=3.87 N=4.31
(実施例5)
<化合物21の合成>
【0097】
【化30】
Figure 0003678311
【0098】
(1)上式(B1)で表される化合物の代わりに下式(Q1)で表される化合物7.28g(20mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(R1)で表される淡黄色結晶の化合物4.43gを得た。収率は56.4%であった。
【0099】
【化31】
Figure 0003678311
【0100】
【化32】
Figure 0003678311
【0101】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(R1)で表される化合物3.93g(10mmol)を用いたと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(S1)で表される淡黄色結晶の化合物2.53gを得た。収率は63.8%であった。
【0102】
【化33】
Figure 0003678311
【0103】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(S1)で表される化合物1.98g(5mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物の代わりに下式(T1)で表される化合物1.40g(5mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物21で表される黄色結晶の化合物1.61gを得た。収率は47.7%であった。
【0104】
【化34】
Figure 0003678311
【0105】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0106】
マススペクトル:621
元素分析値:C413624として、
理論値(%):C=79.33 H=5.85 N=4.51
測定値(%):C=79.46 H=5.90 N=4.44
(実施例6)
<化合物24の合成>
【0107】
【化35】
Figure 0003678311
【0108】
(1)上式(A1)で表される化合物の代わりに下式(U1)で表される化合物4.67g(20mmol)を用い、反応時間を6時間の代わりに7時間としたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(V1)で表される淡黄色結晶の化合物3.66gを得た。収率は56.6%であった。
【0109】
【化36】
Figure 0003678311
【0110】
【化37】
Figure 0003678311
【0111】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(V1)で表される化合物3.23g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(W1)で表される淡黄色結晶の化合物2.07gを得た。収率は63.4%であった。
【0112】
【化38】
Figure 0003678311
【0113】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(W1)で表される化合物1.63g(5mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物24で表される黄色結晶の化合物1.05gを得た。収率は42.8%であった。
【0114】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0115】
マススペクトル:489
元素分析値:C36282として、
理論値(%):C=88.49 H=5.78 N=5.73
測定値(%):C=88.54 H=5.71 N=5.84
(実施例7)
<化合物28の合成>
【0116】
【化39】
Figure 0003678311
【0117】
(1)上式(A1)で表される化合物の代わりに上式(U1)で表される化合物4.67g(20mmol)を用い、上式(B1)で表される化合物の代わりに上式(E1)で表される化合物7.07g(20mmol)を用い、反応条件を100℃で6時間の代わりに120℃で5時間としたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(X1)で表される淡黄色結晶の化合物4.91gを得た。収率は56.4%であった。
【0118】
【化40】
Figure 0003678311
【0119】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(X1)で表される化合物4.36g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(Y1)で表される淡黄色結晶の化合物2.14gを得た。収率は48.9%であった。
【0120】
【化41】
Figure 0003678311
【0121】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(Y1)で表される化合物2.10g(4.79mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物を1.10g(5mmol)の代わりに1.06g(4.79mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物28で表される黄色結晶の化合物1.40gを得た。収率は48.2%であった。
【0122】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0123】
マススペクトル:673
元素分析値:C51322として、
理論値(%):C=91.04 H=4.79 N=4.16
測定値(%):C=90.93 H=4.73 N=4.27
(実施例8)
<化合物36の合成>
【0124】
【化42】
Figure 0003678311
【0125】
(1)上式(A1)で表される化合物の代わりに上式(U1)で表される化合物4.67g(20mmol)を用い、上式(B1)で表される化合物の代わりに上式(I1)で表される化合物6.65g(20mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(Z1)で表される淡黄色結晶の化合物6.22gを得た。収率は61.4%であった。
【0126】
【化43】
Figure 0003678311
【0127】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(Z1)で表される化合物4.14g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(A2)で表される淡黄色結晶の化合物2.05gを得た。収率は49.1%であった。
【0128】
【化44】
Figure 0003678311
【0129】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(A2)で表される化合物2.00g(4.8mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物の代わりに上式(L1)で表される化合物1.19g(4.8mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物36で表される黄色結晶の化合物1.70gを得た。収率は58.1%であった。
【0130】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0131】
マススペクトル:607
元素分析値:C45382として、
理論値(%):C=89.07 H=6.31 N=4.62
測定値(%):C=89.12 H=6.36 N=4.72
(実施例9)
<化合物39の合成>
【0132】
【化45】
Figure 0003678311
【0133】
(1)上式(A1)で表される化合物の代わりに上式(U1)で表される化合物4.67g(20mmol)を用い、上式(B1)で表される化合物の代わりに上式(M1)で表される化合物7.46g(20mmol)を用い、反応時間を6時間の代わりに5時間としたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(B2)で表される淡黄色結晶の化合物5.08gを得た。収率は55.9%であった。
【0134】
【化46】
Figure 0003678311
【0135】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに下式(B2)で表される化合物4.54g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(C2)で表される淡黄色結晶の化合物2.84gを得た。収率は62.1%であった。
【0136】
【化47】
Figure 0003678311
【0137】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(C2)で表される化合物2.29g(5mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物39で表される黄色結晶の化合物1.67gを得た。収率は48.1%であった。
【0138】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0139】
マススペクトル:688.689
元素分析値:C41262Cl4として、
理論値(%):C=71.52 H=3.80 N=4.07
測定値(%):C=71.62 H=3.91 N=4.01
(実施例10)
<化合物43の合成>
【0140】
【化48】
Figure 0003678311
【0141】
(1)上式(A1)で表される化合物の代わりに上式(U1)で表される化合物4.67g(20mmol)を用い、上式(B1)で表される化合物の代わりに上式(Q1)で表される化合物7.28g(20mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(1)の方法に準じて、下式(D2)で表される淡黄色結晶の化合物4.56gを得た。収率は51.2%であった。
【0142】
【化49】
Figure 0003678311
【0143】
(2)上式(C1)で表される化合物の代わりに上式(D2)で表される化合物4.46g(10mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(2)の方法に準じて、下式(E2)で表される淡黄色結晶の化合物2.80gを得た。収率は62.5%であった。
【0144】
【化50】
Figure 0003678311
【0145】
(3)上式(D1)で表される化合物の代わりに上式(E2)で表される化合物2.24g(5mmol)を用い、上式(E1)で表される化合物の代わりに上式(T1)で表される化合物1.40g(5mmol)を用いたこと以外は、実施例1の(3)の方法に準じて、化合物43で表される黄色結晶の化合物1.57gを得た。収率は46.5%であった。
【0146】
この化合物のマススペクトルおよび元素分析値は下記のとおりである。
【0147】
マススペクトル:671
元素分析値:C453824として、
理論値(%):C=80.57 H=5.71 N=4.18
測定値(%):C=80.53 H=5.67 N=4.01
(比較例1)
下式(3)で表されるヒドラゾン系化合物DEHを用いた。
【0148】
【化51】
Figure 0003678311
【0149】
(比較例2)
下式(4)で表されるヒドラゾン系化合物SBHZを用いた。
【0150】
【化52】
Figure 0003678311
【0151】
(評価試験)
ホール移動度の測定
上記実施例1〜10で得られた本発明のヒドラゾン系化合物、および比較例1、2のヒドラゾン系化合物を用いて、以下の方法に従って、ホール移動度を測定した。
【0152】
上記の各ヒドラゾン系化合物100重量部、ビスフェノールA型ポリカーボネート100重量部、およびテトラヒドロフラン900重量部を混合し、ヒドラゾン系化合物を溶解させた。これをアルミシート上にバーコーター#60で塗布し、90℃で1時間乾燥させ、膜厚8μmの単層樹脂分散膜を作製した。次いで、この上に、真空蒸着法により半透明の金電極を設けた。このような構成のサンドイッチセルを用いて、下記のようにしてホール移動度を測定した。
【0153】
ホール移動度の測定は常法のTOF法により行った。金電極側を正極とし、この電極側からレーザ光を照射することによってホールのドリフト移動度を測定した。この時、種々の電圧でドリフト移動度を測定し、電界強度と移動度の関係から一定の電界強度(2.5×105V/cm)における移動度(cm2/V・sec)を算出し、これをホール移動度のデータとした。
【0154】
この結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
Figure 0003678311
【0156】
表1に示した結果から、本実施例によって得られたヒドラゾン系化合物は、比較例のヒドラゾン系化合物に比べて同程度の高いホール移動度を維持し、かつ、化学的安定性に優れていることがわかった。
【0157】
(実施例11〜30、比較例3〜6)
実施例1〜10で得られた本発明のヒドラゾン系化合物、および比較例1、2のヒドラゾン系化合物を用いて、以下の方法に従って単層型感光体(実施例11〜20、比較例3、4)および積層型感光体(実施例21〜30、比較例5、6)を作製した。
【0158】
(単層型感光体の作製)
電荷発生材料としてペリレン顔料10重量部と、テトラヒドロフラン60重量部とを、ジルコニアビーズ(2mm径)を用いたペイントシェーカーで2時間分散させた。得られた分散液に、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)パンライトL−1225)のテトラヒドロフラン溶液10重量部および電荷輸送材料100重量部を加え、さらに1時間分散させた。得られた分散液をアルミニウムシート上にバーコーターを用いて塗工し、100℃で1時間乾燥することで、20μmの感光層を形成して、単層型感光体を得た。実施例11〜20で使用した電荷輸送材料は、上記実施例1〜10で合成したヒドラゾン系化合物をそれぞれ使用し(例えば、実施例11では実施例1で合成したヒドラゾン系化合物(化合物2に相当)を使用)、比較例3、4で使用した電荷輸送材料は、上記比較例1、2のヒドラゾン系化合物をそれぞれ使用した(例えば、比較例3では、比較例1のヒドラゾン系化合物(DEH)に相当)を使用)。
【0159】
(積層型感光体の作製)
電荷発生材料としてジブロモアンサンスロン100重量部、結着樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製の「S−lecBMS)」100重量部、およびテトラヒドロフラン120重量部を、ジルコニアビーズ(2mm径)を用いたペイントシェーカーで2時間分散させた。得られた分散液をアルミニウムシート上にバーコーターを用いて塗工し、100℃で1時間乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0160】
この電荷発生層上に、電荷輸送材料100重量部とビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)パンライトL−1225)100重量部とを、テトラヒドロフラン900重量部に溶解した溶液を、バーコーターで塗工し、100℃で1時間乾燥することで、膜厚22μmの電荷輸送層を形成して、積層型感光体を得た。実施例21〜30で使用した電荷輸送材料は、上記実施例1〜10で合成したヒドラゾン系化合物をそれぞれ使用し(例えば、実施例21では実施例1で合成したヒドラゾン系化合物(化合物2に相当)を使用)、比較例5、6で使用した電荷輸送材料は、上記比較例1、2のヒドラゾン系化合物をそれぞれ使用した(例えば、比較例5では比較例1のヒドラゾン系化合物(DEH)に相当)を使用)。
【0161】
(評価試験)
実施例11〜30、および比較例3〜6で得られた電子写真感光体について、感度(初期表面電位(V0)、半減露光量(E1/2)、および残留電位(VR))、および繰り返し安定性をそれぞれ測定した。
【0162】
1.電子写真特性の測定
1.1 初期表面電位の測定
上記各電子写真感光体をドラム感度試験機に装填し、その表面を単層型では正極性に、積層型では負極性に帯電させて、一定コロナ電圧下(6.5kV)での初期表面電位V0(V)を測定した。
【0163】
1.2 半減露光量および残留電位の測定
各電子写真感光体をドラム感度試験機に装填し、各電子写真感光体への流れ込み電流を変化させて、その初期表面電位を800Vに帯電させた。次に、照度10luxのハロゲンランプ白色光を用いて、電子写真感光体を10秒間露光し、その初期表面電位が1/2(400V)となるまでの時間を半減露光時間とした。半減露光時間×光強度により、半減露光量E1/2(lux・sec)を算出した。
【0164】
さらに、露光開始後5秒を経過した時点の表面電位を測定し、残留電位VR(V)とした。
【0165】
2.繰り返し安定性の測定
上記各実施例および比較例で得られた電子写真感光体を、それぞれアルミニウムシリンダー上に接着テープを用いて貼りつけた後、静電複写機DC−1670M(三田工業株式会社製、帯電極性可変型に改造)に搭載し、帯電−露光を繰り返し(1万回)行った。次に、アルミニウムシリンダーから電子写真感光体をはがし、その前後における表面電位、残留電位、および半減露光量を上記と同様に測定および算出し、初期値との差をΔV0(表面電位)、ΔVR(残留電位)、ΔE1/2(半減露光量)とし、これらによって繰り返し安定性を評価した。
【0166】
この結果を表2(単層型感光体)および表3(積層型感光体)に示す。
【0167】
【表2】
Figure 0003678311
【0168】
【表3】
Figure 0003678311
【0169】
表2および表3に示した結果から、本実施例によって得られた電子写真感光体は、単層型および積層型のいずれの場合でも、比較例の電子写真感光体に比べて、初期表面電位、残留電位、さらに、半減露光量E1/2の値も同等または優れていることがわかった。そして、繰返特性の結果から、オゾン、窒素酸化物や光などの攻撃により劣化することなく安定した特性を有することがわかった。
【0170】
【発明の効果】
本発明のヒドラゾン系化合物は、電子写真感光体の電荷輸送材料として用いられるほか、太陽電池、EL素子などの電子デバイスの電荷輸送材料としても用いられ得る。
【0171】
本発明のヒドラゾン系化合物を用いた電子写真感光体は、電荷輸送能および化学的安定性に優れた化合物を電荷輸送材料として使用しているので、高い感度を有し、かつ、帯電特性および繰り返し特性に優れている。

Claims (2)

  1. 下記一般式(2)で表されるヒドラゾン系化合物:
    Figure 0003678311
    ここで、式中、R1、R3は、同一または異なって、アルキル基または置換基を有してもよいアリール基であって、該置換基が、クロロ基、ブロモ基、エチル基、フルオロメチル基またはメトキシ基であるアリール基を表し;R2、R4は、置換基を有してもよいアリール基であって、該置換基が、クロロ基、ブロモ基、エチル基、フルオロメチル基またはメトキシ基であるアリール基を表
  2. 導電性基体と、該導電性基体上に形成された感光層と、を有する電子写真感光体であって、
    該感光層が、電荷輸送材料、電荷発生材料、および結着樹脂を含有し、該電荷輸送材料が、上記一般式(2)で表されるヒドラゾン系化合物からなる群から選択される少なくとも一種である、電子写真感光体。
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