JP3677649B2 - 新規1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オン誘導体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は緑内障の治療剤として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
緑内障とは、一般的に眼圧が上昇することにより、視機能が障害を受ける疾患である。房水の流出は、眼圧上昇と密接な関係があり、房水の流出が妨げられると眼圧上昇を引き起こす。房水の大部分は、線維柱帯からシュレム管を通って眼球外に流れ出る。この線維柱帯における房水流出の抵抗を減弱させることによって房水の流出を亢進させることができる。線維柱帯を形成している細胞(線維柱帯細胞)はスルフヒドリル基を有しているが、そのスルフヒドリル基と反応する化合物を投与することにより、線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる方法が報告されている(特公平7−13013号公報参照)。この特許には、スルフヒドリル基と反応する化合物としてフェノキシ酢酸誘導体、特にエタクリン酸が好適な化合物として開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせることにより眼圧を下げる方法は、緑内障の治療方法として非常に興味あるものである。しかし、そのような作用機序を有する薬物の研究はまだ多くはなされておらず、新たな薬物の創製研究は、緑内障治療剤の開発において非常に興味ある課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるエタクリン酸が線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、眼圧を下げる効果を有することに着目し、種々の新規化合物を合成し、それらの線維柱帯細胞の形態に及ぼす効果を調べた。その結果、1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オンを基本構造とし、その1位のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入した新規1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オン誘導体が優れた効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は下記一般式[I]で示される化合物およびその塩類(以下特記なき限り本発明化合物と総称する)並びにそれらを有効成分とする医薬組成物に関するものである。
【0006】
【化3】
【0007】
[式中、R1は水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。R2、R3およびR4は同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す。…は単結合または二重結合を示す。]
【0008】
上記で規定した基を以下に詳しく説明する。
【0009】
低級アルキル基とはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、t−ブチル、3,3−ジメチルブチル等の1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキルを示す。
【0010】
低級アルコキシ基とはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ等の1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシ基を示す。
【0011】
ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0012】
本発明化合物において、R3および/またはR4が水素原子で示される場合、該アミノ基は保護基で保護されてもよい。アミノ基の保護基とは、アシル基、エステル基、置換低級アルキル基、置換スルホニル基等のアミノ基の保護基として汎用されるものを示す。詳しく説明するとホルミル基、低級アルカノイル基、ハロゲノ低級アルカノイル基、フェニルカルボニル基等のアシル基;低級アルコキシカルボニル基、置換低級アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のエステル基;アリル基、フェニル低級アルキル基、ベンゾイル低級アルキル基等の置換低級アルキル基;低級アルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基等の置換スルホニル基が挙げられる。なお、上記フェニルカルボニル基、フェノキシカルボニル基、フェニル低級アルキル基、ベンゾイル低級アルキル基およびフェニルスルホニル基のフェニル環はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されていてもよい。
【0013】
アミノ基の好ましい保護基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のエステル基;アリル基、ベンジル基、トリチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基等の置換アルキル基;ベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等の置換スルホニル基が挙げられる。
【0014】
尚、R1がヒドロキシ基である場合、ヒドロキシ基はアミノ基と同様汎用される保護基で保護されていてもよい。
【0015】
本発明における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸との塩などが挙げられる。また、本発明化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
尚、本発明化合物は溶媒和物、例えば水和物の形態をとっていてもよい。
【0017】
本発明化合物の好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において、各基が下記のものである化合物またはその塩類が挙げられる;
(1a)R1が水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子から選択される基を示す;および/または
(2a)R2が水素原子を示す;および/または
(3a)R3およびR4がともに低級アルキル基を示す。
【0018】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)の化合物またはその塩類、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2a)の化合物またはその塩類、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3a)の化合物またはその塩類、および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)、(2a)および(3a)の2つ以上の組み合わせからなる化合物またはその塩類である。
【0019】
本発明化合物の最も好ましい具体例としては、下記化合物およびその塩類が挙げられる。
【0020】
1) 1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オン
【化4】
【0021】
2) 1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オン
【化5】
【0022】
本発明はまた上記一般式[I]の化合物の合成中間体である下記一般式[IV]で示される化合物およびその塩類にも関するものである。
【0023】
【化6】
[式中、R1、R2、R3、R4および…は上記と同義である。>Xは>CHOHまたは>C=Oを示す。R3および/またはR4が水素原子である場合、該アミノ基は保護基で保護されていてもよい。]
本発明化合物[I]の代表的な合成ルートを下記に示す。
【0024】
【化7】
【0025】
但し、上記合成ルートは代表的な例であって、全ての方法を示すものではない。具体的合成方法の詳細は後述の実施例で説明する。
【0026】
上記ルートの合成方法を以下に詳しく説明する。
【0027】
アミノアルコール体[II](一般式[IV]の化合物およびその塩類において>Xが>CHOHである化合物)を酸化剤(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))存在下で処理して、式[III](一般式[IV]の化合物およびその塩類において>Xが>C=Oである化合物)で表されるカルボニル化合物を得る。次いで、化合物[III]を2級アミンの存在下にパラホルムアルデヒドとマンニッヒ反応により縮合した後、脱離反応により本発明化合物[I]を得る。
【0028】
上記合成方法において、反応物質が分子内にヒドロキシ基またはアミノ基を有する場合、それらの基は必要に応じて適当な保護基で保護されていてもよく、それらの保護基を反応後常法により除去することもできる。
【0029】
本発明化合物は文献未知の新規化合物であるが、その化学構造的特徴は、α,β−不飽和カルボニル基に2つのベンゼン環が置換した1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オンを基本構造とし、その1位のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入したところにある。
【0030】
従来の技術の項で記載したように、エタクリン酸は線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる効果があることが報告されている(特公平7−13013号公報参照)。エタクリン酸は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるが、本発明者等はこのエタクリン酸の化学構造に着目し、鋭意研究した結果、そのα位にベンゼン環を導入し、さらにもう一方のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入すると、より優れた効果を有する新規化合物が得られることを見出した。
【0031】
薬物の投与方法としては、活性体そのものを投与する方法と共に、生体内で分解し、活性体に変換される形、即ちプロドラッグの形で投与する方法も汎用されている。本発明化合物においても、これが分子内に、適切な保護基で保護されたヒドロキシ基またはアミノ基を有する場合、本発明化合物は、ヒドロキシ基またはアミノ基が保護基で保護されたまま、投与されてもよく、それらの保護基を除去して、保護された基をヒドロキシ基またはアミノ基に変換してから、投与されてもよい。
【0032】
本発明化合物の有用性を調べるべく、本発明化合物の線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。詳細については後述の薬理試験の項で示すが、本発明化合物を添加することによる線維柱帯細胞の形態変化を画像解析により検討した結果、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し優れた細胞形態変化作用を示した。従って、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を有すると考えられる。
【0033】
本発明化合物は主として非経口投与されるが、経口でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられ、それらの製剤は汎用技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシ40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などを必要に応じて用いて調製することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤は、必要に応じて、乳糖、デンプン、結晶セルロース、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂などのコーティング剤;ゼラチン皮膜剤を用いて調製することができる。
【0034】
本発明化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば0.001〜3%(w/v)のものを1日1回〜数回点眼すればよく、経口剤であれば通常1日当り1mg〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【0035】
以下に、本発明化合物の製造例、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
【実施例】
[製造例]
参考例1
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(参考化合物1−1)
【化8】
【0037】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸エチルエステル(2.0g)のクロロホルム(4ml)溶液に塩化チオニル(3.3ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドの残留物を得る。窒素雰囲気下、残留物をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解しドライアイスで冷却する。塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.5ml)を滴下する。滴下終了12分後ドライアイス冷却下、反応液に10%クエン酸水溶液を加えたのち液を室温とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−(フェニルアセチル)桂皮酸エチルエステル(675mg)を結晶として得る。
【0038】
mp 110.5〜111.3℃
IR(KBr,cm−1)2986,1690,1410,1330,1206,970,704
【0039】
2)窒素雰囲気下、4−(フェニルアセチル)桂皮酸エチルエステル(675mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(6ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(2.3ml)および水(4ml)を加え、室温で6.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて液を酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物1−1)を結晶として得る。
【0040】
(参考化合物1−1)
mp 232〜236℃(分解)
IR(KBr,cm−1)3036,2589,1684,1630,1337,1230,993
【0041】
参考例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0042】
・4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−2)
【0043】
・4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−3)
【0044】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−4)
【0045】
参考例2
3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸(参考化合物2−1)
【化9】
【0046】
1) 氷冷下、無水塩化アルミニウム(4.27g)の1,2−ジクロロエタン(35ml)溶液に、フェニル酢酸クロリド(3.4ml)を加えた後、3−フェニルプロピオン酸エチルエステル(5.1g)の無水1,2−ジクロロエタン(5ml)溶液を滴下する。氷冷下20分間撹拌したのち、室温で一晩撹拌する。氷(100g)を含む飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)に反応液を少量ずつ加える。析出物を濾去する。濾液にエーテルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸エチルエステルを結晶として得る。
【0047】
mp 50.5〜52.5℃
IR(KBr,cm−1)3059,2977,2921,1735,1682,1605,1479,1455,1437,1357,1316,1181,822
【0048】
2) 3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸エチルエステル(700mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(3ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(3.1ml)を加え、室温で2時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物2−1)を結晶として得る。
【0049】
(参考化合物2−1)
mp 132〜137℃
IR(KBr,cm−1)3497,3028,1680,1607,1498,1455,1348,1221,1182,992,826
【0050】
参考例3
N,N−ジメチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−1)
【化10】
【0051】
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(参考化合物1−1、3.23g)の無水テトラヒドロフラン(120ml)−クロロホルム(20ml)混液の溶液に、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.64g)、ジメチルアミン塩酸塩(1.19g)、N−メチルモルホリン(3.1ml)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.56g)を加え、室温で5時間撹拌する。反応液を減圧濃縮し、10%クエン酸水溶液を加えて酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物3−1、3.00g)を結晶として得る。
【0052】
(参考化合物3−1)
mp 138.5〜141.5℃
IR(KBr,cm−1)3030,1684,1653,1604,1498,1413,1328,1205,992,967
【0053】
参考例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0054】
・N,N−ジメチル−3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸アミド(参考化合物3−2)
mp 125〜131℃
IR(KBr,cm−1)3028,2908,1684,1640,1604,1495,1452,1407,1141
【0055】
・N,N−ジメチル−4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸アミド(参考化合物3−3)
【0056】
・N,N−ジメチル−4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸アミド(参考化合物3−4)
【0057】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]−N,N−ジメチル桂皮酸アミド(参考化合物3−5)
【0058】
・4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−6)
【0059】
実施例1
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール 塩酸塩(化合物1−1)
【化11】
【0060】
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(0.58g)の無水テトラヒドロフラン(30ml)懸濁液に、氷冷しながら、N,N−ジメチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−1、3.00g)の無水テトラヒドロフラン(72ml)溶液を滴下する。滴下終了後、室温で20分間撹拌する。
【0061】
反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、撹拌しながら少量ずつ水を滴下する。不溶物を濾去し、濾液を減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4.0N塩化水素酢酸エチル溶液に溶解する。減圧濃縮後、析出物を濾取し、標記化合物(化合物1−1、0.80g)を結晶として得る。
【0062】
(化合物1−1)
mp 152〜164℃
IR(KBr,cm−1)3334,2954,2664,1650,1418,1161,1034,984,752,708
【0063】
実施例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0064】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−2)
IR(Film,cm−1)3026,2941,2860,2778,1495,1454,1042
【0065】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−1−エタノール(化合物1−3)
【0066】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−1−エタノール(化合物1−4)
【0067】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−1−エタノール(化合物1−5)
【0068】
・1−[4−[(E)−3−アミノ−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−6)
【0069】
実施例2
1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物2−1)
【化12】
【0070】
1−[4−[(E)−3−アミノ−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−6)をピリジン中無水酢酸と処理し、標記化合物(化合物2−1)を得る。
【0071】
実施例3
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−1)
【化13】
【0072】
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール塩酸塩(化合物1−1、800mg)のジメチルスルホキシド(15ml)溶液に室温で撹拌しながらトリエチルアミン(2.1ml)を加え、さらに三酸化硫黄ピリジンコンプレックス(1.6g)のジメチルスルホキシド(10ml)溶液を滴下する。室温で3時間撹拌したのち、反応液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加えエーテルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物3−1、270mg)を結晶として得る。
【0073】
(化合物3−1)
IR(KBr,cm−1)2767,1682,1599,1452,1408,1332,1219,1175,975,726,697
【0074】
実施例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0075】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−2)
mp 37.8〜40.0℃
IR(KBr,cm−1)2809,2758,1682,1601,1565,1493,1453,1409
【0076】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−1−エタノン(化合物3−3)
【0077】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−1−エタノン(化合物3−4)
【0078】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−1−エタノン(化合物3−5)
【0079】
・1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−6)
【0080】
実施例4
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−1)
【化14】
【0081】
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−1、200mg)のジオキサン(10ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(86mg)、ジメチルアミン塩酸塩(233mg)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(1g)を加えて全体を120℃に加熱しながら一晩撹拌する。氷冷下、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて液をアルカリ性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物4−1、145mg)を得る。
【0082】
(化合物4−1)
IR(Film,cm−1)2941,2771,1664,1601,1412,1217,1175,980,700
【0083】
実施例4と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0084】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−2)
【0085】
IR(KBr,cm−1)3416,3027,2942,2814,2765,1665,1604,1465,1415,981,915
【0086】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−2−プロペン−1−オン(化合物4−3)
【0087】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−2−プロペン−1−オン(化合物4−4)
【0088】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−プロペン−1−オン(化合物4−5)
【0089】
・1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−6)
【0090】
[製剤例]
本発明化合物の点眼剤および経口剤の製剤例を以下に示す。
【0091】
1) 点眼剤
10ml中
本発明化合物 1mg
濃グリセリン 250mg
ポリソルベート80 200mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 20mg
1N水酸化ナトリウム 適量
1N塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0092】
2) 錠剤
100mg中
本発明化合物 1 mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20 mg
カルボキシメチルセルロース カルシウム 6 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
【0093】
【0094】
【発明の効果】
[薬理試験]
本発明化合物の緑内障に対する有用性を調べるため、本発明化合物が線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用について検討した。
【0095】
1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用
薬物の培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を評価することで、房水流出を亢進させる作用を有する薬物を見出し得る可能性が報告されている(Invest.Ophthalmol. Vis. Sci., 33, 2631-2640 (1992))。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物のウシ培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。
【0096】
(実験方法)
アッセイは、本発明化合物を添加することによるウシ培養線維柱帯細胞の形態変化を、画像解析により定量評価した。
【0097】
[細胞の調製]
ウシ胎児血清(10%)、アンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したほ乳類細胞培養基本培地D−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium 、Gibco 社製)で培養したウシ線維柱帯細胞(継代数2〜5)を後述の薬物処理24時間前に、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA・4Na)で処理して、24穴プレートに播種(104cells/well)した。後述の薬物処理12時間前にりん酸緩衝生理食塩液による洗浄を行った後、培地をアンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したD−MEM(以下培地Aという)に交換した。後述の薬物処理1時間前に、上記のように調製した細胞から細胞同士が接触していない細胞を選び実験に用いた。
【0098】
[被験化合物溶液の調製]
被験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、培地Aを加えて濾過滅菌し、さらに培地Aを加えて所定の濃度に希釈した。この希釈液を5%炭酸ガス雰囲気下、後述の薬物処理1時間前から37℃で1時間恒温保持して被験化合物溶液を調製した。
【0099】
[測定方法]
まず、薬物処理1時間前の細胞を自動位置検出装置(well-scanner)を用いて写真撮影した。次いで、細胞の培地を被験化合物溶液に交換して薬物処理を行い、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃で3時間インキュベートをした後、well-scannerを用いて薬物処理1時間前に撮影したのと同じ細胞を写真撮影した。
【0100】
(画像解析)
撮影した細胞像を写真からCCDカメラ(HAMAMATU社製)にて、画像解析システムに取り込んだ。取り込んだ細胞像の輪郭をトレースし、面積を測定した。被験化合物の線維柱帯細胞に及ぼす形態変化の程度は、下記の面積変化率(%)で示す。
【0101】
【式1】
【0102】
(結果)
表1に試験結果の一例として、線維柱帯細胞の細胞面積を50%縮小させるのに要した濃度(EC50)を示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も合わせて示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1から判るように、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し、優れた細胞形態変化作用を有することが認められる。これらの効果は、公知の比較対照薬物であるエタクリン酸に比べて格段に優れたものであった。
【0105】
以上のことから、本発明化合物は優れた細胞形態変化作用を有しており、眼圧下降剤、即ち緑内障の治療剤として有用であることが認められる。
【発明の属する技術分野】
本発明は緑内障の治療剤として有用な新規化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
緑内障とは、一般的に眼圧が上昇することにより、視機能が障害を受ける疾患である。房水の流出は、眼圧上昇と密接な関係があり、房水の流出が妨げられると眼圧上昇を引き起こす。房水の大部分は、線維柱帯からシュレム管を通って眼球外に流れ出る。この線維柱帯における房水流出の抵抗を減弱させることによって房水の流出を亢進させることができる。線維柱帯を形成している細胞(線維柱帯細胞)はスルフヒドリル基を有しているが、そのスルフヒドリル基と反応する化合物を投与することにより、線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる方法が報告されている(特公平7−13013号公報参照)。この特許には、スルフヒドリル基と反応する化合物としてフェノキシ酢酸誘導体、特にエタクリン酸が好適な化合物として開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせることにより眼圧を下げる方法は、緑内障の治療方法として非常に興味あるものである。しかし、そのような作用機序を有する薬物の研究はまだ多くはなされておらず、新たな薬物の創製研究は、緑内障治療剤の開発において非常に興味ある課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるエタクリン酸が線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、眼圧を下げる効果を有することに着目し、種々の新規化合物を合成し、それらの線維柱帯細胞の形態に及ぼす効果を調べた。その結果、1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オンを基本構造とし、その1位のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入した新規1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オン誘導体が優れた効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は下記一般式[I]で示される化合物およびその塩類(以下特記なき限り本発明化合物と総称する)並びにそれらを有効成分とする医薬組成物に関するものである。
【0006】
【化3】
【0007】
[式中、R1は水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。R2、R3およびR4は同一かまたは異なって、水素原子または低級アルキル基を示す。…は単結合または二重結合を示す。]
【0008】
上記で規定した基を以下に詳しく説明する。
【0009】
低級アルキル基とはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、t−ブチル、3,3−ジメチルブチル等の1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキルを示す。
【0010】
低級アルコキシ基とはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ等の1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルコキシ基を示す。
【0011】
ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0012】
本発明化合物において、R3および/またはR4が水素原子で示される場合、該アミノ基は保護基で保護されてもよい。アミノ基の保護基とは、アシル基、エステル基、置換低級アルキル基、置換スルホニル基等のアミノ基の保護基として汎用されるものを示す。詳しく説明するとホルミル基、低級アルカノイル基、ハロゲノ低級アルカノイル基、フェニルカルボニル基等のアシル基;低級アルコキシカルボニル基、置換低級アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のエステル基;アリル基、フェニル低級アルキル基、ベンゾイル低級アルキル基等の置換低級アルキル基;低級アルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基等の置換スルホニル基が挙げられる。なお、上記フェニルカルボニル基、フェノキシカルボニル基、フェニル低級アルキル基、ベンゾイル低級アルキル基およびフェニルスルホニル基のフェニル環はハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されていてもよい。
【0013】
アミノ基の好ましい保護基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ジフェニルメトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のエステル基;アリル基、ベンジル基、トリチル基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル基等の置換アルキル基;ベンゼンスルホニル基、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等の置換スルホニル基が挙げられる。
【0014】
尚、R1がヒドロキシ基である場合、ヒドロキシ基はアミノ基と同様汎用される保護基で保護されていてもよい。
【0015】
本発明における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸との塩などが挙げられる。また、本発明化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
尚、本発明化合物は溶媒和物、例えば水和物の形態をとっていてもよい。
【0017】
本発明化合物の好ましい例としては、一般式[I]で示される化合物において、各基が下記のものである化合物またはその塩類が挙げられる;
(1a)R1が水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子から選択される基を示す;および/または
(2a)R2が水素原子を示す;および/または
(3a)R3およびR4がともに低級アルキル基を示す。
【0018】
すなわち、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)の化合物またはその塩類、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(2a)の化合物またはその塩類、
・一般式[I]で示される化合物において、上記(3a)の化合物またはその塩類、および
・一般式[I]で示される化合物において、上記(1a)、(2a)および(3a)の2つ以上の組み合わせからなる化合物またはその塩類である。
【0019】
本発明化合物の最も好ましい具体例としては、下記化合物およびその塩類が挙げられる。
【0020】
1) 1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オン
【化4】
【0021】
2) 1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オン
【化5】
【0022】
本発明はまた上記一般式[I]の化合物の合成中間体である下記一般式[IV]で示される化合物およびその塩類にも関するものである。
【0023】
【化6】
[式中、R1、R2、R3、R4および…は上記と同義である。>Xは>CHOHまたは>C=Oを示す。R3および/またはR4が水素原子である場合、該アミノ基は保護基で保護されていてもよい。]
本発明化合物[I]の代表的な合成ルートを下記に示す。
【0024】
【化7】
【0025】
但し、上記合成ルートは代表的な例であって、全ての方法を示すものではない。具体的合成方法の詳細は後述の実施例で説明する。
【0026】
上記ルートの合成方法を以下に詳しく説明する。
【0027】
アミノアルコール体[II](一般式[IV]の化合物およびその塩類において>Xが>CHOHである化合物)を酸化剤(例えばジメチルスルホキシド(DMSO))存在下で処理して、式[III](一般式[IV]の化合物およびその塩類において>Xが>C=Oである化合物)で表されるカルボニル化合物を得る。次いで、化合物[III]を2級アミンの存在下にパラホルムアルデヒドとマンニッヒ反応により縮合した後、脱離反応により本発明化合物[I]を得る。
【0028】
上記合成方法において、反応物質が分子内にヒドロキシ基またはアミノ基を有する場合、それらの基は必要に応じて適当な保護基で保護されていてもよく、それらの保護基を反応後常法により除去することもできる。
【0029】
本発明化合物は文献未知の新規化合物であるが、その化学構造的特徴は、α,β−不飽和カルボニル基に2つのベンゼン環が置換した1,2−ジフェニル−2−プロペン−1−オンを基本構造とし、その1位のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入したところにある。
【0030】
従来の技術の項で記載したように、エタクリン酸は線維柱帯細胞に形態的変化を起こさせ、房水流出能を亢進することによって眼圧を下げる効果があることが報告されている(特公平7−13013号公報参照)。エタクリン酸は、α,β−不飽和カルボニル基を有するフェノキシ酢酸誘導体であるが、本発明者等はこのエタクリン酸の化学構造に着目し、鋭意研究した結果、そのα位にベンゼン環を導入し、さらにもう一方のベンゼン環の側鎖にアミノ基を導入すると、より優れた効果を有する新規化合物が得られることを見出した。
【0031】
薬物の投与方法としては、活性体そのものを投与する方法と共に、生体内で分解し、活性体に変換される形、即ちプロドラッグの形で投与する方法も汎用されている。本発明化合物においても、これが分子内に、適切な保護基で保護されたヒドロキシ基またはアミノ基を有する場合、本発明化合物は、ヒドロキシ基またはアミノ基が保護基で保護されたまま、投与されてもよく、それらの保護基を除去して、保護された基をヒドロキシ基またはアミノ基に変換してから、投与されてもよい。
【0032】
本発明化合物の有用性を調べるべく、本発明化合物の線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。詳細については後述の薬理試験の項で示すが、本発明化合物を添加することによる線維柱帯細胞の形態変化を画像解析により検討した結果、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し優れた細胞形態変化作用を示した。従って、本発明化合物は優れた眼圧下降作用を有すると考えられる。
【0033】
本発明化合物は主として非経口投与されるが、経口でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が挙げられ、それらの製剤は汎用技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシ40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などを必要に応じて用いて調製することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤は、必要に応じて、乳糖、デンプン、結晶セルロース、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂などのコーティング剤;ゼラチン皮膜剤を用いて調製することができる。
【0034】
本発明化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤であれば0.001〜3%(w/v)のものを1日1回〜数回点眼すればよく、経口剤であれば通常1日当り1mg〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【0035】
以下に、本発明化合物の製造例、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
【実施例】
[製造例]
参考例1
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(参考化合物1−1)
【化8】
【0037】
窒素雰囲気下、4−カルボキシ桂皮酸エチルエステル(2.0g)のクロロホルム(4ml)溶液に塩化チオニル(3.3ml)を滴下したのち、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え30分間加熱還流する。反応液を減圧濃縮し、酸クロライドの残留物を得る。窒素雰囲気下、残留物をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解しドライアイスで冷却する。塩化ベンジルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.5ml)を滴下する。滴下終了12分後ドライアイス冷却下、反応液に10%クエン酸水溶液を加えたのち液を室温とし、エーテルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4−(フェニルアセチル)桂皮酸エチルエステル(675mg)を結晶として得る。
【0038】
mp 110.5〜111.3℃
IR(KBr,cm−1)2986,1690,1410,1330,1206,970,704
【0039】
2)窒素雰囲気下、4−(フェニルアセチル)桂皮酸エチルエステル(675mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(6ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(2.3ml)および水(4ml)を加え、室温で6.5時間撹拌する。反応液に1N塩酸を加えて液を酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物1−1)を結晶として得る。
【0040】
(参考化合物1−1)
mp 232〜236℃(分解)
IR(KBr,cm−1)3036,2589,1684,1630,1337,1230,993
【0041】
参考例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0042】
・4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−2)
【0043】
・4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−3)
【0044】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]桂皮酸(参考化合物1−4)
【0045】
参考例2
3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸(参考化合物2−1)
【化9】
【0046】
1) 氷冷下、無水塩化アルミニウム(4.27g)の1,2−ジクロロエタン(35ml)溶液に、フェニル酢酸クロリド(3.4ml)を加えた後、3−フェニルプロピオン酸エチルエステル(5.1g)の無水1,2−ジクロロエタン(5ml)溶液を滴下する。氷冷下20分間撹拌したのち、室温で一晩撹拌する。氷(100g)を含む飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)に反応液を少量ずつ加える。析出物を濾去する。濾液にエーテルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸エチルエステルを結晶として得る。
【0047】
mp 50.5〜52.5℃
IR(KBr,cm−1)3059,2977,2921,1735,1682,1605,1479,1455,1437,1357,1316,1181,822
【0048】
2) 3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸エチルエステル(700mg)のエタノール(6ml)−テトラヒドロフラン(3ml)混液に1N水酸化ナトリウム水溶液(3.1ml)を加え、室温で2時間撹拌する。反応液に10%クエン酸水溶液を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物2−1)を結晶として得る。
【0049】
(参考化合物2−1)
mp 132〜137℃
IR(KBr,cm−1)3497,3028,1680,1607,1498,1455,1348,1221,1182,992,826
【0050】
参考例3
N,N−ジメチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−1)
【化10】
【0051】
4−(フェニルアセチル)桂皮酸(参考化合物1−1、3.23g)の無水テトラヒドロフラン(120ml)−クロロホルム(20ml)混液の溶液に、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.64g)、ジメチルアミン塩酸塩(1.19g)、N−メチルモルホリン(3.1ml)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.56g)を加え、室温で5時間撹拌する。反応液を減圧濃縮し、10%クエン酸水溶液を加えて酢酸エチルで抽出する。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。析出物を濾取し、標記化合物(参考化合物3−1、3.00g)を結晶として得る。
【0052】
(参考化合物3−1)
mp 138.5〜141.5℃
IR(KBr,cm−1)3030,1684,1653,1604,1498,1413,1328,1205,992,967
【0053】
参考例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0054】
・N,N−ジメチル−3−[4−(フェニルアセチル)フェニル]プロピオン酸アミド(参考化合物3−2)
mp 125〜131℃
IR(KBr,cm−1)3028,2908,1684,1640,1604,1495,1452,1407,1141
【0055】
・N,N−ジメチル−4−[(4−トリル)アセチル]桂皮酸アミド(参考化合物3−3)
【0056】
・N,N−ジメチル−4−[(4−フルオロフェニル)アセチル]桂皮酸アミド(参考化合物3−4)
【0057】
・4−[(4−クロロフェニル)アセチル]−N,N−ジメチル桂皮酸アミド(参考化合物3−5)
【0058】
・4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−6)
【0059】
実施例1
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール 塩酸塩(化合物1−1)
【化11】
【0060】
窒素雰囲気下、水素化リチウムアルミニウム(0.58g)の無水テトラヒドロフラン(30ml)懸濁液に、氷冷しながら、N,N−ジメチル−4−(フェニルアセチル)桂皮酸アミド(参考化合物3−1、3.00g)の無水テトラヒドロフラン(72ml)溶液を滴下する。滴下終了後、室温で20分間撹拌する。
【0061】
反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、撹拌しながら少量ずつ水を滴下する。不溶物を濾去し、濾液を減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、4.0N塩化水素酢酸エチル溶液に溶解する。減圧濃縮後、析出物を濾取し、標記化合物(化合物1−1、0.80g)を結晶として得る。
【0062】
(化合物1−1)
mp 152〜164℃
IR(KBr,cm−1)3334,2954,2664,1650,1418,1161,1034,984,752,708
【0063】
実施例1と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0064】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−2)
IR(Film,cm−1)3026,2941,2860,2778,1495,1454,1042
【0065】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−1−エタノール(化合物1−3)
【0066】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−1−エタノール(化合物1−4)
【0067】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−1−エタノール(化合物1−5)
【0068】
・1−[4−[(E)−3−アミノ−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−6)
【0069】
実施例2
1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物2−1)
【化12】
【0070】
1−[4−[(E)−3−アミノ−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール(化合物1−6)をピリジン中無水酢酸と処理し、標記化合物(化合物2−1)を得る。
【0071】
実施例3
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−1)
【化13】
【0072】
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノール塩酸塩(化合物1−1、800mg)のジメチルスルホキシド(15ml)溶液に室温で撹拌しながらトリエチルアミン(2.1ml)を加え、さらに三酸化硫黄ピリジンコンプレックス(1.6g)のジメチルスルホキシド(10ml)溶液を滴下する。室温で3時間撹拌したのち、反応液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加えエーテルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物3−1、270mg)を結晶として得る。
【0073】
(化合物3−1)
IR(KBr,cm−1)2767,1682,1599,1452,1408,1332,1219,1175,975,726,697
【0074】
実施例3と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0075】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−2)
mp 37.8〜40.0℃
IR(KBr,cm−1)2809,2758,1682,1601,1565,1493,1453,1409
【0076】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−1−エタノン(化合物3−3)
【0077】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−1−エタノン(化合物3−4)
【0078】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−1−エタノン(化合物3−5)
【0079】
・1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−6)
【0080】
実施例4
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−1)
【化14】
【0081】
1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−1−エタノン(化合物3−1、200mg)のジオキサン(10ml)溶液を耐圧管に入れ、パラホルムアルデヒド(86mg)、ジメチルアミン塩酸塩(233mg)、酢酸(1滴)および無水硫酸マグネシウム(1g)を加えて全体を120℃に加熱しながら一晩撹拌する。氷冷下、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて液をアルカリ性とし酢酸エチルで抽出する。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮する。得られる残留物をシリカゲルカラムクロマトで精製し、標記化合物(化合物4−1、145mg)を得る。
【0082】
(化合物4−1)
IR(Film,cm−1)2941,2771,1664,1601,1412,1217,1175,980,700
【0083】
実施例4と同様の方法を用いて以下の化合物が得られる。
【0084】
・1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−2)
【0085】
IR(KBr,cm−1)3416,3027,2942,2814,2765,1665,1604,1465,1415,981,915
【0086】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−トリル)−2−プロペン−1−オン(化合物4−3)
【0087】
・1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−(4−フルオロフェニル)−2−プロペン−1−オン(化合物4−4)
【0088】
・2−(4−クロロフェニル)−1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−プロペン−1−オン(化合物4−5)
【0089】
・1−[4−[(E)−3−(アセチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル]−2−フェニル−2−プロペン−1−オン(化合物4−6)
【0090】
[製剤例]
本発明化合物の点眼剤および経口剤の製剤例を以下に示す。
【0091】
1) 点眼剤
10ml中
本発明化合物 1mg
濃グリセリン 250mg
ポリソルベート80 200mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物 20mg
1N水酸化ナトリウム 適量
1N塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0092】
2) 錠剤
100mg中
本発明化合物 1 mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20 mg
カルボキシメチルセルロース カルシウム 6 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
【0093】
【0094】
【発明の効果】
[薬理試験]
本発明化合物の緑内障に対する有用性を調べるため、本発明化合物が線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用について検討した。
【0095】
1)線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用
薬物の培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を評価することで、房水流出を亢進させる作用を有する薬物を見出し得る可能性が報告されている(Invest.Ophthalmol. Vis. Sci., 33, 2631-2640 (1992))。そこで上記文献に記載された方法に準じて本発明化合物のウシ培養線維柱帯細胞の形態に及ぼす作用を検討した。
【0096】
(実験方法)
アッセイは、本発明化合物を添加することによるウシ培養線維柱帯細胞の形態変化を、画像解析により定量評価した。
【0097】
[細胞の調製]
ウシ胎児血清(10%)、アンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したほ乳類細胞培養基本培地D−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium 、Gibco 社製)で培養したウシ線維柱帯細胞(継代数2〜5)を後述の薬物処理24時間前に、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン、0.53mM EDTA・4Na)で処理して、24穴プレートに播種(104cells/well)した。後述の薬物処理12時間前にりん酸緩衝生理食塩液による洗浄を行った後、培地をアンフォテリシンB(2.5μg/ml)およびゲンタマイシン(50μg/ml)を添加したD−MEM(以下培地Aという)に交換した。後述の薬物処理1時間前に、上記のように調製した細胞から細胞同士が接触していない細胞を選び実験に用いた。
【0098】
[被験化合物溶液の調製]
被験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解後、培地Aを加えて濾過滅菌し、さらに培地Aを加えて所定の濃度に希釈した。この希釈液を5%炭酸ガス雰囲気下、後述の薬物処理1時間前から37℃で1時間恒温保持して被験化合物溶液を調製した。
【0099】
[測定方法]
まず、薬物処理1時間前の細胞を自動位置検出装置(well-scanner)を用いて写真撮影した。次いで、細胞の培地を被験化合物溶液に交換して薬物処理を行い、5%炭酸ガス雰囲気下、37℃で3時間インキュベートをした後、well-scannerを用いて薬物処理1時間前に撮影したのと同じ細胞を写真撮影した。
【0100】
(画像解析)
撮影した細胞像を写真からCCDカメラ(HAMAMATU社製)にて、画像解析システムに取り込んだ。取り込んだ細胞像の輪郭をトレースし、面積を測定した。被験化合物の線維柱帯細胞に及ぼす形態変化の程度は、下記の面積変化率(%)で示す。
【0101】
【式1】
【0102】
(結果)
表1に試験結果の一例として、線維柱帯細胞の細胞面積を50%縮小させるのに要した濃度(EC50)を示す。また、対照薬物としてエタクリン酸を用いた結果も合わせて示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表1から判るように、本発明化合物は線維柱帯細胞に対し、優れた細胞形態変化作用を有することが認められる。これらの効果は、公知の比較対照薬物であるエタクリン酸に比べて格段に優れたものであった。
【0105】
以上のことから、本発明化合物は優れた細胞形態変化作用を有しており、眼圧下降剤、即ち緑内障の治療剤として有用であることが認められる。
Claims (8)
- 請求項1記載の化合物またはその塩類において、R3および/またはR4が水素原子であり、該アミノ基が保護基で保護されている化合物またはその塩類。
- 1)R1が水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子から選択される基を示す;および/または
2)R2が水素原子を示す;および/または
3)R3およびR4がともに低級アルキル基を示す;
請求項1記載の化合物またはその塩類。 - 1−[4−[(E)−3−(ジメチルアミノ)−1−プロペニル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オン、1−[4−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]フェニル−2−フェニル−2−プロペン−1−オンよりなる群から選ばれる化合物またはそれらの塩類。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする医薬組成物。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする房水流出改善剤。
- 請求項1記載の化合物またはその塩類を有効成分とする眼圧下降剤。
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