JP3675640B2 - セラミック素子の接続装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック素子とリード線とを耐熱接合する接続装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、酸素濃度を検出する車両用の酸素センサ素子のように、排気管に取り付けられて高温状態に晒されるセラミック素子が知られている。このような、高温下に使用されるセラミック素子30とリード線8とを電気的に接合する手段として、金属リング31の嵌合によるセラミック素子30とリード線8の接合は、締め代や金属リング31の最低肉圧等を規定することで安定した接合体を得られることが、特願平9−293322号で提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、センサを小型化するとセンサの排気管への取付部と、セラミック素子30とリード線との接続部との間の距離が短くなり排気管の熱が前記接続部へ伝わり易くなり、該接続部が高温になってしまうことが生じてきた。
本発明者等は、セラミック素子の接続について、鋭意検討した。セラミック素子30は、圧縮応力には強いが引っ張り応力には弱いという特徴を持っている。締まり嵌め嵌合の電極接合時にはセラミック素子の接合部に働く応力は圧縮であるので問題を生じない。しかし、高温下の使用時には熱疲労を受けるため、各種部品の熱膨張差により図10に示すように割れxが発生し、最悪の場合にはセラミック素子の機能が得られなくなる。そして、この問題を回避するのに締め代を低下させる方法もあるが、電極(リード線)の保持力が低下してしまい、接合の信頼性が得られない。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、セラミック素子とリード線を有する結合体を強固に接合し、高温下で使用されてもセラミック素子の割れが生じ難いセラミック素子の接続装置の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック素子の接続装置は、次の技術的手段を採用した。
〔請求項1の手段〕
本発明は、電気的接続部を備えたセラミック素子と、前記電気的接続部に接触し外部に導出するリード線を有する結合体と、前記結合体の外寸法である結合寸法より小さい内寸法である保持寸法を有し、前記結合体を外側から締まり嵌めで保持され、前記リード線を前記セラミック素子の前記電気的接続部に機械的に圧着された状態で接続するリング部材とを備えるセラミック素子の接続装置において、
前記セラミック素子の厚さtと、前記リング部材の軸方向の有効保持部の長さLが、0.23≦L/t≦13の関係を満足することを特徴とする。
【0006】
ここでリング部材の有効保持部の長さLとは、リング部材の内側面の端面に形成された面取り部とセラミック素子の外側端に形成された面取り部を除いた、リング部材の内側面とセラミック素子の外側面が軸方向に接する実質的な長さである。
【0007】
〔請求項2の手段〕
請求項1のセラミック素子の接続装置において、前記結合体は、前記リード線の少なくとも外側面に絶縁板を介在してなるものである。
【0008】
〔請求項3の手段〕
請求項1のセラミック素子の接続装置において、前記リング部材は、前記リード線の少なくとも外側面と対向する内側面に絶縁層を一体に形成してなるものである。
【0009】
〔請求項4の手段〕
請求項1のセラミック素子の接続装置において、前記リング部材は絶縁体からなるものである。
【0010】
〔請求項5の手段〕
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のセラミック素子の接続装置において、前記セラミック素子は、酸素センサ素子、NOxセンサ素子、COセンサ素子、CO2 センサ素子などのセラミック製のガスセンサ素子であることを特徴とする。
【0011】
【発明の作用及び効果】
〔請求項1の作用及び効果〕
セラミック素子の厚さtとリング部材の軸方向の有効保持部の長さLの関係を、0.23≦L/t≦13とすることにより、嵌合端に働く引っ張り応力自体は比較的大きいが、両嵌合端(軸方向の上端と下端)に距離があるため、両端の応力は干渉せず独立して作用している{図4の(ロ)}。
このため、セラミック素子の割れが有効に防止され、セラミック素子のセンサ機能を維持することができる。
【0012】
なお、L/t<0.23になると、嵌合端に働く応力自体は小さいが、両嵌合端が近く、両端の応力は重なり合い、結果として大きな合成応力が働く。このため、センサ素子に割れが発生し、センサ感知部と電極取り出し部を繋ぐリード部が断線し、センサ機能が停止する{図4の(イ)}。
また、13<L/tになると、両端の応力は干渉せず独立して作用しているが、嵌合端の働く応力自体が高い。このため、単独の応力のみでセラミック素子に破損が生じる{図4の(ハ)}。
【0013】
更に、好ましくはセラミック素子の厚みtとリング部材の有効接続部の長さLの関係を、0.26≦L/t≦12.7とすることにより、セラミック素子の破損を完全に防ぐことができ、センサ機能を維持することができる。
【0014】
〔請求項2の作用及び効果〕
結合体は、リード線の少なくとも外側面に絶縁板を介在しているため、リード線とリング部材の間の絶縁が保持され、簡単に絶縁板を介在固定させることができる。
【0015】
〔請求項3の作用及び効果〕
リング部材は、リード線の少なくとも外側面と対向する内側面に絶縁層を一体に形成されているため、リード線の絶縁が保持され、接続装置をコンパクト化することができ、接続装置の耐衝撃性を高めることができる。
【0016】
〔請求項4の作用及び効果〕
リング部材自体を絶縁体から形成することにより、請求項3と同様にコンパクト化を達成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、実施例、第1〜第3実験例及び変形例を用いて説明する。
〔実施例〕
図1乃至図5は実施例を説明するもので、図1はセラミック素子の接続装置Aの組立図、図2はセラミック素子の接続装置を示す要部拡大断面図、図3はその斜視図、図4は実験に使用したセラミック素子の接続装置の概略図、図5はセラミック素子の一例として酸素センサ素子を用いた酸素センサの要部断面図である。
【0018】
(酸素センサ1の説明)
酸素センサ1の要部は、図5に示すように小型化されたセラミック素子2を備えている。このセラミック素子2は、車両の排気管内に酸素濃度を検出する酸素センサ素子である。
このセラミック素子2は、空燃比センサ部と電気ヒータ部とを積層して焼結した短形状を呈する周知の構造のものを小型化したもので、その先端側が排気管内を流れる高温の排気ガスに晒される。
【0019】
セラミック素子2は、筒状の固定金具3内にガラスシール4(或いは耐熱セメント)、保持金具5等によって固定され、セラミック素子2の先端側が排気管に固定される固定金具3の先端より突出した状態で取付けねじ3aで排気管に固定される。
固定金具3の先端外周には、セラミック素子2の突出部分を覆う金属製のカバー6が、抵抗溶接等によって固着されている。このカバー6は、キャップ状を呈するもので、その先端や周囲に、排気管内を流れる高温の排気ガスをカバー6内に導く開口6aが形成されている。
【0020】
なお、セラミック素子2の基部の一面には、空燃比センサ部の出力信号を取り出す2つの電気的接続部7がメタライズによって形成され、またセラミック素子2の基部の他面には、電気ヒータ部に通電するための2つの電気的接続部7がメタライズによって形成されている。
【0021】
(セラミック素子2とリード線の接続装置Aの説明)
酸素センサ1は、上述したように小型化されたものであるため、排気熱を受けて酸素センサ1の全体が高温となり、セラミック素子2の電気的接続部7付近の使用温度も高くなる。
セラミック素子2の各電気的接続部7には、リボン状の平板からなるリード線8が電気的かつ機械的に接合される。この高温に耐える接合構造を、次に説明する。
【0022】
セラミック素子2は、図1乃至図3に示すように、短形柱状を呈する部分安定化ジルコニア製で、その基部の両端にメタライズによって2本ずつ形成されて各電気的接続部7のそれぞれに、リボン状を呈したインコネル製、ステンレス製等のリード線8を重ね、更に2枚のアルミナ製のセラミックの短形板状の絶縁板9で挟み、これら結合体10を短形筒状を呈したインコロイ製、ステンレス製等の金属製のリング部材11の保持部11a内に圧入、焼嵌め、冷嵌め等の締まり嵌めで直接固定した構造を採用している。
【0023】
リング部材11は、図1に示すように、結合体10の外寸法である結合寸法a(セラミック素子2の厚さ+両側のリード線8の厚さ+2枚の絶縁板9の厚さ)より内寸法の小さい保持寸法bの保持部11aを有し、この保持部11a内で結合体10を直接締まり嵌めで保持するものである。そして、図2に示すように、セラミック素子2の厚みtと、リング部材11の軸方向の有効保持部の長さLの関係が、0.23≦L/t≦13の範囲に形成されている。
【0024】
更に、リード線8の接合強度としては、結合体10とリング部材11との締まり嵌めによる締め代(組付け完了後に分解し計測により求められた締め代を含む)は、0.01mm(10μm)以上の状態に維持する必要がある。この10μm以上においても引っ張り応力を軽減させ、セラミック素子の割れない安定した接続装置が得られる。
【0025】
(組付けの説明)
次に圧入によってリング部材11を結合体10に組付ける例を、図1を用いて説明する。
1)リング部材11の保持部11aの圧入開始端に面取り部11bを設けておくと共に、絶縁板9の圧入開始端にも面取り部9aを設けておく。
2)セラミック素子2、4本のリード線8、2枚の絶縁板9よりなる結合体10を、分割型の治具12aで係止めすると共に、セラミック素子2の電気的接続部7を治具12bで保持する。
3)リング部材11の圧入開始端及び圧入面に潤滑材(例えば、ステアリン酸のエマルジョン等)を塗って、リング部材11を結合体10の周囲に圧入する。なお、リング部材11の先端が治具12aに至る前に治具12aは外方に開き、結合体10の周囲にリング部材11が圧入される。
4)圧入により結合されたものを350℃に加熱して潤滑材を分解し、リング部材11による結合体10の保持力を高める。
以上によって、結合体10の周囲にリング部材11が圧入によって組付けられる。
【0026】
(実施例の効果)
車両用の酸素センサ1のセラミック素子2の接続装置として、セラミック素子2の厚みtと、リング部材11の軸方向の有効保持部の長さLの関係を、0.23≦L/t≦13の範囲内に形成することによって、高温使用下においても引っ張り応力を軽減し、セラミック素子2の保持部内での割れを防止することができ、センサ機能を維持することができる。
【0027】
〔実験例1〕
次に、上記実施例で示したセラミック素子の接続装置(以下実施例品)と、比較例品とを用いて、室温×20分と750℃×20分を1サイクルとする熱サイクル疲労試験を1000サイクル行い、セラミック素子の損傷の程度を判定した。
なお、インコロイ909(商品名)はFe、Ni、Crを加えた耐熱鋼、インコネル750(商品名)はNiを主体にしてFe、Crを加えた耐熱鋼である。
【0028】
この試験では、次の仕様のものを使用した。
(実施例品、比較例品)
リング部材11は、インコロイ909製で、最低肉厚0.7mm、有効保持部の長さLは表1に示すものを使用した。
セラミック素子2は、部分安定化ジルコニア製で幅4mm、厚さ1.3mmのものを使用した。
リード線8は、インコネル750製で、幅1.5mm、厚さ0.2mmほどのものを使用した。
絶縁板9は、短形板状のアルミナ製で、幅4mm、厚さは締め代が0.01mmに示す厚みに調整し、図1に示す圧入により接合した。なお、得られた接続装置は幾つか分解し有効締め代も0.01mmであることを確認した。試験結果を次の表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0003675640
【0030】
比較例1、2は、図4(イ)に示す状態のもので、L/t<0.23のものである。
実施例1〜7は、図4(ロ)に示す状態のもので、0.23≦L/t≦13のものである。
比較例3、4は、図4(ハ)に示す状態のもので、13<L/tのものである。 表1に示すように、熱疲労試験において、セラミック素子2の厚さtとリング部材11の有効保持部の長さLの関係が0.23≦L/t≦13の範囲内で、セラミック素子2の割れを防止することができる。なお、好ましい範囲としては、0.26≦L/t≦12.7ではセラミック素子2のヒビも生じなく良好である。
【0031】
〔実験例2〕
この実験例2では、セラミック素子2の厚さtを1.7mmとし、リング部材11の有効保持部の長さLを表2に示すものを使用したもので、その他は実験例1と同じ構造である。試験結果を次の表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0003675640
【0033】
セラミック素子2の厚さtを1.7mmと厚くしても、L/tは0.23≦L/t≦13の範囲内で、セラミック素子2の割れが有効に防止される。
【0034】
〔実験例3〕
この実験例3では、セラミック素子2の厚さtを2.0mmとし、リング部材11の有効保持部の長さLを表3に示すものを使用したもので、その他は実験例1と同じ構造である。試験結果を次の表3に示す。
【0035】
【表3】
Figure 0003675640
【0036】
セラミック素子2の厚さtを2.0mmと厚くしても、L/tは0.23≦L/t≦13の範囲内でセラミック素子2の割れが有効に防止される。
【0037】
図6、図7は本発明の他の実施例を示したものである。
図6に示すセラミック素子2の接続装置Bは、金属製のリング部材11の内側面に、特にリード線8の少なくとも外側面と対向する内側面に絶縁層19を設けたものである。これによりリード線8を絶縁する絶縁板の厚さが薄くなり、接続装置Bをコンパクト化することができ、耐衝撃性に優れる。
【0038】
図7に示すセラミック素子2の接続装置Cは、リング部材21を絶縁体(樹脂製、セラミック製)から形成したものである。これにより同様にコンパクト化され、図6の接続装置Bと同じ効果が得られる。
【0039】
〔実験例4〕
リング部材11をニッケルを主体とした超耐熱合金であるワスパロイ(商品名)を用い、最低肉厚を0.7mmとし、有効保持部の長さを表4に示すとおりとした試料を作成した。セラミック素子は部分安定化ジルコニア製で幅3mm、厚さ1.8mmのものを使用し、リード線8はインコネル750製で、幅1mm、厚さ約0.2mmのものを使用した。絶縁板9は矩形板状のアルミナ製であり、幅3mm、厚みは締め代が0.01mmになるように調製し、図1に示すように圧入により接合した。
この試料を実験例1と同一の条件で熱サイクル疲労試験を行った。その試験結果を表4に示す。
尚、試作した試料を分解して有効締め代を調査した結果、0.01mmであることが判った。
【0040】
【表4】
Figure 0003675640
【0041】
〔変形例〕
上記実施例では、リング部材11の形状を短形筒状に設けた例を示したが、図8に示すように外形形状を円形に設けたり、図9に示すように内外径が共に円形の円筒状にしたものなどの形状であっても良い。なお、内径が円形のリング部材11の場合は、絶縁板9の外形を円弧状に設けることができる。
【0042】
上記実施例では、セラミック素子2の一例として、酸素センサ1に用いられる酸素センサ素子を例に示したが、NOxセンサ素子、COセンサ素子、CO2 センサ素子など、他のセラミック製のガスセンサ素子に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミック素子の接続装置の組立図である。
【図2】セラミック素子の接続装置を示す要部拡大断面図である。
【図3】セラミック素子の接続装置を示す斜視図である。
【図4】実験に使用したセラミック素子の接続装置を示す概略図である。このうち、図4(イ)はL/t<0.23、図4(ロ)は0.23≦L/t≦13、図4(ハ)は13<L/tの状態を示す。
【図5】酸素センサの要部断面図である。
【図6】他の実施例のセラミック素子の接続装置を示す要部断面図である。
【図7】同じく他の実施例のセラミック素子の接続装置を示す要部断面図である。
【図8】リング部材の平面図である(変形例)。
【図9】リング部材の平面図である(変形例)。
【図10】従来のセラミック素子の接続装置の割れの状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
2 セラミック素子
7 電気的接続部(電極接続部)
8 リード線
9 絶縁板
10 結合体(実施例ではセラミック素子+リード線+絶縁板)
11 リング部材
11a 保持部
19 絶縁層
21 リング部材
L 有効保持部の長さ
t セラミック素子の厚さ

Claims (5)

  1. 電気的接続部を備えたセラミック素子、前記電気的接続部に接触し外部に導出するリード線を有する結合体と、
    前記結合体の外寸法である結合寸法より小さい内寸法である保持寸法を有し、前記結合体を外側から締まり嵌めで保持され、前記リード線を前記セラミック素子の前記電気的接続部に機械的に圧着された状態で接続するリング部材とを備えるセラミック素子の接続装置において、
    前記セラミック素子の厚さtと、前記リング部材の軸方向の有効保持部の長さLが、0.23≦L/t≦13の関係を満足することを特徴とするセラミック素子の接続装置。
  2. 前記結合体は、前記リード線の少なくとも外側面に絶縁板を介在してなる請求項1記載のセラミック素子の接続装置。
  3. 前記リング部材は、前記リード線の少なくとも外側面と対向する内側面に絶縁層を一体に形成してなる請求項1記載のセラミック素子の接続装置。
  4. 前記リング部材は絶縁体からなる請求項1記載のセラミック素子の接続装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れかに記載のセラミック素子の接続装置において、
    前記セラミック素子は酸素センサ素子、NOxセンサ素子、COセンサ素子、CO2 センサ素子などのセラミック製のガスセンサ素子であることを特徴とするセラミック素子の接続装置。
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