JP3675129B2 - ボールねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転運動を直線運動に変換するボールねじに係り、特に、高負荷用途に使用されるボールねじの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のボールねじにおいては、加工性,作動性,負荷容量などのバランスからねじ軸やボールナットに形成するボールねじ溝の形状について、初期接触角を45度程度、最大接触角65度程度とする仕様が通常であった。
【0003】
また、複数回路のボール循環路を有するボールねじにあっては、加工工程を少なくするため、例えば図7に示すようなチューブ循環方式の場合、各回路の循環チューブ50取付け位置を1平面に寄せる、つまり複数の循環チューブ50a,50b,50cの取付け位置を円周方向同位相位置で軸方向に配列させる設計が通常であった。なお、図7は、循環路が3回路のものを図示している。
【0004】
そして、ボールねじを設計する場合、大きめの安全率を設定し、使用条件に十分耐え得る軸径のボールねじを選定していた。このとき、ボールねじの軸径を大きくできない場合は、ボールナット51の回路数を増やしてボールの数を増やしたり、ボールねじ溝のリードを大きくしボール径を大きくしたりして対処していた。
【0005】
一方、従来においては、ボールねじ選定時の荷重条件の検討に際し、ねじ軸52とボールナット51との間を転動している各ボールには全て均等に荷重が掛かると仮定して、荷重をボールナット51内の有効ボール数で割った平均荷重で接触面圧を算出し、これと実験等により得られたボールねじの機能,寿命等のデータベースとを比較することにより、適切なボールねじを選定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際には、ねじ軸52とボールナット51との間を転動している,いわゆる有効ボールの全てに対し均等に荷重が掛かるのではなく、負荷を受けたときのねじ軸52及びボールナット51の弾性変形によって、ボールナット51内における軸方向の負荷分布にばらつきが生じる。例えば、ボールねじで支持される加工テーブルで重切削するときなどのように、当該ボールねじのボールナット51に軸方向のアキシアル荷重Faが、またねじ軸52にアキシアル荷重Fa’が図8に示すような方向に負荷された場合、ボールナット51及びねじ軸52の各ボールねじ溝51a,52a位置における軸方向に沿った弾性変位量の分布は、それぞれ上記図8に矢符号で表されるようになり、このねじ軸52の弾性変位量とボールナット51の弾性変位量とに応じて、ボールナット51の両端部のボールとの接触点に応力集中が起きることが分かる。
【0007】
また、各循環路のボールは、順次、ボールねじ溝51a,52aから循環チューブ50に掬い上げられてチューブ50内を通って循環するので、ボールナット51と対向するねじ軸52の軌道上にはボールがない部分が存在する。このため、円周方向にも負荷分布のばらつきが発生し、有効ボールの一部に高負荷が掛かることになる。即ち、ボールナット51内の各回路でのボールの循環は、図9に示すように表されるが、ボールねじ溝から循環チューブ50へのボール1の掬い上げにより、軸方向からみると、図10に示すような、円周方向でのβ角度の範囲部分のボール数が相対的に少なくなり、そのβ角度の範囲内のボールに加わる負荷が相対的に大きくなる。
【0008】
以上のような、ボールナット51の両端部のボールとの接触部位への応力集中及びボール循環路の特定範囲内のボールへの負荷増大という事実から、従来のボールねじにおいては、設計時の安全率が小さいと、ねじ軸52又はボールナット51の各ボールねじ溝51a,52a表面の早期剥離、または、異常摩耗を引き起こすという問題があった。
【0009】
また、高負荷用途では、安全率を大きくとると、ボールねじのサイズが大きくなって目的の仕様に合わなくなったりコスト高になってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、ボールねじの負荷分布のバラツキを均一化し、特定位置のボールに発生する応力集中を低減することにより、ボールねじのサイズを大きくせずにコンパクトで高い負荷容量を実現するボールねじを提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係るボールねじは、外面にボールねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を内面に有する少なくとも1つのボールナットと、該ボールナットのボールねじ溝と上記ねじ軸のボールねじ溝とにより形成された螺旋状通路と該螺旋状通路内を循環する多数のボールと、該多数のボールの戻り路とを備え、上記螺旋状通路とボールナットに設けたボールの戻り路とにより形成される循環路が3回路以上であるボールねじにおいて、
前記循環路のうち少なくとも2回路を円周方向に同一位相とし、残りの回路を他の回路に対して円周方向に180反転させたことを特徴としている。
【0012】
ここで、前記循環路は偶数の回路数であって、そのうちの半数の循環路は円周方向に同一位相とされ、残りの循環路は他の循環路に対して円周方向に180度反転させたものとすることができる。
【0013】
また、前記循環路は奇数の回路数であって、そのうちの(n/2)+0.5回路の循環路(但しnは循環路の回路数)は円周方向に同一位相とされ、残りの循環路は他の循環路に対して円周方向に180度反転させたものとすることができる。
【0014】
更に、請求項2に係るボールねじは、外面にボールねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を内面に有する少なくとも1つのボールナットと、該ボールナットのボールねじ溝と上記ねじ軸のボールねじ溝とにより形成された螺旋状通路と該螺旋状通路内を循環する多数のボールと、該1数のボールの戻り路とを備え、上記螺旋状通路とボールナットに設けたボールの戻り路とにより形成される循環路が3回路以上であるボールねじにおいて、
前記循環路のうち少なくとも2回路を円周方向に同一位相とし、残りの回路を他の回路に対して円周方向に180度反転させ、且つ全循環路のうち少なくとも1回路を他の回路に対して軸方向にオフセットさせたことを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、円周方向の負荷分布のばらつきについては、3回路以上の循環路のうちの少なくとも2回路を円周方向に同一位相とし、残りの回路を他の回路に対し円周方向に180度反転させることで、1回路の円周方向でのボールの少ない部分(負荷が大きい部分)と他の回路の円周方向でのボールの少ない部分(負荷が大きい部分)とが円周方向に180度反転する。この結果、円周方向におけるボールの少ない部分が分散平均化されて円周方向での負荷分布のバラツキが低減する。
【0016】
なお、各回路でのボールの少ない部分の範囲は、180度よりも小さい角度範囲に収まるので、180度反転することで、少なくとも2回路の円周方向でのボールの少ない部分と残りの回路の円周方向でのボールの少ない部分とが円周方向で重なることはない。
【0017】
また、軸方向の負荷のばらつきに対しては、循環路が3回路以上であるボールねじにおける全循環路のうち少なくとも1回路を、ボールナットに加わるアキシャル荷重の負荷方向に応じて軸方向にオフセットさせる。このようにオフセットさせることで、ボールナット側における当該オフセットさせたボールねじ溝回路内のボールに予圧が付与されることとなり当該ボールねじ溝の弾性変位量は、オフセットさせない場合に比べて大きくなる。そして当該オフセットさせた回路内のボールによる負荷分担量が増大し、且つオフセットしない状態で応力集中が生じるナット端部側の回路位置での負荷分担量が減少するから、ボールナットにおける軸方向の負荷分布が平均化されてばらつきが低減する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
まず構成について説明すると、図1に示すように、ねじ軸2の外周に複数のボールを介してボールナット3が螺合し、当該ねじ軸2又はボールナット3の一方が相対回転することで、ボールナット3がねじ軸2に対し直線移動をする。
【0019】
即ち、概略構成図である図2に示すように、ねじ軸2の外周面には、雌ねじ状のボールねじ溝2aが設けられ、また、ボールナット3の内周面にも、上記ねじ軸2のボールねじ溝2aと径方向で対向する位置に雌ねじ状のボールねじ溝9が設けられ、その両ボールねじ溝2a,9間に複数のボール1(図2では斜線で表している)が介装され、当該ボール1はボールねじ溝2aに沿って転動し且つ循環する。
【0020】
また、本実施の形態のボールねじは、3回路のボール循環路を有するチューブ方式のボールねじである。
即ち、上記ボールナット3のボールねじ溝9は、上記図2のように、軸方向に沿って3つの区画に分けられ、各区画におけるボールねじ溝9の両端部が、それぞれ戻り路を形成する循環チューブ5,6,7によって連結されることで、3回路のボール循環路が形成される。なお、説明の便宜上,図1及び図2における左側から第1回路X,第2回路Y,第3回路Zとする。
【0021】
但し、本実施の形態では、第1及び第3回路X,Zの循環チューブ5,7取付け位置に対し、上記図1に示すように、2回路目Yの循環チューブ6取付け位置を、円周方向180度反転した位置に設けている。
【0022】
また、第2回路Y目の循環路を、図2に示すように、第3回路Z側に数十μmだけ近づけるように軸方向にオフセットしている。即ち、ボールナット3における第1回路Xのボールねじ溝9aと第2回路Yのボールねじ溝9bとの間のリードLaを、各ボールねじ溝9a,9b,9cのリードLより数十μm(α)だけ多くする(La=L+α)と同時に、第2回路Yのボールねじ溝9bと第3回路Zのボールねじ溝9cとの間のリードLbを前記リードLより数十μm(α)だけ小さく設定(Lb=L−α)している。なお、当然にねじ軸2側のボールねじ溝2aのリードは等間隔である。
【0023】
ここで、ボールねじの負荷容量を大きくするには、ボール1の接触角の大きさ、ボールねじ溝2a,9の曲率半径をできる限り大きくしたいが、図4に示すように接触角を過大に大きくした状態で軸方向の負荷を掛けると、接触楕円Fの端部がボールねじ溝2a,9の溝端からはみ出して切れてしまう。接触楕円Fの一部が切れると負荷される応力が大きくなり、ボールねじの寿命が極端に悪くなる。このため、本実施の形態では、図3に示すように、初期接触角Dを50〜55度,最大接触角Eを75度としている。
【0024】
また、各ボール1については、ボールねじ溝9のリードLに対して、下式のような関係となるボール径Daのものを使用している。
0.7≦(Da/L)
因みに、従来においては、Da/Lを0.7以上に設定すると、循環チューブの外径が隣のボールねじ溝に干渉する可能性があるために、Da/Lを0.7未満に設定している。これに対して、本実施の形態では、ボールねじ溝からチューブへのボール1の掬い上げ部分の軸方向の角度を従来より大きい方向に変更することで、Da/Lを0.7以上に設定できるようにしている。
【0025】
次に、上記構成のボールねじの作用効果等について説明する。
第2回路Y目の循環路位置を第3回路Z側にオフセットすることで、第2回路Y部分のボールねじ溝9b内のボールに予圧が付与されることとなり、そのためボールナット3にアキシャル荷重Faが負荷されたときの当該ボールねじ溝9bの弾性変位量は、オフセットさせない場合に比べて大きくなりボールとの接触面積が増大する。そして当該オフセットさせた回路Y内のボールによる負荷分担量が増大し、且つオフセットしない状態で応力集中が生じるナット端部側の回路である第1回路X及び第3回路Zでの負荷分担量が減少するから、ボールナット3における軸方向の負荷分布が平均化されてばらつきが低減する。
【0026】
また、第1回路X及び第3回路Zの循環チューブ5及び7の取付け位置に対し、第2回路Yの循環チューブ6の取付け位置を円周方向180度反転させることで、円周方向における第1回路X及び第3回路Zでの有効ボール数が少ない部分と、第2回路Yでの有効ボール数が少ない部分とが円周方向で重なることが回避される。つまり、円周方向における無負荷圏(ボール1が存在しない部分)が分散することで、円周方向での各有効ボール1に対する負荷分布のバラツキが抑えられる。
【0027】
以上のように、有効ボール(ねじ軸2とボールナット3間を転動しているボール1)に対する軸方向及び円周方向の負荷分布が従来よりも均一化して、各有効ボールに対する負荷分布、さらにはそのボールに接触するねじ軸2とボールナット3の各ボールねじ溝2a,9に対する負荷分布が平均化し負荷容量が増大する。
【0028】
さらに、本実施の形態では、ボール1の初期接触角E及び最大接触角Fを従来よりも大きくすると共にDa/Lを0.7以上に設定することで、さらに負荷容量の増大が図られている。
【0029】
なお、上記実施の形態では、第1回路Xの循環チューブ5の取付け位置に対して、第2回路Yの循環チューブ6の取付け位置だけを180度反転しているが、第3回路Zの循環チューブ7の取付け位置も第1回路Xの循環チューブ5の取付け位置に対して180度反転させてもよい。また、第1回路Xと第2回路Yを円周方向に同一位相とし、第3回路Zのみを180度反転させてもよい。
【0030】
また、上記実施の形態では、ボールナット3へのアキシャル荷重Faが、第1回路X側に負荷される場合に、第2回路Yの循環路におけるボールねじ溝9bを第3回路Z側にオフセットさせた例で説明しているが、ボールナット3へのアキシャル荷重が、第3回路Z側に負荷されるような使用態様の場合は、第2回路Yの循環路におけるボールねじ溝9bを第1回路X側にオフセットさせる。
【0031】
また、本発明にあっては、このようにアキシャル荷重の負荷される方向に応じて、複数の循環路の一部を軸方向にオフセットさせることによりボールナットの軸方向弾性変位量のばらつきを平均化させて、ボールに対する軸方向負荷分布を平均化し全体としての負荷容量を増大させるという作用効果を得る代わりに、例えば、実施形態において第2回路Yに使用するボール1の径を、第1回路X及び第3回路Zで使用するボール1の径よりも相対的に大きくするというように、一部の循環路内に装填するボール径を変えることによっても、上述と同様な作用効果を得ることができる。即ち、第2回路Yのボール1の径を大きくすることで、第2回路Y部分のボールねじ溝9b内のボールに予圧が付与されることとなり、そのためボールナット3にアキシャル荷重Faが負荷されたときの当該ボールねじ溝9bの弾性変位量は、ボールの径を大きくしない場合に比べて大きくなりボールとの接触面積が増大する。そして当該ボールの径を大きくした回路Y内のボールによる負荷分担量が増大し、且つボールの径を大きくしない状態で応力集中が生じるナット端部側の回路である第1回路X及び第3回路Zでの負荷分担量が減少するから、ボールナット3における軸方向の負荷分布が平均化されてばらつきが低減する。これにより、当該第2回路Yのボール1が分担する軸方向荷重が従来よりも増大して上述同様の作用効果を発揮する。
【0032】
勿論、第2回路Yのボールねじ溝9を第1回路X又は第3回路Z側にオフセットさせると共に、第2回路Yのボール1の径を第1回路X及び第3回路Zのボール1の径よりも大きくするように設定してもよい。
【0033】
以上、上記実施の形態においては、循環路を180度反転することと、オフセットすることの両方を採用しているが、循環路を180度反転することだけでも負荷分布のバラツキが低減し、従来よりも負荷容量が増大する。
【0034】
【実施例】
上記構成の本発明に基づくボールねじと、3つの循環チューブ5,6,7取付け位置を円周方向同位相に設定すると共に第2回路Yの循環路をオフセットさせない従来と同じ仕様のボールねじ(比較例)とに対して、負荷分布の状態について解析してみたところ、図5及び図6のような結果が得られた。
【0035】
図5は、円周方向での負荷分布のばらつきを無視し軸方向のばらつきのみを考慮したときの有効ボール1に負荷される軸方向の荷重の分布を示したものであり、Aが本発明のボールねじのものであり、Bが比較例のボールねじのものである。この図5から分かるように、本発明に基づくボールねじでは、第2回路Yでの負荷が増大すると共に第1回路X及び第3回路Zでの負荷が減少して、軸方向の負荷分布が平均化している。
【0036】
また、図6は、軸方向のばらつき及び円周方向での負荷分布を考慮したときのボールねじ溝9に沿った各有効ボール1に負荷される軸方向の荷重を示したものであり、A(実線)が本発明のボールねじのものであり、B(破線)が比較例のボールねじのものである。この図6から分かるように、本発明に基づくボールねじの方がボールねじ溝9に沿った負荷の振幅が小さくなり、円周方向での負荷分布状態が平均化している。
【0037】
実際に、本発明に基づくボールねじAでは、外径寸法を変更することなく、比較例のボールねじBの負荷容量より20%程度も負荷容量が増大していることを確認した。
【0038】
なお、本発明を適用できるボールねじは、実施形態に示したようなチューブ循環方式のものに限らない。例えば、実公平5−35228号公報の第1図に記載されているようないわゆるデフレクタ循環方式(複数組のボール連通路を互いに連通するボール戻し溝を有してボールナットの外周部に取付けられるガイドプレートと、各ボール連通路の内方側に配設されてボールねじ軸及びボールナットのねじ溝間に介装されたボール群をボール連通路側へ順次導くボール掬上げ部材とで循環路が構成されている)のものにも適用できる。また、同公報の第15図に従来技術として記載されているガイドプレート循環方式(ボール連通路を互いに連通するボール戻し溝を有してボールナットの外周部に取付けられるガイドプレートに、前記ボール連通路内に嵌挿される案内片を突設し、この案内片の内面側に外側ボール案内面を形成し、該外側ボール案内面でボール戻し溝の両端と各ボール連通路との間での実質的なボールの方向転換を行うように構成されている。)のものに対しても適用可能である。
【0039】
また、上記実施形態では循環回路を第1(X),第2(Y),第3(Z)の3回路にしたボールねじについて説明したが、本発明のボールねじは3回路に限定されるものではなく、3回路以上の循環路を有するものにも適用できる。また、一個のボールナットに3回路以上設けたものに限らず、後述のダブルナットタイプのように2個以上のボールナットを使用して全ナットで合計3回路以上の循環路としたものでもよい。
【0040】
また、実施形態ではボールナットの数が一個のいわゆるシングルナットタイプのものについて述べたが、その他、例えば図11に示す2個のボールナット3A,3Bを使用したいわゆるダブルナットタイプあるいは2個以上のボールナットを使用したものにも適用可能である。こうしたマルチナットタイプの場合、例えば図11に示すダブルナットタイプの場合で説明すると、2個のボールナット3A,3Bのうちの1個(例えば3A)を180度反転させてもよいし、各ボールナット3A,3Bに設けられたそれぞれ2回路10,11及び12,13の循環路のうちの1回路づつ(例えば回路10と回路12)を180度反転させてもよい。更に、オフセットについては、1個のボールナット内の回路をオフセットするのではなく、2個のボールナット3A,3Bの間に間座14を介装して各ボールナットに設けられたそれぞれの回路(例えば回路10,11の組と回路12,13の組)をオフセットしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明のボールねじを採用すると、簡単な手段によって、ねじ軸とボールナットとの間を転動している複数のボールに対する負荷分布が平均化し、つまり一部のボールに発生する集中荷重が小さくなる。従って、ボールねじの外径を大きくすることなく、従来よりも負荷容量が大きくなるという効果がある。
【0042】
即ち、ボールねじのサイズを大きくすることなく負荷容量が増大して、対応可能な高負荷用途(例えば,射出成形機、モールディング,パワーシリンダ)の幅が大きくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るボールねじを示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るボールねじの構成を説明するための概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るボールねじ溝の形状を示す断面図である。
【図4】接触角と接触楕円との関係を示す図である。
【図5】本発明の循環路のオフセット効果を、円周方向の負荷分布のばらつきを無視した軸方向の荷重の分布の比較で表した図である。
【図6】本発明の循環路の反転効果を、軸方向のばらつき及び円周方向の負荷分布のばらつきを考慮した軸方向の荷重の分布の比較で表した図である。
【図7】従来のボールねじを示す図である。
【図8】軸方向の負荷のばらつきの原因となる弾性変位量を示す図である。
【図9】一循環路でのボールの循環を表した図である。
【図10】円周方向におけるボールの少ない部分を示す、軸方向からみた図9でのX−X矢視図である。
【図11】本発明をダブルナットタイプのボールねじに適用した場合を説明する平面図である。
【符号の説明】
X 第1回路
Y 第2回路
Z 第3回路
1 ボール
2 ねじ軸
2a ボールねじ溝(ねじ軸の)
3 ボールナット
5 第1回路の循環路
6 第2回路の循環路
7 第3回路の循環路
9 ボールねじ溝(ボールナットの)
9a 第1回路のボールねじ溝
9b 第2回路のボールねじ溝
9c 第3回路のボールねじ溝
Claims (2)
- 外面にボールねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を内面に有する少なくとも1つのボールナットと、該ボールナットのボールねじ溝と上記ねじ軸のボールねじ溝とにより形成された螺旋状通路と該螺旋状通路内を循環する多数のボールと、該多数のボールの戻り路とを備え、上記螺旋状通路とボールナットに設けたボールの戻り路とにより形成される循環路が3回路以上であるボールねじにおいて、
前記循環路のうち少なくとも2回路を円周方向に同一位相とし、残りの回路を他の回路に対して円周方向に180度反転させたことを特徴とするボールねじ。 - 外面にボールねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を内面に有する少なくとも1つのボールナットと、該ボールナットのボールねじ溝と上記ねじ軸のボールねじ溝とにより形成された螺旋状通路と該螺旋状通路内を循環する多数のボールと、該多数のボールの戻り路とを備え、上記螺旋状通路とボールナットに設けたボールの戻り路とにより形成される循環路が3回路以上であるボールねじにおいて、
前記循環路のうち少なくとも2回路を円周方向に同一位相とし、残りの回路を他の回路に対して円周方向に180度反転させ、且つ全循環路のうち少なくとも1回路を他の回路に対して軸方向にオフセットさせたことを特徴とするボールねじ。
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