JP3674739B2 - インサイドディスク、それを用いた遠心分離器および分離方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は液体中に分散された液体より比重の小さい固形物や他の液体をローター内にインサイドディスクを設けた遠心沈降型の遠心分離器を用いて分離する装置および方法に関し、特に運転中の振動や機械的トラブルが少なく、脱着が容易で、安価なインサイドディスク、およびそれを用いた軽量成分の除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
沈降型の遠心分離器のローター内部にインサイドディスクを設置して液体中に分散された液体より比重の小さい固形物や他の液体を除去する方法は広く知られており、水や油の中の樹脂ゴミやスラッジの除去、油水分離などに用いられている。これらのインサイドディスクはローターと同時に高速回転するため、バランス精度が高く作成され、強固にローターに固定されている。そのため、インサイドディスクの取り外しや取付けはローターごと交換するか、ローターを分解して行う必要があり、必要に応じて直ちに行えるものではなかった。特にバスケット型ローターにおいては構造が簡単なためいろいろな分野で広く用いられているが、インサイドディスクがローター内に固定されていることが多く、内容物の取り出しやローター内部の掃除等に手間がかかることが多かった。これを改良するために、ローター開口部から容易に出し入れできる可撓性のインサイドディスクを用いる方法が提案されているが、この場合は開口部にフックでインサイドディスクを取り付けるため、回転中にフックが外れたり、取付け時の不良から回転中の振動が大きくなったりする問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の従来方法における種々の問題点を解決するものであり、遠心分離器により軽量成分を除去するためのインサイドディスクおよび方法を開発することを課題としたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意、研究、検討した結果、特定の比重のインサイドディスクを用いることにより、インサイドディスクを強固に固定していなくても運転中の振動を少なくすることができ、その結果、機械的トラブルが少なく脱着が容易で、インサイドディスクおよび遠心分離器を安価に作成できることを見いだし、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、遠心沈降型の遠心分離器のローター内に軽量成分を分離するためのインサイドディスクを設けた遠心分離器において、インサイドディスクの比重(n)が下記式(1)を満足し、かつローターに固定されていないことを特徴とする遠心分離器である。
n<ma2/(a2−b2) (1)
(式(1)において、mは分離する液の比重、aはインサイドディスクの外径、bはインサイドディスクの内径を示す。)
【0005】
本発明のインサイドディスクが用いられる遠心分離器は、無孔壁の回転体(ローター)を用いて、高速回転により円周部にかかる加速度を重力加速度よりはるかに大きくして、分散粒子の分散液との比重差により生じる沈降や浮上の速度を上げてやる遠心沈降型の遠心分離器であり、バスケット型やチューブラー型や分離板型やデカンター型、等各種のものに好ましく用いられる。特に、本発明のインサイドディスクは回分式の内部構造の簡単なバスケット型に用いることにより、取付け、取り外しが容易、装置が安価、メンテナンスがやり易いといった特徴を最大に活かすことができる。
【0006】
まず、インサイドディスクを用いた遠心分離器による一般的な軽量成分の分離方法について説明する。 被処理液中に分散している軽量成分は遠心分離により径方向の内側に浮上するが、これが液と一緒にローター外へ排出されないようするためには、一般に、遠心分離器のローター内の処理液出口付近に軽量成分をせき止めるためのインサイドディスクと称される円盤または円環状の堰を設置する。このインサイドディスクは回転処理中の処理液の径方向の液面レベルより外径が大きく、かつ円環状の場合はこの液面レベルより内径が小さい。これにより、回転処理時に半径の内周方向に浮上し集まってきた軽量成分はインサイドディスクにさえぎられ内部に捕捉され、処理液はインサイドディスクの外側より通過し出口部からリムを越えてオーバーフローするか、またはスキミングチューブによりローター内から排出される。
【0007】
本発明のインサイドディスクは、被分離液の比重をm、インサイドディスクの外径をa、インサイドディスクの内径をbとした場合、その比重(n)が下記式(1)を満足することが最大の特徴である。
n<ma2/(a2−b2) (1)
(式(1)において、mは分離する液の比重、aはインサイドディスクの外径、bはインサイドディスクの内径を示す。)
なお、通常インサイドディスクは完全な円である外周を持った円盤状や完全な円である外周と内周を持った円環状であることが多いが、このように完全な外周や内周を持たない場合、aは回転中心から外周部までの最長部分の距離を、bは回転中心から内周部までの最短部分の距離を表す。また、インサイドディスクが円盤状である場合はbは0である。
【0008】
本発明において、インサイドディスクの比重が前記式(1)を満足する場合、遠心分離器の回転中にインサイドディスクは自動的に回転中心のバランスを取り、所定の位置に回転しながら静止しようとする性質を持つ。そのため、本発明のインサイドディスクは強固にローター部に固定する必要がなく、軽く留めておくだけでもインサイドディスクがずれたり外れたりすることがなく、振動の少ない安定した運転が可能である。また場合によってはインサイドディスクをローターに留める必要がなく、インサイドディスクを全く固定しない状態で運転した場合でも回転中にインサイドディスクが所定の位置に回転しながら静止し、インサイドディスクとしての効果を発揮させることができる。
【0009】
本発明のインサイドディスクはインサイドディスク全体としてのみかけの比重が式(1)を満足すれば良く、比重の大きい物質の層と比重の小さい物質の層を積層させた構造や、インサイドディスクの内周部分と外周部分で比重の異なる物質を組み合わせた構造や、比重の大きな物質からなるインサイドディスクに部分的に比重の小さな物質を付けた構造や、比重の小さな物質からなるインサイドディスクに部分的に比重の大きな物質を付けた構造や、比重の大きな物質からなるインサイドディスクであっても内部を空洞にする等、自由な構造をとることができる。しかしながら加工の簡便さの面から考えると、単一の材質であって比重が式(1)を満足する物質を使うことが望ましい。このような材質としては、金属、セラミック、樹脂、木材、紙、これらの複合体等、インサイドディスクとして加工できるものなら特に限定されるものではない。
【0010】
また、バスケット型遠心分離器を用い、バスケット型ローターやそのリム部を取り外すことなくインサイドディスクの取り外しできるようにするためには、インサイドディスクは可撓性のあるものが好ましく、金属の薄板や樹脂板が望ましい。具体的には金属の薄板としては銅、アルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛、ブリキ、真鍮等の薄板、樹脂板としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリレート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリオキシメチレン、フェノール樹脂類、メラミン樹脂類、ポリカーボネート、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類、セルロイド、テトラフルオロエチレン(PFTE)などの含フッ素樹脂、シリコン樹脂、エチレンプロピレン共重合体やエチレン酢酸ビニル共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体といった共重合体樹脂、ポリアクリロニトリル−ポリブタジエン−ポリスチレン(ABS)樹脂といったブレンド系樹脂、これら各樹脂の繊維や粉体での強化体といった各種の汎用樹脂が用いられる。
【0011】
本発明で用いられるインサイドディスクの厚みは捕捉して軽量成分を保持でき、かつ可撓性を持つ厚みであることが望ましく、インサイドディスクの材質、大きさによって異なるが、0.01mm以上20mm以下であることが望ましい。またインサイドディスクの形状としては円盤状や円環状の任意の形状をとることができ、インサイドディスクを固定するための突起部や穴、液をローター内からインサイドディスクとローターリム部の間を通すためのスペーサー、等が必要に応じて設けられる。また、ローター側に突起や穴、スペーサーを設け、インサイドディスクは平滑な円盤や円環形状でもかまわない。
【0012】
このようなインサイドディスクを備えた遠心分離器は、水や油の中の樹脂ゴミやスラッジの除去、油水分離などに広く用いることができ、特に感光性樹脂を光で硬化させ、未硬化部分を水系の現像液中に分散させることで現像を行う水現像性の感光性樹脂版の現像液中の分散された樹脂成分の除去に好適に用いることができる。なお、水現像性の感光性樹脂版の現像液中の分散された樹脂成分の除去方法に関しては特開平4−18563号公報記載の方法と同様の方法で行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明遠心分離器の好ましい一実施態様例を図面を用いて具体的に説明する。図1および図2は本発明遠心分離器に用いられるインサイドディスクの一実施態様例のそれぞれの平面図および側面図であり、図3は図1で示したインサイドディスクを装着した遠心分離器の運転中の状態を示す側面図である。図3において、遠心分離器の無孔壁のバスケット型ローター1内にインサイドディスク2が設けられており、まずローター1を回転させ、樹脂分散廃液等の軽量成分を含有した液体(以下便宜上廃液という)を供給ライン4を通ってローター1内に供給し、ローター1内が廃液で満杯になりリム部10からオーバーフローし始めると、インサイドディスク2は回転しながらリム部10出口付近に静止する。次に前記液体より比重の小さい軽量成分は発生する加速度により径方向内側に集まる。現像液はインサイドディスク2の外側からリム部に取り付けられたスペーサー3によって形成されるインサイドディスク2とリム部10の間を通ってローター上部のリムからオーバーフローし、集まった軽量成分はインサイドディスク2に遮られ、内部に保持される。ローター1内部にいっぱいに軽量成分である固形物が貯まると廃液の供給および回転を止め、インサイドディスク2を取り外して、捕捉した固形物を除去する。この場合もインサイドディスク2は固定されておらず、かつ可撓性であるため容易にローター内から取り出すことができる。なお図2における突起物は図3におけるスペーサー3と同様の役割を果たすことができる。
【0014】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜9、比較例1、2
図1で示す形状で、表1に示す各種の材質、大きさのインサイドディスクを装着した図3で示される遠心分離器を用いて、東洋紡績株式会社製の感光性樹脂版(商品名コスモライトCLH)を0.5%ラウリン酸ナトリウム水溶液(比重1.0)で現像した樹脂分散廃液(樹脂濃度1%)をそれぞれ処理した。なお、遠心分離器のローターは直径200mm、深さ140mm、リムの開口径120mmで、リム内側に高さ3mmのスペーサーが4カ所取り付けてあるのものを使用した。遠心分離器の回転数は3000rpmであった。
その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
表1において、○は全く問題なく軽量成分(分散樹脂)の分離除去が行われたことを、また×はインサイドディスクが回転中に所定位置に静止せず、分離できなかったことを示す。
【0016】
【発明の効果】
実施例からも明らかであるように、本発明のインサイドディスクは取り付け、取り外しが容易であり、ローター内の内容物の除去やローターの掃除がやりやすい。また、運転中の振動も少なく、インサイドディスクをローターに固定していなくても外れることなくインサイドディスクとしての効果を発揮することができ、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明インサイドディスクの一実施態様例の平面図および側面図
【図2】本発明インサイドディスクの一実施態様例の平面図および側面図
【図3】本発明インサイドディスクを設けた遠心分離器の一実施形態例の側面図
【符号の説明】
1:バスケット型ローター
2:インサイドディスク
3:スペーサー
4:供給ライン
5:遠心分離器ケース
6:ローター回転用モーター
7:取り出し口
8:軽量成分(比重の小さい分散樹脂)
9:廃液
10:リム部
Claims (2)
- 遠心沈降型の遠心分離器のローター内に軽量成分を分離するためのインサイドディスクを設けた遠心分離器において、インサイドディスクの比重(n)が下記式(1)を満足し、かつローターに固定されていないことを特徴とする遠心分離器。
n<ma2/(a2−b2) (1)
(式(1)において、mは分離する液の比重、aはインサイドディスクの外径、bはインサイドディスクの内径を示す。) - 軽量成分を分離する方法において、請求項1記載の遠心分離器を用いることを特徴とする分離方法。
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JP20617297A JP3674739B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | インサイドディスク、それを用いた遠心分離器および分離方法 |
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JP20617297A JP3674739B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | インサイドディスク、それを用いた遠心分離器および分離方法 |
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