JP3674302B2 - 不織布および土木資材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸長性、生産性に優れた不織布および土木資材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より伸長性が向上した不織布として様々なものが提案されている。たとえばハップ材の基材等の医療・衛生材料には伸長性が優れた不織布が開発されている。これらの不織布には、ポリウレタン等からなる弾性繊維等の残留伸度の高い繊維を用いるものと、スパイラル捲縮等の捲縮を発現する捲縮繊維を使用する場合がある。しかしいずれの場合も、ポリウレタンのように原料が高価であったり、捲縮を発現させるための熱処理が必要であったりして、スパンボンド法に代表される通常の不織布製造方法よりコストもかかり、生産性も低い。さらに重要なことは、もっとも生産性に優れるスパンボンド法においても、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す。)の紡糸速度は、5000〜6000m/分程度であり、さらなる紡糸速度の高速化による生産性向上を図ろうとしても、不織布の伸長性に寄与する構成繊維の伸度を大きく減少させてしまうという問題点があった。
【0003】
一方、PETの高速紡糸化のため、特開昭56−91013号公報や特開平8−246247号公報に、ポリエステル繊維に、ポリスチレン系ポリマのような非相溶ポリマを配合することにより、残留伸度の大きな繊維を得て、さらに紡糸速度を向上させることが報告されている。
【0004】
しかしながら、不織布として高伸長性と生産性を両立したものはいまだ得られていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高伸長性と生産性を両立した、すなわち、特殊な弾性繊維や捲縮繊維を使用することなく伸長性に優れ、かつ、生産性にも優れた不織布および土木資材を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、つぎのような手段を採用する。すなわち、本発明の不織布は、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、アクリレート−スチレン共重合系ポリマおよびメチルペンテン系ポリマから選ばれた少なくとも1種の複合成分を、0.1〜15重量%含有するポリエステル複合繊維を含む不織布であって、該複合繊維が紡糸速度4000〜9000m/分で紡糸された繊維であり、かつ、引張試験機において試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で測定したときの該複合繊維の伸度が80%以上、JIS L−1906に基づいて測定したときの該不織布伸度が縦(MD)、横(CD)とも70%以上であることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、高伸長性と生産性を両立する不織布を提供するために、鋭意検討したところ、特定なポリマを複合成分としてなるポリエステル複合繊維で不織布を構成したところ、前記課題を一挙に解決する不織布を提供することができることを究明したものである。
【0008】
本発明のポリエステル複合繊維の複合成分としては、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、アクリレート−スチレン共重合系ポリマおよびメチルペンテン系ポリマから選ばれた少なくとも1種を用いることが必要である。これらのポリマは特開平8−246247に開示されているように伸長粘度の温度依存性がポリエステルより高いポリマであり、これらのポリマを含むポリエステル繊維は、分子配向が抑制されるため、紡糸速度が6000m/分を越えてもポリエステル複合繊維の伸度は、引張試験機において試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で測定したときの該複合繊維の伸度として、80%を越えるものが得られる。かかる伸度が80%未満であると、それによって構成される不織布の伸度が十分に得られないため、本発明の高伸長性の不織布を得るためには、ポリエステル複合繊維の伸度が80%以上であることが重要である。ここで複合成分の配合量は0.1〜15重量%であることが重要であり、好ましくは0.1〜10重量%であることが望ましい。0.1重量%未満では複合成分による分子配向抑制効果が小さすぎ、繊維の伸度増加がみられない。一方15重量%を越える場合は、ポリエステル繊維としての力学的性質が低下する問題が発生するばかりか、紡糸時の断糸が多発する問題が発生する。
【0009】
複合成分としては、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、アクリレート−スチレン共重合系ポリマおよびメチルペンテン系ポリマから選ばれた少なくとも1種を用いることが必要であるが、コストや入手しやすさおよび紡糸性の点からホリスチレン、ポリメチルメタクリレートおよびポリ(4−メチル−1ペンテン)が好ましい。また複合成分のポリマとして上記ポリマにポリエステルをブレンド等の手段で含ませる場合は、複合成分がポリエステルと1:9〜9:1の重量比率でブレンドされれば、ポリエステル全体に上記ポリマをブレンドする場合よりも、ブレンド比率が大きくブレンド斑が起きにくいので好ましい。
【0010】
一方、複合繊維の形態としては、ブレンド型複合繊維、バイメタル型複合繊維、同心円型複合繊維、多芯型複合繊維、海島型複合繊維、および偏芯芯鞘型複合繊維から選ばれた少なくとも1種の構造であることが好ましく、さらに言えば該複合繊維が最外側膜としてポリエステル皮膜を有することが好ましい。なぜならばポリエステル皮膜が最外層に存在すれば、紡糸性が安定する傾向だからである。
【0011】
また該複合繊維が80%以上の伸度であり、かつ繊維の機械的特性を得るためには紡糸速度は4000m/分以上であり、好ましくは6000m/分以上である。また9000m/分を越えると伸度80%以上の繊維が得にくくなるので好ましくない。
【0012】
ここでポリエステルとしては、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を好ましく使用することができるが、PETが最も好ましく用いられる。
【0013】
ところで、本発明の不織布は、溶融紡糸で得られた繊維を、長繊維あるいは短繊維の形態でウェブを製造できるが、一般的には生産性に優れたスパンボンド法でウェブが形成される。得られたウェブは熱接着や交絡処理によりシート化させるが、該複合繊維は、熱により接着しやすいため、該複合繊維の伸長性を不織布の伸長性に活かすには交絡処理することが好ましい。交絡処理の方法としては、ウォータージェットパンチ処理およびニードルパンチ処理が一般的であり、生産性にも優れるので好ましい。
【0014】
また該不織布が該複合繊維以外に、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフェニルスルホン系繊維及びアラミド系繊維から選ばれた少なくとも1種を含んでいる場合でも、該複合繊維の特徴である高伸長性が活かされ、他繊維と不織布にスムーズに一体化されるため、他繊維の特徴を減じない。
【0015】
さらに、補強繊維構造物を含む場合においても、補強繊維構造物によるシート全体の強力向上と、該複合繊維が構成する不織布の局部的な伸長性、変形しやすさとの両立が可能である。ここで言う補強繊維構造物としては、織物あるいは編物が汎用性があり好ましい。
【0016】
本発明の不織布はJIS L−1906に基づいて測定した場合の伸度が縦(MD)、横(CD)とも70%以上である本発明の複合繊維からなる不織布では不織布の伸度が70%以上は容易に達成できるが、不織布内の複合繊維の含有量が極端に少なかったり、補強繊維構造物の伸度が70%未満であると、本発明の不織布の特徴である高伸長性が得られないので、不織布の伸度70%以上となるように、複合繊維以外の繊維や、補強繊維構造物を選択することが好ましい。
【0017】
本発明の不織布は、その高伸長性を活かして様々な用途に展開が可能であるが特に好ましい例として土木資材が上げられる。土木資材は凹凸のある地盤に適応したり、地盤の沈下や陥没にも適応しなければならないため、高伸長性が要求される。したがって本発明の不織布は土木資材に非常に適した特性を持つといえる。
【0018】
また、本発明の不織布のJIS L−1906に基づいて測定した場合の伸度が150%を越えると、土木資材として必要な補強効果が十分でなくなるため、不織布の伸度が70〜150%であることが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0020】
A.繊維の伸度
引張試験機において試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で伸長曲線を求め、伸びを試料長で割り伸度とした。
【0021】
B.不織布の伸度
JIS1906に準じ、引張試験機で試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で伸長曲線を求め、伸びを試料長で割り伸度とした。
【0022】
実施例1
極限粘度0.63のPETとポリスチレン(旭化成社製スタイロン685)を別々に溶融し、濾過系15μのステンレス製不織布フィルターにより濾過した後、ポリスチレンを芯、PETを鞘の同心円上の芯鞘複合にして芯成分が5重量%となるように複合繊維を溶融紡糸し、公知のスパンボンド法により、エジェクターで紡糸速度6000m/分で高速牽引し、単糸繊度3dの繊維を得て、走行するネット上に、噴射、開繊された繊維を捕集し、目付100g/m2 のウェブを得た後、温度150度のカレンダーロールでウェブを仮接着し、仮接着シートを得た。この際紡糸された繊維の伸度は130%であった。次に仮接着シートを、ナインバーブの針で、針深度10mm、パンチ密度80本の条件でニードルパンチ加工を行い、目付100g/m2 のニードルパンチシートを得た。ニードルパンチシートの伸度を測定した結果、表1に示すように伸度は縦(MD)100%で横(CD)が120%であり、伸長性に優れるものであった。得られた不織布は地盤の凹凸などの変化に適応しやすい土木資材として最適のものであった。
【0023】
実施例2
ポリスチレンをポリメチルメタクリレート(住友化学工業社製スミペックスLG)とした以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造した。繊維の伸度および不織布の伸度は表1に示すとおり、ポリスチレンの場合と同様に良好な伸長性を示した。
【0024】
実施例3
複合繊維の芯成分にPSTとPETを1対1の割合でブレンドし、芯成分が10重量%の複合繊維とした以外は、実施例1と同様の条件で不織布を製造した。繊維の伸度および不織布の伸度は表1に示すとおり、良好な伸長性を示した。
【0025】
実施例4
PETにポリスチレンを5重量%ブレンドしてブレンド型複合繊維とした以外は、実施例1と同様の条件で不織布を製造した。繊維および不織布の伸度は表1に示すとおり良好であったが、実施例1の芯鞘型複合繊維に比べ糸切れが多い傾向であった。
【0026】
実施例5
不織布の絡合処理をウォータージェットパンチで行った以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造した。ウォータージェットパンチはノズル径0.2mm、ノズルピッチ0.8mm、ライン速度10m/分で水圧30kg/cm2 、50kg/cm2 、70kg/cm2 、100kg/cm2 の条件で順次処理して不織布を得た。
【0027】
繊維および不織布の伸度は表1に示すとおり良好であった。
【0028】
実施例6
目付が50g/m2 である他は実施例1と同様にして得られたウェブとPET単独で目付50g/m2 である他は実施例1と同様にして得られたウェブを積層して実施例1と同様の条件でニードルパンチを行い不織布を得た。不織布の伸度は表1に示すとおり、実施例1の場合よりも劣るが十分な伸長性を示した。
【0029】
実施例7
ポリウレタン弾性繊維からなる織物をニードルパンチ加工時に積層した他は実施例1と同様の条件で不織布を製造した。不織布の伸度は表1に示すとおり良好であった。
【0030】
比較例1
PSTとPETの複合繊維ではなく、PET単独とした以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造した。繊維の伸度および不織布の伸度は表1に示すとおり、実施例1のレベルを大きく下回るものであり、土木資材としても地盤への適応性が優れているとは言えないレベルのものであった。
【0031】
比較例2
PSTの複合率を20重量%とした以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造したが、糸切れが多く紡糸不能であった。
【0032】
比較例3
紡糸速度10000m/分である以外は実施例1と同様の条件で不織布を製造した。繊維の伸度および不織布の伸度は表1に示すとおり、実施例1のレベルを大きく下回るものであり、土木資材としても地盤への適応性が優れているとは言えないレベルのものであった。
【0033】
【表1】
Figure 0003674302
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、高伸長性に優れた不織布提供することができ、かつ紡糸速度を低下させずに生産できる上に、この不織布を使用することにより地盤適応性に優れた土木資材を提供することができる。

Claims (14)

  1. ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、アクリレート−スチレン共重合系ポリマおよびメチルペンテン系ポリマから選ばれた少なくとも1種の複合成分を、0.1〜15重量%含有するポリエステル複合繊維を含む不織布であって、該複合繊維が紡糸速度4000〜9000m/分で紡糸された繊維であり、かつ、引張試験機において試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で測定したときの該複合繊維の伸度が80%以上、JIS L−1906に基づいて測定したときの該不織布伸度が縦(MD)、横(CD)とも70%以上であることを特徴とする不織布。
  2. 該複合成分が、リスチレン、ポリメチルメタクリレートおよびポリ(4−メチル−1ペンテン)から選ばれた少なくとも1種を含むポリマである請求項1記載の不織布。
  3. 該ポリエステル複合繊維が、該複合成分を0.1〜10重量%含むものである請求項1または2記載の不織布。
  4. 該複合成分が、ポリエステルと1:9〜9:1の重量比率でブレンドされたものである請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
  5. 該複合繊維が、ブレンド型複合繊維、バイメタル型複合繊維、同心円型複合繊維、多芯型複合繊維、海島型複合繊維および偏芯芯鞘型複合繊維から選ばれた少なくとも1種の構造からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の不織布。
  6. 該複合繊維が、最外側膜としてポリエステルの被膜を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の不織布。
  7. 該ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである請求項1〜のいずれかに記載の不織布。
  8. 該不織布が、交絡処理されたものである請求項1〜のいずれかに記載の不織布。
  9. 該交絡処理が、ウォータージェットパンチ処理およびニードルパンチ処理の少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載の不織布。
  10. 該不織布が、該複合繊維以外に、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフェニルスルホン系繊維およびアラミド系繊維から選ばれた少なくとも1種を含むものである請求項1〜のいずれかに記載の不織布。
  11. 該不織布が、補強繊維構造物を含むものである請求項1〜10のいずれかに記載の不織布。
  12. 該補強繊維構造物が、織物または編物である請求項11記載の不織布。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の不織布で構成されていることを特徴とする土木資材。
  14. 該不織布が、JIS L−1906に基づいて測定したときの伸度が70〜150の範囲にあるものである請求項13記載の土木資材。
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