JP3673947B2 - 微小可動デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は基板と対向された可動板が基板面に対して垂直方向に変位する構造とされた微小可動デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
図7はこの種の微小可動デバイスの一例として、光スイッチの従来構造例を示したものであり、この光スイッチは互いに平行かつ逆向きに入射する2つの入射光の光路切り替えを行う2×2光スイッチとなっている。
方形状をなす可動板11は4本の支持ビーム12によって支持されており、これら支持ビーム12は方形枠状をなす枠体13の対向2辺上に設けられた一対のアンカー14の各両端部からそれぞれ導出され、可動板11の2辺にそれぞれ沿うように延伸されて可動板11の4つの角部に連結されている。
【0003】
枠体13の下面側には基板15が配置され、基板15はその上面に形成された凸部15aが枠体13の枠内に嵌め込まれて枠体13に接合されている。
可動板11は基板15と所定の間隙を介して平行対向され、4本の支持ビーム12により基板面15bに対して垂直方向に変位可能とされており、この可動板11上に4つのマイクロミラー16が搭載されている。
上記のような構造を有する光スイッチは可動板11及び基板15がそれぞれ可動電極及び固定電極とされ、これら可動板11と基板15との間に電圧を印加することにより、静電力によって可動板11が基板15側に駆動変位され、これによりマイクロミラー16を可動板11の板面に対して垂直方向に変位させることができるため、可動板11の板面と平行方向から入射する入射光の光路切り替えを行うことができるものとなっている。
【0004】
図8はこの様子を示したものであり、可動板11が図7Bに示した定常状態の位置に位置している時には、入射光21,22は図8Aに示したように、それぞれ2つのマイクロミラー16によって反射されて進み、可動板11が静電駆動され、マイクロミラー16が変位して光路から外れた状態では、図8Bに示したように入射光21,22はマイクロミラー16によって反射されることなく、そのまま直進するものとなる。
図9及び図10はこの光スイッチの作製方法(作製工程)を示したものであり、この例では光スイッチは2枚の単結晶シリコン基板を使用し、フォトリソグラフィやエッチングといったマイクロマシニング技術を使用して作製される。まず、上側に位置される単結晶シリコン基板に対する工程を図9を参照して説明する。
(1) 単結晶シリコン基板31の上面に、二酸化シリコン膜32及びポリシリコン膜33を順次成膜する。
(2) ポリシリコン膜33をエッチングし、可動板11、支持ビーム12及びアンカー14を形成する。
(3) 上下全面に二酸化シリコン膜34,35を成膜する。
(4) 下面側の二酸化シリコン膜35を周囲(枠形状)を残してエッチング除去する。
(5) 感光性樹脂によってマイクロミラーの基体を形成し、金薄膜でコーティングしてマイクロミラー16を形成する。
(6) 二酸化シリコン膜35をマスクとして、水酸化カリウム溶液により単結晶シリコン基板31をエッチングし、枠体13を形成する。
(7) 二酸化シリコン膜32,34,35をエッチング除去する。
これにより、枠体13上にアンカー14、支持ビーム12を介して支持された可動板11及び可動板11上に搭載されたマイクロミラー16が完成する。
【0005】
次に、下側に位置される単結晶シリコン基板に対する工程を図10を参照して説明する。
(1) 単結晶シリコン基板41の上面に、二酸化シリコン膜42を成膜する。
(2) 形成する凸部15a以外の部分の二酸化シリコン膜42をエッチング除去する。
(3) 二酸化シリコン膜42をマスクとして、水酸化カリウム溶液により単結晶シリコン基板41をエッチングする。
(4) 二酸化シリコン膜42をエッチング除去する。
(5) 上面に二酸化シリコン膜43を成膜する。
これにより、上面に凸部15aを有する基板15が完成し、この基板15の凸部15aを枠体13の枠内に下側から嵌め込み、基板15と枠体13とを接合することによって光スイッチが完成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した光スイッチのように、支持ビームに支持された可動板が支持ビームの弾性力に抗し、基板面に対して垂直方向に変位する構造とされた微小可動デバイスにおいては、変位した可動板は支持ビームの弾性復元力によって元の(定常状態の)位置に復帰する構造となっているものの、微細かつ厚さが極めて薄い支持ビームによっては大きな弾性復元力を得ることはできず、よって以下のような問題が生じうるものとなっていた。
【0007】
即ち、可動板及び基板は互いの対向面が平滑であり、可動板が基板側に変位して基板面に接触すると、ファン・デル・ワールス力による恒久的な貼り付き(吸着)が発生し、支持ビームの弾性復元力だけではこの貼り付きを解除することができず、可動板が基板に貼り付いたままとなって、以後の動作が不能になるといった問題が発生する。
さらに、可動板及び基板がそれぞれ可動電極及び固定電極とされ、可動板が静電駆動される構造では、可動板と基板とが接触した際の、それらの導通を回避するために、図7Bにおける基板15の二酸化シリコン膜43のように、可動板と基板の対向面の一方に絶縁膜が一般に設けられるが、この絶縁膜が帯電するといったことがあり、上述したファン・デル・ワールス力による貼り付きに加え、この帯電による静電吸引力によっても可動板が基板に貼り付くといった状況が発生する。
【0008】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、可動板が基板に貼り付いたとしても、その貼り付きを解除することができるようにした微小可動デバイスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、基板と、その基板と対向され、基板面に対して垂直方向に変位する可動板と、その可動板を変位可能に支持する支持ビームとを具備し、支持ビームの弾性力に抗して可動板が変位する構造とされた微小可動デバイスにおいて、基板面に穴が設けられ、その穴には基部とその基部の中央に突出された棒状部とよりなり、基板面に接触した可動板をその突出された棒状部によって突き押すように駆動される可動子が出入り自在に収容されているものとされる。
請求項2の発明では請求項1の発明において、可動子が磁性材で形成されて、電磁力によって駆動される構造とされる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照して実施例により説明する。
図1は微小可動デバイスを光スイッチとして、請求項1の発明の一実施例を示したものであり、図7と対応する部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0011】
この例では可動板11と対向する基板面15bに穴51が設けられ、この穴51に可動子52が収容される。可動子52は基部52aと、その基部52aの中央に突出された棒状部52bとよりなり、穴51はこの可動子52の形状に対応して段付き穴とされて基板15に貫通形成されている。図1中、53はこの光スイッチが実装される光モジュールパッケージ等のベースを示し、穴51はこのベース53によって基板15の底面側が蓋されている。可動子52は例えばニッケル等の磁性材によって形成される。
【0012】
一方、マイクロミラー16を搭載した可動板11の上方には電磁石54が配設される。電磁石54は架台55に保持された磁芯56と、磁芯56回りに架台55に巻回されたコイル57とよりなり、架台55はスペーサ58を介して枠体13上に搭載されている。なお、この例ではスペーサ58は方形枠状をなす枠体13のアンカー14が形成されていない対向2辺上に搭載されており、磁芯56は可動子52の棒状部52bと同軸上に位置されている。磁芯56は例えばパーマロイ製とされる。
【0013】
上記のような可動子52及び電磁石54を具備した光スイッチにおいては、コイル57に通電することにより、穴51に出入り自在に収容されている可動子52が電磁力によって吸引され、その棒状部52bが基板面15b上に突出するものとなる。従って、このように動作する可動子52によって、可動板11の基板15への貼り付きを解除することができる。
図2はこの様子を示したものであり、図2Aに示したように可動板11が基板15に貼り付いたとしても、可動子52を電磁駆動することにより、可動板11は図2Bに示したように可動子52の棒状部52bによって上方に突き押され、貼り付きが解除されて図1に示した元の(定常状態の)位置に復帰するものとなる。なお、可動子52は段付き穴とされた穴51の段部51aに基部52aが当接することにより抜け止めされる。
【0014】
可動子52を駆動するためのコイル57への通電は、可動板11が下方に変位して基板15に接触している状態から、可動板11と基板15間の印加電圧を除去し、可動板11を元の位置に復帰させる際に、瞬間的に行えばよい。
図3は上記のような穴51を有する基板15の作製方法を示したものであり、図10に示した従来の基板15と同様、単結晶シリコン基板を使用して作製される。以下、作製工程を説明する。
(1) 単結晶シリコン基板41の上面に、二酸化シリコン膜42を成膜する。
(2) 形成する凸部15a以外の部分の二酸化シリコン膜42をエッチング除去する。
(3) 二酸化シリコン膜42をマスクとして、水酸化カリウム溶液により単結晶シリコン基板41をエッチングする。
(4) 二酸化シリコン膜42をエッチング除去する。
(5) 上下全面に二酸化シリコン膜43,44を成膜する。
(6) 穴51に対応する部分の二酸化シリコン膜43,44をエッチング除去する。
(7) 二酸化シリコン膜43,44をマスクとして、単結晶シリコン基板41をドライエッチングし、穴51を形成する。
【0015】
以上により、上面に凸部15aを有すると共に、その中央に穴51が設けられた基板15が完成する。
上述した実施例においては、可動子52を1個設けたものとなっているが、可動子52を複数個設けるようにしてもよい。また、軽量化のため、可動子52を中空構造としてもよい。なお、可動子52をこの例のように基部52aと棒状部52bとよりなるものとすることにより、基部52aによって抜け止めされ、かつ駆動時の棒状部52bの突出量を規定することができ、さらに基板面15bには棒状部52bに対応した小径の穴を設ければよいため、固定電極面としての基板面15bの面積の減少を抑制することができる。
【0016】
また、この例では磁性材よりなる可動子52を電磁力により吸引して駆動するものとなっているが、例えば可動子52を永久磁石とし、斥力を作用させて駆動するようにしてもよい。この場合、電磁石は基板15の底面側に配置される。なお、電磁駆動に替えて、例えば可動子52を静電駆動する構成としてもよい。
以上、微小可動デバイスを光スイッチとして、請求項1の発明の実施例を説明したが、この発明は光スイッチに限らず、例えば表面がミラーとされた可動板が基板表面と平行な軸の回りに所定の角度範囲で回動可能とされ、ミラーの向きを変化させることにより、反射光の向きを偏向する光スキャナ等のアクチュエータデバイスにも適用することができる。
【0017】
また、例えば過大な加速度入力によりペンデュラムをなす可動板が貼り付く虞れがある半導体加速度センサ等のセンサデバイスにも適用することができる。
次に、微小可動デバイスの一検討例について、図4及び5を参照して説明する。この例は微小可動デバイスが光ファイバから出射された光の光路を切り替える光スイッチをなすものであって、図7と対応する部分には同一符号を付してある。
図4において、61及び62は出射側レンズ付き光ファイバを示し、63及び64は入射側レンズ付き光ファイバを示す。これらレンズ付き光ファイバ61〜64は図では詳細に示していないが、例えばシングルモード光ファイバの端面にマルチモード光ファイバが融着結合されて、屈折率差によりその結合部分がレンズ機能を有するものとされており、2つのマイクロミラー16を挟んで同軸上に出射側レンズ付き光ファイバ61と入射側レンズ付き光ファイバ64が配置され、他の2つのマイクロミラー16を挟んで出射側レンズ付き光ファイバ62と入射側レンズ付き光ファイバ63が同軸上に配置されている。
【0018】
これらレンズ付き光ファイバ61〜64は、この例では基板15を挟んで両側に配置固定された基板65,66の上面にそれぞれ形成されているV溝65a,66a(図4では隠れて見えない)に位置決め搭載され、例えば接着されて固定されている。
出射側レンズ付き光ファイバ61,62と、入射側レンズ付き光ファイバ63,64との間の光路の切り替えは、可動板11と基板15との間に電圧を印加し、可動板11を静電駆動してマイクロミラー16を変位させることにより、従来例における図8と同様に行われる。
【0019】
上記のような配置構成とされたレンズ付き光ファイバ61〜64に対し、この例ではそれらの各端部の周面に電極67が形成される。これら電極67は図4及び5に示したように可動板11の上方に位置するものとされる。
このように位置された電極67と可動板11との間に電圧を印加すると、可動板11に静電力が作用し、可動板11は静電吸引されて電極67側に変位し、つまり上方に引き上げられるものとなる。
従って、可動板11と基板15が接触した状態から、可動板11を元の位置に復帰させる時、電極67と可動板11との間に電圧を印加して静電力で可動板11を引きつけることで、たとえ可動板11の基板15への貼り付きが発生していたとしても、貼り付きを解除でき、即座に可動板11を元の位置に復帰させることができる。
【0020】
レンズ付き光ファイバ61〜64の端部の周面に対する電極67の形成は例えばスパッタにより行われる。図6はその際に用いるマスク治具68の形状を示したものであり、マスク治具68はレンズ付き光ファイバ61〜64の外径よりわずかに大きい内径を有するステンレス製パイプの先端部に、周の一部を残して窓68aが形成されたものとされ、さらにこの例では窓68aからパイプの基端側に向けてスリット68bが形成されているものとされる。
電極67の形成はマスク治具68にレンズ付き光ファイバ61(62〜64)を挿入し、スパッタ装置を用いてマスク治具68の周回りの少なくとも3方向から成膜することにより行われ、これによりこの例ではレンズ付き光ファイバ61(62〜64)の周面に電極67が形成されると共に、スリット68bにより電極67に至る配線(リード線)が同時に形成される。成膜は例えばNi/Auの二層とされる。
【0021】
なお、上記のようなリード線の成膜形成に替え、ワイヤボンディングにより電極67にリード線を接続するようにしてもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば可動板の基板への貼り付きを解除することができ、よって可動板が基板に貼り付いたままとなって以後の動作が不能になるといった問題あるいは可動板が即座に元の(定常状態の)位置に復帰せず、復帰が遅れるといったような問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1の発明による微小可動デバイスの一実施例を示す断面図。
【図2】 図1の微小可動デバイスにおいて、可動子の駆動により可動板の貼り付きが解除される様子を説明するための図。
【図3】 図1における基板15の作製方法を示す工程図。
【図4】 微小可動デバイスの一検討例を示す平面図。
【図5】 図4の断面図。
【図6】 図4における電極67をスパッタ形成するために用いるマスク治具を示す斜視図。
【図7】 Aは従来の微小可動デバイスの一例として、光スイッチの構造を示す斜視図、Bはその断面図。
【図8】 図7の光スイッチにおける光路の切り替えを説明するための図。
【図9】 図7Bにおける枠体13より上側の構造の作製方法を示す工程図。
【図10】 図7Bにおける基板15の作製方法を示す工程図。
Claims (2)
- 基板と、その基板と対向され、基板面に対して垂直方向に変位する可動板と、その可動板を変位可能に支持する支持ビームとを具備し、支持ビームの弾性力に抗して可動板が変位する構造とされた微小可動デバイスにおいて、
上記基板面に穴が設けられ、その穴には基部とその基部の中央に突出された棒状部とよりなり、上記基板面に接触した上記可動板をその突出された棒状部によって突き押すように駆動される可動子が出入り自在に収容されていることを特徴とする微小可動デバイス。 - 請求項1記載の微小可動デバイスにおいて、
上記可動子が磁性材で形成されて、電磁力によって駆動される構造とされていることを特徴とする微小可動デバイス。
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