JP3673875B2 - ネマチック液晶組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子の代表的なものにTN-LCD(ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)があり、時計、電卓、電子手帳、ポケットコンピュータ、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどに使用されている。一方、OA機器の処理情報の増加に伴い、一画面に表示される情報量が増大しており、Scheffer等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって、STN-LCD(スーパー・ツイスティッド・ネマチック)が開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。更に、表示品質が優れていることから、アクティブ・マトリクス形液晶表示装置が液晶テレビ、プロジェクター表示、コンピューター等のディスプレイの応用分野に有力なものとして市場に出されている。
【0003】
しかしながら、これらの表示方式での表示特性には現在も改善すべき問題があり、例えば視角特性をより広くする、動作温度をより広くすることが要求されている。 従って、上記の様な表示素子に対応するために、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような液晶表示素子の視角特性をより広い特性に改善するには、液晶材料の複屈折率△nと液晶層の厚みdの積△n・dを、C.H.Gooch及びH.A.Tarry[Appi.Phys.,vol.8,1575頁(1975年)]が示したファーストミニマムに特定して液晶表示素子が作製される必要がある。この場合、工業的に作製できる液晶層の厚みdは4〜25μmの範囲の為、液晶材料の複屈折率△nは比較的小さいものが要求されている。複屈折率(Δn)の小さな液晶材料としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0005】
【化5】
【0006】
(式中、R及びR’は各々独立的に、アルキル基、アルコキシル基等を表わす。)
しかしながら、複屈折率(Δn)を小さくすることができても、これらの化合物は、多くの場合液晶相としてスメクチック相を有していたり、混合して得られる液晶材料のネマチック相を狭くさせたりする問題があった。液晶表示素子においても、低温側での応答性や動作性の特性については、依然として問題が残されたままである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複屈折率(△n)が小さく、しかも駆動可能な温度範囲がより広いネマチック液晶組成物を提供することにあり、この液晶組成物を構成材料として用いて、改善された電気光学特性の液晶表示装置を提供できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、一般式(I)及び一般式(II)
【0009】
【化6】
【0010】
(式中、R1及びR2は各々独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCrH2r+1-O-CsH2sを表わし、r及びsは各々独立的に1〜5の整数を表わし、m及びnは各々独立的に0又は1を表わし、X1〜X3は各々独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、Y1及びZ1は各々独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わす。)
で表わされる化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0011】
本発明は上記ネマチック液晶組成物に、更に一般式(III)〜一般式(V)
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、R3及びR5は各々独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCtH2t+1-O-CuH2uを表わし、R4及びR6は各々独立的に炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基、アルケニルオキシ基又はCvH2v+1-O-CwH2wを表わし、R7は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基を表わし、R8は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基を表わし、t〜wは各々独立的に1〜5の整数を表わし、p及びqは各々独立的に0又は1を表わし、Y2及びZ2は各々独立的に単結合、−COO−、−C2H4−又は−C4H8−を表わす。)
で表わされる化合物からなる群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0014】
上記において、一般式(I)で表わされる化合物として、一般式(I-1)〜(I-10)
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、R1及びX1は上記におけると同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物が好ましく、一般式(II)で表わされる化合物として、一般式(II-1)〜(II-3)
【0017】
【化9】
【0018】
(式中、R2は上記におけると同じ意味を表わす。)
で表わされる化合物が好ましい。
更に、一般式(III)において、R3は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基であることが好ましく、R4は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基であることが好ましく、Z2は単結合、−COO−、−C2H4−であることが好ましく、Y2は単結合であることが好ましい。
【0019】
一般式(IV)においては、R5は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基であることが好ましく、R6は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基であることが好ましい。
【0020】
一般式(V)においては、R7は炭素原子数2〜7のアルケニル基であることが好ましく、R8は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基であることが好ましい。上記の構成で得られるネマチック液晶組成物は、ネマチック相−等方性液体相転移温度TN-Iが90℃以上であり、複屈折率△nが0.09以下であることが好ましい。本発明は、上記のネマチック液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチックあるいはスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置を提供する。
【0021】
従来の液晶組成物は、その動作温度の上限が90℃以下のものがほとんどであり、この原因として液晶材料のネマチック−等方性液体相転移温度TN-Iが90℃以下と低いことであった。更に詳しくは、液晶材料を構成している化合物において、その分子構造中にあるシクロヘキサン環やフェニル環等の環構造の数が2つである化合物を多く混合しているか、環構造の数が3つ又は4つである化合物を少量に制限して混合していることにあった。この環構造の数が3つ又は4つの化合物を混合すれば、ネマチック−等方性液体相転移温度TN-Iが上昇し高くなることは周知であるが、しかしながら、同時に結晶相あるいはスメクチック相の温度域が上昇してしまい、例えば室温においてさえ使用できなくなる新たな問題を発生させていた。
【0022】
本発明は、必須成分である一般式(I)及び一般式(II)の化合物を使用することによって、この様な問題を解決するに到ったものである。後述の実施例からも明かな様に、本発明の液晶組成物は、室温付近の温度域でも安定したネマチック相を保持し、更に驚くべきことに、この液晶組成物は−25℃以下の低温域でも動作可能な優れた特性を有しているのである。
【0023】
本発明に係わる一般式(I)及び一般式(II)で表わされる化合物の代表的なものの例(No.1〜11)とその相転移温度を下記第1表に示す。
尚、下記表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度を各々表わす。また、各化合物は、蒸留、カラム精製、再結晶等の方法を用いて不純物を除去し、充分精製したものを使用した。
【0024】
【表1】
【0025】
さらに本発明のネマチック液晶組成物は、必須成分である一般式(I)及び一般式(II)の液晶組成物に一般式(III)〜一般式(V)で表わされる化合物を加えることによって、きわめて広い温度領域の液晶相を有していることを見いだした。
【0026】
一般式(III)〜一般式(V)で表わされる化合物は、 誘電異方性△εが−2〜+2と小さく、複屈折率△nも比較的小さいので、液晶表示のコントラスト特性を重視したネマチック液晶組成物を調製することができるものである。また駆動電圧を維持あるいは低減させ、応答特性を改善させる効果を有している。しかしながら、一般式(III)〜一般式(V)の化合物はスメクチック相を示し易い傾向があり、例えばこれらの化合物のみからなる組成物では、スメクチック相の存在に依ってネマチック相が非常に狭く、特に室温から低温で駆動可能なネマチック液晶組成物を調製することは困難であった。
【0027】
しかしながら、上述した一般式(I)及び一般式(II)で表わされる化合物と組み合わせることによって、各々の化合物が有している優れた特性を損なうことなく、広い温度範囲を有するネマチック液晶組成物を調製できることを見いだした。
【0028】
一般式(III)〜一般式(V)で表わされる化合物の代表的なものの例(No.12〜16)とその相転移温度を下記第2表に示す。
尚、下記表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度を各々表わす。
【0029】
【表2】
【0030】
また、本発明のネマチック液晶組成物を用いて大きなプレチルト角を形成できる液晶表示装置を提供することができる。
具体的には、本発明の必須成分である一般式(I)及び一般式(II)で表わされる化合物群の側鎖基R1及びR2がアルコキシアルキル基を有している化合物によって改善されるものである。また、同様に、一般式(III)〜一般式(V)で表わされる化合物において、側鎖基がアルコキシアルキル基である化合物を含有することによって、このプレチルト角を維持あるいは改善することができる。このようなプレチルト角が改善された本発明のネマチック液晶組成物は、TFT-LCDにおけるバックライトの放熱によるリバースチルトの発生、あるいはSTN-LCDにおけるストライプ・ドメインの発生を顕著に抑えることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0031】
更に、本発明の液晶組成物は、一般式(I)〜(V)の化合物に加えて、液晶組成物の他の特性を改善するために、液晶化合物として認識される通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【0032】
本発明の液晶組成物における各化合物の含有量は、一般式(I)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%、一般式(II)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(III)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(IV)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(V)で表わされる化合物1種につき、それぞれ0〜30重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0033】
また、液晶組成物における各化合物の総含有量は、一般式(I)で表わされる化合物を15〜95重量%、一般式(II)で表わされる化合物を5〜90重量%、一般式(III)の化合物を0〜50重量%、一般式(IV)の化合物を0〜50重量%、一般式(V)の化合物を0〜50重量%の範囲で含有することが好ましい。 更に、各化合物群の総含有量は、一般式(I)及び一般式(II)の化合物を40〜95重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(III)〜(V)の化合物からなる群から選ばれる化合物の含有量は、60重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0034】
以上のような本発明の液晶組成物は、後述の実施例に示したように、90℃以上のネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)で、結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)が−25℃以下と広い温度でネマチック相を有することができた。このように、本発明のネマチック液晶組成物は、広い温度範囲で液晶性を示す液晶組成物であり、特に屋外用途に優れた液晶表示装置を提供することが可能となった。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、測定した特性の各記号の意味は以下の通りである。
【0036】
TN-I : ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N : 結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth : 液晶層の厚みdが6μmのTN-LCDのしきい値電圧(V)
△ε : 誘電異方性
△n : 複屈折率
また、組成物における「%」は「重量%」を表わす。
(実施例1)
【0037】
【化10】
【0038】
からなるネマチック液晶組成物(3−1)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 93.3 ℃
T→N : −45.0 ℃
Vth : 1.73 V
△ε : 6.8
△n : 0.077
このネマチック液晶組成物(3−1)にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して液晶組成物を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN-LCD表示用セルを作製した。上記の液晶組成物をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、視角特性が広く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN-LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。しかもこの液晶表示装置は、−25℃以下の低温域や90℃以上の高温域でも動作が可能であった。
(実施例2)
【0039】
【化11】
【0040】
からなるネマチック液晶組成物(3−2)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 95.5 ℃
T→N : −32.0 ℃
Vth : 1.90 V
△ε : 6.5
△n : 0.074
(実施例3)
【0041】
【化12】
【0042】
からなるネマチック液晶組成物(3−3)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 141.1 ℃
T→N : −26.0 ℃
Vth : 3.04 V
△ε : 3.8
△n : 0.087
(実施例4)
【0043】
【化13】
【0044】
からなるネマチック液晶組成物(3−4)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 142.3 ℃
T→N : −26.0 ℃
Vth : 3.13 V
△ε : 3.7
△n : 0.086
(実施例5)
【0045】
【化14】
【0046】
からなるネマチック液晶組成物(3−5)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN-I : 108.0 ℃
T→N : −54.0 ℃
Vth : 1.98 V
△ε : 7.5
△n : 0.088
【0047】
【発明の効果】
本発明のネマチック液晶組成物は、複屈折率(△n)が0.09以下と小さく、且つ低温から高温までの広い温度範囲でネマチック相を示した。
【0048】
従って、これを用いた本発明の液晶表示装置は、屋外用途や車載用として良好な駆動特性及び表示特性が得られる。
Claims (6)
- 一般式(I)及び一般式(II)
- ネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)が90℃以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のネマチック液晶組成物。
- 複屈折率(△n)が0.09以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のネマチック液晶組成物。
- 請求項1乃至5記載の液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチック又はスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置。
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