JP3673523B2 - ターボ機械及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この発明は、液体を圧送するための遠心形及び斜流形の液体ポンプや気体を圧送するためのブロア及びコンプレッサーなど、一般に「ターボ機械」と称される機械の羽根車の改良に関連し、特に子午面2次流れの発生を抑制するのに有効な流体力学的改良の施された羽根形状の羽根車を備えたターボ機械及びその製造方法に関するものである。
背景技術
従来、これらの遠心及び斜流形ターボ機械の羽根車流路内の流れは、ほぼ流路に沿って流れる主流に対して、流路内の圧力勾配等に起因して、壁面の境界層内の低エネルギー流体が移動したために発生する2次流れ(主流に直交する速度成分を持つ流れ)が複雑に影響して、流路内に渦や速度の不均一を形成し、それが羽根車内ばかりでなくその下流部(ディフューザ、ガイドベーン等)での大きな損失を引き起こす原因となっていた。この2次流れによって引き起される損失全体が2次流れ損失と呼ばれている。また、2次流れの作用により流路の特定領域に集積された境界層内の低エネルギー流体は、大規模な流れの剥離を誘起し、右上がり揚程特性を生じせしめ、ターボ機械の安定な運転を妨げるなどの不都合を生じることが知られている。
こうしたターボ機械の2次流れを抑制する方策としては、羽根車に特殊な流路形状を持たせるアプローチが知られている。
このような特殊な流路形状を用いた2次流れ抑制のためのアプローチの例としては、軸流ターボ機械の羽根車において、羽根を周方向あるいは吸い込みや吐き出し方向に傾斜させる構成(L.H.Smith and H.Yeh, "Sweep and Dihedral Effects in Axial Flow Turbomachinery" Trans. of the ASME.Journal of Basic Engineering,Vol.85,No.3,1963,pp.401-416)、タービン翼列において翼を周方向へ傾斜又は湾曲させる構成(W.Zhongqi, et al."Ar. Experimental Investigation into the Reasons of Reducing Secondary Flow Losses by Using Leaned Blades in Rectangular Turbine Cascades with Incidence Angle" ASME Paper 88-GT-4)、半径流ロータにおいて、羽根がスパン方向に湾曲し凸面をなす羽根圧力面や凹面状の羽根負圧面を有するようにした構成(特開平2−115596号)があり、適切に適用されれば、いずれも流路内部の2次流れに好適な影響を与えうることが知られている。しかしながら、これらの公知例では、羽根あるいは翼断面形状が2次流れに及ぼす影響を本質的には把握できていなかったことから、羽根あるいは翼断面形状を実質的に変化させることなしに、羽根傾斜あるいは湾曲の効用を所定の制約下で活用していたにすぎない。また、特開昭63−10281号には、ターボ機械のハブ面と羽根面とのコーナー部に隆起部を設け、2次流れ損失を低減する構成が開示されているが、このような流路形状は非軸対称なハブ面を有する特殊な羽根車形状であるために羽根車の製作が困難である。いずれの公知例においても、効用の普遍性を確保するための取り組みが不十分であったので、設計条件が変化する場合や機種が相違する場合において、2次流れを抑制するための、普遍的手法を確立するには至っていない。このため期待した効用が得られなかったり、あるいは、逆に効用の減退を招くなどの不都合があった。
ところで、一般に、羽根車の3次元形状は、ハブ面とシュラウド面により形成される子午面形状と、これに取付けられ流体にエネルギーを伝達する役割を担う羽根形状により定義できる。
子午面形状は、個々のターボ機械に要求される設計仕様(流量、圧力ヘッド、回転数)に応じて、遠心形、斜流形から軸流形までの様々な形状が採用される。こうした羽根車の子午面形状を特徴付ける形式数として、比速度Ns=NQ0.5/H0.75が羽根車の設計に広く用いられている。ここにおいて、Nは羽根車の回転数(rpm)、Qは設計流量(m3/min)、Hはターボ機械が流体に与える圧力ヘッド(m)である。すなわち、設計仕様が与えられれば、比速度が決まり、これに応じた適切な子午面形状が選択できる。なお、Qは体積流量で定義されるが、コンプレッサーなどのように、羽根車の入口出口間で流体の圧縮性による容積の変化が生じる場合には、羽根車入口での体積流量が用いられる。
翼形状については、羽根入口角度が流入する流れの角度と整合するように、各スパン方向位置において仮定した入口速度三角形から決定される。一方の羽根出口角度は、設計揚程を満足するように、各スパン方向位置で仮定した速度三角形から決定される。入口速度三角形及び出口速度三角形は、子午線形状と設計揚程及び設計流量から計算されるが、後述の羽根車の流れ解析結果に基づいて修正することができる。しかしながら、羽根入口角度と出口角度間を接続する羽根角度分布の決定法には多くの自由度があり、結果的にその決定は設計者の直感にまかされている。
羽根車の特殊な流路形状により2次流れを低減させるようなアプローチにおける今日までの提案によれば、効用の普遍性を確保するための取り組みが不十分であったので、上記の大きな自由度を有する羽根形状の設計基準が不明確であった。したがって、設計条件が変化し比速度が相違する場合などを含めて、2次流れを抑制するための普遍的手法を確立するには至っていないので、結局、試行錯誤的に羽根車の羽根角度分布を変化させて、2次流れを抑制する上での最適形状を模索するしか方策がなかった。
そして、このような試行錯誤的な羽根角度分布の変化による従前の3次元形状の設計手法を図3(A)のフローチャートに従って説明すれば以下のとおりである。
第1工程(子午面決定工程)では、まず設計仕様を入力条件として適切な子午面形状と羽根枚数を選定する。次に、子午面流路において、複数の回転流面を定義し、各流面上での過去の経験に基づいて、羽根中心線の周方向座標位置foを決定する。周方向座標位置foを規定する位置としては、多くの場合、羽根後縁あるいは羽根前縁が選択される。このようにして規定された周方向座標位置foはスタッキング条件と呼ばれる。
第2工程(羽根角度分布決定工程)では、第1工程により得られた子午面形状と設計流量から、羽根車入口部での羽根角度を決定する。次に、第1工程により得られた子午面形状と設計揚程から、羽根車出口部での羽根角度を決定する。以上のようにして決定された、入口及び出口での羽根角度を滑らかにつなぐ曲線を定義し、無次元子午面長さ位置mに沿っての羽根角度分布を決定する。
第3工程(羽根形状決定工程)では、第2工程により得られた、各流面に沿う羽根の無次元子午面長さ位置mについての羽根出入り口間の羽根角度分布βに基づいて、第1工程により決定された初期スタキング量fを初期値として、∂f/∂m=1/(rtanβ)を無次元子午面長さ位置mについて積分し、各無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定する。これに強度上必要な羽根厚みを付けることにより羽根車の3次元形状を決定する。
第4工程(流動特性評価工程)では、第3工程により決定された羽根車形状に対して、3次元非粘性流れ解析(流体の粘性を考慮しない流れ解析)を適用し、羽根車の内部流れに急激な減速、あるいは急激な圧力上昇に起因する流れの剥離などの性能低下につながる要因の有無を評価する。羽根車内部の圧力分布が不適切であると判定された場合には、第2工程へ戻り、羽根角度分布を修正し、所定の目標を達成するまで第2工程から第4工程までを反復する。
こうした従来の羽根車の設計製作工程により羽根車の2次流れ抑制を行おうとする場合には、
(1)第4工程において、2次流れを抑制するための最適な流路内の圧力分布が確保されているかどうかを判定する基準が不明である(比速度、すなわち羽根車の形式に対する依存性を含めて)。3次元粘性流れ解析を実施すれば、2次流れの発生状況を検討できるが、膨大な計算量を必要とするため、第2〜第4工程を反復して形状を最適化することは、非現実的である。
(2)第2工程において決定される羽根角度分布を適正化する必要があるが、2次流れ抑制を実現する羽根角度分布が従来の経験から大きく逸脱している場合には、好ましい羽根角度分布を仮定することが困難であるという問題点が存在するので、2次流れを抑制できるような羽根車の最適形状を試行錯誤的に求めることは、実際上、困難であった。
しかしながら、近時、このような形状の設計手法として、翼負荷分布が与えられれば、与えられた翼負荷分布を実現しうるような羽根車の形状を数値解析により決定することのできる3次元逆解法が公表されており、種々の3次元逆解法を公表する文献として以下のものが挙げられる。
Zangeneh, M. 1991, "A Compressible Three Dimesional Blade Design Method for Radial and Mixed Flow Turbomachinery Blades", International Journal of Numerical Methods in Fluids.Vol.13,pp.599-624.,又はBorges, J.E.,1990,"A Three-Dimensional Inverse Method for Turbomachinery: Part I-Theory" Transaction of the ASME, Journal of Turbomachinery, Vol. 112, pp. 346-354、又はYang Y.L.,Tan,C,S, and Hawthorne, W.R.,1992, "Aerodynamic Disign of Turbomachinery Blading in Three Dimensional Flow:An Application to Radial Inflow Turbines",ASME Paper 92-GT-74、又はDng,T.Q.,1993 "A Fully Three-Dimensional Inverse Method for Turbomachinery Blading in Transonic Flows", Transactions of the ASME, Journal of Turbomachinery, Vol.115,pp. 354-361又はBorges,J.E.1993 "A Proposed Through-Flow Inverse Method for the Design of Mixed-Flow Pumps", International Journal for Numerical Methods in Fluids,VOL.17,pp.1097-1114.
上記の大半の従前手法では、羽根流路を通る3次元非粘性流れ解析に基づいて羽根形状を設計する。しかしながら、Borges(1993)により提案された方法では、アクチュエータ・ダクト法という、軸対称流れを仮定する近似的な解法が用いられている。このような近似解法は、計算時間の上で極めて効率的で、規定した翼負荷分布を実現する羽根形状の迅速な決定を可能にする半面、遠心ポンプなどの負荷の大きなターボ機械の設計においては、誤差が非常に大きくなる可能性がある。なお、上記の文献のいずれの逆解法手法も、羽根車内部の2次流れ抑制を目的として適用されたものではない。
ところで、上述の問題点に関連する羽根車内の2次流れ自体は、流線の曲りと羽根車の回転により生じるコリオリ力の作用により発生することが、2次流れ理論により明らかにされている。羽根車内の2次流れは、シュラウド面あるいはハブ面に沿って生じる翼間2次流れと、羽根の圧力面あるいは負圧面に沿って生じる子午面2次流れに大別される。翼間2次流れは羽根の形状を後方湾曲させることで、抑制可能であることが知られている。もう一方の子午面2次流れは、流路の3次元形状の詳細な最適化が必要であり、容易に弱めたり打ち消したりすることができない。本発明は、後者の子午面2次流れの抑制を指向するものである。
本発明の適用される典型的なターボ機械の羽根の一例として、クローズド形羽根車の3次元形状を、シュラウド面の大部分が割愛された状態で模式的に図示したものが図1(A)(B)であり、図1(A)の部分断面斜視図中のA−A’矢視図断面としての子午面断面が図1(B)に表されている。図1(A)(B)において、回転軸1を中心軸とした円錐体の外表面様の湾曲面をもって円盤様に延在するハブ面2上には、該面に対して、植設された羽根3の複数枚が回転軸1を中心にハブ面2の半径方向に延び、該ハブ面の円周方向に等間隔で配列されている。複数枚の羽根3の上端面3aには、図1(B)に示されるように、シュラウド面4が覆い被せられていて、左右2枚の羽根3と、下方のハブ面2と、上方のシュラウド面4とで囲まれた空間により流路が構成され、羽根車6の回転軸1近傍の羽根入口6aから該羽根車の外周に向けて、流体が通過する。羽根車6が回転軸1を中心に回転角速度ωで回転することで、羽根車入口6aから流路に流入した流体が、羽根車出口6bに向けて移送されるが、この場合、羽根3の回転方向に向かう面が圧力面3bとなり、これと反対の面が負圧面3cとなる。
なお、オーブン形羽根車の場合には、シュラウド面4を形成するための独立の部材は存在していないが、羽根車6を囲む図外のケーシングが機能的にシュラウド面4を兼ねていて、流体力学的な基本構成において、クローズド形羽根車と差異がないので、以降の説明は、クローズド形羽根車の例示の下で進められる。
結局、このような複数個の羽根3から成る回転体としての羽根車6を中核的な構成要素として組み込んで、回転軸1を回転駆動源に連結し、吸込管など経由で流体を羽根入口6aに導入し、羽根出口6bからの流体を吐出管など経由で機外に導出することにより、ターボ機械が構成されるものである。
このようなターボ機械を構成する羽根車における未解決の深刻な課題として、それの抑制が本発明の対象となっているところの子午面2次流れの発生メカニズムは以下のように説明されている。
即ち、図1(B)に示されるように、羽根流路内の相対流れに関しては、主流に対する流線の曲率による遠心力W2/Rの作用と、羽根車の回転によるコリオリ力2ωW8の作用とにより、相対圧力場p*(=p−0.5ρu2)が定まる。ここに、Wは流れの相対速度、Rは流線の曲率半径、ωは羽根車の回転角速度、W8はWの回転軸1に対する周方向の速度成分である。そして、p*はreduced static pressureであり、pは静圧、ρは流体の密度、uは回転軸1からの所定の半径位置における周速度である。
相対圧力場p*の分布は、図1(B)中のハブ側へと向かう遠心力W2/Rとコリオリ力2ωW8とに対してバランスするように、ハブ側で高く、シュラウド側で低い分布となる。羽根面に沿う相対速度Wが、壁面に沿って発生する境界層内部では減少しているので、境界層内部の流体に作用する遠心力W2/Rとコリオリ力2ωW8が小さくなる。その結果、上述の主流の圧力場p*とバランスすることができないので、境界層内の低エネルギー流体は相対圧力p*の小さな領域へと向かい、子午面2次流れを生ずるのである。
つまり、図1(A)中で、羽根3の圧力面3b上の破線矢印、負圧面3c上の実線矢印にて示されているように、羽根3の圧力面3bないし負圧面3c上で、ハブ側からシュラウド側に向けての羽根面に沿う流体の移動が子午面2次流れである。
子午面2次流れは、羽根3の負圧面3cと圧力面3bの両壁面で生じうるが、一般に負圧面3c上の境界層の方が厚いので、負圧面3c上での2次流れの発生がターボ機械の性能特性に与える影響が大きいことが知られている。本発明は、こうした羽根の負圧面上の子午面2次流れ(図1(A)中の3c上の実線矢印)の抑制を指向するものである。
かくて、境界層内の低エネルギー流体がハブ側からシュラウド側に移動すると、これに応じて、その移動による流量を補うように翼間の中央部では、逆にシュラウド側からハブ側に向かって流れが生じる。その結果、図2(A)の部分断面斜視図中のB−B’矢視断面図である図2(B)に模式的に明示されるように、羽根間の流路内に、旋回方向の異なる1対の渦が形成されることになる。このような渦は2次渦と呼ばれるが、この渦によって流路内の低エネルギー流体が、羽根車内のある特定の場所(相対圧力p*の低い領域)に蓄積されてしまい、これが流路内で正常に流れている流体と混合して大きな損失を生ずる原因となる。
また、相対速度が低くエネルギーも低い流体と、相対速度が高くエネルギーも高い流体とが十分に混合せずに生じた不均一な流れが、羽根の下流の流路に放出されると、これらが混合する際に、大きな損失を生ずる原因となる。
こうした不均一な羽根車出口流れは、ディフューザ入口部での速度三角形を不適切なものとし、下流に位置する羽根付きディフューザとのミスマッチングや、羽根無しディフューザにおける逆流を生じ、ターボ機械全体の性能を著しく低下させる原因となる。
さらに、上述の流路内部の特定の場所に集積した低エネルギー流体の領域では、大規模な逆流が発生しやすくなるので、右上がりの不安定な揚程特性を生じ、サージング、振動、騒音などを誘起し、特に部分流量域でのターボ機械の安定な運転を阻害する原因となる。
従って、遠心及び斜流形ターボ機械の性能を向上させ、その安定な運転を実現するためには、この2次流れを極力抑制するように流路の3次元形状の設計を行うことで、2次渦や、不均一な流れの発生、及び大規模な流れの剥離などを防止する必要がある。
発明の開示
本発明は、上記の背景技術に基づくターボ機械の羽根車における子午面2次流れの抑制の不徹底に起因する損失の増大や運転の安定性の欠如という問題点に鑑み、下記列挙の4つの設計上のアスペクトに従った入力条件で3次元逆解法による設計手法を利用してターボ機械の羽根形状を設計、製造することで、上記問題点を解決し、ターボ機械の損失を低減し、運転の安定性を向上させることを課題とするものである。
(1)本発明の第1のアスペクトによれば、羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCp又は羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対速度のマッハ数Mの差ΔMが、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向により特徴付けられる羽根車を備えたターボ機械が提供される。
相対圧力差ΔCpの分布に関しては、そのような顕著な減少傾向の程度を確保するのに、図4及び図8に示されるように、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根の位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分Dがターボ機械の比速度Ns依存の所定値以上に選定されるが、この場合、比速度Ns=280における差分D280は0.20以上に選定され、比速度Ns=400における差分D400は0.28以上に選定され、比速度Ns=560における差分D560は0.35以上に選定されるのが、羽根車内の2次流れ抑制作用の観点から至適である。
その際に、上記相対圧力差ΔCpm-0.4が出現する無次元子午面長さ位置mm−0.4付近以降における流れの剥離を防止するのに、羽根負圧面上のシュラウド側での圧力係数勾配CPS−sが下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIMとしての−1.3以上に選定される。
ここに言う羽根の負圧面上のシュラウド側での圧力係数勾配CPS−sは羽根の相対圧力差ΔCpが極小値ΔCpmを呈する無次元子午面長さ位置mmと、この羽根位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4との間に出現するシュラウド面上での圧力勾配として定義される。
このような羽根の負圧面上のシュラウド側での圧力係数勾配CPS−sの限定的選定により、羽根の無次元子午面長さ位置mm−0.4の下流側の位置における流れの剥離が防止されるが、羽根入口から羽根出口に亘るすべての無次元子午面長さ位置mにおける流れの剥離、とりわけ、無次元子午面長さ位置mm−0.4の上流側の位置における流れの剥離を防止するには、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを呈する無次元子午面長さ位置mmが無次元子午面長さ位置m=0.8〜1.0の範囲内に選定されるのが至適である。
相対圧力差ΔCpが極小値ΔCpmを呈する無次元子午面長さ位置mmのかかる選定により、圧力係数Cp曲線の羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの勾配に関し、流れの剥離を生ずる限度を越えて、急峻化することが抑制される。
さらに、羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対速度のマッハ数Mの差ΔMの分布に関しては、そのような顕著な減少傾向の程度を確保するのに、図5及び図24に示されるように、相対速度のマッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対速度のマッハ数Mの差ΔMm-0.4と上記相対速度のマッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmとの差分DMが、ターボ機械の比速度Ns依存の所定値以上に選定される。この場合、比速度Ns=488における値DM488は0.23以上に選定される。
その際、上記相対速度のマッハ数Mの差ΔMm-0.4が出現する無次元子午面長さ位置mm−0.4以降の位置における流れの剥離の発生を防止するには、羽根の負圧面上のシュラウド側でのマッハ数勾配MS−sが下限シュラウド側マッハ数勾配MS−s,LIMとしての−0.8以上に選定される。
ここに言う羽根の負圧面上のシュラウド側でのマッハ数勾配MS−sは相対速Aのマッハ数Mの差ΔMが極小値ΔMmを呈する無次元子午面長さ位置mmと、この位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4との間に出現するシュラウド面上のマッハ数Mの勾配として定義される。
このような負圧面上のシュラウド側でのマッハ数勾配MS−sの限定的選択により、羽根の無次元子午面長さ位置mm−0.4の下流側の位置における流れの剥離が防止されるが、羽根入口から羽根出口に亘るすべての無次元子午面長さ位置mにおける流れの剥離、とりわけ、無次元子午面長さ位置mm−0.4の上流側の位置における流れの剥離を防止するには、マッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmを呈する無次元子午面長さ位置mmは無次元子午面長さ位置m=0.8〜1.0の範囲内に選定されるのが至適である。
本発明の第1のアスペクトによれば、圧力係数Cpと角運動量rVθとの間の公知の密接な関係に基づいて角運動量rVθの無次元子午面長さ位置m方向の変化率、すなわち、翼負荷分布∂(rVθ)/∂mを試行錯誤的に適正に選定しながら、圧力係数Cpの増減を図り、翼負荷分布を入力条件として、公知の3次元逆解法による設計手法を利用することで、羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数Mの差ΔMの無次元子午面長さ位置沿いの上述の特徴的な減少傾向、さらには羽根の負圧面上でのシュラウド側の圧力係数勾配CPS−s又はマッハ数勾配MS−sにおける上述の特徴的な制限を実現することができる。
このような設計により確定された3次元形状の羽根車を備えたターボ機械は、相対圧力差ΔCp又はマッハ数Mの差ΔMの、羽根出口方向に向うにつれての顕著な減少傾向を呈する羽根位置mm−0.4付近以降の位置において、羽根車内の子午面2次流れが顕著に抑制されるので、結果として羽根車全体の子午面2次流れが効果的に抑制される。
(2)本発明の第2のアスペクトは、比速度Ns依存性を明確にすべく正規化された圧力係数Cp*に基づく相対圧力差ΔCp*の無次元子午面長さ位置m沿いの分布における羽根出口方向に向うにつれての顕著な減少傾向により特徴付けられるものである。
本発明の第1のアスペクトでは、圧力係数Cpやマッハ数Mひいては相対圧力差ΔCpやマッハ数Mの差ΔMが比速度Nsの関数として定義されていない点で、これらの数値の比速度依存性が定量的に明確でないので、例えば、ポンプなどの非圧縮流れを取扱うターボ機械を対象とする図4において、図示の比速度以外の比速度での差分D、あるいは、コンプレッサーなどの圧縮流れを取扱うターボ機械を対象とする図5において、図示の比速度での差分DMを類推評価することは困難である。
そこで、本発明の第2のアスペクトでは、このような不利点を除去するのに、圧力係数Cpやマッハ数M、ひいては相対圧力差ΔCpやマッハ数Mの差ΔMに代えて、正規化された圧力係数Cp*を採用することで、図6に示されるように、相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた位置mm−0.4で得られる正規化された相対圧力差ΔCp*m-0.4と、上記極小値ΔCp*mとの差分D*は下記の式で定義されるところの比速度Ns依存の関数として表現可能である。
D*=−0.004Ns+3.62
従って、例えば、比速度Ns=500における差分D* 500は1.62以上に選定され、比速度Ns=400における差分D* 400は2.02以上に選定され、比速度Ns=300における差分D* 300は2.42以上に選定されるのが羽根車内の2次流れ抑制作用の観点から至適である。
ここに言う正規化された圧力係数Cp*は以下のように定義される。
Cp*=Cp/Cp,mid−mid
但し、Cp,mid−midは、図1(d)に示されるように、各無次元子午面長さ位置での流路中心(スパン中央かつ翼間中央)における圧力係数である。
なおコンプレッサなどのターボ機械で取扱われる圧縮性の流れに関する圧力係数Cp*は以下のように表現される。
Cp*=2[1−(1−0.5W2/Ho *)γ/(γ-1)/γMo *2
Mo *2=Ut/(γρo */ρo *)0.5
但し、Utは羽根車周速度、Wは相対速度、Ho *はロータルピー、γは比熱比、Po *は相対よどみ点圧力、ρo *はPo *に対応する密度である。
本発明の第2のアスペクトによれば、ターボ機械の比速度Nsの広範囲の自由な選択やターボ機械で取扱われる流れの種類(圧縮性流れと非圧縮性流れ)に容易に対処可能としたうえで、圧力係数Cpと角運動量rVθとの間の公知の密接な関係に基づいて、無次元子午面長さ位置m沿いの翼負荷分布を試行錯誤的に適正に選定しながら、圧力係数Cp*の増減を図り、翼負荷分布を入力データとして取り込み、公知の3次元逆解法による設計手法を利用することで、羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の正規化された相対圧力差ΔCp*に関しての上述の特徴的な減少傾向を実現するような羽根車形状を設計することができる。
このような設計により得られた3次元形状の羽根車を備えたターボ機械は、正規化された相対圧力差ΔCp*の、羽根出口方向に向うにつれての顕著な減少傾向を呈する羽根位置mm−0.4以降の位置において、羽根車内の子午面2次流れが抑制されるので、結果として羽根車全体の子午面2次流れが効果的に抑制される。
(3)本発明の第3のアスペクトは、本発明の第1のアスペクトを特徴付けるところの、相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数の差ΔMの無次元子午面長さ位置m沿いの分布を実現するような3次元形状の羽根車を備えたターボ機械を設計し製造することであり、本発明の第4のアスペクトは、本発明の第2のアスペクトを特徴付けるところの、正規化された圧力係数Cp*による相対圧力差ΔCp*の無次元子午面長さ位置m沿いの分布を実現するような3次元形状の羽根車を備えたターボ機械を設計し製造することである。
本発明の第3及び第4のアスペクトによれば、圧力係数Cpと角運動量rVθとの間の公知の密接な関係に基づいて、無次元子午面長さ位置m沿いの翼負荷分布を試行錯誤的に適正に選定しながら、圧力係数Cpの増減を図り、翼負荷分布を入力データとして、取り込んで、以下の3次元逆解法による設計手法を利用することで、本発明の第1及び第2のアスペクトを特徴付ける分布を実現するような羽根車の3次元形状を確定する。この場合の3次元逆解法による設計手法は図3(B)に示されるようなフロチャートに沿って進行する。
第1工程(子午面決定工程)では、設計仕様を入力条件として子午面形状と羽根枚数を選定する。次に、子午面流路において、複数の回転流面を定義し、各回転流面上の一点での羽根中心線の周方向角度位置を表す初期スタッキング量foを決定する。
第2工程(翼負荷分布決定工程)では、シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置の後半にピークを有する翼負荷分布∂(rVθ)/∂mの形状を選定する。次に、翼負荷分布を羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに積分して得られた結果の値が羽根車の設計揚程を満足するように調節した上で、無次元子午面長さ位置mに沿っての角運動量rVθの分布を決定する。
第3工程(羽根形状決定工程)では、反復解法により、第1工程により決定された初期スタッキング量foを初期値として、
を無次元子午面長さ位置mについて積分することで、羽根形状を算出する。まず初回計算では、速度の周期成分(vrb1,vzb1,vb1)を無視し、VrとVzに対する近似値と、規定されたrVθ分布から求まるVθを用いて、上記の方程式を積分し、羽根中心線の無次元子午面長さm沿いの周方向座標位置fを決定する。次に、羽根中心線に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加することにより、羽根車の3次元形状を決定する。この時、羽根流路内の流れ場は、平均流れ及び周期流れについての支配方程式を解くことにより算出される。平均流れの支配方程式の解は、VrとVzの新たな値を与え、また周期流れの支配方程式の解は、vrb1,vzb1及びvb1の値を与える。これらの更新された値を、上記のfに関する方程式に代入し、再度これを積分することにより、羽根中心線の無次元子午面長さm沿いの新たな周方向座標位置fを決定する。この羽根中心線位置に関し、今回計算の値と次回計算の値の差異が所定の許容値以下になるまで、この計算過程を反復する。
第4工程(最適相対圧力差等判定工程)では、第3工程により算出された相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数の差ΔMに関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制のに適しているかどうかを判定する。
第5工程(流動特性評価工程)では、第3工程により決定された羽根車内部の流れについて、急激な減速に起因する流れの剥離の可能性を評価する。次に、2次流れ抑制の判定パラメータが満足な値となっているかどうかを評価する。羽根車内部の圧力分布が不適切であると判定された場合には、第2工程へ戻り、翼負荷分布を修正し、所定の目標を達成するまで第2工程から第5工程までを反復する。
本発明の第3及び第4アスペクトに係る製造方法では、第4工程での判定基準となる流れ場の特性としてのD,DMあるいはD*に直結する翼面負荷分布を決定し、これを羽根形状決定のための第3工程の入力データとして用いるので、羽根角度分布という形状に関連するパラメータを入力データとする従来の製造方法と比較し、迅速に、2次流れ抑制に有効な羽根形状を確定することができる。
【図面の簡単な説明】
図1〜図2は背景技術に関するものである。図1(A)〜図1(E)は、クローズド形羽根車の3次元形状における子午面2次流れを示す説説明図であり、図1(A)は部分断面斜視図、図1(B)は図1(A)のA−A′矢視子午面断面図である。
図1(C)は3次元粘性流れ解析における計算格子を示す説明図である。図1(D)は羽根流路中のスパン中央と翼間中央を示す斜視図である。図1(E)は羽根形状を示す説明図である。
図2(A)〜図2(B)は、クローズド形羽根車の子午面2次流れによる2次渦を示す説明図であり、図2(A)は、部分断面斜視図、図2(B)は、図2(A)のB−B′矢視断面図である。
図3(A)〜図3(B)は、ターボ機械の羽根車の3次元形状を決定するための、電子計算機による数値解析のフローの概略を示すフローチャートであり、図3(A)は、従前多用されていた3次元解法による設計手法に関連し、図3(B)は、近時、実用化に至った3次元逆解法による設計手法に関連する。
図4は、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sを表わす縦軸とハブ側圧力係数勾配CPS−hを表わす横軸とで規定される平面上に各実証例のデータをプロットし、比速度Nsごとの領域境界線と下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIMを描画することで構成された設計チャートである。
図5は、シュラウド側マッハ数勾配MS−sを表わす縦軸と、ハブ側マッハ数勾配MS−hを表わす横軸とで規定される平面上に各実証例をプロットし、代表的な比速度Nsの領域境界線と下限シュラウド側マッハ数勾配MS−s,LIMを描画することで構成された設計チャートである。
図6は、正規化された圧力係数Cp*によるシュラウド側、ハブ側両圧力係数勾配の合成勾配、即ち、正規化された相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mを得る羽根位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置m−0.4で得られる正規化された相対圧力差ΔCp*m-0.4と上記極小値ΔCp*mとの差分D*を表わす縦軸と、比速度Nsを表わす横軸とで規定される平面上に各実証データをプロットし、上記平面上に領域境界線を描画して、上記差分D*を比速度Nsの関数で表現することで構成された設計チャートである。
図7(A)は、各実証例の特性図から読み取られたシュラウド側圧力係数勾配CPS−sとハブ側圧力係数勾配CPS−hと2次流れ抑制作用判定パラメータとして算出されるMSF angleとを各実証例ごとに一覧可能に整理した図表であり、図7(B)は、正規化された圧力係数Cp*による差分D*についての同様の図表である。
図8〜図22は、圧力係数Cpの、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布を表わす特性図であり、図8は、実証例「A」、図9は、実証例「B]、図10は、実証例「C」、図11は、実証例「D」、図12は、実証例「E」、図13は、実証例「F」、図14は、実証例「G」、図15は、実証例「H」、図16は、実証例「I」、図17は、実証例「J」、図18は、実証例「K」、図19は、実証例「L」、図20は、実証例「M」、図21は、実証例「N」、図22は、実証例「O」にそれぞれ関連する。
図23は、実証例「O」についての流れの剥離状態を示す流れベクトル線図である。
図24〜図29は、マッハ数Mの、羽根の無次元子午面長さ位置mm沿いの分布を表わす特性図であり、図24は、実証例「P」、図25は、実証例「Q」、図26は、実証例「R」、図27は、実証例「S」、図28は、実証例「T」、図29は、実証例「U」にそれぞれ関連する。
図30は、実証例「U」についての流れの剥離状態を示す流れベクトル線図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の第1のアスペクトに関する最良の形態を説明すれば以下のとおりである。
羽根車流路内の相対流れの主流では、粘性の影響が無視できるので、液体ポンプなどにおける非圧縮性流れに対して次式が近似的に成立する。
P* o=p*+0.5ρW2=constant
ここにP* oは、羽根車上流での相対よどみ点圧力である。次に、羽根面上の相対圧力p*(reduced static pressure)の無次元量として次式で圧力係数Cpを定義する。
Cp=(P* o−p*)/(0.5ρUt2)=(W/Ut)2
ここに、Utは羽根車出口での平均周速度である。上記の式から明らかなように、相対圧力p*が低いシュラウド側では、圧力係数Cpの値が大きく、相対圧力p*が高いハブ側では、圧力係数Cpの値が小さい。先に述べたように、羽根負圧面上の子午面2次流れは相対圧力p*の高い羽根のハブ側から羽根の負圧面沿いに相対圧力p*の低い羽根のシュラウド側へと向かうので、この両者の圧力差ΔCpを小さくすることにより、子午面2次流れが抑制できることが期待される。なお、圧力係数Cpは、非圧縮性流れの場合には、相対速度Wの無次元量の2乗(W/Ut)2に等しいが、コンプレッサーなどの圧縮性流れにおいては、2次流れの挙動と密接に関連する物理量は相対速度のマッハ数である。以下の説明では、簡単のため主として圧力係数Cpの分布について記述するが、非圧縮性流れにおける圧力係数Cpの分布が子午面2次流れに及ぼす影響は、圧縮性流れにおいて相対速度のマッハ数Mが子午面2次流れに及ぼす影響と等価である。ここにおいて、圧力Pあるいは相対速度のマッハ数Mは、3次元定常非粘性流れ解析により求められるものである。
羽根車流路壁面に沿って発達する羽根面境界層は、羽根入口から羽根出口に向かって、累積的に厚みを増すので、本発明では、主として、羽根出口寄りの後半部での圧力係数Cpの分布形状に着目して、羽根の負圧面上での子午面2次流れを抑制するための構成を提案する。すなわち、羽根の負圧面上で、ハブ側とシュラウド側間の圧力差ΔCpが、羽根の無次元子午面長位置m沿いに羽根出口に向うにつれて顕著な減少傾向を示すような圧力分布となるように羽根形状を設計するということである。
図8は、3次元定常非粘性流れ解析により求められた本発明の第1のアスペクトの最良の形態としてのポンプにおける羽根の圧力係数Cpひいては相対圧力差ΔCpの分布を示す特性図であり、同図において、縦軸は、上述の圧力係数Cpを表わし、横軸は、m=0(羽根入口)とm=1(羽根出口)の間における羽根の無次元子午面長さ位置mを表わしている。図8中において、上方に位置する実線表示の曲線は、羽根の負圧面上でのシュラウド上の圧力係数の、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの値を示すシュラウド上の圧力係数曲線であり、この曲線に対して略々沿うように描画されている1点鎖線表示のもう一方の曲線は、上記シュラウド上の翼間中央の位置における値を示している。
一方、図8中において、下方に位置する実線表示の曲線は、羽根の負圧面上でのハブ上の圧力係数の、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの値を示すハブ上の圧力係数曲線であり、この曲線に対して略々沿うように描画されている1点鎖線表示のもう一方の曲線は、上記ハブ上の翼間中央位置における値を示している。
なお、破線表示の曲線は、それぞれ、羽根の圧力面上でのシュラウド上とハブ上の圧力係数を示しており、これらの曲線は、本発明には直接の係り合いを持っていないが、参考までに描画されている。
図8において、実線表示の近接する曲線どうしの縦軸沿いの離隔距離、即ち、所定の羽根位置mにおけるシュラウド側の圧力係数曲線上の値と同じ羽根位置mにおけるハブ側の圧力係数曲線上の値との差は、羽根の相対圧力差ΔCpに相当する。かかる相対圧力差ΔCpの極小値(負値の場合には、絶対値の極大値)ΔCPmが出現する羽根の無次元子午面長さ位置mmが横軸上に確定し、この位置mmから羽根入口(m=0)方向に無次元子午面長さ0.4だけ寄った位置、即ち、上記の極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4が規定される。
羽根位置mm−0.4において出現するシュラウド上の圧力係数曲線上の値CPs,m-0.4と、羽根位置mmにおいて出現するシュラウド上の圧力係数曲線上の値Cps,mとの間を結ぶ傾斜直線の勾配、即ち、(Cps,m−Cps,m-0.4)/0.4をここでは、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sと定義する。図8の例では、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sが負の値となる。
同様に羽根位置mm−0.4において出現するハブ上の圧力係数曲線上の値Cph,m-0.4と、羽根位置mmにおいて出現するハブ上の圧力係数曲線上の値Cph,mとの間を結ぶ傾斜直線の勾配、即ち(Cph,m−Cph,m-0.4)/0.4をここではハブ側圧力係数勾配CPS−hと定義する。図8の例では、ハブ側圧力係数勾配CPS−hが正の値となる。
そして、羽根位置mm−0.4におけるシュラウド側の圧力係数曲線上の値と同じく羽根位置mm−0.4におけるハブ側の圧力係数曲線上の値との差分、即ち、羽根位置mm−0.4における相対圧力差ΔCpm-0.4と相対圧力差ΔCPの極小値ΔCpmとの差分Dに関し、ターボ機械の羽根車内における2次流れの誘発の抑制に対する支配的要因であることが、本発明の発明者らによる多くの実証例に基づいて確認された。
ここに言う差分Dは、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sとハブ側圧力係数勾配CPS−hとの双方の分担協働により導出されるものであり、かくて、これら両勾配を表現するための縦・横両軸により規定される平面上に、羽根位置mm−0.4における相対圧力差ΔCpm-0.4と相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分Dを主要な実証例についてプロットしした図が図4である。図4では、縦軸は、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sを表わし、横軸は、ハブ側圧力係数勾配CPS−hを表わしている。図4では、△印が比速度Ns=280のポンプの実証例を、□印が比速度Ns=400のポンプの実証例を、○印が比速度Ns=560のポンプの実証例を各別に表わし、さらに、白色表示(△、□、○)が2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準(後述する)への適合を意味し、黒色表示(▲、■、●)が同基準への否適合を意味する。ここでの主要な実証例を一覧可能に整理したものが図7(A)である。
図7(A)によれば、比速度Ns=280のポンプの実証例は、「A」「B」「C]「D]「1」「2」の6例であり、そのうちの「A」「B」「C」「D」の4例については、それぞれ、「A」「B」「C」「D」の記載順に、図8から図11に各別に示されている実証例の圧力係数Cp曲線に基づいて、シュラウド側圧力係数勾配CPS−s値とハブ側圧力係数勾配CPS−h値の4対のデータが読み取られて、両軸間の平面内に4個の△印のデータがプロットされている。「1」「2」の2例は、実証例の圧力係数Cp曲線が示されてはいないが、他の大量の実証例の1部分として参考までに結果のデータだけが提示されているものである。
次に、比速度Ns=400のポンプの4例の実証例「A」「B」「C」「D」についても同様であり、「E」「F」「G」「H」の記載順に図12から図15に各別に示されている実証例の圧力係数Cp曲線に基づいて、シュラウド側圧力係数勾配CPS−s値とハブ側圧力係数勾配CPS−h値が読み取られて、図4中に4個の□印のデータがプロットされている。
さらに、比速度Ns=560のポンプの6例の実証例「I」「J」「K」「L」「M」「N」についても同様であり、「I」「J」「K」「L」「M」「N」の記載順に図16から図21に各別に示されている実証例の圧力係数Cp曲線に基づいて、シュラウド側圧力係数勾配CPS−s値とハブ側圧力係数勾配CPS−h値が読み取られて、図4中に6個の○印のデータがプロットされている。実証例「3」「4」「5」「6」「0」は、参考までに結果のデータが提示されているものである。
ところで、図4中にプロットされたデータは、白黒色表示により、2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準への適否をも表現していることは、既述したところであるが、ここでの定量的な判定基準は以下のように構成されている。
図1(c)は、3次元粘性解析に使用される説明図であり、bladed region内部の計算格子と、各計算格子において定義される2次流れ角度αの関係を示すものである。ここでは2次流れは計算メッシュ方向から逸脱する速度成分として定義されるので、基準となる計算メッシュは一定の規則性をもっている必要がある。すなわち、メッシュは、ハブ面上とシュラウド面上のJ方向で、羽根の前縁と羽根の後縁との間が規則的に(メッシュ分割は、同一のメッシュ間隔比と同一のメッシュポイント数で施される)分割され、ハブ面上とシュラウド面上の相当する2点間をつなぐ各J方向位置におけるスパン方向(K方向)メッシュも規則的に分割されて、bladed region全域での計算メッシュ点が定義される。こうした計算メッシュ形状は3次元粘性解析においては、ごく一般的に使用されているものである。
次いで、2次流れの定量的な判定基準として使用されるMSF_angleは次式で表わされる。
但し、
αは、図1(c)に示されるbladed region内の各計算格子点において、流線方向(J方向)メッシュの接線方向と羽根負圧面近傍の子午面速度のベクトル方向とが成す角度として定義される角度、
Vmは、子午面速度、
sは、各J番目のQuasi-orthogonal線上(K方向のメッシュ線上)でハブ面で0、シュラウド面で1となるK方向の無次元スパン長さ、
mは、各K番目の流面上で羽根前縁で0、羽根後縁で1となるJ方向の無次元子午面長さ、
[ ]ssは、羽根負圧面から1番目のメッシュにおける積分値である。
すなわち、MSF angleは、羽根の負圧面全体に亙っての、流線メッシュの方向からの流れの逸脱角度の大きさの質量平均値として定義される。
なお、羽根車入口部では、羽根に衝突した入口流れが、羽根前縁を回り込む際に、一部メッシュ方向から逸脱する傾向がある。このズレ角度は、翼面境界層内での粘性作用に起因した2次流れ現象とは無関係であるので、その影響を除去すべく、境界層が未発達である羽根車入口付近の羽根の無次元子午面長さ位置m=0.0からm=0.15までの区間を除外して積分が行われる。
図7(A)には、各実証例について、上記定義式に基づいて算出されたMSF angleの値が、シュラウド側圧力係数勾配CPS−s値とハブ側圧力係数勾配CPS−h値とともに記載されている。一方、同様の計算手順により、大量の実証例についてのMSF angle値を算出し、これらの実証例における2次流れ作用による性能劣化と、その実証例について算出されたMSF angle値との相互関係を鋭意探究することで、本発明の発明者らは、結果として、2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準としては、計算メッシュの数と比速度が類似するグループごとに下記のMSF angleを選定するのが妥当であることを確認した。
判定基準のMSF angleは:
比速度Ns=280のポンプでは18度
比速度Ns=400のポンプでは15度
比速度Ns=560のポンプでは25度
比速度Ns=488のコンプレッサーでは15度
そして、図7(A)に記載されているMSF angle値により、各実証例について定量的に表現された2次流れの強さを、上記確認済みの2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準としての各グループごとのMSF angle値と対比することで、MSF angle値が該当の判定基準のMSF angle値以上の実証例については、上記判定基準への否適合(2次流れ抑制作用不全)を意味する黒色表示が図4中のデータに施され、一方、MSF angle値が該当の判定基準値のMSF angle値未満の実証例については、上記判定基準への適合(2次流れ抑制作用良好)を意味する白色表示が図4中のデータに施されている。
図4中にプロットされているデータに基づいて、2次流れ抑制作用不全の黒色表示のデータ群のデータ領域と、2次流れ抑制作用良好の白色表示のデータ群のデータ領域とを画成する領域境界線が比速度Nsごとに図中に描画可能であり、図上で右上りの3本の傾斜直線が、それぞれ、比速度Ns=280、比速度Ns=400、比速度Ns=560についての領域境界線である。
各比速度Nsについて、かかる領域境界線の右下側に画成されるデータ領域が、判定基準適合のデータ領域である。
そして、ここでの領域境界線についてさらに考察すると、この領域境界線上の各データに関しては、それを縦軸沿いに位置付けるシュラウド側圧力係数勾配CPS−s値と、それを横軸沿いに位置付けるハブ側圧力係数勾配CPS−h値との差が一定値に維持されている。
即ち、比速度Ns=280についての領域境界線は、
を表わす傾斜直線であるので、結局、このことは、この領域境界線上のデータによって、図8に示されるように、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを呈する羽根の無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において出現する相対圧力差ΔCpm-0.4と相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D280に関し、0.2に維持されているということを意味する。したがって、比速度Ns=280のデータについて言えば、上記差分D280が0.2以上であるようなデータが、比速度Ns=280についての領域境界線の右下に位置する判定基準適合のデータ領域内に白色表示でプロットされる。かくて、D280が0.2以上である羽根車は2次流れの抑制に適している。
比速度比Ns=400についての領域境界線は、
を表わす傾斜直線であり、上記比速度Ns=280の場合と同様のことが言えるので、結局、上記差分D400が、0.28以上である羽根車は、2次流れの抑制に適している。さらに比速度Ns=560についての領域境界線は、
であり、上記比速度Ns=280の場合と同様のことが言えるので、結局、上記差分D560が、0.35以上である羽根車は、2次流れ抑制に適している。
以上の説明から明らかなように、シュラウド側圧力係数勾配CPS−s〜ハブ側圧力係数勾配CPS−h平面上で2次流れ抑制作用が良好な白色表示のデータ領域を占めるということは、羽根位置mm−0.4に出現する相対圧力差ΔCpm-0.4と羽根位置mmに出現する相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmの差分Dが、2次流れ抑制作用の判定判断基準依存の所定値以上の値たり得るということであるが、その差分Dの値は、該当の領域境界線上の該当のデータを位置付ける縦軸上のシュラウド側圧力係数勾配CPS−s値と横軸上のハブ側圧力係数勾配CPS−h値との分担協働の結果によるものである。ここでの分担協働における両勾配による分担度合いは、広範囲に変化するものであるので、3つの場合が存在する。すなわち、(1)シュラウド側圧力係数勾配CPS−sの減少傾向に対して支配的に依存する第1の場合と、(2)ハブ側圧力係数勾配CPS−hの増加傾向に対して支配的に依存する第2の場合と、(3)両勾配による減少傾向と増加傾向の双方に対して調和的に依存する第3の場合である。しかしながら、ここで、図8に示されるように、羽根位置mm−0.4から羽根出口(m=1.0)に向う後方付近についてシュラウド側圧力係数勾配CPS−sには、負値の下限値としての下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIMが存在しており、上述の差分Dの形成が下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIM以下であり、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sに対して過大に依存する場合には、羽根位置mm−0.4から羽根出口(m=1.0)に向う後方付近において流れの剥離を誘発し、揚程及び効率の顕著な低下を招くことが、本発明の発明者らにより、確認された。
このようにして確認された下限シュラウド圧力係数勾配CPS−s,LIMは−1.3であり、そのことは、3例の実証例「5」「6」「0」のデータを包含するような流れ剥離誘発のデータ領域を下方に画成する水平直線が描画可能であるという事実により裏付けられている。
そして、1例として実証例「0」における流れの剥離状態を示す流れベクトル線図が図23である。
ここでの流れの剥離は、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sが下限値CPS−s,LIMよりも小さい場合に羽根位置mm−0.4から羽根出口(m=1.0)に向う後方付近において出現するものであるが、羽根入口(m=0)寄りの前半の羽根位置においても、羽根位置mm−0.4以降付近における下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIMとは別の下限値が存在しており、このような羽根入口(m=0)寄りの前半の羽根位置における一層急峻なシュラウド側圧力係数勾配に起因する流れの剥離を抑制するには、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmが出現する羽根位置mmを羽根の無次元子午面長さ位置m=0.8〜1.0の範囲内、つまり、羽根出口(m=1.0)方向寄りの後方の羽根位置に選定するのが有効であることも本発明の発明者らにより確認された。
さらに、図7(A)の下段には、比速度Ns=488のコンプレッサに関して実証例のうちの「P」「9」「Q」「R」「S」「T」「U」「10」の8例の実証例におけるシュラウド側マッハ数勾配MS−s値とハブ側マッハ数勾配MS−h値とMSF angle値とが示されており、これらの実証例のデータを図4の平面に対応する平面内に、図4の場合と同様の手順に従ってプロットしたものが図5である。
既述したように、圧縮性の流れを取扱うコンプレッサにあっては、非圧縮性の流れを取扱うポンプにおけるシュラウド側圧力係数勾配CPS−sとハブ側圧力係数勾配CPS−hが、それぞれ、シュラウド側マッハ数勾配MS−sとハブ側マッハ数勾配MS−hに相当することが知られているので、図5の平面は、シュラウド側マッハ数勾配MS−sを表わす縦軸とハブ側マッハ数勾配MS−hを表わす横軸とにより規定されている。
そして、図5の平面上にプロットされた主要な実証例を含む大量の実証例からのデータに基づいて、比速度Ns=488のコンプレッサについて領域境界線として、
で表わされる傾斜直線が描画可能であり、図中、この傾斜直線の右下側に位置するデータ領域は、2次流れ抑制作用についての判定基準適合のデータ領域に該当している。
結局、このことは、比速度Ns=488のコンプレッサのデータについて言えば、羽根の相対圧力差ΔMの極小値ΔMmを呈する羽根位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4における相対圧力差ΔMm-0.4と上記相対圧力差ΔMの極小値ΔMmとの差分DM488が0.23に維持されているということを意味する。
したがって、ここでは、上記差分MD488が0.23以上であって、白色表示されるデータ群に対応する羽根車が、羽根車内の2次流れの抑制に適していることが大量の実証例に基づいて確認された。
しかしながら、シュラウド側マッハ数勾配の下限値としての下限シュラウド側マッハ数勾配MS−s,LIMが存在しており、ここでシュラウド側マッハ数勾配MS−s値が、かかる下限シュラウド側マッハ数勾配Ms−s,LIM値よりも小さい場合には、羽根位置mm−0.4から羽根出口(m=1.0)に向う後方付近において、揚程および効率の顕著な低下を招くことが本発明の発明者らにより確認された。
このようにして確認された下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s, LIM 値に関しては、比速度Ms=488のコンプレッサについて−0.8であり、そのことは、2例の実証例「U」「10」のデータを包含するような流れ剥離誘発のデータ領域を下方に画成する水平直線が描画可能であるという事実により裏付けられている。
そして、1例として、実証例「U」における流れの剥離状態を示す流れベクトル線図が図30である。
さらに、シュラウド側マッハ数勾配MS−sが下限シュラウド側マッハ数勾配MS−s,LIMよりも小さい場合に、羽根の無次元子午面長さ位置mm−0.4から羽根出口(m=1.0)寄りの後半の羽根位置において流れの剥離が出現するが、羽根位置mm−0.4以降付近における下限シュラウド側マッハ数勾配MS−s,LIMとは別の下限値が、羽根入口(m=0)寄りの前半の羽根位置に存在しており、ここでの一層急峻なシュラウド側マッハ数勾配MS−sに起因する羽根入口(m=0)寄りの前半の羽根位置における流れの剥離を抑制するには、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmが出現する無次元子午面長さ位置mmを羽根の無次元子午面長さ位置m=0.8〜1.0の範囲内、つまり、羽根出口(m=1.0)方向寄りの後方の羽根位置に選定するのが有効であることも本発明の発明者らにより確認された。
図7(A)に戻って、その下段に記載された比速度Ns=488のコンプレッサに関しては、図25で参照可能なシュラウド側マッハ数勾配MS−sとハブ側マッハ数勾配MS−hが、図24〜図29中に「P」「Q」「R」「S」「T」「U」の記載順で示されている実証例のマッハ数曲線から読み取られて、ここに記載されているものである。
そして、各実証例についてのMSF angleの算出手順と、MSF angleによる判定基準と、2次流れ抑制作用についての定量的な評価手順に関しては、図4に関連して既述したところと同じであるので、さらなる説明を必要としないであろう。
本発明では、図4の実証例としては、比速度範囲、Ns=280からNs=560のポンプに関するものを示した。本発明の考え方に従えば、比速度280以下の領域では、別の最適値が存在すると考えられる。しかしながら、図4における領域境界を示す傾斜直線の傾向に着目すれば、D280の値はD400及びD560より小さく、またD400の値はD560より小さくなっている。かくて、比速度が小さくなるにつれ、領域境界を与えるDの値も小さな値になるという傾向を示している。ただし、Dの値の定量的な比速度依存性は図4では明らかになっていない。(この点については後述する本発明の第2のアスペクトで明らかにされている。)従って、比速度Nsが280以下の羽根車においては、Dの値としてD280=0.2よりも大きな値を採用することにより、安全サイドで、子午面2次流れの抑制された羽根車を設計することができる。同様に、比速度は400あるいは560以下の羽根車においては、Dの値としてD400=0.28あるいはD560=0.35よりも大きな値を採用することにより、安全サイドで子午面2次流れの抑制された羽根車をそれぞれ設計することができる。
圧縮機に関しては、比速度488についてのデータだけが図5に示されている。しかしながら、子午面2次流れを抑制する流体力学的な流れのメカニズムはポンプ流れとコンプレッサー流れとで差異はなく、従って、比速度Nsが488以下のコンプレッサー羽根車においては、DMの値としてDM488=0.23よりも大きな値を採用することにより、安全サイドで子午車面2次流れの抑制された羽根車を設計することができる。
次いで、本発明の第2のアスペクトに関する最良の形態を説明すれば、以下のとおりである。
本発明の第1のアスペクトに関する最良の形態では、図4あるいは図5中に表わされた傾斜直線の領域境界線が、ターボ機械の比速度や、流れの種類(比圧縮性又は圧縮性)ごとに離散的に確認され、描画されているが、データの比速度依存性は定量的に明らかにされていない。したがって、所与の比速度、所与の種類の流れを取扱うターボ機械について、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを呈する羽根位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において出現する相対圧力差ΔCpm-0.4と上記相対圧力差の極小値ΔCpmとの差分D、又は、相対速度のマッハ数の差ΔMの極小値ΔMmを呈する羽根位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において出現するマッハ数の差ΔMm-0.4と上記マッハ数の差の極小値ΔMmとの差分DMが適切な分量以上になるように、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sとハブ側圧力係数勾配CPS−hとでの分担分量又はシュラウド側マッハ数勾配MS−sとハブ側マッハ数勾配MS−hとでの分担分量を2次流れ抑制作用の観点から最適に設計する際に、図4又は図5の平面上に表わされた領域境界線を直裁的に適用し難い多くの事例が存在する。
そこで、本発明の第2のアスペクトでは、上記相対圧力差ΔCpm-0.4と相対圧力差の極小値ΔCpmとの差分D、又は、上記マッハ数の差ΔMm-0.4とマッハ数の差の極小値ΔMmとの差分DMについての、流れの種類を問わない比速度依存性が解明されている。すなわち、ここでの差分D又は差分DMに関し、流路中心の圧力係数Cpmid-midで正規化された圧力係数Cp*を導入して定義し直すことで、本発明の第1のアスペクトの最良の形態における領域境界線は、比速度Nsの関数として表現可能である。
正規化された圧力係数Cp*に基づいて、上記差分について実証例ごとにプロットされたデータを示しているのが図6である。図6では、縦軸は、羽根位置mm−0.4における正規化された相対圧力差ΔCp*m-0.4と羽根位置mmにおける正規化された相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mとの差分D*を表わし、横軸は、ターボ機械の比速度Nsを表わしている。両軸間の平面内にプロットされているデータ群に関しては、図4及び図5の平面内にプロットされている実証例のものと同一であり、2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準への適合を意味する白色表示のデータ群を図中右上に位置するデータ領域に区分けし、そして、2次流れ抑制作用についての定量的な判定基準への否適合を意味する黒色表示のデータ群を図中左下に位置するデータ領域に区分けするような図中右下がりの傾斜直線の領域境界線が描画可能である。
ここに描画された領域境界線から勾配と縦軸切辺を読取ることで、正規化された相対圧力差の差分D*を表わす比速度Ns依存の関数として、次式の妥当性が確認された。
D*=ΔCp*m-0.4−ΔCp*m=−0.004Ns+3.62
そして、ここに言う正規化された圧力係数は以下のように定義されている。
Cp*=Cp/Cp,mid-mid
但し、Cp,mid-midは、図1(D)に示す流路中心における圧力係数である。さらに、圧縮性の流れを取扱うコンプレッサにおける相対速度のマッハ数Mは、次式により圧力係数Cpに対して関数付けられるので、ここで正規化された圧力係数Cp*は取扱われる流れの種類を問わず適用可能なものとなる。
Cp=2[1−(1−0.5W2/H* o)γ/(γ-1)]/γM* o 2
M* o=Ut/(γP* o/ρ* o)0.5
但し、Utは羽根車周速度、Wは相対速度、H* oはロータルピー、γは比熱比、P* oは相対よどみ点圧力、ρ* oはP* oに対応する密度である。
ところで、図6の平面上にプロットされているデータの値の根拠となる各実証例についての相対圧力差の差分(D*=ΔCp*m-0.4−ΔCp*m)の値を示すものが図7(B)である。
なお、付言するならば、ここでの実証例のうちの「7」「8」の実証例は、比速度Ns=377のポンプに関するものであるが、これらの実証例に係るデータは共に図6の平面上では、領域境界線により区分けされて、2次流れ抑制作用不全のデータ領域に位置付けられることが確認された。ただし、この実施例では、羽根位置mm−0.4よりも羽根入口(m=0)寄りの前半の羽根位置において、下限シュラウド側圧力係数勾配CPS−s,LIM値に比して、負値で極端に小さい(急峻な)シュラウド側圧力係数勾配値が出現することで、その前半の羽根位置で流れの剥離が誘起されてしまうことが3次元粘性流れ解析により確認されており、したがって、実証例「7」「8」についての2次流れの成長に関する情報を確めることはできなかった。
続いて、本発明の第3のアスペクト及び第4のアスペクトに関する最良の形態を説明すれば以下のとおりである。
前者の形態では、本発明の第1のアスペクトを特徴付けるような、相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数Mの差ΔMの、無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて顕著な減少傾向を実現するための3次元形状の羽根車を備えたターボ機械を設計し、製造する際に、そして、後者の形態では、本発明の第2のアスペクトを特徴付けるような、正規化された圧力係数Cp*による相対圧力差ΔCp*の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて顕著な減少傾向を示す分布を実現するための3次元形状の羽根車を備えたターボ機械を設計し、製造する際に、以下のような3次元形状の羽根車の設計手法が採用されている。すなわち、第1工程としての子午面形状決定工程と、第2工程としての翼負荷分布決定工程と、第3工程としての羽根形状決定工程と、第4工程としての最適相対圧力差ΔCp等判定工程と、第5工程としての流動特性評価工程とを含んで成る3次元逆解法による設計手法が採用されている。
これらのアスペクトでは、圧力係数Cpと角運動量rVθとの間の公知の密接な関数に基づいて翼負荷分布を試行錯誤的に適正に選定しながら、圧力係数Cpの増減を図り、rVθ分布を入力データとして取り込み、以下の3次元逆解法による設計手法を利用することで、本発明の第1及び第2のアスペクトを特徴付ける各別の特徴的な分布を実現するような羽根の3次元形状を確定する。この場合の設計手法は図3(B)に示されるようなフローチャートに沿って進行する。
第1工程(子午面形状決定工程)では、設計仕様から算出される比速度Nsとの相関関係についての従来からの知見に基づき、ハブとシュラウドの形状及び羽根の前縁、後縁の位置を規定して、さらに、羽根枚数を選定する。羽根のハブ面とシュラウド面沿いに等間隔あるいは不等間隔で数値計算に必要なメッシュを切る。このメッシュを羽根の前縁の上流と後縁の下流に拡張しておく。このようにして形成されるメッシュは、図1(C)に示す粘性解析における計算格子と類似のものである。さらに、ハブとシュラウド間の相当する2点を結んでQuasi-Orthogonal線(Q−O線)を引く。次に、子午面流路において複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量fo(各流面上の一点での翼中心線の周方向角度位置)を決める。この第1工程は、図3(A)に示した従来設計フローにおける第1工程と実質的に同一である。
第2工程(翼負荷分布決定工程)では、シュラウド面上で無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、またハブ面上では無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼面負荷分布∂(rVθ)/∂mの形状を選定する。
次に、ハブ、シュラウドに沿う∂(rVθ)/∂m分布を無次元子午面長さ位置mに沿って積分してrVθ 分布を求める。無次元子午面長さ位置m方向に積分して、ハブ面とシュラウド面上について得られた結果の値が、羽根出口速度三角形(すなわち従来手法と同様の手法で羽根車の設計揚程から定まるハブおよびシュラウドでの出口のrVθ値)を満足するように調節したうえで、第1工程で定められた各Q−O線上でrVθ値を線形内挿により計算することで、ハブとシュラウド間のrVθ 分布を求める。
第3工程(羽根形状決定工程)では、羽根の中心線において速度は羽根に沿うという条件、すなわち、流れは羽根を通過しないという条件を適用して羽根の中心線を求める。
羽根の中心線の位置をαとすると、
α=θ−f(r,z)=0,n2π/B ここでn=1,2,3...B
ここに、fは羽根中心線の周方向角度位置(重なり角度)、θは曲座標の角度、Bは羽根枚数を示す。(図1(E)に図示されている)
上の条件は数学的に次式で示される。
W+,▽(α)=0 W-,▽(α)=0
ここでW+,W-は羽根の圧力面、負圧面の速度、▽は微分演算子を示す。
上式を併せて
Wb1▽α=0で表される。ここで
上式は各成分に分解して次式で示すことができる。
これは1次の双曲線偏微分方程式である。初期値として任意のQ−O線に沿ってfoの値を設定(スタッキング条件)しておき、上式を無次元子午面長さ位置mに沿って積分し、各無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定する。これに羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根の中心線に厚みを付加することにより羽根車の3次元形状を決定する。この時同時に、羽根車内部の流れ場を計算により決定する。
スタッキング条件としては、例えば羽根後縁におけるQ−O線上でfの値がすべてゼロに選定されるか、或は、羽根後縁におけるQ−O線上で若干の滑らかな分布を持たせたfoの値が選定される。
そして、上式に基づく相対速度Wの計算は以下の手順で行われる。
速度場を周方向に平均化した成分と、周方向に周期的な成分とに分離する。周方向に平均化した平均速度を決定するために、まず半径方向及び軸方向速度(Vr,Vz)を連続の式(質量保存則)が満足されるように流れ関数の形で表現する。次に、流体力学上の羽根の作用により作り出される渦度場、ひいては羽根回りの循環2πrVθに関連づける式を使用することにより、流れ関数を規定するポアソン形の偏微分方程式が導出される。この式は、上流及び下流境界で一様速度となる境界条件と、ハブ面及びシュラウド面を横切る流れが無いという境界条件(即ち流れ関数一定)の下に、任意の適切な数値解法により積分される。この方程式の積分により求められた流れ関数からVr,Vzの値が算出される。
一方の周期的な速度成分(vrb1,vzb1,vb1)は周方向の周期的な流れ場に関する方程式の解として決定される。周期的な流れ場を解くに当たっては、速度場に対するClebshの表現式を用い、速度場は未知の非回転流れの成分(速度ポテンシャル関数として表現される)と羽根回りの循環2πrVθに関連する既知の回転成分に分離される。未知の速度ポテンシャル関数による支配方程式は、周期流れについての連続の式における速度場のClebsh表現式から導出される。このようにして求めた3次元ポアソンの式を、周期的周方向速度及びスパン方向速度が消滅する条件、並びにハブ面とシュラウド面を通過する流れが無いという境界条件の下に、適切な数値解法を使用して積分する。このような手順により、速度場ばかりでなく羽根車の翼負荷、すなわち、羽根の圧力面の圧力p(+)と負圧面の圧力p(−)の間の圧力差p(+)−p(−)を次式で求めることができる。
(p(+)−p(−))/ρ=2π(Wb1▽rVθ)/B
ここにWb1は翼面位置での相対速度を示す。
このようにして、羽根の負圧面でのハブ側とシュラウド側の相対圧力差ΔCP又は相対速度のマッハ数の差ΔMを求めることができる。
さらに、羽根車の機種あるいは形式に依存しない値、即ち非圧縮性流れを取扱うポンプ及び圧縮性流れを取扱うコンプレッサーに対して共通の値として、次の式に示す正規化された圧力係数Cp*を定義する。
Cp*=Cp/Cp,mid-mid
ここにおいて、Cp,mid-midは、各無次元子午面長さ位置での流路中心(スパン中央かつ翼間中央)での圧力係数である。なお、圧縮性流れに対する圧力係数Cpは下記の式で定義される。
Cp=2[1−(1−0.5W2/Ho *)γ/(γ-1)]/γMo *2
Mo *3=Ut/(γPo */ρo *)0.5
ここにおいて、Utは羽根車周速度、Wは相対速度、Ho *はロータルピー、γは比熱比、Po *は相対よどみ点圧力、ρo *はPo *に対応する密度である。
第4工程(最適相対圧力差ΔCP等判定工程)では、第3工程で算出された相対圧力差ΔCP又は相対速度のマッハ数の差ΔMの無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根の2次流れを抑制するのに適したものになっているかどうかを判定する。
2次流れ抑制を実現するためのΔCp分布の選定に際しては、これを(a)シュラウド側の変化に依存して形成する場合、(b)ハブ側の変化に依存して形成する場合、(c)シュラウド及びハブ側双方の変化に依存して形成する場合がある。適切なΔCp分布を数値化して判断するために、翼負圧面上での相対圧力差ΔCpが極小値ΔCpmを示す羽根の無次元子午面長さ位置mmと、同位置から無次元羽根長さ0.4を差し引いた位置m−0.4との間において得られるハブ側圧力係数勾配CPS−hと、シュラウド側圧力係数勾配CPS−sを定義し、この値が本発明の第1のアスペクトで規定する所与の基準値を満足するかどうかを判定する。この場合、ΔCpの変化がシュラウド側の変化に極端に依存し、同領域で過大な圧力上昇(あるいは過大な減速)を生じるような圧力分布となることは、同領域での大規模な流れの剥離を誘起し、揚程や効率の低下あるいは運転範囲の減少を生じる恐れがあり、好ましくないので、本発明の第1のアスペクトにおける下限シュラウド圧力係数勾配CPS−s,LIMに関する判定基準に基づいて、このような分布にならないように配慮する。
ところで、圧力係数Cpは非圧縮流れの場合には、相対速度の無次元量の2乗(W/Ut)2に等しいが、コンプレッサーなどの圧縮性流れにおいて2次流れの挙動と密接に関連する物理量は相対速度のマッハ数であることが知られているので、圧縮流れの場合には、本発明の第1のアスペクトにおける判定基準であるマッハ数の差ΔMについてΔCpと同様の判定を行う。
さらに、ポンプ及びコンプレッサーに対して共通の2次流れ抑制のための設計基準として提案された正規化された圧力係数Cp*を用い、この正規化された圧力係数差ΔCp*の極小値ΔCp*mを得る羽根の無次元子午面長さ位置mmから、羽根の無次元子午面長さ0.4を差し引いた位置mm−0.4において得られる正規化された圧力係数の差ΔCp*m-0.4と上記極小値ΔCp*mの差から判定することも可能である。
以上の方法によって最適な相対圧力差が得らえるかどうかを判定し、これが満足されなければ第2工程に戻り、翼負荷分布を修正し、最適な相対圧力差が得られるまで第2工程から上記工程までを繰り返す。この工程を経ることによって、最適な相対圧力分布が得られるような翼負荷分布∂(rVθ)/∂mを決定することができる。その結果、類似の設計仕様の羽根車の設計では、ここで得られた最適の翼負荷分布∂(rVθ)/∂mを援用することで、最適化設計の工程が大幅に加速可能となる。
第5工程(流動特性評価工程)では、第3工程で決定した羽根車の内部流れについて、急激な減速あるいは急激な圧力上昇による流れの剥離に起因する性能低下を評価する。羽根車内部の圧力分布あるいは2次流れ抑制作用の判定パラメータが不適切であると判定された場合には、第2工程へ戻り、翼面負荷分布を修正し、所定の目標を達成するまで第2工程から第5工程までを反復する。
本発明の第3及び第4のアスペクトの形態における第2工程では、流れ場の特性、すなわち流れの物理的性質に直結する翼負荷分布を羽根形状の決定のための第3工程の入力条件として用いるので、思考錯誤的に羽根角度分布を調整する従来の設計製造方法と比較し、はるかに迅速容易に、2次流れを抑制するような羽根形状を設計しそのような形状の羽根を製造することができる。
なお、第2工程で決定したrVθ分布を使用して、第3工程において羽根形状を決定する手法に関しては、羽根厚みが速度場に及ぼす影響を考慮した他の逆解法、あるいはSoulis, J.V., 1985,"Thin Turbomachinery Blade Design Using A Finite-Volume Method", International Journal Numerical Methods in Engineering, Vol.21,p19において公開されているような解析手法の反復利用に基づく半逆解法などが利用可能である。しかしながら、これらの解法は、本発明の第3及び第4のアスペクトに関連する第3工程に記載した解法と比較し、より多くの計算を必要とし非効率的である。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明によれば、羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数の差ΔMが、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれての顕著な減少傾向を呈するように設計されていることを特徴とする羽根車を備えたターボ機械が提供される。
(1)上記の顕著な減少傾向を確保するために、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpm又は相対速度のマッハ数の差ΔMの極小値ΔMmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4又は相対速度のマッハ数の差ΔMm-0.4と上記極小値ΔCpm又はΔMmとの差分D又はDMが、ターボ機械の比速度依存の所定値に選定されるように、3次元逆解法による設計手法の入力条件としての翼負荷分布を選定して、それを実現しうる羽根車の羽根形状を決定すること、
(2)圧力係数Cp又は相対速度のマッハ数M、ひいては、相対圧力差ΔCp又は相対速度のマッハ数Mの差ΔMに代えて、正規化された圧力係数Cp*を圧縮性流れにも非圧縮性流れにも共通的に採用することで、上記の差分D又はDMに相当する正規化された圧力係数の差分D*をターボ機械の比速度Nsの関数で表現し、所与の比速度のターボ機械に対応する上記差分D*が上記関数に従う所定値に選定されるように、3次元逆解法による設計手法の入力条件としての翼負荷分布を選定して、それを実現しうる羽根車の羽根形状を決定すること、
(3)上記(1)(2)により特徴付けられる入力条件で3次元逆解法による設計手法を利用して、ターボ機械を設計し、製造すること、
本発明の第1〜第3のアスペクトの妥当性は、大量の実証例により裏付けられたので、本発明は産業上利用可能に実施できるものである。
本発明の上記アスペクトによれば、子午面2次流れを有効に抑制することができるので、ターボ機械とその下流流路で発生する損失を軽減し、右上りの揚程特性の出現を回避して、ターボ機械の性能を向上させ、運転の安定性を向上させるという点で、産業上の利用価値は絶大である。
Claims (10)
- 羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCpが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と、上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D280が0.20以上に選定されるように設計されたことを特徴とする比速度Ns=280以下の羽根車を有し非圧縮流れを取り扱うターボ機械。
- 羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCpが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と、上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D400が0.28以上に選定されるように設計されたことを特徴とする比速度Ns=400以下の羽根車を有し非圧縮流れを取り扱うターボ機械。
- 羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCPが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布における羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と、上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D560が0.35以上に選定されるように設計されたことを特徴とする比速度Ns=560以下の羽根車を有し非圧縮流れを取り扱うターボ機械。
- 羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対速度のマッハ数Mの差ΔMが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対速度のマッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対速度のマッハ数Mの差ΔMm-0.4と上記相対速度のマッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmとの差分DM488が0.23以上に選定されるように設計されたことを特徴とする比速度Ns=488以下の羽根車を有し圧縮性流れを取扱うターボ機械。
- 羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の正規化された圧力係数Cp*に基づく相対圧力差ΔCp*が羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCp*m-0.4と、上記相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mとの差分D*が所与の比速度Nsについて下記の式で表わされる値以上の値に選定されるように設計されたことを特徴とする羽根車を有するターボ機械。
D*=−0.004Ns+3.62 但し、Nsは比速度。 - 設計仕様を入力条件として、所定の子午面形状と羽根枚数を選定し、子午面流路において複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量f o を決定する第1の工程と、
シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼負荷分布(rVθ)/∂mの形状を選定し、翼負荷分布の大きさを、羽根の無次元子午面長さ位置mについて積分した結果が羽根車の設計揚程を満足するように調節した後に、無次元子午面長さ位置mに沿っての翼負荷rVθの分布を決定する第2の工程と、
初期スタッキング量f o を初期値として
を無次元子午面長さ位置mについて積分し、無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定し、羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加して羽根車の3次元形状を決定する第3の工程と、
第3の工程により算出された相対圧力差ΔCpに関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制するのに適した分布であるか否かを判定する第4の工程と、
第3の工程により決定された羽根車の内部流れについて少なくとも、流れの剥離による性能低下の可能性を評価し、2次流れパラメータにより羽根車内の2次流れを評価し、上記評価の結果に基づいて、所与の評価が得られるまで第2の工程に戻って翼負荷分布を修正してから以降の諸工程を反復する第5の工程とを含んで成り、第4の工程により、
羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCpが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と、上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D280が0.20以上であることを判定することを特徴とする比速度Ns=280以下の羽根車を有し非圧縮流れを取扱うターボ機械の製造方法。 - 設計仕様を入力条件として、所定の子午面形状と羽根枚数を選定し、子午面流路において複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量foを決定する第1の工程と、
シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼負荷分布(rVθ)/∂mの形状を選定し、翼負荷分布の大きさを、羽根の無次元子午面長さ位置mについて積分した結果が羽根車の設計揚程を満足するように調節した後に、無次元子午面長さ位置mに沿っての翼負荷rVθの分布を決定する第2の工程と、
初期スタッキング量f o を初期値として
を無次元子午面長さ位置mについて積分し、無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定し、羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加して羽根車の3次元形状を決定する第3の工程と、
第3の工程により算出された相対圧力差ΔCpに関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制するのに適した分布であるか否かを判定する第4の工程と、
第3の工程により決定された羽根車の内部流れについて少なくとも、流れの剥離による性能低下の可能性を評価し、2次流れパラメータにより羽根車内の2次流れを評価し、上記評価の結果に基づいて、所与の評価が得られるまで第2の工程に戻って翼負荷分布を修正してから以降の諸工程を反復する第5の工程とを含んで成り、第4の工程により、
羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCpが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D400が0.28以上であることを判定することを特徴とする比速度Ns=400以下の羽根車を有し非圧縮流れを取り扱うターボ機械の製造方法。 - 設計仕様を入力条件として、所定の子午面形状と羽根枚数を選定し、子午面流路におて複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量foを決定する第1の工程と、
シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼負荷分布(rVθ)/∂mの形状を選定し、翼負荷分布の大きさを、羽根の無次元子午面長さ位置mについて積分した結果が羽根車の設計揚程を満足するように調節した後に、無次元子午面長さ位置mに沿っての翼負荷rVθの分布を決定する第2の工程と、
初期スタッキング量f o を初期値として
を無次元子午面長さ位置mについて積分し、無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定し、羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加して羽根車の3次元形状を決定する第3の工程と、
第3の工程により算出された相対圧力差ΔCpに関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制するのに適した分布であるか否かを判定する第4の工程と、
第3の工程により決定された羽根車の内部流れについて少なくとも、流れの剥離による性能低下の可能性を評価し、2次流れパラメータにより羽根車内の2次流れを評価し、上記評価の結果に基づいて、所与の評価が得られるまで第2の工程に戻って翼負荷分布を修正してから以降の諸工程を反復する第5の工程とを含んで成り、第4の工程により、
羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対圧力差ΔCpが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCpm-0.4と、上記相対圧力差ΔCpの極小値ΔCpmとの差分D560が0.35以上であることを判定することを特徴とする比速度Ns=560以下の羽根車を有し非圧縮流れを取り扱うターボ機械の製造方法。 - 設計仕様を入力条件として、所定の子午面形状と羽根枚数を選定し、子午面流路において複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量foを決定する第1の工程と、
シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼負荷分布(rVθ)/∂mの形状を選定し、翼負荷分布の大きさを、羽根の無次元子午面長さ位置mについて積分した結果が羽根車の設計揚程を満足するように調節した後、無次元子午面長さ位置mに沿っての翼負荷rVθの分布を決定する第2の工程と、
初期スタッキング量f o を初期値として
を無次元子午面長さ位置mについて積分し、無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定し、羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加して羽根車の3次元形状を決定する第3の工程と、
第3の工程により算出された相対速度のマッハ数Mの差ΔMに関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制するのに適した分布であるか否かを判定する第4の工程と、
第3の工程により決定された羽根車の内部流れについて少なくとも、流れの剥離による性能低下の可能性を評価し、2次流れパラメータにより羽根車内の2次流れを評価し、上記評価の結果に基づいて、所与の評価が得られるまで第2の工程に戻って翼負荷分布を修正してから以降の諸工程を反復する第5の工程とを含んで成り、第4の工程により、
羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の相対速度のマッハ数Mの差ΔMが羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対速度のマッハ数Mの差ΔMの極小値ΔMmを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対速度のマッハ数Mの差ΔMm-0.4と上記相対速度のマッハ数の差ΔMの極小値ΔMmとの差分DM488が0.23以上であることを判定することを特徴とする比速度Ns=488以下の羽根車を有し圧縮性流れを取扱うターボ機械の製造方法。 - 設計仕様を入力条件として、所定の子午面形状と羽根枚数を選定し、子午面流路において複数の回転流面を定義し、初期スタッキング量foを決定する第1の工程と、
シュラウド面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの前半にピークを有し、ハブ面上で羽根の無次元子午面長さ位置mの後半にピークを有する翼負荷分布∂(rVθ)/∂mの形状を選定し、翼負荷分布の大きさを、羽根の無次元子午面長さ位置mについて積分した結果が羽根車の設計揚程を満足するように調節した後に、無次元子午面長さ位置mに沿っての翼負荷rVθの分布を決定する第2の工程と、
初期スタッキング量f o を初期値として
を無次元子午面長さ位置mについて積分し、無次元子午面長さ位置mにおける羽根中心線の周方向角度位置fを決定し、羽根に必要な機械的強度を許容する所定値まで羽根厚みを付加して羽根車の3次元形状を決定する第3の工程と、
第3の工程により算出された正規化された相対圧力差ΔCp*に関し、羽根の無次元子午面長さ位置m沿いの分布が羽根車内の2次流れを抑制するのに適した分布であるか否かを判定する第4の工程と、
第3の工程により決定された羽根車の内部流れについて少なくとも、流れの剥離による性能低下の可能性を評価し、2次流れパラメータにより羽根車内の2次流れを評価し、上記評価の結果に基づいて、所与の評価が得られるまで第2の工程に戻って翼負荷分布を修正してから以降の諸工程を反復する第5の工程とを含んで成り、第4の工程により、
羽根の負圧面上でのハブ側とシュラウド側間の正規化された圧力係数Cp*に基づく相対圧力差ΔCp*が羽根の無次元子午面長さ位置m沿いに羽根出口方向に向うにつれて示す顕著な減少傾向の程度に関し、相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mを得る無次元子午面長さ位置mmから無次元子午面長さ0.4を差し引いた羽根位置mm−0.4において得られる相対圧力差ΔCp*m-0.4と、上記相対圧力差ΔCp*の極小値ΔCp*mとの差分D*が所与の比速度Nsについて下記の式で表わされる値以上の値であることを判定することを特徴とする羽根車を有するターボ機械の製造方法。
D*=−0.004Ns+3.62 但し、Nsは比速度。
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