JP3669798B2 - 難燃減容高性能エアフィルタ濾材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体、液晶、バイオ・食品工業及び原子力発電所施設、病院施設等のRI(radio isotope)関係などで用いられる高性能エアフィルタにおいて、気体中の不純物を濾過するために使用される焼却減容可能な高性能エアフィルタ用濾材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来高性能エアフィルタ用濾材として、主原料がガラス繊維のものが広く用いられているが、使用済みの濾材は再利用できずまた焼却処分が不可能なため産業廃棄物として捨てられている。とくにRI施設で使用された使用済み濾材は放射性廃棄物質となるため、大きな環境問題となっている。
【0003】
このため、近年ガラス繊維に可燃の有機繊維を混抄させ燃焼処理により体積が減少する減容高性能エアフィルタ濾材が開発されているが、火災等の事故で炎が着火した際にオールガラス繊維製のように自己消火性が無いことから、焼却減容可能でありながらオールガラス繊維製濾材並に難燃性を有する減容高性能エアフィルタ濾材が要望されている。
【0004】
難燃性付与の方法として、特公昭63−56806で示されているように難燃剤を濾材に塗布する方法等が提案されている。しかし、この方法で良好な難燃性を持たせるためには相当量の難燃剤を用いなければならず、製造された濾材は構成繊維間に難燃剤の膜が形成されて目づまりが生じ、エアフィルタの圧力損失の上昇や捕集効率の低下が発生するということで高性能の濾材が出来ないという問題がある。
【0005】
また、実公平6−22417に示されるように、ガラス繊維に自己消火性有機繊維を混抄させアクリル樹脂系バインダーで結合させた例があるが、アクリル樹脂に限らずエマルジョン系、あるいは溶液状のバインダーを用いるとバインダーが選択的にガラス繊維に集中して膜を形成し、上記濾過性能の低下を引き起こすだけでなく、バインダー膜は燃え易いため、結果的に難燃性能も低下させる問題がある。これは、減容高性能エアフィルタ濾材を構成している平均繊維径約数μm 〜10μm 以上の太い有機繊維とサブミクロンオーダーの極細ガラス繊維との間で繊維径の差が極端であるため、比表面積の大きい極細ガラス繊維にバインダー溶液が集中し易いのが原因と見られる。この場合、バインダーを濾材に付与させなければ濾過性能と難燃性能を持たせることが可能かもしれないが、濾材は通常エアフィルタとして使用される際、濾材面積を広くとるためジグザグに折る、いわゆるプリーツ加工を行うので加工強度、および送風時に破れないようするため実用強度が必要であり、バインダー付与は不可欠である。ちなみに濾材に必要な強度は常態の引張強度が濾材の縦方向で1500g /25.4mm幅以上が目安となる。
【0006】
これを解決する手段として、濾材に0.05〜0.5デニールの細デニールポリビニールアルコール系繊維を3−40重量%配合する方法(特公平6−13082)が提案されているが、この方法では細デニールポリビニールアルコール系繊維の配合率が多いと自己消火性を失ってしまう、極細ガラス繊維を60%以上配合しないと濾過性能が低下するなどの問題点があり、50%以上焼却減容し、かつ自己消火性を持たなければならないという目的からすれば、この方法では達成できない。
【0007】
また近年、濾過性能面において、クリーンルーム、クリーンベンチ、空調機等に使用される送風機のランニングコスト低減の目的で、減容高性能エアフィルタ濾材の低圧損化・高捕集効率化の要望でPF値12以上(粒子径0.3μm )の開発が望まれているが、これを満たす難燃減容高性能エアフィルタ濾材はまだ無いのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、捕集効率の対象粒径0.3μm の際のPF値が12以上の高濾過性能であり、十分な加工強度と実用強度を持ち、オールガラス繊維製高性能エアフィルタ濾材並に難燃性を有することを同時に満たした難燃減容高性能エアフィルタ濾材とその製造方法を提供することである。
【0009】
【発明を解決するための手段】
この課題は、平均繊維径0.65μm 以下のガラス繊維10〜50重量%に自己消火性有機繊維50〜90重量%を配合し、この基材100重量% に対し、繊維状バインダー1〜10重量%を配合させてなる、捕集効率の対象粒径0.3μm の際下記式
Figure 0003669798
によって算出されるPF値が12以上であり、常態の引張強度が濾材の縦方向で1500g /25.4mm幅以上であり、JIS難燃性試験法 L−1091A−1法に記載される方法で区分3を満足する難燃性を有することを特徴とする焼却減容処理可能な高性能エアフィルタ濾材、および
原料繊維の抄紙段階以前の原料調整工程で繊維状バインダーを添加し、湿式抄紙法で抄紙し、その後に乾燥させることを特徴とする上記難燃減容高性能エアフィルタ濾材の製造方法によって解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の濾材で用いられるガラス繊維は火焔延伸法やロータリー法で製造されるウール状の極細ガラス繊維であり、濾材の圧力損失を所定の値に保ち、適正な捕集効率とするために使用する。繊維径が細くなるほど捕集効率は高くなるため、PF値が12以上の濾材を得るには平均繊維径0.65μm 以下の極細ガラス繊維を配合する必要がある。ただし、繊維径が細くなりすぎると圧力損失が上昇してPF値が低くなるので、この範囲内で適正な繊維径のものを選択すべきである。なお、数種の繊維径のものをブレンドして配合しても構わない。ガラス繊維の配合率は10〜50重量%、好ましくは10〜40重量% 、特に15〜30重量% が適当であり、50重量%以上では焼却減容の目的が失われてしまうし、10重量%未満ではガラス繊維の絶対量が不足するため捕集効率を悪化させてしまう。
【0011】
また自己消火性繊維とは、公知のあらゆる自己消火性繊維、例えばハロゲンを分子鎖内に導入した難燃繊維、例えば塩化ビニール繊維、モダクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ビニロン繊維、あるいはリン化合物を樹脂内に練り込んだ難燃繊維、例えば難燃ポリエステル繊維、難燃ポリノジック繊維などであって、LOI値(限界酸素指数)26以上であれば素材に限定されるものではない。ただし、製造面からはスラリー時の分散性、濾材シート肌の良いものが望ましく、悪い素材については分散剤、粘剤等抄紙薬品の添加が必要となる。また前述の点から繊維径1〜70μm 、繊維長1〜15mmのものが望ましい。自己消火性繊維の配合率は、50〜90重量% 、好ましくは60〜90重量% 、特に好ましくは70〜85重量% が適当である。
【0012】
なお濾材の難燃性については、JIS難燃性試験法 L−1091 A−1法に記載されているような方法で、濾材面を45°傾斜させた下方からミクロバーナーで1分間加熱した後の炭化面積が30cm2 以下、炭化距離20cm以下、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下(区分3)を満たしていれば、オールガラス繊維製高性能エアフィルタ濾材並の難燃性とみなすことができる。
【0013】
本発明において繊維状バインダーの使用は特に重要である。繊維状バインダーとは湿熱溶融タイプのPVA繊維バインダー、鞘部に低融点のPET、変性PP、変性ポリエステルを用いた芯鞘繊維などのことであり、製造時の乾燥工程に入るまで初期の繊維形状を保持する特徴を持っている。繊維状バインダーは溶液状バインダーのように自身の表面張力、主体繊維表面との濡れ性に左右されることが無いため、ガラス繊維に集中して膜形成することなく主体繊維を点接着させる。これにより溶液状バインダーより圧力損失の上昇が極めて少なく、濾過性能を格段に向上させることができるのである。
【0014】
繊維状バインダーの添加量は、1〜10重量%が望ましく、1重量%未満の添加では加工、実使用に耐える濾材強度が出ず、10重量%以上では溶液状バインダーほどではないもののやはり目づまりによる圧力損失の上昇が起こり濾過性能が低下してしまう。またバインダーの可燃物量が多くなるため、難燃性を悪化させる。1〜10重量% の範囲内であれば、濾過性能と難燃性を悪化させることなく、濾材の常態の引張強度を濾材の縦方向で1500g/25.4mm幅以上とすることが可能である。
【0015】
また繊維状バインダーは、製造時において原料繊維の抄紙段階以前の原料調整工程で繊維状バインダーを添加するいわゆる内添法で使用する必要がある。この方法により繊維状バインダーは原料全体にわたって均一に分散し点接着することで、濾過性能面、強度面でその実力を発揮できるのである。
このため、繊維状バインダーは原料繊維をパルパー、ビーターなどの離解・分散工程で添加することが望ましい。なお原料繊維の分散工程ではガラス繊維の分散性を良くするために、硫酸酸性でpH2〜4の範囲で調整する方法をとる。
【0016】
分散させた原料スラリーは、抄紙機で湿式抄紙され、この湿紙を乾燥させることにより濾材を製造することができる。乾燥方法としては様々な方法が利用できるが、ヤンキードライヤーや多筒式ドライヤーのように熱圧着する方式の方がより高い強度物性を得ることができ、望ましい。また乾燥温度は110〜150℃程度であるが、芯鞘繊維を用いた場合は鞘部の溶融温度により適正な温度設定をする必要がある。
【0017】
また、バインダーと難燃剤は外添法による付与はできないが、撥水性を付与させるためシリコン系、フッ素系などの撥水剤を抄紙段階以降で付与させても問題はない。
【0018】
【実施例】
実施例1
平均繊維径0.5μm の極細ガラス繊維30重量%、難燃ビニロン繊雑〔(株)クラレVPX203〕70重量%に繊維状PVAバインダー4重量%((株)クラレVPB107−2)を配合し、パルパーにてpH3.0の酸性水を用いて離解後、抄紙機にて抄紙し、120℃の多筒式ドライヤーで乾燥し、目付重量80g /m2 の濾材を得た。
【0019】
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
実施例2
実施例1において、繊維状PVAバインダーの配合率を1重量% とした以外は実施例1と同様にして、目付重量80g /m2 の濾材を得た。
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
【0020】
実施例3
実施例1において、平均繊維径0.32μm の極細ガラス繊維15%、難燃ビニロン繊維〔(株)クラレVPX203〕85重量%とした以外は実施例1と同様にして、目付重量81g /m2 の濾材を得た。 後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
【0021】
実施例4
実施例1において、平均繊維径0.5μm の極細ガラス繊維30重量%、難燃ポリエステル繊維〔ユニチカ (株) の難燃ポリエステル2d×5mm〕70%とした以外は実施例1と同様にして、目付重量81g /m2 の濾材を得た。
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
【0022】
比較例1
実施例1において、繊維状PVAバインダーの代わりに、湿紙状態にアクリルラテックスバインダー〔日本アクリル化学(株)プライマーE−358〕を基材100重量%に対し5重量%とした以外は実施例1と同様にして、目付重量80g /m2 の濾材を得た。
【0023】
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
比較例2
平均繊維径0.5μm の極細ガラス繊維30重量%、易燃性ビニロン繊維〔(株)クラレVPB103〕70重量% に繊維状PVAバインダー4重量%を配合し、パルパーにてpH3.0の酸性水を用いて離解後、抄紙機にて抄紙した後、湿紙状態にリン系難燃剤〔大日本インキ化学工業(株)フレームガード〕を基材100重量%に対し15重量% 付与して120℃の多筒式ドライヤーで乾燥し、目付重量82g/m2 の濾材を得た。
【0024】
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
比較例3
実施例1において、繊維状PVAバインダーの配合率を11重量%とした以外は実施例1と同様にして、目付重量80g /m2 の濾材を得た。
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
【0025】
比較例4
実施例1において、平均繊維径0.26μm の極細ガラス繊維5%、難燃ビニロン繊維〔(株)クラレVPX203〕95重量% とした以外は実施例1と同様にして、目付重量81g/m2 の濾材を得た。
後記表1の様なフィルタ性能が得られた。
【0026】
実施例1〜4ならびに比較例1−4の濾材の分析を下記の方法で行い、結果を表1に示した。
(1) 圧力損失
自製の装置を用い有効面積100cm2 の濾紙に面風速5.3cm/秒で通風し、その時の圧力損失を微差圧計で測定した。
(2) DOP捕集効率
ラスキンノズルで発生させた多分散DOP粒子を含む空気を、有効面積100cm2 の濾紙に面風速5.3cm/秒で通風した時のDOP捕集効率をリオン社製レーザーパーティクルカウンターを使用し測定した。
(3) 可燃物
925±25℃、10分間電気炉にて加熟し、加熱前後の重量差を加熱前重量で割り、百分率として求めた。
(4) 引張強度
濾紙の縦方向より採取した25.4mm巾の試験片についてスパン長100mm、引張速度15mm/分で定速引張試験機を用い測定した。
(5) PF値
濾紙のフィルタ性能の指標となるPF値は、(1)と(2)の測定に基づき、次式より求めた。(PF値が高い程、同一圧力損失で高捕集効率を示す。)
Figure 0003669798
(6) 難燃性
JIS難燃性試験法 L−1091 A−1法に基づき、区分3(炭化面積が30cm2 以下、炭化距離20cm以下、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下)に適合したものを○、しないものを×、一部適合しているものを△とした。
【0027】
Figure 0003669798
【0028】
【発明の効果】
本発明のエアフィルタ濾材は、オールガラス繊維製濾材並に自己消火性を持ち且つ焼却処分時には大幅にフィルタ容積を減少し、性能面ではPF値12以上の高性能濾材であり且つ加工強度と実用強度に優れている。

Claims (5)

  1. 平均繊維径0.65μm 以下のガラス繊維10〜50重量%に自己消火性有機繊維50〜90重量%を配合し、この基材100重量% に対し、湿熱溶融タイプのPVA繊維バインダーおよび芯鞘繊維よりなる群から選択された繊維状バインダー1〜10重量%を配合し、pH2〜4の硫酸酸性水で離解および抄紙してなる、捕集効率の対象粒径0.3μm の際下記式
    Figure 0003669798
    によって算出されるPF値が12以上であり、常態の引張強度が濾材の縦方向で1500g /25.4mm幅以上であり、JIS難燃性試験法 L−1091A−1法に記載される方法で区分3を満足する難燃性を有することを特徴とする焼却減容処理可能な高性能エアフィルタ濾材。
  2. 自己消火性有機繊維が繊維径1〜70μm 、繊維長1〜15mmのものである請求項1に記載の焼却減容処理可能な高性能エアフィルタ濾材。
  3. ガラス繊維含有量が10〜40重量%で自己消火性有機繊維含有量が60〜90重量%である請求項1または2に記載の焼却減容処理可能な高性能エアフィルタ濾材。
  4. ガラス繊維含有量が15〜30重量%で自己消火性有機繊維含有量が70〜85重量%である請求項1〜3の何れか一つに記載の焼却減容処理可能な高性能エアフィルタ濾材。
  5. 請求項1〜4の何れか一つに記載の難燃減容高性能エアフィルタ濾材の製造方法において、原料繊維の抄紙段階以前の原料調整工程で繊維状バインダーを添加し、湿式抄紙法で抄紙し、その後に乾燥させることを特微とする上記製造方法。
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