JP3669383B2 - カテーテルチューブ及びバルーンカテーテル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカテーテルチューブ及びこのカテーテルチューブを用いて得られるバルーンカテーテルに関し、さらに詳しくは、生体管壁に傷を付けず、近位端部での操作力が遠位端部に伝わりやすく、且つ生体管腔への挿入が容易なカテーテルチューブ及びそれを用いて得られるバルーンカテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
カテーテルは血管等の生体管腔に挿入され、その近位端の方向を制御されつつ目的の部位に到達させ、該カテーテルを通して生体外から生体管腔内の治療等を行う。
カテーテルは、生体管腔へ挿入しやすく且つカテーテル近位端部での操作力が遠位端部に伝達されやすくするために、カテーテル本体であるカテーテルチューブにある程度の硬さすなわち比較的小なる可撓性を備えることが必要とされる。
一方、生体において重要な役割を担う血管等へ挿入していくのであるから、その挿入の際にカテーテルで血管等を傷つけないようにするためにカテーテルチューブはある程度柔らかく比較的大なる可撓性を備えることが必要とされる。
この相矛盾する要求に応えるものとして、遠位端部を比較的大なる可撓性材料(軟質材料)で形成し、近位端部を比較的小なる可撓性材料(硬質材料)で形成したカテーテルチューブが提案されている。しかし、軟質材料(遠位端部)と硬質材料(近位端部)とをつなぎ合わせただけのものであるから、該継ぎ目部分でキンクし生体管腔に引き掛かり生体管壁に傷をつけたり、生体管腔への挿入の妨げになることがあった。
別のカテーテルチューブとして、硬質材料からなる内層管と軟質材料からなる外層管とが積層された二層チューブで、遠位端側では内層管の肉厚が外層管の肉厚よりも薄く、近位端側では内層管の肉厚が外層管の肉厚よりも厚くなっているカテーテルチューブ(特開昭60−31765号)が提案されている。
しかし、このカテーテルチューブでは、遠位端側と近位端側とにおける可撓性に大差がないので、遠位端側の柔軟性及び近位端側の剛直性のいずれもが中途半端なものになるので、生体管腔への挿入性改善と近位端部の操作力を遠位端部へ伝達する能力向上を両立させるには不十分であった。また内層管と外層管とが剥がれやすく血管内に留置した場合には血栓の発生の恐れがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生体管壁に傷を付けず、近位端部での操作力が遠位端部に伝わりやすく、且つ生体管腔への挿入が容易なカテーテルチューブ及びバルーンカテーテルを提供することにある。
本発明者らは、この目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、管壁の周方向に軟質材料及び硬質材料が積層されてなるチューブを用いることによって、前記目的を達成できることを見いだし、この知見に基いて本発明を完成するに到った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、(1) 遠位端から近位端までを連通するルーメンを有するカテーテルチューブであって、
該チューブは半径方向に積層構造をなす多層管であり、
該チューブの半径方向に積層された管壁の少なくとも一層は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成し且つ長軸方向に軟質材料及び硬質材料を帯状に延在して形成してなるものであり、該チューブ遠位端側では該一層断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では該一層断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものであり、
該一層以外の層は周方向に同質の材料からなるものであることを特徴とするカテーテルチューブが提供される。
【0005】
本発明のカテーテルチューブの好適な態様としては以下のごときものが提供される。
(2) 遠位端から近位端までを連通するルーメンを有するカテーテルチューブであって、
該チューブは内層管と外層管とからなる積層構造をなしており、内層管は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成し且つ長軸方向に軟質材料及び硬質材料を帯状に延在して形成してなるものであり、該チューブ遠位端側では内層管断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では内層管断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものであり、
外層管は周方向に同質の材料からなるものであることを特徴とするカテーテルチューブ。
(3) 遠位端から近位端までを連通するルーメンを有するカテーテルチューブであって、
該チューブは内層管と外層管とからなる積層構造をなしており、外層管は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成し且つ長軸方向に軟質材料及び硬質材料を帯状に延在して形成してなるものであり、該チューブ遠位端側では外層管断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では外層管断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものであり、
内層管は周方向に同質の材料からなるものであることを特徴とするカテーテルチューブ。
(4) 遠位端から近位端までを連通するルーメンを有するカテーテルチューブであって、
該チューブは内層管と中間層管と外層管とがこの順で積層される構造をなしており、中間層管は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成し且つ長軸方向に軟質材料及び硬質材料を帯状に延在して形成してなるものであり、該チューブ遠位端側では中間層管断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では中間層管断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものであり、
内層管及び外層管は各々周方向に同質の材料からなるものであることを特徴とするカテーテルチューブ。
(5)軟質材料がポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする前記(1)のカテーテルチューブ。
(6)硬質材料がポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン又はポリエチレンであることを特徴とする前記(1)のカテーテルチューブ。
(7)硬質材料の層と軟質材料の層とをカテーテルチューブの中心軸に対称になるように周方向に積層してなることを特徴とする前記(1)のいずれかのカテーテルチューブ。
(8)硬質材料の層と軟質材料の層とを各々2〜10有し、それらを周方向に均等に分布するように積層してなることを特徴とする前記(1)のいずれかのカテーテルチューブ。
【0006】
また本発明によれば、前記(1)〜(8)のいずれかのカテーテルチューブの遠位端部に薄膜で形成されるバルーンを設けてなることを特徴とするバルーンカテーテルが提供される。
【0007】
本発明のカテーテルチューブは半径方向に多層に積層された多層管である。
多層管としては、外層管と内層管とからなる二層管や、外層管と中間層管と内層管とからなる三層管などが挙げられる。
【0008】
本発明のカテーテルチューブの半径方向に積層された管壁の少なくとも一層は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成され且つ長軸方向に帯状に延在してなるものである。
【0009】
カテーテルチューブを形成する軟質材料又は硬質材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、含フッ素ポリマー、シリコーン等や、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体のごときポリアミドエラストマー等から適宜選択される。
軟質材料としては、通常、ショア硬度が60D以下、好ましくは20D〜50Dのものが用いられる。
硬質材料としては、通常、ショア硬度40D〜90D、好ましくは50D〜80Dのものが用いられる。硬質材料と軟質材料とのショア硬度の差は、ショアD表示で、通常、10D〜60D、好ましくは20D〜50Dである。
【0010】
本発明のカテーテルチューブは該チューブ遠位端側では該一層断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では該一層断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものである。より具体的には、該チューブ遠位端側では軟質材料の層よりも硬質材料の層のほうが周長の割合が少なく、該チューブ近位端側では軟質材料の層よりも硬質材料の層のほうが周長の割合が多くなっている。
ここで周長とは周方向に積層してなる管壁部分に分布している硬質材料の層又は軟質材料の層の周方向長さを総和したものである。
【0011】
なお、遠位端側では硬質材料の層よりも軟質材料の層のほうが断面積(または周長の割合)が多くなればよいので、硬質材料の層が全くなくてもよい。近位端側では軟質材料の層よりも硬質材料の層のほうが断面積(周長の割合)が多くなればよいので、軟質材料の層が全くなくてもよい。
【0012】
積層の形態は特に限定されないが、カテーテルチューブの曲げ特性がどの方向にもほぼ均質となるようにするために、軟質材料の層と硬質材料の層とをそれぞれ2〜10個有し、それらをチューブの中心軸に対して対称になるように周方向に均等に分布することが好ましい。
本発明カテーテルチューブは、二以上の押出機を用いて、硬質材料の押し出し量(または圧力)と軟質材料の押し出し量(または圧力)を調整しながら押し出し成形することによって得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るカテーテルチューブの実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明カテーテルチューブの一実施形態を示す図、図2は図1に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図、図3は本発明カテーテルチューブの別の実施形態を示す図、図4は図3に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図、図5は本発明カテーテルチューブの別の実施形態を示す図、図6は図3に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図である。
【0015】
[実施形態1]
図1に示すカテーテルチューブ1は、遠位端から近位端までを連通するルーメンを有し、内層管10と外層管11とからなる二層管である。該チューブは、通常、その外径が0.5〜5mm、肉厚が0.05〜1mmである。
該カテーテルチューブの内層管の管壁は周方向に軟質材料層2及び硬質材料層3が積層され且つ長軸方向に帯状に延在されている。
積層の形態は特に限定されないが、カテーテルチューブの曲げ特性がどの方向にもほぼ均質となるようにするために、軟質材料の層と硬質材料の層とをそれぞれ2〜10個有することが好ましく、またそれらをチューブの中心軸に対して対称にし、周方向に均等に分布することが好ましい。
実施形態1のカテーテルチューブにおいては、図2に示すように軟質材料の層と硬質材料の層とが交互に放射状に積層されている。
【0016】
実施形態1のカテーテルチューブの内層管は軟質材料層にはショア硬度40Dのポリアミドエラストマーが使用され、硬質材料層にはショア硬度70Dのポリアミドが使用されている。外層管の材料は特に限定されないが、実施形態1においてはショア硬度40Dのポリアミドエラストマーが用いられている。
【0017】
外層管を設けることにより、内層管の軟質材料層と硬質材料層との継ぎ目部分を外層管が被う状態になるので該継ぎ目部分の接合強度を高めることができる。また、外層管の材料として内層管を構成する硬質材料又は軟質材料のどちらかと同質の材料を選ぶことができるので内層管と外層管とが剥離することが少なくなる。
【0018】
該チューブ遠位端側では硬質材料の層よりも軟質材料の層のほうが周長の割合が多くなっている。該チューブ遠位端側では硬質材料の層が全くなくてもよい。
該チューブの遠位端側では軟質材料の層が多いから、柔らかく、比較的大なる可撓性を有するので、生体管壁に遠位端が衝突しても傷をつけることがなく、挿入が容易である。
【0019】
該チューブ近位端側では軟質材料の層よりも硬質材料の層のほうが周長の割合が多くなっている。該チューブ近位端側では軟質材料の層が全くなくてもよい。
該チューブの近位端側では硬質材料の層が多いから、硬く、比較的小なる可撓性を有するので、近位端での操作力が遠位端側に伝わりやすく、近位端側から遠位端側へ押してもカテーテルチューブが座屈したり曲折したりすることなく挿入できるので、生体管腔への挿入が容易である。また、カテーテルチューブの遠位端の向きを変えるためにカテーテルチューブを回転させたときもその回転力が遠位端に伝わりやすく、生体管腔の分岐部において所望の方向にカテーテルを導くことができる。
本実施形態のカテーテルチューブは、まず内層管を2機の押出機を用いて軟質材料と硬質材料とを周方向交互に且つ長軸方向帯状に延在するように押し出し成形し、次に内層管の外表面に外層管を形成するように、軟質材料を被覆しながら押し出し成形することにより得た。
【0020】
[実施形態2]
図3に示すカテーテルチューブ101は、内層管110と外層管111とからなる二層管であり、外層管が実施形態1のカテーテルチューブの内層管のごとく周方向に軟質材料の層及び硬質材料の層が積層されている。外層管の積層構造は実施形態1と同様になされている(図6参照)。
内層管は周方向に同質の材料からなるものである。内層管を構成する材料は軟質材料でも硬質材料でもよいが、カテーテルチューブの剛性を保つために硬質材料であるほうが好ましい。
実施形態2のカテーテルチューブも実施形態1のカテーテルチューブと同様に、該チューブの外層管近位端側では硬質材料の層が多いから、硬く、比較的小なる可撓性を有するので、近位端での操作力が遠位端側に伝わりやすく、近位端側から遠位端側へ押してもカテーテルチューブが座屈したり曲折したりすることなく挿入できるので、生体管腔への挿入が容易である。また、カテーテルチューブの遠位端の向きを変えるためにカテーテルチューブを回転させたときもその回転力が遠位端に伝わりやすく、生体管腔の分岐部において所望の方向にカテーテルを導くことができる。該チューブの外層管遠位端側では軟質材料の層が多いから、柔らかく、比較的大なる可撓性を有するので、生体管壁に遠位端が衝突しても傷をつけることがなく、挿入が容易である。また内層管により外層管の軟質材料層及び硬質材料層の継ぎ目が補強される。また内層管と外層管との剥離を防止できる。
【0021】
[実施形態3]
図5に示すカテーテルチューブ201は内層管210と中間層管212と外層管211とがこの順で積層される構造をなしている。中間層管は実施形態1のカテーテルの内層管と同様に周方向に軟質材料及び硬質材料が積層されている。中間層管の積層構造は実施形態1のものと同様に遠位端側と近位端側とで積層の割合を変えたものとなっている(図6参照)。
内層管及び外層管は各々周方向に同質の材料からなるものである。内層管及び外層管を構成する材料は軟質材料でも硬質材料でもよいが、カテーテルチューブの剛性を保つために内層管は硬質材料であるほうが好ましく、生体管壁との摩擦を考慮すると外層管は軟質材料であるほうが好ましい。
実施形態4のカテーテルチューブも実施形態1のカテーテルチューブと同様に、該チューブの外層管近位端側では硬質材料の層が多いから、硬く、比較的小なる可撓性を有するので、近位端での操作力が遠位端側に伝わりやすく、近位端側から遠位端側へ押してもカテーテルチューブが座屈したり曲折したりすることなく挿入できるので、生体管腔への挿入が容易である。また、カテーテルチューブの遠位端の向きを変えるためにカテーテルチューブを回転させたときもその回転力が遠位端に伝わりやすく、生体管腔の分岐部において所望の方向にカテーテルを導くことができる。該チューブの外層管遠位端側では軟質材料の層が多いから、柔らかく、比較的大なる可撓性を有するので、生体管壁に遠位端が衝突しても傷をつけることがなく、挿入が容易である。
【0022】
【発明の効果】
本発明のカテーテルチューブは、遠位端部と近位端部とにおける可撓性の差が大きくできるので、遠位端側の柔軟性及び近位端側の剛直性の両立が十分に図れ、該カテーテルチューブを生体管腔に挿入しても、生体管壁に傷をつけ難く、近位端部の操作力を遠位端部へ伝わりやすく、且つ生体管腔への挿入が容易である。
本発明のカテーテルチューブは異質の材料が噛み合うように管壁が形成されているので、各層間の接合強度が十分あり、層間剥離を起こしにくい。
また、本発明に係るカテーテルチューブの遠位端部に薄膜からなうバルーンを設けて得られるバルーンカテーテルも本発明カテーテルチューブの前記特性を有するので、医療処置の操作性を大幅に改善するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明カテーテルチューブの一実施形態を示す図。
【図2】 図1に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図。
【図3】 本発明カテーテルチューブの別の実施形態を示す図。
【図4】 図3に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図。
【図5】 本発明カテーテルチューブの別の実施形態を示す図。
【図6】 図5に示すカテーテルチューブのA−A’断面、B−B’断面及びC−C’断面を示す図。
【符号の説明】
1、101及び201・・・カテーテルチューブ
2・・・軟質材料層
3・・・硬質材料層
10、110及び210・・・内層管
11、111及び211・・・外層管
212・・・中間層管
Claims (2)
- 遠位端から近位端までを連通するルーメンを有するカテーテルチューブであって、
該チューブは半径方向に積層構造をなす多層管であり、
該チューブの半径方向に積層された管壁の少なくとも一層は周方向交互に軟質材料及び硬質材料で形成し且つ長軸方向に軟質材料及び硬質材料を帯状に延在して形成してなるものであり、該チューブ遠位端側では該一層断面に占める硬質材料部分の断面積よりも軟質材料部分の断面積のほうが多く、該チューブ近位端側では該一層断面に占める軟質材料部分の断面積よりも硬質材料部分の断面積のほうが多くなっているものであり、
該一層以外の層は周方向に同質の材料からなるものであることを特徴とするカテーテルチューブ。 - 請求項1記載のカテーテルチューブの遠位端部に薄膜で形成されるバルーンを設けてなることを特徴とするバルーンカテーテル。
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