JP3668469B2 - トルソの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デパート等の衣服類展示場において、各種衣服の展示に使用されるトルソの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
デパート、スーパー、量販店或いはブテツクなどの洋服売場では、衣服の展示にトルソを使用する場合がある。このトルソは、木材、発泡樹脂、石膏などを材料として用い、頭や手足のない人形の胴体に形成したものである。そして、必要に応じこの胴体の表面に、展示する洋服に合わせた色や肌色の表面布が貼り付けられる。通常、この表面布は胴体の繋ぎ目を隠して、胴体の表面を滑らかに見せるとともに、胴体に洋服をスムースに着せ替えられるようにしている。このため前記表面布として織目の細かい綿や化学繊維布などが用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような木材、発泡樹脂、石膏のみからなるなるトルソやこれらに布を貼り付けたトルソにあっては、表面が滑らかであり、衣類の着せ替え時に頻繁に汚れた手で触れられることにより表面が汚れ易く、その汚れがひどくなるという問題があった。一方、発泡樹脂からなるものでは環境問題の上から廃棄処分が難しいという不都合があり、石膏からなるものでは重量が大きく、取り扱いや搬送、収納に不便を伴うという問題あった。
【0004】
また、種々のトルソを収納する空間を確保することも難しい。さらに、布を貼り付けてあるか否かに拘らず、トルソの表面は全体として滑らかに形成されているため、着付けした洋服が肩部のみで支持された状態となって全体が垂れ下がり、例えば衣服の胴部の途中にしわを付けたり膨らみを付けたりするなどの個性的なデザインを表現しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、表面の汚れが目立ちにくく、着せ替えて展示されるあらゆる色彩の洋服に対しても見る人に違和感を与えることがなく、かつ、着せ替えた洋服の胴部などに積極的かつ容易にしわや膨らみを付けて個性的なデザインを付与できるトルソの製造方法を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的達成のために、請求項1の発明にかかるトルソの製造方法は、水に浸した紙に水溶糊を付けてトルソ用型の表面に重ね貼りし、この重ね貼りした重ね貼り紙をこれの乾燥後に首部、肩部、腕部、脇腹部および腰部にかけて前後に分割して前記トルソ用型より分離し、このトルソ用型から分離した二つの重ね貼り紙を前記分割した部位で繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせた中空状の重ね貼り紙の上にさらに仕上げ用シートを重ね貼りし、この重ね貼りした仕上げ用シートの上に、互いに隣接するように細紐を順次巻き付けながら接着剤を介して接着することを特徴とする。
【0007】
これにより、中空状に重ね貼りした重ね貼り紙をトルソ基体として、これの表面に細紐が巻き付けられた丈夫なトルソを安価に製造できる。また、細紐は表面の汚れを目立たなくし、細紐の線の美しさを表現しながら、あらゆる色の洋服の展示にも見る人に違和感を与えないトルソを提供できる。さらに、細紐は着替えて展示される洋服に対し適度な摩擦抵抗を与えるため、洋服の胴部などにしわや膨らみを積極的に付与でき、展示方法に多様性を持たせることができる。
【0008】
また、請求項2の発明にかかるトルソの製造方法は、前記重ね貼り紙として古新聞紙を使用することを特徴とする。この古新聞紙は吸水性にすぐれ、水溶糊に馴染み易いため、重ね貼り作業を迅速かつスムースに行うことができる。
【0009】
また、請求項3の発明にかかるトルソの製造方法は、前記トルソ用型から分離された重ね貼り紙を、前記分離した部位でボンド糊により繋ぎ合わせることを特徴とする。これにより、繋ぎ合わせ目に凹凸が発生するのを防止でき、全体として表面の滑らかなトルソ基体を形成することができる。
【0010】
また、請求項4の発明にかかるトルソの製造方法は、前記細紐として紙製のクラフト紐を用いることを特徴とする。これにより、線の美しい胴部のデザインを安価かつ容易に表現できる。
【0011】
また、請求項5の発明にかかるトルソの製造方法は、仕上げ用シートの上に巻き付けられた細紐の上に汚れ止め処理を施すことを特徴とする。これにより、細紐の汚れおよび色彩的劣化の進行を効果的に抑制でき、トルソ全体の長寿命化を図ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図について説明する。図1は本発明のトルソの製造に使用するトルソ用型Aを示し、これが木材やプラスチックなどによって人の胴体の形状に形成されている。なお、木材としては木質が柔らかく彫刻が容易な南洋材などが用いられる。一方、プラスチック製のトルソ用型Aは成形型を用いて一体形成される。
【0013】
このトルソ用型Aは、首部1、肩部2、腕部3、脇腹部4、腰部5が人体の形状に合わせて作られており、また、全体として一般に着替え(着せ替え)する衣服のサイズより僅か小さ目に作られている。なお、このトルソ用型Aは例えば男性用、女性用、子供用、マタニティ用などに合わせて別々に用意される。
【0014】
また、トルソの製造にあたって、前記トルソ用型Aの全表面には複数枚の紙6が均一面を形成するように、つまり、紙の繋ぎ目で凹凸が生じないように順次重ね貼りされる。この紙6としては、吸水性にすぐれ、かつ水溶糊に馴染み易い古新聞紙などの新聞紙を適当なサイズや形状に切断するなどして用いられる。すなわち、これらの古新聞紙などを、まず、水に浸して吸水させた上で、その古新聞紙に水溶糊を塗り付け、これを図2に示すように前記トルソ用型Aの全表面(首部1、腕部3、腰部5の各端面を含む)に順次重ねるようにして貼り付ける。なお、図2はその重ね貼りの途中の状態を示す。
【0015】
このようにして複数枚の古新聞紙がトルソ型Aの全表面に重ね貼りされ、この古新聞紙が重ね貼りされた重ね貼り紙Bは全体として2〜3ミリの厚さとされ、その後、自然乾燥または乾燥機利用による乾燥を行って硬化させる。なお、このようにな重ね貼りによって最下位の紙1のトルソ用型Aの表面に対する剥離を容易にするため、前記水溶糊の濃度をトルソ用型Aの材質に応じて選択したり、トルソ用型Aの表面に予め剥離剤付着などの剥離容易化処理を施しておくことが望ましい。
【0016】
次に、トルソ用型Aの表面で乾燥されて硬化した重ね貼り紙Bを、首部1、肩部2、腕部3、脇腹部4および腰部5の対応部位で、例えば図3に示す鎖線Lに沿って、カッタナイフで切り込んで二分割する。このため分割された重ね貼り紙B1、B2はトルソ用型Aから別々に型抜き(剥離)されて、図4に示すように分離される。なお、重ね貼り紙Bの分割数や分割箇所は、トルソ用型Aの形状やデザインに合わせて、トルソ型から容易に分離できる三分割以上とすることも任意である。
【0017】
続いて、前記のようにトルソ用型Aから分離した二つの重ね貼り紙B1、B2を、前記分割した部位で繋ぎ合わせて中空状の重ね貼り紙とする。この中空状の重ね貼り紙はトルソ基体Cとなるものであり、図5に示すようになる。重ね貼り紙B1、B2の繋ぎ合わせは、表面に突出する金属などの締結部品を用いずに、ボンド糊による接着により行う。これにより重ね貼り紙B1、B2の繋ぎ目7で表面が凹凸にならないように滑らかに仕上げられる。
【0018】
また、このように繋ぎ目7を滑らかに仕上げた後、トルソ基体Cの表面全体に仕上げ用シート8を図6に示すように重ね貼りして、仕上げ基体Dとする。仕上げ用シート8としては例えば肌色や黄土色など、後述の紐の色と同系色の紙や布を用いることが望ましく、水溶糊によりトルソ基体C表面の全体に接着される。
【0019】
次に、このように仕上げ用シート8を重ね貼りした仕上げ基体Dの表面に対し、首部から腰部にかけて木工ボンドなどの接着剤を塗布しながら一本の細紐9を略水平方向に上方および下方の一方または途中から順次巻き付けていく。図7はその細紐9を上方から下方に向けて順次巻き付けていく様子の一例を示すものである。こうして巻き付けられる細紐9は隣接する部分で互いに間隙を生じないようにていねいに敷き詰める。これにより仕上げ基体Dの表面には細紐9による多数の線が美しく表出される。
【0020】
ここで、用いる細紐9は二重巻き紐などの市販の紙や繊維のクラフト紐が用いられる。紙の紐は、適度の硬さを持ち、接着剤による仕上げ基体Dへの接着がスムース、迅速に行えるとともに、コストが安いため実用性大である。繊維の場合は接着剤に馴染み易い木綿などが望ましい。
【0021】
このように仕上げ基体Dへの細紐9の巻き付け作業を終了した後は、細紐9の巻き終りの始末を行い、さらに細紐9の外へ浸み出た余分の接着剤をきれいに拭き取った後、接着剤の乾燥を持つ。この接着剤が乾燥した後は、前記のように仕上げ基体Dの表面全体に巻き付けられた細紐9の上に、クリヤラッカーなどの吹き付けによる汚れ止め処理を施し、このクリヤラッカーが乾燥するとトルソが完成する。図8は前記のようなトルソ用型の製作からトルソ完成までの手順を示すフローチャートである。
【0022】
また、このようにして完成されたトルソには脚柱やスタンドが取り付けられ、デパートなどにおいて衣服等の展示に供される、この衣服等の展示では、本発明のトルソに衣服を着せる際に、前記巻き付けられた細紐9が衣服に対して一定の摩擦抵抗を示し、この摩擦抵抗によって衣服自体にしわを与えたり膨らみを与えた状態の展示が可能となり、ファッション的なデザイン付与が可能となる。
【0023】
さらに、巻き付けられた細紐は、肌色または黄土色などクラフト紙が本来持つ色であり、この色は、細紐が持つ線状のデザインの美しさと相俟って、あらゆる色彩の衣服の展示に対しても馴染み、見る者に違和感を与えないという利点がある。従って、従来のように、着せ替える衣服の色に合ったトルソを各別に用意する必要がなくなり、経済的および収納スペース確保の上で有利となる。
【0024】
なお、前記トルソ用型Aに対する紙1の重ね貼りから細紐の汚れ止め処理までの各工程の全部または一部を自動化すれば、トルソの製造能率を向上することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば水に浸した紙に水溶糊を付けてトルソ用型の表面に重ね貼りし、この重ね貼りした重ね貼り紙を乾燥後に首部、肩部、腕部、脇腹部および腰部にかけて前後に分割して前記トルソ用型より分離し、このトルソ用型から分離された二つの重ね貼り紙を前記分割した部位で繋ぎ合わせ、この繋ぎ合わされた中空状の重ね貼り紙の上にさらに仕上げ用シートを重ね貼りし、この重ね貼りした仕上げ用シートの上に、互いに隣接するように細紐を順次巻き付けながら接着剤を介して接着することにより、重ね貼り紙をトルソ基体として、これに細紐が巻き付けられた丈夫なトルソを安価に構成できる。また、細紐の線の美しさを表現しながら、あらゆる色の衣服の展示にも見る人に違和感を与えないトルソを提供できる。また、細紐は着替えて展示される衣服に対し適度な摩擦抵抗を与えるため、衣服の胴部などにしわや膨らみを積極的に付与でき、展示のデザインに多様性を持たせることができる。
【0026】
また、前記重ね貼り紙として新聞紙を使用することで、吸水性および水溶糊に馴染み易い性質を利用でき、重ね貼り作業を迅速、かつスムースに行うことができる。さらに、前記トルソ用型から分離された重ね貼り紙を、前記分離した部位でボンド糊により繋ぎ合わせることで、繋ぎ合わせ目に凹凸が発生するのを防止でき、全体として表面の滑らかなトルソ基体を形成することができる。
【0027】
また、前記細紐として紙製のクラフト紐を用いることで、線の美しい胴部のデザインを安価かつ容易に表現できるとともに、前記仕上げ用紙の上に巻き付けられた細紐の上に汚れ止め処理を施すことで、胴部の色彩的デザインの劣化を長期間に亘って防止でき、トルソの長寿命化を図ることができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトルソの製造方法の実施に用いるトルソ用型を示す斜視図である。
【図2】図1のトルソ用型に紙を重ね貼りする状況を示す説明図である。
【図3】図1のトルソ用型に重ね貼りした紙を分割する位置を示す説明図である。
【図4】図1のトルソ用型から分離した重ね貼り紙を示す側面図である。
【図5】図4において分離した重ね貼り紙を繋ぎ、トルソ基体とする状態を示す説明図である。
【図6】図5の重ね貼り紙上に仕上げ用紙を重ね貼りした状態を示す説明図である。
【図7】本発明により仕上げ基体の上に細紐を巻き付ける状態を示す説明図である。
【図8】本発明によるトルソの製造手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
6…紙(新聞紙)
8…仕上げ用シート
9…細紐
A…トルソ用型
B…重ね貼り紙
C…トルソ基体
D…仕上げ基体

Claims (5)

  1. 水に浸した紙に水溶糊を付けてトルソ用型の表面に重ね貼りし、この重ね貼りした重ね貼り紙を、これの乾燥後に首部、肩部、腕部、脇腹部および腰部にかけて前後に分割して前記トルソ用型より分離し、このトルソ用型から分離した重ね貼り紙を前記分割した部位で繋ぎ合わせ、この繋ぎ合わせた中空状の重ね貼り紙の上にさらに仕上げ用シートを重ね貼りし、この重ね貼りした仕上げ用シートの上に、互いに隣接するように細紐を順次巻き付けながら接着剤を介して接着することを特徴とするトルソの製造方法。
  2. 前記重ね貼り紙として古新聞紙を使用することを特徴とする請求項1に記載のトルソの製造方法。
  3. 前記トルソ用型から分離した各重ね貼り紙を、前記分離した部位でボンド糊により繋ぎ合わせることを特徴とする請求項1または2記載のトルソの製造方法。
  4. 前記細紐として紙製のクラフト紐を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載のトルソの製造方法。
  5. 前記仕上げ用シートの上に巻き付けられた細紐の上に汚れ止め処理を施すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1記載のトルソの製造方法。
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