JP3667357B2 - マイクロ・アクチュエータ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体集積回路と同様の工程で製作されるマイクロ・アクチュエータに関し、特に付着力を利用したマイクロ・アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のリレーとしては電磁石等を用いたメカニカル・リレーが主であり、図7はこのような従来のメカニカル・リレーの一例を示す構成図及び動作のタイミング図である。図7(A)において1はE字形のコア、2はコイル、3は永久磁石、4a及び4bはヨーク、5a及び5bは絶縁体から構成されるガイド、6a及び6b可動接点、100及び101はコイル2の端子、102a,102b,103a,103b,104a及び104bは可動接点6a及び6b等の端子である。
【0003】
コイル2は図示しないボビンに巻付けられて電磁石を構成し、コア1に取付けられる。一方、永久磁石3の両端にはヨーク4a及び4bの一端が固定され、ヨーク4a及び4bの他端はガイド5a及び5bに固定される。ガイド5a及び5bの一端は可動接点6a及び6bを駆動する。また、ヨーク4a及び4bの他端はコア1の”ロ”及び”ハ”の部分に接触する。
【0004】
端子100と端子101間に電圧を印加して電流を流すことにより、永久磁石3に引力及び反発力の両方の電磁力が働き、永久磁石3に固定されたヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bが共に移動し、可動接点6a及び6bの接点の状態を切り換える。
【0005】
例えば、図7(B)の動作のタイミング図に示すような電圧を印加する。即ち、図7(B)中”イ”に示すような電圧を印加すると電磁力により永久磁石3、ヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bは上方に移動してヨーク4aがコア1の”イ”の部分に接触し、ヨーク4bがコア1の”ロ”の部分に接触して停止する。
【0006】
この時、端子102aと端子104a及び端子102bと端子104bが閉状態になり、端子102aと端子103a及び端子102bと端子103bが開状態になる。
【0007】
ここで、一度コイル2に電圧を印加してヨーク4a及び4bをコア1に接触させれば、その後何ら電圧を印加しなくても接触しているコア1とヨーク4a及び4bとの間に永久磁石3による引力が生じて上記接点状態を保持する。
【0008】
さらに、図7(B)中”ロ”に示すような電圧を印加すると電磁力により永久磁石3、ヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bは下方に移動してヨーク4aがコア1の”ロ”の部分に接触し、ヨーク4bがコア1の”ハ”の部分に接触して停止する。
【0009】
この時、端子102aと端子104a及び端子102bと端子104bが開状態になり、端子102aと端子103a及び端子102bと端子103bが閉状態になる。
【0010】
但し、図7に示すようなメカニカル・リレーは電磁石を用いているためコイル2が必要不可欠であり、そのためミクロン・サイズのリレーを製作するのが極めて困難になる。また、コイルと永久磁石を用いることにより製造コストが高くなる。
【0011】
そこで、半導体プロセスを応用して製作したマイクロ・リレーが考えられている。図8はこのような従来のマイクロ・リレーの一例を示す断面図である。図8に示す従来例は「M.A.Gretillat, P.Thiebaud, N.F.de Rooij and C.Linder,"Electrostatic Polysilicon Microrelays Integrated with MOSFETs", Proc. IEEE MEMS'94 Workshop,1994,pp.97-101. 」に記載されたものである。
【0012】
図8において7はpタイプSi基板、8はnタイプ領域、9及び12はSi3N4、SiO2 等の絶縁膜、10,11及び13は導電性多結晶シリコン層(以下、poly−Si層と呼ぶ。)、14a及び14bはアルミニウム電極である。
【0013】
pタイプSi基板7上にnタイプ領域8が形成され、その上に絶縁膜9が形成される。この上に絶縁膜12とpoly−Si層13との2層から構成される梁を形成する。絶縁膜9の上で、前記梁の下には接点となるpoly−Si層10が形成され、また、前記梁の内側の絶縁膜12の表面には接点となるpoly−Si層11が形成される。さらに、poly−Si層11及び13にはアルミニウム電極14b及び14aがそれぞれ形成される。
【0014】
nタイプ領域8とアルミニウム電極14aとの間に駆動電圧を印加すると、前記梁が下方に曲がって接点であるpoly−Si層10及び11が接触して接点が閉じる。また、駆動電圧の印加を停止すると前記梁の復元力により前記梁が上方に戻って接点であるpoly−Si層10及び11が離れて接点が開く。
【0015】
図8に示すような従来例では図7に示した従来例と比較してコイル等が不要であるので小型化が可能になる。また、半導体プロセスを用いることによりミクロン・オーダの小型化が可能になり大量生産等が容易になる。
【0016】
さらに、図7に示すような従来のメカニカル・リレーではIC等との混在が不可能であったが、半導体プロセスを用いることによりリレー等を同一基板上に形成することが可能になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図8に示すようにリレー等の構造体をミクロン・オーダまで小型化した場合、ファンデル・ワールス力等の分子間引力に起因する付着力が顕著に現れてしまい構造体同士が付着してしまうと言った問題点がある。例えば、図8における従来例では接点であるpoly−Si層10及び11が互いに付着してしまう場合がある。
従って本発明の目的は、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易なマイクロ・アクチュエータを実現することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の第1では、
固定部と、
前記固定部に近接して配置され、前記固定部と接触した際に分子間引力の起因する付着力により前記固定部と付着する可動部と、
前記可動部を付着した前記固定部から分離させ、若しくは、前記固定部に接触させる駆動手段と
を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
【作用】
固定部と可動部を近接して配置し、固定部と可動部が接触した際に生じる分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として用いることにより、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易になる。
【0021】
【実施例】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第1の実施例を示す構成ブロック図である。図1において15及び16は固定部、17は可動部、18は駆動回路、19はスイッチ回路である。また、15〜17は静電アクチュエータとして動作し、18及び19は駆動手段50を構成する。
【0022】
半導体プロセス等により固定部15及び16は平行に向かい合って形成され、固定部15及び16間には可動部17が柔らかいバネ等により支えられる。可動部17には駆動回路18の一端が接続され、駆動回路18の他端はスイッチ回路19の第1の端子に接続される。
【0023】
スイッチ回路19の第2の端子は固定部15に接続され、スイッチ回路19の第3の端子は固定部16に接続される。
【0024】
但し、可動部17と固定部15及び16との向かい合う部分は付着力が生じるのに十分な程度の平滑度でなければならない。
【0025】
ここで、図1に示す実施例の動作を図2を用いて説明する。図2は動作のタイミング図である。初期状態において可動部17は付着力によって固定部15に付着しているものとする。
【0026】
スイッチ回路19を操作して固定部16と可動部17との間に図2中”イ”に示すように駆動電圧を印加する。この結果、可動部17には固定部15に対する付着力よりも大きいクーロン力が固定部16に向かって働く。
【0027】
従って、可動部17は固定部16の方向に移動して固定部16に付着する。この時点で、駆動電圧の印加を停止しても固定部16と可動部17との間に働く付着力によって固定部16と可動部17とは離れず可動部17の状態が保持される。
【0028】
さらに、スイッチ回路19を操作して固定部15と可動部17との間に図2中”ロ”に示すように駆動電圧を印加する。この結果、可動部17には固定部16に対する付着力よりも大きいクーロン力が固定部15に向かって働く。従って、前述と同様に可動部17は固定部15の方向に移動して固定部15に付着する。また、駆動電圧の印加を停止しても前述と同様に可動部17の状態が保持される。
【0029】
この結果、分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として利用することにより、駆動時以外に駆動電圧を印加する必要がないので低消費電力であるマイクロ・アクチュエータとなる。
【0030】
また、ここで、図1に示す実施例の構造に対する印加する駆動電圧、状態が変化する遷移時間、消費エネルギーを見積もる。
【0031】
今、可動部17の大きさ等の諸条件をそれぞれ、長さを”a”、幅を”b”、厚さを”h”、シリコンの密度を”ρ”、可動部17と付着していない固定部までの距離を”d”、可動部17と付着していない固定部間の誘電率を”ε”とした場合に以下に示すように仮定する。
a=50[μm] (1)
b=10[μm] (2)
h=500[nm] (3)
ρ=2.33×103 [kg/m3 ] (4)
d=100[nm] (5)
ε=ε0=8.854×10-12 [F/m] (6)
また、可動部17を支持するバネは十分に柔らかいとしてバネ定数を”0”と仮定する。
【0032】
第1に静電アクチュエータの発生する力”FS ”は、駆動電圧を”V”、電極面積を”S=a×b”とした場合、上記条件から、
FS=1/2・ε(V/d)2・S (7)
となる。
【0033】
一方、付着力の大きさ”FA ”は、
FA/S=5×104[F/m2] (8)
程度であることが実験から分かっているので、この付着力と前記静電アクチュエータの発生する力が等しくなる時の駆動電圧”V0 ”を求めると、
V0=d・{2・FA/ε・S}1/2 (9)
となる。
【0034】
式(9)に式(1),(2),(5),(6)及び(8)を代入することにより、
V0=10.6[V] (10)
となる。
【0035】
第2に、状態が変化する遷移時間を求めるに際しては、付着力の引力は可動部17が固定部15若しくは固定部16から離れた後は作用せず、また、可動部17に作用する静電引力は可動部17と付着していない固定部までの距離”d”の時の値のままで一定であり、さらに、印加する駆動電圧は5[V]であるとそれぞれ仮定する。
【0036】
上記仮定においては付着状態を分離するのに要する時間を無視しているが、こに対して静電引力が距離”d”に基づいて変化することについても無視している。
【0037】
可動部17の質量”M”は、
M=a・b・h・ρ (11)
であり、式(1)〜(4)を代入することによって、
M=5.8×10-13[kg] (12)
となる。
【0038】
従って、可動部17が距離”d”の間を移動する時間は”t”は、
となる。
【0039】
第3に、消費エネルギー”W”は可動部17と固定部15若しくは16の間の付着エネルギー”WA ”と、可動部17を移動させるのに必要なエネルギー”WB ”と、移動後に可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の容量に蓄えられるエネルギー”Wc ”との合計になる。
【0040】
単位面積当たりの付着エネルギー”WA ”は約440[mJ/m2 ]であることが実験により求まっているので、
となる。
【0041】
また、可動部17を移動させるのに必要なエネルギー”WB ”は、
となる。
【0042】
さらに、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の容量に蓄えられるエネルギー”Wc ”は、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の距離”dC ”を”30[nm]”、印加される電圧”V”を”5[V]”、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の絶縁層である”Si02 ”、”Si3N4”の比誘電率”ε’”を”3.8”とすれば、
となる。
【0043】
従って、消費エネルギー”W”は、
となり、消費エネルギー”W”の大半は付着エネルギー、言い換えれば付着状態を分離するのに必要なエネルギーとして消費されることになる。
【0044】
この結果、図1に示す実施例の構造に対する印加する駆動電圧は約”11[V]”、状態が変化する遷移時間は0.15[μs]、消費エネルギーは約”2.3×10-10 [J]”である。
【0045】
これに対して、図7に示す従来例などでは駆動電圧は”5[V]”、状態が変化する遷移時間は約1.5[ms]、消費エネルギーは”5×10-4[J]”である。
【0046】
ここで、図1に示す実施例では駆動電圧が従来例と比較して”11[V]”と大きくなっているが可動部17と固定部15及び16の付着面に、突起を作成したり表面粗さを粗くして、面同士の付着面積を小さくすることにより駆動電圧を低くすることが可能となる。例えば、付着面の状態を粗くして付着面積を”1/10”にすれば駆動電圧は3.4[V]となる。
【0047】
また、状態が変化する遷移時間は約”1/(3×104) ”になり、消費エネルギーに関しては”1/(2×106) ”にすることが可能になる。
【0048】
即ち、一対の固定部を平行に向かい合わせて配置し、一対の固定部の間に可動部を設ける構造にし、固定部と可動部が接触した際に生じる付着力を状態の保持力として用いることにより、状態を変化させる時以外は駆動電圧が不要であるため低消費電力となる。駆動電圧も一般にICで用いられる”5[V]”程度で良くなる。
【0049】
また、付着力が顕著になる程度の微細構造にすることにより、高速動作が可能になり、半導体プロセスを用いて本願発明に係るマイクロ・アクチュエータを作成することにより、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易となる。
【0050】
さらに、従来ミクロン・オーダの小型化に際して問題となっていたファンデル・ワールス力等の分子間引力に起因する付着力を逆に保持力として利用することにより、付着によって動作不可能になることを考慮することがなくなる。
【0051】
また、図3は半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・アクチュエータの具体例を示す平面図及び断面図である。図3において15a及び16aは固定部、17aは可動部、20a,20b及び20cは電極、21はSi基板、22はSiO2 膜、23a,23b及び23cはSi3N4膜、24a,24b及び24cはpoly−Si層である。
【0052】
Si基板21上にSiO2 膜22及びSi3N4膜23aを形成し、Si3N4膜23a上に固定部16aとしてpoly−Si層24a及びSi3N4膜23bを形成する。また、可動部17aとしてpoly−Si層24b及びSi3N4膜23cを形成し、固定部15aとしてpoly−Si層24cを形成する。
【0053】
さらに、poly−Si層24a,24b及び24c上には電極20c,20b及び20aがそれぞれ形成される。ここで、Si3N4膜23b及び23cはpoly−Si層24a,24b及び24cをそれぞれ絶縁するために形成されている。
【0054】
図3においては固定部15aと可動部17aが付着しており、図1に示す実施例と同様に電極20bと電極20cとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17aは下側に移動して固定部16aと付着する。
【0055】
また、電極20aと電極20bとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17aは上側に移動して固定部15aと付着する。可動部17aが固定部15a若しくは16aに一旦付着すれば駆動電圧の印加を停止しても可動部17aの状態は保持される。
【0056】
また、図4は半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・リレーの具体例を示す断面図である。図4において15b及び16bは固定部、17bは可動部、25a,25b,25c及び25dはSi3N4膜、26a,26b,26c,26d及び26eはpoly−Si層である。但し、21及び22は図3と同一符号を付してある。
【0057】
Si基板21上にSiO2 膜22及びSi3N4膜25aを形成し、固定部16bとしてpoly−Si層26a及びSi3N4膜25bを、接点用としてpoly−Si層26bを、接点用及び可動部支持用としてpoly−Si層26c及びSi3N4膜25cをそれぞれSi3N4膜25a上に形成する。
【0058】
また、可動部17bとしてpoly−Si層26d及びSi3N4膜25dがSi3N4膜25c上に形成され、固定部15bとしてpoly−Si層26eが形成される。ここで、Si3N4膜25b,25c及び25dはpoly−Si層26a,26c,26d及び26eをそれぞれ絶縁するために形成されている。
【0059】
また、poly−Si層26c及び26dとSi3N4膜25c及び25dは梁を構成しており上下に可動する。また、poly−Si層26d及び26eの付着面には付着力を調整するためにその表面に複数の突起を設けている。
【0060】
図4においては固定部15bと可動部17bが付着しており、図1に示す実施例と同様にpoly−Si層26aとpoly−Si層26dとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17bは下側に移動して固定部16bと付着する。
【0061】
この時、poly−Si層26b及び26cが接触し、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の部分が閉状態になる。
【0062】
また、poly−Si層26dとpoly−Si層26eとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17bは上側に移動して固定部15bと付着する。この時、poly−Si層26b及び26cが離れ、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の部分が開状態になる。
【0063】
可動部17bが固定部15b若しくは16bに一旦付着すれば駆動電圧の印加を停止しても可動部17bの状態は保持される。即ち、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の状態が保持される。
【0064】
なお、図1,図3及び図4においては1対の固定部を平行に配置し、固定部の間に可動部を設けているが、必ずしも1対の固定部を平行に配置する必要はない。
【0065】
図5は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第2の実施例を示す構成ブロック図であり、図5において15c及び16cは固定部、17cは可動部である。
図5中”イ”を中心にして扇形に固定部15c及び16cを配置し、固定部15c及び16cの間に可動部17cを配置しても良い。
【0066】
また、固定部は1対である必要はなく図6に示すような構成であっても良い。図6は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第3の実施例を示す構成ブロック図であり、図6において15dは固定部、17dは可動部である。
【0067】
固定部15は基板等の上に配置され、可動部17dは固定部15の上に梁として構成される。図6(A)は固定部15dと可動部17dとが離れた状態を示し、図6(B)は固定部15dと可動部17dとが付着した状態を示している。
【0068】
可動部17dは構造体の剛性で図6(A)の状態を保持しており、図示しない駆動手段により、固定部15dと可動部17dとを付着させ、若しくは、分離させることが可能になる。
【0069】
図1,図3及び図4においては電極間に駆動電圧を印加することにより生じるクーロン力を用いる駆動回路を設け、静電アクチュエータとして構成しているが、バイメタル等のアクチュエータを用いることも可能である。また、熱的歪、光学的歪、電気的歪、電磁力等を用いた駆動手段を用いても良い。
【0070】
また、図1,図3及び図4においては可動部が基板に対して上下方向に移動するが、基板に対して水平方向に移動させることも可能である。
【0071】
また、図3及び図4において、接点の構造体の材料として導電性多結晶シリコンを用いているが他の導電性材料を用いても良い。
【0072】
また、図3及び図4において、梁の構造体の材料として導電性多結晶シリコンを用いているが、導電性多結晶シリコンに限るわけではなく、接点部からの引出しリード線を設ければ絶縁体であっても良い。
【0073】
また、図3及び図4において、絶縁体として”Si3N4”を用いているがその他の絶縁物を用いても良い。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
固定部と可動部を近接して配置し、固定部と可動部が接触した際に生じる分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として用いることにより、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易なマイクロ・アクチュエータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第1の実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】動作のタイミング図である。
【図3】半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・アクチュエータの具体例を示す平面図及び断面図である。
【図4】半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・リレーの具体例を示す断面図である。
【図5】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第2の実施例を示す構成ブロック図である。
【図6】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第3の実施例を示す構成ブロック図である。
【図7】従来のメカニカル・リレーの一例を示す構成図及び動作のタイミング図である。
【図8】従来のマイクロ・リレーの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 コア
2 コイル
3 永久磁石
4a,4b ヨーク
5a,5b 可動接点
6a,6b ガイド
7 pタイプSi基板
8 nタイプ領域
9,12 絶縁膜
10,11,13,24a,24b,24c,26a,26b,26c,26d,26e 導電性多結晶シリコン層
14a,14b アルミニウム電極
15,15a,15b,16,16a,16b 固定部
17,17a,17b 可動部
18 駆動回路
19 スイッチ回路
20a,20b,20c 電極
21 Si基板
22 SiO2 膜
23a,23b,23c,25a,25b,25c,25d Si3N4膜
50 駆動手段
100,101 端子
102a,102b,103a,103b,104a,104b 接点
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体集積回路と同様の工程で製作されるマイクロ・アクチュエータに関し、特に付着力を利用したマイクロ・アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のリレーとしては電磁石等を用いたメカニカル・リレーが主であり、図7はこのような従来のメカニカル・リレーの一例を示す構成図及び動作のタイミング図である。図7(A)において1はE字形のコア、2はコイル、3は永久磁石、4a及び4bはヨーク、5a及び5bは絶縁体から構成されるガイド、6a及び6b可動接点、100及び101はコイル2の端子、102a,102b,103a,103b,104a及び104bは可動接点6a及び6b等の端子である。
【0003】
コイル2は図示しないボビンに巻付けられて電磁石を構成し、コア1に取付けられる。一方、永久磁石3の両端にはヨーク4a及び4bの一端が固定され、ヨーク4a及び4bの他端はガイド5a及び5bに固定される。ガイド5a及び5bの一端は可動接点6a及び6bを駆動する。また、ヨーク4a及び4bの他端はコア1の”ロ”及び”ハ”の部分に接触する。
【0004】
端子100と端子101間に電圧を印加して電流を流すことにより、永久磁石3に引力及び反発力の両方の電磁力が働き、永久磁石3に固定されたヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bが共に移動し、可動接点6a及び6bの接点の状態を切り換える。
【0005】
例えば、図7(B)の動作のタイミング図に示すような電圧を印加する。即ち、図7(B)中”イ”に示すような電圧を印加すると電磁力により永久磁石3、ヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bは上方に移動してヨーク4aがコア1の”イ”の部分に接触し、ヨーク4bがコア1の”ロ”の部分に接触して停止する。
【0006】
この時、端子102aと端子104a及び端子102bと端子104bが閉状態になり、端子102aと端子103a及び端子102bと端子103bが開状態になる。
【0007】
ここで、一度コイル2に電圧を印加してヨーク4a及び4bをコア1に接触させれば、その後何ら電圧を印加しなくても接触しているコア1とヨーク4a及び4bとの間に永久磁石3による引力が生じて上記接点状態を保持する。
【0008】
さらに、図7(B)中”ロ”に示すような電圧を印加すると電磁力により永久磁石3、ヨーク4a及び4b、ガイド5a及び5bは下方に移動してヨーク4aがコア1の”ロ”の部分に接触し、ヨーク4bがコア1の”ハ”の部分に接触して停止する。
【0009】
この時、端子102aと端子104a及び端子102bと端子104bが開状態になり、端子102aと端子103a及び端子102bと端子103bが閉状態になる。
【0010】
但し、図7に示すようなメカニカル・リレーは電磁石を用いているためコイル2が必要不可欠であり、そのためミクロン・サイズのリレーを製作するのが極めて困難になる。また、コイルと永久磁石を用いることにより製造コストが高くなる。
【0011】
そこで、半導体プロセスを応用して製作したマイクロ・リレーが考えられている。図8はこのような従来のマイクロ・リレーの一例を示す断面図である。図8に示す従来例は「M.A.Gretillat, P.Thiebaud, N.F.de Rooij and C.Linder,"Electrostatic Polysilicon Microrelays Integrated with MOSFETs", Proc. IEEE MEMS'94 Workshop,1994,pp.97-101. 」に記載されたものである。
【0012】
図8において7はpタイプSi基板、8はnタイプ領域、9及び12はSi3N4、SiO2 等の絶縁膜、10,11及び13は導電性多結晶シリコン層(以下、poly−Si層と呼ぶ。)、14a及び14bはアルミニウム電極である。
【0013】
pタイプSi基板7上にnタイプ領域8が形成され、その上に絶縁膜9が形成される。この上に絶縁膜12とpoly−Si層13との2層から構成される梁を形成する。絶縁膜9の上で、前記梁の下には接点となるpoly−Si層10が形成され、また、前記梁の内側の絶縁膜12の表面には接点となるpoly−Si層11が形成される。さらに、poly−Si層11及び13にはアルミニウム電極14b及び14aがそれぞれ形成される。
【0014】
nタイプ領域8とアルミニウム電極14aとの間に駆動電圧を印加すると、前記梁が下方に曲がって接点であるpoly−Si層10及び11が接触して接点が閉じる。また、駆動電圧の印加を停止すると前記梁の復元力により前記梁が上方に戻って接点であるpoly−Si層10及び11が離れて接点が開く。
【0015】
図8に示すような従来例では図7に示した従来例と比較してコイル等が不要であるので小型化が可能になる。また、半導体プロセスを用いることによりミクロン・オーダの小型化が可能になり大量生産等が容易になる。
【0016】
さらに、図7に示すような従来のメカニカル・リレーではIC等との混在が不可能であったが、半導体プロセスを用いることによりリレー等を同一基板上に形成することが可能になる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図8に示すようにリレー等の構造体をミクロン・オーダまで小型化した場合、ファンデル・ワールス力等の分子間引力に起因する付着力が顕著に現れてしまい構造体同士が付着してしまうと言った問題点がある。例えば、図8における従来例では接点であるpoly−Si層10及び11が互いに付着してしまう場合がある。
従って本発明の目的は、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易なマイクロ・アクチュエータを実現することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の第1では、
固定部と、
前記固定部に近接して配置され、前記固定部と接触した際に分子間引力の起因する付着力により前記固定部と付着する可動部と、
前記可動部を付着した前記固定部から分離させ、若しくは、前記固定部に接触させる駆動手段と
を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
【作用】
固定部と可動部を近接して配置し、固定部と可動部が接触した際に生じる分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として用いることにより、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易になる。
【0021】
【実施例】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第1の実施例を示す構成ブロック図である。図1において15及び16は固定部、17は可動部、18は駆動回路、19はスイッチ回路である。また、15〜17は静電アクチュエータとして動作し、18及び19は駆動手段50を構成する。
【0022】
半導体プロセス等により固定部15及び16は平行に向かい合って形成され、固定部15及び16間には可動部17が柔らかいバネ等により支えられる。可動部17には駆動回路18の一端が接続され、駆動回路18の他端はスイッチ回路19の第1の端子に接続される。
【0023】
スイッチ回路19の第2の端子は固定部15に接続され、スイッチ回路19の第3の端子は固定部16に接続される。
【0024】
但し、可動部17と固定部15及び16との向かい合う部分は付着力が生じるのに十分な程度の平滑度でなければならない。
【0025】
ここで、図1に示す実施例の動作を図2を用いて説明する。図2は動作のタイミング図である。初期状態において可動部17は付着力によって固定部15に付着しているものとする。
【0026】
スイッチ回路19を操作して固定部16と可動部17との間に図2中”イ”に示すように駆動電圧を印加する。この結果、可動部17には固定部15に対する付着力よりも大きいクーロン力が固定部16に向かって働く。
【0027】
従って、可動部17は固定部16の方向に移動して固定部16に付着する。この時点で、駆動電圧の印加を停止しても固定部16と可動部17との間に働く付着力によって固定部16と可動部17とは離れず可動部17の状態が保持される。
【0028】
さらに、スイッチ回路19を操作して固定部15と可動部17との間に図2中”ロ”に示すように駆動電圧を印加する。この結果、可動部17には固定部16に対する付着力よりも大きいクーロン力が固定部15に向かって働く。従って、前述と同様に可動部17は固定部15の方向に移動して固定部15に付着する。また、駆動電圧の印加を停止しても前述と同様に可動部17の状態が保持される。
【0029】
この結果、分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として利用することにより、駆動時以外に駆動電圧を印加する必要がないので低消費電力であるマイクロ・アクチュエータとなる。
【0030】
また、ここで、図1に示す実施例の構造に対する印加する駆動電圧、状態が変化する遷移時間、消費エネルギーを見積もる。
【0031】
今、可動部17の大きさ等の諸条件をそれぞれ、長さを”a”、幅を”b”、厚さを”h”、シリコンの密度を”ρ”、可動部17と付着していない固定部までの距離を”d”、可動部17と付着していない固定部間の誘電率を”ε”とした場合に以下に示すように仮定する。
a=50[μm] (1)
b=10[μm] (2)
h=500[nm] (3)
ρ=2.33×103 [kg/m3 ] (4)
d=100[nm] (5)
ε=ε0=8.854×10-12 [F/m] (6)
また、可動部17を支持するバネは十分に柔らかいとしてバネ定数を”0”と仮定する。
【0032】
第1に静電アクチュエータの発生する力”FS ”は、駆動電圧を”V”、電極面積を”S=a×b”とした場合、上記条件から、
FS=1/2・ε(V/d)2・S (7)
となる。
【0033】
一方、付着力の大きさ”FA ”は、
FA/S=5×104[F/m2] (8)
程度であることが実験から分かっているので、この付着力と前記静電アクチュエータの発生する力が等しくなる時の駆動電圧”V0 ”を求めると、
V0=d・{2・FA/ε・S}1/2 (9)
となる。
【0034】
式(9)に式(1),(2),(5),(6)及び(8)を代入することにより、
V0=10.6[V] (10)
となる。
【0035】
第2に、状態が変化する遷移時間を求めるに際しては、付着力の引力は可動部17が固定部15若しくは固定部16から離れた後は作用せず、また、可動部17に作用する静電引力は可動部17と付着していない固定部までの距離”d”の時の値のままで一定であり、さらに、印加する駆動電圧は5[V]であるとそれぞれ仮定する。
【0036】
上記仮定においては付着状態を分離するのに要する時間を無視しているが、こに対して静電引力が距離”d”に基づいて変化することについても無視している。
【0037】
可動部17の質量”M”は、
M=a・b・h・ρ (11)
であり、式(1)〜(4)を代入することによって、
M=5.8×10-13[kg] (12)
となる。
【0038】
従って、可動部17が距離”d”の間を移動する時間は”t”は、
となる。
【0039】
第3に、消費エネルギー”W”は可動部17と固定部15若しくは16の間の付着エネルギー”WA ”と、可動部17を移動させるのに必要なエネルギー”WB ”と、移動後に可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の容量に蓄えられるエネルギー”Wc ”との合計になる。
【0040】
単位面積当たりの付着エネルギー”WA ”は約440[mJ/m2 ]であることが実験により求まっているので、
となる。
【0041】
また、可動部17を移動させるのに必要なエネルギー”WB ”は、
となる。
【0042】
さらに、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の容量に蓄えられるエネルギー”Wc ”は、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の距離”dC ”を”30[nm]”、印加される電圧”V”を”5[V]”、可動部17と可動部17が付着している固定部15若しくは16の間の絶縁層である”Si02 ”、”Si3N4”の比誘電率”ε’”を”3.8”とすれば、
となる。
【0043】
従って、消費エネルギー”W”は、
となり、消費エネルギー”W”の大半は付着エネルギー、言い換えれば付着状態を分離するのに必要なエネルギーとして消費されることになる。
【0044】
この結果、図1に示す実施例の構造に対する印加する駆動電圧は約”11[V]”、状態が変化する遷移時間は0.15[μs]、消費エネルギーは約”2.3×10-10 [J]”である。
【0045】
これに対して、図7に示す従来例などでは駆動電圧は”5[V]”、状態が変化する遷移時間は約1.5[ms]、消費エネルギーは”5×10-4[J]”である。
【0046】
ここで、図1に示す実施例では駆動電圧が従来例と比較して”11[V]”と大きくなっているが可動部17と固定部15及び16の付着面に、突起を作成したり表面粗さを粗くして、面同士の付着面積を小さくすることにより駆動電圧を低くすることが可能となる。例えば、付着面の状態を粗くして付着面積を”1/10”にすれば駆動電圧は3.4[V]となる。
【0047】
また、状態が変化する遷移時間は約”1/(3×104) ”になり、消費エネルギーに関しては”1/(2×106) ”にすることが可能になる。
【0048】
即ち、一対の固定部を平行に向かい合わせて配置し、一対の固定部の間に可動部を設ける構造にし、固定部と可動部が接触した際に生じる付着力を状態の保持力として用いることにより、状態を変化させる時以外は駆動電圧が不要であるため低消費電力となる。駆動電圧も一般にICで用いられる”5[V]”程度で良くなる。
【0049】
また、付着力が顕著になる程度の微細構造にすることにより、高速動作が可能になり、半導体プロセスを用いて本願発明に係るマイクロ・アクチュエータを作成することにより、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易となる。
【0050】
さらに、従来ミクロン・オーダの小型化に際して問題となっていたファンデル・ワールス力等の分子間引力に起因する付着力を逆に保持力として利用することにより、付着によって動作不可能になることを考慮することがなくなる。
【0051】
また、図3は半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・アクチュエータの具体例を示す平面図及び断面図である。図3において15a及び16aは固定部、17aは可動部、20a,20b及び20cは電極、21はSi基板、22はSiO2 膜、23a,23b及び23cはSi3N4膜、24a,24b及び24cはpoly−Si層である。
【0052】
Si基板21上にSiO2 膜22及びSi3N4膜23aを形成し、Si3N4膜23a上に固定部16aとしてpoly−Si層24a及びSi3N4膜23bを形成する。また、可動部17aとしてpoly−Si層24b及びSi3N4膜23cを形成し、固定部15aとしてpoly−Si層24cを形成する。
【0053】
さらに、poly−Si層24a,24b及び24c上には電極20c,20b及び20aがそれぞれ形成される。ここで、Si3N4膜23b及び23cはpoly−Si層24a,24b及び24cをそれぞれ絶縁するために形成されている。
【0054】
図3においては固定部15aと可動部17aが付着しており、図1に示す実施例と同様に電極20bと電極20cとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17aは下側に移動して固定部16aと付着する。
【0055】
また、電極20aと電極20bとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17aは上側に移動して固定部15aと付着する。可動部17aが固定部15a若しくは16aに一旦付着すれば駆動電圧の印加を停止しても可動部17aの状態は保持される。
【0056】
また、図4は半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・リレーの具体例を示す断面図である。図4において15b及び16bは固定部、17bは可動部、25a,25b,25c及び25dはSi3N4膜、26a,26b,26c,26d及び26eはpoly−Si層である。但し、21及び22は図3と同一符号を付してある。
【0057】
Si基板21上にSiO2 膜22及びSi3N4膜25aを形成し、固定部16bとしてpoly−Si層26a及びSi3N4膜25bを、接点用としてpoly−Si層26bを、接点用及び可動部支持用としてpoly−Si層26c及びSi3N4膜25cをそれぞれSi3N4膜25a上に形成する。
【0058】
また、可動部17bとしてpoly−Si層26d及びSi3N4膜25dがSi3N4膜25c上に形成され、固定部15bとしてpoly−Si層26eが形成される。ここで、Si3N4膜25b,25c及び25dはpoly−Si層26a,26c,26d及び26eをそれぞれ絶縁するために形成されている。
【0059】
また、poly−Si層26c及び26dとSi3N4膜25c及び25dは梁を構成しており上下に可動する。また、poly−Si層26d及び26eの付着面には付着力を調整するためにその表面に複数の突起を設けている。
【0060】
図4においては固定部15bと可動部17bが付着しており、図1に示す実施例と同様にpoly−Si層26aとpoly−Si層26dとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17bは下側に移動して固定部16bと付着する。
【0061】
この時、poly−Si層26b及び26cが接触し、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の部分が閉状態になる。
【0062】
また、poly−Si層26dとpoly−Si層26eとの間に駆動電圧を印加すれば可動部17bは上側に移動して固定部15bと付着する。この時、poly−Si層26b及び26cが離れ、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の部分が開状態になる。
【0063】
可動部17bが固定部15b若しくは16bに一旦付着すれば駆動電圧の印加を停止しても可動部17bの状態は保持される。即ち、マイクロ・リレーの接点である図4中”イ”の状態が保持される。
【0064】
なお、図1,図3及び図4においては1対の固定部を平行に配置し、固定部の間に可動部を設けているが、必ずしも1対の固定部を平行に配置する必要はない。
【0065】
図5は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第2の実施例を示す構成ブロック図であり、図5において15c及び16cは固定部、17cは可動部である。
図5中”イ”を中心にして扇形に固定部15c及び16cを配置し、固定部15c及び16cの間に可動部17cを配置しても良い。
【0066】
また、固定部は1対である必要はなく図6に示すような構成であっても良い。図6は本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第3の実施例を示す構成ブロック図であり、図6において15dは固定部、17dは可動部である。
【0067】
固定部15は基板等の上に配置され、可動部17dは固定部15の上に梁として構成される。図6(A)は固定部15dと可動部17dとが離れた状態を示し、図6(B)は固定部15dと可動部17dとが付着した状態を示している。
【0068】
可動部17dは構造体の剛性で図6(A)の状態を保持しており、図示しない駆動手段により、固定部15dと可動部17dとを付着させ、若しくは、分離させることが可能になる。
【0069】
図1,図3及び図4においては電極間に駆動電圧を印加することにより生じるクーロン力を用いる駆動回路を設け、静電アクチュエータとして構成しているが、バイメタル等のアクチュエータを用いることも可能である。また、熱的歪、光学的歪、電気的歪、電磁力等を用いた駆動手段を用いても良い。
【0070】
また、図1,図3及び図4においては可動部が基板に対して上下方向に移動するが、基板に対して水平方向に移動させることも可能である。
【0071】
また、図3及び図4において、接点の構造体の材料として導電性多結晶シリコンを用いているが他の導電性材料を用いても良い。
【0072】
また、図3及び図4において、梁の構造体の材料として導電性多結晶シリコンを用いているが、導電性多結晶シリコンに限るわけではなく、接点部からの引出しリード線を設ければ絶縁体であっても良い。
【0073】
また、図3及び図4において、絶縁体として”Si3N4”を用いているがその他の絶縁物を用いても良い。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
固定部と可動部を近接して配置し、固定部と可動部が接触した際に生じる分子間引力の起因する付着力を状態の保持力として用いることにより、低消費電力、高速動作、ミクロン・オーダの小型化、他のIC等との混在、大量生産等が容易なマイクロ・アクチュエータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第1の実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】動作のタイミング図である。
【図3】半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・アクチュエータの具体例を示す平面図及び断面図である。
【図4】半導体プロセスを用いて作成したマイクロ・リレーの具体例を示す断面図である。
【図5】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第2の実施例を示す構成ブロック図である。
【図6】本発明に係るマイクロ・アクチュエータの第3の実施例を示す構成ブロック図である。
【図7】従来のメカニカル・リレーの一例を示す構成図及び動作のタイミング図である。
【図8】従来のマイクロ・リレーの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 コア
2 コイル
3 永久磁石
4a,4b ヨーク
5a,5b 可動接点
6a,6b ガイド
7 pタイプSi基板
8 nタイプ領域
9,12 絶縁膜
10,11,13,24a,24b,24c,26a,26b,26c,26d,26e 導電性多結晶シリコン層
14a,14b アルミニウム電極
15,15a,15b,16,16a,16b 固定部
17,17a,17b 可動部
18 駆動回路
19 スイッチ回路
20a,20b,20c 電極
21 Si基板
22 SiO2 膜
23a,23b,23c,25a,25b,25c,25d Si3N4膜
50 駆動手段
100,101 端子
102a,102b,103a,103b,104a,104b 接点
Claims (1)
- 固定部と、
前記固定部に近接して配置され、前記固定部と接触した際に分子間引力の起因する付着力により前記固定部と付着する可動部と、
前記可動部を付着した前記固定部から分離させ、若しくは、前記固定部に接触させる駆動手段と
を備えたことを特徴とするマイクロ・アクチュエータ。
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