JP3667225B2 - 蒸解薬品回収工程の捕集灰の処理方法 - Google Patents

蒸解薬品回収工程の捕集灰の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸解薬品回収工程の捕集灰(ダスト)の処理方法に関し、詳しくは、パルプの製造における蒸解薬品回収工程の捕集灰に含まれる塩素分を除去するための捕集灰の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばクラフトパルプの製造においては、苛性ソーダと硫化ソーダの約7対3の混合液を使用して原料チップを蒸解する。この蒸解工程においては、苛性ソーダと硫化ソーダは、それぞれ、不活性な炭酸ソーダと硫酸ソーダに変化する。そして、パルプは、種々の精製工程および漂白工程を経て製品となる。一方、パルプから分離された蒸解廃液(黒液)は、濃縮後に蒸解薬品回収工程(ソーダ回収ポイラー)で燃焼処理される。その結果、硫酸ソーダは還元されて硫化ソーダに変換される。また、炭酸ソーダは、その後の苛性化工程で生石灰により還元されて苛性ソーダに変換される。上記の再生された硫化ソーダや苛性ソーダは水に溶解して回収され、これらにより蒸解液(白液)が調製される。
【0003】
蒸解薬品は上記の様に回収されて再使用されるが、木材などから混入して蓄積された塩素分(不純物)により回収ポイラーが腐食するという問題がある。従って、蒸解薬品回収工程の捕集灰から塩素分を除去する必要がある。
【0004】
特開平9−29201号公報には、「ソーダ回収ボイラーの捕集灰からの食塩及びカリウム塩の除去方法」が提案されている。そこには、捕集灰の組成(重量%)の一例として、NaCl:9.7%、Na2SO4:67.2%、Na2CO3:10.1%、KCl:1.5%、K2SO4:9.9%、K2CO3:1.6%が示されている。斯かる捕集灰の水スラリーは、Na2CO3の存在により強いアルカリ性である(通常10以上)。
【0005】
特開平9−29201号公報に記載の方法は、上記の様な捕集灰の水スラリーのpHを硫酸添加により10以下に、温度を20℃以上に調整し、一定時間保持して捕集灰中の食塩及びカリウム塩を水に溶解させ、当該スラリーを20℃未満の温度に冷却して固形分を析出させた後、固形分と液体とに分離して液体は系外に廃棄し、固形分は濃縮前の黒液に再溶解させ、その黒液を黒液濃縮器の前流に戻すことによって固形分を回収する方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パルプの製造における蒸解薬品回収工程の捕集灰から塩素分を除去するための捕集灰の処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、以下の式(1)で表されるイオン交換基を有するイオン交換樹脂の充填床に蒸解薬品回収工程の捕集灰の溶解液と水とを交互に通液し、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分と塩素イオンに富む画分とに分離して回収することを特徴とする蒸解薬品回収工程の捕集灰の処理方法に存する。
【0008】
【化2】
Figure 0003667225
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は各種のパルプの製造における蒸解薬品回収工程の捕集灰に適用することが出来る。パルプの例としては、クラフトパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプ、サルファイトパルプ等のナトリウムべース蒸解工程を経て得られる各種のパルプが挙げられる。
【0010】
蒸解薬品回収工程においては、蒸解廃液(黒液)を濃縮した後に回収ボイラーで燃焼する。その際、発生する灰はミストコットレル等の電気集塵機で捕集される。本発明は、斯かる捕集灰に含まれる塩素分を除去する。具体的には、捕集灰の溶解液を調製し、イオン交換樹脂で処理する。捕集灰の溶解には、電気集塵機に付設された湿式スクラバーから得られた灰回収液を使用することが出来る。また、通常、溶解液は、溶解槽の後に配置された沈殿槽と濾過器とで処理された後にイオン交換樹脂で処理される。通常、捕集灰に対して3〜10重量倍の水が使用される。
【0011】
本発明においては、以下の式(1)で表されるイオン交換基を有するイオン交換樹脂を使用する。
【0012】
【化3】
Figure 0003667225
【0013】
上記の式(1)において、R1及びR2は各々メチル基、m及びnは各々1の整数であることが好ましい。斯かるイオン交換樹脂は、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の様な芳香族架橋共重合体の芳香核に上記のイオン交換基を直接結合したグリシン型両性イオン交換樹脂として公知であり、「ダイヤイオン(登録商標)AMP01」(三菱化学社製品)として市販されている。斯かるグリシン型両性イオン交換樹脂は、ハロメチル基を有する芳香族架橋共重合体とN,N−ジメチルグリシン誘導体とを反応させた後に加水分解することによって得られる。
【0014】
ところで、両性イオン交換樹脂は、例えば、三次元構造の陰イオン交換樹脂に酸性基を持った単量体(例えばアクリル酸)と重合開始剤とを吸収させて陰イオン交換樹脂の三次元構造の内部で重合させることによっても得ることが出来る。斯かる方法で得られる両性イオン交換樹脂はスネークケージ型両性イオン交換樹脂と呼ばれ、次の様な構造的特徴を備えている。例えば、上記の例の場合は、陰イオン交換樹脂樹脂の三次元構造の中に陽イオン交換基がヘビの様に絡まった状態で結合している。従って、陽イオン交換基と陰イオン交換基とが独立して別々に存在する。これに対し、本発明で使用するグリシン型両性イオン交換樹脂は、上記の様なスネークケージ型両性イオン交換樹脂と異なり、前記の式(1)で表される様に1種のイオン交換基が陽性部と陰性部とを有している。
【0015】
また、上記の様な両性イオン交換樹脂は、イオン・リターデションを利用する分離における分離剤として知られている。すなわち、上記の様な両性イオン交換樹脂は、同一樹脂内の陽イオン交換基と陰イオン交換基とによって内部塩を形成し、イオン排除とは反対に電解質を非電解質よりも強く吸着する性質を有し、電解質と非電解質(例えば食塩と糖)とを分離し得る性質を有する。そして、水で溶離展開を行うと、電解質は、吸着力が強いために非電解質よりも遅れて溶離される(イオン・リターデション)。
【0016】
ところが、上記の様な両性イオン交換樹脂によって捕集灰の溶解液を処理した場合、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分と塩素イオンに富む画分とに分離される。すなわち、塩素イオンは両性イオン交換樹脂に強く吸着され、水によって溶離させることが出来る。
【0017】
本発明は、上記の様な硫酸イオン及び炭酸イオンと塩素イオンとの間の顕著な選択性を利用し、捕集灰の溶解液から塩素イオンを分離する。そして、捕集灰の溶解液は強アルカリ性であるため、陽イオン交換基と陰イオン交換基とが独立して別々に存在するスネークケージ型両性イオン交換樹脂を使用した場合は、スネークケージを形成するイオン交換基の脱離などの耐薬品性の問題が懸念されるが、本発明で使用するグリシン型両性イオン交換樹脂は優れた耐薬品性を有する。
【0018】
本発明においては、上記の様なグリシン型両性イオン交換樹脂の充填床に蒸解薬品回収工程の捕集灰の溶解液と水とを交互に通液し、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分と塩素イオンに富む画分とに分離して回収する。
【0019】
イオン交換樹脂の充填床の形成には通常のイオン交換塔が使用される。通液する際の空間速度(SV)は、通常1〜10hr-1とされ、温度は、80℃以下であれば特に問題はなく、通常20〜60℃とされる。
【0020】
先ず、捕集灰の溶解液を通液する。これにより、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分(塩素イオンが実質的に含有されていない溶液)が回収される。斯かる通液の継続により、やがて、塩素イオンの漏出が始まる。この時点で捕集灰の溶解液の通液を停止する。次に、溶離液として水を通液する。これにより、塩素イオンに富む画分が回収されてグリシン型両性イオン交換樹脂の再生が行われる。上記の操作を繰り返して行うことにより、連続して、捕集灰の溶解液を硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分と塩素イオンに富む画分とに分離して回収することが出来る。そして、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分は、蒸解液(白液)の調製に再使用される。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
クラフトパルプの製造における蒸解薬品回収工程(ソーダ回収ポイラー)の捕集灰を50℃で40w/v%の条件で純水に溶解し、0.45μmメンブレンフィルターで濾過処理し、表1に示す組成を有する濾液(原液)を得た。
【0023】
【表1】
Figure 0003667225
【0024】
グリシン型両性イオン交換樹脂[ダイヤイオン(登録商標)AMP01]780mLを充填した内径30mmの可動栓付ガラス製カラムに、温度60℃に保温した原液を空間速度(SV)4.0h-1で234mL通液し、続いて、温度60℃に保温した純水を空間速度(SV)4.0h-1で766mL通液した。カラム流出液の各成分は図1の様であった。その際、カラム流出液を硫酸イオン及び炭酸イオンに富む回収画分と不純物である塩素イオンに富む排水画分に分画した。回収画分(図1中のA)における各成分回収率および排水画分への各成分除去率は表2の様であった。
【0025】
【表2】
Figure 0003667225
【0026】
上記の実施例から明らかな様に、グリシン型両性イオン交換樹脂により、クラフトパルプの製造における蒸解薬品回収工程(ソーダ回収ポイラー)の捕集灰に含まれる塩素分の除去が可能であることが確認された。
【0027】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、パルプの製造における蒸解薬品回収工程の捕集灰から塩素分を除去するための捕集灰の処理方法が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたカラム流出液の各成分の流出状態の一例を示す流出曲線

Claims (1)

  1. 以下の式(1)で表されるイオン交換基を有するイオン交換樹脂の充填床に蒸解薬品回収工程の捕集灰の溶解液と水とを交互に通液し、硫酸イオン及び炭酸イオンに富む画分と塩素イオンに富む画分とに分離して回収することを特徴とする蒸解薬品回収工程の捕集灰の処理方法。
    Figure 0003667225
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