JP3664806B2 - 高分子多相系材料の衝撃強度計測装置及び方法 - Google Patents

高分子多相系材料の衝撃強度計測装置及び方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の成分で一定の3次元単位構造が繰り返される高分子多相系材料即ち所謂複合材料の衝撃試験値を演算によって計測する高分子多相系材料の衝撃強度測定装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の成分からなる高分子材料とは、高分子化合物の連続相(母材)に繊維、粒子等の連続相を形成する高分子化合物とは異なる性質の強化材が分散、積層した構造体である。
【0003】
連続層が熱可塑性樹脂で、分散層が有機・無機微粒子又は繊維の組合わせの例として、フィラー強化ポリオレフィンが、連続層が弾性体で分散層が無機微粒子の組合わせの例としてカーボン強化ゴム組成物が、連続層が熱可塑性樹脂で、分散層が弾性体粒子の組合わせとしてゴム強化樹脂組成物が知られている。
【0004】
これらの複数の成分からなる高分子材料に共通する特徴としては、材料の機械的特性が単に材料を形成する成分単独の性質の和或いは平均によって決まるものではなく、両成分の形状、分散状態といった各成分の分散形態によってて大きく変化する点がある。
【0005】
したがって、複数の成分からなる高分子材料を開発する場合には、これら各成分単独の性質を調査し、組合わせるだけでは不十分であり、分散状態を変化させた実験を繰り返しながら最適の組合わせと分散状態を見つけ出すといった複雑な手間の係る作業が必要であった。
【0006】
従来、斯かる煩雑さをさけて最適点を効率的に探し出す試みが、学術的にも工学的にも広く行われていることは周知の通りである。例えば、ゴム強化熱可塑性樹脂の代表的材料であるハイインパクトポリスチレンの定性的設定指標に関するエヒテの論文(Makromol.Chem.58 175 (1977))(以下、第1従来例と称す)が有名である。
【0007】
また、分散相を応力の集中点に見立ててサイズの異なる複数の粒子周辺の応力を計算し高分子多相系材料の破壊機構を解析する手法(以下、第2従来例と称す)も提案されている(Macromolecules 24-20 5689 (1991)) 。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第1従来例にあっては、ハイインパクトポリスチレンの定性的設定指標については最適化を行うことができるが、この論文以降にも数多くの論文等が発表されていることから最適化に関係する問題が完全には解決していないことが明らかである。この背景には毎年数多くの高分子化合物が登場し、組合わせられる化合物の数が膨大になったこと、重合技術・押し出し混練技術などが進歩し、形状・分散状態制御の自由度が格段に向上したことが挙げられる。
【0009】
また、第2従来例にあっては、高分子多相系材料内部の応力分布を推定するには便利であるが、得られる情報は静的な範囲に留まり、破壊という動的な現象を解析し材料強度を推定するには不十分であるという未解決の課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、高分子多相系材料の衝撃強度を衝撃試験機を用いることなく容易に計測することができる高分子多相系材料の衝撃強度計測装置及び方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、連続相と分散相とが一定の3次元単位構造が繰り返される高分子多相系材料の衝撃強度を計測する高分子多相系材料の衝撃強度計測装置であって、前記連続相及び分散相の構成材料毎のポアソン比及び限界歪みエネルギ開放率、歪み速度依存データとしての応力歪み特性データ等の材料データと、3次元座標で与えられる単位形状データ、及び所定の境界条件を入力して、予め設定した試験モデルを有限要素に分割した各要素について、有限要素法に従って変位を与えたときの歪みエネルギ開放率を算出し、当該歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達するまで前記変位を増加させることにより、前記高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を演算する応力歪み特性演算手段と、該応力歪み特性演算手段で演算した応力歪み特性に基づいて衝撃試験モデルを分割した各要素が破断状態に達するまで前記衝撃試験変位を増加させて、各要素毎の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを演算し、これらを衝撃試験モデル全体で積算するエネルギ演算手段と、該エネルギ演算手段で算出した各エネルギに基づいて吸収エネルギを算出し、該吸収エネルギに基づいて衝撃値を演算する衝撃値演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1の発明において、前記応力歪み特性演算手段は、試験モデルに対する変位の増分を設定する変位設定手段と、該変位設定手段で設定された変位を与えたときの各要素の歪みエネルギと外部エネルギとを演算し、両エネルギと各要素の断面積とに基づいて歪みエネルギ開放率を演算する歪みエネルギ開放率演算手段と、該歪みエネルギ開放率演算手段の歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したか否かを判定し、限界歪みエネルギ開放率に達していないときに前記変位設定手段の変位を増加させ、限界歪みエネルギ開放率に達したときに該当要素の変位、応力、沈み、歪みエネルギ、外部エネルギ、反力及び歪みエネルギ開放率を決定する特性決定手段と、該特性決定手段で決定された反力及び衝撃試験変位に基づいて公称応力及び公称歪みを演算する公称応力歪み算出手段と、該応力歪み演算手段の演算結果に基づいて高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を算出する応力歪み特性算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みを算出し、当該歪みが破断歪みに達したときに該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されていることを特徴としている。
【0014】
さらにまた、請求項4に係る発明は、請求項1又は2の発明において、前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みエネルギと外部エネルギを算出し、両エネルギと要素断面積とで算出される歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したときに該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されていることを特徴としている。
【0015】
なおさらに、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の発明において、前記高分子多相系材料は、連続相が非晶性樹脂で、且つ分散相がエラストマー粒子であることを特徴としている。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、請求項5の発明において、前記材料データが複数の変形速度で求めた各連続相及び分散相の実測値を使用することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項7に係る発明は、一定の3次元単位構造が繰り返される高分子多相系材料の衝撃強度を計測する高分子多相系材料の衝撃強度計測方法であって、計測対象となる高分子多相系材料のポアソン比、歪み速度依存データとしての応力歪み特性データ等の材料データと、3次元座標で与えられる単位形状データ、及び所定の境界条件とに基づいて、予め設定した試験モデルを有限要素に分割した各要素について、有限要素法に従って変位を与えたときの歪みエネルギ開放率を算出しながら、当該歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギに達するまで前記変位を増加させることにより、高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を演算するステップと、演算した応力歪み特性に基づいて衝撃試験変位を与えたときの各要素が破断状態に達するまで前記衝撃試験変位を増加させながら、各要素毎の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを演算し、これらを衝撃試験モデル全体で積算するステップと、積算された各エネルギに基づいて吸収エネルギを算出し、該吸収エネルギを前記切欠き部の最小断面積で除して衝撃値を演算することを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すブロック図である。図中、1はデータ入力手段としてのキーボード2、データ格納手段としてのフロッピィデスク装置3、データ表示手段としてのCRTディスプレイ,液晶ディスプレイ等の表示装置4及びデータ出力手段としてのプリンタ5が接続されたコンピュータであって、このコンピュータ1でキーボード2或いはフロッピィディスク装置3から入力される入力される衝撃強度を計測する高分子多相系材料の入力データに基づいて図2〜図4の演算処理を行うことにより、衝撃強度を算出する。
【0019】
ここで、高分子多相系材料としては、ベースポリマーを汎用ポリスチレンとし、強化材をゴムとした2成分複合材料でなる高衝撃性ポリスチレン(High Impact PolyStyrene)(以下、HIPSと略称する)を適用した。
【0020】
このHIPSの微視的形態は、図5で模式的に示すようにベースポリマーの汎用ポリスチレンの海のなかにゴムが島状に浮かんでいる、海島構造の形態をとる。すなわち、繊維をゴムに置き換えれば、複合材料と何ら変わりなく、複合材料で既に行われているような素材設計が可能ではないかと推察される。しかし、現在、実用的な力学的素材設計は、その殆どが弾性域での設計であり、ゴムのような非弾性体への実用的な適用例は殆どない。
【0021】
このHIPSの強化材であるゴムは厳密には同一の形状、均一分布ではないが、電子顕微鏡による映像を画像処理することにより平均粒径を算出すると、ほぼ重量分立に近似することから、ゴムの形態を球とし且つ島状のゴムに内方される汎用ポリスチレンやゴムでなるオクルードを無視し、ほぼ均一な分布を示すものと仮定する。
【0022】
そこで、数値解析用モデルとしては、2次元的に簡略化して表すと、図6(a)に示す電子顕微鏡による映像を、図6(b)に示すように、汎用ポリスチレンの海にゴムが均一分散しているものと仮定し、各分散領域について図6(c)に示すように幾つかのユニットが連続して存在する系に置換し、次いで図6(d)に示すように連続するユニットとの相互作用は、連続的に存在することを境界条件として与えることで考慮する。
【0023】
実際の数値解析モデルは、図7に示すように、汎用ポリスチレンの海内に球状の島が存在する3次元モデルとして適用する。
また、衝撃強度としてアイゾット衝撃値を計測するものとし、このアイゾット衝撃値を求めるモデルとして、図8に示すような中央部に切欠き部10を有する規格化されている樹脂のアイゾット試験片11の形状をモデル化し、これにハンマ12を衝接させるようにしている。このハンマは初速3m/秒の速度で試験片に衝突し、試験片から離れるまで(試験片11が破断するか、極端に変形するまで)を解析する。このモデルの破壊計算に大して適当な分割要素数は100〜100000に選定され、好ましくは1000〜10000に選定する。この理由は、分割要素数が100要素未満では計算精度が充分でなく、10万を越えると計算に長時間を要し無意味となるからである。
【0024】
ここで、HIPSの衝撃値はクレーズと呼ばれる微視的亀裂によって支配される。このクレーズは、HIPSに外荷重を与えた際、ゴムの周囲の汎用ポリスチレンに生じる微少な損傷(亀裂)であり、クレーズが多く発生すれば衝撃値は高くなり、逆に少であれば衝撃値は低下する。本実施形態においては、クレーズ現象を機械的な亀裂として取扱い、微少な欠陥が試験片内部に存在すると仮定することにより、工学的には破壊力学による取扱が可能となる。
【0025】
そして、HIPSの衝撃強度の解析を行う前に、図9に示すように、高分子多相系材料を構成する汎用ポリスチレン及びゴムの異なる歪み速度例えば0.0125m/sec ,2m/sec ,6m/sec の応力歪み線図を実験により求めておき、この実験データを例えばフロッピィディスクに格納しておく。この図9のゴムの破断伸びは7以上(700%以上)であり、ここでは見易くするために歪み0.1までを示す。
【0026】
また、汎用ポリスチレン及びゴムのポアソン比も求めておく、このポアソン比は、文献的に公知の値を使用しても実験的に求めても、或いは衝撃強度の実験値と計算値のずれを最少にする値として推定して用いても構わない。
【0027】
そして、コンピュータで図2〜図4に示す演算処理を実行する。
この演算処理は、先ず、ステップS1で材料データ、単位形状データ、境界条件を入力する。
【0028】
ここで、材料データとしては応力歪み線図を格納したフロッピィディスクをフロッピィディスク装置3にセットして、これに格納されている歪み速度の異なる応力歪み線図を入力すると共に、キーボード2から汎用ポリスチレン及びゴムのポアソン比を入力し、さらに実験により求めた材料物性値である限界エネルギ開放率Gc を入力する。
【0029】
また、単位形状データとしては、図7に示す体積分率から算定される形態であって画像処理によって得られる形態を3次元座標で入力する。
さらに、境界条件としては、周期対称条件、引張方向への強制変位を入力する。
【0030】
次いで、ステップS2に移行して、入力された各材料データ、単位形状データ及び境界条件をもとに非線形有限要素法に従って演算を実行して、HIPSとしての衝撃試験変位、応力、歪みエネルギ、反力、歪みエネルギ開放率を算出する。
【0031】
この算出処理の具体例は、図3に示すように、先ず、ステップS2aで初期値として衝撃試験変位即ちハンマによって与えられる変位xを設定し、次いでステップS2bに移行して、対称とする分割要素の1つについて変位xを与えたときの歪みエネルギEstと外部エネルギEout を算出し、次いでステップS2cに移行して、該当要素の断面積Aを算出してからステップS2dに移行する。
【0032】
このステップS2dでは、算出した歪みエネルギEst及び外部エネルギEout と断面積Aとを基に下記(1)式の演算を行って歪みエネルギ開放率Gを算出する。
【0033】
G=Eout /A−Est/A …………(1)
次いで、ステップS2eに移行して、算出した歪みエネルギ開放率Gが入力された限界歪み開放率Gc に達したか否かを判定し、G<Gc であるときには限界歪みエネルギ開放率Gc に達していないものと判断してステップS2fに移行して、現在の変位xに所定の増加分Δxを加算した値(x+Δx)を新たな変位xとして設定してから前記ステップS2bに戻り、G=Gc であるときには限界歪みエネルギ開放率Gc に達したものと判断してステップS2gに移行する。
【0034】
ここで、歪みエネルギ開放率Gが限界歪みエネルギ開放率Gc に達した時には、試験片モデルは変形によるエネルギ消費(歪みエネルギ)が不可能となり、破断する状態となったことを判断することができる。
【0035】
ステップS2gでは、対象とする有限要素の全ての歪みエネルギ開放率Gが限界歪みエネルギ開放率Gc に達したか否かを判定し、限界歪みエネルギ開放率Gc に達していない有限要素が存在するときには、前記ステップS2aに戻り、限界歪みエネルギ開放率Gc に達していない有限要素が存在しないときには処理を終了して、処理結果であるHIPSの変位、応力、歪み、歪みエネルギ、外部エネルギ、反力及び歪みエネルギ開放率を例えば内蔵する記憶装置の所定記憶領域に格納してから図2のステップS3に移行する。
【0036】
このステップS3では、前記ステップS2で格納されたHIPSの反力を変位方向に対して直角の断面積で除して単位形状としての公称応力を算出すると共に、強制変位を変位方向の単位形状長さで除して単位形状としての公称歪みを算出する。
【0037】
次いで、ステップS4に移行して、ステップS3で算出したHIPSの公称応力及び公称歪みをもとに歪み速度の異なったHIPSの応力歪み特性を算出し、これを表す応力歪み特性線図を作成し、これを記憶装置の所定記憶領域に格納してからステップS5に移行する。なお、このステップS4の処理は市販されている非線型有限要素法解法プログラム「ABAQUS」(商品名)(米国HKS社製)を適用することができる。
【0038】
このステップS5では、ステップS5で格納された応力歪み特性線図をもとに衝撃試験方法に応じた試験形状データ及び試験方法に応じた境界条件を入力することにより、各有限要素について破断が生じるまでの外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これらを試験片全体で積算し、積算結果を記憶装置の所定記憶領域に記憶するエネルギ演算処理を実行する。
【0039】
このエネルギ演算処理の具体例は、図4に示すように、先ず、ステップS5aで1つの有限要素について初期変位を設定し、次いでステップS5bに移行して要素各々の歪みεを算出してからステップS5cに移行する。
【0040】
このステップS5cでは、ステップS5bで算出した歪みεが前述したステップS4の応力歪み特性線図から求まる歪み速度に応じた破断歪みεb に達したか否かを判定し、ε<εb であるときには、破断歪みεb に達していないものと判断して、ステップS5dに移行して、変位xに変位増加分Δxを加算した値を新たな変位xとして設定してから前記ステップS5bに戻り、ε=εb であるときには、破断歪みεb に達して、切欠き部から生じる亀裂(クレーズではない巨視的亀裂=破断)が生じたものと判断してステップS5eに移行する。
【0041】
このステップS5eでは、破断歪みεb に達した有限要素を削除し、次いでステップS5fに移行して、該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出して、試験片全体での積算を行い、その積算結果を記憶装置の所定記憶領域に更新記憶する。
【0042】
次いで、ステップS5gに移行して、対象とする有限要素の全てが破断歪みεb に達したか否かを判定し、破断歪みεb に達していない有限要素即ち削除されていない有限要素について前記ステップS5a〜S5fの処理を繰り返し、全ての有限要素が破断歪みεb に達したときには破断状態に達したと判断して対象となる要素全てを削除して処理を終了し、図2のステップS6に移行する。
【0043】
このステップS6では、記憶装置の所定領域に更新記憶されている試験片全体での外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギから試験片に蓄積された吸収エネルギを算出する。
【0044】
次いで、ステップS7に移行して、吸収エネルギを切欠き部の最少断面積で除することにより、アイゾット衝撃値を算出し、これを記憶装置の所定記憶領域に記憶すると共に、表示装置に表示し、必要に応じてプリンタで印字してから処理を終了する。
【0045】
ここで、図2の処理において、ステップS2〜S4の処理が応力歪み特性演算手段に対応すると共に、ステップS2の処理が特性決定手段に対応し、ステップS3の処理が公称応力歪み算出手段に対応し、ステップS4の処理が応力歪み特性算出手段に対応し、ステップS5の処理がエネルギ演算手段に対応し、ステップS6及びS7の処理が衝撃値演算手段に対応しており、またステップS6及びS7の処理は市販されている衝撃強度解析プログラム「RADIOSS」(商品名)(仏MECALOG社製)を適用することができる。
【0046】
このように、図2の処理によれば、高分子多相系材料を構成する連続相及び分散相成分毎のポアソン比、歪み速度を異ならせた応力歪み特性及び限界歪みエネルギ開放率Gc とを含む材料データと、HIPSの形態を表す単位形状データと、境界条件を入力することにより、複合材料としてのHIPSの応力歪み特性を演算し、この演算結果から衝撃試験方法に応じた試験形状データと試験方法に応じた境界条件を入力することにより、試験片全体の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これらをエネルギに基づいて試験片に蓄積された吸収エネルギを算出し、これを試験片の切欠き部の最少面積で除することにより、仮想のHIPSであってもアイゾット衝撃値を算出することができる。
〔実施例〕
下記のように作成したゴム強化ポリスチレン樹脂組成物及びポリスチレンを適宜組み合わせて11種類の試験片TP1 〜TP11を作成し、これをアイゾット衝撃試験機で実測した実測衝撃値と図2の演算処理によって求めた演算衝撃値との比較結果を下記表1に表す。
【0047】
▲1▼ポリブタジエン(宇部興産製:13HB)を溶解したスチレンモノマーを攪拌下で重合する際に、攪拌回転数を変化させ、0.68ミクロン,1.2ミクロン及び2.7ミクロンの平均粒子径を持ち、ゴム質重合体を11重量%含有するゴム強化ポリスチレン組成物(I),(II)及び(III) を作成した。
【0048】
▲2▼ポリブタジエン(旭化成工業製:NF35)を溶解したスチレンモノマーを攪拌下で重合し、1.7ミクロンの平均粒子径を持ち、ゴム質重合体を11重量%含有するゴム強化ポリスチレン樹脂組成物(IV)を作成した。
【0049】
▲3▼スチレン−ブタジエンブロック共重合体をスチレンモノマーに溶解し攪拌下で重合することにより、ゴム質重合体粒子内部に単一のポリスチレンオクルージョンを有する平均粒子径が0.7ミクロンのゴム質重合体粒子11重量%含有するゴム強化ポリスチレン樹脂組成物(V) を作成した。
【0050】
▲4▼スチレンモノマーを重合することにより、樹脂組成物(I) 〜(V) の連続相ポリスチレンと同等の分子量を有するポリスチレン(VI)を作成すると共に、ポリスチレン(VI)に対してミネラルオイル3%を混合し、ポリスチレン(VII) を作成した。
【0051】
これらの樹脂組成物を単独或いは押し出し混練により適宜組み合わせて試験片TP1 〜TP11とし、ASTM D256規格に基づき射出成形法1/4インチ試験片IZOD衝撃強度を測定した。
【0052】
また、図2の演算処理においては、事前にゴム強化ポリスチレン樹脂組成物の原料に用いたポリブタジエン、ブタジエンスラチレン共重合体、及び別途作成した連続相を形成するポリスチレン相当品を圧縮成形によって1ミリメートル厚さのシートとし、これにより試験片を切り出し、これらを0.0125m/sec 、2.0m/sec 及び6.0m/sec の引張り速度で図9に示す応力歪み曲線を測定した。一方、ゴム強化ポリスチレン樹脂組成物の電子顕微鏡写真を画像解析し、繰り返し最少単位の形状を求めた。ゴム強化ポリスチレン樹脂組成物(V)に関しては、ゴム質重合体粒子内部のポリスチレン粒子を考慮し、同心円(球)内部のポリスチレンの性質は粒子外部を取り巻く連続相ポリスチレンと同一とみなした。これらの実測値を入力し、各成分のポアソン比は、ポリスチレン、ポリブタジエンの文献値を、ポリスチレンの臨界エネルギ開放率も文献値を用いた。
【0053】
また、図7に示すノッチ(切欠き部)付きアイゾット試験片形状を、ノッチ周辺及び区ラックが進展するノッチの延長線部分は細かく、ノッチから遠ざかるに従って粗く2000個の有限要素に分割した。
【0054】
さらに、アイゾット試験片の規定の位置に初速毎秒3メートルでハンマが衝突する条件のもとで、試験片が破断し分離するまでにようする試験片に蓄えられるエネルギをノッチ部分の最小断面積で除してアイゾット衝撃値を求めた。
【0055】
なおさらに、ノッチ部分から生じるクラックは、解析により求まる歪みが繰り返し単位の数値解析によって得られる速度依存の応力歪み曲線の破断歪みεb を越える時点において生じるとして取り扱った。
【0056】
【表1】
Figure 0003664806
【0057】
この表1から明らかなように、試験片TP1 〜TP3 及びTP5 〜TP7 の実測値と演算値の弾性体粒子径及び弾性体量依存性の傾向は、アイゾット衝撃値を最大にする最適粒子径の存在、弾性体量減少によりアイゾット衝撃値が低下する減少を正しく表現し、試験片TP2 及びTP4 の比較からゴムの種類によって最大値が異なることを正しく表している。
【0058】
また、試験片TP7 及びTP8 の比較においても可塑材効果を表現していることが明らかである。さらに試験片TP1 〜TP2 とTP9 〜TP11との比較から、粒子径の小さい単一オクルージョンを有する弾性体粒子からなるゴム強化ポリスチレンは、少量の比較的大きなサイズの一般的弾性体粒子を添加することで飛躍的にそのアイゾット衝撃強度を高める現象が表現されている。
【0059】
一方、重量分率12.3%でゴム粒径が0.68μm、1.25μm及び2.70μmであるときのHIPSのステップS4で算出される応力歪み特性値(FEM)と実験値との関係を図10〜図12に示す。
【0060】
これらの図からも明らかなように、本実施形態で求めたHIPSの応力歪み特性は、実験値とほぼ一致しており、歪みエネルギ開放率Gが限界歪み開放率に達したときに要素の破断状態と判断することが最適であることが立証された。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態を図13について説明する。
この第2の実施形態においては、前述した第1の実施形態における図2のステップS5のエネルギ演算処理が図13に示すように変更されていることを除いては前述した図2と同様の処理を実行し、対応するステップには同一ステップ番号を付して、その詳細説明はこれを省略する。
【0062】
すなわち、第2の実施形態では、エネルギ演算処理が、図13に示すように、先ず、ステップS5hで1つの有限要素について初期変位xを設定し、次いでステップS5iに移行して、変位xでの歪みエネルギEstJ 外部エネルギEout を算出し、次いでステップS5jに移行して、該当要素の断面積Aを算出してからステップS5kに移行する。
【0063】
このステップS5kでは、前述した(1)式の演算を行って歪みエネルギ開放率Gを算出し、次いでステップS5lに移行して歪みエネルギ開放率Gが限界歪みエネルギ開放率Gc に達したか否かを判定し、G<Gc であるときには限界歪みエネルギ開放率Gc に達していないものと判断してステップS5mに移行して、現在の変位xに変位増加分Δxを加算した値を新たな変位xとして設定してから前記ステップS5iに戻り、G=Gc であるときには有限要素が破断状態に達したと判断してステップS5nに移行する。
【0064】
このステップS5nでは、破断状態に達した要素を削除し、次いでステップS5oに移行して、削除した要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これらを試験片全体で積算し、その積算結果を記憶装置の所定記憶領域に更新記憶する。
【0065】
次いで、ステップS5pに移行して、対象とする要素全てが限界歪みエネルギ開放率Gc に達したか否かを判定し、限界歪みエネルギ開放率Gc に達していない要素があるとき即ち削除されずに残っている要素があるときには、前記ステップS5hに戻って、残りの要素についてステップS5h〜S5nの処理を行い、全ての要素が限界歪みエネルギ開放率Gc に達したときには、試験片が破断状態に達したものと判断して、ステップS5qに移行して、対象要素を全て削除してから図2のステップS6に移行する。
【0066】
この図11のエネルギ演算処理においても、各有限要素について変位を増加させながら各要素の歪みエネルギ開放率Gを演算し、この歪みエネルギ開放率Gが限界歪みエネルギ開放率Gc に達したときに該当有限要素が破断状態となったものと判断して、該当有限要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを試験片全体で積算し、その積算値を記憶装置の所定記憶領域に更新記憶するので、全ての要素の解析が終了した時点で、試験片に蓄積された吸収エネルギを算出し、これを試験片のノッチ部分の最小断面積で除することにより目的とするアイゾット衝撃値を算出することができる。
【0067】
なお、上記実施例においては、高分子多相系材料がゴム強化ポリスチレン樹脂組成物である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、連続相を形成する物質としては、前述したポリスチレンの他、アクリロニトル−スチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン−ポリフェニレンオキサイド混合物といったスチレン系樹脂及びこれらに可塑材・難燃剤を添加した組成物があり、他にもポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエンといった非晶性樹脂及びこれらの組成物にも好適に適用することができる。
【0068】
また、分散相を形成する物質としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、EVA、EPDMといった連続相より弾性率の低い物質、ボリオレフィン、ボリアミド、ボリエステルといった結晶性高分子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラックといった弾性率の高い物質があげられる。これらポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドといった結晶性高分子材料の場合には、結晶相を分散相として、非晶相を連続相として取り扱うことで図2の演算処理の適用が可能である。
【0069】
さらに、分散相の分布形態は、球に限らず、紡錘体、柱状、面等任意に与えることができるし、分布形状は電子顕微鏡写真を画像処理して入力しても、架空の分散形状を定義して入力してもよく、分散相と連続相の比率も任意に設定することができる。
【0070】
なおさらに、上記実施形態においては、アイゾット衝撃強度を計測する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、シャルピー衝撃強度やその他の衝撃強度を計測することができる。この場合にはエネルギ演算手段で衝撃試験方法に応じた衝撃試験モデル及び衝撃試験変位を与えて解析すればよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、衝撃試験片として、切欠き部11を有するモデルを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、切欠き部を有さない衝撃試験モデルについても、破断位置を特定することにより、吸収エネルギに基づいて衝撃値を容易に算出することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び請求項7に係る発明によれば、入力手段によって、高分子多相系材料を構成する複合材料毎の応力歪み特性とポアソン比でなる材料データと、高分子多相系材料の形態を表す形状データと所定の境界条件を入力することにより、非線形有限要素法に従って試料モデルを分割した有限要素毎に歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達するまで変位を増加させることにより、高分子多相系材料の破断状態に至る応力歪み特性を演算し、この演算結果から、衝撃試験変位を与えたときの各要素が破断状態に達するまで前記衝撃試験変位を増加させながら、各要素毎の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを演算し、これらを衝撃試験モデル全体で積算するステップと、積算された各エネルギに基づいて吸収エネルギを算出し、該吸収エネルギを前記切欠き部の最小断面積で除して衝撃値を演算するように構成したので、高分子多相系材料の各構成材料の歪み速度の異なる応力歪み特性、ポアソン比及び限界歪みエネルギ開放率を与えるだけで、衝撃強度を計測することが可能となり、実際に該当する高分子多相系材料が存在しない場合でも確実に衝撃強度を計測することができ、高分子多相系材料を設計開発する場合に大いに貢献することができるという効果が得られる。
【0073】
また、請求項2に係る発明によれば、請求項1の発明において、前記応力歪み特性演算手段は、試験モデルに対する変位の増分を設定する変位設定手段と、該変位設定手段で設定された衝撃試験変位を与えたときの各要素の歪みエネルギと外部エネルギとを演算し、両エネルギと各要素の断面積とに基づいて歪みエネルギ開放率を演算する歪みエネルギ開放率演算手段と、該歪みエネルギ開放率演算手段の歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したか否かを判定し、限界歪みエネルギ開放率に達していないときに前記変位を増加させ、限界歪みエネルギ開放率に達したときに該当要素の変位、応力、沈み、歪みエネルギ、外部エネルギ、反力及び歪みエネルギ開放率を決定する特性決定手段と、該特性決定手段で決定された反力及び衝撃試験変位に基づいて公称応力及び公称歪みを演算するする応力歪み演算手段と、該応力歪み演算手段の演算結果に基づいて歪み速度の異なった応力歪み特性を算出する応力歪み特性算出手段とを備えているので、試験片の歪みエネルギ開放率と限界歪みエネルギ開放率とを比較し、限界歪みエネルギ開放率に達したときに試験片が歪むことによってエネルギ消費をし尽くすことができず破断する状態となったことを確実に判断することができ、構造の定義された高分子多相系材料の応力歪み特性を正確に計測することができるという効果が得られる。
【0074】
さらに、請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2の発明において、前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みを算出し、当該歪みが破断歪みに達したときに破断状態と判断して該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されているので、各要素の破断状態を確実に判断することができるという効果が得られる。
【0075】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、請求項1又は2の発明において、前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みエネルギと外部エネルギを算出し、両エネルギと要素断面積とで算出される歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したときに破綻状態と判断して該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されているので、請求項3の発明と同様に、各要素の破断状態を確実に判断することができるという効果が得られる。
【0076】
なおさらに、請求項5に係る発明によれば、請求項1乃至4の発明において、前記高分子多相系材料は、連続相が非晶性樹脂で、且つ分散相がエラストマー粒子であるので、弾性率の大きく異なる材料の組み合わされた系の各成分の衝撃強度に対する寄与を確実に判断できるという効果が得られる。
【0077】
また、請求項6に係る発明によれば、請求項5の発明において、前記材料データは複数の変形速度で求めた各連続相及び分散相の実測値を使用するので、材料データの入力が容易となるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態における衝撃強度演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2の応力歪み特性演算処理の具体例を示すフローチャートである。
【図4】図2のエネルギ演算処理の具体例を示すフローチャートである。
【図5】ハイインパクトポリスチレンの形態を示す模式図である。
【図6】ハイインパクトポリスチレンの形態をモデル化する場合の説明図である。
【図7】ハイインパクトポリスチレンの3次元モデルを示す説明図である。
【図8】アイゾット衝撃試験片のモデルを示す説明図である。
【図9】ハイインパクトポリスチレンを構成する汎用ポリスチレン及びゴムの応力歪み特性を示す特性線図である。
【図10】ゴム粒径が0.68μmであるときのHIPSの演算値と実測値との関係を示す特性線図である。
【図11】ゴム粒径が1.25μmであるときのHIPSの演算値と実測値との関係を示す特性線図である。
【図12】ゴム粒径が2.70μmであるときのHIPSの演算値と実測値との関係を示す特性線図である。
【図13】本発明の第2の実施形態を示す図3に対応するエネルギ演算処理の具体例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 コンピュータ
2 キーボード
3 フロッピィデスク装置
4 表示装置
5 プリンタ

Claims (7)

  1. 連続相と分散相とが一定の3次元単位構造が繰り返される高分子多相系材料の衝撃強度を計測する高分子多相系材料の衝撃強度計測装置であって、前記連続相及び分散相の構成材料毎のポアソン比及び限界歪みエネルギ開放率、歪み速度依存データとしての応力歪み特性データ等の材料データと、3次元座標で与えられる単位形状データ、及び所定の境界条件を入力して、予め設定した試験モデルを有限要素に分割した各要素について、有限要素法に従って変位を与えたときの歪みエネルギ開放率を算出し、当該歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達するまで前記変位を増加させることにより、前記高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を演算する応力歪み特性演算手段と、該応力歪み特性演算手段で演算した応力歪み特性に基づいて衝撃試験モデルを分割した各要素が破断状態に達するまで前記衝撃試験変位を増加させて、各要素毎の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを演算し、これらを衝撃試験モデル全体で積算するエネルギ演算手段と、該エネルギ演算手段で算出した各エネルギに基づいて吸収エネルギを算出し、該吸収エネルギに基づいて衝撃値を演算する衝撃値演算手段とを備えたことを特徴とする高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  2. 前記応力歪み特性演算手段は、試験モデルに対する変位の増分を設定する変位設定手段と、該変位設定手段で設定された変位を与えたときの各要素の歪みエネルギと外部エネルギとを演算し、両エネルギと各要素の断面積とに基づいて歪みエネルギ開放率を演算する歪みエネルギ開放率演算手段と、該歪みエネルギ開放率演算手段の歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したか否かを判定し、限界歪みエネルギ開放率に達していないときに前記変位設定手段の変位を増加させ、限界歪みエネルギ開放率に達したときに該当要素の変位、応力、沈み、歪みエネルギ、外部エネルギ、反力及び歪みエネルギ開放率を決定する特性決定手段と、該特性決定手段で決定された反力及び衝撃試験変位に基づいて公称応力及び公称歪みを演算する公称応力歪み算出手段と、該応力歪み演算手段の演算結果に基づいて高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を算出する応力歪み特性算出手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  3. 前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みを算出し、当該歪みが破断歪みに達したときに破断状態と判断して該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  4. 前記エネルギ演算手段は、各要素について衝撃試験変位を増加させたときの歪みエネルギと外部エネルギを算出し、両エネルギと要素断面積とで算出される歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギ開放率に達したときに破綻状態と判断して該当要素の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを算出し、これを衝撃試験モデル全体で積算するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  5. 前記高分子多相系材料は、連続相が非晶性樹脂で、且つ分散相がエラストマー粒子であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  6. 前記材料データは複数の変形速度で求めた各連続相及び分散相の実測値を使用することを特徴とする請求項5記載の高分子多相系材料の衝撃強度計測装置。
  7. 一定の3次元単位構造が繰り返される高分子多相系材料の衝撃強度を計測する高分子多相系材料の衝撃強度計測方法であって、計測対象となる高分子多相系材料のポアソン比、歪み速度依存データとしての応力歪み特性データ等の材料データと、3次元座標で与えられる単位形状データ、及び所定の境界条件とに基づいて、予め設定した試験モデルを有限要素に分割した各要素について、有限要素法に従って変位を与えたときの歪みエネルギ開放率を算出しながら、当該歪みエネルギ開放率が限界歪みエネルギに達するまで前記変位を増加させることにより、高分子多相系材料の歪み速度の異なった応力歪み特性を演算するステップと、演算した応力歪み特性に基づいて衝撃試験変位を与えたときの各要素が破断状態に達するまで前記衝撃試験変位を増加させながら、各要素毎の外部エネルギ、内部エネルギ及び運動エネルギを演算し、これらを衝撃試験モデル全体で積算するステップと、積算された各エネルギに基づいて吸収エネルギを算出し、該吸収エネルギを前記切欠き部の最小断面積で除して衝撃値を演算することを特徴とする高分子多相系材料の衝撃強度計測方法。
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