JP3664781B2 - 建設機械の作業範囲制限制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は油圧ショベル等の建設機械の作業範囲制限制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベルでは、上部旋回体のフロント部にブームを取り付け、そのブーム先端部に順次アーム、バケットを連結して作業用のフロント装置を構成している。そして上記作フロント装置の屈折作業運動を操作することにより、掘削積込作業などを行っている。
【0003】
このような油圧ショベルで作業を行うとき、作業現場によっては上方や下方に障害物があるう場合がある。例えば屋外の作業では電線、屋内の作業では天井などが上方の障害物となる。また、ガス管や水道管等が地中にある場合の掘削作業では、これらが下方の障害物となる。オペレータは作業中これらの障害物にバケット爪先などの部分を接触させたり、引っかけたりしないように細心の注意を払う必要がある。
【0004】
このような問題に対して、特開平3−208923号公報や特公平6−19165号公報に記載されているような発明がなされている。特開平3−208923号公報に記載されている発明は、上方に予めフロント装置の侵入禁止領域を設定し、侵入禁止領域の下方にアクチュエータの減速領域を設定し、フロント装置の各先端位置のうち最大高さにある部分がこの減速領域に侵入すると油圧ポンプの吐出量を減らしてアクチュエータの作動速度を落とし、更に侵入禁止領域まで達するとパイロット操作装置の元圧を断ち、アクチュエータの動作を止めてしまうことにより、作業機の一部が上方の障害物に接触することを防ぐようにしたものである。
【0005】
また、特公平6−19165号公報に記載されている発明は、パイロット操作装置とこのパイロット操作装置から出力された操作パイロット圧により操作される流量制御弁との間に当該操作パイロット圧を減圧して出力する電気式減圧弁を設け、ブームが設定高さまで上昇すると電気式減圧弁を減圧操作する電気信号を出力して操作パイロット圧を減圧し、ブームの上昇を停止させるようにしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特公平6−19165号公報では、上記のように電気式減圧弁を用いて操作パイロット圧を減圧し、ブームが設定高さまで上昇するとブームの上昇を停止させるようにしている。また、この特公平6−19165号公報に記載の電気式減圧弁を特開平3−208923号公報の発明に用いれば、ブームと設定高さ(侵入禁止領域)との距離に応じて当該電気式減圧弁に与えられる電気信号を調整することにより、ブームが設定高さに近づくと電気式減圧弁による減圧の程度を増してアクチュエータの作動速度を落とし、ブームの動作速度を減速することもできる。しかし、このように電気式減圧弁を用いて減速制御をするときには次のような問題がある。
【0007】
パイロット操作装置と流量制御弁との間に電気式減圧弁を配置する場合は、パイロット操作装置から出力された操作パイロット圧を不用意に減圧して、オペレータの意志にそぐわないアクチュエータの速度低下を起こさないようにしなければならない。このため、電気式減圧弁は、必要がない限りパイロット操作装置の油圧源であるパイロットポンプの油圧(パイロットポンプ元圧)程度の油圧を常に流量制御弁に供給できるようするために、通常は電気信号の電流値として最大電流が流れ、弁を全開にしている。そして、例えばブームが設定した高さ又は深さに近づくと漸次電気信号の電流値を落とし、減圧弁を閉じてゆき、徐々にアクチュエータの速度を落として最後は滑らかに停止させる。
【0008】
ところが、上記のように減速制御する過程において、侵入禁止領域の直前ではブームの動作速度が相当遅くなるので、アクチュエータが当該減速制御での停止処理で完全に停止する電流値まで落ちる前にオペレータは操作レバーを中立位置に戻してパイロット操作装置から出力される操作パイロット圧をゼロにし、アクチュエータを停止させることがある。このような停止状態では、減速制御の電気信号の電流値がアクチュエータを完全に停止させる電流値まで落ちていないので、電気式減圧弁はわずかに開いた、例えば数Kg/cm2程度の油圧を出力できる状態にある。この状態での電気式減圧弁が出力できる油圧をPsとする。この状態で再びオペレータがブームを更に侵入禁止領域に近づける方向に動かすため操作レバーの操作で操作パイロット圧を立たせると、油圧の応答遅れにより電気式減圧弁は瞬時には操作パイロット圧をPsに減圧できず、電気式減圧弁の開き状態に応じてわずかの時間だけサージ圧が立ってしまい、流量制御弁がこのサージ圧に応じて瞬間的に動いてしまい、アクチュエータがわずかに動いてしまう。このため、オペレータにとってはブームが停止したはずなのに、その後のレバー操作によってアクチュエータが不用意に動いて、サージ圧の大きさによってはフロント装置が飛び出し侵入禁止領域に侵入してしまうので、操作に細心の注意を払わねばならない。また、サージ圧によってブームが動く際、多少のショックが伴うので、オペレータに不快感を与えることになる。
【0009】
本発明の目的は、予め設定した進入禁止領域の直前でフロント装置を停止させたときに、その後のレバー操作によってアクチュエータが不用意に動いてフロント装置が進入禁止領域に進入したり、ショックを発生したりすることのない建設機械の作業範囲制限制御装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を採用する。すなわち、上下方向に回動可能な複数のフロント部材により構成される多関節型のフロント装置と、前記複数のフロント部材を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記複数のフロント部材の動作を指示する操作装置から出力される操作パイロット圧により駆動され、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記操作装置とこれに対応する少なくとも1つの流量制御弁との間に設けられ、前記操作装置から出力された操作パイロット圧を減圧して出力する電気式減圧弁とを備え、前記フロント装置に関して予め設定したモニターポイントと予め設定した侵入禁止領域との距離に応じて指令電流値を計算し前記電気式減圧弁に出力して、前記モニターポイントが前記侵入禁止領域に近づくと前記フロント装置を減速させ、前記侵入禁止領域に到達すると前記フロント装置を停止させる制御を行う建設機械の作業範囲制限制御装置において、前記モニターポイントが侵入禁止領域に近づいた際に前記フロント装置を停止させる所定の範囲を前記侵入禁止領域近傍に設け、前記モニターポイントが前記所定の範囲に入ったときに前記電気式減圧弁に前記フロント装置を完全に停止させる低電流値を出力する信号低減処理手段を備えた構成とする。
【0011】
以上のように構成した本発明では、モニターポイントが侵入禁止領域に近づき、モニターポイントと侵入禁止領域との距離が小さくなると、当該距離が小さくなるに従って小さくなる指令電流値を計算し電気式減圧弁に出力するが、モニターポイントが侵入禁止領域直前の所定の範囲に入ると、信号低減処理手段はフロント装置を完全に停止させる低電流値を電気式減圧弁に出力する。これにより、モニターポイントが侵入禁止領域直前の所定の範囲まで近づくと、電気式減圧弁に出力される指令電流値はフロント装置を完全に停止させる低電流値になり、電気式減圧弁は閉じられ、フロント装置は停止する。また、電気式減圧弁は閉じられるので、その後、操作レバーを動かしてもパイロットサージ圧の発生を押さえることができ、油圧アクチュエータの不用意な動作を防止することができ、このため、フロント装置が飛び出して進入禁止領域に進入したり、ショックを発生することがなくなる。
【0012】
好ましくは、前記信号低減処理手段は、前記モニターポイントが前記侵入禁止領域に近づくときより前記侵入禁止領域から遠ざかるときの方が前記所定の範囲の距離を長くするヒステリシス演算を行う。
【0013】
このように信号低減処理手段でヒステリシス演算を行わせることにより、上記のように指令電流値を低電流値に落として進入禁止領域直前に停止させたとき、この位置でフロント装置1Aが揺れてもフロント装置1Aを確実に停止したままにしておくことができる。
【0014】
また、好ましくは、前記信号低減処理手段は、前記モニターポイントと侵入禁止領域との距離が小さくなるに従って指令電流値を小さくするように計算する減速演算手段で計算された指令電流値をスッテプ状に前記低電流値に落とす。これにより、フロント装置を確実に停止させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を油圧ショベルに適用した場合の実施形態を図1〜図 により説明する。なお、本実施形態は上方の範囲制限制御を行う場合についてのものである。
【0016】
図1において、本発明が適用される油圧ショベルは、油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2からの圧油により駆動されるブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バッケトシリンダ3c、旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fを含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータ3a〜3fのそれぞれに対応して設けられた複数の操作レバー装置4a〜4fと、油圧ポンプ2と複数の油圧アクチュエータ3a〜3f間に接続され、操作レバー装置4a〜4fの操作信号によって制御され、油圧アクチュエータ3a〜3fに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁5a〜5fと、油圧ポンプ2と流量制御弁5a〜5fの間の圧力が設定値以上になった場合に開くリリーフ弁6とを有し、これらは油圧ショベルの被駆動部材を駆動する油圧駆動装置を構成している。
【0017】
また、油圧ショベルは、図2に示すように、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a、アーム1b及びバケット1cからなる多関節型のフロント装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成され、フロント装置1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a、アーム1b、バケット1c、上部旋回体1d及び下部走行体1eはそれぞれブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e、3fによりそれぞれ駆動される被駆動部材を構成し、それらの動作は上記操作レバー装置4a〜4fにより指示される。
【0018】
操作レバー装置4a〜4fは操作信号としてパイロット圧を出力し、対応する流量制御弁5a〜5fを駆動する油圧パイロット方式の操作装置(パイロット操作装置)であり、それぞれ、図3に示すように、オペレータにより操作される操作レバー40と、操作レバー40の操作量と操作方向に応じたパイロット圧を生成する一対の減圧弁41,42とにより構成され、減圧弁41,42の一次ポート側はパイロットポンプ43に接続され、二次ポート側はパイロットライン44a,44b;45a,45b;46a,46b;47a,47b;48a,48b;49a,49bを介して対応する流量制御弁の油圧駆動部50a,50b;51a,51b;52a,52b;53a,53b;54a,54b;55a,55bに接続されている。
【0019】
例えばブーム用のパイロット操作装置4aは、操作レバー40が図3のA方向に操作されると、パイロットポンプ43からのパイロット元圧を減圧弁41により操作レバー40の操作量に比例した圧力に変化させてパイロットライン44aに出力し、この圧力が流量制御弁5aの油圧駆動部50aに与えられることにより流量制御弁5aのスプールは図1の右方に動かされる。これにより、主ポンプである油圧ポンプ2からの圧油はブームシリンダ3aのボトム側に供給され、ブームシリンダ3aは伸長するよう駆動され、図2に示されるブーム1aは上方に動かされる。操作レバー40を図3のB方向に操作すると、パイロットポンプ43からのパイロット元圧を減圧弁42により操作レバー40の操作量に比例した圧力に変化させてパイロットライン44bに出力し、この圧力が流量制御弁5aの油圧駆動部50bに与えられることにより流量制御弁5aのスプールは図1の左方に動かされ、油圧ポンプ2からの圧油はブームシリンダ3aのロッド側に供給され、ブームシリンダ3aは収縮するよう駆動され、図2に示されるブーム1aは下方に動かされる。操作レバー40を中央位置に戻すと、減圧弁41,42はパイロットライン44a,44bをタンクにつなげ、流量制御弁5aへのパイロット圧の付与は解除され、流量制御弁5aは復元スプリングにより中立位置に戻され、ブーム1aの動きは停止する。アーム用、バケット用のパイロット操作装置4b,4cについても同様である。このようなブーム用、アーム用、バケット用のパイロット操作装置4a〜4cの操作を単独又は適当に組み合わせて行うことにより、フロント装置1Aを所望の態様で屈折動作させ、掘削積込作業などを行うことができる。なお、本願明細書中では、パイロット操作装置4a,4bから出力されたパイロット圧のことを特に「操作パイロット圧」と呼ぶ。
【0020】
以上のような油圧ショベルに本実施例による作業範囲制限制御装置が設けられている。この作業範囲制限制御装置は、予め作業に応じてフロント部材が侵入してはならない領域(侵入禁止領域)を指示するための設定器7と、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cのそれぞれの回動支点に設けられ、フロント装置1Aの位置と姿勢に関する状態量としてそれぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8cと、設定器7の設定信号、角度検出器8a,8b,8cの検出信号を入力し、フロント部材が侵入してはならない侵入禁止領域を設定すると共に、その侵入禁止領域に応じて作業範囲を制限制御するための電気信号を出力する制御ユニット9と、パイロットライン44a,44b,45a,45bにそれぞれ設置され、パイロット操作装置4a,4bから出力された操作パイロット圧をパイロット一次圧としてこれを前記制御ユニット9から出力されたそれぞれの電気信号に応じて減圧して出力する比例電磁弁10a,10b,11a,11bとで構成されている。
【0021】
比例電磁弁10a,10b,11a,11bは電気式減圧弁であり、図4に示すような構造を有している。図中、150は入力ポート、151は出力ポート、152はタンクポート、153はスプール、154は内部通路、155は圧力室、156はソレノイドであり、入力ポート150にパイロット操作装置4a,4bから出力された操作パイロット圧がパイロット一次圧として導かれ、出力ポート152からのパイロット二次圧(出力圧)が流量制御弁5a,5bの油圧駆動部50a,50b;51a,51bに与えられ、ソレノイド156に制御ユニット9からの電気信号が与えられる。
【0022】
ソレノイド156に与えられる電気信号の電流値がゼロの時は、ソレノイド156には電磁力は発生せず、内部通路154を介して圧力室155に伝えられるパイロット一次圧による付勢力Fpによりスプール154は図示右方に移動し、出力ポート151をタンクポート152に連通し、パイロット二次圧をタンク圧にする(フルクローズ)。ソレノイド156に与えられる電気信号の電流値がゼロでないときは、その電流値に応じた軸方向の力Fsが発生し、スプール153を図示左方に動かし、圧力室155により与えられる付勢力Fpとつりあった位置でスプール153は止まる。このとき、出力ポート151とタンクポート152の連通は遮断され、出力ポート151は入力ポート150と絞りを介して連通し、出力ポート151にはその絞りに応じて減圧された圧力が発生し、これがパイロット二次圧として出力される。また、圧力室155にはその出力ポート151の減圧された圧力(パイロット二次圧)が内部通路154を介して導かれ、付勢力Fpはパイロット二次圧に応じた値となっている。そして、ソレノイド156に与えられる電気信号の電流値が増加し、軸方向の力Fsが大きくなると、それに応じてスプール153は図示左方に動かされ、スプール153の絞りは弱くなって減圧の程度は小さくなり、出力ポート151に発生する圧力(パイロット二次圧)は増加する。ソレノイド156に与えられる電気信号の電流値が最大になると、スプール153は絞りが全く働かない位置まで動かされ(フルオープン)、出力ポート151に発生する圧力(パイロット二次圧)は入力ポート150の圧力(パイロット一次圧)と同じになる。
【0023】
設定器7は、操作パネルあるいはグッリプ上に設けられたスイッチ等の操作手段により設定信号を制御ユニット9に出力し侵入禁止領域の設定を指示するもので、操作パネル上には表示装置等、他の補助手段があってもよい。また、ICカードによる方法、バーコードによる方法、レーザによる方法、無線通信による方法等、他の方法を用いてもよい。
【0024】
制御ユニット9は図5に示すような制御機能を有している。すなわち、制御ユニット9は、侵入禁止領域演算部9a、フロント姿勢演算部9b、制限値記憶メモリ9c、モニターポイント選択演算部9d、減速制御演算部9e、最大シリンダ速度演算部9f、最大パイロット圧演算部9g、バルブ指令電流値演算部9h、バルブ指令信号低減処理演算部9i、電流出力部9jの各機能を有している。
【0025】
侵入禁止領域演算部9aでは、設定器7からの指示でフロント部材が侵入してはならない領域(侵入禁止領域)の設定演算を行う。その一例を図6を用いて説明する。
【0026】
図6において、オペレータの操作でアーム1bの後端を制限したい高さ上の点Pcまでもってゆき、設定器7からの指示でそのときのアーム1bの後端の位置を計算し、その位置を侵入禁止領域の境界の設定値とする。ここで、点Pcの位置はフロント姿勢演算部9bにて計算される。
【0027】
フロント姿勢演算部9bでは、角度検出器8a〜8cで検出したブーム、アーム、バケットの回動角と、制御ユニット9の記憶装置に予め記憶した図6に示すようなフロント装置1A及び車体1Bの各部寸法L1,L2,L3,L4,L5等のデータとを用いてフロント装置1Aの位置と姿勢を計算する。このとき、位置と姿勢は例えばブーム1aの回動支点を原点としたXZ座標系の座標値として求める。XZ座標系は本体1Bに固定した垂直面内にある直交座標系である。
【0028】
ここで、侵入禁止領域演算部9aでの設定演算を行うとき、フロント姿勢演算部9bは、点Pcの位置をXZ座標系のZ座標値として計算し、その値を侵入禁止領域の境界の設定値(Z座標値=Pcz)とする。侵入禁止領域演算部9aで計算されたこの侵入禁止領域の境界の設定値(Z座標値=Pcz)は制限値記憶メモリ9cに記憶しておく。
【0029】
また、フロント装置1Aには予め所定箇所に複数のモニターポイントM1,M2が設定されており、フロント姿勢演算部9bでは、制限制御による作業中に各モニターポイントM1,M2の位置を計算している。本実施形態では、モニターポイントM1はアーム1bの後端であり、モニターポイントM2はバケット1cの回動中心(バケットピン)を中心にした半径L3(バケットピンからバケット先端までの距離)の円の最高点である。このときも、各モニターポイントの位置はXZ座標系の値として求め、各モニターポイントの高さはXZ座標系のZ座標値として計算される。
【0030】
ここで、フロント姿勢演算部9bで計算されるアーム1bの後端の位置すなわちモニターポイントM1の位置(M1x,M1z)や、モニターポイントM2の位置(M2x,M2z)は、回動角α,β,γから記憶装置に記憶した図6に示される各部寸法を用いて下記の式により求まる。
【0031】
M1x=L1cosα−L4cos(α+β)+L5sin(α+β)
M1z=−L1sinα+L2sin(α+β)+L5cos(α+β)
M2x=L1cosα+L2cos(α+β)
M2z=−L1sinα−L2sin(α+β)+L3
モニターポイント選択部9dでは、フロント姿勢演算部9bで計算されたモニターポイントM1,M2のZ座標値M1z,M2zと、制限値記憶メモリ9cに記憶した侵入禁止領域の境界の設定値Pczとから、モニターポイントM1,M2と侵入禁止領域の境界との間の距離L1M,L2Mを計算し、距離L1M,L2Mを比較し、侵入禁止領域に近い方のモニターポイント、すなわちL1M<L2MであればM1を、L1M>L2MであればM2を選択し、選択モニターポイントMsとする。なお、L1M=L2Mの場合はどちらを選択モニターポイントとしてもよいが、ここではM1を選択モニターポイントとする。
【0032】
減速制御演算部9eでは、モニターポイント選択部9dで選択されたモニターポイントMsのZ座標値Mszと、制限値記憶メモリ9cに記憶した侵入禁止領域の境界の設定値Pczと、制御ユニット9の記憶装置に予め記憶しておいた減速領域の範囲を示す距離(以下、減速距離という)LU及び減速関数(後述)とから、ブームシリンダ3aの伸び方向と縮み方向、アームシリンダ3bの伸び方向と縮み方向に対する減速指令信号KBU,KBD,KAU,KADを演算する。この演算内容を以下に説明する。
【0033】
まず、選択モニターポイントMsと侵入禁止領域の境界との間の距離LMを計算する。図6ではモニターポイントM1が最も高い位置にあるとして距離LMが計算されている。次いで、この距離LMと減速距離LUとを比較し、LM>LUであれば選択モニターポイントMsがまだ減速領域に入っていないので、減速指令信号KBU,KBD,KAU,KADは全て1にする。LM≦LUであれば選択モニターポイントMsが減速領域に入っていると判断し、下記の減速関数から減速指令信号KBU,KBD,KAU,KADを演算する。
【0034】
KBU=LM/LU
KBD=1
KAU=LM/LU
KAD=LM/LU
上記の減速関数を図7に示す。この図から分かるように、ブームシリンダ3aの伸び方向に対する減速指令信号KBUの減速関数、アームシリンダ3bの伸び方向及び縮み方向に対する減速指令信号KAU,KADの減速関数は、減速距離LU以下で距離LMが小さくなるにしたがって減速指令信号が1から0まで直線的に小さくなるように設定されている。
【0035】
最大シリンダ速度演算部9fでは、予め制御ユニット9の記憶装置に記憶しておいたブームシリンダ3aの伸び方向及び縮み方向の最大シリンダ速度VBUmax,VBDmaxとアームシリンダ3bの伸び方向及び縮み方向の最大シリンダ速度VAUmax,VADmaxと、上記で計算した減速指令信号KBU,KBD及びKAU,KADよりブームシリンダ3aの伸び、縮み動作の減速最大シリンダ速度VBUmaxc,VBDmaxcとアームシリンダ3bの伸び、縮み動作の減速最大シリンダ速度VAUmaxc,VADmaxcを演算する。この演算式を以下に示す。
【0036】
VBUmaxc=KBU×VBUmax
VBDmaxc=KBD×VBDmax
VAUmaxc=KAU×VAUmax
VADmaxc=KAD×VADmax
最大パイロット圧演算部9gでは最大シリンダ速度演算部9fで演算した減速最大シリンダ速度VBUmaxc,VBDmaxc,VAUmaxc,VADmaxcと予め制御ユニット9の記憶装置に記憶しておいた図8の(a),(b),(c)及び(d)に示すようなパイロット圧とシリンダ速度のテーブルよりブームシリンダ3aの伸び、縮み動作の減速最大パイロット圧PBUmaxc,PBDmaxcと、アームシリンダ3bの伸び、縮み動作の減速最大パイッロト圧PAUmaxc,PADmaxcを演算する。
【0037】
バルブ指令電流値演算部9hでは最大パイロット圧演算部9gで演算したPBUmaxc,PBDmaxc,PAUmaxc,PADmaxcと予め制御ユニット9の記憶装置に記憶しておいた図9に示すようなパイロット圧と電流値のテーブルより、ブームシリンダ3aの伸び、縮み動作、アームシリンダ3bの伸び、縮み動作の速度を規定する比例電磁弁10a,10b,11a,11bに対する指令電流値iBU,iBD,iAU,iADを演算する。
【0038】
バルブ指令信号低減処理演算部9iでは、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBU,iBD,iAU,iADに対して図10に示すようなテーブルを用いてヒステリシス演算を伴う信号低減処理を行う。ここで、ヒステリシスを伴う信号低減処理について説明する。
【0039】
図10において、横軸は指令電流値iBU,iBD,iAU,iADであり、縦軸は指令電流値iBU,iBD,iAU,iADを信号低減処理した後の指令電流値iBUC,iBDC,iAUC,iADCである。また、i0は選択モニターポイントMsが侵入禁止領域に達した際の減速指令信号KBU=0,KBD=0,KAU=0,KAD=0のときの指令電流値である。以下の説明はブームシリンダ伸び方向(iBU)の信号低減処理について説明する。
【0040】
まず、各モニターポイントのうちの最も侵入禁止領域に近いもの、すなわち選択モニターポイントMsが侵入禁止領域から遠く離れているときは、信号低減処理を行う際の電流値の履歴を表すフラグflgをflg=0とし、指令電流値iBUCをバルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBUと同じ値にする(iBUC=iBU)。次に、選択モニターポイントMsが漸次侵入禁止領域に接近してきて、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBUが選択モニターポイントMsが侵入禁止領域に達した際の指令電流値i0より大きいi1以下になったならば、flg=1として指令電流値iBUCをi0より小さい低電流値i0′にする(iBUC=i0′)。逆に、各モニターポイントのうち最も侵入禁止領域に近いある選択モニターポイントMsが漸次侵入禁止領域から遠ざかり、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBUが徐々に大きくなり、iBUが上記電流値i1より大きいi2になったらflg=0とし、iBUC=i2とし、それまでは、flg=1でiBUC=i0′とする。
【0041】
すなわち、iBUがi1より小さければflg=1でiBUC=i0′とし、iBUがi2より大きければflg=0でiBUC=iBUとなる。iBUがi1とi2の間であるならば、flgに応じてi0′かiBUのいずれかを選択することになる(flg=0であればiBUC=iBU、flg=1であればiBUC=i0′)。
【0042】
このようにして選択モニターポイントMsが、指令電流値iBUがi1以下となる侵入禁止領域直前の所定の範囲にあるときは、指令電流値iBUCをi0より小さい低電流値i0'にする信号低減処理が行われる。また、指令電流値iBUがi1になるときよりi2になるときの方が選択モニターポイントMsは侵入禁止領域から遠くに位置しており、選択モニターポイントMsが侵入禁止領域に近づくときより侵入禁止領域から遠ざかるときの方が指令電流値iBUCを低電流値i0'にする所定の範囲の距離が長いヒステリシス演算が行われる。
【0043】
アームシリンダ伸び方向(iAU)及び縮み方向(iAD)のヒステリシス低電流変換演算についても同様である。ブームシリンダの縮み方向については、iBDCをバルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBUと常に同じ値にする(iBDC=iBD)。
【0044】
電流出力部9jでは、バルブ指令信号低減処理演算部9iで計算されたiBUC,iBDC,iAUC,iADCを図示せぬ増幅器で増幅し、電気信号として比例電磁弁10a,10b,11a,11bに出力する。
【0045】
ここで、減速制御演算部9eで計算される減速指令信号がKBU=1,KBD=1,KAU=1,KAD=1のときに最大パイロット圧演算部9gで演算される減速最大パイロット圧PBUmaxc,PBDmaxc,PAUmaxc,PADmaxcは操作パイロット圧の最大圧力(パイロットポンプ元圧)に設定されており、減速最大パイロット圧PBUmaxc,PBDmaxc,PAUmaxc,PADmaxcをパイロット圧の最大圧力にするときの指令電流値iBU,iBD,iAU,iADは比例電磁弁10a,10b,11a,11bをフルオープンにする電流値である。また、KBU=0,KBD=0,KAU=0,KAD=0のときは減速最大パイロット圧PBUmaxc,PBDmaxc,PAUmaxc,PADmaxcを0にすることであり、このときの指令電流値iBU,iBD,iAU,iADは比例電磁弁10a,10b,11a,11bをフルクローズにする電流値(シリンダ3a,3bが動作しない電流値)である。また低電流値i0′はKBU=0,KBD=0,KAU=0,KAD=0のときのiOより小さいのであるから、比例電磁弁10a,10b,11a,11bを確実にフルクローズにし(シリンダ3a,3bの動作を止め)、シリンダを確実に停止させフロント装置1Aを完全に停止させる電流値である。一例として、低電流値i0′は0ミリアンペアである。
【0046】
以上の制御の流れを図11にフローチャートとして示す。
【0047】
図11において、手順400,410はフロント姿勢演算部9bに相当し、手順200,500,510はモニターポイント選択演算部9dに相当し、手順600〜630は減速制御演算部9eに相当し、手順700は最大シリンダ速度演算部9fに相当し、手順800〜820は最大パイロット圧演算部9gに相当し、手順900はバルブ指令電流値演算部9hに相当し、手順1000はバルブ指令信号低減処理演算部9iに相当し、手順1100は電流出力部9jに相当する。なお、手順300は安全のための初期設定である。
【0048】
また、以上において、比例電磁弁10a,10b又は11a,11bはパイロット操作装置4a,4bとこれに対応する流量制御弁5a又は5bとの間に設けられ、パイロット操作装置4a又は4bから出力された操作パイロット圧を減圧して出力する電気式減圧弁を構成し、制御ユニット9のフロント姿勢演算部9b、制限値記憶メモリ9c、モニターポイント選択演算部9d、減速制御演算部9e、最大シリンダ速度演算部9f、最大パイロット圧演算部9g、バルブ指令電流値演算部9hは、モニターポイントMsと侵入禁止領域との距離が小さくなるに従って小さくするように指令電流値を計算する減速演算手段を構成し、制御ユニット9のバルブ指令信号低減処理演算部9iと電流出力部9jは、モニターポイントM s が侵入禁止領域に近づいた際にフロント装置を停止させる所定の範囲を前記侵入禁止領域近傍に設け、モニターポイントM s が前記所定の範囲に入ったときに電気式減圧弁にフロント装置を完全に停止させる低電流値を出力する信号低減処理手段を構成する。
【0049】
また信号低減処理手段を構成するバルブ指令信号低減処理演算部9iは、モニターポイントMsが侵入禁止領域に近づくときより侵入禁止領域から遠ざかるときの方が前記所定の範囲の距離を長くするヒステリシス演算を行うものである。
【0050】
次に、以上のように構成した本実施例の動作を説明する。フロント装置1Aを上方に動かそうとしてオペレータがブーム用及びアーム用のパイロット操作装置4a,4bの操作レバーをそれぞれブーム上げ方向及びアームダンプ方向に操作すると、ブーム上げ側のパイロットライン44a及びアームダンプ側のパイロットライン45bに操作パイロット圧が生成され、油圧制御弁5a,5bが駆動され、フロント部材であるブーム1a及びアーム1bが動かされる。ブーム1a、アーム1b及びバケット1cの各関節角は位置検出手段である角度検出器8a〜8cにより検出され、その検出信号が制御ユニット9のフロント姿勢演算部9bに入力される。フロント姿勢演算部9bではこの入力信号によりモニターポイントM1,M2の位置を演算し、モニターポイント選択部9dでは、フロント姿勢演算部9bで計算されたモニターポイントM1,M2のZ座標値M1z,M2zと、制限値記憶メモリ9cに記憶した侵入禁止領域の境界の設定値Pczとから、モニターポイントM1,M2と侵入禁止領域の境界との間の距離L1M,L2Mを計算し、侵入禁止領域に近い方のモニターポイントを選択モニターポイントMsとする。
【0051】
減速制御演算部9eでは、モニターポイント選択部9dで選択されたモニターポイントMsのZ座標値Mszと、制限値記憶メモリ9cに記憶した侵入禁止領域の境界の設定値Pczとから、選択モニターポイントMsと侵入禁止領域の境界との間の距離LMを計算し、この距離LMと減速距離LUとを比較して選択モニターポイントMsが減速領域に入っているかどうかを判断する。
【0052】
このとき、フロント装置1Aがまだ高く上がっておらず、選択モニターポイントMsが侵入禁止領域から遠いときは、LM>LUであるので、減速制御演算部9eでは選択モニターポイントMsが減速領域に入っていないと判断し、KBU=1,KBD=1,KAU=1,KAD=1の減速指令信号を生成する。
【0053】
バルブ指令信号低減処理演算部9iでは、電流値の履歴を表すフラグflgをflg=0とし、iBUC=iBU,iBDC=iBD,iAUC=iAU,iADC=iADの演算を行い、比例電磁弁10a,10b,11a,11bをフルオープンする。これによりブーム用の油圧制御弁5a及びアーム用の油圧制御弁5bにはパイロット操作装置4a,4bで生成された操作パイロット圧がそのまま伝達され、フロント装置1Aをオペレータの操作通りに動かすことができる。
【0054】
フロント装置1Aが侵入禁止領域に近づき選択モニターポイントMsが減速領域に到達すると、減速制御演算部9eではLM≦LUとなるので選択モニターポイントMsが減速領域に入ったと判断され、距離LMに従って図7に示す減速関数から1より小さい減速指令信号KBU,KAU,KADが生成され、この減速指令信号に応じて比例電磁弁10a,11a,11bが絞られ、ブーム及びアームの動作速度が減じられる。
【0055】
フロント装置1Aが更に侵入禁止領域に近づき、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBU,iAU,iADがi1になったならば、バルブ指令信号低減処理演算部9iではflg=1とし、指令電流値iBUC,iAUC,iADCをiBUC=i0′,iAUC=i0′,iADC=i0′とし、比例電磁弁10a,11a,11bをフルクローズし、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの動きを止めてフロント装置1Aを停止させる。
【0056】
このようにしてフロント装置1Aを停止させた状態で、オペレータがブーム用及びアーム用のパイロット操作装置4a,4bの操作レバーを更にブーム上げ方向及びアームダンプ方向に操作すると、ブーム上げ側のパイロットライン44a及びアームダンプ側のパイロットライン45bに操作パイロット圧が再び生成される。しかし、このとき比例電磁弁10a,11bは上記のように演算部9iでの信号低減処理によりフルクローズしているので、比例電磁弁10a,11bの出力側にサージ圧が立つことがなく、流量制御弁5a,5bがこのサージ圧に応じて瞬間的に動きブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bが動いてしまうことがなくなる。
【0057】
今、このことを図12及び図13を用いてさらに説明する。
【0058】
図12はフロント装置1Aが進入禁止領域に近づき、停止するまでのバルブ指令電流値演算部9hで演算される指令電流値iBU,iBD,iAU,iAD(iで代表)とパイロット操作装置を任意量操作したときの対応するシリンダ速度との関係を示すものである。
【0059】
フロント装置1Aが侵入禁止領域に近づき、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBU,iADがi1になると、本発明のバルブ指令信号低減処理演算部9iによる信号低減処理をしない場合は、指令電流値iBU,iADに相当する電流がそのまま比例電磁弁10a,11bに与えられ、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bはv1の速度で動き、フロント装置1Aは減速されつつ動いている。
【0060】
このように減速制御をしているとき、侵入禁止領域の直前ではブームやアームの動作速度が相当遅くなるので、フロント装置1Aが完全に停止する前にオペレータは操作レバーを中立位置に戻してパイロット操作装置4a,4bから出力される操作パイロット圧をゼロにし、フロント装置1Aを停止させることがある。このような停止状態では、バルブ指令電流値演算部9hで演算された指令電流値iBU,iADはフロント装置1Aを完全に停止させる電流値i0まで落ちておらず、比例電磁弁10a,11bはわずかに開いた、例えば数Kg/cm2程度の油圧を出力できる状態にある。この状態での指令電流値iBU,iADをisとし、比例電磁弁10a,11bが出力できる油圧をPsとする。
【0061】
この状態で再びオペレータがブームを更に侵入禁止領域に近づける方向に動かすべく操作レバーを操作して操作パイロット圧を立たせると、油圧の応答遅れにより比例電磁弁10a,11bは瞬時には操作パイロット圧をPsに減圧できず、比例電磁弁10a,11bの開き状態に応じてわずかの時間だけサージ圧が立ってしまう。この様子を図13に示す。このようにサージ圧が立つと、流量制御弁5a,5bがこのサージ圧に応じて瞬間的に動いてしまい、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bがわずかに動いてしまう。このため、オペレータにとってはブームやアームが停止したはずなのに、その後のレバー操作によってブームやアームが再び動き、サージ圧の大きさによっては設定した侵入禁止領域よりフロント装置が侵入してしまうので、操作に細心の注意を払わねばならない。また、サージ圧によってブームが動く際、多少のショックが伴うので、オペレータに不快感を与えることになる。
【0062】
本実施形態では、上記のようにバルブ指令電流値演算部9hで演算される指令電流値iBU,iAU,iADがi1になる距離までフロント装置1Aが進入禁止領域に近づくと、バルブ指令信号低減処理演算部9iでiBUC=i0′,iAUC=i0′,iADC=i0′として比例電磁弁10a,11a,11bを強制的にフルクローズし、ブームシリンダ3aとアームシリンダ3bの動きを止めてフロント装置1Aを停止させるので、その後、オペレータが操作レバーを更に操作しパイロットライン44a,45bに操作パイロット圧を立たせても、図13に示すようなサージ圧が立つことがなく、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bが不用意に動いてフロント装置1Aが進入禁止領域へ進入しまうことがなくなる。また、サージ圧によるショックの発生でオペレータに不快感を与えることもない。
【0063】
また、上記のようにバルブ指令信号低減処理演算部9iでiBUC=i0′,iAUC=i0′,iADC=i0′としてフロント装置1Aを停止させたとき、その停止したところで車体の振動によりフロント装置1Aが揺れることがある。この場合、その揺れが角度検出器8a〜8cにより検出され、制御ユニット9のバルブ指令電流値演算部9hで、i1以上の指令電流値iBU,iADが演算されると、バルブ指令信号低減処理演算部9iでヒステリシス演算がない場合は、指令電流値iBU,iADがそのままiBUC,iADCに変換され、比例電磁弁10a,11bは再び開き、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bは再び動き出してしまう。本実施形態では、バルブ指令信号低減処理演算部9iでヒステリシス演算を行い、指令電流値iBU,iADがi1より大きいi2以上になるまで指令電流値iBUC,iADCはi0′に保たれるので、フロント装置1Aが揺れてその揺れが角度検出器8a〜8cにより検出されても、比例電磁弁10a,11bが開きブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bが再び動き出すことはなく、フロント装置1Aを確実に停止させたままにすることができる。
【0064】
以上のように本実施形態によれば、フロント装置1Aが進入禁止領域に近づくと徐々にシリンダの動作速度が減じられ、進入禁止領域直前でシリンダの動作速度がゼロになるので、フロント装置1Aが進入禁止領域に進入することがない。また、進入禁止領域直前の所定の範囲でバルブ指令電流値iBUC,iADCをシリンダが動作しない電流値i0より小さな低電流値i0'に落とすので、進入禁止領域直前の所定の範囲でフロント装置1Aを停止させた後、操作レバーを大きく動かしてもパイロットサージ圧の発生を押さえることができ、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bの不用意な動作を防止することができる。このため、フロント装置が飛び出して進入禁止領域に進入したり、ショックを発生してオペレータに不快感を与えることが防止できる。
【0065】
また、進入禁止領域直前の信号低減処理でヒステリシス演算を行うので、指令電流値iBUC,iADCを低電流値i0´に落としてフロント装置1Aを進入禁止領域直前に停止させた状態でフロント装置1Aが揺れても、フロント装置1Aを確実に停止したままにしておくことができる。
【0066】
なお、本発明の作業範囲制限制御装置は上述の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。一例として、フロント装置1Aの位置と姿勢に関する状態量を検出する手段として回動角を検出する角度計を用いたが、シリンダのストロークを検出してもよい。また、侵入禁止領域を上方に設定した場合について説明したが、下方、前方に設定した場合についても同様である。
【0067】
また、バルブ指令信号低減処理演算部9iでは、ヒステリシスの伴う信号低減処理をしたが、指令電流値iBUがi1になる位置から侵入禁止領域までの所定の範囲の距離を長く設定する場合等、状況によってヒステリシス演算は省略できる。更に、指令電流値iBUがi1以下になると指令電流値iBUCを低電流値i0'にスッテプ状に低減したが、スッテプ状でなくある程度の傾きをもって低減しても良い。また、比例電磁弁を確実に振るクローズさせるため、指令電流値iBUCをi0以下のi0'まで低減させたが、i0に低減しても良い。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、予め設定した進入禁止領域の直前でフロント装置を停止させたときに、その後のレバー操作によってアクチュエータが不用意に動いてフロント装置が進入禁止領域に進入したり、ショックを発生してオペレータに不快感を与えることを防止できる。
【0069】
また、本発明によれば、進入禁止領域直前の停止位置でフロント装置が揺れても、フロント装置を確実に停止したままにしておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による建設機械の作業範囲制限制御装置を油圧駆動装置と共に示す図である。
【図2】本発明が適用される油圧ショベルの外観を示す図である。
【図3】油圧パイロット方式の操作レバー装置の構成を示す図である。
【図4】比例電磁弁の構造を示す図である。
【図5】本実施形態の制御ユニットの制御機能を示す機能ブロック図である。
【図6】本実施形態の作業範囲制限制御で用いる座標系と進入禁止領域の設定方法及び減速領域を示す図である。
【図7】減速制御演算におけるモニターポイントと侵入禁止領域との距離に対する減速指令信号の関係を示す図である。
【図8】最大パイロット圧演算部におけるパイロット圧とシリンダ速度の関係を示す図である。
【図9】バルブ指令電流値演算部におけるパイロット圧と比例電磁弁に出力する電流値との関係を示す図である。
【図10】バルブ指令信号低減処理演算部におけるヒステリシス演算の伴う信号低減処理の入出力の電流値の関係を示す図である。
【図11】制御ユニットの処理内容を示すフローチャートである。
【図12】進入禁止領域直前での指令電流値とシリンダ速度との関係を示す図である。
【図13】比例電磁弁の応答遅れによって生じるサージ圧を示す図である。
【符号の説明】
1A フロント装置
1B 車体
1a ブーム
1b アーム
1c バケット
2 油圧ポンプ
3a ブームシリンダ
3b アームシリンダ
4a〜4f 操作レバー装置
5a〜5f 流量制御弁
7 設定器
8a〜8c 角度検出器
9 制御ユニット
9a 侵入禁止領域演算部
9b フロント姿勢演算部
9c 制限値記憶メモリ
9d モニターポイント選択演算部
9e 減速制御演算部
9f 最大シリンダ速度演算部
9g 最大パイロット圧演算部
9h バルブ指令演算部
9i バルブ指令信号低減処理演算部
9j 電流出力部
10a〜11b 比例電磁弁(電気式減圧弁)
50a〜55b 油圧駆動部
Claims (3)
- 上下方向に回動可能な複数のフロント部材により構成される多関節型のフロント装置と、前記複数のフロント部材を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記複数のフロント部材の動作を指示する操作装置から出力される操作パイロット圧により駆動され、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記操作装置とこれに対応する少なくとも1つの流量制御弁との間に設けられ、前記操作装置から出力された操作パイロット圧を減圧して出力する電気式減圧弁とを備え、前記フロント装置に関して予め設定したモニターポイントと予め設定した侵入禁止領域との距離に応じて指令電流値を計算し前記電気式減圧弁に出力して、前記モニターポイントが前記侵入禁止領域に近づくと前記フロント装置を減速させ、前記侵入禁止領域に到達すると前記フロント装置を停止させる制御を行う建設機械の作業範囲制限制御装置において、
前記モニターポイントが侵入禁止領域に近づいた際に前記フロント装置を停止させる所定の範囲を前記侵入禁止領域近傍に設け、前記モニターポイントが前記所定の範囲に入ったときに前記電気式減圧弁に前記フロント装置を完全に停止させる低電流値を出力する信号低減処理手段を備えたことを特徴とする建設機械の作業範囲制限制御装置。 - 請求項1記載の建設機械の作業範囲制限制御装置において、前記信号低減処理手段は、前記モニターポイントが前記侵入禁止領域に近づくときより前記侵入禁止領域から遠ざかるときの方が前記所定の範囲の距離を長くするヒステリシス演算を行うことを特徴とする建設機械の作業範囲制限制御装置。
- 請求項1記載の建設機械の作業範囲制限制御装置において、前記信号低減処理手段は、前記モニターポイントと侵入禁止領域との距離が小さくなるに従って指令電流値を小さくするように計算する減速演算手段で計算された指令電流値をスッテプ状に前記低電流値に落とすことを特徴とする建設機械の作業範囲制限制御装置。
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