JP3664666B2 - 携帯端末機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話機、PHS、PDA等の携帯端末機に関し、特に、SAR(Specific Absorption Rate)の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機等の携帯端末機の普及に伴って端末機から輻射される電波の人体への影響、特に使用者の人体頭部への影響(SAR)が喧伝されている。携帯端末機においては、アンテナの腹部に電流が集中し、この結果、アンテナ給電点等の輻射源近傍の人体頭部に電磁界が集中してSARが増大することになる。このようなSARの改善について防護指針も開示されつつある。
【0003】
図5は従来の携帯電話機に広く用いられているモノポール・アンテナ方式によるアンテナ構造及び動作時の電流分布、電圧分布等を示す。
同図(a)において、電話機本体のPCB(プリント配線基板)1には、λ/4モノポール・アンテナ2が給電点3を介して取り付けられている。
同図(a)、(b)において、モノポール・アンテナ1はアンテナ素子とアンテナ地板とにより1つのアンテナを構成するため、アンテナ電流iaに応じてPCB1を地板とする地板電流ieが図示のようにPCB1に流れる。
【0004】
図6(a)はこのときのアンテナ電流iaと地板電流ieによる近傍電界分布を示し、同図(b)は近傍磁界分布を示す。図において、4は携帯電話機本体、5は使用者の頭部である。図示のように、頭部5の近傍に地板電流ieによる電磁界が集中して大きなSARを誘起する原因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の構成において、SARを低減するには、実使用状態で使用者の頭部方向への近傍電磁界の強度を低減すればよいが、その観点から見ると図5のアンテナ構造には次の問題があった。
【0006】
(1)λ/4モノポール・アンテナ方式では、電話機本体4のPCB1が地板を形成するため、PCB1に地板電流ieが流れる。このPCB1を流れる地板電流ieを制御することは難しいので、近傍電磁界を制御、低減することができない。
(2)アンテナの給電点3付近にアンテナ電流iaが集中して流れるが、通常はこの電流集中部分は頭部5が最も接近する部分である。
(3)このため、頭部側に遮蔽板を別途設けて、頭部方向への電力輻射を軽減する方式が提案されているが、モノポール・アンテナ方式では、PCB1に地板電流ieが流れるため、遮蔽板にも地板電流が流れ、遮蔽効果が少ない。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、PCBに地板電流を流すことなく頭部の近傍電磁界を低減して、SARを改善することができ、かつ多周波数の信号の送受信に対応することができるアンテナ構造を有する携帯端末機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る携帯端末機では、少なくともスピーカが設けられたプリント配線基板の前記スピーカが設けられた面とは反対側の面に設けられたアンテナ基板と、該アンテナ基板にアンテナ・パターンとして形成された、第1の周波数の信号を送受信するための第1のアンテナ素子及び第2の周波数の信号を送受信するための第2のアンテナ素子と、該第1、第2のアンテナ素子に給電するための同軸ケーブルと、該同軸ケーブルの長手方向に前記第1の周波数の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第1の共振導体と、前記第2の周波数の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第2の共振導体とが離間して先端が開放状態で、板状の誘電体表面に形成され、これら第1、第2の共振導体の他端側は前記板状の誘電体裏面側で短絡された状態で前記同軸ケーブルの先端部における外部導体に接続されてなる誘電体スリーブとを設けている。
【0009】
また、本発明に係る携帯端末機では、前記誘電体スリーブは前記アンテナ基板上に設けられ、該アンテナ基板は、前記プリント配線基板から電気的に浮き上がって取り付けられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態による携帯端末機としての携帯電話機におけるアンテナ構造を原理的に示す構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は使用状態を示す正面図である。
【0011】
図1において、4は電話機本体、1は電話機本体4ののPCB、6はPCB1に設けたスリーブ・アンテナアンテナ、7はスピーカで、PCB1のスリーブ・アンテナ6が設けられた面とは反対側の面に取り付けられている。スリーブアンテナ6には、同軸ケーブル9を介して給電される。
【0012】
図1のように、PCB1の適当な位置にスリーブ・アンテナ6を設けて給電すると、アンテナ共振電流はスリーブの作用により同軸ケーブル9側には漏洩しなくなり、基本的にPCB1に地板電流は流れない。電話機の使用状態では図1(c)のように、使用者の頭部5はPCB1のスピーカ7側にある。このため、PCB1が電磁遮蔽板として作用し、頭部5の近傍電磁界を低減してSARを低減することができる。
【0013】
図2、図3は上記の原理に基づく本発明の実施の形態によるアンテナ構造の具体的な構成を示すものである。本実施の形態は、f1、f2の2つの使用周波数を有する携帯電話機に適用したものである。
図2、図3において、スリーブ・アンテナ6は、PCB1の上部に設けられたアンテナPCB61と、アンテナPCB61にアンテナ・パターンとして形成された周波数f1(波長λ1)を受信するための長さλ1/4のアンテナ素子62Aと、アンテナ素子62Aと給電点で接続されアンテナ・パターンとして形成された周波数f2(波長λ2)を受信するための長さλ2/4のアンテナ素子62Bと、アンテナPCB61上に設けられた誘電体スリーブ63とで構成されている。アンテナ素子62のパターンはアンテナ長を短くするために、図示のようにメアンダライン化されている(図2、図3(A)、(B))。
【0014】
PCB1の下部には送受信回路部8が設けられている。送受信回路部8とスリーブ・アンテナ6とは、同軸ケーブル9、アンテナPCB61のアンテナ素子62A,62Bと同じ面に形成されたマイクロストリップライン65を通じて接続されている。同軸ケーブル9は外部導体91と中心導体92とを有している。図示では同軸ケーブル9の先端部における中心導体92が、アンテナPCB61にマイクロストリップライン65を介してアンテナ素子62A,62Bの一端である給電点64に接続されている。また、外部導体92がマイクロストリップラインのグランドパターン66に接続されている。このグランドパターン66は、アンテナPCB61におけるアンテナ素子62A,62Bが形成された面からその反対側の面にわたって形成されている(図3(A)、(C))。
【0015】
また、図示のように同軸ケーブル9を折り曲げることにより、アンテナPCB61と誘電体スリーブ63をPCB1から電気的に浮き上がるようにしている(図3(B))。尚、一般の携帯電話機においては、図1のように、PCBの上部にアンテナが配され、下部に送受信回路部が配されている。
【0016】
図4は誘電体スリーブ63の構造を示す斜視図である。
誘電体スリーブ63は誘電体セラミックで形成された板体631と、共振導体630とからなる。この共振導体630は、図4(A)に示すように、第1の周波数f1に共振する第1の共振導体630Aと、第2の周波数f2に共振する第2の共振導体630Bとが離間して先端が開放状態で、他端側は、誘電体セラミックの板体631を挟持するように折り曲げられ、板状の導体630Cを介して短絡され、一体的に形成されている。
【0017】
この共振導体630は、図4(B)に示すように、その折曲部に誘電体セラミックの板体631を挿入することにより、誘電体スリーブ63を構成する。そしてこの誘電体スリーブ63の導体630Cの底面がアンテナPCB61におけるアンテナ素子62A,62Bが形成された面とは反対側の面に形成されたマイクロストリップラインのグランドパターン66上に接続される(図4(A))。
なお、共振導体は銀ペースト等で誘電体板に印刷された後焼結されたいわゆるセラミック配線板状の構造でもよい。
【0018】
すなわち、誘電体スリーブ63の共振導体630は、同軸ケーブル9の長手方向に第1の周波数f1の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第1の共振導体630Aと、第2の周波数f2の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第2の共振導体630Bとが離間して先端が開放状態で、板状の誘電体631表面に形成され、これら第1、第2の共振導体630A、630Bの他端側は板状の誘電体631の裏面側で短絡された状態で同軸ケーブル9の先端部における外部導体91に接続されることとなる(図3(A)、(C))。
【0019】
誘電体スリーブ63は、図4(B)、(C)に示すように、第1の共振導体630Aの電気長がλg1/4、第2の共振導体630Bの電気長がλg2/4となり、上記共振導体630A、630Bの一端が短絡され、他端が開放端とされたλg1/4波長共振器、λg2/4共振器を構成している。ここでλg1は、誘電体スリーブを構成する誘電体セラミックの比誘電率をεrとすると、λg1≒λ1/√εr、λg2≒λ2/√εrである。
このように、第1の共振導体630A、第2の共振導体630Bの電気長を、本来、それぞれ、λ1/4、λ2/4の長さが必要であるのに対し、誘電体スリーブ63を構成する誘電体セラミックの比誘電率εrにより1/√εrに短縮することができる。
【0020】
上記構成によれば、送受信回路部8からの送信電力は同軸ケーブル9を通じて誘電体スリーブ63に導かれ、すなわち同軸ケーブル9の外部導体91がマイクロストリップのグランドパターン66を介して誘電体スリーブ63の上記導体630A,630Bに接続され、中心導体92がマイクロストリップライン92、給電点64を介してアンテナ素子62A、62Bに接続される。同軸ケーブル9とマイクロストリップライン65は、共に不平衡伝送線路であるため、電力反射無く、接続される。
【0021】
ここでマイクロストリップのグランドパターン(導体)66は、給電点64で物理的に開放状態にあり、この給電点64で共振導体630A,630Bが短絡状態となる誘電体スリーブ63が同軸ケーブル9の外部導体91に接続される。この結果、アンテナ素子62A,62Bと誘電体スリーブ63は電気長λg1/2、λg2/2のダイポール・アンテナと同様の構成となり、2つの周波数f1、f2でそれぞれ独立して動作する、いわゆるスリーブ・アンテナとして動作することになり、外部導体91へアンテナ共振電流の一部が漏れることはなく、従って、電話機のPCB1に地板電流は流れない。
【0022】
また、このとき使用者の頭部5は、図1(c)のようにPCB1のアンテナ側とは反対側のスピーカ7側にあるので、PCB1が遮蔽板として作用し、頭部の近傍電磁界を低減してSARを改善することができる。
尚、アンテナ素子62A、62Bのうちの1つだけ用い、その1つのアンテナ素子の途中にトラップ回路を設けることにより、周波数の異なる2つのアンテナ素子を構成するようにしてもよい。
【0023】
上記構成によれば、スリーブ・アンテナが実現される。本実施の形態によれば、PCB1が遮蔽板として作用し、頭部の近傍電磁界を低減してSARを改善することができる。
尚、2つの周波数f1、f2は、例えばPHSや普通の携帯電話機等で用いられる。
【0024】
各実施の形態においては、携帯電話機について説明したが、本発明は携帯電話機に限らずPDA等の他の携帯端末機に適用することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、携帯端末機のPCBのスピーカとは反対側に多周波数の信号を送受信できるスリーブ・アンテナを構成したことにより、PCBに地板電流を流すことなく頭部の近傍電磁界を低減して、SARを改善することができ、かつ多周波数の信号の送受信に対応することができるアンテナ構造を有する携帯端末機を小型で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を原理的に示す携帯電話機のアンテナ構造を示す正面図、側面図及び使用状態の正面図である。
【図2】 本発明の実施の形態によるアンテナ構造の基本構成を示す説明図。
平面図及び側面図である。
【図3】 本発明実施の形態によるアンテナの電気的構造を示す平面図、側面図及び底面図である。
【図4】 誘電体スリーブの組立て構成図である。
【図5】 従来の携帯端末機におけるモノポール・アンテナの取り付け構造及び電流分布、電圧分布を示す構成図である。
【図6】 従来の携帯端末機における頭部近傍磁界を概略的に示す構成図である。
【符号の説明】
1 電話機本体のPCB(プリント配線基板)
4 電話機本体
5 使用者の頭部
6 スリーブ・アンテナ
61 アンテナPCB
62A、62 アンテナ素子
63 誘電体スリーブ
65 マイクロストリップライン
66 マイクロストリップラインのグランドパターン
630 共振導体
630A 第1の共振導体
630B 第2の共振導体
630C 板状の導体
631 誘電体セラミック
7 スピーカ
8 送受信回路
9 同軸ケーブル
91 外部導体
92 中心導体
Claims (1)
- 少なくともスピーカが設けられたプリント配線基板の前記スピーカが設けられた面とは反対側の面に設けられたアンテナ基板と、
前記アンテナ基板にアンテナ・パターンとして形成された、第1の周波数の信号を送受信するための第1のアンテナ素子及び第2の周波数の信号を送受信するための第2のアンテナ素子と、
前記第1、第2のアンテナ素子に給電するための同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの長手方向に前記第1の周波数の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第1の共振導体と、前記第2の周波数の信号のケーブル側への漏洩を阻止するための第2の共振導体とが離間して先端が開放状態で、板状の誘電体表面に形成され、これら第1、第2の共振導体の他端側は前記板状の誘電体裏面側で短絡された状態で前記同軸ケーブルの先端部における外部導体に接続されてなる誘電体スリーブとを有し、前記誘電体スリーブは前記アンテナ基板上に設けられ、該アンテナ基板は、前記プリント配線基板から電気的に浮き上がって取り付けられていることを特徴とする携帯端末機。
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