JP3664490B2 - 1,3−β−Dグルカンシンターゼ・サブユニットをコードするDNA - Google Patents
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Description
1,3−β−Dグルカンの生合成に関与する蛋白質をコードするDNA分子を同定し、クローン化し、発現させ、細胞壁生合成に影響する化合物を含めた抗真菌性化合物につきスクリーニングするin vitroアッセイで用いる。本発明は精製されたDNA分子、該DNA分子を使用するアッセイ、該DNA分子によってコードされる蛋白質、該DNA分子を発現する細胞および該分子の改変形を含む。
図面の簡単な記載
図1はプラスミドpFF119の制限地図である。
図2はプラスミドpFF334の制限地図である。
図3はpGS3の11.0kb EcoRIインサートの制限地図である。
図4はpGS6の11.0kb XbaIインサートの制限地図である。太線はfksA遺伝子の配列決定された部分を示す。pGS15のインサートおよび縮小された欠失誘導体(pGS17−pGS21)が示される。
図5はfksA遺伝子の一部のDNA配列および推定アミノ酸翻訳である。
図6はFKS1 DNA配列である。
図7はFKS1 蛋白質のアミノ酸配列である。
図8はFKS2 DNA配列である。
図9はFKS2 蛋白質のアミノ酸配列である。
図10はfksAのDNAおよびアミノ酸配列を示す。
図11はカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から単離されたFKS1相同体のDNA配列を示す。
図12はガンジダ・アルビカンスのFKS1相同体のアミノ酸配列を示す。
図13は酵母株の部分的リストである。
発明の背景
1,3−β−Dグルカンの生合成に関与する蛋白質をコードするDNA分子を同定し、クローン化し、発現させ、細胞壁生合成に影響する化合物を含めた抗真菌性化合物をスクリーニングするin vitroアッセイで用いる。本発明は、精製されたDNA分子、該DNA分子を使用するアッセイ、該DNA分子によってコードされる蛋白質、該DNA分子を発現する細胞および該分子の改変形を含むが、それらに限定されるものではない。
本発明は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のいくつかの株の突然変異表現型を逆転させる遺伝子を含有する精製DNA断片に指向される。該遺伝子は、FK506感受性遺伝子1については、FKS1と呼ばれ、ETG1(エキノカンジン(echinocandin)標的遺伝子1)としても公知である。エキノカンジンは、多くの真菌類において、1,3−β−D−グルカンの合成を阻害するアシル−置換環状ヘキサペプチドである。FKS2はFKS1の相同体である。FKS1はサッカロミセス・セレビシエのゲノムライブラリーからクローン化された。FKS1の性質からして、それが1,3−β−Dグルカンシンターゼのサブユニットをコードしていることを示す。FKS1またはその相同体によってコードされる蛋白質は、真菌類病についての薬物療法のための標的になり得る。本発明は、エキノカンジンの標的をもコードするFKS2、およびアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、カンジダ・アルビカンスおよびクリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)のような病原体真菌類からの類似遺伝子のごとき相同体も含む。
本発明は、サッカロミセス・セレビシエの区分された突然変異体類の薬物関連表現型を逆転させる遺伝子よりなる。いくつかの突然変異株が真菌類細胞壁阻害剤の特別のクラスに対する感受性の変化によって同定され、一方、もう1つの突然変異株は免疫抑制化合物FK506およびサイクロスポリンAに対して過剰感受性である。
新規治療剤化合物の作用様式を理解するには、生化学および遺伝学双方を含む種々の実験的アプローチを使用する。1のアプローチは、テスト化合物に対して感受性または抵抗性の生物を単離しようとすることである。そうすれば、かかる突然変異体は、薬物標的をコードする遺伝子を単離するのに使用できることがある。酵母生物学および突然変異体生物の関連分野のいくつかの一般的記載を以下に述べる。
FK506およびサイクロスポリンA(CsA)は、T細胞活性化における中間のCa2+依存性ステップを阻害し、インターロイキン−2(IL−2)産生を遮断する優れた免疫抑制剤である(総説については、Sigalら、1992,Ann.Rev.Immunol.,10:519−560参照)。FK506はFK506結合性蛋白質(FKBP)として公知の蛋白質の一群に結合し、一方、CsAはサイクロフィリン(cyclophilin)と呼ばれる別の蛋白質群のメンバーに結合する。得られた薬物−受容体複合体(FKBP−FK506またはサイクロフィリン−CsA)はカルシニューリン、Ca2+およびカルモジュリン依存性蛋白質ホスファターゼに結合してそれを阻害し、これは、カルシニューリンの阻害が免疫抑制のメカニズムであり得ることを示す(Liuら、1991、Cell,66:807−815)。
FK506およびCsAは酵母および真菌類のある種の株の増殖を阻害する抗生物質でもある。これらの薬物の抗真菌特性およびFKBP、サイクロフィリンおよびカルシニューリンの酵母および真菌類における存在は、これらの生物における薬物の作用様式の遺伝的調査に役立った。
FK506をスクリーニング剤として用いて、過剰感受性突然変異体を単離した。このスクリーニングで発見されたfks1−1を用いてFKS1遺伝子をクローン化した。FKS1の相同体(FKS2)も発見され、クローン化された。この突然変異体の発見、その使用、およびFKS1、FKS2およびこれらの遺伝子の相同体のクローニングを記載する実施例は後記にて示す。
CsA過剰感受性突然変異体は報告されているが、FKS1またはFKS2に対するその関係の有無は開示されていない(Koser,P.K.ら、Gene、108:73−80)。
真菌類細胞壁は種々の細胞生命過程に関与する複雑な構造である。増殖性成長、形態形成、高分子の摂取および分泌ならびに浸透圧変化に対する保護は、細胞壁の組成および完全性の変化によって影響される。細胞壁合成、すなわち真菌類に必須であるが哺乳動物細胞には存在しないプロセス、の阻害を介して作用する抗真菌類化合物は、殺真菌類活性および低哺乳動物毒性の理想的な組合せを有すると予測される。
このタイプの化合物は臨床的使用に至っていないにも拘わらず、多くの研究者はかかる剤の同定に努めてきた。真菌類の壁は、多数のポリマー:キチン、α−およびβ−グルカン、マンノ蛋白質よりなり、これらは抗真菌類療法に対して全て標的となり得る。
β−グルカン阻害剤の主要なクラスは、アクレアチンA、エキノカンジンAおよびニューモカンジンを含めたいくつかのリン脂質抗生物質からなる。これらの化合物は、全て、非極性脂肪酸側鎖を含有する環状ヘキサペプチドである。天然産物の殺真菌類活性は酵母以外にはほとんど無効である。エキノカンジンは、1,3−β−Dグルカンの全細胞合成を阻害するその能力によって殺真菌性であり、これは、細胞壁の完全性を破壊し、全酵母細胞の溶解を引き起こす。エキノカンジンは、グルコースの1,3−β−Dグルカンへの重合、すなわち、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガンタスおよびニューロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)のごときいくつかのタイプの真菌類からの混合膜画分によって触媒され得る反応をin vitroで阻害する。
β−グルカン合成阻害剤の第2の構成群、パプラカンジンおよびケイチアカンジンは、芳香族環系に結合した配糖体成分および2つの長鎖脂肪酸を含有する。これらの化合物は、エキノカンジンと同一様式の作用を有する。天然産物の発見計画に加えて、化学的修飾による臨床的に有用なエキノカンジン、パプラカンジンまたはケイチアカンジン類の同定が試みられてきた。いずれは、これらのアナログが臨床的に使用されることとなろう。
Matsumotoらは、ニューモシスティス・カンジィ(Pneumocystis caidii)、すなわち、米国におけるエイズ患者のニューモニア関連死亡の主要原因が、その嚢胞形態の壁におけるβ−グルカンであると報告している(Matsumoyo Y.ら、J.Protozool,36:21S−22S)。パプラカンジンおよびエキノカンジンのごときβ−グルカンの阻害剤は、従って、ニューモシスティス・カリニ感染治療に効果を有する。Schmatzらは、ニューモシスティス・カリニ肺炎のラット・モデルにおいて、L−671,329(エキノカンジン)およびL−687,781(パプラカンジン)は共に感染したラットの肺における嚢胞の数を減少させるのに効果的であったと報告している(D.M.Schmatzら、1990,PNAS,87:5950−5954)。これらの結果は、β−グルカン合成はニューモシスティス・カリニ感染治療に有用な治療剤のための有効な標的であることを示唆する。
β−グルカン合成が変化したサッカロミセス・セレビシエの真実の薬物耐性株を単離する努力があった。単離された突然変異体はacul(Mason,M.ら、1989,Yeast Cell Biology Meeting、1989年4月15日〜4月20日、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor,ニューヨーク、抄録#154);acrl/2/3/4(Font de Mora, J.ら、Antimicrob. Agents Chemothr.,35:12 2596−2601);およびpapl(Duran,A.ら、1992,Profiles in Biotechnology,T.G.VillaおよびJ.Abalde編)、Serivicio de Publicaciones、Santiago大学、スペイン、221−232頁)を含む。これらの試みの欠点の1つは、サッカロミセス・セレビシエに対するアクレアチンおよびパプラカンジンの貧弱な能力であった。
今回の研究においては、より優れたエキノカンジン(L−733,560)を選択剤として使用し、グルカン合成が特異的に害された突然変異体を単離した。このスクリーニングで発見された最初の突然変異体(株R560−1C)を用いてFKS1遺伝子をクローン化した。L−733,560耐性株調査で同定された第2の突然変異体は、エキノカンジン耐性であって、キチンシンターゼ阻害剤ニッコマイシンZにに対して超感受性であることが判明した。β−グルカンと同様にキチンは真菌類細胞壁の構造的完全性に必須の多糖である。ニッコマイシンZは細胞増殖およびin vitroでのキチンの重合を阻害する。第2の突然変異体を用いても、FKS1遺伝子をクローン化した。
発明の詳細な記載
1,3−β−Dグルカンの生合成に関与する蛋白質をコードするDNA分子を同定し、クローン化し、発現させ、細胞壁生合成に影響する化合物を含めた、抗真菌類化合物をスクリーニングするアッセイで用いた。本発明は、精製されたDNA分子、該DNA分子を使用するアッセイ、該DNA分子によってコードされた蛋白質、該DNA分子を発現する細胞および該分子の改変形を含むが、これらに限定されない。
本発明は、ETG1としても公知であるサッカロミセス・セレビシエFK506感受性遺伝子1(FKS1)をコードするDNA分子、および限定されるものではないがFKS2を含むFKS1の相同体の配列の単離、特性解析、発現に関する。FKS1遺伝子はFKS1蛋白質を産生できるサッカロミセス・セレビシエ株から単離される。酵母のかかる株は当該分野でよく知られ、限定されるものではないが、サッカロミセス・セレビシエW303−1A、S228C、GRF88、およびYFK007を含む。
FKS2遺伝子は、サッカロミセス・セレビシエのゲノムDNAのサザーンブロットにおいて、FKS1DNAよりなるプローブにハイブリダイズするバンドとして見い出された。
これらの薬物に耐性または高感受性である個々の突然変異体を単離できるかは予測できないが、薬物高感受性または耐性の突然変異体の単離の技術は、MYG(後掲)に記載されているごとく、栄養要求性、温度感受性、およびUV感受性突然変異体の単離で用いられるものと同様である。FKS1遺伝子またはFKS1の相同体は、(1)細胞を免疫抑制剤FK506、サイクロスポリンA、または他のカルシニューリン阻害剤に対して高感受性とする突然変異の相補(fks1−1);(2)細胞をエキノカンジンに対して耐性とする突然変異の相補(fks1−2);または(3)細胞をニッコマイシンZに対して高感受性とする突然変異の相補(fks1−4)を含めた種々の方法によって染色体DNAライブラリーから単離できる(GYG、後掲、195−230頁)。
FKS1遺伝子またはその相同体は、DNAクローニングベクター中のDNA断片のライブラリーを調製し、FKS1の存在について個々のクローンをスクリーニングすることによって、染色体DNAから単離することができる。例えば、プラスミドYCp50における株GRF88からのサッカロミセス・セレビシエのゲノムDNAのライブラリーは、メリーランド州、Rockville、Parklawn Drive12301、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションからATCC37415として入手できる。
プラスミドライブラリーは、微生物の純粋な培養から染色体DNAを単離することによって調製できる。かかる微生物は、サッカロミセス・セレビシエ株W303−1A、S228C、GRF88、およびMY2146(YFK007)を含むが、それらに限定されない。染色体DNAを、例えば、Sau3AIが好ましいが、BamHI、ClaI、BclI,BglII、KpnI、Sau3AI、またはXhoIのごとき1種以上の制限エンドヌクレアーゼ酵素での部分消化によって断片化する。消化したDNA断片はサイズによって分離され、約2ないし15kbの長さのサイズ特異的断片としてクローニングベクターに挿入する。
本明細書で用いるクローニングベクターとは、一定の実験的DNAを取り込み、組み合わせたDNAを、安定に存在でき、同DNAによって指示される蛋白質を発現できる宿主細胞中へ導入されるDNA配列と定義される。ベクターDNAと組み合わせた外来性DNAは、組換え技術に由来する組換えDNA分子を構成する。クローニングベクターはプラスミド、バクテリオファージ、ウイルスおよびコスミドを含むが、それらに限定されない。
クローニングベクターをSalIのごとき制限エンドヌクレアーゼで切断し、ホスファターゼで処理し、DNA断片を、T4リガーゼが好ましいDNAリゼーゼで結ぶ。クローニングベクターを用いてDNAの摂取能力がある宿主細胞を形質転換する。クローニングのための宿主細胞、DNAプロセッシング、および発現は、限定されるものではないが、細菌、酵母、真菌類、昆虫細胞および哺乳動物細胞を含み、好ましい宿主はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。最も好ましい宿主は大腸菌K−12株RR1、HB101、JM109、DH11S、またはDH5aである。約5×104個の独立したゲノムDNA断片をクローニングベクターに結び、これはライブラリーと呼ばれる。真実のライブラリーは、全ゲノムの代表を含有する可能性のあるものである。かかるライブラリーの例はRose(GYG、後掲)に記載されている。
形質転換手法において組換えDNA分子を摂取し安定に維持するようなコンピテント宿主細胞は、プラスミド選択的薬物を補足したLB培地上で増殖する能力によって同定できる。アンピシリン遺伝子を含有するプラスミドベクターについては、アンピシリンが好ましい選択的薬物である。ライブラリーの十分な代表を得るためには、形質転換混合物を多くの寒天プレートの表面に延ばし、適当な条件下でインキュベートする。形質転換体細胞は、寒天プレートの表面から10mlのLB培地が好ましい小容量のLB培地に再懸濁できる。該細胞懸濁液を用いて、選択的薬物を補足した大容量のLB液体を接種し、37℃で一晩インキュベートする。次いで、プラスミドDNAを、当該分野で公知の方法によって細胞から抽出する。
プラスミドライブラリーにおけるFKS1遺伝子またはその相同体を同定するスクリーニングを考えることができる。1の戦略は、株T560−1C(MY2140)のごときサッカロミセス・セレビシエのエキノカンジン耐性突然変異体の使用を要する。細胞をDNAを摂取するようにコンピテントとし、次いで、ライブラリーDNAで形質転換する。FKS1遺伝子を担う形質転換体は、選択的エキノカンジンに対する耐性がプラスミド依存的に減少する。この予測は、株T560−1Cの遺伝的分析からの情報に基づいている。R560−1Cが野生型株と接合する場合、ヘテロ接合性二倍体は各親と比較して、エキノカンジン感受性は中間であり、これは、野生型遺伝子の単一コピーは突然変異体をエキノカンジンに対してより感受性にできる。
形質転換体混合物のアリコートを、形質転換体に対して選択的な培地上で平板培養する。インキュベーション増殖の後、コロニーを収集し、プールし、好ましくは、25%グリセールを補足した培地中、−80℃で凍結することによって保存する。1ミリリットル当たりのコロニー形成単位の数と定義される力価は当該分野で公知の方法によって測定される。
FKS1遺伝子を含有する形質転換体の同定は、計数可能な数のコロニーが各プレートで増殖するように、プラスミド選択的培地を含有する寒天上にライブラリーを平板培養して達成できる。各コロニーの一部をレプリカ平板培養によって2つの寒天プレートに移し;最初のプレートは中程度の感受性で細胞を殺す濃度の選択的エキノカンジンを補足したプラスミド選択的培地を含有し、第2のものはプラスミド選択的培地のみを含有する。陽性クローンは、エキノカンジンを含まないプレート上では通常に増殖するが、エキノカンジンを含有するプレートでは増殖が少ないか、あるいは全く増殖しないコロニーと定義される。
エキノカンジン感受性表現型は、種々のテストによって検出できる。その1つにおいては、コロニーからの細胞を、異なる濃度の選択的エキノカンジンを含有するプレートの表面に直接斑点状に撒き;貧弱に増殖する細胞をインキュベーションの2日後に評価する。
第2のテストにおいては、各コロニーの一部を、最初のテストで用いたものの約2倍の濃度で選択的エキノカンジンを含有する寒天プレートにレプリカ平板培養することによって移す。陽性クローンはこれらのプレートで増殖しない。
第3のテストにおいては、個々のコロニーからの細胞をプラスミド選択的液体培地に接種し、飽和するまで増殖させる。飽和した培養のアリコートを用いて、選択的エキノカンジンで補足したまたは補足しない新鮮な液体培地に接種する。インキュベーションの後、600nm波長での光学密度によって増殖を判定する。エキノカンジンの存在下で増殖しないコロニーを、エキノカンジン感受性に対して陽性とする。
もう1つのテストにおいて、可能なコロニーをブロスマイクロ希釈アッセイで検定し、その際、ある範囲の濃度の選択的エキノカンジンについてテストする。陽性クローンは元の耐性突然変異体よりも選択的エキノカンジンに対してより感受性である。
前記したごときテストを用いてゲノムDNAのライブラリーをスクリーニングして、FKS1遺伝子の機能的コピーを含有する組換えプラスミドを同定することができる。エキノカンジン感受性増加がFKS1のプラスミドをコードするコピーによるものか否かを判断するために、陽性クローンからプラスミドDNAをキュアリングし、エキノカンジンに対する感受性の減少についてテストする。もしエキノカンジン耐性減少がプラスミドの存在によるものであれば、プラスミド喪失の結果この表現型は失われる。エキノカンジン感受性は種々の方法、好ましくはブロスマイクロ希釈アッセイによって測定できる。
エキノカンジン感受性増加がFKS1遺伝子を含有するプラスミドの存在によるものであるというより直接的証拠は、陽性クローンからプラスミドDNAを単離することによって得ることができる。DNAを摂取する能力のある大腸菌細胞を該プラスミドで形質転換し、形質転換体を同定し、単離する。プラスミドDNAを形質転換大腸菌から単離し、次いで、制限エンドヌクレアーゼで消化して適当なサイズの断片を得る。各断片のサイズは、ゲル電気泳動のごとき常法によって知ることができる。プラスミドを種々の酵素で消化することによって、切断の位置を示す地図が得られ;該地図はクローン化された断片ごとに別々で、特異的である。詳細な制限地図はゲノム内の特定の遺伝子を同定するのに十分である。エンドヌクレアーゼでの消化によって生成したクローン化遺伝子はアガロースゲルから精製し、当該分野で公知の方法によって配列決定に適したベクターに結ぶことができる。かかるベクターは、限定されるものではないが、pBR322、YEp13、YEp24、pGEM3Zf(+)、pGEM5Zf(+)およびpGEM7Zf(+)を含み、pGEM3Zf(−)およびpGEM7Zf(−)が好ましい。二本鎖DNAを各プラスミドから調製し、配列決定のために用いる。
FKS1遺伝子を含有するクローンを同定するための第2の戦略では、FK506高感受性突然変異を補足する能力を利用する。FK506高感受性突然変異株をライブラリーDNAで形質転換する。FK506に対して高感受性でなくなった形質転換体は、高感受性突然変異の増殖に対しては阻害的であるが野生型株に対しては阻害的ではないレベルのFK506の存在下で全ての形質転換体をインキュベートすることによって同定される。FKS1遺伝子よりなるDNAを含有する株のみが増殖する。同様の戦略は、サイクロスポリンその他の突然変異体が高感受性のカルシニューリン阻害剤を用いて達成できる。
FKS1遺伝子を含有するクローンを同定するための第3の戦略は、ニッコマイシンZに高感受性を与える突然異変体を補足する能力を利用する。MS14のごときニッコマイシンZ感受性突然変異体をライブラリーDNAで形質転換する。ニッコマイシンZに対する高感受性を失った形質転換体は、高感受性突然変異の増殖に対しては阻害的であるが野生型株に対しては阻害的ではないレベルのニッコマイシンZの存在下で全ての形質転換体をインキュベートすることによって同定される。FKS1遺伝子よりなるDNAを含有する株のみが増殖する。
FKS1の相同体であるFKS2遺伝子は、染色体DNAから単離できる。染色体DNAは標準的な方法を用い、サザーンハイブリダイゼーション分析からFKS2を含有することが知られている微生物の純粋培養から単離される。種々の酵素での消化によって染色体DNAを断片化する。FKS2の単離は、FKS1遺伝子のそれの一部と同様のヌクレオチド配列の領域を持つDNA分子よりなるプローブを用いて行うことができる。この断片の長さは、FKS2含有生物からのDNAのハイブリダイゼーションスクリーニングにおけるFKS2に対する特異性を付与するのに十分な位大きければよい。また、この断片はハイブリダイゼーションの特異性を達成するのに必要な最小長さよりも長くてもよい。好ましい断片は3.5kbのKpnIFKS1断片または10kb PstI−SphI FKS1断片である。
サッカロミセス・セレビシエのFKS1またはFKS2遺伝子を用いて、病原性真菌類において相同遺伝子を単離し、特性解析することができる。サザーンブロットハイブリダイゼーションは、FKS1およびFKS2と密接に関連する遺伝子が病原性真菌類に存在することを示す。限定されるものではないが、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガタス、マグナポルサ・グリセア(Magnaportha grisea)およびウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis)の株を含む病原性真菌類は、その細胞壁に1,3−β−Dグルカンを有するので、FKS1またはFKS2の機能的相同体がこれらの真菌類の各々に存在するようである。また、FKS1またはFKS2の機能的相同体はその細胞壁に1,3−β−Dグルカンを有する他の生物にも存在するようである。
FKS1およびFKS2相同体は、カンジダ・アルビカンス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス・フミガタス、エイ・ニドゥランス(A. nidulans)、マグナポルサ・グリセアおよびウスティラゴ・マイディスから染色体DNAを単離することによって検出できる。染色体DNAの一部をEcoRI、HindIII、ClaI、およびXhoIのごとき多数の制限酵素で完全に切断する。DNAの消化された断片をゲル電気泳動によって分離する。次いで、該断片を、ナイロン膜が好ましい、ニトロセルロースまたはナイロン膜のごとき固体膜支持体に移す。次いで、ナイロンブロットを標識プローブとハイブリダイズさせる。選択すべき放射性同位体は32Pである。
DNA断片は、(Rigbyら、1977、J. Mol. Biol.、113:237−251に記載されているものののごとき)ニックトランスレーション法または(FeinbregおよびVogelstein、1983、Anal. Biochem.,132:6−13に記載されているもののごとき)ランダム起点法によって放射性標識でき、ランダム起点法が好ましい。該ブロットを放射性標識断片と一晩ハイブリダイズするが、1.4kb SalI−ClaI FKS1断片又は3.5kb SalI−ClaI FKS1断片または1.7kb PstI−BglII FKS2断片が好ましいプローブである。翌日、該ブロットを洗浄し、次いで、XAR−5フィルムに暴露し、現像する。該ブロットを洗浄する条件は、高度に相同性の遺伝子のみがプローブとハイブリダイズし、オートラジオグラムに出現するようにする。プローブとハイブリダイズする消化された断片のサイズおよびパターンからゲノム地図を得る。各生物につき、該地図は染色体におけるFKS1またはFKS2相同体を特異的に同定するのに十分である。
限定されるものではないがfks1−1またはFKS1の破壊もしくは欠失を含むFKS1遺伝子の突然変異は、グルカンシンターゼ阻害剤をスクリーニングするのに有用である。かかるスクリーニングは、グルカンシンターゼ阻害剤に対するFKS1野生型株と比較したかかる突然変異の感受性の変化に基づく。この差異を検出できるいずれの技術も使用できる。寒天プレート上での阻害ゾーンアッセイは特に有用である。
特異的アミノ酸をコードする各々のコドンに、実質的にかなりの数の縮重があるのは公知である。従って、本発明は、同一アミノ酸に終局翻訳されるようにコードする別のコドンを含有するDNA配列にも指向される。本明細書の目的では、1以上の置き換えられたコドンを担持する配列は縮重変異と呼ぶ。また、発現された蛋白質の最終的物理的特性を実質的に改変しないDNA配列または翻訳された蛋白質における突然変異も本発明の範囲内に含まれる。例えば、ロイシンに代えてのバリン、リシンに代えてのアルギニン、グルタミンに代えてのアスパラギンの置換は当該ポリペプチドの機能の変化を引き起こさないであろう。
ペプチドをコードするDNA配列は、天然に生じるペプチドの特性とは異なる特性を有するペプチドにつきコードするように改変できる。DNA配列の改変方法は、部位特異的突然変異誘発を含むが、それらに限定されない。改変された特性は、限定されるものではないが、基質に対する酵素の親和性およびリガンドに対する受容体の親和性の変化を含む。
本明細書で用いる修飾されたFKS1 DNAまたは蛋白質の「機能的誘導体」とは、FKS1 DNAまたは蛋白質の生物学的活性に実質的に同等である生物学的活性(機能的または構造的)を有する化合物である。「機能的誘導体」なる語は、「断片」、「変異体」、「縮重変異体」、「アナログ」、「相同体」または「化学的誘導体」を含ませる意図である。「断片」なる語は、FKS1蛋白質のいずれのポリペプチドサブセットを意味する。「変異体」なる語は、全蛋白質またはその断片に、構造および機能が実質的に同様の分子を意味する。もし両分子が実質的に同様の構造を有するか、あるいはもし両分子が同様のの生物学的活性を有すれば、分子は修飾された蛋白質に「実質的に同等」である。従って、もし2の分子が実質的に同等の活性を有すれば、それらは、たとえ1の分子の構造が他で見い出されなくても、あるいは2つのアミノ酸配列が同一でなくても、それらは変異体であるとみなされる。
「アナログ」なる語は、全蛋白質またはその断片に機能が実質的に同等の分子をいう。
核酸に言及する場合、「実質的相同性」または「実質的に同等の」とは、最適に並べた時、または比較した時に、セグメントまたはその相補鎖が、ヌクレオチドの少なくとも75%において、適当なヌクレオチドの挿入または欠失を許すならば同一であることを意味する。また、実質的相同性は、セグメントが鎖またはまたはその相補体にハイブリダイズする場合に存在する。
本出願で特許請求する核酸は、全細胞または細胞溶解物に、部分的に純粋なまたは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、それが環境の汚染物から精製された場合に実質的に純粋と考えられる。かくして、細胞から単離された核酸配列は、標準的な方法によって細胞成分から精製された場合に実質的に純粋と考えられ、他方、化学的に合成された核酸の配列はその化学的前駆体から精製された場合に実質的に純粋と考えられる。
本発明の核酸組成物は、合成によって、または各手法の組合せによって、ゲノムDNAまたはcDNAから誘導できる。
本発明の1,3−β−D−グルカンシンターゼ・サブユニットをコードする天然または合成核酸は発現ベクターに取り入れることができる。通常、1,3−β−D−グルカンシンターゼ・サブユニットを取り入れる発現ベクターは宿主における複製に適する。許容される宿主の例は、限定されるものではないが、原核生物細胞または真核生物細胞を含む。
本明細書で用いる「組換え発現ベクター」なる語句は、組換え発現ベクターを安定に担う適当な宿主生物の実質的に均質な培養を意味する。適当な宿主の例は、限定されるものではないが、細菌、酵母、真菌類、昆虫細胞、植物細胞および哺乳動物細胞を含む。一般に、発現系の細胞は単一の祖先形質転換細胞の後代である。
本明細書に記載する方法により得られたクローン化1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットDNAは、適当なプロモーターおよび他の適当な転写調節エレメントを含有する発現ベクターに分子をクローニングすることによって組換え的に発現でき、原核生物または真核生物宿所細胞に移入して、標準的な方法を用いて組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを産生できる。
発現ベクターは、適当な宿主において、遺伝子のクローン化コピーの転写およびそのmRNAの翻訳に要するDNA配列と本明細書では定義される。かかるベクターを用いて、細菌、藍藻門の藻類、植物細胞、昆虫細胞、真菌類および動物細胞のごとき種々の宿主において真核生物遺伝子を発現させることができる。
特別に設計されたベクターは、細菌−酵母または細菌−動物細胞または細菌−真菌類または細菌−無脊椎動物細胞のごとき宿主細胞のDNAシャトリングを可能とする。適当に構築された発現ベクターは:宿主細胞における自己複製用の複製起点、選択マーカー、限定数の有用な制限酵素部位、高コピー数の可能性、および活性なプロモーターを含有すべきである。プロモーターは、DNAに結合し、RNA合成を開始するようにRNAポリメラーゼに指示するDNA配列と定義される。強力なプロモーターは、mRNAが高頻度で開始されるようにするものである。発現ベクターは、限定されないが、クローニングベクター、修飾されたクローニングベクター、特に設計されたプラスミドまたはウイルスを含む。
種々の哺乳動物発現ベクターを用いて、哺乳動物細胞で組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現させることができる。組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットに適し得る商業的に入手可能な哺乳動物発現ベクターは、限定されるものではないが、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC37224)、pRSVgpt(ATCC37199)、pRSVneo(ATCC37198)、pSV2−dhfr(ATCC37146)、pUCTag(ATCC37460)、およびλZD35(ATCC37565)を含む。
種々の細菌発現ベクターを用いて細菌細胞で組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現させることができる。組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現に適する商業的に入手可能な細菌発現ベクターは、限定されるものではないが、pET11a(Novagen)、λgt11(Invitrogen)、pcDNAII(Invitrogen)、pKK223−3(Pharmacia)を含む。
種々の真菌類細胞発現ベクターを用いて、真菌類細胞で組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現させることができる。組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現に適する商業的に入手可能な真菌発現ベクターは、限定されるものではないが、pYES2(Invitrogen)、Pichia発現ベクター(Invitrogen)を含む。
種々の昆虫細胞発現ベクターを用いて、昆虫細胞で組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現させることができる。組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現に適する商業的に入手可能な昆虫細胞発現ベクターは、限定されるものではないが、pBlue BacIII(Invitrogen)、ならびにpAcUW1およびpAC5G1(PharMingen)を含む。
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをコードするDNAを含有する発現ベクターを、組換え宿主細胞での修飾された1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現で用いることができる。組換え宿主細胞は原核生物または真核生物であり得、限定されるものではないが、大腸菌のごとき細菌、酵母のごとき真菌類、限定されるものではないがヒト、ウシ、ブタ、サルおよび齧歯類起源の細胞系を含む哺乳動物細胞、限定されるものではないがショウジョウバエおよびカイコ由来細胞を含む昆虫細胞を含む。適当であって商業的入手可能な哺乳動物種由来の細胞系は、限定されるものではないが、L細胞L−M(TK-)(ATCC CCL 1.3)、L細胞L−M(ATCC CCL1.2)、293(ATCC CRL 1573),Raji(ATCC CCL86)、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)およびMRC−5(ATCC CCL171)を含む。
限定されるものではないが、形質転換、トランスフェクション、リポフェクション、プロトプラスト融合、およびエレクトロポレーションを含む多数の技法のうちのいずれかにより、発現ベクターを宿主細胞に導入することができる。発現ベクターを含有する細胞をクローン的に増殖させ、それらが1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを生産するか否かを判断するために個々に分析する。組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現する宿主細胞クローンの同定は、限定されるものではないが、抗−1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット抗体との免疫学的反応性を含むいくつかの手段によって行うことができる。
また、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットDNAの発現は、in vitroで生産された合成mRNAまたは天然mRNAを用いて行うことができる。合成mRNAまたは1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを生産する細胞から単離したmRNAは、限定されるものではないが、麦芽エキスおよび網状赤血球抽出物を含む種々の無細胞系で効果的に翻訳させることができ、ならびに、限定されるものではないが、カエル卵母細胞へのマイクロインジョクション(カエル卵母細胞へのマイクロインジョクションが好ましい)を含む細胞ベースの系で効果的に翻訳させることができる。
ポリペプチドに言及する場合、「実質的な相同性」なる語は、問題とするポリペプチドまたは蛋白質が、問題とする天然に生じる蛋白質と少なくとも約30%、通常は少なくとも約65%の相同性を示すことをいう。
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットは適当な宿主細胞で発現でき、それを用いて1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットに影響する化合物を発見することができる。
また、本発明は、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをコードするDNAまたはRNAの発現を変調する化合物、即ち1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質の機能を変調する化合物をスクリーニングする方法に指向される。これらの活性を変調する化合物は、DNA、RNA、ペプチド、蛋白質、または非蛋白質性有機分子であり得る。これらの化合物は、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをコードするDNAまたはRNAの発現、または1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質の機能を減少または減衰させることによって変調できる。1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをコードするDNAまたはRNAの発現、または1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質の機能を変調する化合物は、種々のアッセイによって検出できる。該アッセイは、発現または機能の変化があるか否かを判断する単純な「是/否」アッセイであり得る。該アッセイは、テスト化合物の発現または機能を、標準試料における発現または機能のレベルと比較することによって定量化できる。
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットDNA、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットに対する抗体、または1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質を含有するキットを調製できる。かかるキットは、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットDNAにハイブリダイズするDNAを検出し、あるいは試料中の1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質またはペプチド断片の存在を検出するのに使用される。かかる特性解析は、限定されるものではないが、法医学、分類学または疫学的研究を含む種々の目的で有用である。
本発明のDNA分子、RNA分子、組換え蛋白質および抗体は、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットDNA、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットRNAまたは1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質をスクリーニングし、そのレベルを測定するのに使用できる。組換え蛋白質、DNA分子、RNA分子および抗体は、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの検出およびタイプ分けに適したキットの調製に役立つ。かかるキットは、少なくとも1つの容器を厳重に閉じ込めて保持する区画化された担体よりなる。該担体は、さらに、組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質または1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを検出するのに適した抗−修飾1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット抗体のごとき試薬よりなる。また、該担体は標識抗原または酵素基質等のごとき検出のための手段よりなり得る。
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性調節剤よりなる医薬上有用な組成物は、医薬上許容される担体を混合するような公知の方法に従って処方できる。かかる担体および処方の方法の例はRemingtonのPharmaceutical Sciencesに見い出すことができる。効果的な投与に適した医薬上許容される組成物を形成するには、かかる組成物は、有効量の蛋白質、DNA、RNAまたは分子を含有するであろう。
本発明の治療組成物または診断組成物は、障害を治療または診断するのに有効な量で個体に投与される。有効量は、個体の状態、体重、性別および年齢のごとき種々の因子に依存する。他の因子としては投与様式を含む。
医薬組成物は、皮下、局所、経口および筋肉内のごとき種々の経路によって個体に供される。
「化学誘導体」なる語は、通常は基礎分子には含まれない、さらなる化学的部位を含有する分子を記載する。かかる部位は基礎分子の溶解性、半減期、吸収等を改善する。または、該部位は基礎分子の望ましくない副作用を減衰させ、あるいは基礎分子の毒性を低下させる。かかる部位の例は、RemingtonのPharmaceutical Sciencesのごとき種々のテキストに記載されている。
本明細書で記載する方法で同定される化合物は、適当な用量にて単独で使用できる。別法として、他の剤との共投与または逐次投与も望ましい。
また、本発明は、本発明の治療の新規方法で用いる適当な局所、経口、全身および非経口医薬処方を提供する目的を有する。有効成分として本発明で同定された化合物を含有する組成物は、投与用の通常のベヒクル中にて、種々の治療用量にて投与できる。例えば、該化合物は錠剤、(各々が適時放出および遅延放出処方を含む)カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤および乳剤のごとき経口投与形態にて、あるいは注射によって投与できる。同様に、それらは静脈内(ボーラスおよび注入双方)、腹腔内、皮下、吸蔵と共にまたはそれ以外の局所、または筋肉内形態(すべての形態は医薬分野の当業者に知られている)にて投与できる。
有利には、本発明の化合物は単一の日用量で投与できるか、あるいは毎日2、3または4回の分割用量にて合計日容量として投与できる。さらに、本発明の化合物は、当業者によく知られた経皮皮膚パッチの形態を用い、適当な鼻孔内ベヒクルの局所使用を介して、あるいは経皮経路を介して投与できる。経皮送達系の形態で投与するには、該投与は、勿論、投与計画中間欠的でなく連続的のものとなろう。
1以上の活性剤(ここに、該活性剤は別々の投与処方である)での組合せ治療には、該活性剤は同時に、あるいは各々を別のずらした時間に投与できる。
本発明の化合物を利用する投与方法は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療すべき疾患の重症度;投与経路;患者の腎臓および肝臓機能;使用するその特別の化合物を含めた種々の因子に応じて選択される。通常の技量の医者または獣医ならば、疾患の進行を防止し、逆行させまたは阻止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方できる。毒性なくして効果を生じる範囲内の薬物濃度を達成する最適な量は、標的部位に対する薬物の利用度の動態に基づいた方法を必要とする。これは、薬物の分布、平衡および排泄の考慮を含む。
サッカロミセス・セレビシエMY2095(YFK007)、サッカロミセス・セレビシエMY2140(R560−1C)、サッカロミセス・セレビシエMY2147(YFK532−7C)、サッカロミセス・セレビシエMY2148(YFK798)、サッカロミセス・セレビシエMY2256(YMO148、RFK0978)、サッカロミセス・セレビシエMY2257(YFK1088−23B)、サッカロミセス・セレビシエMY2258(YFK1088−16D)、サッカロミセス・セレビシエMY2259(YFK1087−20B)、サッカロミセス・セレビシエMY2260(YFK1087−20A)の生物学的に純粋な試料、並びにプラスミドpFF119およびpFF334のDNAは、メリーランド州、Rockville、Parklawn Drive12301のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託した。
以下の実施例は本発明をさらに明確とするために供するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
この実験で使用する培地の処方は以下のものを含むが、それに限定されない。
a.YEPD培地
バクト酵母エキス 10g
バクト−ペプトン 20g
デキストロース 20g
蒸留水を加えて1リットルとする。
オートクレーブによって滅菌する。
固形YEPD培地では、オートクレーブ処理の前にバクト−寒天を2%(20グラム)まで添加する。
b.YPAD培地
バクト酵母エキス 10g
バクト−ペプトン 20g
デキストロース 20g
硫酸アデニン 60−80mg
蒸留水を加えて1リットルとする。
オートクレーブによって滅菌する。
固形YPAD培地では、オートクレーブ処理前にバクト−寒天を2%(20グラム)まで添加する。
c.YPAD/10mM CaCl 2
1部の滅菌した1M CaCl2を100部のYPADに希釈する。
d.YPAG培地
デキストロースの代わりにグリセロール(20g/リットル)を含むYPAD
e.SC培地
アミノ酸無しのバクト酵母窒素ベース 6.7g
デキストロース 20g
完全なアミノ酸粉末 0.87g
蒸留水を加えて1リットルとする。
オートクレーブによって滅菌する。
固形SC培地では、オートクレーブ処理前にバクト−寒天を2%(20グラム)まで添加する。
f.完全アミノ酸粉末
0.8g アデニン
0.8 L−アルギニン
4.0 L−アスパラギン酸
0.8 L−ヒスチジン
1.2 L−イソロイシン
2.4 L−ロイシン
1.2 L−リシン
0.8 L−メチオニン
2.0 L−フェニルアラニン
8.0 L−スレオニン
0.8 L−トリプトファン
1.2 L−チロシン
0.8 ウラシル
6.0 L−バリン
乳鉢および乳棒で混合する。
g.欠失粉末は完全アミノ酸粉末から1種以上の成分を省略することによって調製する。例えば、Trp欠失粉末はL−トリプトファンが添加されていない点を除き完全アミノ酸粉末に同じである。
h.FK506を含有する固形SC培地は、予め50−52℃まで冷却した、オートクレーブ処理SC培地にFK506を添加することによって調製する。該培地をペトリ皿に分注し、固化させる。L−733,560を含有する固形SC培地は同様に調製される。
i.Trp欠失/デキストロース培地
0.87g Trp欠失粉末
6.7g 酵母窒素ベースw/oアミノ酸
20g デキストロース
蒸留水を加えて1000mlとする。
5M KOHでpH5.8とする。
20g/l寒天でTrp欠失プレートを作製する。
オートクレーブ処理によって滅菌する。
j.ウラシル欠失/ソルビトール培地
0.87g ウラシル欠失粉末
6.7g 酵母窒素ベースw/oアミノ酸
20g デキストロース
182g ソルビトール
蒸留水を加えて1000mlとする。
5M KOHでpH5.8とする。
20g/l寒天でTrp欠失プレートを作製する。
オートクレーブ処理によって滅菌する。
k.ウラシル欠失/ソルビトール寒天
オートクレーブ処理前に20g/l寒天をウラシル欠失/ソルビトール培地に添加する。
l.ウラシル欠失/ソルビトール軟寒天
オートクレーブ処理前に6g/l寒天をウラシル欠失/ソルビトール培地に添加する。
m.Trp欠失/グリセロール
デキストロースを20g/lグリセロールで置き換える以外はtrp欠失/デキストロースに同じ。
n.LB培地およびアンピシリンを含むLB培地は実質的にManiatis(後掲)に記載された方法に従って調製する。
株およびDNAは標準的な手法(J. Sambrook,E.F. Fritsch及びT. Maniatis, “Molecular Cloning, A Laboratory Manual”,第2版,Cold SpringHarbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989),Maniatisという;及び“Current Protocols in Molecular Biology”, F.M. Ausubelら編, John Wiley & Sons,New York (1987),Current Protocolsという)によって単離し、扱った。サッカロミセス・セレビシエに関する研究方法の多くは、M.D.Rose, F.Winston及びP.Hieter, “Methods in Yeast Genetics: a Laboratory Course Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990),MYGという、及びC.Guthrie及びG.R.Fink編, Methods in Enzymology,194巻,“Guide to Yeast Genetics and Molcecular Biology”,Academic Press,Inc.,New York(1991),GYGという、に記載されている。
さらなる株およびプラスミドは図に示す。
実施例2
液体ブロスマクイロ希釈アッセイ
FK506、L−733,560またはニッコマイシンZのごとき化合物に対するサッカロミセス・セレビシエの特定株の感受性を定量するために、以下の手法を取った:
第1日:
SC培地または栄養要求性マーカー(例えば、ura3、his等)についての選択を要すれば特定の欠失粉末に置き換えたSC培地に株を接種する。穏やかに撹拌しつつ一晩増殖させる。
第2日:
各一晩の株20μLを新鮮な培地2mlに継代培養し;30℃で4〜6時間インキュベートする。
滅菌平底96−ウェル、12カラムマイクロタイタープレートを、カラム2ないし12中のSDまたはSD欠失培地75μLに接種する。
注目する薬物を4×で溶解させ、所望の初期濃度とする。L−733,560については、滅菌SD中の64μg/ml溶液を調製する。薬物懸濁液のアリコート75μLをカラム3に入れる。マルチチャンネルピペッターを用い、カラム3からの75μLをカラム4に入れ、ピペットで3回上げ下げして混合し、次いで、カラム4からの75μLをカラム5に入れる。カラム12に達するまで系列希釈を反復し;混合後、75μLを捨てて廃棄する。
テストすべき各株を含む5ml滅菌試験管を標識する。適当な培地のアリコート2mlを各試験管に入れる。株のA600を読み取り、最終ODが0.0014となるように培地を希釈する。例えば、もし株のA600が0.7041であれば、4μLを培地2mlに継代培養する。
接種物75μLをカラム2−12に添加することによって、所与の列の各株を接種する。カラム1はブランクであるので、カラム1には添加しない。カラム2は薬物なしか、100%増殖対照として供する。次いで、プレートを振盪することなく30℃で一晩インキュベートする。
第3日:
インキュベーションの約24時間後、プレートを温和に撹拌して細胞を懸濁させ、600nm波長における吸光度を読み取る。いずれかの所与のウェルについての%対照増殖は、そのウェルについての吸光度値を同一列のカラム2の値で除することによって計算できる。これを各カラムについてなして、「パーセント対照増殖」−対−「薬物濃度」としてデータをプロットできる。得られた用量依存性曲線を用いて、各株の薬物感受性を比較することができる。
実施例3
YFK132、fks1−1突然変異体の単離
サッカロミセス・セレビシエYFK132は、標準的なエチルメタンスルホネート(EMS)突然変異誘発法(Shermanら, 1986,「Laboratory course manual for methods in yeast genetics」、Cold Spring Harbor Press)によってサッカロス・セレビシエ株YFK007(野生型;MY2095;ATCC74060)から単離した。親株YFK007は約50μg/mlのFK506に対して感受性であり、100μg/mlのCsAに対しては非感受性である。突然変異体株YFK132はFK506に対して高感受性である。
YFK007を30℃にてYEPD25mL中で一晩増殖させた。遠心することによって細胞を収穫し、0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7)10mlに3×108細胞/mlの密度で再懸濁した。細胞懸濁液を1.24×108細胞/mlに希釈し、2の試料に分割した。
1方の試料にEMS(Sigma カタログ番号M0880)の0.588mlを添加した。同一容量の蒸留水を対照としての第2の試料に添加した。処理した細胞懸濁液を25℃でインキュベートした。種々の時点で試料を取り出し、5%チオ硫酸ナトリウム8mlに添加して、突然変異誘発を停止した。停止した細胞を水に希釈し、YEPD寒天上で平板培養し、25℃でインキュベートした。EMS−処理したおよび未処理の培養を種々の希釈度にてYEPDプレートに広げ、コロニーを計数して突然変異誘発の後の細胞生存を測定した。
突然変異誘発したコロニーを含有するYEPDプレートを、FK506を0、1または10μg/mlを含有するSC寒天上に平板培養し、25℃でインキュベートした。約1,200コロニーをスクリーニングした。SC培地+FK506上で増殖しなかった3つの培養を同定し、さらに分析した。
YFK132と命名する、FK506−高感受性表現型(0.1μg/mlFK506に感受性)を呈した、これらの培養のうちの1つは、10μg/mlCsAに対して感受性であって、ゆっくりと増殖した。
実施例4
YFK132、fks1−1突然変異体の戻し交配
YFK132の表現型が単一の突然変異の結果であるか否かを判断するために、突然変異体と野生型株との間の交雑につき四倍体分析を行った。
YFK132を野生型株YFK005に交配させ、得られた2倍体からの減数分裂セグレナントをYFK007に2回戻し交配して株YFK531−5A、YFK532−7CおよびYFK532−10Bを得た。FK506高感受性で遅い増殖の表現型のYFK132が全ての交雑で共分離され、これは、これらの表現型は単一の遺伝子における突然変異の結果であることを示す。YFK132はYFK007のfks1−1突然変異体である。
実施例5
YFK132のエキノカンジン感受性のテスト
エキノカンジンL−688,786に対するYFK132の感受性はディスク−拡散アッセイで測定した。
YFK132およびその親(YFK007)を液体SC培地2.5mlで増殖させ、蒸留水で6.25×107細胞/mlまで希釈した。2%寒天(130ml)を含有する融解SC培地を、希釈した培養4mlで接種し、245×245mmバイトアッセイプレートに直ちに注いだ。培地が固形化した後、FK506(1、10および50μg)またはL−688,786(1、10および50μg)を含有する滅菌フィルターディスクを28℃でインキュベートした。18時間後、増殖阻止のゾーンを測定した。
以下の表に示すごとく、YFK132はその親株(YFK007)よりもL−688,786に対してより感受性であった。
実施例6
fks1−1の相補によるFKS1のクローニング
A.一般的アプローチ
YFK532−10BのFK506高感受性表現型(MATa、ade2−101、his3−Δ200、leu2−Δ1、lys2−801、trp1−Δ1、ura3−52、fks1−1)の相補によって、1,3−β−D−グルカンシンターゼ遺伝子(FKS1)をクローン化した。突然変異体表現型の相補による遺伝子クローニングに対する一般的手法はM.D.RoseおよびJ.R.Broachによって概説されている(GYG、195−230頁)。
ライブラリープラスミドDNAは大腸菌ATCC37415から得た。このライブラリーは、株GRF88からの酵母ゲノムDNAの10−ないし20−kbSau3AI部分消化断片を酵母シャトルベクターYCp50に挿入することによってM.D.Roseら(Gene,60,237−243,1987)によって創製された。
B.エレクトロポレーション可能な細胞の調製
YFK532−10Bの細胞は、実質的にはD.M.BeckerおよびL.Guarente(Guthrie及びFink、前掲、182−187頁)によって記載されているごとくにエレクトロポレーションによる形質転換用に調製した。受容性細胞は、0.004%アデニン硫酸を補足したYPAG培地を含有する寒天プレート上で増殖させた。十分に増殖したパッチ(1mm×5mm)からの細胞を、250mlの三角フラスコ中、YPAD−25C培地(25mM CaCl2を補足したYPAD)50mlに接種し、回転振盪機(225rpm、2″行程)にて30℃でインキュベートした。培養を600nmで1.3の光学密度まで増殖させ、滅菌した50mlの使い捨てポリエチレン遠心チューブに移した。Sorvall RT6000冷却遠心機中、3500rpmにおける4℃での5分間の遠心によって細胞を収穫した。全速回転して細胞ペレットを得、25ml氷冷滅菌水で再懸濁させ、遠心によって収穫し、25mlの氷冷滅菌水で再度洗浄した。細胞ペレットを10mlの氷冷滅菌1Mソルビトールで再懸濁した。洗浄した細胞懸濁液を滅菌した10mlの使い捨てポリエチレン遠心チューブに移し、3500rpmにおける4℃での10分間の遠心によって細胞を収穫した。細胞ペレットを0.1mlの氷冷滅菌1Mソルビトールで再懸濁した。
C.受容細胞のエレクトロポレーション
洗浄した細胞懸濁液の一部(50μL)を滅菌したマイクロ遠心チューブに移した。ライブラリープラスミドDNA(バンクA)のアリコート(約500ngを含有する1μL)を細胞に添加し、温和に混合し、氷上で約5分間インキュベートした。細胞懸濁液を冷0.2cm滅菌エレクトロポレーション・キュベットに移し、1.5kV、25μF、200オーム(プラス・コントローラーを備えたBioRad Gene Pulser)にてパルスを与えた。直ちに、3mlの氷冷滅菌1Mソルビトールを添加し、温和に混合した。
15のアリコート(0.2ml)を滅菌培養チューブに移した。46℃にて、軟(0.6%)寒天中に1mソルビトールを含有するウラシル欠失/ソルビトール軟寒天(3.5ml)を各チューブに添加して混合物を形成させ、同一のソルビトールを含有する培地で作成した2%寒天プレート上に各混合物を注ぎ、合計15のプレートを得た。該手順を210のプレートが得られるまで反復した。
30℃でプレートをインキュベートした。24時間後、各プレートに、1μg/mlのFK506を含有するウラシル欠失/ソルビトール軟寒天(エタノール中のFK506の5mg/mlストック溶液を、予め55℃まで冷却したオートクレーブ処理培地に添加した)3mlを重ねた。該プレートを30℃でさらに6日間インキュベートした。0.1μg/mlのFK506を補足したウラシル欠失培地を含有する寒天プレート上で単一のコロニーを画線培養することによって、形質転換コロニーからの細胞を精製した。
D.プラスミドpFF119の単離
精製した形質転換体のコロニーを16mm培養チューブ中の1.5mlウラシル欠失培地に接種し、チューブローラー中、30℃で2日間インキュベートした。プラスミドDNAは、方法1に従って、実質的にJ.N. Strathern 及びD.R. Higgins(Guthrie及びFink、前掲、319−329頁)によって記載されているごとくに調製し、コンピテント大腸菌株DH11S(Bethesda Research Laboratories)に移した。プラスミドDNAは、QIAGEN−tip500手法(QIAGEN Inc.,Chatworth,CA)を用い、アンピシリン耐性大腸菌から調製した。得られたプラスミドはpFF119と命名した。
fks1−1を相補するpFF119の能力は、元の形質転換体中のプラスミドを自然にキュアリングさせることによって確認した。キュアリングはFK506の高感受性表現型を回復させた。pFF119での再形質転換はFK506耐性を回復させた。
E.fks1−1を相補するDNAの位置決め
pFF119を制限エンドヌクレアーゼの種々の組合せで消化し、アガロースゲル電気泳動によって分析した。結果は、pFF119が約15kbのDNAのインサートを含有することを示した。
この15kb領域内からの11kb SphI断片をプラスミドYCplac33[R.D. Gietz及びA. Sugino,Gene,74:527−534(1988)]のSphI部位に両方の向きで移し、プラスミドpFF133およびpFF135を得た。また、これらのプラスミドはfks1−1突然変異のFK506高感受性表現型を相補することができる。
クローン化DNAのネストされたサブクローンは、pFF133およびpFF135をBamHIで線状化し、Sau3AIで部分消化し、DNAリガーゼで該分子を再環化することによって作成した。2のサブクローン(pFF172およびpFF173)のうち1つのみがfks1−1を相補することができた。相補性DNAは、かくして、最初のSphI部位および第2のBglII部位の間の、最小6.0kbおよび最大7.8kbのDNAを持つ領域に位置決めされた。
E.fks1−1を相補するDNAのFKS1としての同定
fks1−1を相補するDNAの挿入−欠失対立遺伝子は以下のようにして作成した。pFF133の8.8kbのSphI−PstI断片を大腸菌ベクターpGEM−5Zf(+)(Promega,Madison,WI)のポリリンカーのSphIおよびPstI部位の間に挿入してプラスミドpFF174を得た。プラスミドpJJ215(J.S. Jones及びL.Prakash, Yeast,6:363−366(1990))からの1.3kb BamHI−XhoI HIS3断片を平滑末端連結(Current Protocols,2.3.10頁参照)によってプラスミドpFF174の2のKpnI部位の間に挿入してプラスミドpFF186(センス向き)およびpFF187(アンチセンス向き)を得た。SstI+SphIでの消化によって6.6kb挿入−欠失断片を切り出し、アガロースゲル電気泳動によって精製した。挿入−欠失突然変異を1工程遺伝子置換(R.Rothstein,GYG,281−301頁参照)によって作成した。この破壊は、PstIで消化し、プラスミドpFF174からの8.8kbのSphI−PstI断片でプローブしたゲノムDNAのサザーンブロットハイブリダイゼーション分析によって確認した。破壊されていない親は、該プローブにハイブリダイズする単一の9.8kbゲノム断片を生じる。HIS3がセンス向きに挿入された破壊突然変異体、例えば、YFF2409は3.9−および3.7kb断片を与え、他方、アンチセンス破壊突然変異体、例えばYFF2411は4.9−および2.7−kb断片を与える。挿入−欠失対立遺伝子を持つ半数体株はfks1−1突然変異体と実質的に同一の表現型を有し;それは、増殖が遅く、FK506に対して高感受性であって、L−733,560に対して高感受性である。挿入−欠失半数体をfks1−1半数体と交雑させることによって作成した2倍体は増殖が遅く、FK506に対して高感受性であり、これは、挿入−欠失突然変異体はfks1−1突然変異を相補しないことを示す。
これらの結果は、2つの対立遺伝子は同一遺伝子内にあり、pFF119がFKS1遺伝子を担うことを示す。従って、挿入−欠失突然変異をfks1−5::HIS3およびfks1−6::HIS3という。
実施例7
サッカロミセス・セレビシエの他の株はFKS1の変異体を保有する。
サッカロミセス・セレビシエの種々の株から単離し、異なる制限酵素で消化したゲノムDNAのサザーンハイブリダイゼーションは、いくつかの株が、GRF88における遺伝子についてのものとわずかに異なる制限地図を有するFKS1の変異体を有することを明らかとした。GRF88についてのものと同様の制限地図を持ち、FKS1遺伝子を持つ株(G.R. Fink)はSC347(J.Hopper)、W303−1B(R.Rothstein)、S288C(R.K.Mortimer)1およびA384A(L.Hartwell)を含む。YFK007についてのものと同様のものを持つ株はYPH1(Phil Hieter)、YFK005、YFK093、DS94(E.Craig)、およびDS95(E.Craig)を含む。
実施例8
FKS1 DNAとの交差−ハイブリダイゼーションによるFKS2の単離
FKS1プローブと交差ハイブリダイズする2.5kbPstIゲノム断片を、サッカロセミス・セレビシエからのゲノムDNAのサザーンブロットで検出した。この断片はゲノムのFKS1領域に由来するものではなかった。ゲノムDNAをBglII+PstIで消化した場合、該断片はサイズが1.7kbであった。ゲノムDNAを株YFK007から単離し、BglII+PstIで消化し、アガロースゲルで分画した。交差ハイブリダイズする断片を含有するゲルの領域を切り出し、QIAEX抽出法(QIAGEN Inc.)を用いてDNAを単離した。抽出したDNAを、プラスミドpGEM−3Zf(+)のポリリンカー中のBamHIおよびPstI部位間に挿入し、連結したDNAをDH11S(Bethesda Research Laboratories)に形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体を、コロニーハイブリダイゼーション(Maniatis、前掲)によって交差ハイブリダイズするDNAの存在についてスクリーニングした。プラスミドDNAを陽性クローンから単離し、KpnI+PstIで消化した。KpnIをBglIIの代わりに使用した。というのは、BglII部位はベクターとの連結の間に失われるからである。FKS1プローブと交差ハイブリダイズする1.7kb断片の存在は、サザーンブロットハイブリダイゼーション分析によって確認した。得られたプラスミドはpFF250と呼ばれる。
1.7kb断片を用いて、プラークハイブリダイゼーション(Maniatis、前掲)によって、S288CからのゲノムDNAのλライブラリー(Stratageneカタログ番号951901)をスクリーニングした。DNAを陽性クローンから単離し、種々の制限酵素で消化し、サザーンブロットハイブリダイゼーションによって、ハイブリダイズする断片を分析した。ハイブリダイズする領域を担う10kbのEcoRI断片をpBluescript II KS(+)(Stratagene)のEcoRI部位に、両方向にて、クローン化してプラスミドpFF334およびpFF336を得た。
1.7kbのBglII−PstIDNAの挿入−欠失突然変異は、pJJ246(J.S. Jonesら、前掲)からの0.8kb PstI TRP1断片を平滑末端連結によってAflIIおよびBbsI部位の間に挿入することによって作成した。2.1kb破壊断片をPstI+KpnIで切り出した。ヘテロ接合fks1−5::HIS3/+およびヘテロ接合trp1/trp1二倍体の染色体への1工程遺伝子置き換えによって、挿入−欠失突然変異を挿入した。Trp+形質転換体からのゲノムDNAをBglII+HindIII+PstIで消化した。破壊されなかった座は1.7kbのハイブリダイズする断片を生じ、他方、挿入−欠失突然変異は1.4kbおよび0.7kb断片を生じる。挿入−欠失突然変異の座においてヘテロ接合体である形質転換体を胞子形成させ、YPADについて細かく調べた。Trp+His-胞子は生きていた。しかしながら、Trp+HIS+胞子は生きていなかった。挿入−欠失突然変異は、かくして、新しい座FKS2を定義し、この座の挿入−欠失突然変異(fks2:TRP1)は合成的にfks1−5::HIS3で致死的である。これらの結果は、FKS1およびFKS2の産物は重複する機能を有し、各々の機能が不活化された場合、遺伝子破壊またはL−733,560でのその遺伝子産物の阻害いずれかによりによって細胞が生存できないことを意味すると解釈される。
実施例9
FKS1遺伝子を含有するプラスミドDNAライブラリーの構築
標準的な方法(RoseおよびBroach,前掲)によって、FKS1遺伝子を含有するゲノムDNAライブラリーをプラスミドYEp24において構築した。
高分子量ゲノムDNAを酵母株YFK093(MY2088、ATCC74055)から調製し、Sau3AIで部分消化し、ショ糖勾配でサイズ分画した。dATPおよびdGTPを用い、10−15kbの範囲のSau3AI−消化DNAをDNA−ポリメラーゼIのクレノウ断片で部分修飾した。
マルチコピーベクター(YEp24)をSalIで消化し、dCTPおよびdTTPを用いて、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片で部分修飾した。修飾反応の後、DNAを1回フェノール抽出し、エタノール沈殿した。部分修飾したゲノム及びベクターDNAを連結し、アンピシリン耐性について選択しつつHB101細胞に形質転換した。
別々の形質転換によって生成したクローンをプールすることにより、2の独立したライブラリーを作成した。1のライブラリーは約34100の形質転換体を含有し、他方、第2のライブラリーは約15000の形質転換体を含有した。これらのライブラリーにおける組換えの頻度は、制限酵素消化によって〜95%であると判断された。
実施例10
R560−1C、すなわちL−733.560に耐性であるサッカロミセス・セレビシエの単離
D.Botstein(1982,Cell,28:145−154)から得られた酵母ゲノムライブラリーを用いるスフェロプラスト法(MYG)によって、株W303−1Aを形質転換した。ウラシル欠失培地で選択した形質転換体をプールし、−80℃で20%グリセロール中に保存した。力価(コロニー形成単位(CFU)/ml)を測定した後、ストックのアリコートを、プレート当たり約5×103CFUにて、0.5μg/mlまたは1.25μg/mlにて半合成エキノカンジンL−733,560を含有するウラシル欠失培地上に延ばした。L−733,560のこの濃度は耐性クローンを選択するのに十分である。27の薬物耐性コロニーを単離した。これらのクローンの耐性表現型を液体MICアッセイで定量した。略言すると、L−733,560を、等容量の液体ウラシル欠失培地中の細胞懸濁液を添加した後に各列の濃度が2倍ずつ増加する16ないし0.03μg/mlの範囲となるように、滅菌マイクロタイタープレートのウェルに系列希釈した。30℃における24時間後、プレートを600nmの波長にて分光光度計で読み取り、(薬物無しの対照ウェルに対する)各ウェルにおける対照増殖に対する百分率を計算した。得られた用量依存性曲線を用いて、親株に対する耐性を判断した。1のクローンは親株よりも16−32倍耐性であり;他のものは2ないし4倍耐性であった。最も耐性のクローンR560−1をさらに特性解析した。
この株はゲノムライブラリーから形質転換体として単離されたので、耐性はR560−1に含有されるプラスミドに存在する遺伝子によるものと予測された。これをテストするために、5−フルオロオロチン酸法(MYG)での選択によって株からプラスミドをキュアリングした。プラスミドおよび存在するURA3遺伝子の喪失は細胞を5−フルオロオロチン酸に耐性とし、ウラシル栄養要求性はウラシル欠失培地での非増殖によって確認した。驚くべきことに、キュアリングした誘導体(R560−1C)の薬物耐性はプラスミドの喪失によって変化しなかった。この結果は、R560−1Cは株W303−1Aの自然発生エキノカンジン耐性突然変異体であることを示唆する。R560−1Cを、液体MICアッセイにて、L−688,786、L−646,991(シロフンギン)およびL−687,781(パプラカンジン)のごとき他のβ−グルカンシンターゼ阻害剤で攻撃した。結果は、耐性表現型がL−733,560に特異的でないが、1,3−β−Dグルカンシンターゼの構造的に関連ないし非関連の阻害剤を含むことを示す。R560−1Cの表現型が単一の突然変異の結果であるか否かを判断するために、突然変異体および野生型株を交雑することによって形成された二倍体で四分子分析を行った。R560−1Cを野生型株W303−1Bに接合させ、胞子形成させ、詳細に調べ、L−733,560に対する感受性を液体MICアッセイによって定量した。薬物耐性はこれらの四倍体内で2:2に分離し、これは、耐性が遺伝子1個のみにおける突然変異によることを示す。この突然変異をfks1−2と呼ぶ。
実施例11
R560−1Cにおけるfks1−2突然変異の相補によるFKS1遺伝子のクローニング
R560−1Cの遺伝学的分析からの情報を用い、fks1−2の野生型対立遺伝子をクローン化するためのスクリーニングを工夫した。R560−1Cを野生型株W303−1Bに接合させた場合、ヘテロ接合性二倍体はL−733,560に対する感受性は中程度であり、これは、野生型FKS1遺伝子の単一コピーは突然変異体をエキノカンジンに対してより感受性とするであろうことを示す。サッカロミセス・セレビシエDNAのライブラリーをR560−1Cにクローニングすることによって、L−733,560に対するプラスミド依存性の中程度の感受性につき形質転換体をスクリーニングできる。ブロスマイクロ希釈およびレプリカ平板培養法により、4μg/mlのL−733,560において、ヘテロ接合性二倍体とR560−1Cとが区別された。
実施例9のサッカロミセス・セレビシエの全ゲノムライブラリーを、スフェロプラスト法(Maniatis,前掲)によってサッカロミセス・セレビシエR560−1Cに形質転換した。Ura+クローンをウラシル欠失培地で選択し、プレートから掻き取り、プールし、20%グリセロール中、−80℃で凍結保存した。ライブラリーのアリコートを200−300CFU/プレートにてウラシル欠失培地に平板培養した。30℃における24時間のインキュベーションの後、各プレート上のコロニーを、1)4μg/mlL−733,560を補足したウラシル欠失培地;および2)ウラシル欠失培地プレートにレプリカ平板培養した。薬物補足プレートで貧弱に増殖し、および無薬物プレートで強力に増殖することによってクローンを同定した。3つのさらなるテストを用いて、いずれの可能なクローンが真に薬物耐性であるかを確立した。1のテストでは、推定クローンを、マイクロタイタープレート中の液体ウラシル欠失培地に接種し、30℃で24時間増殖させた。Dynatech接種器を用い、各ウェルからの細胞を、1)4μg/mlL−733,560を補足したウラシル欠失培地;および2)ウラシル欠失培地に接種した。増殖を分光光度法により定量し、薬物補足培地で貧弱に増殖するものを陽性に評点した。薬物耐性を見る第2のテストにおいて、4μg/mlL−733,560を補足したウラシル欠失培地プレートにコロニーを直接パッチし、30℃における24時間後に貧弱に増殖するものを評点した。第3のアッセイにおいては、推定クローンをウラシル欠失培地プレートにパッチし、30℃で24時間増殖させ、次いで、10μg/mlL−733,560を補足したウラシル欠失培地にレプリカ平板培養した。増殖は30℃における24時間後に評点した。
9つの推定クローンが全てのアッセイで中程度の薬物耐性を示し陽性であった。1の株(S277)は野生型株とほとんど同程度にL−733,560に対して感受性であった。クローンS277の薬物感受性を定量するために、液体MICアッセイを行った。薬物感受性クローン(S277)は突然変異体(R560−1C)よりもかなり感受性であり、野生型株(W303−1A)とほとんど同程度に感受性であった。S277の中程度の薬物感受性が、それが含有するクローン化遺伝子によるものであることを証明するために、5−フルオロオロチン酸法によって該プラスミドを追い出した。MICアッセイは、プラスミドの喪失の結果、L−733,560に対する中程度の感受性が逆転し、プラスミドを失ったクローンは元の耐性突然変異体(R560−1C)と同程度に薬物耐性となった。最後に、S277から単離したプラスミドDNAでのR560−1Cの再形質転換により、Ura+クローンが得られ、これはL−733,560に対する中程度の感受性において元の薬物感受性クローン(S277)と同一であった。
プラスミドDNAを薬物感受性クローン(S277)から単離し、Maniatisに記載されている方法によって大腸菌に形質転換した。異なるサイズのインサートを持つ2のプラスミドを単離し、制限エンドヌクレアーゼマッピングによって解析した;1つ(pJAM53)は14kbのインサートを有し、第2のものは(pJAM54)は8kbのインサートを有していた。制限マッピングは、pJAM54におけるインサートがpJAM53の14kb断片内に完全に含まれることを示した。両プラスミドは、それらを形質転換によって株R560−1Cに導入した場合、液体MICアッセイで判断すると、L−733,560に対する中程度の感受性を付与する。
実施例12
fks1−1突然変異体におけるカルシニューリンの過剰発現
カルシニューリン遺伝子を含有する個々のファージクローンを、PCR(Foorら, Nature,360:682−684(1992))により酵母ゲノムDNAから合成したプローブとのハイブリダイゼーションによって、λ−DASH(Stratageneカタログ番号943901)における株S288Cの酵母ゲノムDNAライブラリーから同定した。CNA2およびCNB1遺伝子は、各々、単離されたファージクローン内の4.3kb BglIIおよび1.3kb EcoRV DNAにマッピングされた。CNB1断片をpBluescriptIIKS(+)のSmaI部位にlacZ向きに挿入し、BamHI−EcoRI断片として、TRP1−選択可能マルチコピー酵母シャトルベクターYEplac112(Giets及びSugino,1988,前掲)に移し、プラスミドYEp−Bを得た。CNA2断片をYEp−BのBamHI部位に挿入してYEp−A2−Bを得た。このプラスミドをエレクトロポレーションによってfks1−1株YFK531−5Aに形質転換してYFK798を得た。
実施例13
A.グルカンシンターゼ阻害剤についてのスクリーニングのための、fks1−1突然変異株YFK532−7Cの使用
株YFK532−7C、fks1−1突然変異体は、株YFK007、FKS1野生型株よりもFK506およびCsA(公知のカルシニューリン阻害剤)に対して少なくとも1000倍感受性である。YFK007およびYFK532−7Cはカルシニューリン阻害剤につきスクリーニングするのに使用できる。
また、株YFK532−7Cは株YFK007よりも、エキノカンジンおよびパプラカンジンの両クラスのグルカンシンターゼ阻害剤に対して8−10倍感受性である。従って、これらの株はグルカンシンターゼ阻害剤につきスクリーニングするのに使用できる。
カルシニューリン阻害剤を同定するためにカウンタースクリーニング株を工夫した。fks1−1突然変異体(株YFK798)における酵母カルシニューリンの過剰発現はこれらの最も一般的なものを構成する。いずれの阻害剤標的化カルシニューリンも、ゾーン径の減少またはゾーン明確性の減少のいずれか(しばしば両者)を示す。グルカンシンターゼ阻害剤はいずれの効果も示さず、かくして、カルシニューリン阻害剤から区別できる。
グルカンシンターゼ阻害剤として陽性のものを知るために、カルシニューリン阻害剤について記載したのと同様に、株R560−1Cおよびその親W303−1Aでのスクリーニングを工夫した。R560−1C−対−W303−1Aについての、ゾーンの完全な喪失、またはサイズの顕著な減少はグルカンシンターゼ阻害性を示す。この株の対を用いた場合、カルシニューリン阻害剤ではゾーンは観察されない。
B.実験室手法の記載
最初のスクリーニングは、FKS1野生型株(YFK007)のそれに対するfks1−1酵母突然変異体(YFK532−7C、FK506およびCsAに対して高感受性)の感受性を比較する、2つのプレートのゾーンのサイズ差測定よりなる。220rpmで振盪しつつ、各株をYPAD/10mM CaCl2培地中、28−30℃で(中期または後期対数相まで)増殖させる。培養を水で1:1希釈し、希釈物のOD値を(同様に1:10に水中に希釈したYPAD/10mM CaCl2のブランクに対して)600nmで測定する。OD値に10を乗じて培養のODを見積もる。1.5%寒天を含有し、水浴で45℃に平衡化したYPAD/10mM CaCl2培地の一部(100ml)に、寒天中の最終細胞密度が0.015のOD値となるように(すなわち、3×106cfu/ml;試料計算は後記する)培養を接種する。接種した寒天を500cm2Nuncプレートに注ぐ。寒天プレートが固形化してから、発酵エキスのごときテスト化合物を含有する試料の10μLアリコートを、水、100%メタノールまたはエタノール、または50%までのDMSOに溶解させ、11×8のアレイにセットした2つのプレートの各メンバー上に置く。
該プレートを28−30℃で48時間インキュベートする。ゾーンの直径を最外縁まで読み取り、mmで記録する。ゾーンの明確性を、明瞭(表示無し)、ぼんやりした(h)、非常にぼんやりした(vh)として記録する。非常にぼんやりしたゾーンは、アッセイ皿と暗色壁との間に置いた、上方からの光でプレートを見ることによって最も良く観察される。
標準
1.L−679,934(FK506)、メタノールに溶解させる。
2.L−644,588(サイクロスポリンA)(Sandimmune)は100mg/mlの濃度でCremaphorベヒクル中にて販売されている。希釈は、各工程で激しく撹拌しつつ50%メタノールまたは50%エタノール中になすことができる。該cremaphorはこれらの希釈においてもひどく濁ったままであるが、サイクロスポリンは生物学的に利用可能である。
3.L−733,560、メタノールに溶解させる。
4.L−687,781(ジヒドロキシパプラカンジン)、メタノールに溶解させる。
5.L−636,947(アクレアシン)、メタノールに溶解させる。全ての標準は−20℃で保存する。
接種物希釈の試料計算
一晩の酵母培養は7ないし10の範囲のOD値を有するであろう(すなわち、1:10希釈につき0.7ないし1.0)。8.9のODを持つ培養を1:593に希釈して0.015のODを持つ懸濁液を得る。従って、YPAD/10mM CaCl2寒天の一部100mlに培養169mlで接種する。
一次選択の結果
YFK007よりもYFK532−7Cの上で少なくとも2mm大きいゾーンは、カルシニューリンまたはグルカンシンターゼ阻害剤のいずれかの存在を示す。
YFK532−7Cで観察されたものと比較してYFK798では減少し、ぼんやりとなるゾーンは、未知のものがカルシニューリン阻害剤であることを示す。
W303−1Aと比較してR560−1Cで減少したゾーンは、グルカンシンターゼ阻害剤が存在することを示す。
実施例14
グルカンシンターゼアッセイ
既知のようにして(Kang及びCabib, PNAS,83:58−8−5812,1986)対数相まで増殖された突然変異体および野生型細胞から無細胞抽出物を調製した。ガラスビーズとホネジナイズした後、非破壊細胞および細胞夾雑物を低速遠心(5分間の1000×g)によって除去した。上清液体を100000×gで60分間遠心し、ペレットを、0.05Mリン酸カリウム(pH7.5)、0.5mM DTT、および1.0mM PMSFを含有する緩衝液(湿潤細胞1g当たり)2.5mlで洗浄した。洗浄したペレットを、5%グリセロールを含有する同緩衝液に再懸濁した。これを、キチンおよびグルカンシンターゼ酵素活性双方を含有するミクロソーム膜源として供した。合計容量69μL中のTEK緩衝液(125mM 塩酸トリス、pH7.5、31mM KF、および1mM EDTA)、25%PBS、pH7.0、3.31μM GTP−γ−S、および0.25%BSAを包含するカクテルI中の35μg蛋白質を、合計容量11μL中の4単位のα−アミラーゼ、25μg UDP−グルコース、および1μCiのUDP−3H−グルコースを含むカクテルIIと混合することによって標準1,3−β−Dグルカンシンターゼ反応を開始した。30℃における150分間のインキュベーションの後、UDP−14C−グルコースのグルカンへの取り込みを、トリクロロ酢酸での沈殿後に測定した。
実施例15
キチンシンターゼアッセイ
前記抽出物125μgをトリプシン活性化し、0.5Mトリス、pH7.5、40mM MgCl2、320μM GlcNAc、14C−UDP−GlcNAc基質ミックス、および0.8%ジギトニンを含む等容量(50μL)のキチンシンターゼ反応カクテルと混合した。30℃におけるインキュベーションの30分後、取り込まれた14C−グルコースを10%トリクロロ酢酸で沈殿させ、ワットマンのガラスマイクロファイバーGF/Aディスク上に収集し、計数した。
実施例16
エキノカンジン−耐性突然変異体MS10(MY2114)およびMS14(MY2145)の単離
MS10およびMS14を2つの異なる手法でエキノカンジン耐性突然変異体として単離した。
第1の実験において、半合成エキノカンジンL−733,560の約45μg(1.12μg/ml溶液の40mL)を、YNBD固形培地(YNBD培地はアミノ酸欠失を除きSC培地と同じ)を含有する4つのプレートの各々の表面に延ばした。該溶液を風乾し、YNBDブロス上で一晩新たに増殖させたサッカロミセス・セレビシエ株X2180−1Aの1×106細胞を各プレート上に平板培養した。28℃における4日間の増殖の後、L−733,560の存在下でも増殖できる3つのコロニーをエキノカンジン−耐性突然変異体として選別した。これらの突然変異体のうちの1つをMS14と命名した。
第2の実験は以下の修正をしつつ前記したごとくに行った:使用したL−733,560の濃度は約22.5μg/プレートであった。融解し、次いで50℃まで冷却したYNBD培地20mlに阻害剤を添加した。4つのプレートを調製し;次いで、1×106細胞のサッカロミセス・セレビシエ株X2180−1Aを各プレートの表面に広げた。28℃における4日間の増殖の後、12の耐性コロニーを単離した。これらの突然変異体のうちの1つをMS10と命名した。
これらの実験に基づくと、突然変異体MS14の突然変異頻度は1.3×10-6であり、他方、突然変異体MS10の突然変異頻度は3×10-6である。
実施例17
MS10およびMS突然変異体の解析
MS10およびMS14は、細胞壁、膜、ステロール、および蛋白質合成に影響する30以上の阻害剤のパネルに対してテストした場合、多重薬物耐性は示さなかった。各MS10およびMS14突然変異を担持する酵母株MY2144およびMY2145の細胞をYPADおよびSC培地中で一晩増殖させた。一晩の培養から、細胞を同一培地中で1:10希釈し、さらに4〜6時間増殖させた。薬物耐性/感受性テストは、固形YPADまたはSC培地20mlおよび3×106細胞を含有するプレート上のディスク拡散アッセイによって行った。プレートに注ぐ前に50℃まで冷却した予め融解させた培地に細胞を添加した。異なる薬物を含有する滅菌フィルターディスクをプレートの表面に置き、続いて28℃で1〜2日間インキュベーションした。増殖阻止のゾーンのサイズを薬物耐性/感受性の相対的指標として測定した。MS14はキチンシンターゼ阻害剤ニッコマイシンZに対して高感受性であって、エキノカンジンL−733,560に対して耐性である。
MS10およびMS14における突然変異の優性/劣性の関係は、ディスク拡散およびブロスマイクロ希釈アッセイ双方を用い、半数体および二倍体細胞の薬物耐性表現型を比較することによって判断した。これらのアッセイの結果は、MS14細胞のニッコマイシンZ−高感受性は劣性であり、他方、エキノカンジン耐性表現型は半優性であることを示す。対照的に、MS10のエキノカンジン−耐性表現型は優性である。
以下の表におけるデータは、各突然変異体およびその親X2180−1Aの増殖を阻止するのに必要な種々の薬物の最小濃度である。
実施例18
突然変異体グルカンおよびキチンシンターゼ酵素活性
細胞膜に関連する粗製酵素調製物を、グルカンおよびキチンシンターゼ活性につきテストした。L−733,560およびパプラカンジンに対する突然変異体1,3−β−Dグルカンシンターゼの感受性を、ニッコマイシンZに対するキチンシンターゼの感受性と共にテストした。
これらの実験の結果は、MS10およびMS14が、L−733,560に対しては高度に耐性であるが、パプラカンジンに対してはかろうじて耐性の劣る1,3−β−Dグルカンシンターゼと同等であることを明らかとした。キチンシンターゼはニッコマイシンZに対する感受性により影響されない。以下の表のデータは、各々、1,3−β−Dグルカンシンターゼおよびキチンシンターゼアッセイにおける、グルカンシンターゼ阻害剤(L−733,560およびパプラカンジン)およびキチンシンターゼ阻害剤(ニッコマイシンZ)についてのIC50を示す。等量の膜蛋白質を各反応を開始させるのに使用した。
実施例19
ニッコマイシンZ高感受性を相補する遺伝子のクローニング
遺伝的交雑を、MS14(エキノカンジン−耐性およびニッコマイシンZ−感受性)および野生型株GG100−14D(エキノカンジン−感受性およびニッコマイシンZ−耐性)の間で実施した。得られた二倍体細胞を胞子形成させ、四倍体を詳細に比べ、続いて減数分裂分離体の表現型および薬物耐性分析を行った。結果は、エキノカンジン−耐性およびニッコマイシンZ高感受性の2の表現型が共に分離することを示し、これは遺伝子一つのみが2つの表現型の原因であることを示唆する。
株D1−22Cは前記交雑からの減数分裂分離体である。この株はエキノカンジン−耐性、ニッコマイシンZ−高感受性であって、Ura-である。株D1−22Cからの細胞を、動原体をベースとしたベクターYCp50(M.Rose、前掲)中に構築した酵母DNAゲノムライブラリーで形質転換した。これは、実施例6で使用したのと同一のDNAライブラリーである。ウラシル−原栄養体およびニッコマイシンZ−高感受性についての二重選択は、形質転換体をニッコマイシンZ75μg/mlを含有するUra欠失プレート上で平板培養することによって行った。ウラシルの非存在下であってニッコマイシンZの存在下で増殖できるコロニーのみが増殖する。従って、このアッセイは、ニッコマイシンZ高感受性表現型を相補できるDNA断片を担持する組換えプラスミドを受容した形質転換体につき選択したこととなる。この方式によって単離したウラシル−原栄養体でニッコマイシンZ−耐性のコロニー20のうち、3つのクローンはエキノカンジンL−733,560に対しても感受性であった。それらの3つの形質転換体のうち1つは9−3Bと命名した株であり、相補する遺伝子をもつプラスミドを含有する。この株中のプラスミドをpMS14と命名した。というのは、それは形質転換した突然変異体細胞(株D1−22C)におけるMS14表現型を相補するからである。pMS14プラスミドを酵母細胞(クローン9−3B)からレスキューし、大腸菌で増殖させ、株D1−22Cに再形質転換した。3つの形質転換体を、ブロスマイクロ希釈アッセイによって、L−733,560およびニッコマイシンZに対する耐性/感受性につきテストした。テストした3つの形質転換体において、エキノカンジン耐性およびニッコマイシンZ感受性は逆転した。
実施例20
MS10およびMS14における突然変異間の対立関係
MS10をGG100−14Dと交雑させることによって、MS10からのエキノカンジン−耐性突然変異を担うウラシル栄養要求株を構築した。エキノカンジン−耐性減数分裂分離体を単一コピー組換えプラスミドpMS14で形質転換し、形質転換体を、ブロスマイクロ希釈アッセイによってエキノカンジンに対する感受性につきテストした。テストしたすべての3つの形質転換体はL−733,560に対する感受性を示した。対照的に、対照プラスミドYCp50で形質転換した突然変異体細胞はエキノカンジン−耐性のままであった。かくして、MS14からの突然変異のエキノカンジン耐性およびニッコマイシン感受性表現型双方を相補する組換えプラスミドpMS14は、MS10のエキノカンジン耐性表現型を相補する。この結果は、2の突然変異が同一遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を表すことを示唆する。
実施例21
A.pJAM54はMS10およびMS14からの突然変異を相補する。
MS10またはMS14いずれかからの突然変異を含有する酵母細胞を、マルチコピープラスミドpJAM54(FKS1を含有)で形質転換した。pMS14と同様に、pJAM54は、MS14からの突然変異によってもたらされたエキノカンジン耐性およびニッコマイシン感受性の2の表現型を相補した。また、pJAM54は株MS10のエキノカンジン耐性表現型を相補した。
B.pMS14およびpJAM54の間の交差−ハイブリダイゼーション
プラスミドpJAM54(FKS1を含有するマルチコピープラスミド)および単一コピープラスミドpMS14を制限酵素で消化し、FKS1内部断片をハイブリダイゼーションプローブとして使用してサザーンハイブリダイゼーション分析によって分析した。サザーンおよび制限酵素分析は、pJAM54およびpMS14は共に同一の遺伝子、すなわちFKS1を含有することを示した。MS10における突然変異は、従って、fks1−3といい、MS14における突然変異はfks1−4という。
実施例22
クリプトコッカス・ネオフォルマンスからのFKS1およびFKS2相同体の単離
FKS1相同体がC. neoformansB−3502染色体に存在するか否かを判断するために、この株からの全ゲノムDNAをHindIIIで消化し、断片を0.8%アガロースゲル上で分離した。該ゲルを、サザーンの方法によってpJAM54からのAflII−XhoI断片でプローブし、高ストリンジェント条件下で洗浄した。長さが約15kbの断片がオートラジオグラムで見られた。この断片はC. neoformansB−3502におけるFKS1相同体の全てまたは一部を恐らく含有する。
同様のサザーンブロットハイブリダイゼーション実験を、FKS2断片をプローブとして行う。
実質的にEdmanら(1990,Mol,Cell Biol.,10(9):4538−4544)の方法に従って、C. neoformansB−3502からのポリ(A)+RNAのファジミドcDNAライブラリーを構築する。大腸菌XL−1Bをファジミドライブラリーおよびヘルパーファージ(R408)で共感染させ、寒天プレート当たり約500プラークが形成されるようにする。プラークをニトロセルロースに持ち上げ、FKS1の断片をプローブとして標準的な方法によってプローブする。洗浄の後、フィルターをフイルムに暴露し、オートラジオグラムを用いて、FKS1にハイブリダイズする特異的ファジミドクローンを同定する。次いで、プラスミドDNAをcDNAトランスフェクト体から単離し、増殖させ、制限エンドヌクレアーゼでの消化によって分析する。
FKS2を単離するために、同様の実験をFKS2プローブで行う。
実施例23
ニューモシスティス・カリニからのFKS1およびFKS2相同体の単離
P.carinii−感染雄スプレイグ−ドーレイ・ラットからの全ラット肺をBrinkmannホモゲナイザーでホモゲナイズし、DNAを文献記載のようにして単離した(P.A.Liberatorら,J.Clin.Micro.,30(11):2968−2974)。精製したDNAの2〜5μgをEcoRIのごとき制限エンドヌクレアーゼで消化し、断片をアガロースゲル上で分離する。DNAをニトロセルロースのごとき固体支持体に移し、FKS1に対する相同体を持つ断片につきサザーン(Southern,E.M.1975,J.Mol.Biol.,98:503−517)の方法によってプローブした。ストリンジェンシイを弱めブロットを洗浄することによって、弱い相同遺伝子を同定できる。
同様のサザーンブロットハイブリダイゼーション実験を、FKS2断片をプローブとして行う。
ハイブリダイズする断片をサザーンブロットで可視化されるアガロースゲルの領域から、ミニ−ライブラリーを調製することによって、P.cariniiFKS1相同体をクローン化する。フェノール:CHCl3抽出して汚染物を除去した後、該ゲルのこの領域からのDNA断片を適当なプラスミドベクターに連結し、大腸菌に形質転換した。ミニ−ライブラリーを担持する大腸菌を寒天プレート上に広げ、in situコロニー溶解によってFKS1に相同のインサートにつきプローブする。個々の形質転換体からのDNAをニトロセルロースに移し、放射能標識FKS1 DNA断片にハイブリダイズさせ、洗浄し、フィルムに暴露させる。FKS1に対する相同性を持つインサートを含有するコロニーをフィルム上で可視化し;次いで、プラスミドDNAを陽性クローンから単離し、増殖させ、分析する。標準的な方法によるDNA配列分析を用いて、FKS1に対する相同性の程度を確立し、機能的相同性をFKS1につき破壊されたサッカロミセス・セレビシエにおける発現によって証明することができる。
FKS2相同体を単離するために、同様の実験をFKS2プローブで行う。
実施例24
A.FKS1およびFKS2のアスペルギルス相同体のクローニング
当該分野で公知の方法(Tangら,(1992)Mol.Microbiol.,6:1663−1671)によって、Glasgow野生型としても公知のA.nidulans FGSCA4、およびA.nidulans MF5668からゲノムDNAを単離した。染色体DNAをいくつかの制限酵素で完全に切断し、消化したDNAの断片を電気泳動によって分離した。A.fumigatusDNAを、BioRad製Zeta−Probe GT第四級アミン誘導ナイロン膜に移し、A.nidulansDNAの断片をNytranナイロン膜(S&S; Southern,前掲)に移した。A.nidulansDNAの二連ブロットを調製した。全てのブロットを、ランダムプライミング(Feinberg及びVogelstein,前掲)によって放射能標識した32Pプローブとハイブリダイズさせた。A.fumigatusブロットについてのプローブは、FKS1遺伝子を含有するpJAM54から単離した放射能標識した1.25kb SalI−ClaI断片であった。また、1つのA.nidulansブロットをこのプローブにハイブリダイズさせ、他のA.nidulansブロットを、FKS2遺伝子の一部を含有するpFF250からの放射能標識した1.7kb KpnI−PstI断片にハイブリダイズさせた。該ブロットをストリンジェントな条件下で一晩ハイブリダイズさせ、ストリンジェントな方法(Maniatisら,前掲)によって洗浄した。次いで、該ブロットをXAR−5フィルムに暴露し、常法(Laskey及びMills(1977)FEBS Letters,82:314−316)によって現像した。両プローブはテストした各アスペルギルスDNAの断片にハイブリダイズした。該ブロットは、A.nidulansゲノムDNAがFKS1遺伝子からのサッカロミセス・セレビシエ1.25kb SalI−ClaI断片およびFKS2遺伝子からの1.7kb KpnI−PstI断片の双方に対して相同であることを示す。また、A.fumigatusDNAはFKS1遺伝子からのサッカロミセス・セレビシエ1.25kb SalI−ClaI断片に相同である。
A.nidulans相同体をクローン化するために、A.nidulansゲノムDNAの2つのコスミドライブラリーをFungal Genetics Stock Centerから得た。コスミドベクターはDNAをバクテリオファージλ粒子にパッケージするのに必要な「cos」配列を含有する修飾されたプラスミドである(Maniatisら,前掲)。また、コスミドは複製起点を含有し、標準的な形質転換方法によって薬物耐性マーカーを大腸菌に導入でき、プラスミドとして増殖する。cos配列はベクターに連結された外来性DNAの35−ないし45−kb断片がλファージ粒子にパッケージされ、引き続いて大腸菌の感染に際して環化されるのを可能とする。2つの完全なコスミドライブラリーを、Brodyら(Nucleic Acids Research,19:3105−3109)によるベクターLORIST2およびpWE15中で構築した。コスミドpWE15はColE1の複製起点を含有し、他方、LORIST2はバクテリオファージλの複製起点を含有する。1のベクターで不安定なDNA配列は、しばしば、他において安定である(Evansら,(1987),Methods In Enzymol.,Berger及びKimmel編,Academic Press,New York,152巻:604−610)。コスミドライブラリーからのクローンをNytran膜に移し、当該分野で公知の方法によってスクリーニングする(Maniatisら)。プローブは前記したFKS1およびFKS2遺伝子からの断片である。もしFKS1およびFKS2相同体がコスミドライブラリーに存在しないか、あるいは配列が不安定であれば、別のライブラリーをスクリーニングする。もし相同体が既に存在するライブラリーに存在しないか、あるいは遺伝子の一部のみが単離されれば、製造業者および当該分野の方法(Maniatis)から得られるクローニングキットを用い、A.nidulansゲノムSau3AI部分ライブラリーをStratagene Vector Lambda Dash中で構築する。
同様の方法を用いて、FKS1およびFKS2のA.fumigatus相同体をクローン化する。
B.交差ハイブリダイゼーションによるサッカロミセス・セレビシエFKS1およびFKS2のA.nidulans相同体(fksA)の単離
fksAはFKS1およびFSK2のアスペルギルス・ニデュランスについての表示である。DNAレベルの相同性がサッカロミセス・セレビシエFKS1およびFKS2遺伝子およびA.nidulansのゲノムDNAの間で示された。この相同性はアスペルギルス相同体をクローン化する戦略の基礎をなす。
StratageneコスミドベクターpWE15(Brodyら,1991, Nucleic Acids Research,19:3105−3109)中に構築したA.nidulansゲノムライブラリーはFungal Genetics Stock Centerから得た。このコスミドベクターは30のマイクロタイタープレートに分割された大腸菌形質転換体を含有する2832の個々のコスミドよりなる。1488の形質転換体を、コロニーブロットとしてZeta−Probe GT第四級アミン誘導体ナイロン膜(BioRad製)に移した。
マイクロタイタープレート(96コロニー/プレート;1ブロット/プレート)のコロニーブロットは以下のごとくに作成した:個々のコスミドを、マイクロタイター皿中、LBブロス(Maniatis,前掲)中で一晩増殖させ、引き続いてアンピシリン1ml当たり50μgを含有するLB寒天に接種した。増殖の7時間後、2のコロニーリフトを各プレートから作成し、フィルターを新しいプレートに移した。コロニーをさらに4時間増殖させ、フィルターに固定した。フィルターを0.5N NaOHで処理し、1MトリスpH7.5/7.5M NaClで中和し、1M トリスpH7.5/1.5M NaCl/0.2%SDSで洗浄し、1M トリスpH7.5/1.5M NaClで再度洗浄した。二連ブロットを、pJAM54から単離した放射能標識した(32P)4.0kb KpnI FKS1断片およびpFF250から単離した1.7kb PstI−KpnI断片とハイブリダイズさせた。全ての32Pプローブはランダムプライミング(Feinberg及びVogelstein,前掲)によって放射能標識した。ブロットは、製造業者BioRadによってZeta膜につき推奨される条件を用いてハイブリダイズさせた。1のコロニーをまずFKS2プローブのみで検出した。このコスミドをpGS1と命名し、FKS1およびFKS2遺伝子に対するハイブリダイゼーションを引き続いて精製コスミドDNAでのDNAスロットブロット分析によって確認した。コスミドDNAをLB培地で10時間増殖させた培養から単離し、Qiagenプラスミドmaxiキットで精製した。製造業者(Schleicher およびSchuell)の指示に従い、MinifoldIIスロットブロット装置を用い、各試料1.5μgをZeta−Probe GT第四級アミン誘導体化ナイロン膜(BioRad)に適用することによって、二連DNAスロットブロットを調製した。試料はpGS1 DNA、ベクターpWE15 DNA、およびハイブリダイズしないコスミドからのDNAであった。スロットブロットをコロニーブロットについて前記したごとくにハイブリダイズさせた。FKS1およびFKS2プローブは共にpGS1 DNAに特異的にハイブリダイズしたが、コスミドベクターpWE15からのDNAおよびハイブリダイズしないコロニーから単離したDNAにはハイブリダイズしなかった。
コスミドpGS1のインサートは、制限エンドヌクレアーゼ消化およびアガロースゲル電気泳動によって〜30kbであると見積もられ、NotIまたはEcoRIいずれかでの消化によってベクターから切り出された。FKS2に対する相同性を持つpGS1からの特異的制限断片は、同一ハイブリダイゼーション条件を用い、サザーンブロットハイブリダイゼーションによって同定した。FKS2にハイブリダイズした11.0kb EcoRI断片をベクターBluescript(Stratagene)にサブクローンして、サブクローンpGS3を構築した。制限地図は、制限エンドヌクレアーゼ消化および制限断片のアガロースゲル電気泳動によって決定し、図3に示す。FKS2に相同なpGS3の領域はFKS2プローブへの制限断片のブロットのサザーンハイブリダイゼーションによって位置決定した。568bp PstI−EcoRI断片はハイブリダイズする領域の内部にあり、以下の証拠に基づきfksAに特異的であると判断された:左端に相当する1.7kb PstI断片および右端に相当する2.4kb EcoRV断片が、FKS2にハイブリダイズすること。
いくつかのゲノムライブラリーは非隣接制限断片が連結されて得られた再配置された遺伝子またはDNAを含有するので、サッカロミセス・セレビシエFKS2遺伝子および相同プローブでのサザーンブロットハイブリダイゼーションを行って、コスミドpGS1およびその誘導体pGS3がA.nidulansゲノムに関して共直線的であるか否かを判断した。相同プローブはpGS2から単離した568bp fksA特異的PstI−EcoRV断片であった。プラスミドpGS2は、pGS1の6.0kb SalI断片をBluescript(Stratagene)にサブクローニングすることによって構築した。A.nidulansゲノムDNAをSalI、EcoRI、EcoRV、KpnIおよびEcoRI/SstIIで消化した。ハイブリダイゼーションデータは、ゲノムDNAの適当なサイズの制限断片が内部PstI−EcoRV断片のEcoRV部位に近い酵素で見い出されるが、このEcoRV部位よりも遠位の制限部位に対応するゲノムDNAの制限断片は見い出されないことを示した。コスミドpGS1およびその誘導体pGS3は図3に示したpGS3の制限地図の第2のEcoRV部位に対して左側のEcoRI部位からのA.nidulansゲノムと共直線的であった。
A.nidulans fksA遺伝子の全長を含有するコスミドクローンが単離されたことの確認のために、もう1つのライブラリーをスクリーニングした。ベクターpLORIST2(Brodyら,前掲)中に構築したA.nidulansコスミドライブラリーは、Fungal Genetics Stock Centerから得た。プローブをA.nidulans内部568bp PstI−EcoRV断片としたことを除き、該ライブラリーをpGS1の単離につき前記したのと全く同様にスクリーニングした。スクリーニングした2880のコスミドのうち、1つのコスミドクローンp11G12が該プローブに強くハイブリダイズした。精製したコスミドDNAでのDNAスロットブロット分析により、A.nidulans相同性プローブならびにFKS2プローブへのハイブリダイゼーションが確認された。相同プローブはpGS4から単離した568bp PstI−EcoRV断片であった。プラスミドpGS4は、pGS3の568bp PstI−EcoRV断片をBluescriptへサブクローニングすることによって構築した。p11G12とA.nidulansゲノムDNAとの共直線性は、FKS2プローブでのサザーンブロットハイブリダイゼーションによって決定した。テストした制限酵素はEcoRV−BglII、EcoRV−KpnI、EcoRV−SalI、PstI、SpeI、およびXbaIであった。p11G12で得た制限断片はA.nidulansゲノムDNAで得たものに対応した。このデータは、fksAに特異的な568bp PstI−EcoRV断片の両側には、該ゲノムと共直線的な〜7.0kbDNAがあるのを示す。FKS2にハイブリダイズし、該ゲノムと共直線的であるp11G12の11.0kb XbaI断片を、BluescriptにサブクローニングしてpGS6を構築した。制限地図は、制限エンドヌクレアーゼ消化および制限断片のアガロースゲル電気泳動によって決定し、図4に示す。
DNA配列は、United States Biochemical製「Sequenase」キットを用い、Sangerら(Proc. Natl. Acad. Sci.,74;5463)の方法によるか、あるいは「Prism Ready Reaction DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing Kit」と共にApplied Biosystems Model 373A DNA配列決定システムを用いて決定した。鋳型DNAは以下のプラスミド、pGS4、pGS7、pGS6、pGS15、pGS16、pGS17、pGS18、pGS19、pGS20、およびpGS21から得た。プラスミドpGS7は、pGS6の11.0kb XbaIインサートをpBR322にサブクローニングすることによって構築した。pGS6の3.6kb KpnI断片および2.2kb XhoI断片をpGEM7にサブクローニングして、各々、pGS15およびpGS16を構築した。Gewainら(1992,Gene,119:149)が記載した方法を用い、Sau3A部分消化によってネストされた欠失のセットをpGS15中に構築した。略言すれば、プラスミドpGS15を、このベクターのマルチクローニング部位にあるBamHIで直線化し、DNAを沈殿させ、再懸濁した。反応混合物15μl中の1μgのアリコートを1×Sau3A緩衝液(New England Biolabs)中で部分消化に付した。酵素を貯蔵緩衝液(50mM KCl、10mM トリスHCl、pH7.4、0.1mM EDTA、1mM DTT、200mg/ml BSA、50%グリセロール)中、0.75単位/μlに希釈し、貯蔵緩衝液中にさらに8回、順次2倍に希釈した。各希釈ならびに未希釈対照の1μlを、14μlを含有する各試験管に添加し、混合物を37℃で30分間インキュベートした。50mM EDTAを含有する停止緩衝液3.4μlの添加によって反応を停止し、65℃で20分間加熱した。DNAを電気泳動に付し、適当なサイズの断片をQiagen Qiaquickプロトコルでゲル精製した。断片を定量し、5μlの連結反応物当たりDNA25ngで再連結した。4つの最大断片を含有する連結物を沈殿させ、5μl反応物中、Csp451で消化した。Csp451部位はベクターのBamHIおよびKpnI部位の間にある。この消化は欠失を含有しない汚染断片を全て除去するのに必要であった。全てのDNA試料をDH5a FIQに形質転換し、制限エンドヌクレアーゼ消化によって、適当な組換体を同定した。プラスミドpGS17、pGS18、pGS19、pGS20およびpGS21に含有された欠失物を図4に示す。
ベクター(Stratagene)に結合するKSおよびSK配列決定プライマーを用い、pGS4の568bp PstI−EcoRIインサートの配列決定を開始した。fskA配列を用いて、インサートの各鎖につき、当該配列をまたぐプライマーを設計した。pGS4の568bpインサートの配列の各末端に対するプライマーを作成し、pGS7を鋳型としてfskA配列の延長に用いた。この情報を用いて、pGS15およびpGS16を鋳型として用い、当該配列をまたぐプライマーを設計した。ネストされた欠失を含有するプラスミドpGS17、pGS18、pGS19、pGS20、およびpGS21につき、さらなる3′配列を得た。ベクター(Stratagene)に結合するSP6プライマーを用いて配列決定を開始し、プラスミドの配列が重複しない場合は、fskA配列をベースとして配列を延長した。また、fskAをベースとするプライマーを用いて、pGS6を鋳型として用い、対向鎖の配列を得た。配列を組み立て、ウィスコンシン大学の遺伝学コンピューターグループ(GCG)配列分析ソフトウェアパッケージで分析した。
fksAの2565ヌクレオチドのDNA配列は、両鎖に基づく1600ヌクレオチドの配列から決定した(図5)。855アミノ酸の推定開放読み枠は、サッカロミセス・セレビシエFKS1およびFKS2蛋白質に対して67%の同一性を示すとされた。該アミノ酸配列をGAPTM(GCG)プログラムと比較した。fksAに相同なFKS2の領域はアミノ酸943からアミノ酸1799まで伸び、後者はカルボキシ末端に近い。fksA推定開放読み枠の前半(アミノ酸1−427)はFKS2に最も相同で82%の同一性を示し、一方、後半は53%の同一性である。
fksA遺伝子のpGS6上での位置は、配列情報および転写マッピングに基づいて決定できる。配列決定されたfksA遺伝子の一部は、図4の制限地図に示したごとく、pGS6の第4のPstI部位の左側311ヌクレオチドから始まる。fksA遺伝子産物およびサッカロミセスFKS1およびFKS2遺伝子産物の間の相同性に基づき、fksAの転写の方向は、図4に示したpGS6の制限地図で左から右であると推断できる。fksA遺伝子につき、さらに、転写マッピングによってpGS6上で位置決めを行った。Timberlake(Biol. and Mol. Biol. of Plant−Pathogen Interactions,1986)によって記載されているごとく当該分野で公知の方法を用いて、全A. nidulansRNAを単離した。該RNAを1.5%アガロース、2.2Mホルムアルデヒド、1×MOPS緩衝液での電気泳動に付し、Nytranナイロン膜(Schleicher及びSchuell)に移し、Gelman Scienceのプロトコル(プロトコル番号6、Application Protocols for Bio Trace Binding Matrices)に従ってハイブリダイズさせた。pGS4のfksA特異的568bp PstI−EcoRV断片のゲルブロットへのハイブリダイゼーションにより、単一の転写体が検出された。同一サイズの転写体が、pGS6の2つの隣接PstI断片、1.2kb PstI断片および0.7kb PstI断片によって検出されたが、1.2kb PstI−PstI断片の5’側にあるpGS3の1.4kb PstI−SpeI断片では検出されなかった(該1.4bp PstI−PstI断片は、pGS3からの断片をBluescriptにサブクローニングすることによって構築されたpGS9から単離した)。これらのデータは、fksA転写体は1.2kb PstI−PstI断片内で始まることを示す。配列データは、fksA遺伝子はpGS6のEcoRV部位を超えて伸びていることを示す。pGS6の1.6kb NdeI−NheI断片は転写体を検出せず、これは転写体がNdeI部位の前で終わることを示唆する。以上を要約すると、fksA転写体は1.2kb PstI断片内で始まり、pGS6のEcoRVおよび第2のNdeI部位の間で終わる。fksA遺伝子の調節配列は1.2kb PstI断片の5’末端側に位置させることが可能である。
実施例25
植物病原性真菌類からのFKS相同体の単離
Magnaporthe griseaおよびUstilago maydisのごとき植物病原性真菌類からのFKS1およびFKS2相同体をクローン化するために、AtkinsおよびLambowitz(Mol. Cell. Biol.,5:2272−2278)によって記載されている方法によって高分子量ゲノムDNAを単離し、制限酵素Sau3AIによって部分消化し、製造業者および当該分野で知られた方法(Maniatis)のクローニングキットを用い、Stratagene Vector Lambda−Dashにクローン化した。該ライブラリーを、実質的に前記したごとくにFKS1およびFKS2からのプローブを用いてスクリーニングした。
実施例26
A.pcr1(fks2−1)突然変異体の単離
標準的な手法を用い、(YFK0978およびYM0148としても公知の)L−733,560耐性突然変異体MY2256をYFK0931−07B株から単離した。4種の類遺伝子性(fks1−1)親株(YFK0931−03B、YFK0931−07B、YFK0931−10C、およびYFK0932−01C)を突然変異体探求で用いた。4種の株の遺伝子型は後記に表示する。該株はARSエレメントを含有するプラスミドpDL1、動原体およびCNB1、SUP11、およびURA3遺伝子を含有する。
この突然変異体探求は、エキノカンジン耐性を付与するFKS2遺伝子における突然変異を同定するように設計した。略言すると、28℃にて、YPAD10Ca培地(10mM CaCl2を含有するYPAD培地)5ml中で親株を一晩増殖させた。細胞をYPAD10Ca中に1×103細胞/mlに希釈し、培養のアリコート(0.2ml)を96の個々のマイクロタイターウェルに分注した。培養を28℃で飽和するまで増殖させた。5のウェルからの細胞を1:20希釈し、660nmにおける光学密度(OD660)を測定して、各培養ごとの平均細胞密度を計算した(1 OD660=3.3×107細胞/ml)。
各株の40培養を、1μg/mlのL−733,560を含有するYPAD10Ca培地上で平板培養した。加えて、YFK932−1CおよびYFK931−10Cの20ウェルを1:10および1:100希釈し、1μg/mlL−733,560を含有するYPAD10Ca培地上で平板培養した。プレートを28℃でインキュベートした。2つのコロニーを各薬物プレートから拾い、−UraおよびYPAG培地上でクローン的に精製し、28℃で増殖させた。各プレートから2つの独立したクローンを、−UraおよびYPAD10Ca培地のマスタープレートに拾い上げた。該マスタープレートを、標準的な欠失培地、YPAD10Ca培地、および1μg/mlのFK520、FK506、L−733,560、10mg/mlのサイクロスポリンA、または0.1μg/mlラパマイシンのいずれかを含有するYPAD10Ca培地にレプリカ平板培養した。該プレートを28℃でインキュベートした。該マスターをYPAD培地にレプリカ平板培養し、37℃で該プレートをインキュベートすることによって温度感受性を測定した。該プレートを2日および3日後に評定した。
この実験から、L−733,560(1μg/ml)を含有するYPAD10Ca培地で増殖する18の独立した突然変異体を、スクリーニングした約3.7×109細胞から同定した。これらのpcr(ニューモカンジン耐性)突然変異体はL−733,560に対して耐性であって、免疫抑制剤FK506、FK520、CsA、およびラパマイシンに対しては感受性であった。また、突然変異体のうちの1つ(MY2256)は、37℃における温度感受性表現型を保有した。MY2256およびその親株(YFK0931−07B)のL−733,560、FK520、FK506、CsA、およびラパマイシンに対する感受性を測定し、結果を後記で示す。後記表に示すごとく、突然変異体はその親よりもL−733,560に対してかなり耐性である。MY2256およびYFK0931−07Bはテストした免疫抑制剤に対して同様の感受性を示す。
混合した膜画分をMY2256およびYFK0931−07Bから調製し、標準的な手法を用い、L−733,560に対する1,3−β−D−グルカンシンターゼ活性の感受性を、部分的精製膜調製物でアッセイした。YFK0931−07BおよびMY2256からの1,3−β−D−グルカンシンターゼ活性の特異的活性は、mg・時間当たりに取り込まれたUDP−D−[6−3H]グルコースの60および45ナノモルであった。突然変異体および親株からの酵素活性のIC50は、各々、16−24μMおよび0.21μMであり、これは、MY2256における1,3−β−D−グルカンシンターゼ活性はL−733,560に対して耐性であることを示す。MY2256はさらに解析した。
実施例27
pcr1突然変異体の遺伝的解析
MY2256(MATa fks1−1 pcr1)を野生株YFK0005(MATα FKS1+PCR1+)と交雑させて株YFK0996−11Bを得た。YFK0996−11B(MATa fks1−1 pcr1)をYFK0688−14B(MATα fks1−1 PCR1+)に接合させ、胞子形成させ、詳細に調べた。この交雑からの29の四胞子および12の三胞子の四倍体において、pcr1表現型(L−733,560に対して耐性)は2r:2sに分離し、これは、pcr1表現型は単一の突然変異の結果であることを示す。(YFK1087−20B、MATα fks1−1 pcr1としても知られている)株MY2259および(YFK1087−20A、MATa fks1−1 pcr1としても知られている)MY2260をこの交雑から得た。元のMY2256突然変異体と同様に、MY2259およびMY2260はfks1−1およびpcr1突然変異を含有する。しかしながら、これらの株は元の突然変異体に存在するプラスミドpDL1を含有しない。
また、YFK0996−11B(MATa fks1−1 pcr1)をYFK0005(MATα FKS1 PCR1)に交雑させた。この交雑において、pcr1およびfks1−1突然変異は独立して分離された。16の四胞子および20の三胞子四倍体において、1の親ジタイプ:1の非親ジタイプ:4のテトラタイプ四倍体の分離パターンを示し、これは2つの非連鎖遺伝子の証明である。また、この交雑は、pcr1表現型はFKS1バックグラウンドで発現されることを示した。FKS1pcr1胞子はL−733,560およびカルシニューリン阻害剤FK520、FK506およびCsAに対して耐性である。(YFK1088−23B、MATa FKS1+pcr1としても知られている)株MY2257、(YFK1088−16D、MATα FKS1+pcr1としても知られている)MY2258、およびYFK1088−02D(MATa FKS1+pcr1)がこの交雑から分離された。後記表に示すごとく、これらの分離体は野生型FKS1バックグラウンドにpcr1突然変異を含有し、元の突然変異体に存在したプラスミドpDL1を欠く。
pcr1突然変異がFKS2遺伝子にマップされるか否かを判断するために、YFK1088−02D(MATa pcr1)をYFF2720(MATα fks2::TRP1)に交雑させた。この交雑からの31の四胞子および6の三胞子四倍体において、すべての分離体は、L−733,560(pcr1)およびトリプトファン栄養要求性(trp1)に対する耐性またはL−733,560およびトリプトファン原栄養体(fks2::TRP1)に対する感受性の親表現型を示した。これらの結果は、pcr1突然変異がFKS2遺伝子に密接にリンクしていることを示す。2つのさらなる交雑において、YFK0996−23D(MATa pcr1 cnb1::LYS2)をYFF2720(MATα fks2::TRP1)およびYFF2721(MATα fks2::TRP1)に接合させた。テストした78の四倍体において、fks2::TRP1胞子は全てL−733,560に対して感受性であり、これは、pcr1突然変異がFKS2遺伝子にマップされることを支持する。さらに、これらの交雑からのcnb1::LYS2胞子は全てL−733,560に対して感受性であった。これは、もし突然変異がカルシニューリンに制御されたFKS2遺伝子内にマップされるならばあり得ることである。
要約すると、pcr1突然変異は、単一の遺伝子であり、fks1−1とは独立に分離し、FKS1細胞で発現され、FKS2遺伝子に密接にリンクしている。この理由で、pcr1対立遺伝子はfks2−1と改名された。
B.pcr1(fks2−1)突然変異体の薬物耐性のレベルおよびスペクトルの定量
L−733,560、L−636,947(アクレアシン)およびL−687,781(ジヒドロパプロカンジン)に対するpcr1(fks2−1)fks1−1およびpcr1(fks2−1)FKS1株の感受性をMICアッセイで測定した。略言すると、株を、液体YPAD培地5.0ml中、静止相まで増殖させた。MY2256予備培養を液体YPAD10Ca中で増殖させた。MICアッセイは三連の平坦なウェルのマイクロタイタープレートで行った。マイクロタイタープレートの各ウェルにYPAD培地100μLを満たした。最初のウェルに、YPAD培地中の薬物の4×溶液100μLを添加した。対照として供するために、YPAD1μL当たり160μL DMSOのストック溶液を作成した。溶媒の存在下であって薬物の不存在下で増殖させた株につき、この溶液100μLを、最初のウェルに添加した。薬物の2倍系列希釈を順次プレートに施した。
培養をYPAD中、5×105細胞/mlに希釈した(1 OD660=3.3×107細胞/ml)。希釈した培養100μLを各ウェルに添加し、再懸濁し、28℃でインキュベートした。42時間後、培養を再懸濁し、SLT Laboratories 340ATTCマイクロタイタープレートリーダーで細胞密度を測定した。後記表に示すMIC濃度は、薬物の不存在下で増殖した株の10%未満増殖となる薬物濃度を表す。
実施例28
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットcDNAの細菌発現ベクターへのクローニングおよび発現
組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを大腸菌のごとき細菌発現系で産生する。1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット発現カセットを大腸菌発現ベクターに移す;発現ベクターは限定されるものではないがpETシリーズ(Novagen)を含む。該pETベクターは、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット発現を密接に調節されたバクテリオファージT7プロモーターの制御下に置く。誘導可能なlacプロモーターによって駆動されるT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含有する大腸菌宿主にこの構築体を移入した後、適当なlac基質(IPTG)を培養に添加することによって1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現が誘導される。発現された1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットのレベルを本明細書に記載するアッセイによって測定する。
実施例29
昆虫細胞における発現のための1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットcDNAのベクターへのクローニングおよび発現
AcNPVウイルスのゲノムに由来するバクロウイルスベクターは、昆虫細胞のSf9系(ATCC CRL#1711)におけるcDNAの高レベルの発現を供するように設計する。以下の標準的な方法(In Vitrogen MaxbacManual)によって、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットcDNAを発現する組換えバクロウイルスを産生する;pAC360およびBlueBacベクター(In Vitrogen)を含めた、種々のバクロウイルス移入ベクター中のポリヘドリン遺伝子に、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットcDNA構築体を連結する。相同組換え、続いてのバクロウイルス移入ベクターおよび線状化AcNPVゲノムDNA(Kitts,P.A.,Nuc.Acid.Res.,18,5667(1990))のSf9細胞への共トランスフェクションによって組換えバクロウイルスを作成する。組換えpAC360ウイルスは昆虫細胞における封入体の不存在によって同定し、組換えpBlueBacウイルスはβ−ガラクトシダーゼ発現(Summers,M.D.及びSmith,G.E.,Texas Agricultural Exp.Station BulletinNo.1555)に基づいて同定する。プラーク精製に続き、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット発現を測定する。
真正な1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット受容体が感染細胞との関連で見い出される。活性な1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを低張または洗浄剤溶解によって昆虫細胞から抽出する。
別法として、下流に、誘導可能なメタロチオニンプロモーターの制御下にある修飾された受容体DNAを含有するベクター、およびG418耐性ネオマイシン遺伝子をコードするベクターでのSchneider2細胞の共トランスフェクションによって、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをショウジョウバエSchneider2細胞で発現させる。G418の存在下での増殖により耐性細胞が得られ、これを誘導して、CuSo4の添加によって1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを発現させる。1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット調節剤の選定は、全細胞または膜調製物いずれかを用いたアッセイで達成される。
実施例30
組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの精製
組換えにより産生された1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットは、限定されるものではないが抗体アフィニティークロマトグラフィーを含む種々の手法によって精製できる。
組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット抗体アフィニティーカラムは、抗−1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット抗体をAffigel−10(BioRad)(抗体がアガロースゲルビーズ支持体と共有結合を形成するようにN−ヒドロキシスクシンイミドエステルで予め活性化されたゲル支持体)に添加することによって作成する。次いで、抗体をスペーサーアームの部分でアミド結合を介してゲルにカップリングさせる。次いで、残存する活性化エステルを1MエタノールアミンHCl(pH8)で失活する。カラムを水、続いて0.23MグリシンHCl(pH2.6)で洗浄して、非結合抗体または外来蛋白質を除去する。次いで、カラムを、洗剤のごとき適当な膜可溶化剤と共にリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.3)で平衡化し、可溶化された1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを含有する細胞培養上清または細胞抽出物をゆっくりとカラムに通す。次いで、カラムを、光学密度がバックグラウンドに降下するまでリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し;次いで、蛋白質を、洗剤を補足した0.23Mグリシン−HCl(pH2.6)で溶出させる。次いで、精製した1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット蛋白質をPBSに対して透析する。
実施例31
哺乳動物細胞系における1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットのクローニングおよび発現
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを哺乳動物発現ベクターにクローン化する。該哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞系を形質転換して、組換え哺乳動物細胞系を得る。組換え哺乳動物細胞系を、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットの発現が可能な条件下で培養する。組換え哺乳動物細胞系または該組換え哺乳動物細胞系から単離した膜をアッセイで用いて、組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットに結合する化合物を選定する。
実施例32
スクリーニングアッセイ
1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットをコードするDNAを含有する組換え細胞、該組換え細胞に由来する膜、または該細胞もしくは膜に由来する組換え1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット調製物を用いて、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性を調節する化合物を選定できる。かかる活性の調節はDNA、RNA、蛋白質またはその組合せのレベルで起こる。1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを調節する化合物を選定する1つの方法は、
(a)テスト化合物を1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを含有する溶液と混合して混合物を得;
(b)該混合物中の1,3−β−D−グルカンシンターゼササブユニット活性を測定し;次いで、
(c)混合物の1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性を標準と比較する;
ことよりなる。
実施例33
FKS1のDNA配列
FKS1のDNA配列を測定し、図6に示す。
実施例34
FKS1のアミノ酸配列
FKS1のアミノ酸配列を決定し、図7に示す。
実施例35
FKS2のDNA配列
FKS2のDNA配列を測定し、図8に示す。
実施例36
FKS2のアミノ酸配列
FKS2のアミノ酸配列を決定し、図9に示す。
実施例37
株R560−1Cにおけるfks1−1突然変異を同定するために、(限定されるものではないがKpnI、SstI、BglII、XhoIを含めた)制限酵素での消化およびアガロースゲル電気泳動による精製によって、FKS1暗号配列の一部を欠くギャップありプラスミドを、プラスミドpJAM54から調製した。標準的な方法を用い、このギャップありプラスミドをゲルから精製し、株R560−1Cに形質転換する。ウラシル欠失培地で選択した60のUra+形質転換体を同一培地上にパッチし、30℃で24時間増殖させ、次いで、4μg/mlL−733,560を補足したウラシル欠失培地にレプリカ平板培養し、30℃で2日間インキュベートした。ウラシル非含有プレート上でのクローンの増殖は、1)このギャップありプラスミドは、株R560−1Cの染色体での相同組換えによりギャップの端部が修復され、2)ギャップはfks1−2突然変異部分にわたることを示すであろう。対照的に、もしギャップがfks1−2突然変異を含有しない染色体の領域にあるならば、修復されたプラスミドは無傷の野生型FKS1遺伝子を担持し、形質転換体は部分的に薬物感受性であろう。pJAM54のKpnI−ギャップバージョンで形質転換した60のクローンのうち56が薬物耐性であった。これらのクローンからのプラスミドDNAを単離し、大腸菌での増殖によって増幅し、FKS1の染色体コピーにおいて挿入−欠失を持つ酵母株YLIP137に形質転換した。株YLIP137は実施例1に記載した株YFF2409と表現型が類似しており、すなわち、YLIP137におけるFKS1の染色体コピーは機能的に不活化されている。FKS1のプラスミド由来コピーはこれらの細胞において唯一のFKS1の機能的コピーであり;もしそれらがL−733,560に対して耐性であれば、それは該プラスミドがFKS1のfks1−2突然変異体バージョンを担持することに帰する。YLIP137のUra+形質転換体をウラシル欠失培地で選択し、いくつかのクローンを液体MICアッセイによってL−733,560に対する影響性につき分析した。全てのクローンは元のR560−1C突然変異体と同様に薬物に対して耐性であった。本発明者らは、fks1−2を担持する元のギャップ修復プラスミドをpJAM67と命名した。
プラスミドpJAM67からのKpnI制限断片は長さが3.5kbである。fks1−2突然変異を保有するより小さい断片を同定するために、プラスミドpJAM54中のFKS1遺伝子の断片をpJAM67(fks1−2)からの対応する断片で置き換え、新しい構築体をYLIP137に形質転換し、液体MICアッセイを用いて薬物耐性につきクローンをアッセイした。このようにして、fks1−2突然変異はpJAM67の0.8kb SalI−NcoI断片内にあると判断された。この断片を、DNA配列決定に適した大腸菌プラスミド(pGEM3(z)f)にサブクローン化した。
製造業者の仕様に従い、Applied Biosystems, Inc.からのモデルXXXX自動DNA配列決定機を用いて、約0.8kbのSalI−NcoI断片の配列を決定した。Genetics Computing Group, Madison WisconsinからのGCGソフトウェアパッケージを用い、配列データを分析した。pJAM67からのSalI−NcoI断片(正確な長さ=711bp)のDNA配列をFKS1のそれと比較して、ただ一つの変化が明らかとなった。FKS1 SalI−NcoI断片のヌクレオチド469位において、塩基はT(チミジン)であるところ、fks1−2DNA断片においては、対応する位置におけるヌクレオチド塩基はA(アデニン)である。蛋白質に翻訳された場合、この変化の結果、1877アミノ酸蛋白質一次配列のうち639位のフェニルアラニン(Fks1p)がイソロイシン(Fks1−2p)で置換される。この変化により、株R560−1Cおよびそれから得られる1,3−β−D−グルカンシンターゼ双方のL−733,560耐性がもたらされるとの仮説が成立する。
実施例38
カンジダ・アルビカンスATCC10261からの全ゲノムDNAを、BamHIおよびKpnIで完全に消化し、0.8%ゲルを用いるアガロースゲル電気泳動で分離した。該ゲルからのDNA断片の一部をニトロセルロースフィルターに移し、サザーンブロット(Maniatis、前掲)によってサッカロミセス・セレビシエFKS1からの1.25kb SalI−ClaI断片でプローブした。カンジダDNAの約2kb断片は該プローブにハイブリダイズし、ゲルの残りの対応する領域からの断片を切り出し、標準的な方法によって精製し、BamHIおよびKpnIで消化したベクターpGEM3(z)f(Stratagene)に連結した。連結混合物を大腸菌コンピテント細胞に形質転換し、プラスミド担持形質転換体をアンピシリンを含有する培地で選択し、プールした。2kbのカンジダ・アルビカンスFKS1−相同DNAを持つプラスミドを担持するクローンを同定するために、プールした形質転換体のアリコートを選択培地上に広げ、コロニーをニトロセルロースに移し、標準的な方法によって溶解し、pJAM54から単離した[32P]標識1.25kb SalI−ClaI断片でプローブした。フィルターをストリンジェントな条件下で洗浄し、フィルムに暴露した。19のコロニーがブロット上で陽性シグナルを示した。元のコロニーを源として用い、クローンであり得る各々からの細胞を液体培地で増殖させ、プラスミドDNAを単離した。このDNAをKpnIおよびBamHIで消化し、0.8%アガースゲルで分離した断片を、サザーンブロットによって、pJAM54からの放射能標識した1.25kb SalI−ClaI断片でプローブした。19のプラスミドのうち3つが、該プローブと強力にハイブリダイズする約2kbの断片を含有した。カンジダ・アルビカンスFKS1相同体のKpnI−BamHI断片を持つプラスミドをpGJS1と命名した。FKS1に相同なカンジダ遺伝子をFKS1canと命名した。
標準的な方法を用いてpGJS1からの約2kb断片のヌクレオチド配列を測定した。最初の2つの配列決定反応については、変性pGJS1 DNAをStratageneから入手可能な「T7プライマー」および「SP6 プライマー」にアニールした。酵素「Sequenase v.2」を含めた全ての他の試薬はU.S. Biochemicalsからのものであり、製造業者の仕様に従って使用した。第1の反応からのDNA配列結果を用いて、これらの最初の反応からの配列の「末端」に相補的な18−塩基のオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。これらのプライマーを反応の次の工程で用いた。該プロセスを、Genetics Computing Group(Madison,Wisconsin)からのGCG分析プログラムを用い、隣接する蛋白質をコードする開放読み枠が個々の配列決定反応から得られるまで継続した。
カンジダ・アルビカンスFKS相同体(Fksc1p)の推定されるペプチド配列をカンジダ・アルビカンスからのFks1pの蛋白質配列と比較した。Genetics Computing Groupのプログラムを用いると、Fksc1pのアミノ酸1ないし689はFks1pの残基460−1147に相当した。2のペプチド配列は、この範囲にわたって相互に79%同一であり88%類似であった。これは非常に高度の相同性を構成し、2の蛋白質は機能が非常に似ているらしいことを示す。特に、エキノカンジン阻害剤(前掲)に罹患性の野生型に重要な残基として突然変異遺伝子fks1−2として同定された、Fks1pの639位のフェニルアラニンは、図CD1に示したFksc1pアミノ酸配列のフェニルアラニン180と同一であった。1)FKS1canはカンジダ・アルビカンス1,3−β−D−グルカンシンターゼのエキノカンジン−感受性サブユニットをコードし、2)Fksc1p蛋白質配列の残りはFkslpに対して同様の程度の相同性を示し、3)限定されるものではないがfks1−2突然変異に類似するFKS1canにおける突然変異の結果、エキノカンジン阻害に対する酵素活性(1,3−β−D−グルカンシンターゼを含有する突然変異体Fksc1pサブユニット)および全細胞(突然変異体Fksc1pを発現するカンジダ・アルビカンス細胞の罹患性が低いこととなると考えられる。
実施例39
酵母キラートキシンに対する感受性についてのFKS1またはFKS2いずれかの機能的コピーの喪失の効果を評価した。トキシン罹患性テストは、テスト株がM1キラーウイルスを欠くことを必要とする。というのは、該ウイルスを含有する株はトキシン(K+)を生産し、その作用に対して免疫性(I+)であり、キラー耐性(Kre-)表現型と免疫(I+)表現型とは区別できないからである。FKS1(YLIP179およびYLIP183;fks1::HIS3)またはFKS2(YLIP186およびYLIP190;fks2::TRP1)のいずれかの挿入−欠失で構築された株はK+I+であり;従って、M1ウイルスは、Kre表現型をアッセイするには株から追い出されなければならない。YLIP179、YLIP183、YLIP186およびYLIP190を37℃で一晩増殖させた。翌日、一晩増殖のアリコートを新鮮な培地(1:1000希釈)に移し、37℃でインキュベーションを継続した。3継代後、培養からの細胞を寒天プレートに画線培養し、単一のコロニーを単離し、パッチアッセイでキラートキシンを生産しないことにつきテストした。該パッチアッセイは、1)キラートキシン過剰感受性株S6の1×105対数相細胞を、0.25Mクエン酸緩衝液、pH4.7および0.03%メチレンブルー(YPAD Cit MB)を含有する融解YPAD寒天に添加し、2)プレートに注ぎ、接種した寒天を固化させ、3)テスト株のパッチをプレートの表面に適用し、4)25℃で24時間インキュベートし、パッチの回りが清浄化されているゾーンを探すことによって行った。ゾーンを生じない株は活性なトキシンを発現せず(K-)、免疫性ではなかった(I-)。この方法によってM1−キラーウイルスが追い出されたYLIP179、YLIP183、YLIP186およびYLIP190の誘導体を、パッチアッセイの修飾法によってキラートキシンに対する罹患性につきテストした。各テスト株を融解YPAD Cit MB寒天に接種し、スーパーキラー株(K12)をパッチとして適用した。これらの条件下、テスト株がKre-である場合は、細胞の周辺にでほとんどまたは全くゾーンがない。fks1::HIS3株およびfks2::TRP1株に由来するK-I-単離体の全ては、株K12によって産生されたトキシンに対して感受性であり;同一条件下で行ったいくつかの公知のKre-株(S706、S708、およびS726;米国特許第5,194,600号表IおよびVIに記載されている)での対照アッセイは、ほとんどまたは全くゾーンを示さなかった。従って、FKS1またはFKS2いずれかの機能喪失突然変異の結果、米国特許第5,194,600号に記載されているものとKRE遺伝子における機能的突然変異を喪失しているという点で表現型が区別される細胞が得られた。
実施例40
1,3−β−D−グルカンシンターゼの阻害剤に対する2つの異なるkre突然変異の罹患性を測定した。株S442(KRE1 KRE5)、S708(kre1−3)およびS726(kre5−1)を、静止相まで液体YPAD培地中で増殖させ、次いで、1ml当たり1×105細胞の最終濃度にて融解YPAD寒天に接種し、ペトリ皿に注いだ。薬物感受性をテストするために、ニューモカンジンB0、エキノカンジンB、ジヒドロパプラカンジン、およびL−733,560(1,3−β−D−グルカンシンターゼの4種の公知阻害剤)をプレートの表面に適用し、39℃において24時間増殖し、増殖阻止の各ゾーンの直径を測定した。このアッセイの方法は実質的に前記した通りであり、株R560−1C、W303−1A、YLIP179(fks1::HIS3)およびYLIP186(fks2::TRP1)を比較のために同一条件下でテストした。ゾーンの直径は、通常、阻害剤に対する罹患性の良好な指標であり、類遺伝子性の野生型株に対する耐性または高感受性を評価するのに使用できる。これらの基準を用いると、4種の1,3−β−D−グルカンシンターゼ阻害剤に対する罹患性において、R560−1C細胞は耐性であり、YLIP179細胞は高感受性であり、YLIP186細胞は野生型株と同様であった。対照的に、kre突然変異体[S708(kre1−3)およびS726(kre5−1)]は、全ての4種の化合物に対する罹患性において、それらの野生型親株(S442)と同等であった。従って、これらの1,3−β−D−グルカンシンターゼ阻害剤に対する感受性についてkre突然変異の影響はなく、他方、FKS1の突然変異体対立遺伝の結果は、これらの化合物に対して耐性(fks1−2)または高感受性(fks1::HIS3)となった。この結果は、突然変異体/野生型株対の異なる罹患性に基づく1,3−β−D−グルカンシンターゼの阻害剤についての微生物アッセイが、これらのkre突然変異体に対しては効果的でないが、これらのfks1突然変異体に対しては効果的であり得ることを意味する。
Claims (13)
- 微生物から単離された、請求項1記載のDNA分子。
- 該微生物がアスペルギルス・フミガトゥス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)よりなる群から選択される、請求項2記載のDNA分子。
- 該微生物がサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項2記載のDNA分子。
- 該DNA分子が、そのDNAが原核生物または真核生物細胞に導入された場合に発現され得るように調節配列に作動可能に連結している、請求項1記載のDNA分子。
- 請求項1のDNA分子によってコードされた、実質的に精製された蛋白質。
- 請求項1記載のDNA分子を含有する細胞。
- 請求項7記載の精製された蛋白質に対する抗体。
- (a)2つの微生物を培養し、第1の微生物は無傷の請求項1に記載のDNA分子を担持し、第2の微生物はグルカンシンターゼ活性を示すタンパク質を発現しないように改変された請求項1に記載のDNA分子を担持し、
(b)グルカンシンターゼに影響することが知られている化合物の定量可能な量と共に工程(a)の微生物のアリコートをインキュベートし、
(c)テスト化合物と共に工程(a)の微生物のアリコートをインキュベートし;次いで、
(d)工程(b)および工程(c)の微生物におけるグルカンシンターゼ活性を測定することを特徴とする、グルカンシンターゼ活性を調節する化合物を選定する方法。 - (a)3つの微生物を培養し、第1の微生物は無傷の請求項1に記載のDNA分子を担持し、第2の微生物はグルカンシンターゼ活性を示すタンパク質を発現しないように改変された請求項1に記載のDNA分子の形態を担持し、第3の微生物はグルカンシンターゼ活性を示すタンパク質を発現しないように改変された請求項1に記載のDNA分子の形態および少なくとも2コピーのCNA2 DNAおよび少なくとも2コピーのCNB2 DNAを担持し、
(b)カルシニューリンに影響することが知られている化合物の定量可能な量と共に工程(a)の3つの微生物のアリコートをインキュベートし、
(c)テスト化合物と共に該3つの微生物のアリコートをインキュベートし;次いで、
(d)工程(b)および工程(c)のアリコートの相対的増殖を測定することを特徴とする、カルシニューリンに影響する化合物を選定する方法。 - (a)テスト化合物を、請求項1に記載のDNA分子によりコードされる1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニットを含有する溶液と混合して混合物を得
(b)該混合物における1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性を測定し、次いで、
(c)該混合物の1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性を標準と比較することを特徴とする、1,3−β−D−グルカンシンターゼサブユニット活性を調節する化合物を選定する方法。
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