JP3664472B2 - コーティング処理方法および絞りプレート - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコーティング処理方法および絞りプレートに関し、特に、電子顕微鏡等の電子線応用装置に使用する高精度な絞りプレートの製造に好適なコーティング処理方法および絞りプレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子顕微鏡等の電子線応用装置において、電子線のビーム径を調節するために絞りプレートが使用されていた。この絞りプレートは、例えば特開平04−206244号公報に記載されているように、モリブデン製等の高融点の金属板に微小な通過孔を空けたものであり、帯電やコンタミネーション防止のために、表面に白金や白金パラジウムなどのコーティングが施されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したような、従来の絞りプレートにおいては、絞りプレートの孔を空ける方法としてエッチングを使用しているが、モリブデン製の金属板のエッチングに使用するレジストは、通常の半導体製造等に用いるレジストとは異なり、耐熱性、耐蝕性、耐酸性に富んだものを使用している。ところが、エッチング時に使用するレジストが完全に除去されずに、絞りプレートの表面に残留していると、絞りプレートを電子顕微鏡に装着して使用した場合に、絶縁物である残留レジストの表面が帯電して電子線に影響を与えたり、コンタミネーション(不純物源)等の問題が発生し、分解能が上がらないという問題点があった。
【0004】
また、白金等をコーティングしても、レジストが残留している部分においてコーティングした金属が電子線の通過による加熱の繰り返しによって蒸発し、剥離しやすくなるという熱ダメージの問題点があった。そして、この蒸発によって絶縁物であるレジストが表面に現れ、前述したような問題点が再現するという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明者は、絞りプレートを新規な洗浄方法によって洗浄し、更にオスミウムによってコーティングする技術によって、従来の問題点が解決されることを発見した。この技術に関して、本発明者は特願平11-030364号、特願平11-208534号の特許出願を行っている。この先願の技術において、絞りプレートにオスミウムのコーティイングを行うことは、その高い2次電子放出係数などから、絞りプレートの帯電やコンタミネーション防止において非常に有効であることが確認された。
【0006】
ところで、微細孔へのオスミウムのコーティングの方法としては、プラズマを用いたスパッタリング法やプラズマ励起化学気相堆積法などの方法などが採用可能である。例えば、スパッタリング法においては、希ガスからなるプラズマを発生させ、オスミウムターゲットに希ガスから生成されるイオンなどの荷電粒子を衝突させて、ターゲットから発生したオスミウム原子を絞りプレートに堆積させる。
【0007】
ところが、この方法においては、オスミウム原子の物理的な堆積機構によって薄膜が形成されるため、微小孔の内部にわたって均一なオスミウム薄膜の堆積が困難であるという問題点があった。即ち、微小孔の開口部の立体角に従って堆積形状が決定されるために、微小孔内部にわたって均−な被覆を実現するような薄膜形成は不可能である。
【0008】
一方、プラズマ励起化学気相堆積法においては、オスミウムを含有するガスによって、薄膜の前駆体が輸送され、基板表面において反応して、オスミウムが析出される。従って、微小孔の内部まで前駆体が輸送される可能性があり、オスミウムの微小孔内部へのコーティングが可能である。
プラズマ励起化学気相堆積法においては、オスミウムを含有するガスとして、その蒸気圧や含有する不純物等の関係から、酸化オスミウムの昇華ガスが用いられる。ところが、該昇華ガスは酸素を含有しているために、オスミウム表面等に不純物となる酸素が混入するという問題点があった。
【0009】
本発明者は、先願の技術を使用して、プラズマ励起化学気相堆積法において、プラズマ発生装置の構造、基板温度、ガス圧力、パワー等を調整して、酸素含有量の非常に少ない導電性非晶質結晶のオスミウムの形成を行ってきた。また、形成したオスミウム薄膜をアニールすることにより、緻密かつ酸素含有量の極めて少ないオスミウム薄膜が形成されている。
【0010】
しかしながら、基本的に酸素とオスミウムとの化学結合力が強いために、少量の酸素が膜中に存在し、帯電防止の特性を劣化させたり、個々の絞りの特性に大きなバラツキが生じ、製品の再現性に大きな問題が発生するという問題点が依然としてあった。
本発明の目的は、前記のような従来の問題点を解決し、再現性が良好であり、緻密で純度が高い導電性非結晶薄膜を微少孔内部までコーティング可能なコーティング処理方法および絞りプレートを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、微小な孔を空けた金属板にオスミウムのコーティングを施す際に、プラズマ励起化学気相堆積法において、酸化オスミウムからなる昇華ガスに加えて水素ガスを添加することに特徴がある。
本発明によれば、絞り表面および微小孔内部にわたって均一に、緻密な構造を有する導電性非晶質薄膜を形成し、かつ該薄膜を再現性よく提供することが可能である。更に、酸素等の不純物濃度の低い高純度のオスミウム膜の形成が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。例えば電子顕微鏡用の絞りプレートを製造する場合の工程は、大きく3つの工程に分けられる。まず第1の工程は、モリブデン製の金属板にエッチングによって所定の大きさの孔を空ける工程である。材料であるモリブデン板は、まず真空炉内において焼成処理され、圧延ローラによって所定の厚さおよび表面に仕上げられた後、水素炉内において立て掛けた状態で熱処理される。その後、公知の方法によって所定径の孔がエッチングによって空けられる。
【0013】
この際に使用されるフォトレジストは、例えばキシレン、エチルベンゼン、環化ポリイソブレン等の混合物であり、通常半導体製造等に用いるレジストとは異なり、1000度以上の耐熱性、耐蝕性、更に硫酸やフッ酸に対する耐酸性に富んでいる。従って、孔空け後には例えば周知のRIE(反応性イオンエッチング)装置によってある程度はレジストが除去されるが、絞りプレートとしては不十分であり、レジスト除去処理された絞りプレート10の表面には依然としてレジストが残留している。
【0014】
次に、このレジストを除去するために第2の工程である洗浄工程を行う。洗浄工程においては、まず孔空けが完了した絞り板10枚を用意する。そして、「UGR硫酸」(濃度97%、精密分析用)50ccをビーカーに入れ、これを公知の任意の加熱装置によって、摂氏80度〜120度に加熱する。そして、加熱したUGR硫酸中に絞り板10枚を入れ、そのまま10〜20分間温度を維持する。
【0015】
その後に、UGR硫酸のみを廃棄し、絞り板10が入っているビーカーに摂氏30度〜70度に加熱した「EL混合液」50ccを注入する。EL混合液とは、EL硫酸(濃度96%、電子工業用)とEL過酸化水素水(濃度30%、電子工業用)とを4対1〜6対1の割合で混合したものである。このビーカーを40秒から1分程度超音波洗浄装置にセットして絞り板を洗浄する。洗浄後にEL混合液は廃棄する。
【0016】
次に、絞り板の入ったビーカーに摂氏40度〜50度に加熱した蒸留水を注入して注ぎ洗浄を行い、これを2回繰り返す。更に、絞り板を網製かごに取り、かごごとビーカーに入れて、摂氏40度〜50度に加熱した蒸留水を150cc加えて超音波洗浄装置にセットし、1〜2分間超音波洗浄を行う。この超音波洗浄を数回繰り返す。最後に、絞り板を1枚づつ取り出してミクロチューブに挿入し、摂氏数百度程度で加熱乾燥させる。
発明者は、洗浄工程処理後の絞り板を電子顕微鏡でチェックすることにより、上記した洗浄工程によってエッチング工程後に残留していた乾燥レジストはほぼ完全に除去されることを確認した。
【0017】
次に第3の工程であるコーティング工程について説明する。図1は、本発明のプラズマ励起化学気相堆積法によるコーティング工程を示す説明図である。一例として、陽極板(カソード)15と陰極板(アノード)14を設置したプラズマ反応容器(真空容器:チャンバー)10内に、モリブデンからなる微小孔を有した絞りプレート16を陰極板15上に設置した。
【0018】
コーティングする金属としてはオスミウムを使用する。絞り板に白金や白金パラジウムをコーティングした場合には金属が結晶化(粒状化)し、コーティング表面が均一で滑らかにならないという問題点があったが、本発明によるオスミウムの場合には均一で硬いアモルファス薄膜となり、導電性も従来の金属より更に良好である。また、オスミウムの融点は摂氏2700度と高く、電子顕微鏡の電子線照射によるダメージがないので、高い加速電圧で充分絞った強い電子線を照射することができ、電子顕微鏡の分解能を限界まで引き出せる。
【0019】
コーティング工程においては、排気用ポンプとして例えば周知の油拡散(ディフュージョン)ポンプを使用することによって10のマイナス4〜5乗トールの真空度を確保する。また、排気後に弁13を操作して、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを注入し、再び排気することによって酸素や水蒸気の濃度を更に低下させることができる。なお、不活性ガスの注入と排気とを複数回繰り返すようにしてもよい。
【0020】
実施例においては、真空容器10内に昇華筒22に入れた少量の四酸化オスミウム結晶から発生するガスを弁23を介して導入し、弁13を介して導入した希薄な不活性ガスからなる昇華ガスに対して、弁12を操作して水素ガスH2を導入し、メータによって圧力を測定できる圧力調整器20、21により圧力を例えば11Paとする。その後、直流電源17により、両電極14、15に電圧を印加し、電界を発生させて、プラズマを発生させる。
【0021】
コーティング処理に使用するプラズマ発生装置には、市販されている装置を応用可能であり、例えば日本レーザ電子株式会社のプラズマコーティング装置(NL-OPC80N)を応用してもよい。このプラズマコーティング装置は、陽極板と陰極板を設置した小容量ガス反応器内に、昇華筒に入れた少量の四酸化オスミウム結晶を導入し、希薄な昇華ガス圧にして、選定した直流グロー放電電圧でグロー放電を発生させる。すると、電極間が瞬時にプラズマ状態となって発光する。この時、陰極板上の負グロー相領域内に置いた絞り板18の表面には、イオン化オスミウム分子が瞬時に付着堆積して非結晶オスミウム薄膜ができる。コーティングする膜厚は数ナノメートルから数十ナノメートル程度とする。
【0022】
プラズマ発生装置においては、水素ガスのみを導入した場合は、プラズマ発生する圧力領域が非常に狭く、プラズマが不安定であった。そこで、プラズマを安定させるために、Arガスを水素ガスと同程度まで導入し、圧力11Paとした。このような混合ガスを用いて、種々の条件下において、プラズマを発生させたところ、広範囲な圧力範囲において安定なプラズマを維持することが可能であった。
【0023】
具体的には、3Pa付近から20Pa程度まで安定な放電が可能であることを確認した。もちろん、電圧、電流、電極材質等の最適化を行えばさらなる広範囲な条件下にて放電が可能である。すなわち、安定放電条件は、陽極と陰極との距離、電極材料、圧力、電圧、電流、水素とArガスとの混合比によって変化するが、典型的な条件は、圧力11Pa、電圧800V,電流5mA、Ar3sccm,水素3sccm(sccm:ガス流量単位)である。
【0024】
安定な放電が得られる条件は、前述の如く、種々の要因によって変化するが、一般的にパッシェンの法則に従っている。図2は、パッシェンの法則を示す説明図である。図2に示されているように、圧力Pと電極間距離dの積:Pdに対して放電開始の最小電圧∨が存在することが知られている。すなわち、Pdが極端に小さいと電離が十分に進まないので、放電電圧は高くなる。Pdが大きすぎると衝突が多すぎて電子が十分なエネルギーまで加速されないので電離が不十分となり、放電電圧は高くなる。
【0025】
従って、安定な放電を得る最適な条件は、パッシェンの法則にしたがって、Pdに対して最も放電電圧が小さくなるように、圧力と電極間距離を選択すればよい。また、水素放電に対して、アルゴン、キセノンなど電離電圧の低い希ガスを添加することにより、放電を安定化させることができる。
【0026】
以上の条件において、堆積したオスミウム薄膜の膜質をオージェ電子分光法を用いて分析した。また、分析には、(1)酸化オスミウムガスのみ、(2)アルゴンと酸化オスミムガスとの混合ガス、(3)アルゴンと酸化オスミウムガスと水素ガスによって形成した薄膜を比較した。図3は、酸素不純物密度に関する分析実験結果を示すグラフである。
【0027】
分析結果より、酸素含有量は、(1)>(2)>(3)の順にて減少し、特に水素ガスを添加した場合には、酸素の含有量は、水素の含有量が30%〜70%の範囲でオージェ電子分光法(AES)における感度(0.1%)以下であることが判明した。なお、水素含有量70%以上では放電不能であった。従って、(3)の場合には水素の含有量が30%〜70%の範囲が好ましいことが判明した。
【0028】
図4は、本発明の上記(2)、(3)の実施例における絞りプレートの微少孔部分の断面図および推定される主要な反応式を示す説明図である。上記(2)の実施例の場合、プラズマ中において、酸化オスミウムガスの電子衝突解離によって酸化オスミウムラジカル(遊離基)やイオン、あるいは、原子状オスミウムおよび原子状酸素が生成される。これらが基板(16)表面において反応して、オスミウム膜30が形成される。原子状オスミウムが選択的に生成されて薄膜が形成されれば、薄膜の純度は高くなるが、プラズマ中に同時に生成される酸素あるいは酸化オスミウムラジカルによって、オスミウム金属表面が酸化されたり、酸素が膜中に混入するために、酸素が不純物として含まれる。
【0029】
一方、上記(3)の実施例のように水素ガスを添加すると、プラズマ中の電子衝突によって原子状水素が発生する。水素ラジカルは、強い還元作用を有しているために、気相中において、酸素密度を著しく低くすると共に、薄膜表面において酸化されたオスミウムを還元するために、酸素を含まない高純度のオスミウム膜30が析出される。従って、水素ガスの添加によって純度の高いオスミウムの形成が可能になるものと推定される。
【0030】
次に、上記条件下において、微小孔への薄膜形成を行い、微少孔内部への薄膜の被覆率を走査型電子顕微鏡によって評価した。その結果、被覆率は、(1)<(2)<(3)の順に高くなることが判明した。すなわち、水素ガス添加によって、純度のみならず被覆率が上昇し、微細孔の内部にわたって均一にオスミウムが形成されることが判明した。この機構としては下記が考えられる。
【0031】
プラズマ中に発生したオスミウムあるいは酸化オスミウムラジカルは、微小孔内部に輸送されるが、これらの薄膜前駆体の付着係数に従って微小孔の上部から堆積が進行する。一般にこれらのラジカルの中で、オスミウム金属は、付着係数が高いために、微小孔の上部において、付着が進み、膜の内部まで輸送が困難である。
【0032】
一方、酸化オスミウムラジカルは、比較的付着係数が小さいために、アスペクト比の高い微小孔内部まで輸送することが可能である。しかしながら、該前駆体が酸素を本質的に含有するために薄膜中に酸素が混入する。オスミウム金属を前駆体とした場合においても、同時に発生した酸素が絶えず、形成された薄膜表面を被覆しながら、薄膜形成が進行する場合は、前駆体の付着係数が小さくなり、内部まで薄膜を形成することができる可能性はあるものの、同様に、酸素原子の混入により、純度が下がるという問題が生じる。
【0033】
しかしながら、水素添加によってプラズマ中で発生した水素原子は、薄膜の表面や内部の未結合手を絶えず終端するために、前駆体の付着係数を著しく下げる。従って、オスミウムを含有した前駆体は、微小孔の内部まで容易に輸送され、付着したと同時に、酸素は、水素原子によって還元されて酸素を含まない緻密な薄膜が析出される。このような機構によって、高純度でしかも微小孔内部にわたって均一に薄膜が形成される。
【0034】
更に、この薄膜形成機構において、プラズマ中で発生した水素原子は、金属内部に拡散し、薄膜の表面および内部において再結合する。このとき発生する熱によって、金属薄膜が形成中においてアニールされる。このような水素ラジカルのアニール効果によって薄膜の緻密化が促進される。
【0035】
オスミウム金属を含む前駆体の微小孔内部への均一拡散、付着表面における水素原子との還元反応、水素原子によるアニール効果によって、微小孔内部にわたって、均一にしかも緻密、高純度の導電性非晶質オスミウムの形成が可能であった。また、形成された薄膜の表面を原子間力顕微鏡にて観察したところ、原子レベルで平滑な表面を有していることが判明した。
【0036】
上記のような方法において、コーティングした絞りプレートの帯電特性を電子ビーム照射装置を用いて調べたところ、帯電のない良好な絞り特性が得られた。さらに、種々の絞りプレートに処理を施して、特性のバラツキを評価したところ、100個のサンプルに対して不良品の発生はみられなかった。したがって、本方法を用いることによって、帯電のない絞りプレートを安定して製造できることを確認した。
【0037】
以上、本発明の実施例を開示したが、本発明においては、下記のような変形も考えられる。実施例においては、水素ガスとアルゴンガスを添加ガスとして用いたが、希ガスの役割は、安定放電を得るために放電電圧のしきい値を低下させることにあるので、キセノンあるいはクリプトンでもかまわない。他の役割としては、希ガスの衝突によって、開口部に多く堆積する粒子を微小孔内部へ輸送する効果が考えられる。いづれにしても、アルゴン、クリプトン、キセノンからなる粒子であれば、両者の効果を満足する。
【0038】
本発明において、絞りプレートの材質としてモリブデンを選択したが、本発明は、モリブデンに制限されるものではない。絞りプレート材料に使用されるモリブデン、タンタル、タングステンもしくは融点の低いプラチナなどの材料に対しても本発明は、同様の効果があることを確認している。
本発明においては、アルゴンと水素ガスの混合比を1:1としたが、適宜放電条件にあわせて変化しても構わない。
【0039】
実施例においては、洗浄工程およびコーティング工程の組み合わせについて開示したが、例えばコーティング工程のみでも従来の絞りプレートと比較して分解能の向上効果はあるので、該工程のみを単独で実施してもよい。また、コーティング後にアニールなどの後処理を実施してもよい。
実施例においては、絞りプレートを新規に製造する場合を開示したが、例えば絞りプレートを電子顕微鏡に搭載して使用していくと不純物が付着したりコーティングが剥がれたりするので、使用した絞りプレートの再生処理として本発明のコーティング処理を実施してもよい。
【0040】
絞りプレートの孔はエッチング以外に、例えば放電加工、機械加工、レーザー加工、電子ビーム加工等によって開けることも可能であり、このような場合においても、オスミウムのコーティングを施すことによって前記したような効果が期待できる。
実施例においては、電子顕微鏡における絞りプレートに本発明を適用する例を開示したが、本発明は、電子顕微鏡の絞りプレートに限らず、任意の物体のコーティング処理に適用可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明においては、プラズマ中に、酸化オスミウム昇華ガス、水素とアルゴンガスを導入することにより、絞りプレートの表面および絞りプレートの内部に形成された微小孔の内面にわたって、均一に緻密かつ表面平滑な高純度の導電性非晶質オスミウムをコーティングすることができるという効果がある。更に、プラズマ放電を安定にせしめ、バラツキのない、再現性の極めて高いコーティングが可能となる効果がある。従って、帯電がなく、高い分解能の絞り特性をしめすプレートを高い再現性をもって提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコーティング工程を示す説明図である。
【図2】パッシェンの法則を示す説明図である。
【図3】酸素不純物濃度に関する分析実験結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における絞りプレートの断面図および推定される主要な反応式を示す説明図である。
【符号の説明】
10…真空容器(チャンバー)、11…排気ポンプ、12、13、23…弁、14…アノード、15…カソード、16…絞りプレート、17…直流電源、18…電流計、20、21…圧力調整器、22…昇華筒、24…OsO4、30…オスミウム膜

Claims (4)

  1. 少なくともオスミウムを含有するガスと水素ガスを含むガスとの混合ガスを用いてプラズマを発生させ、電子線のビーム径を調節するための微細な孔を有する金属板からなる絞りプレートの表面にオスミウム金属薄膜を堆積させるプラズマ励起化学気相堆積工程を含むことを特徴とするコーティング処理方法。
  2. 前記オスミウムを含有するガスは、酸化オスミウムの結晶からの昇華ガスであり、前記水素ガスを含むガスは、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガスの内の少なくとも一種類のガスと水素ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1記載のコーティング処理方法。
  3. 前記プラズマを発生させる装置は2枚の電極板を有し、一方の電極を陰極、他方を陽極として、直流放電を発生させる機構を具備し、陰極に前記絞りプレートを設置するものであり、該電極間の距離および前記混合ガスの圧力および放電電圧の関係は、圧力と電極距離の積に対して、最小の放電電圧となるように設定することを特徴とする請求項1記載のコーティング処理方法。
  4. 前記1乃至3のいずれかに記載されたコーティング処理方法によって処理されたことを特徴とする絞りプレート。
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