JP3663427B2 - シアノフルオロフェノ−ルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、農薬、染料および液晶等の中間体として有用なシアノフルオロフェノール、特に4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルおよび2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルの新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シアノフルオロフェノール類は、医薬、農薬、染料および液晶等の中間体として重要な化合物である。特に4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルは、特開昭60−197651号、特開昭60−224666号あるいは特開平4−164058号公報等に見られるように、非常に優れた特性を有する液晶化合物の製造原料(中間体)となる。しかし、ベンゼン環上にOH、CNおよびFを有するシアノフルオロフェノールには多数の位置異性体が存在し、これらの異性体は各種の溶媒への溶解性が類似した固体(常温下)であるため、シアノフルオロフェノールの合成においては異性体の生成比の制御ならびに生成した異性体の分離が大きな課題となっている。
【0003】
例えば、4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルの製造方法として、以下の経路Bを辿る方法が提案されている (Helv. Chim. Acta., vol. 67 (1984), 1572-1578) 。
【化4】
この経路では、はじめにm−フロオロアニソール(式IV)の臭素化を行なって3−フルオロ−4−ブロモアニソール(式Va)とする。次いでジメチルホルムアミド (DMF)の溶媒中で上記ブロモアニソールにシアン化銅を作用させて臭素原子をシアノ基に置換してニトリル(式VI)に転じた後に塩化アルミニウムによりエーテル結合を開裂させて目的の4−シアノ−3−フルオロフェノ−ル(式 VII)を得る。
【0004】
経路Bの第1段の反応では、目的とする3−フルオロ−4−ブロモアニソール(式Va)の他に以下の式Vbおよび式Vcで表わされる位置異性体やジブロモ体が生じる。
【化5】
【化6】
これらの異性体は融点や溶媒に対する溶解性が近似しているため、その分離が困難である。そこで、この分離方法を改良した製法が欧州特許EP 0 601 977 A1 号に提案されている。この方法では、シアノフルオロアニソール(VI)の段階でカラムクロマトグラフィ法により異性体の分離を行ない、次いでピリジン塩酸塩を用いて脱メチル化を行なっている。しかし、これらの方法では、分離精製のために複雑な手順が必要であり合成プロセス全体としての収率も低い。また、第2段の反応(V →VI)に用いるシアン化銅は毒性が高いため、反応を実施する上で安全面にも問題が生じる。
【0005】
異性体の生成やシアン化合物の使用を回避するため、以下に示す経路Cの方法(Liuid Crystals, vol.11, No.3, 373-384 (1992))も提案されている。
【化7】
経路Cは、m−フルオロアニソールにアシル基を導入し、これを順次、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基に転化して4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルを得る方法である。アシル化の際の反応性(置換基の配向性および立体障害)から異性体の生成が最小限に抑えられる。
【0006】
また次式に示す経路D(特開平2−174738号)の方法も知られており、この方法では、β−シクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)を用いて反応を位置選択的に進める。
【化8】
しかし、これらの製法のうち、経路Cでは工程が長いために全体を通しての収率が10%台にとどまる。経路Dでは試薬として比較的高価なシクロデキストリンを用いる必要があり工業的な規模での実施にはコスト面での問題が残る。さらに、シアン化銅を用いるため安全面でも問題がある。
【0007】
【発明の解決課題】
本発明は、従来の製造方法における上記問題を解決した製造方法を提供するものであって、式III で示されるシアノフルオロフェノールについて、その異性体の生成比率を制御して目的のシアノフルオロフェノールを高純度で安全・簡便に得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題の解決手段】 以上のように、従来の製法はいずれもモノフルオロアニソールないしモノフルオロフェノールを出発物質として用い、フッ素以外の置換基に水酸基とシアノ基を導入する製法であるが、本発明の製造方法は、(イ)ジフルオロベンゾニトリルを出発物質とし、(ロ)これをアルコキシ化してフッ素の1つを最終的にOH基に置換すること、(ハ)このアルコキシ化によって生成するフルオロアルコキシシアノベンセン異性体の生成比率を制御して目的のシアノフルオロフェノールを得ることを特徴とする。さらに、好ましくは(ニ)シアノフルオロフェノールの異性体混合物から各異性体を効率的に分離する工程を有することを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の構成からなるシアノフルオロフェノ−ルの製造方法が提供される。
(1) 次式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリル
【化1】
を金属アルコキシド(RO)nM(式中、Rは炭化水素基、Mは金属原子、nはMの価数)またはアルカリ共存下にアルコールROH(式中、Rは前記と同じ)と反応させてアルコキシ化することによって、次式IIのフルオロアルコキシベンゾニトリル異性体の混合物(式中、Rは前記に同じ)とし、
【化2】
このアルコキシ化の際に、有機溶媒の種類によって上記異性体の生成比率を制御し、この混合物にエーテル開裂・加水分解処理を施すことにより次式IIIのシアノフルオロフェノールの混合物とし、
【化3】
この混合物から各異性体を分離精製して4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルまたは2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルを得ることを特徴とするシアノフルオロフェノ−ルの製造方法。
【0010】
本発明は、さらに好ましくは、以下の構成からなる製造方法を提供する。
(2)式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルを、アルコール系の有機溶媒中でアルコキシ化することによって、2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの生成比率を高めて4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルを得る上記(1)に記載する製造方法。
(3)式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルを、エーテル類ないしベンゼン中でアルコキシ化することによって、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成比率を高めて2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルを得る上記(1)に記載する製造方法。
(4)上記式IIIのシアノフルオロフェノール異性体混合物に、水または有機溶媒および金属陽イオン源を添加することによって、異性体のうち一方を金属塩として分離する上記(1)〜(3)のいずれかに記載する製造方法。
(5)上記式IIIのシアノフルオロフェノール異性体混合物を熱水溶解した後に苛性アルカリを添加して2−シアノ−5−フルオロフェノールを優先的にフェノール塩にし、または、有機溶媒の存在下でアルカリ金属イオン源を添加することによって2−シアノ−5−フルオロフェノールを優先的にフェノール塩にし、これを冷却濾過して4−シアノ−3−フルオロフェノールと分離する上記(4)に記載する製造方法。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明の製造方法の概略は以下の経路Aにより表わされる。
【化12】
すなわち、本発明の製造方法は、2,4−ジフルオロベンゾニトリル(式I)を出発物質とし、これにRO- またはROH/アルカリを作用させてフルオロアルコキシベンゾニトリルの異性体混合物(式II)を得た後、上記反応で生じたエーテル結合を開裂させ加水分解して目的化合物(式III)を得る。
【0012】
(I)出発物質
出発物質である2,4−ジフルオロベンゾニトリル(式I)は、種々の方法により合成することができるが、例えば、以下のようにして得ることができる。
【化13】
【0013】
この経路では、2,4−ジクロロトルエン(式 X)のアルキル側鎖を塩素化してα,α,α−トリクロロメチル−2,4−ジクロロトルエン(式XI)としこれを加水分解するか、あるいは原料のトルエンを酸化することにより2,4−ジクロロ安息香酸(式XII )を得る。次いで、これにアンモニアを反応させて酸アミド(式XIII)とし、これをP2 O5 あるいはPCl3 、塩化ホスホリル等と混合・加熱して脱水することにより2,4−ジクロロベンゾニトリル(式 XIV)とする。最後に、ジクロロベンゾニトリル(式 XIV)にフッ化カリウム等のフッ素化剤を作用させてハロゲン交換を行なえば2,4−ジフルオロベンゾニトリル(式I)が得られる。
この製法によれば、従来のシアン化銅を用いて得たシアノフルオロアニソールを原料とする製造方法と異なり、有毒なシアン化銅を用いる必要がないため、安全に2,4−ジフルオロベンゾニトリルを得ることができる。
【0014】
( II )アルコキシ化
本発明の製造方法における第1工程のアルコキシ化は、2,4−ジフルオロベンゾニトリルを金属アルコキシド(RO)n M(式中、Rは炭化水素基、Mは金属原子、nはMの価数)と反応させて、またはアルカリ存在下にアルコールROH(式中、Rは上記と同じ)と反応させることにより行なう。金属アルコキシドは無溶媒で粉末状のまま、あるいはアルコール溶液として用いる。
【0015】
金属アルコキシド中の金属元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属を用いることができる。具体例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、工業的にはナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシドが好ましい。その使用量は2,4−ジフルオロベンゾニトリル1モルに対し、0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0016】
アルカリとアルコールとを用いアルコキシ化する場合に用いる好適なアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリおよび炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリが挙げられる。工業的には、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムが有利である。水酸化アルカリまたは炭酸アルカリの使用量は、2,4−ジフルオロベンゾニトリル1モルに対して0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.2モルである。
アルコールとして工業的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を用いることができる。特にメタノールやエタノールが好ましい。アルコールと他の溶媒を混合して用いても良い。
【0017】
(III) 溶媒効果
溶媒を用いる場合には、2,4−ジフルオロベンゾニトリルおよび金属アルコキシドと容易には反応しないものが用いられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ヘキサンやベンゼン等の飽和、不飽和の炭化水素類、アセトン等のケトン類、イソプロピルエーテルのようなエーテル類、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、ピリジンやDMSO、DMFのような非プロトン性極性溶媒を用いることができる。
【0018】
ここで、シアノ基に対してパラ位のFを優先的に置換(アルコキシドで攻撃)するためには金属アルコキシドと対応した低級アルコール類、特にナトリウムメトキシド−メタノール、ナトリウムエトキシド−エタノールの組み合わせが好ましく、シアノ基に対してオルト位のFを優先的に置換するためには、イソプロピルエーテルやベンゼン等が好ましい。
【0019】
例えば、後述の実施例に示すように、2,4−ジフルオロベンゾニトリル溶液に14%NaOC2 H 5 ないし28% NaOCH3 溶液を滴下してフルオロアルコキシベンゾニトリルを生成させる際、エチルアルコールまたはメチルアルコールを溶媒として用いた場合には、2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリル(2-F-4-OR-BzNと略記する場合がある)が優位に生成し、イソプロピルエーテルないしベンゼンを溶媒として用いた場合には、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリル(4-F-2-OR-BzNと略記する場合がある)が優位に生成する。
【0020】
一例として、実施例に示すように、イソプロピルエーテルないしベンゼンを溶媒として用いた場合の上記異性体の生成比率は、4-F-2-OR-BzNが70%以上であるのにに対して2-F-4-OR-BzNは30%以下であり、4-F-2-OR-BzNの選択性が格段に高い。従って、2−シアノ−5−フルオロフェノールの生成に有利である。
一方、アルコール類を溶媒として用いた場合には、2-F-4-OR-BzNの生成比率が高く、従って、4−シアノ−3−フルオロフェノールの生成に有利である。
【0021】
アルコキシ化の反応温度、時間等の条件は、適宜、最適条件を選定すればよいが、概ね−20〜200℃の温度、30分〜48時間が適当である。なお、シアノ基に対してパラ位のFを優先的に置換するためには還流条件下にアルコキシドを滴下するのが好ましく、基質濃度が低く、また長時間かけてアルコキシドを滴下したほうが、2-F-4-OR-BzNの生成比率が高くなる傾向がある。一方、アルコール系溶媒中でオルト位のFを優先的に置換するには比較的低温、例えば10℃〜室温程度で、比較的短い時間内にアルコキシドの全量を添加するのが好ましい。
【0022】
反応混合物から副生フッ化ナトリウムを濾過等により除いた後、溶媒を留去することにより2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルと4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの混合物が得られる。この2つの異性体は融点、沸点ともに近接しており、通常の方法では収率よく分離するのが難しいが、本発明の製造方法では敢えて両者を分離することなく、第2段のエーテル開裂・加水分解反応に移行する。
【0023】
(IV) エーテル開裂・加水分解
エーテル開裂反応は、既知の方法によって行うことができる。好ましくは、トルエンまたはキシレン等の溶媒中または無溶媒で塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム−塩化ナトリウム(1:1錯体)等のルイス酸触媒を用いて行なうことができる。工業的には特に塩化アルミニウムが好ましい。その使用量はフルオロアルコキシベンゾニトリル1モルに対して1〜3モル、好ましくは1.01〜1.5モルである。反応温度は80〜200℃、好ましくは100〜140℃であり、反応時間は3〜24時間である。
【0024】
上記エーテル開裂反応の後、反応混合物を加水分解することにより4−シアノ−3−フルオロフェノール(式 VII)と、2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル(式VIII)の混合物が得られる。
【化14】
【化15】
【0025】
(V) 異性体の分離精製
上記異性体は物性が似ているので通常の方法では収率良く分離するのは難しいが、以下の方法により効率的に分離精製することができる。
(イ) 蒸留昇華法:シアノフルオロフェノールの上記異性体混合物を加熱し蒸留または昇華によって異性体を分離する。具体的には混合物を加熱蒸留し、2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルを蒸留物として得、釜残渣として4−シアノ−3−フルオロフェノールを得ることができる。加熱温度は70〜300℃、好ましくは150〜190℃が適当である。
また、2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルは常圧下で浴温80℃付近から昇華し、減圧下では更に低い温度で昇華させることができ、これらの圧力温度下で上記異性体を昇華分離することができる。
(ロ) アルカリ金属塩法:シアノフルオロフェノールの上記異性体混合物に、水または有機溶媒中でアルカリ金属イオン源を添加して一方を金属塩として溶解あるいは析出させ分離する。
【0026】
上記アルカリ金属塩法において、異性体の一方を水中に金属塩として溶解させる場合は、まず両異性体の混合物を所要量の熱水に添加して水溶液またはスラリーとし、その後、苛性アルカリを添加するとフェノール水酸基の酸性度の違いから、2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルが優先的にフェノール塩を形成する。フェノール塩は水溶性のため、適宜冷却し濾過することにより、そのほぼ全量が濾液から回収される。一方、4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルは冷却時に水難溶性であるから、上記濾過の際に結晶として分離できる。苛性アルカリとしては水酸化アルカリまたは炭酸アルカリ、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることができる。苛性アルカリの添加量は2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル含量の0.7〜1.5倍モル相当が適当であり、好ましくは0.9〜1.2倍モル相当が良い。
【0027】
さらに、上記アルカリ金属塩法において、異性体の一方を有機溶媒から金属塩として析出させる場合にも、両異性体の有機溶媒溶液に金属アルコキシド等のアルカリ金属イオン源を添加すると、2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルが優先的にフェノール塩を形成し析出し、濾液には4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルが残る。ここで、有機溶媒としては、両異性体と反応せず金属アルコキシドと容易に反応しないものであればよい。例えば、エタノール、メタノールなどのアルコールを用いることができる。アルカリ金属イオン源としては苛性アルカリ/有機溶媒も利用できるが、水の生成により2−シアノ−5−フルオロフェノ−ル金属塩の溶解度が高くなってしまうので、金属アルコキシドを用いることが好ましい。その種類は特に限定されないが、例えば、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等を用いることができる。金属アルコキシドは粉末のまま添加してもよいが、一般的には対応するアルコールの溶液として加えるのが好ましい。
【0028】
上記アルカリ金属塩法で得たフェノ−ル塩は、いずれも酸を添加することにより2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルに戻すことができる。また、分離された4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルは再結晶によりさらに純度を高めることができる。また、この場合、フェノール塩の形成の後、ハロゲン化アルキルやアルキル硫酸等のアルキル化剤またはシリル化剤を用いて、フェノール塩をアルコキシまたはシリル化合物に転化し、通常の方法により他の異性体(遊離のフェノールとして存在)から分離してもよい。
【0029】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、2,4−ジフルオロベンゾニトリルを出発物質として2段階でシアノフルオロフェノールを得ることができる。得られたシアノフルオロフェノールは2−シアノ−5−フルオロフェノールと4−シアノ−3−フルオロフェノールとの混合物であるが、本発明によれば、生成過程で生じる異性体の生成比率を制御して目的化合物の中間体を優位に生成できるので、効率良く、高純度でそれぞれの化合物を得ることができる。特にアルコキシ化の反応条件によっては4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルを大幅に優先的に生成することができるので、4−シアノ−3−フルオロフェノールを効率良く得ることができる。
また、従来の製造方法と異なり、2,4−ジクロロベンゾニトリルを出発原料とし、有毒なシアン化物を用いる必要がないため、工業的に安全にかつ簡便に製造することが可能である。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
実施例1(アルコキシ化工程)
撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えたフラスコ中に、2,4−ジフルオロベンゾニトリル97.3g(0.7 モル)とメタノール194.6gを仕込み還流撹拌させた。これに28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下して、1時間反応させた。反応後、メタノールを留去し、冷却後、ジクロロメタン約200mlを加え、アルコキシ化に際して副生したフッ化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮してフルオロメトキシベンゾニトリル混合物105.7gを得た。
この混合物をガスクロマトグラフィにより分析したところ、2−フルオロ−4−メトキシベンゾニトリルが56.4%、4−フルオロ−2−メトキシベンゾニトリルが37.6%含まれていることが確認された。
【0031】
実施例2
アルコキシドの種類または濃度、溶媒の種類および滴下温度を代えた他は実施例1と同様にしてフルオロアルコキシベンゾニトリル混合物を製造した。条件および結果を表1に示す。なお、異性体生成比は実施例1と同様にガスクロマトグラフィによる面百値より求めた。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すように、溶媒としてアルコールを用いることにより、2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの生成比を高めることができる。一方、ベンゼンやイソプロピルエーテル(IPE) を溶媒として用いることにより、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成比を高めることができ、この場合、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成比は2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの約2倍以上である。
なお、アルカリ金属をNaからLiに変えてもほぼ同じ結果が得られる。さらに、K塩のアルコキシドを用いても、2−フルオロ−4−メトキシベンゾニトリルの選択性は低下するが、全体の傾向は変わらない。
本実施例ではエチル基およびメチル基を有する金属アルコキシについての結果を示したが、他のアルキル基を始めとする炭化水素基を有する金属アルコキシを用いても同様の傾向が認められる。
【0034】
実施例3(エーテル開裂・加水分解工程)
撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えたフラスコ中に、実施例1で得た2−フルオロ−4−メトキシベンゾニトリル(56.4%)と4−フルオロ−2−メトキシベンゾニトリル(37.6%)の混合物105.7gを仕込み、これにトルエン528.5gおよび無水塩化アルミニウム102.8gを加えて110〜120℃に加熱し、15時間撹拌還流した。反応後、水を加えて錯体を加水分解した後、有機層を水洗して中性とし、減圧下に溶媒を留去した。この濃縮物を159℃に加熱して真空蒸留(20torr)した。留出液として2−シアノ−5−フルオロフェノール31.9gを得、釜残渣として4−シアノ−3−フルオロフェノール49.2gを得た。これら異性体のIRによる測定結果を表2に示した。また、これらをガスクロマトグラフィにより分析したところ、前者の純度は99%以上であり、後者の純度は99%以上であった。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例4(異性体の分離精製工程)
実施例3に記載の方法により脱メチル化して得た両異性体の濃縮混合物91.1gを撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに入れ、水364.4gを加えて加熱溶解し、約80℃で10%水酸化ナトリウム水溶液106.4gを添加した後、5℃までに冷却して析出した結晶を濾過分取、水洗し、これを60℃で24時間乾燥し白色結晶の4−シアノ−3−フルオロフェノール46.5gを得た。これをガスクロマトグラフィにより分析したところ純度98%以上であった。
【0037】
実施例5
実施例3に記載の方法により脱メチル化して得た両異性体の濃縮混合物91.1gを撹拌機、還流冷却機、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに入れ、メタノール91.1gを加えて溶解し約5℃に冷却した。これに、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液54.0gを約30分要して滴下する。このスラリーに塩化メチレン455gを加えさらに5℃で1時間冷却した後、吸引濾過して2−シアノ−5−フルオロフェノールのナトリウム塩を得た。このナトリウム塩を約150mlの水に溶解し、濃塩酸44gを加えて酸性化して析出した結晶を吸引濾過、水洗した後、60℃で24時間乾燥して純度99%以上の2−シアノ−5−フルオロフェノール32.8gを得た。
また、初めのメタノール−塩化メチレン濾液を減圧濃縮して得られた濃縮残渣を、濃塩酸2.8gを含む水638mlから再結晶して純度99%以上の4−シアノ−3−フルオロフェノール49.2gを得た。
Claims (5)
- 次式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリル
- 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルを、アルコール系の有機溶媒中でアルコキシ化することによって、2−フルオロ−4−アルコキシベンゾニトリルの生成比率を高めて4−シアノ−3−フルオロフェノ−ルを得る請求項1に記載する製造方法。
- 式Iの2,4−ジフルオロベンゾニトリルを、エーテル類ないしベンゼン中でアルコキシ化することによって、4−フルオロ−2−アルコキシベンゾニトリルの生成比率を高めて2−シアノ−5−フルオロフェノ−ルを得る請求項1に記載する製造方法。
- 上記式IIIのシアノフルオロフェノール異性体混合物に、水または有機溶媒および金属陽イオン源を添加することによって、異性体のうち一方を金属塩として分離する請求項1〜3のいずれかに記載する製造方法。
- 上記式IIIのシアノフルオロフェノール異性体混合物を熱水溶解した後に苛性アルカリを添加して2−シアノ−5−フルオロフェノールを優先的にフェノール塩にし、または、有機溶媒の存在下でアルカリ金属イオン源を添加することによって2−シアノ−5−フルオロフェノールを優先的にフェノール塩にし、これを冷却濾過して4−シアノ−3−フルオロフェノールと分離する請求項4に記載する製造方法。
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