JP3662898B2 - 長座位体前屈測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長座位体前屈測定装置に係り、特に、高齢者等の身体測定に用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
身体測定−身体能力測定−においては柔軟性の測定がおこなわれている。この場合、柔軟性は関節の可動域と筋の伸展性をみるもので、日常生活や運動に関わる重要な機能で、加齢による低下は身体の老化と関連しているといわれており、特に肩こりや腰痛、スポーツ障害などと関連が指摘されている。また精神的な緊張が柔軟性の低下を招くこともよく知られており、予防医学や臨床などの分野に応用されている。
【0003】
柔軟性を測定する方法として、一般的に、立位体前屈や座位体前屈(長座位体前屈)などの方法が知られている。
立位体前屈は、両脚をそろえて台の上に立ち、上体をいっぱいに曲げて手を伸ばし、台上面を0cmとして、何cmまで曲げられるかを測定するものである。また、座位体前屈(シット・アンド・リーチ)とは、床などに下肢を伸ばした長座位で座り、上体を前方にいっぱいに曲げて手を伸ばし、何cmまで曲げられるかを測定するものである。
【0004】
近年、これらのテストのうち、長座位体前屈が多く採用されるようになってきている。これは、被験者において測定時の安全性の確保のために各測定項目に対応した基本姿勢をきちんと取らせることが、非常に重要であるためである。特に、高齢者等においては、立位姿勢等に比べて、長座位体前屈姿勢は安全性の確保を比較的容易にする項目であることによる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、体幹の筋力が低下している高齢者や、姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合には、被験者の緊張感が高まるので,動作に対して適切に補助する必要があり、測定者は,被験者に予測されるあらゆる動きを想定し,それらに対応する技術も保持していなければならないという要求があり、これが測定者における負担増の原因となっていた。
また、運動障害を有する被験者に対してこのような柔軟性測定をおこなう場合に、車椅子で測定場所まで被験者を移動することが必要であり、この状態から床面に被験者を下ろして測定をおこない、また、車椅子に載せて移動していたが、これが、測定者における大きな負担となっており、これを低減したいという要求があった。さらに、被験者は立位から床面に座り測定後再び立ち上がる必要があるが、被験者のうち高齢者にとっては、これが大きな負担になっているという問題があった。
また、上述したように、上記のような被験者においては、一人に対して必要な測定時間が長いため、これを短縮したいという要求が存在していた。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
▲1▼被験者の安全確保の向上を図ること。
▲2▼測定者の負担削減を図ること。
▲3▼測定時間の短縮を図ること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の長座位体前屈測定装置は、被験者が押すための測定腕部と、該測定腕部を略水平方向に片持ち支持する測定部と、該測定部を前記測定腕部の延在する方向と略直交する水平方向に移動可能として支持する支持部とを有し、
前記測定腕部が、測定部に対して上下方向固定位置設定可能とされるとともに、測定部に対して片持ち支持される基部を支点に鉛直方向に回動可能に設けられてなることにより上記課題を解決した。
また、前記測定腕部がファンクショナルリーチ測定位置に固定可能に設けられてなる手段を採用することができる。
また、本発明において、前記測定腕部よりも下側位置に設けられ略水平な座面及び該座面を床面よりも高い位置に支持する脚部をそれぞれ有する測定用椅子を有する手段を採用することもできる。
本発明における前記測定用椅子が等しい高さの座面を有する分割可能な着座椅子および下肢椅子からなることが好ましい。
また、前記着座椅子が背もたれを有することがある。
本発明の前記測定用椅子が車椅子とされることができる。
【0008】
本発明の長座位体前屈測定装置は、被験者が両足を伸ばして座り上体をいっぱいに伸ばすとともに両手で押すための測定腕部と、この測定腕部と一体として被験者が押圧した方向に移動可能な測定部と、この測定部を被験者の伸ばした両足の方向に移動可能として支持する支持部と、を有し、具体的には、支持部が水平方向に設けられる支持レールと、この支持レールの両端から下方に垂設されこの支持レールを床等から30cm程度に位置するための支持脚部とを有し、測定部として支持レールに沿って移動可能な測定基部と、この測定基部に垂設され測定腕部が固定される測定支持柱と、測定支持柱に対して測定腕部の固定位置を設定可能な腕高さ調節部と、支持レールから平面視して直交するように調節部に固定される測定腕部と、を有する。これにより、支持レールに沿って被験者の下肢を伸ばすように長座位で座らせ、被験者の体型に合わせて測定腕部の高さを調節して長座位体前屈測定をおこなうことができる。
【0009】
ここで、測定部には、測定基部が支持レールに対して移動した距離を測定するための測定手段と、この測定結果を表示するための表示手段とが設けられる。具体的には、支持レールに沿って設けられたラックと、このラックに噛み合うように測定基部に設けられたピニオンと、このピニオンの回転量によって測定基部移動量を算出するとともにそのデータを表示手段に出力する演算手段と、演算手段の出力したデータに従って数値を表示する液晶表示パネル、発光ダイオードパネル等を設けることができる。これにより、被験者が測定腕部を押して測定部を移動することのみで、測定値を表示することができる。
【0010】
本発明において、前記測定腕部が、片持ち支持される基部を支点に回動可能として腕高さ調節部に設けられることにより、被験者を支持レール横に座らせる際には測定腕部を直立させて被験者や介護者等のじゃまにならないようにし、被験者が長座位となり測定位置に座った後に被験者の前に測定腕部を横にするとともに測定基部を支持レールに沿って測定開始位置に設定する。また、測定終了後には、測定腕部を直立させて、被験者およびその介護・指示をおこなう測定者等が被験者が移動する際に測定腕部がじゃまにならないようにすることができる。これにより、動作に規制のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することを、より容易におこなうことができる。これにより、測定者(介護者)の負担を低減することが可能となるとともに、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0011】
また、測定腕部を支持レールの両側に倒せる構成とすることで、支持レールの両側でそれぞれ交互に長座位体前屈測定をおこなうことが可能となる。これにより、動作が健常者より遅いあるいは動作障害があるため測定位置に着くまでに時間のかかる被験者であっても、支持レールの一方側で測定をおこなっているときに支持レールの他方側に他の被験者を測定位置に着けることで、一人ずつ測定をおこなう場合に比べて、格段に測定時間を短くすることが可能となる。
なお、支持レールの両側の被験者がそれぞれ対面する方向に座らせることで、双方の被験者を着座・移動させる際にも、より互いの影響が少なくて済み、測定者の負担を低減することが可能となる。
【0012】
さらに、前記測定腕部が、例えば垂直状態とされるファンクショナルリーチ測定位置に固定可能とされているため、測定腕部をこのファンクショナルリーチ測定位置とした状態でファンクショナルリーチ測定に使用することができる。つまり、本発明の長座位体前屈測定装置においては、測定腕部を長座位体前屈測定位置とファンクショナルリーチ測定位置との間で切り替えることにより、長座位体前屈測定装置、および、ファンクショナルリーチ測定装置として一台の装置を切り替えて異なる測定に使用することも可能となる。
ここで、ファンクショナルリーチ(Functional reach:FR)測定とは、体のバランス感覚を計測するためのもので、例えば、立位の被験者に伸身状態で前傾姿勢をとらせ、どれくらい傾いたかを計測するものである。
【0013】
また、本発明において、測定位置である水平方向に向いた測定腕部よりも下側位置に設けられた座面及び該座面を床面よりも高い位置に支持する脚部をそれぞれ有する測定用椅子を有することにより、被験者を床面上ではなく、床よりも高い位置にある椅子に座らせて長座位体前屈測定をおこなうことが可能となる。これにより、歩いて測定装置付近まで移動してきた被験者を、立位から床面上で長座位とする必要がないため、動作に規制のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することを、より容易におこなうことができる。これにより、測定者(介護者)の負担を低減することが可能となるとともに、測定時間の短縮を図ることが可能となる。さらに、車椅子で測定装置付近まで移動してきた被験者の全体重を支えて床面上まで下ろし、この位置で長座位とする必要がないため、車椅子の使用が必要程度の、重度の動作障害のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することを、さらに容易におこなうことができる。これにより、測定者(介護者)の負担をより一層低減することが可能となるとともに、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0014】
なお、座面が略水平とは、長座位体前屈測定に際して必要な、測定の正確性を得られる程度に水平であればよく、例えば、下肢や体幹の障害等で充分な測定姿勢がとれない被験者に対応して、傾斜した座面を用いることや、被験者の下肢の位置に応じて一部が欠けた座面を用いることで下肢が水平位置より下がった状態で測定をおこなうことも可能である。
【0015】
本発明における前記測定用椅子が等しい高さの座面を有する分割可能な、少なくとも被験者に対して腰を下ろさせる着座椅子と、下肢を伸ばして長座位とする際に下肢を支える下肢椅子とからなり、測定場所において、移動してきた被験者を着座椅子に腰掛けさせた後被験者の下肢を伸ばして該下肢の下に下肢椅子を入れることで、被験者を椅子の上で長座位とする。これにより、測定者が被験者を椅子の上に抱え上げたりすることなく被験者を長座位とすることができるので、長座位体前屈測定における測定者の負担をより低減することができるとともに、被験者にかかる負担も低減することが可能となる。
【0016】
また、前記着座椅子に背もたれを設けることにより、被験者を着座椅子に座らせる際に背もたれに寄りかからせて、効率的に長座位とするとともに、着座椅子に座らせる際に背もたれを被験者が手でつかんで、自分自身の移動補助具とすることもできる。また、長座位体前屈測定時に、被験者が測定開始姿勢になった際に上体を寄りかからせて身体の安定を図ることができる。
【0017】
本発明の前記測定用椅子として、上述の下肢椅子と同じ高さの座面を有する車椅子を採用することによって、車椅子を測定腕部に対する測定位置に停止して、この位置で車椅子に座っている被験者の下肢を伸ばしてこの下肢の下側に下肢椅子を位置することで、被験者が車椅子に座ったままで長座位体前屈測定をおこなうことが可能となる。これにより、測定者が被験者を抱えて車椅子から他の場所に移動することなく測定をおこなうことができるため、測定時間の短縮と介護測定者の負担削減を図ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1,図2は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す斜視図、図3は支持レールおよび測定基部の拡大断面図、図4は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す正面図、図5は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す側面図であり、図において、符号1は長座位体前屈測定装置である。
【0019】
本実施形態の長座位体前屈測定装置1は、被験者が両足を伸ばして座り上体をいっぱいに伸ばすとともに両手で押すための測定腕部2と、この測定腕部2と一体として被験者が押圧した方向に移動可能な測定部3と、この測定部を被験者の伸ばした両足の方向に移動可能として支持する支持部4と、水平方向に向いた測定腕部2よりも下側位置に設けられた座面51を有する測定用椅子5と、を有する。
【0020】
支持部4には、水平方向に設けられる支持レール41と、この支持レール41の両端から下方に垂設されこの支持レール41を後述する測定用椅子5の座面51と同程度の高さに位置するための支持脚部42,42と、これら支持脚部42,42の下端部どうしを連結する連結部43と、支持脚部42下端部から支持レール41と直交するように水平方向両側に突出する脚部44,44とが設けられる。脚部44の先端部には、それぞれキャスタ45とストッパ46とが設けられ、キャスタ45は回転方向が180°回転可能なものとされ、ストッパ46は、脚部44に螺合されて、回転することでその高さを変化でき、キャスタ45で支持部4を移動して、ストッパ46で設置位置を固定することができる。
支持レール41は、図3に示すように、断面矩形状に設けられている。
【0021】
測定部3は、支持レール41を囲むように設けられ、支持レール41に沿って移動可能な測定基部31と、この測定基部31に垂設され測定腕部2が固定される測定支持柱32と、測定支持柱32に対して測定腕部2の固定位置を設定可能な腕高さ調節部33と、を有する。腕高さ調節部33には、測定腕部2が、図1,図2,図4,図5に示すように、片持ち支持される基部21側を支点として回動可能として設けられている。
【0022】
測定腕部2は、その基部21に回動中心軸となる支点22が設けられ、この支点22よりも短い側の端部および支点22付近に、支点22の軸線と平行に貫通された固定用ストッパ穴23a〜23cが、図5に示すように、支点22の周囲に90度ごととなるように3ヶ所設けられる。このストッパ穴23a〜23cに対応して腕高さ調節部33には、前記支点22の軸線と平行に移動可能なストッパ33aが設けられ、このストッパ33aをストッパ穴23bに挿入することにより測定腕部2の固定角度を垂直方向に、また、ストッパ33aをストッパ穴23a,23cに挿入することにより測定腕部2の固定角度を水平方向に、切り替えることが可能となっている。
【0023】
腕高さ調節部33には、この腕高さ調節部33の測定支持柱32に対する高さ位置を調節して固定するための固定部33bが設けられるとともに、その高さ位置を設定するための目盛り32aが測定支持柱32に設けられる。
測定基部31の両端側内側位置には、図3,図4に示すように、矩形の支持レール41断面四隅に転動可能に当接するローラ35,35が設けられており、測定基部31が支持レール41に沿って移動可能とされている。
【0024】
また、測定部3には、測定基部31を支持レール41に固定するためのストッパ31aが設けられ、また、測定基部31が支持レール41に対して移動した距離を測定するための測定手段36として、支持レール41に沿って設けられたラック36aと、このラック36aに噛み合うように図示しない支持手段によって測定基部31に設けられたピニオン36bが設けられる。
【0025】
また、測定部3としては、このピニオン36bの回転量によって測定基部31移動量を算出するとともにそのデータを出力する図示しない演算手段と、演算手段の出力したデータに従って数値を表示する液晶表示パネル、発光ダイオードパネル等の表示手段37を設けることができる。この表示手段37には、電源スイッチ37aと内部データをリセットして新たに測定を始める際のリセットスイッチ37bとが設けられ、演算手段および表示手段37を駆動するための電源部が内蔵されてこれらに接続されている。
【0026】
また、測定用椅子5は、測定位置である水平方向に向いた測定腕部2よりも下側位置に設けられた座面51を有するものとされ、この測定用椅子5は、被験者に対して腰を下ろさせる着座椅子52と、下肢を伸ばして長座位とする際に下肢を支える下肢椅子53とを有する。これら着座椅子52と下肢椅子53とは、それぞれ等しい高さの座面51を有し、これらの座面51の高さは床等から30cm程度に設定される。
【0027】
着座椅子52には背もたれ54が設けられ、下肢椅子53とは別々に移動可能とされている。
また、図1において、支持レール41の右側のみに測定用椅子5が描かれているが、支持レール41の両側にそれぞれ1セットずつ設置することもできる。
なお、図1には下肢椅子53は1個のみ描かれているが、図7のように、1つの着座椅子52に対して下肢椅子53をさらに複数個設け、例えば、被験者の片足ずつ別の下肢椅子53に乗せる構成とすることも可能である。
【0028】
着座椅子52および下肢椅子53において、それぞれの座面51は略水平とされている。ここで、座面51は、長座位体前屈測定に際して必要な、測定の正確性を得られる程度に水平であればよく、例えば、下肢や体幹の障害等で充分な測定姿勢がとれない被験者に対応して、傾斜した座面を用いることや、被験者の下肢の位置に応じて一部が欠けた座面を用いることで、例えば片足が水平位置より下がった状態で測定をおこなうことなども可能である。
【0029】
このような長座位体前屈測定装置1における測定について説明する。
【0030】
まず、ストッパ46を上げて、キャスタ45,45によって移動してきた長座位体前屈測定装置1を、それぞれの脚部44においてストッパ46によって固定し、支持部4を測定位置に配置する。
次いで、図2に示すように、ストッパ33aをストッパ穴23bに挿入することにより測定腕部2を垂直上方向に向け、この状態で、図1のように、着座椅子52を測定位置となるように配置する。これにより準備が完了する。
【0031】
測定を始めるに当たって、歩いて、あるいは車椅子等の移動手段で測定装置1付近まで移動してきた被験者を、着座椅子52に腰掛けさせる。このように被験者を着座椅子52に腰掛けさせた後、被験者の下肢を伸ばして該下肢の下に下肢椅子53を入れることで、被験者を椅子5の上で長座位とする。このとき、可能であれば、背もたれ54に被験者を寄りかからせておく。
【0032】
次いで、腕高さ調節部33の高さを被験者にあわせて設定し固定部33bにより固定する。その後、測定腕部2を支持レール41の着座椅子52側の水平位置になるように倒し、ストッパ33aをストッパ穴23aに挿入することによりこれを固定する。
ストッパ31aを解除して測定基部31が支持レール41に対して移動可能な状態にした後、図8に示すように、被験者に対応した測定開始位置に設定し、電源スイッチ37a、リセットスイッチ37bを作動して、測定開始状態とする。
【0033】
この後、図8に示すように、上体を前方にいっぱいに曲げて手を伸ばし、測定腕部2を押して測定部3を支持レール41に沿って移動し、この移動距離により、長座位体前屈として何cmまで曲げられるかを測定する。これにより、被験者が測定腕部2を押して測定部3を移動することのみで、表示手段37に測定値が表示される。
【0034】
測定後、測定値を記録するとともに、ストッパ33aをストッパ穴23bに挿入することにより測定腕部2を上向きにするか、または、ストッパ33aをストッパ穴23cに挿入することにより被験者のいないほうの水平方向に向けて被験者の移動にじゃまにならないようにした後、下肢椅子53を移動させて被験者の下肢を床に着く状態にし、その後、着座椅子52から被験者を移動する。
これで、一人の被験者に対する測定を終了する。
【0035】
本実施形態の長座位体前屈測定装置1は、支持レール41に沿って移動可能な測定基3に測定腕部2が設けられているため、支持レール41に沿って被験者の下肢を伸ばすように長座位で座らせ、被験者の体型に合わせて測定腕部2の高さを調節して長座位体前屈測定をおこなうことができる。これにより、測定値を他の目盛り等を用いていちいち計測したりする必要がなく、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0036】
本実施形態において、測定腕部2が、片持ち支持される基部21を支点に回動可能として腕高さ調節部33に設けられることにより、被験者を支持レール41横に座らせる際には測定腕部2を直立させて被験者、測定者や介護者等のじゃまにならないようにし、被験者が長座位となり測定位置に座った後に被験者の前に測定腕部2を横にするとともに測定基部31を支持レールに沿った測定開始位置に設定することができる。これにより、測定開始にかかる作業時間短縮を図ることができるとともに、測定者・介護者の負担を低減することができる。また、測定終了後には、ストッパ33aをストッパ穴23cまたは23bに挿入することにより測定腕部2を直立または水平位置とさせて、被験者が移動する際に測定腕部2がじゃまにならないようにすることができ、これにより、動作に規制のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することを、より容易におこなうことができ、これにより、測定者(介護者)の負担を低減することが可能となるとともに、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態において、測定位置の測定腕部2よりも下側位置に設けられた座面51を有する測定用椅子5を有することにより、被験者を床面上ではなく、床よりも高い位置にある椅子5に座らせて長座位体前屈測定をおこなうことが可能となる。
これにより、歩いて測定装置1付近まで移動してきた被験者を、下肢を折り畳む等によって床面上で立位から長座位とする、あるいは、床面における座位から立位へとする必要がなく、動作に規制のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者の体重を全て介護者が支えるということなしに、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することができる。これにより、より容易に長座位体前屈測定をおこなうことができるとともに、被験者の安全を向上し測定者(介護者)の負担を低減することが可能となり、かつ、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0038】
さらに、測定用椅子5を使用することで、車椅子で測定装置1付近まで移動してきた被験者の全体重を支えて床面上まで下ろし、この位置で長座位とする必要がなく、車椅子の座面とほぼ同程度の高さの座面51を有する測定用椅子5に座り換えて移動するだけでよいため、車椅子使用が必要な程度の、重度の動作障害のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、被験者を測定位置に着かせ、また、測定位置から移動することを、さらに容易におこなうことができる。これにより、測定者(介護者)の負担をより一層低減することが可能となるとともに、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0039】
本実施形態における測定用椅子5が等しい高さの座面51を有する複数の着座椅子52と下肢椅子53とからなり分割状態とされることで、測定場所において、移動してきた被験者を着座椅子52に腰掛けさせた後、被験者の下肢を伸ばして該下肢の下に下肢椅子53を入れることで、被験者を椅子5の上で長座位とすることができる。これにより、測定者が、被験者の足を延ばした状態で椅子5の上に抱え上げたりすることなく被験者を長座位とすることができるので、長座位体前屈測定における測定者の負担をより低減することができるとともに、被験者にかかる負担も低減することが可能となる。
【0040】
また、前記複数の測定用椅子5のうち少なくとも1つを着座椅子52として背もたれ54を設けることにより、被験者を着座椅子52に座らせる際に背もたれ54に寄りかからせて、効率的に長座位とするとともに、着座椅子52に座らせる際に背もたれ54を被験者が手でつかんで、自分自身の移動補助具とすることもできる。また、長座位体前屈測定時に、被験者が測定開始姿勢になった際に上体を背もたれ54に寄りかからせて体幹の安定を図ることができる。これにより被験者の安全を向上し測定者・介護者の負担を低減することが可能となり、かつ、測定時間の短縮を図ることが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態においては、測定用椅子5を支持レール41の両側に配置するとともに、測定腕部2を支持レール41の両側に倒せる構成とすることで、支持レール41の両側でそれぞれ交互に長座位体前屈測定をおこなうことが可能となる。
この場合、図1に示す位置に配置された測定用椅子5に座った被験者に長座位体前屈測定をおこなう際には、ストッパ33aをストッパ穴23aに挿入することにより測定腕部2を水平位置に固定し、図1に示す位置と逆側に配置された測定用椅子5に座った被験者に長座位体前屈測定をおこなう際には、ストッパ33aをストッパ穴23cに挿入することにより測定腕部2を水平位置に固定することができる。
【0042】
これにより、動作が健常者より遅いあるいは動作障害があるため測定位置に着くまでに時間のかかる被験者であっても、支持レール41の一方側で測定をおこなっているときに支持レール41の他方側に他の被験者を測定位置に着けることで、一人ずつ測定をおこなう場合に比べて、格段に測定時間を短くすることが可能となる。
さらに、支持レール41の両側の被験者がそれぞれ対面する方向に座らせることで、双方の被験者を着座・移動させる際にも、より互いの影響が少なくて済み、測定者の負担を低減することが可能となる。
【0043】
なお、測定用椅子5において、下肢や体幹の障害等で充分な測定姿勢がとれない被験者に対応して、傾斜した座面を用いることや、被験者の下肢の位置に応じて一部が欠けた座面を用いることで下肢が水平位置より下がった状態で測定をおこなうことも可能である。また、図7のように、1つの着座椅子52に対して下肢椅子53を複数個設け、例えば、被験者の片足ずつ別の下肢椅子53に乗せることで、被験者の運動能力に応じて細かな対応をすることが可能となる。
【0044】
また、これらの測定用椅子5の全部、あるいは、一部分を支持部4と一体として構成することもできる。ここで、着座椅子51を支持部と一体とした場合には、測定開始位置に測定用椅子5をセッティングする必要がなく、測定開始までの作業時間を短縮することが可能になるとともに、長座位体前屈測定装置1を搬送する際に、部品点数が減るため、搬送作業を楽におこなうことができ、測定者の負担を低減することができる。
【0045】
以下、本発明に係る長座位体前屈測定装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す正面図である。
【0046】
本実施形態においては、測定支持柱32を水平側に倒すことの可能な構成とされている点が、上記の実施形態と異なっている。これ以外の対応する構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施形態においては、測定支持柱32を収納時に水平側に倒す構成としてある。
具体的には、図6に示すように、ヒンジ38によって測定支持柱32が支持レール41に沿って倒れるように構成されるとともに、ストッパ39により測定支持柱32を垂直状態に固定可能となっている。この構成により、非測定時、この長座位体前屈測定装置1の運搬時や収納時にはストッパ39を解除して測定支持柱32を倒しておくとともに、測定時には測定支持柱32を垂直状態としてストッパ39によって固定して使用する。
【0048】
このように測定支持柱32をを折り畳むようにしたことにより、図5に示す長座位体前屈測定装置1の測定時高さhが1m程度であるのに対して、図6に示す収納時高さh1はその半分程度にすることができる。これにより、長座位体前屈測定装置1の全体の大きさを小さくすることができ、収納・移動等をより容易にすることができる。
【0049】
以下、本発明に係る長座位体前屈測定装置の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図9は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す正面図である。
【0050】
本実施形態においては、測定支持柱32を水平側に倒すことの可能な構成とされている点と、測定用椅子5における着座椅子52の代わりに、車椅子55が採用されている点とが、上記の実施形態と異なっている。これ以外の対応する構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態の車椅子55は、下肢椅子53と同じ高さの座面51を有するものとされる。この座面51は、長座位体前屈の測定が可能な程度に水平状態であればよく、既存の車椅子を適用することも可能である。
このような構成において、長座位体前屈測定をおこなう際には、被験者の乗った車椅子55を測定腕部2に対する測定位置に停止して、この位置で車椅子55を固定する。そして、車椅子55に座っている被験者の下肢を伸ばしてこの下肢の下側に下肢椅子53を位置して、図9に示すように、上体を前方にいっぱいに曲げて手を伸ばし、測定腕部2を押して測定部3を支持レール41に沿って移動し、この移動距離により、長座位体前屈として何cmまで曲げられるかを測定する。このように、本実施形態では、被験者が車椅子55に座ったままで長座位体前屈測定をおこなう。このときもまた、図7に示したように、1つの車椅子55に対して下肢椅子53を複数個設けることも可能であり、例えば、被験者の片足ずつ別の下肢椅子53に乗せることで、被験者の運動能力に応じて細かな対応をすることが可能となる。
【0052】
これにより、測定者が被験者を抱えて車椅子55から他の場所に移動することなく測定をおこなうことができるため、車椅子の使用が必要程度の、重度の動作障害のある高齢者や姿勢保持障害を有する有疾患者等を被験者とした場合であっても、測定者・介護者の負担をより一層低減することができるとともに、被験者を車椅子55から他の場所に乗せ変える必要がないため、測定時間の大幅な短縮を図ることが可能となる。
【0053】
以下、本発明に係る長座位体前屈測定装置の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図10は、本実施形態における長座位体前屈測定装置を示す正面図である。
【0054】
本実施形態においては、長座位体前屈測定装置1の測定用椅子5を使用せずに、ファンクショナルリーチ測定に使用する。
ファンクショナルリーチ(Functional reach:FR)とは、体のバランス感覚を計測するためのもので、立位の被験者に伸身状態で前傾姿勢をとらせ、どれくらい傾いたかを計測するものである。
【0055】
ファンクショナルリーチの測定では、図10に示すように、測定腕部2を上向きにして直立位置として、ストッパ33aをストッパ穴23bに挿入することによりこれを固定され、測定腕部2を垂直なファンクショナルリーチ測定位置とする。
そして、腕高さ調節部33を測定支持柱32の上側へ移動し、測定腕部2の上端が、立位状態の被験者の肩と同程度かそれ以上の高さになるようにする。なお、被験者の身長等に対応して、測定腕部2の固定位置(角度)および腕高さ調節部33の高さを適宜設定する。
【0056】
次いで、被験者に両足を揃えて立位姿勢で右手を床と水平に維持してもらい、この状態で被験者の手の先端に測定腕部2が接するように測定部3を支持レール41に対して位置設定し、これを測定開始位置とする。それ以外の点は上述の実施形態における長座位体前屈測定と同様におこなう。
その位置から、伸身のままで踵を挙げることなくできるだけ腕を床に水平のまま延ばして、測定腕部2を押してもらい、最大に腕を伸ばした状態のときにおける表示手段7の表示を測定値とする。
【0057】
本実施形態においては、長座位体前屈測定装置1の測定腕部2を直立させてファンクショナルリーチ測定をおこなうことができる。つまり、一台の装置で二つの体力テストの項目である測定をおこなうことができる。しかも、長座位体前屈測定およびファンクショナルリーチは、高齢者の体力テストにおいて、今後、必須ともなる重要な項目であると思われるため、この二種目を一台の装置でできることは、測定に際して準備する測定者の労力を低減することができる。
【0058】
さらに、図11に示すように、車椅子55に座ったままの被験者であっても、ファンクショナルリーチの測定をおこなうことができる。この場合には、測定用椅子5として、下肢椅子53を使うことはなく、長座位体前屈測の場合と同様に、測定位置に車椅子55を設定して固定し、この状態の車椅子55に座った被験者が上体を前屈するように手を伸ばして測定をおこなう。
【0059】
車椅子55を用いたファンクショナルリーチ測定については、バランス感覚の測定には妥当性に欠ける可能性はあるが、高齢者に対応する現場では、どちらかといえば「車椅子の方も測定に参加させることにより、疎外感を抱かせず、モチベーションを高める」ことを目的としておこなわれている。
この場合、同じ、長座位体前屈測定装置1を使用しても、長座位体前屈測定の場合には測定腕部2を水平状体にし、ファンクショナルリーチ測定の場合には測定腕部を垂直にすることによって、車椅子55に乗った被験者であっても、ファンクショナルリーチ測定をおこなっていると認識することが可能となり、そのモチベーションを高めることが可能となる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の長座位体前屈測定装置によれば、被験者が両足を伸ばして座り上体をいっぱいに伸ばすとともに両手で押すための測定腕部と、この測定腕部と一体として被験者が押圧した方向に移動可能な測定部と、この測定部を被験者の伸ばした両足の方向に移動可能として支持する支持部と、を有し、具体的には、支持部が水平方向に設けられる支持レールと、この支持レールの両端から下方に垂設される支持脚部とを有し、測定部として支持レールに沿って移動可能な測定基部と、この測定基部に垂設され測定腕部が固定される測定支持柱と、測定支持柱に対して測定腕部の固定位置を設定可能な腕高さ調節部と、支持レールから平面視して直交するように調節部に固定される測定腕部と、を有することにより、支持レールに沿って被験者の下肢を伸ばすように長座位で座らせ、被験者の体型に合わせて測定腕部の高さを調節して長座位体前屈測定をおこなうことができ、これにより、測定者の負担を低減し、測定時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】 図1の支持レールおよび測定基部を示す拡大断面図である。
【図4】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態を示す正面図である。
【図5】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態を示す側面図である。
【図6】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第2実施形態を示す正面図である。
【図7】 本発明に係る長座位体前屈測定装置における測定用椅子を示す斜視図である。
【図8】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第1実施形態における長座位体前屈測定を示す正面図である。
【図9】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第3実施形態における長座位体前屈測定を示す正面図である。
【図10】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第4実施形態におけるファンクショナルリーチ測定を示す正面図である。
【図11】 本発明に係る長座位体前屈測定装置の第4実施形態におけるファンクショナルリーチ測定を示す正面図である。
【符号の説明】
1 長座位体前屈測定装置
2 測定腕部
3 測定部
4 支持部
5 測定用椅子
21 基部
22 支点
23a,23b,23c ストッパ穴
31 測定基部
31a ストッパ
32 測定支持柱
32a 目盛り
33 腕高さ調節部
33a ストッパ
33b 固定部
35 ローラ
36 測定手段
36a ラック
36b ピニオン
37 表示手段
37a 電源スイッチ
37b リセットスイッチ
41 支持レール
42 支持脚部
43 連結部
44 脚部
45 キャスタ
46 ストッパ
51 座面
52 着座椅子
53 下肢椅子
54 背もたれ
55 車椅子

Claims (6)

  1. 被験者が押すための測定腕部と、該測定腕部を略水平方向に片持ち支持する測定部と、該測定部を前記測定腕部の延在する方向と略直交する水平方向に移動可能として支持する支持部とを有し、
    前記測定腕部が、測定部に対して上下方向固定位置設定可能とされるとともに、測定部に対して片持ち支持される基部を支点に鉛直方向に回動可能に設けられてなることを特徴とする長座位体前屈測定装置。
  2. 前記測定腕部がファンクショナルリーチ測定位置に固定可能に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の長座位体前屈測定装置。
  3. 前記測定腕部よりも下側位置に設けられ略水平な座面及び該座面を床面よりも高い位置に支持する脚部をそれぞれ有する測定用椅子を有することを特徴とする請求項記載の長座位体前屈測定装置。
  4. 前記測定用椅子が等しい高さの座面を有する分割可能な着座椅子および下肢椅子からなることを特徴とする請求項記載の長座位体前屈測定装置。
  5. 前記着座椅子が背もたれを有することを特徴とする請求項記載の長座位体前屈測定装置。
  6. 前記測定用椅子が車椅子とされることを特徴とする請求項3から5のいずれか記載の長座位体前屈測定装置。
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