JP3662838B2 - 電池パックの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数個の単電池を直列または並列接続した状態で集合一体化して用いる電池パックを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば、電動ドリルや電動グラインダーなどの電動工具やカメラなどの駆動電源としては、比較的高い所要の電圧を得ることができるとともに一体物として取扱いできる電池パックが用いられている。この電池パックとしては、複数個の単電池を有底筒状のパックケース内に収納して、端子部材をパックケースの底面の透孔から外部に露出させた構成となったもの(実開昭61-39862号公報参照)、複数個の単電池を有底筒状のパックケース内に収納して、パックケースと蓋板とに設けられた切欠き部から端子部材を外部に露出させたもの(実開昭62-14662号公報参照)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記電池パックの容量は使用される単電池の種類によって決まり、出力電圧は単電池の使用個数によって決まる。この出力電圧つまり単電池の使用個数は用途に応じて適宜決定されるが、電池パックに用いられるパックケースは、単電池の使用個数が異なる毎に、それら単電池を収容できる容積を有する形状のものを必要とする。したがって、用途に応じて単電池の使用個数が異なる電池パックを構成する場合には、その都度、パックケースを成形するための高価な金型を新たに製作しなければならないので、製作コストが高くつく。しかも、パックケースは、合成樹脂による射出成形により、有底筒状体の所要の箇所に透孔や端子取付部を設けた形状に形成されているので、特に射出成形機の金型の費用が高くつく。このように、従来の電池パックでは、単電池の使用個数が異なる毎に、それら単電池を収容するためのパックケースを新たな金型を用いた射出成形で製作しているので、非常なコスト高となる欠点がある。
【0004】
また、電動工具の駆動電源として用いられる電池パックでは、電動工具のハイパワー化に伴って高電圧と強放電とに耐えることが要求されており、近年では環境対策上の要請もあってニッケル−水素二次電池が一般的に使用されている。また、電池パックに使用される単電池は、無保守化の必要上、密閉化されている。この密閉型電池は、充放電時に発生するジュール熱とガス吸収反応に伴う反応熱とによって温度上昇する。これに対し、電池パックのパックケースは、単電池との電気絶縁を図ることを目的として、合成樹脂製のものが一般的に採用されているが、この合成樹脂製のパックケースは熱伝導性が極めて悪い。
【0005】
したがって、パックケースに複数個収容された各単電池の発熱は、熱伝導性の悪いパックケースによって外部への放熱が妨げられる。さらに、電動工具などの駆動電源として使用される場合には、伝導工具のモータなどを駆動させる放電時に大電流が流れ、これによっても単電池の温度がさらに上昇する。これらにより、単電池の温度は80°C以上にも上昇することがあるが、アルカリ二次電池では、高温になると、満充電できないことから充放電特性が低下するとともに、充放電サイクル寿命が劣化する。
【0006】
従来では、上記単電池の発熱に起因する問題の対策として、熱伝導性に優れた素材で形成した集熱用部材を各単電池に接触させた状態でパックケース内に収納して、各単電池の発熱を、集熱用部材で集熱したのちに、パックケースの外部に放熱するようにしている。しかしながら、上記集熱用部材を用いた集熱手段では、構成が複雑化するのにも拘わらず、単電池の発熱の集熱効果およびパックケース外部への放熱効果が不十分であるとともに、各単電池から均等に集熱することができないので、各単電池間の温度差を解消することができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、単電池の収容個数が異なる各種のものをコストダウンを図りながら製造することができるとともに、発熱による各単電池の温度上昇を極力抑制できる安価な構成を備えた電池パックを製造することのできる電池パックの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係る電池パックの製造方法は、非鉄金属を素材とした材料を押出し加工して長尺の筒状体のケース素体を形成する工程と、前記ケース素体を所定の長さに切断加工してケース基体を形成する工程と、前記ケース基体の所定の箇所に穿孔加工を施してパックケースを形成する工程と、複数個の単電池を直列接続した電池列を並置状態に複数列配置して、前記各単電池と前記パックケース間に電気絶縁を施した状態で前記各電池列を前記パックケース内に収納する工程と、前記パックケースの両端開口を合成樹脂製の同一形状の蓋板でそれぞれ施蓋する工程とを有していることを特徴としている。
【0009】
この電池パックの製造方法では、単電池の収容個数が異なる種々のサイズのパックケースを、単一の押出し金型を用いた押出し加工品であるケース素体を単電池の収容個数に対応する長さに切断加工することにより得られるので、例えば、単電池の収容個数が増えた場合にも新たな金型を製作することなく所要のパックケースを製作することができる。すなわち、この製造方法では、単電池の収容個数に対応してサイズが種々に異なる各パックケースを、単一の押出し金型を兼用して製作できるので、相当のコストダウンを達成することができる。しかも、パックケースは、従来の加工手段として採用されている射出成形に比較して製造コストが格段に低い押出し加工、切断加工および穿孔加工を経て製作するので、これによっても製造コストを一層低減できる。また、非鉄金属製のパックケースと単電池間には電気絶縁を施すので、漏電などの不具合の発生を確実に防止できる。
【0010】
第2の発明に係る電池パックの製造方法は、非鉄金属を素材とした材料を引抜き加工して長尺の筒状体のケース素体を形成する工程と、前記ケース素体を所定の長さに切断加工してケース基体を形成する工程と、前記ケース基体の所定の箇所に穿孔加工を施してパックケースを形成する工程と、複数個の単電池を直列接続した電池列を並置状態に複数列配置して、前記各単電池と前記パックケース間に電気絶縁を施した状態で前記各電池列を前記パックケース内に収納する工程と、前記パックケースの両端開口を合成樹脂製の同一形状の蓋板でそれぞれ施蓋する工程とを有していることを特徴としている。
【0011】
この電池パックの製造方法では、単電池の収容個数が異なる種々のサイズのパックケースを、単一の金型を用いた引抜き加工品であるケース素体を単電池の収容個数に対応する長さに切断加工することにより得られるので、例えば、単電池の収容個数が増えた場合にも新たな金型を製作することなく所要のパックケースを製作することができ、サイズが種々に異なるパックケースを製作する場合に相当のコストダウンを図ることができる。しかも、パックケースは、従来の加工手段として採用されている射出成形に比較して製造コストが格段に低い引抜き加工、切断加工および穿孔加工を経て製作するので、これによっても製造コストを一層低減できる。また、非鉄金属製のパックケースと単電池間には電気絶縁を施すので、漏電などの不具合の発生を確実に防止できる。
【0012】
上記各発明において、非鉄金属を素材とした材料がアルミニウムのインゴットであるのが好ましい。これにより、延伸性に優れたアルミニウムを素材としたインゴットを被加工材料とするので、押出し加工または引抜き加工を極めてスムーズに行って寸法精度の高いケース素体を形成することができる。
【0013】
また、上記各発明において、熱伝導性に優れ、且つ高い電気絶縁性を有する絶縁シートを各単電池の外周に巻き付けて、パックケースと前記各単電池とを電気絶縁することが好ましい。これにより、非鉄金属製のパックケースとこれの内部に収容された各単電池間を、極めて簡単な手段によって確実に電気絶縁することができ、漏電などの不具合の発生が確実に防止される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る電池パックの製造方法におけるパックケースの製造過程を工程順に示した斜視図である。この実施の形態では、従来においてパックケースの素材として用いていた合成樹脂に代えて、アルミニウムを素材としてパックケースを成形加工する。先ず、アルミニウムのインゴットを所要の押出し金型を用いた周知の押出し加工とすることにより、図1(a)に示すように、断面長円形状を有する長尺の筒状体のケース素体1を成形加工する。このケース素体1は、この実施の形態において、2個の単電池(図示せず)を並置した配置で挿入することのできる長円形の断面形状を有している。上記押出し加工は、延伸性に優れたアルミニウムを素材としたインゴットを被加工材料としているので、極めてスムーズに行うことができる。
【0018】
つぎに、上記ケース素体1は、同図(b)に示すように、所要の長さに切断加工されることにより、多数のケース基体2が形成される。このケース基体2は、単電池の収容個数に応じた長さ、つまり一列に直列接続する複数個の単電池のほぼ合計長さに設定される。続いて、ケース基体2には、同図(c)に示すように、孔開け加工が施されて、係止孔3および端子孔4が形成され、これにより、パックケース7が形成される。なお、端子孔4に代えて、端子露出用切欠きを形成するようにしてもよく、あるいは端子孔4または端子露出用切欠きの何れをも形成しなくてもよい。これについては後述する。
【0019】
したがって、この電池パックの製造方法では、単電池の収容個数が異なる種々のサイズのパックケース7を、単一の押出し金型を用いた押出し加工品であるケース素体1を単電池の収容個数に対応する長さに切断加工することにより得られるので、例えば、単電池の収容個数が増えた場合にも高価な金型を新たに製作することなく所要のパックケース7を製作することができ、種類の異なるパックケース7を製作する場合に相当のコストダウンを図ることができる。しかも、従来のパックケースの加工手段として採用されている射出成形では、合成樹脂系材料からなるチップまたは粉末を射出成形機で溶融して所定の金型内に射出することから、製造コストが高くつくのに対し、この実施の形態のパックケース7は、何れも射出成形に比較して製造コストが格段に低い押出し加工、切断加工および穿孔加工を経て製作するので、これによっても製造コストを一層低減できる。
【0020】
上記のようにして製作されたパックケース7は、製造すべき電池パックの分解斜視図を示す図2のように、内部に所要個数の単電池8が収納され、両端開口部が同一形状の蓋板9,9でそれぞれ施蓋される。一対の蓋板9,9は、射出成形による樹脂成形品であって、パックケース7の外形に対応する長円形状の外形を有し、その長手方向の両端部に係止爪9a,9aがそれぞれ突設され、その各一対の係止爪9a,9aの間に2個の端子孔9b,9bが穿設されている。
【0021】
そして、筒状のパックケース7における底部とする一方(図の右方)の開口部は、蓋板9の一対の係止爪9a,9aが係止孔3に内面側から係入することによって蓋板9が取り付けられることにより、この蓋板9で施蓋される。
【0022】
つぎに、所要個数(この実施の形態では6個の場合を例示)の各単電池8は、極めて周知であることから図示を省略しているが、ニッケルからなる電池接続板により、3個を直列接続状態とした二つの電池列B1,B2が並置状態に配置され、且つ両電池列B1,B2が直列接続状態で保持される。このような配置で電池ホルダに保持された6個の単電池8は、これらの周囲に絶縁シート10が巻き付け状態に取り付けられたのちに、パックケース7内に挿入される。上記絶縁シート10は、熱伝導性に優れ、且つ高い電気絶縁性を有する素材、例えばシリコン系合成ゴムなどのシリコン系素材によりシート状に形成されたものである。
【0023】
なお、図2には、図1(c)に示したパックケース7とは異なり、端子孔4が形成されず、一対の係止孔3,3のみが形成されたパックケース7を用いる場合を例示してある。
【0024】
そして、パックケース7における他方(図の左方)の開口部は、蓋板9の一対の係止爪9a,9aが係止孔3に内面側から係入することによって蓋板9が取り付けられることにより、この蓋板9で施蓋される。このとき、この蓋板9の一対の端子孔9b,9bからは、上述した電池ホルダの正,負の電極端子が外部に露呈される。したがって、この電池パックは、正,負の接続部材を蓋板9の一対の端子孔9b,9bから挿入して正,負の電極端子にそれぞれ接触させることにより、外部に電気的接続される。なお、端子孔9b,9bを活用しない図の右方の蓋板9には、これの外面に銘板11が貼着されることにより、一対の端子孔9b,9bが隠蔽し、図3に示す電池パック12が構成される。上述のような構成とすることにより、パックケース7の両側の開口部は、同一形状の蓋板9,9によって支障無く施蓋することが可能となる。
【0025】
一方、図1(c)に示すパックケース7を用いて電池パックを構成する場合には、上述した電池ホルダの正、負の電極端子を端子孔4,4を通じて外部に露呈される。このような電池パックの場合には、両側の蓋板9,9にそれぞれ銘板11を貼着して、各々の一対の端子孔9b,9bを隠蔽する。
【0026】
この電池パック12は、パックケース7がアルミニウムを素材として形成されているが、このパックケース7とこれの内部に収容された各単電池8間が上述したように高い電気絶縁性を有する絶縁シート10によって確実に電気絶縁されているので、漏電などの不具合の発生が確実に防止される。また、この電池パック12では、各単電池8からの発熱が、これらの外周に巻き付けられた熱伝導性に優れた絶縁シート10を通じて、やはり熱伝導性に優れたアルミニウムからなるパックケース7に極めて効率的、且つ均等に伝熱されたのちに、パックケース7から外部に迅速に放熱される。
【0027】
このように、この電池パック12では、各単電池8からの発熱が効率良く外部に放熱されるので、各単電池8を連続して充放電することが可能となり、また、各単電池8間に温度差が生じないように均等に集熱されるので、各単電池8の各々の電池機能が均質化されて、電池パック12自体が常に高機能状態に維持される。
【0028】
しかも、上記電池パック12は、パックケース7がアルミニウムを素材として形成されているので、従来の電池パックにおける合成樹脂製のパックケースを用いる場合に比較してパックケース7自体が高い剛性を有し、これにより、耐振性および耐衝撃性が格段に向上する。したがって、この電池パック12は、振動などが発生し易い電動工具などの駆動電源として用いた場合に特に顕著な効果を得ることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、パックケース7のケース素体1を押出し加工によって形成する場合を例示して説明したが、上記ケース素体1を、アルミニウムを素材とした引抜き加工によって形成するようにしても、上記実施の形態の製造方法とほぼ同様の効果を得ることができる。また、パックケース7と各単電池8間の電気絶縁は、上記実施の形態の絶縁シート10を各単電池8の外周に巻き付ける手段が、簡単で、且つ安価に行えることから好ましいが、この手段に代えて、パックケース7の内周面に適当な形成手段によって電気絶縁膜をラミネートするようにしてもよい。
【0030】
また、蓋板9,9は、上記実施の形態において、自身に一体形成した係止爪9a,9aをパックケース7の係止孔3,3に係入することによってパックケース7に取り付ける場合について説明したが、係止爪9a,9aを設けずに、接着剤によってパックケース7の開口端面に接合するようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電池パックの製造方法によれば、単電池の収容個数が異なる種々のサイズのパックケースを、単一の金型を用いた押出し加工品または引抜き加工品であるケース素体を単電池の収容個数に対応する長さに切断加工することにより得られるので、例えば、単電池の収容個数が増えた場合にも高価な金型を新たに製作することなく所要のパックケースを製作することができ、種類の異なるパックケースを製作する場合に相当のコストダウンを図ることができる。しかも、パックケースは、従来の加工手段として採用されている射出成形に比較して製造コストが格段に低い押出し加工または引抜き加工、切断加工および穿孔加工を経て製作するので、これによっても製造コストを一層低減できる。また、非鉄金属製のパックケースと単電池間には電気絶縁を施すので、漏電などの不具合の発生を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は本発明の一実施の形態に係る電池パックの製造方法におけるパックケースの製造過程を工程順に示した斜視図。
【図2】同上実施の形態の製造方法で製造する電池パックの分解斜視図。
【図3】同上実施の形態の製造方法で製造された電池パックを示す斜視図。
【符号の説明】
1 ケース素体
2 ケース基体
7 パックケース
8 単電池
9 蓋板
10 絶縁シート
12 電池パック
B1,B2 電池列
Claims (4)
- 非鉄金属を素材とした材料を押出し加工して長尺の筒状体のケース素体を形成する工程と、
前記ケース素体を所定の長さに切断加工してケース基体を形成する工程と、
前記ケース基体の所定の箇所に穿孔加工を施してパックケースを形成する工程と、
複数個の単電池を直列接続した電池列を並置状態に複数列配置して、前記各単電池と前記パックケース間に電気絶縁を施した状態で前記各電池列を前記パックケース内に収納する工程と、
前記パックケースの両端開口を合成樹脂製の同一形状の蓋板でそれぞれ施蓋する工程とを有していることを特徴とする電池パックの製造方法。 - 非鉄金属を素材とした材料を引抜き加工して長尺の筒状体のケース素体を形成する工程と、
前記ケース素体を所定の長さに切断加工してケース基体を形成する工程と、
前記ケース基体の所定の箇所に穿孔加工を施してパックケースを形成する工程と、
複数個の単電池を直列接続した電池列を並置状態に複数列配置して、前記各単電池と前記パックケース間に電気絶縁を施した状態で前記各電池列を前記パックケース内に収納する工程と、
前記パックケースの両端開口を合成樹脂製の同一形状の蓋板でそれぞれ施蓋する工程とを有していることを特徴とする電池パックの製造方法。 - 前記非鉄金属を素材とした材料がアルミニウムのインゴットである請求項1または2に記載の電池パックの製造方法。
- 熱伝導性に優れ、且つ高い電気絶縁性を有する絶縁シートを各単電池の外周に巻き付けて、パックケースと前記各単電池間を電気絶縁するようにした請求項1〜3の何れかに記載の電池パックの製造方法。
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