JP3661931B2 - ランデル型ロータを有するタンデム式回転電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランデル型ロータを有するタンデム式回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
ランデル型ロータを有する回転電機(以下、ランデル型回転電機ともいう)を大出力化するためには、ローターコアの界磁路面積を増大するために、ローターコアの径及び軸長さが増大し、爪形磁極部も大型化し、その結果、一端支持する爪形磁極部に掛かる遠心力が過大となる。また、軸方向及び径方向に形成される磁路の平均長が増大するため、必要励磁電流が増大する。このため、ランデル型回転電機は車両用交流発電機(オルタネータ)など、比較的小出力用途に用いられている。
【0003】
上記問題を改善するために、二つのランデル型ロータをタンデム結合して出力倍増を図ったランデル型ロータを有するタンデム式回転電機(以下、タンデム式ランデル型回転電機ともいう)が提案されている(特開平6−22518号、特開平11−98789号)。このタンデム式ランデル型回転電機によれば、各ランデル型ロータの界磁束量が半減するために、上記問題を改善することができる。
【0004】
しかし、上記したランデル型ロータを有するタンデム式回転電機では、スリップリングがこれらローターコアの軸方向一方側に配置されるために、このスリップリングから遠い側の界磁コイルに給電するために、スリップリングに近い側のローターコア及び界磁コイルの外周面に沿って軸方向に延設される引き出し線により必要があり、その結果、このローターコアが高速回転すると、この引き出し線が遠心力により径方向外側に付勢されてストレスを受けたり振動したりして、切断しやすいという問題があった。
【0005】
このため、上記した従来のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機では、この引き出し線をひもによりローターコアに縛り付けたり、ポールコアに設けた貫通孔に挿通したりしてこの問題を防止していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したひもによる縛りは、爪形磁極部の存在のために簡単ではなく、かつ、作用者に依存せずに常に必要な緊縛力を確実に得ることは容易ではなかった。
【0007】
また、ポールコアに挿線用の貫通孔を設けることは、ポールコアの加工及びこの貫通孔への引き出し線の挿通作業が大幅に製造工数を増大させるという欠点があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ランデル型ロータを有するタンデム式回転電機における界磁コイル引き出し線の遠心力による損傷を簡素な構造で防止することをその目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の同期機は、周方向へ所定ピッチで配置される偶数の爪形磁極部と各前記爪形磁極部の間の周方向隙間からなる偶数の谷部とをそれぞれ有して同一の回転軸に軸方向に並設された一対のランデル型ロータコアと、ハウジングの周壁に互いに軸方向に所定隙間を隔てて固定されて内周面が前記両ランデル型ロータコアに個別に対面する一対のステータコアと、前記両ステータコアのスロットに巻装されるステータコイルと、筒部及び鍔部を有して前記両ランデル型ロータコアに個別に嵌着された一対のコイルボビンと、前記両コイルボビンに個別に巻装される一対の界磁コイルと、前記回転軸の一端側に装着された一対のスリップリングと、前記ランデル型ロータコアの前記谷部に略軸方向に敷設されて前記界磁コイルと前記スリップリングとを接続する引き出し線とを備えるランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
前記スリップリング寄りの前記コイルボビンの一対の前記鍔部のうち前記スリップリングから遠い側の鍔部は、少なくとも前記引き出し線よりも径方向外側にて略周方向へ延在して前記スリップリングから遠い側の前記界磁コイルの前記引き出し線を係止する係止部を有することを特徴としている。
【0010】
すなわち、本発明では、スリップリングから遠い側の界磁コイルに給電する引き出し線は、スリップリング寄りのコイルボビンの鍔部の外周縁に設けた係止部に係止されるので、ローターコア回転中にこの引き出し線に掛かる遠心力により、この引き出し線が振動したり、大きなストレスが局部的に作用するのを防止することができる。
【0011】
これにより、従来のように煩雑な作業を必要とすることなく、スリップリングから遠い側の界磁コイルへ給電する引き出し線を良好にローターコアの外周面に押さえつけることができ、その断線を防止することができる。
【0012】
請求項2記載の構成は請求項1記載のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において更に、前記係止部が、前記引き出し線の径方向外側を周方向へ延在するかぎ状の爪部からなることを特徴としている。
【0013】
本構成によれば、係止作業を容易とすることができる。
【0014】
なお、かぎ状爪部は径方向にみた場合にかぎ形状であるが、軸方向にみた場合長溝状に形成することが好適である。これにより、引き出し線の一点に遠心力が集中するのを防止することができる。
【0015】
請求項3記載の構成は請求項1又は2記載のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において更に、前記係止部が、星形に形成されて前記ローターコアの前記谷部と周方向同位置に配置された前記コイルボビンの前記鍔部の谷底部に配設されることを特徴としている。
【0016】
本構成によれば、引き出し線が回転軸心を基準として最も径小な部位に延設されるため、引き出し線に掛かる遠心力を低減することができる。
【0017】
請求項4記載のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機は、周方向へ所定ピッチで配置される偶数の爪形磁極部と各前記爪形磁極部の間の周方向隙間からなる偶数の谷部とをそれぞれ有して同一の回転軸に軸方向に並設された一対のランデル型ロータコアと、ハウジングの周壁に互いに軸方向に所定隙間を隔てて固定されて内周面が前記両ランデル型ロータコアに個別に対面する一対のステータコアと、前記両ステータコアのスロットに巻装されるステータコイルと、筒部及び鍔部を有して前記両ランデル型ロータコアに個別に嵌着された一対のコイルボビンと、前記両コイルボビンに個別に巻装される一対の界磁コイルと、前記回転軸の一端側に装着された一対のスリップリングと、前記ランデル型ロータコアの前記谷部に略軸方向に敷設されて前記界磁コイルと前記スリップリングとを接続する引き出し線とを備えるランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
外周部に前記引き出し線を係止する係止部を有して前記両ローターコアにより軸方向に挟持される電気絶縁性の係止板を有することを特徴としている。
【0018】
すなわち、本発明によれば、一対のローターコアにより挟持された係止板の外周部に引き出し線を係止するので、従来のように煩雑な作業を必要とすることなく、スリップリングから遠い側の界磁コイルへ給電する引き出し線を良好にローターコアの外周面に保持することができ、その断線を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機の好適な実施態様を以下の実施例を参照して説明する。
【0020】
【実施例1】
この実施例のタンデム式ランデル型回転電機を図1を参照して以下に説明する。
【0021】
(構成)
このタンデム式ランデル型回転電機において、1はハウジング、2は第1回転電機部、3は第2回転電機部、4は回転軸、5はプーリ、6、7は軸受け、8は界磁コイル給電機構である。
【0022】
ハウジング1は、フロントハウジングとリヤハウジングとを位置Mにて突き合わせ、スルーボルトで締結して構成されている。回転軸4は、軸受け6,7を介してハウジング1に支承されており、プーリー5がハウジング1から前方へ突出する回転軸1の前端部に固定されている。界磁コイル給電機構8は、ハウジング1から後方へ突出する回転軸1の後端部に装着された一対のスリップリング81と、これらスリップリング81に個別に押し付けられている一対のブラシ82とを有している。
【0023】
第1回転電機部2において、23は第1ローターコア、24は第1界磁コイル、25は送風ファンであり、第2回転電機部3において、33は第2ローターコア、34は第2界磁コイル、35は送風ファンであり、両回転電機部2,3は共通のステータコイル9を有している。ステータコア300は、円筒状の積層電磁鋼板からなり、ハウジング1の周壁内周面に固定されている。
【0024】
ステータコイル9は、多数のU字状の絶縁被覆角形導体の一対の脚部の一方を、ステータコア300のスロットに後方側から挿通し、同様に上記一対の脚部の他方を、上記スロットに対して1磁極ピッチだけ周方向に離れたステータコア300のスロットに後方側から挿通し、各脚部の先端を一対ずつ溶接したものである。 第1ローターコア23、第2ローターコア33は、それぞれ一対のポールコアを軸方向へ密着して回転軸4にスプライン巻装してなり、更に、この実施例では、両ローターコア23、33は、軸方向に密着して配設されている。上記両ローターコア23、33は、通常の単独ロータ構造のランデル型回転電機のローターコアと本質的に同一形状に形成されている。すなわち、第1ローターコア23を構成する一対のポールコアは、回転軸4に嵌着される筒部と、この筒部の軸方向外端部から径方向外側へ延設され、その後、第1界磁コイル24を囲むように延設される所定偶数の爪形磁極部とをそれぞれ有しており、各爪形磁極部は、周方向一定ピッチで配置されている。両ポールコアの爪形磁極部は、ステータコア300の内周面に対して所定の小間隙を隔ててステータコアの周方向へ互い違いに配置されている。第2ローターコア33を構成する一対のポールコアも同じである。
【0025】
第1界磁コイル24及び第2界磁コイル34は、一対のスリップリング81から互いに並列に給電され、界磁コイル24は、第1ローターコア23の前端側のポールコアの爪形磁極部をN極に磁化し、中央寄りのポールコアの爪形磁極部をS極に磁化する。同じく、界磁コイル34は、第2ローターコア33の後端側のポールコアの爪形磁極部をN極に磁化し、中央寄りのポールコアの爪形磁極部をS極に磁化する。
【0026】
送風ファン25は、第1ローターコア23の前端側のポールコアの前端面に固定された斜流ファンであり、送風ファン35は、第2ローターコア33の後端側のポールコアの後端面に固定された遠心ファンである。
【0027】
11は、ハウジングの前端壁に開口された冷却風吸入孔、12はステータコイル9の前端側コイルエンドに近接してハウジング1の周壁に開口された前端側冷却風吐出孔、13は、ハウジングの後端壁に開口された冷却風吸入孔、14はステータコイル9の後端側コイルエンドに近接してハウジング1の周壁に開口された後端側冷却風吐出孔である。
(発電動作)
上記構成のタンデム式ランデル型回転電機の一対の界磁コイル24,34に界磁コイル給電機構8を通じて界磁コイル24,34に界磁電流を通電し、回転軸4を回転すると、周知のように各ローターコア23,33の各爪形磁極部が周方向極性交互に磁化され、ステータコイル9に発電電圧が生じる。
(冷却動作)
送風ファン25が冷却風吸入孔11から吸入した冷却風の一部は、ステータコイル9の前端側コイルエンドを冷却しつつ前端側冷却風吐出孔12から外部に吐出され、冷却風の残部は、第1ローターコア23の爪形磁極部間を通じて軸方向後方へ流れて界磁コイル24を冷却する。同様に、送風ファン35が冷却風吸入孔12から吸入した冷却風は、ステータコイル9の後端側コイルエンドを冷却しつつ後端側冷却風吐出孔14から外部に吐出される。
(界磁コイル24,34への給電構造)
次に、この実施例の要部をなす界磁コイル24,34へ給電用する引き出し線について説明する
スリップリング81寄りの界磁コイル34の両端部はコイルボビン100の鍔部に設けられた一対の係止突起101に個別に係止されている。この一対の係止突起101には一対の引き出し線300の一端が個別に係止され、両引き出し線300は、図1中右側のローターコアの右端面に沿って径方向内側に延設され、一対の接続部400にてスリップリング81側の一対の給電線(図示せず)に個別に接続され、樹脂被覆されている。なお、この一対のスリップリング側給電線は、回転軸に貫設された引き出し線収容孔(図示せず)を通じて一対のスリップリング81に個別に達している。スリップリング81は回転軸4の外周部に所定間隔を隔てて一対装着されている。
【0028】
スリップリング81から遠い側の界磁コイル24の両端部はコイルボビン200の鍔部に設けられた一対の係止突起201に個別に係止されている。この一対の係止突起201には一対の引き出し線202の一端が個別に係止され、両引き出し線202は、ポールコア23,33の谷部の外周端に沿って軸方向スリップリング81側へ延設され、界磁コイル34の外周面に接しつつ一対の係止突起101に個別に接続されている。したがって、界磁コイル24、34は並列接続されている。もちろん、直列接続されることもできる。
(コイルボビン100の詳細構造)
コイルボビン100の詳細構造を図2〜図4に示す。図2はコイルボビン100を、スリップリング81から遠い側から軸方向にみた正面図であり、図3はその係止部近傍の拡大図であり、図4は軸方向断面図である。
【0029】
この実施例では、コイルボビン100の一対の鍔部のうち、スリップリング81から遠い側の鍔部102の外周縁に略コ字状の係止部103が設けられている。
【0030】
コイルボビン100の鍔部(スリップリング81から遠い側)102は、8つの谷部104と8つの山部105と周方向等ピッチでもつ8角形の星形形状を有しており、互いに180度離れた2つの谷部104の谷底部分に、かぎ形の係止部103が設けられている。更に説明すると、かぎ形の係止部103は、鍔部102の谷部104の谷底部分を起点としてスリップリング81から遠ざかる方向へ軸方向に延在する割り筒部1031(図4参照)と、一方の山部105の側端から周方向へ突出してこの割り筒部1031の径方向外側に開口する開口を部分的に遮蔽するかぎ形部1032とを有している(図3参照)。
【0031】
すなわち、スリップリング81側のコイルボビン100が、もう一つのコイルボビン200から延在する引き出し線202を係止するかぎ形部1032を有するので、引き出し線202が遠心力により径方向外側へ振れるのを簡素な作業で追加部品を必要とせず防止することができる。
【0032】
【実施例2】
他の実施例を図5を参照して以下に説明する。
【0033】
この実施例では、実施例1の係止部103の代わりに、電気絶縁性の係止板500を用いた点が実施例1と異なっている。ただし、この実施例では、係止板500を用いた分だけ部品点数は増加する。
【0034】
この係止板500は、両ローターコア23,33により軸方向に挟持されている。係止板500の外周縁の所定位置には、かぎ形の係止突起501が一対設けられており、両係止突起501は引き出し線202の遠心力による径方向外側への逸脱を防止している。係止突起501の形状は、実施例1の係止部103と同様でもよい。
【0035】
このようにすれば、実施例1と同様に引き出し線202の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のタンデム式ランデル型回転電機の軸方向断面図である。
【図2】図1に示すコイルボビンの正面図である。
【図3】図2に示すコイルボビンの部分拡大正面図である。
【図4】図2に示すコイルボビンの軸方向断面図である。
【図5】実施例2のタンデム式ランデル型回転電機の軸方向断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 第1回転電機部
3 第2回転電機部
4 回転軸
5 プーリ
6、7 軸受け
8 界磁コイル給電機構
9 ステータコイル
300 ステータコア
23 第1ローターコア
24 第1界磁コイル
25 送風ファン
33 第2ローターコア
34 第2界磁コイル
35 送風ファン
100 コイルボビン
102 鍔部
103 係止部
104 鍔部102の谷部
105 鍔部102の山部
Claims (4)
- 周方向へ所定ピッチで配置される偶数の爪形磁極部と各前記爪形磁極部の間の周方向隙間からなる偶数の谷部とをそれぞれ有して同一の回転軸に軸方向に並設された一対のランデル型ロータコアと、
ハウジングの周壁に互いに軸方向に所定隙間を隔てて固定されて内周面が前記両ランデル型ロータコアに個別に対面する一対のステータコアと、
前記両ステータコアのスロットに巻装されるステータコイルと、
筒部及び鍔部を有して前記両ランデル型ロータコアに個別に嵌着された一対のコイルボビンと、
前記両コイルボビンに個別に巻装される一対の界磁コイルと、
前記回転軸の一端側に装着された一対のスリップリングと、
前記ランデル型ロータコアの前記谷部に略軸方向に敷設されて前記界磁コイルと前記スリップリングとを接続する引き出し線と、
を備えるランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
前記スリップリング寄りの前記コイルボビンの一対の前記鍔部のうち前記スリップリングから遠い側の鍔部は、少なくとも前記引き出し線よりも径方向外側にて略周方向へ延在して前記スリップリングから遠い側の前記界磁コイルの前記引き出し線を係止する係止部を有することを特徴とするランデル型ロータを有するタンデム式回転電機。 - 請求項1記載のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
前記係止部は、前記引き出し線の径方向外側を周方向へ延在するかぎ状の爪部からなることを特徴とするランデル型ロータを有するタンデム式回転電機。 - 請求項1又は2記載のランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
前記係止部は、星形に形成されて前記ローターコアの前記谷部と周方向同位置に配置された前記コイルボビンの前記鍔部の谷底部に配設されることを特徴とするランデル型ロータを有するタンデム式回転電機。 - 周方向へ所定ピッチで配置される偶数の爪形磁極部と各前記爪形磁極部の間の周方向隙間からなる偶数の谷部とをそれぞれ有して同一の回転軸に軸方向に並設された一対のランデル型ロータコアと、
ハウジングの周壁に互いに軸方向に所定隙間を隔てて固定されて内周面が前記両ランデル型ロータコアに個別に対面する一対のステータコアと、
前記両ステータコアのスロットに巻装されるステータコイルと、
筒部及び鍔部を有して前記両ランデル型ロータコアに個別に嵌着された一対のコイルボビンと、
前記両コイルボビンに個別に巻装される一対の界磁コイルと、
前記回転軸の一端側に装着された一対のスリップリングと、
前記ランデル型ロータコアの前記谷部に略軸方向に敷設されて前記界磁コイルと前記スリップリングとを接続する引き出し線と、
を備えるランデル型ロータを有するタンデム式回転電機において、
外周部に前記引き出し線を係止する係止部を有して前記両ローターコアにより軸方向に挟持される電気絶縁性の係止板を有することを特徴とするランデル型ロータを有するタンデム式回転電機。
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