JP3660330B2 - インピーダンス測定装置及び運動学習支援装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体部分のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置及びこのインピーダンス測定装置を用いた運動学習支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
動物は、特に、人間は、他者の動作を真似ることで所定の動作を取得することが多い。ゴルフ、テニス、水泳などのスポーツ技能、大工、左官、工場での組立作業などの生産技能、自動車操縦、クレーン操縦、生産機械操縦などの操縦技能、陶芸、日舞、能、人形浄瑠璃などの芸能などのような様々な技能を取得及び継承する場合、従来、学習者は、熟練者の運動軌道(動作)を見て学習するか、熟練者の運動軌道を撮影した記録映像を見て学習していた。
【0003】
運動の際に、多くの場合、特定の1つの筋肉だけが働くのではなく、同時に複数の筋肉が働く。このように1つの運動に際して協力して働く筋肉を互いに共同筋といい、共同筋は、原則として、1つの関節に対して同じ側に位置している。これに対して互いに反対の働きをもつ筋肉を対抗筋(拮抗筋)といい、対抗筋は、関節に対して反対側にある。1つの運動に際しては、共同筋同士は同時に収縮するのはもちろんであるが、そのとき対抗筋も或る程度は緊張してその運動を調整している。筋肉は、収縮して張力のみを発生するので、関節の角度を変えるためには、関節の両側で拮抗的に働く1対の筋肉が必要だからである。従って、手や足などの動作部分から外部に加えられる力が同じであっても、また、動作部分の軌跡が同じであっても、伸筋の張力と屈筋の張力との組み合わせが異なると、動作部分のインピーダンスや力の方向が異なることになる。例えば、腕の肘関節を90度に曲げて静止又は動作している状態は、主に上腕2頭筋とこれに対抗筋の関係にある上腕3頭筋との協調によって生じている。簡単のため、関節中心から各筋肉までの距離が関節角度によらず一定であると考えて、各筋肉の張力Tとモーメントアームaとの積をトルクτとする。この場合において、上腕2頭筋のトルクが25Nmで上腕3頭筋のトルクが5Nmである場合も、上腕2頭筋のトルクが45Nmで上腕3頭筋のトルクが25Nmである場合も、肘関節に生じているトルクは、差である20Nmである。ところが、腕の硬さの程度は、前者の場合の方が後者の場合の方より、大きい。このことは、例えば、腕を押した場合、前者の場合の方が後者の場合の方より遙かに動かし難い。なお、運動方向に依存しない呼び方で関節を伸ばす方向に働く筋肉は、伸筋と呼ばれ、関節を曲げる方向に働く筋肉は、屈筋と呼ばれる。関節を伸ばしている場合は伸筋が主に活動しており、共同筋が伸筋に、対抗筋が屈筋に当たる。
【0004】
このように同じトルクを発生させる場合でも運動部分のインピーダンスを異ならせることができる。また、人間は、動作部分のインピーダンスを変えることによって、同じ動作であっても結果が異なることを経験的に知っている。例えば、ゴルフパッドにおいて、ヘッドが同じ軌跡及びスピードであっても腕の硬さに応じてゴルフボールの移動距離が異なり、腕が軟らかい場合よりも硬い場合の方がより遠くに転がることを、経験的に知っている。このため、運動を学習するためには、運動軌道に合わせて運動部分のインピーダンスも真似る必要がある。
【0005】
なお、上述では、筋繊維が収縮によってその長さが変化して張力を発生する場合について説明したが、筋繊維は、収縮によって長さは変化しないがその張力を増加する働きもある。このような収縮を等尺性収縮という。等尺性収縮の場合も同様に動作部分のインピーダンスを考え得る。例えば、腹圧を大きく加えた場合では腹筋は硬く、腹圧を加えない場合では腹筋は柔らかい。
【0006】
そして、従来、運動部分の静止中や運動中の或る時刻におけるインピーダンスの測定は、「F.A.Mussa-Ivaaldi, N.Hogan and E.Bizzi. Neural, mechanical, and geometric factors subserving arm posture in humans. Journal of Neuroscience, Vol.5,No.10,pp.2732-2743.1985」や「五味裕章、川人光男、水平面における多関節運動中の人腕機械インピーダンスの計測、SICE論文集、Vol.32,No3,pp.369-378,1996」などに示されているように、ロボットにより摂動を与える方法や得られたデータから時間的に平均されたインピーダンスを測定する方法であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インピーダンスを含めて運動を学習する場合に、その前提となる従来のインピーダンス測定装置は、ロボットにより強制的に摂動を与えるため大掛な測定装置を必要とするという問題があった。そして、従来のインピーダンス測定装置は、運動部分に強制的に摂動を与えて測定するものであるので、脊髄反射などの反射系が働きα運動ニューロンの状態が通常とは異なってしまうため、自然な運動中のインピーダンスを測定することが難しいという問題もあった。さらに、従来のインピーダンス測定装置は、時間的に平均されたインピーダンスを測定するものであるため、時々刻々と変化するインピーダンスを測定することが難しいという問題もあった。
【0008】
また、従来のインピーダンス測定装置では、このような種々の問題点があったために、運動軌跡だけでなく、時々刻々と変化する運動中のインピーダンスも合わせて運動を簡易に学習する装置は、得難かった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて為された発明であり、運動の原因となる筋肉の活動を測定することによって、時々刻々と変化するインピーダンスを直接的に測定することができるインピーダンス測定装置を提供することを目的とする。そして、本発明では、このようなインピーダンス測定装置を用いて、時々刻々と変化する運動中のインピーダンスも合わせて運動を学習することができる運動学習支援装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明では、生体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置において、測定対象のインピーダンスに関与する筋肉の活動電位による筋電信号を測定する筋電信号測定手段と、前記インピーダンスに関与する筋肉によって生じる力を測定する力測定手段と、前記生体の複数の位置を測定する位置測定手段と、前記筋電信号と前記力とに基づいて前記筋電信号を正規化するための正規化基準値を演算する正規化基準値演算手段と、前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置及び前記力のうちの該筋電信号を含む2以上を用いて前記インピーダンスに関与する筋肉の筋肉骨格系モデルを作成するモデル作成手段と、作成した前記筋肉骨格系モデルに応じて前記正規化基準値で正規化された筋電信号、又は、該筋電信号及び前記複数の位置の何れかを入力し、前記筋肉骨格系モデルの出力、前記力及び前記複数の位置に基づいて前記インピーダンスを演算するインピーダンス演算手段とを備えて構成される。
【0011】
そして、上述のインピーダンス測定装置において、前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号とし、出力を前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度とする神経回路モデルであり、前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号を入力し、前記神経回路モデルの出力、前記力及び前記複数の位置に基づいて前記インピーダンスを演算する。
【0012】
また、上述のインピーダンス測定装置において、前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度とし、出力を前記力から求める前記関節のトルクとする神経回路モデルであり、前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記関節の角度を入力し、前記神経回路モデルの出力及び前記関節の角度に基づいて前記インピーダンスを演算する。
【0013】
さらに、上述のインピーダンス測定装置において、前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度及び前記関節の角速度とし、出力を前記力から求める前記関節のトルクとする神経回路モデルであり、前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記関節の角度を入力し、前記神経回路モデルの出力、前記関節の角度及び前記関節の角速度に基づいて前記インピーダンスを演算する。
【0014】
また、上述のインピーダンス測定装置において、前記筋肉骨格系モデルは、前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置及び前記力に基づいて係数を求めた、弾性係数、粘性及び自然長が筋電信号によってそれぞれ変化するバネとして筋肉をモデル化した数学モデルであって、前記インピーダンス演算手段は、前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記力、前記インピーダンスに関与する関節の角度及び該関節の角速度に基づいて前記数学モデルより弾性係数及び粘性を求める。
【0015】
このような構成の発明は、測定結果を用いて帰納的に筋肉骨格系モデルを作成し、この筋肉骨格系モデルによって生体に仮想的な摂動を与えた場合の値を求めて、インピーダンスを求めることができる。このため、従来のようにロボット等によって強制的に摂動を生体に与える必要がなく、大掛かりな装置を必要としない。また、本発明では、インピーダンスの演算に運動指令uとして筋電信号EMGを用いるので、リアルタイムでインピーダンスが測定可能である。
【0016】
そして、本発明に係る運動学習支援装置は、上述の何れかのインピーダンス測定装置と、基準とする動作を行った場合における前記動作に係る生体の動作部分のインピーダンスを前記インピーダンス測定装置によって求めて運動学習目標値として提示すると共に、動作を行った場合の前記動作部分のインピーダンスを前記インピーダンス測定装置によって求めて該値を提示する提示手段を備えて構成される。
【0017】
このような構成の運動学習支援装置は、提示手段が、基準とする動作を行った場合における動作に係る生体の動作部分のインピーダンスをインピーダンス測定装置によって求めて運動学習目標値として提示すると共に、動作を行った場合の動作部分のインピーダンスをインピーダンス測定装置によって求めてこの値を提示するので、運動学習目標値と今の動作における動作部分のインピーダンスの程度との差が視覚化される。このため、学習者は、この差を認識することで、基準とする動作と今の動作との相違の原因を知ることができ、動作部分が運動学習目標値に達するようにそのインピーダンスを調整することができる。従って、学習者は、基準とする動作を短期間に習得することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0019】
(第1の実施形態の構成)
第1の実施形態は、平衡位置を学習する神経回路モデルを用いてインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置の実施形態である。
【0020】
図1は、インピーダンス測定装置の構成を示す図である。
【0021】
図1において、インピーダンス測定装置10は、表面電極21-1〜21-10 、信号処理部22、6軸力覚センサ23、外部記憶装置24、表示装置25、記録装置26、入力装置27及び位置測定装置(不図示)を備えて構成される。信号処理部22は、差動増幅器(以下、「DIFA」と略記する。)31-1〜31-10 、割り算回路(以下、「DIV」と略記する。)32-1〜32-10 、全波整流器(以下、「FWRC」と略記する。)33-1〜33-10 、低域通過フィルタ(以下、「LPF」と略記する。)34-1〜34-10 、中央処理装置(以下、「CPU」と略記する。)35及びメモリ36を備えて構成される。
【0022】
複数の表面電極21-1〜21-10 は、測定対象となる運動部分に装着され、運動部分に関係する筋肉の活動電位を検出する。この表面電極の直径は、約10mmであり、1組の表面電極21は、筋繊維に沿って電極間の距離を約15mmとして身体に貼られる。本実施形態では、筋電信号は、皮膚の表面に電極を張り付けることによって活動電位を記録する表面誘導法により測定される。表面電極の組数は、測定すべき筋肉によって決定され、この測定対象の筋肉は、測定対象とする運動部分によって決定される。本実施形態では、後述するように手先のインピーダンスを測定するので、人腕の肩・肘の2関節運動に関与する10箇所の筋肉の筋電信号を測定する必要があるために、表面電極21-1〜21-10 は、10組である。
【0023】
検出は、サンプリング周期2kHz、12ビット(bit)でサンプリングされ、各表面電極21-1〜21-10 からの各筋電信号は、DIFA31-1〜31-10 で所定のレベルまでそれぞれ増幅される。増幅された各筋電信号は、それぞれDIV32-1〜32-10 に入力され、所定の値で割り算される。この所定の値については、後述する。
【0024】
割り算された各筋電信号は、全波整流器33-1〜33-10 にそれぞれ入力され、全波整流される。筋電信号毎に、この全波整流した信号を10点毎に平均を計算し(EGMave )、さらに、式1に基づき5点毎の移動平均を計算する(EMGma)。このようにして求めた値EMGmaを平滑筋電信号と呼ぶ。
【0025】
【数1】
Figure 0003660330
【0026】
この各平滑筋電信号は、それぞれLPF34-1〜34-10 に入力される。結局、200Hzでサンプリングされたことになる。LPF34-1〜34-10 は、各平滑筋電信号を擬似張力にそれぞれ変換して出力する。擬似張力は、各筋肉が発生する張力に対応する値である。LPF34-1〜34-10 は、神経インパルスに対する筋収縮の遅れを補正するための2次系のフィルタであり、その遮断周波数は、擬似張力と筋肉が実際に発生している張力との対応を正確にする観点から、数Hz、より好ましくは1Hz〜3Hz、さらにより好ましくは2Hz〜3Hzに設定される。本実施形態では、2Hzに設定された。
【0027】
随意運動では、上位の中枢から伝達されるインパルスが脊髄のα運動ニューロンを介して各筋肉に伝達され、活動電位が発生して筋肉が収縮し、各関節にトルクを生じさせて所望の運動が起こる。筋電信号を低域通過フィルタで変換した出力信号である擬似張力は、α運動ニューロンの発火頻度を反映していると期待されるため、筋肉が実際に生じている張力にほぼ等しいと考えられる。
【0028】
時刻nにおける擬似張力T(n)は、式2で与えられる。
【0029】
【数2】
Figure 0003660330
【0030】
これは、Wi をインパルス応答とするFIRフィルタになっている。本実施形態では、インパルス応答h(t)を式3のようにおいた。
【0031】
【数3】
Figure 0003660330
【0032】
LPF34-1〜34-10 の出力信号(擬似張力)は、CPU35に出力される。CPU35は、正規化基準値演算部41、モデル作成部42及びインピーダンス演算部43を備えて構成され、例えば、マイクロプロセッサなどである。正規化基準値演算部41、モデル作成部42及びインピーダンス演算部43は、正規化基準値、モデル及びインピーダンスをそれぞれ後述のように演算する。さらに、CPU35は、各種プログラムに従い、データを演算処理し、6軸力覚センサ23、外部記憶装置24、表示装置25、記録装置26、入力装置27、DIV32、メモリ36及び位置測定装置を制御すると共にデータを交換する。メモリ36は、CPU35に接続され、RAM(Random Access memory)及びROM(Read Only Memory)を備えて構成される。メモリ36は、正規化基準値を計測するための正規化基準値計測プログラム、モデルを作成するためのモデル作成プログラム、インピーダンスを演算するためのインピーダンス演算プログラム及び各装置を制御するための制御プログラムなど各種のプログラム、これらプログラム実行中の各種値、表面電極21-1〜21-10 からの出力並びに6軸力覚センサ23からの出力などを格納する。
【0033】
本実施形態では、手先のインピーダンスを測定するので手先の力を測定する必要があるために、6軸力覚センサ23が使用される。6軸力覚センサ23は、棒状の握部23-1が基部23-2に固定的に突設され、握部23-1の底部に備えられた圧電素子によって握部23-1に加えられた力が検出される。6軸力覚センサ23は、高さを調節することができる作業台28に配置される。外部記憶装置24は、フレキシブルディスク、CD−R(Compact Disc Recordable)及びDVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)などの記憶媒体とデータを読み書きする補助記憶装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−Rドライブ及びDVD−Rドライブなどである。メモリ36にインピーダンス測定装置10を動作させるために必要な正規化基準値計測プログラム、モデル作成プログラム及びインピーダンス演算プログラムなどの各プログラムが格納されていない場合には、これらを記録した記録媒体を外部記憶装置24を介してメモリ36に読み込む。
【0034】
表示装置25は、CRTやLCDや有機ELなどの表示機器であり、LPF34-1〜34-10の出力信号(擬似張力)、6軸力覚センサ23の出力信号及び入力装置27の出力信号などのCPU35の処理結果を表示する。記録装置26は、紙などの媒体にデータを記憶するプリンタなどの出力機器であり、LPF34-1〜34-10の出力信号(擬似張力)、6軸力覚センサ23の出力信号及び入力装置27の出力信号などのCPU35の処理結果を記録する。そして、入力装置27は、起動プログラムの指定など、CPU35に与える各種コマンドやデータなどを入力する装置であり、例えば、キーボードやマウスなどである。位置測定装置は、CPU35に接続され、測定しようとする運動部分における各位置を所定のサンプリング周期で測定する機器であり、例えば、3次元位置計測装置OPTOTRAK(Northern Digital Inc.)である。このOPTOTRAKは、位置を計測しようとする箇所に赤外線マーカを貼付し、赤外線マーカから放射される赤外線を3つのカメラで検出することにより、高精度、高サンプリングレートで位置を計測する装置であり、例えば、本実施形態では、サンプリングレートを200Hzに設定した。
【0035】
(第1の実施形態の動作)
インピーダンス測定装置10は、CPU35の正規化基準値演算部41で正規化基準値計測プログラムによって正規化基準値を測定し、この正規化基準値の下で計測した計測値を用いて、モデル作成部42でモデル作成プログラムによってモデルを作成し、このモデルを用いて、インピーダンス演算部43でインピーダンス演算プログラムによって生体部位のインピーダンスを測定する。以下、より詳細に説明する。
【0036】
図2は、第1の実施形態におけるインピーダンス測定装置の動作を示すフローチャートである。図3は、表面電極のだいたいの装着位置と筋肉との関係を示す図である。図4は、肘関節角度90度・肩関節角度45度の2関節運動における正規化データ取得の状況を示す図である。
【0037】
図2において、まず、正規化基準値を測定するために、被験者に表面電極21を装着して筋電信号を信号処理部22に取り込む(S11)。
【0038】
動物の運動は、運動神経に支配される筋肉の収縮によって生じ、多くの骨格筋の協調によって行われる。運動神経は、多数の運動神経繊維の束からなり、個々の運動神経繊維は、数本から100本以上の筋繊維を支配している。1本の運動神経繊維の支配下にある筋繊維は、神経繊維のインパルスにより同時に活動電位を発生して収縮するので、骨格筋の運動の単位と見なすことができ、運動単位と呼ばれる。骨格筋が生体内にある状態でその活動電位を示すものに筋電信号がある。筋電信号は、筋肉が全く弛緩している場合では活動電位は全く記録されず、運動神経のインパルスにより筋肉の収縮が起こると活動電位があらわれ記録される。活動電位の頻度は、収縮が強くなるにつれて増大するが、これは、単一の運動単位に伝えられる神経インパルス頻度の増大や、収縮にあずかる運動単位の数の増加によるものである。このような筋電信号は、観察される電極の電位と筋肉の張力のレベルとに直接的な対応関係がない。即ち、筋電信号から得られる擬似張力においても、擬似張力のレベルと筋肉の張力のレベルとの間に直接的な対応関係はない。そのため、擬似張力の或るレベルが筋肉の張力の何れのレベルに対応するか関係付けるために、正規化基準値の計測を行い、この結果によって、DIV32-1〜32-10における所定の値を決定する必要がある。
【0039】
正規化方法は、例えば、最大随意収縮力を1として相対的に正規化する方法がある。この方法は、最大随意収縮力が被験者の最大であると考えて出す筋肉の張力であるので被験者の恣意によると考えられ、同じ筋肉であっても時々で相違してしまう。以下の正規化方法は、被験者に一定の力を出してもらって正規化する方法であり、被験者の恣意によらない点で優れている。
【0040】
筋電信号の正規化は、第1ステップとして、動作部分に所定の力を発生させ、この場合における各筋肉の筋電信号を表面電極21-1〜21-10 によって計測する。第2ステップとして、各筋肉毎に擬似張力の最大値を求める。この最大値が、各筋肉毎に求められた、各筋肉の筋電信号を正規化するための正規化基準値となる。そして、この正規化基準値に応じてDIV32-1〜32-10における所定の値が決定される。
【0041】
より具体的には、本実施形態では、手先のインピーダンスを測定するので、略水平面内における人腕の肩・肘の2関節運動に関与する10箇所の筋肉の筋電信号を測定する必要があるために、10組の表面電極21-1〜21-10 は、図3に示す、肩関節の伸筋・屈筋としての(1)DLS、(2)DLA、(3)DLC、(4)TEM及び(5)PMJ、肩・肘の2関節筋としての(6)TRL及び(7)BIL、肘関節の伸筋・屈筋としての(8)TRA、(9)TRM及び(10)BRCに装着された。なお、図3に示す●が表面電極21の装着位置である。ここで、DLSは三角筋後部、DLAは三角筋上部、DLCは三角筋前部、TEMは大円筋、PMJは大胸筋、TRLは上腕三頭筋長頭、BILは上腕二頭筋長頭、TRAは上腕三頭筋外側頭、TRMは上腕三頭筋内側頭、及び、BRCは上腕筋である。
【0042】
被験者は、図1(a)に示すように、手先、肘及び肩が同一水平面になるように椅子29に座る。筋電信号は、図4(a)に示すように、肩の関節を45度、肘の関節を90度に設定(固定)し、等尺性収縮により手先で例えば40Nの力を発生させて測定される。
【0043】
学習者がこのように手先に力を発生させている間、表面電極21-1〜21-10からの出力は、上述の信号処理により擬似張力に変換されて、CPU35に取り込まれる。この正規化基準値の測定の場合では、DIV32-1〜32-10の所定の値は、1に設定される。即ち、DIV32-1〜32-10は、入力をそのまま出力する。そして、6軸力覚センサ23からの出力もCPU35に取り込まれる。CPU35は、これら取り込んだ値をメモリ36に格納するとともに記録装置26に記録し、6軸力覚センサ23からの出力を表示装置25に表示する。表示装置25は、6軸力覚センサ23に加わる力が40Nであることを示す円と、学習者が6軸力覚センサ23に加えている現在の力の方向及び大きさを示すカーソルと、30度ずつの12方向の矢印とを表示し、学習者は、表示装置25を見ながら所定方向にこの円上にカーソルが一致するように力を発生させる。これにより学習者は、学習者の恣意によらない所定の力、即ち、40Nの力を発生させる。
【0044】
測定は、すべての筋肉を活性化させるために図4(b)に示す正のX方向から30度ずつ12方向に力を発生させように、24秒間で反時計回りに一周するように行われる。ここで、次の方向に力の発生方向を変えるごとに力を抜き0Nに戻すようにしている。これは、学習者に40N以上の力を発生させないようにするためである。なお、測定開始の方向は、特に限定されるものではなく、何れの方向から始めても良い。
【0045】
次に、CPU35の正規化基準値演算部41は、入力された擬似張力から、筋肉毎に擬似張力の最大値を求める。この擬似張力の最大値が正規化基準値である。CPU35は、筋肉毎に対応する正規化基準値を表示装置25に表示するとともに記録装置26に記録する。そして、CPU35は、このように求めた各正規化基準値を、DIV32-1〜32-10の所定の値として、各筋肉に対応させてそれぞれに設定する(S12)。これによって、表面電極21-1〜21-10から得られる擬似張力(筋電信号)と筋肉の張力との間に、一定の対応関係を作ることができる。
【0046】
このような正規化基準値で筋電信号を正規化するので、装着状態の相違による抵抗値の相違を吸収することができる。そして、被験者の恣意によらないので被験者間で擬似張力及び関節のトルクなどを比較することが可能となる。なお、本実施形態では、所定の力として40Nの場合において、正規化基準値を求めたが、他の力例えば30Nの力を発生させて正規化基準値を求めてもよい。また、本実施形態では、人腕における上記(1)乃至(10)に対応する正規化基準値を求めたが、他の運動部分における筋肉についても同様に求めることができる。
【0047】
次に、筋肉骨格系モデルを作成するために、被験者に表面電極21を装着して筋電信号を信号処理部22に入力する(S13)。即ち、まず、被験者は、表面電極21-1〜21-10が図3に示す装着位置に装着され、図1(a)に示すように手先、肘及び肩が略同一水平面になるように椅子に座る。また、位置測定装置であるOPTOTRAKの赤外線マーカは、本実施形態では手先のインピーダンスを測定するので、肩関節及び肘関節の角度を測定する必要があるために、図6に○で示すように被験者の肩関節、肘関節及び手首関節に貼付された。OPTOTRAKで、被験者の肩関節、肘関節及び手首関節の位置を200Hzのサンプリング周期で測定することによって、CPU35は、肩関節、肘関節及び手首関節の位置だけでなく、これら位置から肩関節の角度、肩関節の角速度、肘関節の角度及び肘関節の角速度をそれぞれ得ることができる。
【0048】
図5は、等尺性筋収縮における測定位置と測定結果の一例を示す図である。図5(a)は、等尺性筋収縮における測定位置を示す図であり、肩関節を座標原点とし、両肩関節を含む方向をX軸とし、X軸に垂直な方向をY軸とする。後述の図6、図8、図10乃至図14も同様である。図5(b)は、測定結果の一例を示す図である。図6は、静止中における測定位置を示す図である。
【0049】
第1に、図5(a)に示す*1〜*15の各測定位置において、1箇所につき24秒間で12方向に被験者が力を出して筋電信号が測定された。出す力の大きさは、例えば、それぞれ40N、30N、20N、10N及び5Nの各場合について行われた。なお、手先は、6軸力覚センサ23に固定され、被験者は、6軸力覚センサ23を握る必要はない状態で測定された。図5(b)に40Nの力を12方向に出した場合の力の軌跡を示す。
【0050】
第2に、被験者が第1と同様な状態で、図6に示す*の251箇所の各測定位置において、被験者が1箇所につき10秒間その姿勢を維持した状態で、その間サンプリング周期200Hzで筋電信号が測定された。
【0051】
次に、CPU35のモデル作成部42は、S13で第2の測定結果を用いて、モデルを作成する(S14)。ここで、モデルについて以下に説明する。
【0052】
水平面内で肩、肘の2関節運動を行っている場合、時刻tにおける被験者の動作特性は、式4のように近似することができる。
【0053】
【数4】
Figure 0003660330
【0054】
ここで、X(t)は手先位置であり、物理学で慣習的に使用される表記方法に従って手先速度をX(t)の1ドットで、手先加速度をX(t)の2ドットで表す。F(t)は手先から環境に作用する力、Xv(t)は手先の仮想軌道、Mは手先の慣性、Bは手先の粘性及びKは手先のスティフネス行列である。これらM,B及びKは、インピーダンスパラメータである。
【0055】
手先、肘、肩が略同一水平面上にあるような姿勢で腕を固定しているとして、筋電信号からXv(t)を求める方法を考える。このとき、外力F(t)が作用しなければ、関節角度をθ、各筋肉の運動指令をuとすると、筋肉により関節に発生するトルクτは零となるので式5が成り立つ。
τ=f(u、θ)=0 ・・・ (5)
関数fは、非線形性が強いので式5を解析的に解くことは難しいが、運動指令uから関節角度θへの写像は、多対一写像と表せる。これは、生体の運動部分を異なった硬さで同じ姿勢にすることができることから分かる。運動指令uは、筋電信号に対応するから、図7に示すように1層目に筋電信号(EMG)を入力し3層目に関節角度(joint angle)θを出力する神経回路モデルを作成することによって、式5を解くことが可能となる。つまり、筋電信号から神経回路モデルによって関節角度θを求め、関節角度θからXv(t)を求めることができる。図7は、神経回路モデルの一例を示す図である。
【0056】
よって、モデル作成部42は、S13の測定結果を用いて、1層目に筋電信号を入力し2層目を経由して3層目に関節角度θを出力する神経回路モデルを作成する。以下、この神経回路モデルを平衡位置用神経回路モデルと呼称する。
【0057】
この平衡位置用神経回路モデルは、第1の実施形態では、図6に示す251箇所の各位置における各姿勢から380点のデータを任意に抜き出し、計380×251=95380のデータを用いて、KickOut法により学習させて作成した。学習は、残りの1520×251=381520のデータをテストデータとして、テストデータに対してエラーを計算し、過学習にならないところで打ち切った。また、本実施形態の平衡位置用神経回路モデルは、1層目と3層目の出力が線形変換で、2層目の出力がシグモイド関数変換であり、1層目が計測した筋肉と同数の10個、2層目が15個、3層目が肩、肘の平衡位置で2個である。
【0058】
このようにして作成した平行位置用神経回路モデルは、テストデータの全381520について相関係数を計算すると、本実施形態では肩が0.9432、肘が0.9387となっており、略正確に位置を推定できることが確認された。
【0059】
そして、CPU35のインピーダンス演算部は、第1の測定結果を平衡位置用神経回路モデルに用いて、インピーダンスの一つであるスティフネス行列Kについて演算する(S15)。なお、新たに被験者に所定の動作を行わせて筋電信号を得て、この筋電信号からインピーダンスを測定してもよい。
【0060】
ここで、スティフネス行列Kの演算について説明すると、水平面内で腕が静止している場合には、式4は、式6のように変形される。
K(X(t)−Xv(t))=−F(t) ・・・ (6)
この場合に、腕を静止させたまま等尺性筋収縮を行うと、平衡位置用神経回路モデルを用いて、Xv(t)を求めることができる。したがって、インピーダンス演算部43は、実際の手先位置X(t)と、筋電信号から平衡位置用神経回路モデルを用いて求めたXv(t)と、6軸力覚センサ23から測定されるF(t)とを用いて、式6よりスティフネス行列Kを求める。
【0061】
次に、CPU35は、インピーダンス演算部43が求めたインピーダンス(スティフネス行列K)を表示装置25に表示する(S16)。
【0062】
図8は、スティフネス楕円体でインピーダンスを表示装置に表示した一例である。図8において、実線が12方向に5Nの力を出した場合のデータを用いて演算されたインピーダンスであり、破線が12方向に10Nの力を出した場合のデータを用いて演算されたインピーダンスである。図8から分かるように、大きな力を出す場合には腕を硬くしている、つまりスティフネス楕円体が大きくなっている。
【0063】
なお、手先のスティフネス楕円体のパラメータは、図9に示すように、インピーダンスの大きさが楕円の面積Sで表され、インピーダンスの方向は、楕円の長軸の方向で表される。楕円の形状は、楕円の短径λminと楕円の長径λmaxとの比βで表示し、肩関節と手先とを結ぶ直線と両肩関節を結ぶ直線とが成す角をφ、肩関節と手先とを結ぶ直線と楕円の長軸とが成す角をδとおく。
【0064】
以上のように、第1の実施形態におけるインピーダンス測定装置10は、筋電信号を正規化して擬似張力と対応付け、この対応付けの下に筋電信号を測定し、測定結果の一部から平衡位置用神経回路モデルを作成し、さらに測定結果に平衡位置用神経回路モデルを適用することによってXv(t)を求めて式6よりスティフネス行列Kを求めることができる。そして、インピーダンス測定装置10は、表面電極23及び赤外線マーカの装着という被験者の運動をほとんど妨げることのない簡易な方法によって諸量を測定して帰納的に平衡位置用神経回路モデルを作成するので、従来のようにロボット等によって強制的に摂動を生体に与える必要がなく、大掛かりな装置を必要としない。また、本発明では、インピーダンスの演算に運動指令uとして筋電信号EMGを用いるので、リアルタイムでインピーダンスが測定可能である。
【0065】
(第2の実施形態の構成)
次に、別の実施形態について説明する。第1の実施形態は、インピーダンスを演算するためにXv(t)を求める平衡位置用神経回路モデルを用いたが、第2の実施形態は、トルクτを求めるトルク用神経回路モデルを用いる実施形態である。
【0066】
第2の実施形態におけるインピーダンス測定装置10’は、第1の実施形態のモデル作成部42の代わりにトルク用神経回路モデルを作成するモデル作成部42’を使用し、第1の実施形態のインピーダンス演算部43の代わりに後述の演算方法によるインピーダンス演算部43’を使用することを除き、図1に示す第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0067】
また、第2の実施形態におけるインピーダンス測定装置10’の動作は、モデル作成方法及びインピーダンスの演算方法が異なることを除き、図2に示す第1の実施形態と同様に、筋電信号を取り込み(S11)、正規化し(S12)、正規化基準値が設定された下で筋電信号を取り込み(S13)、モデルを作成し(S14’)、このモデルを用いてインピーダンスを演算し(S15’)、インピーダンスを出力・表示する(S16)。以下、第1の実施形態と異なるモデルの作成方法及びインピーダンス演算方法について説明する。
【0068】
まず、第2の実施形態におけるS14’のモデル作成方法について説明する。第1の実施形態と同様に、略水平面内で肩、肘の2関節運動を行っている場合、時刻tにおける被験者の動作特性は、式4のように近似することができる。
【0069】
一方、手先、肘、肩が略同一水平面上にあるような姿勢で腕を固定しているとして、運動指令u、関節角度θ及びトルクτの間には式5’が成り立つ。
τ=f(u、θ) ・・・ (5’)
トルクは、その関節に関する多数の筋肉の発生する張力Tとモーメントアームaによって決まるが、運動指令uと筋張力Tとの関係、筋肉の長さlと筋張力Tとの関係、及びモーメントアームaと関節角度θとの関係は、すべて非線形であるので式5を解析的に解くことは難しいが、第1の実施形態と同様に、1層目に筋電信号EMG及び関節角度θを入力し3層目にトルクτを出力する神経回路モデルを作成することによって、式5’を解くことが可能となる。よって、モデル作成部42’は、S13の測定結果を用いて、1層目に筋電信号EMG及び関節角度θを入力し三層目にトルクτを出力する神経回路モデルを作成する。以下、この神経回路モデルをトルク用神経回路モデルと呼称する。
【0070】
このトルク用神経回路モデルは、第2の実施形態では、図5(a)に示す各位置で測定した第1の測定結果から47690のデータを任意に抜き出し、図6に示す各位置で測定した第2の測定結果から58800のデータを任意に抜き出し、計106490のデータを用いて、KickOut法により学習させて作成した。学習は、残りの664410のデータをテストデータとして、テストデータに対してエラーを計算し、過学習にならないところで打ち切った。また、本実施形態のトルク用神経回路モデルも1層目と3層目の出力が線形変換で、2層目の出力がシグモイド関数変換であり、1層目が計測した筋肉と肩・肘の各関節角度で12個、2層目が15個、3層目が肩、肘のトルクで2個である。このようにして作成したトルク用神経回路モデルは、テストデータの全664410について相関係数を計算すると、本実施形態では肩が0.9494、肘が0.9493となっており、略正確にトルクを推定できることが確認された。
【0071】
次に、第2の実施形態におけるS15’のインピーダンス演算方法について説明する。
【0072】
水平面内で腕を静止している状態で、運動指令uを変えずに、手先に仮想的な一定の微小強制変位δθを与えると、式7が成り立つ。
δτ=f(u、θ+δθ) ・・・ (7)
ここで、δτは、強制変位δθを与えた場合の手先復元力である。運動指令uを変えないことは、手先の平衡位置Xv(t)が変化しないことを示す。そして、手先位置X(t)の速度及び加速度は、静止状態であるから共に零である。よって、式4は、式8のように変形される。
K・δX(t)=−δF(t) ・・・ (8)
ここで、δX(t)及びδF(t)は、それぞれδθ及びδτをXY座標系で表したものである。
【0073】
一方、水平面内で肩、肘の2関節運動を行っている状態で、運動指令uを変えずに、手先に仮想的な一定の微小強制変位δθを与えると、式9が成り立つ。
τ+δτ=f(u、θ+δθ) ・・・ (9)
ここで、δθを仮想的に一瞬に変化させることで、手先位置X(t)の速度及び加速度は、強制変位を与えないときと同じとみなせるから式10が成り立つ。
【0074】
【数5】
Figure 0003660330
【0075】
式10と式1との差分をとると、次式11が成り立つ。
K・δX(t)=−δF(t) ・・・ (11)
ここで、δX(t)及びδF(t)は、それぞれδθ及びδτをXY座標系で表したものである。
【0076】
したがって、インピーダンス演算部43’は、静止中のインピーダンスを求める場合には、或る姿勢(図5(a)の*1〜*15の何れかの位置における姿勢)で腕を静止している場合に、筋電信号EMGを変えずに手先が例えば5mmだけ12方向に動くように関節角度δθを変えたデータをトルク用神経回路モデルに入力してδτを求め、δθ及びδτからδX(t)及びδF(t)をそれぞれ求め、式8よりスティフネス行列Kを求める。一方、インピーダンス演算部43’は、運動中のインピーダンスを求める場合には、運動中の各姿勢から筋電信号EMGを変えずに手先が例えば5mmだけ12方向に動くように関節角度δθを代えたデータをトルク用神経回路モデルに入力してトルクを求め、このトルクと関節角度θを変えない場合にトルク用神経回路モデルから出力されるトルクとの差分をとったトルクから、式11よりスティフネス行列Kを求める。
【0077】
そして、次に、CPU35は、インピーダンス演算部43’が求めたインピーダンス(スティフネス行列K)を表示装置25に表示する。
【0078】
図10は、スティフネス楕円体で静止中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。図10から分かるように、インピーダンスの方向は、楕円の長軸が肩の方向を向いているが、形状は、細長くなっている。図11は、スティフネス楕円体で運動中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。図11(a)、(b)及び(c)は、それぞれ図に矢印→で示すように手先を動かした場合におけるインピーダンスである。図11から分かるように、一般に言われているように図11に較べて運動中の方がスティフネス楕円体が大きくなっており、運動の方向によって楕円体の方向も変わっている。
【0079】
以上のように、第2の実施形態におけるインピーダンス測定装置10’は、筋電信号を正規化して擬似張力と対応付け、この対応付けの下に筋電信号を測定し、測定結果の一部からトルク用神経回路モデルを作成し、さらに測定結果にトルク用神経回路モデルを適用することによって式8又は式11よりスティフネス行列Kを求めることができる。そして、インピーダンス測定装置10’は、第1の実施形態と同様に、従来のように大掛かりな装置を必要とせずに、リアルタイムでインピーダンスが測定可能である。
【0080】
ここで、第1の実施形態の式5及び第2の実施形態の式5’は、一般的には式5”のように表され、強制的に摂動を与えた場合では、剛性の一般式5”は、式7’のように表され、粘性の一般式は、式(7”)のように表される。従って、粘性を求める場合には、第2の実施形態において、式5’の代わりに式5”を用い、式7の代わりに式7”を用いることで、上述と同様な手法により、粘性Bを求めることができる。
τ=f(u、θ、ω) ・・・ (5”)
τ+δτ=f(u、θ+δθ、ω) ・・・ (7’)
τ+δτ=f(u、θ、ω+δω) ・・・ (7”)
ここで、ωは関節角速度(θドット)である。また、この場合の神経回路モデルは、1層目と3層目の出力が線形変換で、2層目の出力がシグモイド関数変換であり、1層目が計測した筋肉信号と肩・肘の各関節角度と肩・肘の各関節角速度で14個、2層目が15個、3層目が肩、肘のトルクで2個となる。
【0081】
(第3の実施形態の構成)
次に、別の実施形態について説明する。第1及び第2の実施形態は、非線形関数を解くこと代わりに測定値から神経回路モデルを作成してこの神経回路モデルを用いてインピーダンスを演算する実施形態であるが、第3の実施形態は、後述のように非線形関数を近似的に解いた数式モデルを用いる実施形態である。
【0082】
第3の実施形態におけるインピーダンス測定装置10”は、第1の実施形態のモデル作成部42の代わりに数式モデルを作成するモデル作成部42”を使用し、第1の実施形態のインピーダンス演算部43の代わりに後述の演算方法によるインピーダンス演算部43”を使用することを除き、図1に示す第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0083】
また、第2の実施形態におけるインピーダンス測定装置10”の動作は、モデル作成方法及びインピーダンスの演算方法が異なることを除き、図2に示す第1の実施形態と同様に、筋電信号を取り込み(S11)、正規化し(S12)、正規化基準値が設定された下で筋電信号を取り込み(S13)、モデルを作成し(S14”)、このモデルを用いてインピーダンスを演算し(S15”)、インピーダンスを出力・表示する(S16)。
【0084】
まず、第3の実施形態における筋骨格系の数式モデルについて説明する。筋肉は、伸ばすと反力を返す弾性体のような性質をしているが、実際の張力Tは、筋肉の伸びによって非線形に変化する。また張力Tは、筋肉が短縮する場合の速度によっても変化し、運動指令uの変化によっても変化する。このことから筋肉は、粘性、弾性係数、自然長が運動指令uによって変化する弾性体としてモデル化することができる。筋肉の張力Tは、式12のように表される。
【0085】
【数6】
Figure 0003660330
【0086】
ここで、lは筋肉の長さを表し、その速度をlの1ドットで、加速度をlの2ドットで表す。また、式12のkは筋肉の弾性係数を、bは粘性係数を、そして、Δlは自然長からの伸びを表す。一方、簡単化のためにkを運動指令uに線形な関数として式13のように近似する。
k=k0+k1u ・・・ (13)
Δlは、関節角度0の場合における筋肉の長さをlとすると式14となる。
Δl=(l−lrest(u)−aθ);屈筋 ・・・ (14-1)
Δl=(l−lrest(u)+aθ);伸筋 ・・・ (14-2)
ここで、lrestは筋肉の自然長、θは関節を伸ばした状態を0とした関節角度、そして、aはモーメントアームを表す。
【0087】
一般にモーメントアームaは、関節角度θの非線形な関数であるが、本実施形態では、aを定数で近似し、lrestを運動指令uに関する線形関数で近似すると、定数項をまとめることにより、式14は式15のように表される。
Δl=(l0−l1u−aθ);屈筋 ・・・ (15-1)
Δl=(l0−l1u+aθ);伸筋 ・・・ (15-2)
同様に、粘性係数bも運動指令uに関する線形関数で近似し、lの速度を関節角度θの速度で表すと、式16のように近似される。
【0088】
【数7】
Figure 0003660330
【0089】
なお、k0、k1、l0、l1、b0及びb1は、定数である。
【0090】
以上より、或る筋肉の張力Tiは、式17のように表される。
【0091】
【数8】
Figure 0003660330
【0092】
ここで、aijは、筋肉iの自由度jに関するモーメントアームを表し、筋肉が伸筋である場合は負符号を取り筋肉iの自由度jに関わっていない場合は0とする。
【0093】
或る自由度でのトルクτは、その方向に関してのモーメントアームと張力との積を全筋肉について和をとったものとなり、式18のように表される。
τ=aT ・・・ (18)
ここで、τ=(τ1、τ2、・・・、τjt ・・・ (19-1)
T=(T1、T2、・・・、Tit ・・・ (19-2)
及びaはj行i列の行列である。
【0094】
以上より、或る自由度jにおける関節のスティフネスRjは、関節が動いた場合にどれだけのトルクτが発生するかで決まるので、式17及び式18の数式モデルより解析的に直接演算することができ、式20のように表される。
【0095】
【数9】
Figure 0003660330
【0096】
同様に、或る自由度jにおける関節の運動中の粘性係数Bは、式21のように表される。
【0097】
【数10】
Figure 0003660330
【0098】
以上のように関節スティフネスRj及び粘性Bjが解析的に表されることより、CPU35のモデル作成部42”は、S14”においてS13における測定結果を用いて式20及び式21の係数a、k、l、bを求めて数式モデルを作成する。
【0099】
この数式モデルは、本実施形態では、図5(a)に示す各位置で測定した第1の測定結果から16720のデータを任意に抜き出し、静止中の第2の測定結果から36750のデータを任意に抜き出し、計53470の静止中のデータを用いて、勾配法による逐次計算により係数a、k、lを最適化した。残りの367500のデータについて相関係数を計算すると、本実施形態では肩が0.9025、肘が0.9281となっており、略正確にモデル化できたことが確認された。そして、求めた係数a、k、lを固定して、運動中のデータで係数bの最適化を行った。なお、腕の物理パラメータは、腕が比重1の均一な物質であると仮定し、円錐台のモデルとして近似して求めた。
【0100】
ここで、一般に1つの関節には、複数の筋肉が付いているので、単純に最適化を行うと各係数が生物学的に有り得ない値に収束する可能性がある。そのため、各パラメータの初期値と制約とを定めるのが好ましく、本実施形態では生物学的な見地から、a=0.005〜0.04(m)、k=500〜3000(N/m)、l=0.001〜0.03(m)、及び、b=50〜200(Ns/m)に制約を定めた。
【0101】
係数a、k、l、bが求まると、CPU35のインピーダンス演算部43”は、S15”において、S13の測定結果に基づいて式20より関節スティフネスRjを求め、式21より粘性Bjを求める。そして、次に、CPU35は、インピーダンス演算部43”が求めたインピーダンス(関節スティフネスRj及び粘性Bj)を表示装置25に表示する。
【0102】
図12は、スティフネス楕円体で静止中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。図12から分かるように、楕円の長軸の方向が肩の方向を向き、手先位置が体の近くになると楕円の向きが反時計回りに回転することや、手先位置が体から離れると楕円の形状が細長くなることなど、従来の研究報告と同様の結果となっている。また、図13は、スティフネス楕円体で運動中のインピーダンス(手先スティフネス楕円体)を表示装置に表示した一例である。図14は、スティフネス楕円体で運動中のインピーダンス(手先粘性楕円体)を表示装置に表示した一例である。図13の各図及び図14の各図は、それぞれ図に矢印→で示すように手先を動かした場合におけるインピーダンスである。手先粘性楕円体は、スティフネス楕円体と同様に、外部から手先の全方向に1m/sの速度を与えた場合に生じる力を表したもので、楕円の長軸方向には大きな粘性特性が、短軸方向には小さな粘性特性が存在することを意味する。
【0103】
以上のように、第3の実施形態におけるインピーダンス測定装置10”は、筋電信号を正規化して擬似張力と対応付け、この対応付けの下に筋電信号を測定し、測定結果の一部から数式モデルを作成し、さらに測定結果に数式モデルを適用することによって式20及び式21よりスティフネス及び粘性をそれぞれ求めることができる。そして、インピーダンス測定装置10”は、第1の実施形態と同様に、従来のように大掛かりな装置を必要とせずに、リアルタイムでインピーダンスが測定可能である。
【0104】
なお、第1乃至第3の実施形態では、インピーダンスを求めるために一連の動作によって正規化基準値及び各モデルを求めたが、或る被験者に対して一度これら正規化基準値及び各モデルを求めることによって、次回以降は、これら正規化基準値及び各モデルを用いて、筋電信号から直ちにインピーダンスを求めることができる。
【0105】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1乃至第3の実施形態のうち何れかのインピーダンス演算方法を用いて運動学習を行う運動学習支援装置の実施形態である。この運動学習支援装置は、運動学習目標値を設定する運動学習目標値設定モード及び学習者が学習を行う学習支援モードの各モードが備えられ、これら各モードを使用することにより、学習者は、動作部分のインピーダンスの程度を含めて動作を習得することができる。
【0106】
図1において、運動学習支援装置の構成は、CPU35が破線で示す運動学習目標値設定部44を更に備え、メモリ36が運動学習目標値、メッセージ及び後述のフローチャートに基づく運動学習支援プログラムを更に格納していることを除き、第1の実施形態におけるインピーダンス測定装置10の構成と同様であるので、その説明を省略する。なお、モデル作成部42及びインピーダンス演算部43は、第1乃至第3の実施形態における何れか1つのモデル作成部42、42’、42”及びインピーダンス演算部43、43’、43”である。また、メッセージは、運動目標値と学習者が今行った運動のインピーダンスとの相違に従った対応関係を示すテーブルとしてメモリ36に格納する。メッセージは、例えば、「前腕を硬くしてください」とか「手首を軟らかくしてください」などの運動部分の硬さや軟らかさを指導するメッセージである。
【0107】
次に、この運動学習支援装置の動作について説明する。図15は、第4の実施形態における運動学習支援装置の動作を示すフローチャートである。
【0108】
図15において、運動学習支援装置にモードを入力する(S21)。まず、運動目標値を設定する必要があるので、運動学習目標値設定モードを選択する。
【0109】
そして、運動の目標値を設定するために、学習しようとする学習者に較べて当該運動に関して熟達している者(師匠)に表面電極21を装着する。表面電極21の装着位置は、学習しようとする運動に合わせて選択される。例えば、手首のインピーダンスがパッドの成否に重要であると考えてゴルフパッドを学習しようとする場合には、手首関節の伸筋・屈筋として、左前腕の(1)橈側手根屈筋、(2)尺側手根伸筋、(3)指伸筋、(4)尺側手根屈筋及び(5)方形回内筋の5個の筋肉で生じる筋電信号をそれぞれ測定可能なように装着される。また例えば、肩・肘の2関節運動がテニスに重要であると考える場合には、第1乃至第3の実施形態と同様に装着される。また、同様に、赤外線マーカが、学習しようとする運動に合わせて選択された位置に貼付されれる。
【0110】
運動目標値となる師匠のインピーダンスを求めるために、運動学習支援装置は、師匠に正規化を行うための所定の動作を行わせながら筋電信号を取り込み(S22)、この筋電信号に基づいて正規化基準値を求めてDIV32を設定することによって正規化を行い(S23)、この正規化基準値の下で師匠に所定の動作を行わせながら筋電信号を取り込み(S24)、この筋電信号に基づいてモデルを作成し(S25)、師匠に学習しようとする運動を行わせながら筋電信号を取り込み(S26)、モデルに基づいてインピーダンスを演算する(S27)。なお、これらS22乃至S25、及びS27は、第1及び第3の実施形態におけるS11乃至S14、及びS15とそれぞれ同様なのでその説明を省略する。
【0111】
次に、運動学習支援装置はモードを判断し(S28)、運動学習目標値設定モードである場合(目標値設定)には、CPU35の運動学習目標値設定部44は、S25で演算したインピーダンスを運動学習目標値としてメモリ36に格納する(S29)。そして、運動学習支援装置の使用の終了が入力されたか否かを判断し(S32)、終了の場合(Yes)には、運動学習支援プログラムを終了する。
【0112】
このように運動目標値が設定された後に、学習者は、運動学習支援装置を用いて運動を学習するために、学習支援モードを入力する(S21)。
【0113】
そして、学習者は、学習する運動に合わせて表面電極21及び赤外線マーカを装着する。学習者の正規化基準値及びモデルを作成するために、運動学習支援装置は、師匠の場合と同様に、学習者に正規化を行うための所定の動作を行わせながら筋電信号を取り込み(S22)、この筋電信号に基づいて正規化基準値を求めてDIV32を設定することによって正規化を行い(S23)、この正規化基準値の下で学習者に所定の動作を行わせながら筋電信号を取り込み(S24)、この筋電信号に基づいてモデルを作成し(S25)、学習者に学習しようとする運動を行わせながら筋電信号を取り込み(S26)、モデルに基づいてインピーダンスを演算する(S27)。なお、既に学習者の正規化基準値及びモデルが作成されメモリ36に格納されている場合には、これらS22乃至S26の処理を省略することも可能である。
【0114】
次に、運動学習支援装置は、モードを判断し(S28)、学習支援モードである場合(学習)には、運動学習支援装置は、師匠の運動目標値と学習者が今行った運動のインピーダンスとを表示装置S25に表示し(S30)、そして、運動目標値と学習者が今行った運動のインピーダンスとの相違に基づくメッセージを表示する(S31)。そして、運動学習支援装置の使用の終了が入力されたか否かを判断し(S32)、終了の場合(Yes)には、運動学習支援プログラムを終了し、継続の場合(No)には、処理をS26に戻して学習者に再び運動をさせ、学習をさせる。
【0115】
図16は、運動学習支援装置における表示装置の表示例を示す図である。図16において、表示装置25には、例えば、運動目標値のインピーダンスである目標値、学習者の今の運動におけるインピーダンスである現在値、運動目標値の楕円体(実線、師匠)、学習者の今の運動における楕円体(破線、あなた)及びメッセージを表示される。学習者は、運動目標値の楕円対と自己の運動の楕円体との相違を視覚的に捉え、メッセージを参考にしながら次の運動を行うことができるので、効率良く運動を学習することができ、短期間に運動目標値に近い運動を学習することができる。
【0116】
なお、第4の実施形態では、師匠のインピーダンスを予め測定してそれを記録・表示するようにしたが、図1に示す表面電極21、DIFA31、DIV32、FWRC33及びLPF34からなる擬似張力測定部を2組用意して、師匠及び学習者の各擬似張力を同時に測定して、インピーダンスを表示するようにしてもよい。
【0117】
また、第1乃至第4の実施形態においては、筋電信号は、表面誘導法により測定されたが、これに限定されるものではない。活動電位を計測できる方法であれば、何でもよい。例えば、針電極法でもよい。針電極法は、針状の電極を筋肉に刺入して筋肉局部の活動電位を記録する方法である。
【0118】
【発明の効果】
上述のように本発明は、測定結果から帰納的に筋肉骨格系モデルを作成し、この筋肉骨格系モデルによって生体に仮想的な摂動を与えた場合の値を求めて、インピーダンスを求めることができる。このため、従来のようにロボット等によって強制的に摂動を生体に与える必要がなく、大掛かりな装置を必要としない。また、本発明では、インピーダンスの演算に運動指令uとして筋電信号EMGを用いるので、リアルタイムでインピーダンスが測定可能である。
【0119】
また、本発明に係る運動学習支援装置は、提示装置が、運動学習目標値と今の動作における動作部分のインピーダンスの程度を表示するので、両者の差が視覚化される。このため、学習者は、この差を認識することで基準動作と現動作との相違の原因を知ることができ、動作部分が運動学習目標値に達するようにそのインピーダンスを調整することができる。従って、学習者は、基準動作を短期間に習得・再現することができる。動作の運動軌跡だけでなく、従来において習得が困難であった動作におけるインピーダンスも容易に習得することができる。また、動作におけるインピーダンスも記録及び保存可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】インピーダンス測定装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態におけるインピーダンス測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】表面電極のだいたいの装着位置と筋肉との関係を示す図である。
【図4】肘関節角度90度・肩関節角度45度の2関節運動における正規化データ取得の状況を示す図である。
【図5】等尺性筋収縮における測定位置と測定結果の一例を示す図である。
【図6】静止中における測定位置を示す図である。
【図7】神経回路モデルの一例を示す図である。
【図8】スティフネス楕円体でインピーダンスを表示装置に表示した一例である。
【図9】手先のスティフネス楕円体のパラメータを説明するための図である。
【図10】スティフネス楕円体で静止中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。
【図11】スティフネス楕円体で静止中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。
【図12】スティフネス楕円体で静止中のインピーダンスを表示装置に表示した一例である。
【図13】スティフネス楕円体で運動中のインピーダンス(手先スティフネス楕円体)を表示装置に表示した一例である。
【図14】スティフネス楕円体で運動中のインピーダンス(手先粘性楕円体)を表示装置に表示した一例である。
【図15】第4の実施形態における運動学習支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】運動学習支援装置における表示装置の表示例を示す図である。
【符号の説明】
21 表面電極、22 信号処理部、23 6軸力覚センサ、25 表示装置、32 割り算回路、34 低域通過フィルタ、35 中央処理装置、36 メモリ、41 正規化基準値演算部、42 モデル作成部、43 インピーダンス演算部、44 運動学習目標値設定部

Claims (6)

  1. 生体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置において、
    測定対象のインピーダンスに関与する筋肉の活動電位による筋電信号を測定する筋電信号測定手段と、
    前記インピーダンスに関与する筋肉によって生じる力を測定する力測定手段と、
    前記生体の複数の位置を測定する位置測定手段と、
    前記筋電信号と前記力とに基づいて前記筋電信号を正規化するための正規化基準値を演算する正規化基準値演算手段と、
    前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置及び前記力のうちの該筋電信号を含む2以上を用いて前記インピーダンスに関与する筋肉の筋肉骨格系モデルを作成するモデル作成手段と、
    作成した前記筋肉骨格系モデルに応じて前記正規化基準値で正規化された筋電信号、又は、該筋電信号及び前記複数の位置の何れかを入力し、前記筋肉骨格系モデルの出力、前記力及び前記複数の位置に基づいて前記インピーダンスを演算するインピーダンス演算手段とを備えること
    を特徴とするインピーダンス測定装置。
  2. 前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号とし、出力を前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度とする神経回路モデルであり、
    前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号を入力し、前記神経回路モデルの出力、前記力及び前記複数の位置に基づいて前記インピーダンスを演算すること
    を特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
  3. 前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度とし、出力を前記力から求める前記関節のトルクとする神経回路モデルであり、
    前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記関節の角度を入力し、前記神経回路モデルの出力及び前記関節の角度に基づいて前記インピーダンスを演算すること
    を特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
  4. 前記筋肉骨格系モデルは、入力を前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置から求める前記インピーダンスに関与する関節の角度及び前記関節の角速度とし、出力を前記力から求める前記関節のトルクとする神経回路モデルであり、
    前記インピーダンス演算手段は、作成した神経回路モデルに前記正規化基準値で正規化された筋電信号及び前記関節の角度を入力し、前記神経回路モデルの出力、前記関節の角度及び前記関節の角速度に基づいて前記インピーダンスを演算すること
    を特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
  5. 前記筋肉骨格系モデルは、前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記複数の位置及び前記力に基づいて係数を求めた、弾性係数、粘性及び自然長が筋電信号によってそれぞれ変化するバネとして筋肉をモデル化した数学モデルであって、
    前記インピーダンス演算手段は、前記正規化基準値で正規化された筋電信号、前記力、前記インピーダンスに関与する関節の角度及び該関節の角速度に基づいて前記数学モデルより弾性係数及び粘性を求めること
    を特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定装置。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のインピーダンス測定装置と、
    基準とする動作を行った場合における前記動作に係る生体の動作部分のインピーダンスを前記インピーダンス測定装置によって求めて運動学習目標値として提示すると共に、動作を行った場合の前記動作部分のインピーダンスを前記インピーダンス測定装置によって求めて該値を提示する提示手段を備えること
    を特徴とする運動学習支援装置。
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