JP3659830B2 - 遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法 - Google Patents

遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビルのような構築物は、地盤上に建設される。その地盤の実物試験は、その構築物が完成した後でなければ行うことができない。巨大な重力が作用する地盤のような試験体の事前の試験を行うために、大きい重力場を仮想的に生成する遠心載荷装置が用いられている。その遠心載荷装置には、試験体を載荷するためのバケットとバランスウエイトを載置するためのバケットが、回転台の回転軸心線に対称に配置され揺動自在に吊り下げられている。
【0003】
このような遠心載荷装置は、静的載荷実験と併行して動的載荷実験が行われる。動的載荷実験は、バケットに載荷される試験体に振動のような動的な力を作用させてその試験体の物理的性質を知るための動載荷実験である。この動載荷実験では、振り上げられたバケットを回転台上に固定する必要があり、その固定のための着座手段が回転台上に設けられている。
【0004】
着座装置が持つ偏心機構に用いられる偏心軸受に作用する遠心力は、バケットをより振り上げる方向にそのバケットに作用する。この作用のために、バケットは理論値よりも大きい振上角度位置より更に高く振り上げられる。着座手段は、望まれる精度範囲を越えてバケットを過角度位置へ持ち上げる。
【0005】
補正をしない出来高角度による低精度の実験装置を改良した装置が知られている。理論値に一致する振上角度を実現するために、バケットに対して強制的にその回転台上から与える動力機構が用いられる。そのような動力機構は、装置費用が極めて高いものになる。
【0006】
遠心載荷装置のバケットの振上角度の異常は、揺動自在に吊り下げるための軸受によってももたらされる。遠心力により振り上がるバケットと軸受との間に摩擦抵抗が存在するため、そのバケットの振り上げ角度は摩擦がないものとして計算される振上角度と異なる。計画される強さの重力場中でその振上角度を望まれる精度範囲に入れることが好ましい。
【0007】
摩擦抵抗が小さいころがり軸受は、巨大な遠心力を受けるバケットを支持するためには、大きな軸受にならざるをえず、できるだけ小さいスケールで設計される回転台上の配置用スペースの狭小化を招く。摩擦係数は大きいが小さいスケールのものでよい滑り軸受を用いて理論値と異なる振上角度(出来高角度)で実験した場合は、当然にその精度が悪い。
【0008】
要求される精度の範囲で理論値に一致する振上角度をバケットに与えるための遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置の装置費用の低減化が望まれている。特に、着座装置を備える装置の装置費用の低減化が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、振上角度の適正化により、より高精度な載荷試験を行うことができる遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、スケールを小さくすることができるが摩擦抵抗が大きい軸受を用いたとしても、振上角度の適正化により、より高精度の実験を行うことができる遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法を提供することにある。
本発明の更に他の課題は、振上角度の適正化により、振上角度の理論値と実際値を一致させて、より高精度な試験を高信頼度で行うことができる遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法を提供することにある。
本発明の更に他の課題は、振上角度の適正化により、要求される精度の範囲で理論値に一致する振上角度をバケットに与え、より高精度な試験を高信頼度で行う装置の装置費用を低減化することができる遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法を提供することにある。
本発明の更に他の課題は、振上角度の適正化により、要求される精度の範囲で理論値に一致する振上角度をバケットに与え、着座装置を備えてより高精度な試験を高信頼度で行う装置の装置費用を低減化することができる遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するための手段が請求項に対応して表現される次の記載中に現れる()つきの数字は、請求項の記載事項が詳しく後述される実施の複数の形態のうちの少なくとも1つの形態の部材、工程、動作に対応することを示すが、本発明の解決手段がそれらの数字が示す実施の形態の部材に限定して解釈されるためのものではなく、その対応関係を明白にするためのものである。
【0011】
本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置は、回転駆動機構(5)と、回転駆動機構(5)により駆動される回転軸(2)と同体に回転する回転台(6)と、回転台(6)に揺動自在に支持され試験体(16)を載置するための試験体用バケット(7)と、回転台に揺動自在に支持されバランスウエイト(17)を載置するためのバランスウエイト用バケット(8)と、回転台(6)に支持され試験体用バケット(7)に外力を及ぼしてその振上角度を規制するための外力装置(14,9)とからなる。
【0012】
外力装置(14,9)は、回転台(6)上に固定され試験体用バケット(7)の振り上がり運動をその振り上がり運動中に制止させて理論位置に停止させるための制止装置(14)と、遠心力により振り上げられた試験体用バケット(7)をその制止位置で固定するための着座装置(11)とからなる。
【0013】
制止装置(14)は、理論位置を可変にするための可変装置を備えていることが特に好ましい。着座装置(11)は、試験体用バケット側幾何学的構造と、回転台側着座構造とを備え、回転台側着座構造は、偏心体(図4のE)とその偏心体(E)に圧接して直線運動する運動体である揺動軸(9)とを持ち、試験体用バケット側幾何学的構造は、試験体用バケット(7)の揺動の揺動軸心線から等距離にある試験体用バケット側曲面(12)を有し、運動体(9)は、揺動軸心線から等距離にある運動体側曲面(13)を有し、試験体用バケット側曲面(12)は相対的に運動体側曲面(13)に平行に運動する。
【0014】
ここで運動体は、試験体用バケット(7)と同体に遠心方向に直線運動する揺動軸と同一であり、且つ、その揺動軸と遠心方向に同体に運動する試験体用バケット(7)に一致する。このような一致は、軽量で確実な動作をする着座機構とその幾何学的構造を有している。
【0015】
本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法は、回転駆動機構(5)と、回転駆動機構(5)により駆動される回転軸(2)と同体に回転する回転台(6)と、回転台(6)に揺動自在に支持され試験体(16)を載置するための試験体用バケット(7)と、回転台(6)に揺動自在に支持されバランスウエイト(17)を載置するためのバランスウエイト用バケット(8)とからなる遠心載荷装置のバケットの振上角度を調整するための遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法であり、理論値の振上角度よりも大きい角度で試験体用バケット(7)を振り上げる遠心力を試験体用バケット(7)に作用させるための過回転速度を回転台(6)に与えるためのステップと、試験体用バケット(7)を理論値に対応する振上角度の位置で回転台(6)に設けたストッパ(14)で強制的に制止させるためのステップとからなり、その過回転速度に対応する対応理論値の振上角度とその理論値との差は許容範囲にある。
【0016】
重力と遠心力の合成により得られる疑似重力場の方向は、載置面に対して常時に厳密に直交させることは不可能であるが、許容範囲の振上角度位置には、強制的に制止させることができる。許容範囲で高精度の実験が可能である。重量物体の追加をしないで、許容範囲の高精度の実験装置を提供することができる。
【0017】
外力装置は、幾何学的構造を有し、その幾何学的構造は、回転台(6)が静止している時の試験体用バケット(7)の重心点と、重心点を通る鉛直線を通りその鉛直線に直交してバケット(7)を揺動自在に仮想的に支持するための仮想的揺動軸心線と、その鉛直線と揺動軸心線を含む鉛直面から離隔しその鉛直面に平行な離隔鉛直面と、その離隔鉛直面に含まれその揺動軸心線に平行であり試験体用バケット(7)を揺動自在に現実に支持するための現実的揺動軸心線とからなる。
【0018】
バケット(7)は、このような幾何学的構造を与えられて偏心しており、摩擦抵抗を受けながらもその振上角度が許容範囲内で理論値に近づくことができる。重量物体の追加なしに高精度な実験装置を提供することができる。偏心機構を構成する偏心体は、バケットを吊り下げる偏心した揺動軸で兼用することができる。
【0019】
回転台(6)の静止時に、仮想的揺動軸心線と現実的揺動軸心線とは1水平面上に含まれることが好ましい。仮想的揺動軸心線と現実的揺動軸心線との間の離隔距離を偏心距離eで表せば、
Figure 0003659830
tan(θ”1”)=e/L,
tan(θ”0”)=1/α,
Δθ=θ−θ”1”
(Δθ−Δθ”0”)の絶対値<=角度精度上の設計値
α:遠心加速度/重力加速度
L:前記仮想的揺動軸心線と前記重心点との間の距離
θ:前記現実的揺動軸心線と前記重心点とを含む面と水平面との間の角度
の前記5式を満たすように前記偏心距離eが与えられている。このような条件を満たすことにより、許容範囲で高精度な振上角度を実現することができる。
【0020】
本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置は、試験体を載荷するバケット(7)を偏心させて吊り下げるための偏心機構(9)と、バケット(7)の振り上げ運動を強制的に制止させるための制止手段(14)とからなる。この場合、外力装置は、偏心機構(9)と制止手段(14)との合成である。この合成は、実験精度を更に高くすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図に一致対応して、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置の実施の形態は、回転駆動機構が設けられている。その回転駆動機構は、基台1を備えている。回転軸2が基台1に回転自在に支持されている。回転軸2の回転軸心線3は、地面1FLに一致する水平面に直交している。回転軸2は、減速用ギアボックス4、軸継手を介して主電動機5に結合している。回転台6が、キーを介して回転軸2に結合している。回転台6は左右の両腕から形成され、設計上は概ね回転軸心線3に対して対称な構造を有している。
【0022】
試験体用保持器7とバランスウエイト用保持器8とが、回転軸心線3に対して対称に配置され、回転台6に支持されて揺動可能に吊り下げられている。試験体用保持器7とバランスウエイト用保持器8は、回転軸心線3に対して設計上は概ね互いに対称である構造を有している。試験体用保持器7とバランスウエイト用保持器8は、それぞれに吊下用軸9,9’により回転自在・揺動自在に支持されている。吊下用軸9,9’は、それぞれに水平に向いて平行であり、回転台6に固定されている。
【0023】
図2は、図1の背面図の右端部分を示し、振り上がった状態の試験体用保持器7と回転台6のその右端部分を示している。回転台6の右端には、着座装置の一部である着座11が示されている。着座11は、遠心力により振り上げられた試験体用バケット7をその振上位置で着座させて固定するための慣用手段である。着座11は、試験体用保持器7に対して相対的に直線運動する。実施の形態では、着座11は回転台に固定されていて、後述する偏心回転機構により試験体用バケット7が着座11に対して直線往復運動する。
【0024】
慣用の着座装置は、試験体用バケット側幾何学的構造と回転台側着座構造とを備えている。試験体用バケット側幾何学的構造は、試験体用バケット7それ自体と、後述する偏心回転体機構とから構成されている。試験体用バケット7は、それ自体が、揺動の揺動軸心線Lから等距離にある試験体用バケット側曲面12を有している。試験体用バケット側曲面12としては、揺動軸心線Lを中心線とする円筒面であることが好ましいが、それを揺動軸心線L上の1点を中心とする球面に形成することができる。
【0025】
回転台側着座構造は、既述の着座である。着座11は、揺動軸心線Lから等距離にある着座側曲面13を有する。着座側曲面13としては、揺動軸心線Lを中心線とする円筒面であることが好ましいが、それを揺動軸心線L上の1点を中心とする球面に形成することができる。試験体用バケット側曲面12と着座側曲面13の曲率は同じであるか、概ね等しい。着座11が相対的に直線運動する時、試験体用バケット側曲面12と着座側曲面13は常時に平行である。参考のために設計寸法を単位mmで示している。
【0026】
制止装置が回転台6上に固定され設けられている。制止装置は、試験体用バケット7の振上運動をその振り上がり運動中に制止させて理論位置に停止させるためのストッパ14である。ストッパ14は、回転台6の構造体側に強固に固着され取り付けられている。試験体用保持器7は、その側面(振上がり時には上面)15がストッパ14に追突して、その振り上がりが制止される。
【0027】
ストッパ14は、その取り付け位置が可変にされることができる。試験体16は、試験体用保持器7に形成されているプラットフォームに載荷される。バランスウエイト17は、バランスウエイト用保持器8に形成されているプラットフォームに載置される。
【0028】
図3は、既述の試験体用バケット側幾何学的構造の偏心回転体機構18を示している。揺動軸9である偏心回転体は、円柱体である。その円柱体の中心線から距離aだけ離れた線を回転軸心線として回転する。図4は、偏心回転体9が回転した時の変位量の計算を示している。その偏心円をCで表し、その中心点をOで表し、その半径をRで表している。偏心点は、相対的にEで示されている。
【0029】
偏心点Eを通る水平線31と円Cとが交わる交点はUで示されている。偏心円Cが角度θだけ偏心点Eの回りに反時計方向に回転して移動した回転変位円C’と水平線31が交わる点は、Kで示されている。水平線31が偏心点Eの回りに時計方向に角度θだけ回転した回転変位線32と偏心円Cが交わる交点は、Qで示されている。線31に直交し中心Oを通る鉛直線33が偏心円Cと交わる点は、Tで示されている。点Qを線OT上へ直角投影した点は、Sで示されている。
【0030】
EQ=X、QS=Y、ES=Z、で表し、偏心量EOをa又はeで表すと、
X・X=Z・Z+Y・Y,
(X−e)・(X−e)+Y・Y=QO・QO=R・R,
Z=cos(θ)X.
これら3式から、
Figure 0003659830
ここで、√は、{}に作用する平方根記号である。
【0031】
eがRに比べて十分に小さい場合は、次の近似式が得られる。
X=e・sin(θ)
+R(1−(1/2))(e・cos(θ))(e・cos(θ))/R・R.
更に、近似化されて、
X=e・sin(θ)+R
求める対象の長さであるKUは、よい近似で次式で表される。
KU=KO−R=X−R=e・sin(θ).
【0032】
点Kは、回転変位円C’の点のうち鉛直線33からもっとも遠い点であるとみなすことは、十分によい近似である。鉛直線33に平行であり回転変位偏心円C’に近似的に点Kで接する接線34は、鉛直線33に平行であり回転偏心円Cに点Uで近似的に接する接線から、e・sin(θ)だけ水平方向に移動したことになる。偏心量が30mmでありθが60゜であれば、その移動量は概ね25mmである。
【0033】
この設計定数によれば、試験体用保持器7は鉛直方向から水平方向に振り上がったとき、偏心回転円の既述の点のQの60゜の回転変位による水平方向変位25mmだけ、試験体用保持器7は遠心方向に変位することになる。そのようになる直線運動機構を構成することができる。この直線運動は、試験体用保持器7の振り上がり運動中に可能である。
【0034】
図5は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置の他の実施の形態を示している。そのバケット7は、バケット本体21を備えている。バケット本体21と吊下用軸9との間には、円筒状の摺動軸受22が介設されている。その軸受としては、あえてボールベアリング(ころがり軸受)が用いられていない。摺動軸受22は、ころがり軸受よりも摩擦係数が大きいことが前提とされている。
【0035】
図5は、設計図面であり、重力場中で実際に吊り下げられた状態を示してはいない。バケット7の重心点を仮想的にGで表す。試験体が載荷された状態での重心がGであれば、そのGは現実の重心点である。試験体の質量によりその重心点は異なる。以下、試験中の現実の重心点がGであるとして、以下の数学上の表現はその一般性を失わない。
【0036】
バケット7は、重心点Gを通る面に対して鏡面対称に形成されている。その鏡面である対称基準面23に直交する直交面24とが交わる直線は、仮想的揺動軸心線L(P)として定義される。その直線上の1点をPで表す。点Pを仮想的回転中心という。鏡面23に平行である偏心面(図示せず)と直交面24とが交わる線(現実的揺動軸心線ELという)上に点Pから直角に投影した点をEP(図示せず)で表す。
【0037】
この点EPは、後述するように偏心点EPと言われる。バケット7の長軸方向の長さは、3m強であり、偏心点EPと仮想中心点Pとの間の距離は、概ね、2cmであるから、点Pと点Eを図5中に同時に描くことは不可能である。図6は、その偏心距離を誇張して大きくしたバケット7又はバケット本体21の概念図である。以下、点PはL(P)で表し、点EPはE(P)で表す。
【0038】
点L(P)と点E(P)との間の距離=e,
点L(P)と点Gとの間の距離=L,
摺動軸受22又は吊下用軸9の半径=R.・・・(1)
摺動軸受22が回転する場合は、Rは摺動軸受22の半径である。
【0039】
重力場中で、偏心点でバケット7を吊すと、下記式が近似的に成立する。
T=e・W.・・・(2)
T:バケット7の偏心点E(P)の回りの偏心モーメント
更に、次式が成立する。実例値を代入すれば、
T=(0.02m)(15t)=0.3t・m.
tはトンである。
【0040】
Q=μ”s”・R・W.・・・(3)
Q:軸摩擦抵抗モーメント(反時計まわり)
W:重心Gに作用する重力(単位1G)
μ”s”:最大静止摩擦係数(=3μ”0”)
μ”0”:動摩擦係数
ここで、””は、その中間の文字・記号等が添字であることを示す。実例値を代入すれば、
Q=(3/0.08)(15t)(0.245m)
=0.882t/m.
【0041】
Q>=Tであれば(この場合、式(2)は近似式ではない)、点L(P)と点Gを結ぶ直線は鉛直に向くので、バケット7に設定されている載荷面は、設計の通りに水平保持可能である。その載荷面が水平でない場合は、バケット7を水平方向に押す力Fは、次式で示される。
F=(μ”s”・R+e)W/L.
実例値を代入すれば、
F={(3・0.08)(0.145m)+0.020m}・15t/2.575m=0.459ton.
このような力で押す又は引くことにより、その載荷面を水平にすることができる。
【0042】
図7は、回転台6が回転している時の釣り合いを示している。軸回りの時計方向のモーメントM”R”は、
M”R”=Q+μ”0”+W√(L・L+e・e)cos(θ)
(Q=μ”0”(√(1+α・α))・W・R,であるので
Figure 0003659830
√の後の()は、それに√が作用していることを示す。
ここで、
α:遠心加速度/重力加速度
L:前記仮想的揺動軸心線と前記重心点との間の距離
θ:前記現実的揺動軸心線と前記重心点とを含む面と水平面との間の角度
【0043】
軸の反時計方向のモーメントM”L”は、次式で表される。
M”L”=αW√(L・L+e・e)・sin(θ).・・・(5)
釣り合いが取れている場合、M”1”=M”2”であるから、
μ”0”(√(1+α・α))・W・R+W√(L・L+e・e)cos(θ)
=αW√(L・L+e・e)・sin(θ).・・・(6)
式(6)より、
Figure 0003659830
【0044】
tan(θ”1”)=e/L,
tan(θ”0”)=1/α.・・・(8)
式(8)で表されるθ”1”とθ”0”とを用いれば、
次式(9)が成立するように、偏心量eが設計される。
Δθ=θ−θ”1”,
(Δθ−Δθ”0”)の絶対値<=角度精度上の設計値.・・・(9)
【0045】
【実施例】
α=100G,
e=0.02m,
L=2.575m,
μ”0”=0.08,
R=0.745m.
このような現実的な設計によれば、
θ=1.009゜,Δθ=0.564゜.
式(9)は、
Δθ”0”−Δθ=0.573−0.564=0.009<0.1゜
この値は、精度として満足できる0.1゜よりも小さい。
【0046】
図8(a),(b),(c)〜12(a),(b),(c)は、試験体用保持器7の振上げと着座、試験体用保持器7の着座解消と振下げのステップスを示している。着座装置は、図3,4で解説した偏心回転機構18であり、その偏心回転の駆動装置が図8(a)に模式的に示されている。偏心駆動手段41は、2体の油圧シリンダ装置であり、回転台6に設けられている。2体の油圧シリンダ装置の出力部であるそれぞれのピストンロッドの逆方向の運動により、偏心円を形成する偏心回転体42を介して試験体用保持器7を遠心・求心方向に線形移動させることができる。
【0047】
図8は、試験体用保持器7が重力のみで吊下軸9から吊り下がっている静止時を示している。偏心回転体42は、初期回転位置にあり偏心回転体42の中心は、概ね偏心点の真下にある。試験体用保持器7が偏心して吊下用軸9に吊り下げられていて、軸受の摩擦係数の大小によっては、対称基準面23は鉛直面より僅かに傾斜していることがあるが、既述の通り概ね鉛直である。
【0048】
回転台6が回転駆動され規定の回転数に達すると、図9(a),(b),(c)に示されるように、試験体用保持器7の対称基準面23は、概ね水平方向に向く。この状態では、偏心駆動手段41は動作しておらず、偏心円Cは初期角度位置にあり、試験体用保持器7と着座11は離隔している。この水平方向が許容範囲の精度で理論値の方向になるように制御される方法は、既述の2つの方法M1とM2とがある。
【0049】
M1:
規定回転数以上の回転数で回転台6を回転させ、図2に示されるストッパ14で理論角度位置に試験体用保持器7を強制的に制止させる方法。
M2:図4に示される偏心量aを適正にすることにより、理想的角度位置に対して許容範囲の精度で試験体用保持器7の振り上がり位置を調整する。
【0050】
更には、方法M1と方法M2を合成する方法M3である。
M3:適正な偏心量a(又はe)を与えるとともに、回転数を偏心量aに従属させた値に設定して、方法M1、方法M2のそれぞれの単独の方法によるよりも理論値に更に高精度に近い振り上げ角度位置で試験体用保持器7を制止させる。このことにより重力ベクトルと遠心力ベクトルの合成ベクトルの方向とその絶対値をより理論値に近いものにすることができる。
【0051】
図10(a),(b),(c)は、試験体用保持器7の載荷面の近傍が0Gから100Gまで上昇し、偏心駆動手段41が動作して、偏心円Cが60度回転し、式(9)で示される角度位置に振り上がった試験体用保持器7をその位置に止めながら、着座11に対して試験体用保持器7が遠心方向に移動して、試験体用保持器7の試験体用バケット側曲面12が着座11の着座側曲面13に圧接した状態を示している。この圧接による着座により、理論値に対して許容範囲にある試験体用保持器7の振り上げ角度位置が固定されることになる。この状態で、地盤のような試験体の物性実験が行われる。
【0052】
図11(a),(b),(c)は、着座状態を維持しながら、回転台6の回転数をゆっくり下げ、遠心加速度を100Gから50Gまで降下させる実験終了過程を示している。図12(a),(b),(c)は、遠心加速度が50Gになったところで、偏心駆動手段41を逆起動して、偏心円Cをもとの非回転角度位置に戻して、試験体用保持器7を着座11から離隔し、0Gで試験体用保持器7がもとの静止位置に戻った状態を示している。
【0053】
【発明の効果】
本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置及びその調整方法は、理論値に対して許容範囲の高精度な遠心載荷実験を実行することができる。特に、偏心機構による角度調整、制止手段による角度調整は、巨大な遠心力を受ける重量物体の質量増大を招かない。偏心機構と制止手段の組合せによる振上角度の調整は、実験精度を更に高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図2は、その着座装置を示す正面図である。
【図3】図3は、着座装置の理論解析のための正面図である。
【図4】図4は、その理論解析のための幾何学図である。
【図5】図5は、偏心機構を示す正面設計図である。
【図6】図6は、その偏心機構の理論解析のための正面図である。
【図7】図7は、その理論解析のための幾何学図である。
【図8】図8(a),(b),(c)は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法のステップを示すそれぞれの正面図である。
【図9】図9(a),(b),(c)は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法の他のステップを示すそれぞれの正面図である。
【図10】図10(a),(b),(c)は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法の更に他のステップを示すそれぞれの正面図である。
【図11】図11(a),(b),(c)は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法の更に他のステップを示すそれぞれの正面図である。
【図12】図12(a),(b),(c)は、本発明による遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法の更に他のステップを示すそれぞれの正面図である。
【符号の説明】
2…回転軸
5…回転駆動機構
6…回転台
7…試験体用バケット
8…バランスウエイト用バケット
9…吊下用軸(揺動軸、偏心回転体、外力装置)
11…着座装置
12…試験体用バケット側曲面
13…運動体側曲面
14…ストッパ(外力装置)
16…試験体
17…バランスウエイト
E…(図4のE(C)又はE)偏心体又は偏心点

Claims (5)

  1. 回転駆動機構と、
    前記回転駆動機構により駆動される回転軸と同体に回転する回転台と、
    前記回転台に揺動自在に支持され試験体を載置するための試験体用バケットと、
    前記回転台に揺動自在に支持されバランスウエイトを載置するためのバランスウエイト用バケットと、
    前記試験体用バケットが振り上がり運動中に理論位置で追突するように前記回転台上に固定されている制止装置と、
    前記制止装置に追突する前記試験体用バケットを固定する着座装置
    とを含遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置。
  2. 請求項において、
    前記制止装置は、前記理論位置を可変にするための可変装置を備えている
    ことを特徴とする遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置。
  3. 請求項において、
    前記着座装置は、
    試験体用バケット側幾何学的構造と、回転台側着座構造とを備え、
    前記回転台側着座構造は、
    偏心体と、
    前記偏心体に圧接して直線運動する運動体である揺動軸とを持ち、
    試験体用バケット側幾何学的構造は、試験体用バケットの揺動の揺動軸心線から等距離にある試験体用バケット側曲面を有し、
    前記運動体は、揺動軸心線から等距離にある運動体側曲面を有し、
    試験体用バケット側曲面は、相対的に運動体側曲面に平行に運動する
    ことを特徴とする遠心載荷装置のバケット振上角度調整装置。
  4. 回転駆動機構と、前記回転駆動機構により駆動される回転軸と同体に回転する回転台と、前記回転台に揺動自在に支持され試験体を載置するための試験体用バケットと、前記回転台に揺動自在に支持されバランスウエイトを載置するためのバランスウエイト用バケットと、前記試験体用バケットが振り上がり運動中に理論値の振上角度で追突するように前記回転台上に固定されている制止装置と、前記試験体用バケットを前記理論値の振上角度で固定する着座装置とからなる遠心載荷装置の前記バケットの振上角度を調整するための遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法であり、
    前記理論値の振上角度よりも大きい角度で前記試験体用バケットを振り上げる遠心力を前記試験体用バケットに作用させるための過回転速度を前記回転台に与えるためのステップと、
    前記試験体用バケットが前記制止装置に追突したときに、前記試験体用バケットを着座装置に固定するステップとからなり、
    前記過回転速度に対応する対応理論値の振上角度と前記理論値との差は許容範囲にある
    ことを特徴とする遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法。
  5. 回転駆動機構と、前記回転駆動機構により駆動される回転軸と同体に回転する回転台と、揺動軸を中心に揺動自在に前記回転台に支持され試験体を載置するための試験体用バケットと、前記揺動軸を移動する偏心回転機構と、前記回転台に揺動自在に支持されバランスウエイトを載置するためのバランスウエイト用バケットと、前記試験体用バケットが振り上がり運動中に理論値の振上角度で追突するように前記回転台上に固定されている制止装置と、前記試験体用バケットを前記理論値の振上角度で固定する着座装置とからなる遠心載荷装置の前記バケットの振上角度を調整するための遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法であり、
    理論値の回転速度で回転するときに前記理論値の振上角度よりも大きい角度で前記試験体用バケットを振り上げる力が前記試験体用バケットに作用するように、前記偏心回転機構を用いて前記揺動軸を移動するステップと、
    前記試験体用バケットが前記制止装置に追突したときに、前記試験体用バケットを着座 装置に固定するステップ
    とからなることを特徴とする遠心載荷装置のバケット振上角度調整方法。
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