JP3659816B2 - 軌道生成装置及び擬似無重力状態生成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば試料の2軸周りの回転により試料に対する重力方向を時間平均で0にする実験装置である3Dクリノスタットに対して、その回転軌道の生成に適用可能な軌道生成装置、及び主に生物の成長に係る試験に用いられる擬似無重力状態生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
(第1の従来の技術)
従来では、一様な回転軌道を生成する場合、回転角速度をランダムに変える方法、または目標回転角度をランダムに選ぶ方法のいずれかを選ぶことが一般的であった。具体的には、回転角速度をランダムに変える場合には、2軸周りの回転の角速度それぞれについて、一定時間毎にランダムに変化させる。また、目標回転角度をランダムに選ぶ場合には、ある時刻でランダムに選んだ目標回転角度に向かって回転し、目標に到達したときに新たな目標位置(角度)をランダムに与える。
【0003】
(第2の従来の技術)
また、生物の成長には重力が大きな影響を及ぼしており、主に学術的な目的のために、無重力状態における生物の成長に係る試験が要望されている。しかしながら、真に無重力状態を得ようとするならば、例えばスペースシャトル等の宇宙空間において成長の試験を行なうことが望ましいが、試験に要する費用が大きいという問題がある。そのため、地上で簡便に無重力状態を生成することを可能とし、安価に試験を行なうことができる擬似無重力状態生成装置が用いられている。
【0004】
図13は、従来の擬似無重力状態生成装置の駆動機構を示す図である。試験の対象となる生物試料(主に植物細胞)は、ステージ11に取り付けられている。ステージ11の姿勢は、各回転軸が互いに直交する方向に取り付けられた外側モータ12と内側モータ13を駆動し、それぞれ外側フレーム2と内側フレーム3を回転させることにより、自由に決定できる。
【0005】
図14は、従来の擬似無重力状態生成装置の制御方式を示す図である。従来の装置では外側モータ12と内側モータ13は、それぞれ制御器14が出力する外側モータ速度指令信号15と内側モータ速度指令信号16に比例した速度で回転する。制御器14には乱数発生器7が設けられており、この乱数発生器7は独立な2個の乱数を発信し、それぞれ外側モータ速度指令信号15,内側モータ速度指令信号16として利用される。
【0006】
このように、外側モータ速度指令信号15と内側モータ速度指令信号16を乱数状に変化させることにより、山下雅道氏他の論文「3D−クライノスタットとその動作特性」、宇宙生物科学Vol.11,No.2(1997)に示されているように、ステージ11上では重力の方向が時々刻々変わり、時間的な平均として重力の影響が相殺され、擬似的な無重力状態を生成することができると言われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
(第1の従来の技術の問題点)
上述した従来の回転角速度をランダムに変える方法、及び目標回転角度をランダムに選ぶ方法ともに、ランダムに速度または目標位置を与えるので、軌道が球面上を一様に分布することを確率的にしか示せず、数学的に証明することができない。例えば、軌道が一様であるか否かを判断するには、実際に軌道を生成して結果を確認しなければならない。
【0008】
また、両方法ともに、そのランダム性から時間的に不連続な角速度が発生する場合がある。例えば、回転角速度をランダムに与える方法の場合には、角速度を変化させるときに、変化前の角速度と変化後の角速度で不連続になることがある。また、目標回転角度をランダムに選ぶ方法の場合にも、目標回転角度を変化させるときに、変化前の角速度と新たな目標回転角度に向かうための変化後の角速度とが不連続になることがある。
【0009】
すなわち、生成した回転軌道に沿って具体的な対象を回転させようとした場合、回転体が完全に剛でない場合には、時間に対して不連続な角速度により回転体に振動が生ずる場合がある、という問題がある。
【0010】
また、回転させる対象の特性は様々であることから、軌道が一様になる時間周期を任意に設定できる必要があり、回転軌道の密度も任意に設定できる必要があるが、上述したランダムな方法ではいずれも設定することができない。
【0011】
(第2の従来の技術の問題点)
上述した従来法には二つの課題がある。第1の課題は再現性である。擬似無重力状態生成装置は主に植物細胞のように成長のゆるやかなものを対象とするため、運転期間は通常1ヶ月以上に及ぶ。1ヶ月程度も運転すると、回転軸受部の摩擦特性が経時的に増大するため、モータの速度指令信号15,16と実際のモータ速度との関係が経時的に変動することは避けられない。
【0012】
よって従来法では、ステージ11の姿勢はモータ速度指令信号15,16のみにより決まるのではなく、摩擦特性にも依存する。ステージ11の姿勢がモータの速度指令信号15,16のみから決まらないとすると、ある試験の再試験の目的でその試験と同一のモータ速度指令信号15,16の軌道を与えたとしても、摩擦特性は不確定であるので、ステージ11の姿勢は意図通りに再現できないという不都合が発生する。
【0013】
第2の課題は重力の統計的な偏りである。従来法では、外側モータ12と内側モータ13の速度を乱数的に変えていた。乱数的に変える方法では、実験開始後充分な時間が経過した後には前述した山下雅道氏他の論文に示されているように、重力方向の影響は時間平均としてみたときに相殺されるのであるが、例えば試験期間中の10分程度の短期間に着目した場合には、重力方向に偏りがあることは避けられない。
【0014】
すなわち、生物の成長過程のうちで重力が決定的に重要な時期がこの偏りに一致した場合には有効な試験とはならない。試験の質を高めるためには、全試験期間を例えば10分程度の短期間に分割したときに、どの期間においても重力方向が均一であることが必要であるが、乱数的手法に基づく従来法では実現不可能である。
【0015】
このように、従来法には短期的にみた場合に不都合がある。さらに、従来法の課題は短期的な偏りに止まらず、長期的な観点からも問題がある。従来法では、重力の時間変均値を均一にすることのみに着目しているが、平均値のみの均一化では不充分である。以下にその例を示す。
【0016】
図15に示すように、外側モータ2の回転軸をx軸に、内側モータ3の回転軸をz軸にとり、外側モータ2と内側モータ3の基準角度からの回転変位角度をφとθとする。基準角度は、φについてはz軸が重力ベクトルと逆向きになるように選定することにする。θについては基準角度は任意である。ステージ1の重力の方向と大きさg(以降、重力ベクトルと呼ぶ)はφとθから次式で与えられる。
【0017】
【数1】
ここで、g0は重力加速度の大きさである。従来法では重力ベクトルを時間平均的に0とすることを狙っている。例えば、
【数2】
という軌道に沿ってモータを回転させると、重力ベクトルは、
【数3】
となる。この平均値を
【数4】
と記すと、時刻0からTまでの平均値
【数5】
は次式となる。
【0018】
【数6】
この例では、重力ベクトルのx成分は常に0であり、x成分とその他のy,z成分とは明らかに不均一であるので、意図するものではないにもかかわらず、重力ベクトルの時間平均値を0にするという要求を満たしている。この問題は、単に重力ベクトルを時間平均的に0とするのみではなく、重力ベクトルのx,y,z成分の分散を均一化することにより解決できる。
【0019】
次に、従来法について重力ベクトルの分散を求める。重力ベクトルのx,y,z成分をそれぞれgx,gy,gzと記すことにすると、従来法の重力ベクトルの分散は次式となる。
【0020】
【数7】
このように従来法では、重力ベクトルのz成分の分散がx,y成分のそれと異なるという統計的な偏りがあることがわかる。
【0021】
本発明の目的は、球面上を動く点の軌道の一様性を数学的に証明でき、角速度変化が連続となり、軌道が一様になる周期を任意に設定でき、回転軌道の密度を任意に設定できる軌道算出を行なえる軌道生成装置を提供することにある。
【0022】
また本発明の目的は、再現性と重力の統計的な偏りを改善する擬似無重力状態生成装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の軌道生成装置及び擬似無重力状態生成装置は以下の如く構成されている。
【0024】
(1)本発明の軌道生成装置は、球面上を動く点の軌道を生成する軌道生成装置において、直交座標系において単位球面上を動く点の座標のx,y,z方向の時間平均がそれぞれ0になり、かつx,y,z方向の分散がそれぞれ1/3になるように軌道を与える手段を具備する。
【0025】
(2)本発明の擬似無重力状態生成装置は、上記(1)に記載の軌道生成装置を備えた擬似無重力状態生成装置であって、各回転軸が互いに直交するよう設けられ外側モータと内側モータを駆動することで、それぞれ外側フレームと内側フレームを回転させることによりステージの姿勢を決定する擬似無重力状態生成装置において、前記外側モータの回転角度を検出する外側モータ角度検出手段と、前記内側モータの回転角度を検出する内側モータ角度検出手段と、前記外側モータ角度検出手段及び前記内側モータ角度検出手段の各検出結果を前記外側モータ及び前記内側モータの各角度指令値に一致するよう補償し、前記外側モータ及び前記内側モータへ各速度指令信号として出力する補償手段と、を具備する。
【0026】
(3)本発明の擬似無重力状態生成装置は上記(2)に記載の装置であり、かつ前記各角度指令値を演算する演算手段を備えている。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る軌道生成装置の概要を示す図である。本実施の形態の軌道生成装置aでは、上述した従来技術における、軌道の一様性を数学的に証明できないという問題、時間的に不連続な角速度が発生するという問題、軌道が一様になる周期を任意に設定できないという問題、回転軌道の密度を任意に設定できないという問題、以上ランダムな方法では解決できない4つの問題に対処するために、軌道の算出方法として、軌道の一様性を数学的に証明でき、角速度変化が連続となり、軌道が一様になる周期が任意に設定でき、回転軌道の密度を任意に設定できる軌道算出を行なう。
【0028】
軌道生成装置aによる軌道算出方式を数式で表すと次のようになる。軌道は、下式(1),(2)のように単位球面上の点pの回転角度(φ,θ)に関する微分方程式で表される。
【0029】
【数8】
ただし、φ,θの初期値は任意である。
【0030】
ここで、A、Bは角速度パラメータであり、この二つのパラメータ値を調節することで軌道が一様になる周期を調節できる。例えば、A=2,B=3の周期はA=4,B=6の周期の2倍になる。ただし、A:B=n:mとなる最小の整数n,mに対して、2m/nが整数にならないようにA,Bを選ぶ必要がある。また、n,mの値を調節することにより回転軌道の密度を設定できる。例えばn:mは10:11よりも、100:111である場合の方が回転密度は大きい。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る座標系を示す図であり、φ,θは以下のように定義される。直交座標系でx2 +y2 +z2 =1と表される単位球面上の点pに対して、点pの位置ベクトルを(xp ,yp ,zp )とするとき、
φ:ベクトル(0,0,1)と点pの位置ベクトルとがなす角度、
θ:ベクトル(1,0,0)と点pをx−y平面への射影したときのベクトル(xp ,yp ,0)とがなす角度、
【数9】
である。
【0032】
(1) 角速度の連続性
軌道生成装置aで生成する軌道の角速度が時間に対して連続であるとは、任意の時刻でφが時間に対して連続であり、かつ、任意のφにおいて
【数10】
がφに対して連続であることである。
【0033】
以下、軌道生成装置aで生成する軌道が角速度の連続性を満たすことを示す。
【0034】
(2) 角速度の連続性の証明
【数11】
が連続関数であれば、
【数12】
はφの時間微分であることから、φが時間に対して連続であることは自明である。また、式(1),(2)より、
【数13】
であるので、
【数14】
がφに対して連続であれば、
【数15】
はφに対して連続である。よって、
【数16】
がφに対して連続であることを示せばよい。
【0035】
式(1)より、sin(φ)>0のとき、sin(φ)<0のときは、それぞれ
【数17】
はφの連続関数で表わせるので連続である。
【0036】
また、sin(φ)=0においては、以下のようにsin(φ)=0の両方から
【数18】
の極限が一致するので、
【数19】
はsin(φ)=0においても連続である。
【0037】
【数20】
すなわち、
【数21】
はφに対して連続であり、角速度の連続性が証明できた。
【0038】
(3) 軌道の一様性
軌道の一様性を、直交座標系において単位球面上を動く点の座標のx,y,z方向毎の時間平均が0になり、かつx,y,z方向の分散が等しいこととすると、以下の通りになる。
【0039】
単位球面(x2 +y2 +z2 =1)上を周期Tで動く点の座標を(x(t),y(t),z(t))と表したときに、x(t),y(t),z(t)の時間平均がそれぞれ0になり、分散がそれぞれ等しくなる。
【0040】
すなわち、
【数22】
となる。
【0041】
以下、軌道生成装置aにより生成する軌道が、上記の軌道の一様性を満たすことを証明する。
【0042】
(4) 軌道の一様性の証明
軌道生成装置aによって生成される軌道の平均、分散を求めると、以下の様になる。
【0043】
(4-1) x方向平均
単位球上の点が極座標系で(φ,θ)の位置にあるとき、これを直交座標系(x,y,z)に変換すると以下のようになる。
【0044】
x=cos(θ)・sin(φ)
y=sin(θ)・sin(φ)
z=cos(θ)
周期Tの間にφが0〜2Nπまで変化する場合を考える。時間Tの間にφがどれだけ変化するかは、角速度パラメータAによって任意に決められるので、一般性を失わない。
【0045】
このとき、
【数23】
より、θ(0)=0とすると、θ=aφである。よって、θは0〜2Naπまで変化する。このとき、Naが整数になるように、かつ2aが非整数になるようにBを選ぶ。
【0046】
また、
【数24】
である。
【0047】
【数25】
となる。
【0048】
上式は、
【数26】
の線形和の形式である。以下の通り、この形式は2aが整数でないときは0になる。すなわち、
【数27】
となる。次に、
【数28】
を求める。ただし、aに関する条件より整数N,Mに対して、Na=Mである。
【0049】
【数29】
また、
【数30】
である。ここで、
【数31】
である。よって、f(2aπ)=Csin(2aπ)=0 である。
【0050】
このとき、2aが整数でない場合、
【数32】
より、C=0、すなわち
【数33】
である。
【0051】
以上より、整数N,Mに対してNa=Mとなるaに対して、2aが整数でない場合、
【数34】
となる。
【0052】
(4-2) y方向平均
y方向の平均はx方向の平均と同様にして、
【数35】
である。
【0053】
(4-3) z方向平均
【数36】
(4-4) x方向分散
x方向の分散V(x)は以下のように1/3になる。
【0054】
【数37】
ここで、
【数38】
これを積分すると、
【数39】
となる。
【0055】
これを上式に代入すると、平均の時と同じく、殆どの項が0になり、以下の項が残る。
【0056】
【数40】
ここで、T=4N/Aなので、V(x)=1/3である。
【0057】
(4-5) y方向分散
y方向の分散はx方向の分散と同様にして、1/3になる。
【0058】
(4-6) z方向分散
z方向の分散V(z)は、以下のように1/3になる。
【0059】
【数41】
(5) 軌道の一様性の周期性
以下のように速度パラメータを設定することで、任意の周期で一様性を持たせることができる。
【0060】
角速度の式(1)よりφが0からπ/2まで変化するのにかかる時間は、以下のように1/Aとなる。
【0061】
【数42】
−cos(φ)=At
φ=0の時、t0 =−1/A
φ=π/2の時、t1 =0
t1 −t0 =1/A
よって、対称性より、φが0〜2π(一周)まで変化するのにかかる時間は4/Aとなる。これに対して、θはφのB/A倍の速度で変化するので、θが0〜2π(一周)まで変化するのにかかる時間は4/Bとなる。よって、周期Tは4/Aと4/Bの最小公倍数の時間となり、パラメータA,Bの選び方によって、任意の時間とすることができる。
【0062】
(6) 軌道の密度の任意性
図3,図4,図5は、それぞれパラメータパターン1,2,3の軌道を示す透視図であり、図3より図4,図4より図5がより軌道密度の大きい速度パラメータの設定となっている。パラメータA,Bの比を表す整数n,mを調整することによって、軌道の密度を調節できる。実際にはA,Bの値はほぼ同じであるが、A,Bの比がわずかに異なる3つのパターンの場合に軌道を生成した例を図3,図4,図5に示す。これらの図は、表1に示す速度パラメータで軌道を生成し、その軌道を、y軸方向から透視した図である。A:Bの比を表すn,mの値を大きくすることで、軌道密度を大きくすることができることが分かる。
【0063】
図6は、上記軌道生成装置aが適用される3Dクリノスタットの構成を示す図である。本実施の形態では、3Dクリノスタットの回転軌道の生成という具体的な問題において、軌道生成装置aを用いて3Dクリノスタットに求められる一様性と連続性を実現した。
【0064】
図6に示す3Dクリノスタットは、架台1、外側フレーム2、内側フレーム3、モーター4,5から構成されている。内側フレーム3の中心に試料(不図示)が設置される。外側フレーム2は架台1に取り付けられたモーター4によって回転し、内側フレーム3は外側フレーム2に取り付けられたモーター5によって回転する。
【0065】
3Dクリノスタットとは、バイオ実験に用いられる実験機械である。3Dクリノスタットは、試料を2軸周りに回転させることで重力方向を分散させ、試料の全天に対して時間平均で一様に重力がかかるようにすることを目的とする。3Dクリノスタットの回転軌道には、重力の一様性と角速度の連続性が要求される。角速度が連続でない場合、3Dクリノスタット本体の動特性により3Dクリノスタット本体が振動を起こしてしまい、不都合が生じるという問題がある。
【0066】
これらの問題を、本軌道生成法を3Dクリノスタットに適用することにより解決した。2軸周りの回転は2軸周りの回転角度で表されるので、この回転角度が、本軌道生成法で用いた単位球面上の点の位置を表す角度にそのまま対応する。このことから、本軌道生成法で生成した軌道を3Dクリノスタットの回転角度に適用することにより、本軌道の特徴である軌道の一様性、及び角速度の連続性が保証され、3Dクリノスタットに求められる回転軌道の特性を得ることができる。実際の適用においては、デジタル制御が行なわれるため生成軌道を任意のサンプリング周期でサンプリングすることになる。
【0067】
図7,図8,図9は、本第1の実施の形態による軌道生成方式を実機に適用し、0.1秒のサンプリング周期で軌道をサンプリングした場合の例を示す図である。図7は、生成された軌道の直交座標系における各軸方向毎の座標の時間平均の時刻歴を示しており、実線がx方向平均、破線がy方向平均、一点鎖線がz方向平均である。図8は、生成された軌道の直交座標系における各軸方向毎の座標の時間分散の時刻歴を示しており、実線がx方向分散、破線がy方向分散、一点鎖線がz方向分散である。図9は、回転角速度の時刻歴を示しており、実線がφ方向角速度、破線がθ方向角速度である。
【0068】
図7にx,y,z方向の平均の時刻歴を示している。周期T(=200秒)で平均が0になっていることが分かる。時刻T後も周期T毎に平均は0になる。図8にx,y,z方向の分散の時刻歴を示している。周期Tでx,y,zの分散が一致(1/3)していることが分かる。時刻T後も周期T毎に分散は一致する。図9に角速度の時刻歴を示している。角速度が時間に対して連続であることが分かる。
【0069】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る擬似無重力状態生成装置の駆動機構26と制御器20の構成を示す図である。本装置では、外側モータ12と内側モータ13に外側モータ角度検出器21と内側モータ角度検出器22が設けられており、それぞれ角度φと角度θを示す信号を発信する。制御器20では、角度φとθに対応する外側モータ速度指令信号15と内側モータ速度指令信号16を、それぞれ積分器23と24で積分し角度指令信号φrとθrを出力する。補償器25は、角度指令信号φrとθrに対する実際の角度φとθの偏差δφとδθを入力し、δφとδθを零にするような外側モータ速度指令信号151と内側モータ速度指令信号161を発信する。補償器25では、例えば以下のPID制御の演算式により速度指令信号vφとvθを計算する。
【0070】
【数43】
このように、実際の角度φ,θを計測しそれぞれが指令角度φr,θrに一致するよう制御することにより、モータを指令通りに駆動することができるので、摩擦等の外乱があっても再現性を得ることが可能になる。
【0071】
(第3の実施の形態)
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る擬似無重力状態生成装置の駆動機構26と制御器27の構成を示す図である。図11において図10と同一な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
制御器27では軌道計算部28において、ステージ11の重力ベクトルのx,y,z軸成分に統計的に偏りが発生しないような外側モータ12の角度指令信号φrと内側モータ13の角度指令信号θrとを計算し出力する。補償器25は、角度指令信号φrとθrに対応する実際の角度の偏差δφとδθを入力し、δφとδθを零にするような外側モータ速度指令信号152と内側モータ速度指令信号162を発信する。
【0073】
重力ベクトルのx,y,z軸成分に統計的な偏りが発生しないような角度指令信号φrとθrの軌道は唯一ではなく、無数に存在する。よって、軌道計算部28の計算式は一意に決まるものではない。ここでは、その計算式の一例を示す。従来、φrとθrは図10の制御器20に示すように、それぞれの微分値vφとvθに乱数を設定し、それを積分することにより算出していた。例えば、vφとvθを定数k1,k2を用いて次式のように定めることにする。
【0074】
【数44】
上式を積分すると次式を得る。
【0075】
【数45】
ここでτは、図12に示すtに関する周期関数である。補償器25の働きにより、
【数46】
が達成できたとすると、このときの重力ベクトルのx,y,z軸成分は次式となる。
【0076】
【数47】
上式より、重力ベクトルのx,y,z軸成分の時間平均値はTを充分に大きくとることにより次式となる。
【0077】
【数48】
ここで、1/k1と1/k2の最小公倍数をT0,TをT0で除したときの余りをT1とすると、上式は次式となる。
【0078】
【数49】
上式の右辺第2項は周期T0の周期関数であり大きさは有限である。一方、右辺第1項はTの増加と共に単調に減少するので、T→∞では上式は零となる。
【0079】
上式の右辺第2項は周期T0毎に0となる周期関数であるので、実験期間中のどのT0秒間の時間区間についても重力ベクトルの時間平均値は0となる。T0は、k1とk2の2つのパラメータにより利用者が自由に選定できるので、T0を小さく設定することにより、従来の課題であった短期的偏りを排除することができる。
【0080】
さらに、従来法では重力ベクトルのx,y,z軸成分の分散に偏りがあったが、本第2の実施の形態による方法によれば、T→∞では以下のように均一化することができる。
【0081】
【数50】
なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。
【0082】
【発明の効果】
本発明の軌道生成装置によれば、球面上を動く点の軌道の一様性を数学的に証明でき、任意の時間周期で球面上の点の時間平均存在確率が球面上で一様になり、角速度変化が時間に対して連続となり、軌道が一様になる周期を任意に設定でき、回転軌道の密度を任意に設定できる軌道算出を行なえる。
【0083】
また、本軌道生成装置を3Dクリノスタットに適用することにより、従来のランダムな手法に比べ、軌道の時間平均の一様性を任意の時間周期で保証でき、角速度の連続性が保証され、3Dクリノスタット本体に振動が生じなくなる。
【0084】
また、試験対象の特性の違いに応じて、周期及び軌道密度を様々に調節することができる。
【0085】
本発明の擬似無重力状態生成装置によれば、外側モータと内側モータの実際の角度を計測し、それぞれが角度指令値に一致するよう補償し前記外側モータと前記内側モータを制御することにより、前記外側モータと前記内側モータを指令通りに駆動することができるため、摩擦等の外乱が生じた場合でも再現性を得ることが可能になる。
【0086】
また、ステージの重力ベクトルの各軸成分に統計的な偏りが発生しないよう、前記外側モータと前記内側モータの各角度指令値を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る軌道生成装置の概要を示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る座標系を示す図であり、角度の定義を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るパラメータパターンの軌道を示す透視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るパラメータパターンの軌道を示す透視図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るパラメータパターンの軌道を示す透視図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る軌道生成装置が適用される3Dクリノスタットの構成を示す図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る生成軌道の直交座標系における各軸方向毎の座標の時間平均の時刻歴を示す図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る生成軌道の直交座標系における各軸方向毎の座標の時間分散の時刻歴を示す図。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る回転角速度の時刻歴を示す図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る擬似無重力状態生成装置の駆動機構と制御器の構成を示す図。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る擬似無重力状態生成装置の駆動機構と制御器の構成を示す図。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るtに関する周期関数を示す図。
【図13】従来例に係る擬似無重力状態生成装置の駆動機構を示す図。
【図14】従来例に係る擬似無重力状態生成装置の制御方式を示す図。
【図15】従来例に係る外側モータと内側モータの基準角度からの変位を示す図。
【符号の説明】
a…軌道生成装置
1…架台
2…外側フレーム
3…内側フレーム
4…モーター
5…モーター
7…乱数発生器
11…ステージ
12…外側モータ
13…内側モータ
14…制御器
15…外側モータ速度指令信号
16…内側モータ速度指令信号
151…外側モータ速度指令信号
161…内側モータ速度指令信号
20…制御器
21…外側モータ角度検出器
22…内側モータ角度検出器
23,24…積分器
25…補償器
26…駆動機構
27…制御器
28…軌道計算部
Claims (3)
- 球面上を動く点の軌道を生成する軌道生成装置において、
直交座標系において単位球面上を動く点の座標のx,y,z方向の時間平均がそれぞれ0になり、かつx,y,z方向の分散がそれぞれ1/3になるように軌道を与える手段を具備することを特徴とする軌道生成装置。 - 請求項1に記載の軌道生成装置を備えた擬似無重力状態生成装置であって、各回転軸が互いに直交するよう設けられ外側モータと内側モータを駆動することで、それぞれ外側フレームと内側フレームを回転させることによりステージの姿勢を決定する擬似無重力状態生成装置において、
前記外側モータの回転角度を検出する外側モータ角度検出手段と、
前記内側モータの回転角度を検出する内側モータ角度検出手段と、
前記外側モータ角度検出手段及び前記内側モータ角度検出手段の各検出結果を前記外側モータ及び前記内側モータの各角度指令値に一致するよう補償し、前記外側モータ及び前記内側モータへ各速度指令信号として出力する補償手段と、
を具備したことを特徴とする擬似無重力状態生成装置。 - 前記各角度指令値を演算する演算手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の擬似無重力状態生成装置。
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