JP3659500B2 - 光源移動育苗庫 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温花芽分化植物の育苗に適用する育苗庫に係り、特に光源を昇降移動式構成とした光源移動育苗庫に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鑑賞用植物等について本来の開花時期をずらして提供する低温花芽分化植物の育苗技術が開発されている。この技術として、低温室内に複数段の育苗棚を配置するとともに、この育苗棚を照射する光源を配置して、低温花芽分化植物の育苗を行なう育苗庫に関するものが適用され、例えば通常では春から夏にかけて開花する植物の花芽分化(バーナリゼーション)を低温環境により遅延させ、育苗速度を光合成に必要な光源からの照射によって調整するというものである。この種の低温花芽分化植物としては、例えばスターチス、トルコキキョウ、パンジー、ビオラ、プリムラ等が代表的なものである。
【0003】
ところで、従来の育苗庫においては、上述した光源として固定設置式の蛍光灯を適用するのが一般的であった。すなわち、低温室内に配置した複数段の育苗棚の各棚上方にそれぞれ個々に蛍光灯を固定設置し、必要な通電制御を行なうようにしたものである。
【0004】
しかし、育苗庫内の温度は例えば15℃〜0℃に管理されるものであるのに対し、上述した蛍光灯を各育苗棚上に設置した場合には光源からの発熱が大きく、低温保持と相反する状態が作られ、冷蔵エネルギの消費が莫大となって高コスト化の不利益が顕著になってきている。また、各育苗棚の上方に固定式光源を配置した構成では光源によって庫内空間が多く占められ、空間利用率が低下するとともに、庫内作業性も損ない易く、その一方で光源数が多いことから光源の側においても工事費や維持費も高いという難点があった。
【0005】
なお、このような事情に鑑みた改良技術もこれまで特に見られず、低温花芽開花時期調整技術としては、人工光の照射制御に関するもの(特開2002−272272号公報(例えば、特許公報1参照))、あるいは養分やハウス構造に関するもの(特開平9−208415号公報(例えば、特許公報2参照)、特開平6−46680号公報(例えば、特許公報3参照))が見られる程度である。
【0006】
【特許公報1】
特開2002−272272号公報
【0007】
【特許公報2】
特開平9−208415号公報
【0008】
【特許公報3】
特開平6−46680号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、光源からの発熱を大幅に抑制して低温保持に好ましい環境を得ることができ、冷蔵エネルギの消費低減が図れるとともに、庫内空間の利用率が向上でき、しかも光源数低減により工事費や維持費も低減できる光源移動育苗庫を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明では、低温室内に複数段の育苗棚を配置するとともに、前記育苗棚を照射する光源を配置して、低温花芽分化植物の育苗を行なう育苗庫において、前記低温室内は15℃ないし0℃に保存され、前記育苗棚は縦横方向に複数段配置された棚部材によって構成され、前記光源はハロゲンランプであって前記低温室内の天井側から前記育苗庫内の前記各棚部材間の空間位置に所定の間隔で吊り具によって連続的または断続的に昇降可能に吊下げられ、かつ設定時間中、庫内で上下動して前記低温花芽分化植物を均等に照射する構成とし、さらに前記各光源の吊り具は、庫内の天井側に配置した回転シャフトにそれぞれ巻取りドラムを介して連結され、前記光源が上下限位置に至った場合にリミッタにより逆回転に切換わる構成とされていることを特徴とする光源移動育苗庫を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る光源移動育苗庫の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は育苗庫内を示す側面図であり、図2は図1と直交する側面図である。
【0013】
これらの図に示すように、本実施形態の光源移動育苗庫は、冷蔵用建屋からなる育苗庫1を備え、この育苗庫1内を図示省略の冷蔵設備によって15℃〜0℃に保存できるようになっている。これにより、低温花芽分化植物の育苗を行なうための低温室が1aが形成されている。
【0014】
育苗庫1内には、縦横方向に複数段の棚部材2が配置され、棚部材2の各棚2aにはそれぞれ育苗床3が配置され、低温花芽分化植物4、例えばスターチス、トルコキキョウ、パンジー、ビオラ、プリムラ等が育苗されて複数段の育苗棚5が形成されている。
【0015】
このような構成において、育苗庫1内の各棚部材2間の空間位置に、育苗棚5を照射する少数の光源6が所定の間隔で低温室1a内の天井側からワイヤ等の吊り具7によって吊下げられている。これらの光源6は、500W〜1KWのハロゲンランプ、例えばメタルハライドとして知られるナトリウム灯であり、球または縦長球状等のものである。
【0016】
そして、各光源6の吊り具7は、庫内の天井側に水平に配置した回転シャフト8にそれぞれ巻取りドラム9を介して連結され、回転シャフト8の回転によってそれぞれ連続的または断続的に昇降できるようになっている。
【0017】
回転シャフト8は、例えばその一端側に設けた電動モータ10および減速機11により緩やかな速度で連続的に回転し、光源6が上下限位置に至った場合にリミッタ12によって逆回転に切換わる構成となっている。
【0018】
この光源6の昇降および昇降方向の切換りにより、光源は所要の設定時間中、庫内で上下動して低温花芽分化植物4を均等に照射することが可能となる。
【0019】
なお、光源6としては上述したものに限定されることなく、各種ランプが適用できる。また、吊り具7および昇降機構についても、種々のものが適用できる。ただし、上述したワイヤ、回転機構等を利用した構成によれば、構成が簡便であるとともに操作が容易であり、しかも空間占有率が低く庫内作業に支障を生じることが少ないため極めて有用性に富むものである。
【0020】
また、図示した棚数および光源数等は一例であり、これらに限らず種々の変更、応用等が可能である。
【0021】
以上の実施形態によれば、低温室内に複数段の育苗棚3を配置するとともに、育苗棚3を照射する光源6を上下方向に移動可能に設置したことにより、光源数を従来の固定式蛍光灯利用の場合に比して大幅に低減することが可能となり、光源からの発熱を非常に少なくすることができる。したがって、低温保持が従来に比べて極めて容易になり、冷蔵エネルギの消費量低減、にいては低コスト化が有効に図れるようになる。
【0022】
また、各育苗棚の上方に固定式光源を配置した従来の構成では光源によって庫内空間が多く占められ、空間利用率が低下していたのに対し、本実施形態によれば少数の光源6を間隔的に配置するだけでよいため空間利用率が向上でき、庫内作業も容易になる。
【0023】
さらに、光源数が多いことから光源の側においても工事費や維持費も高いという難点があった従来技術に比して、本実施形態の場合には光源数が低減できるため設置工事等が簡便に行なえ、工事費低減が図れるとともに、照射に要する使用電力や維持費も従来に比して大幅に低減することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明に係る光源移動育苗庫によれば、光源からの発熱を大幅に抑制して低温保持に好ましい環境を得ることができ、冷蔵エネルギの消費低減が図れるとともに、庫内空間の利用率が向上でき、しかも光源数低減により工事費や維持費も低減できる等の優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光源移動育苗庫を示す側面図。
【図2】図1と直交する方向の側面図。
【符号の説明】
1 育苗庫
1a 低温室
2 棚部材
2a 棚
3 育苗床
4 低温花芽分化植物
5 育苗棚
6 光源
7 吊り具
8 回転シャフト
9 ドラム
10 電動モータ
11 減速機
12 リミッタ

Claims (1)

  1. 低温室内に複数段の育苗棚を配置するとともに、前記育苗棚を照射する光源を配置して、低温花芽分化植物の育苗を行なう育苗庫において、前記低温室内は15℃ないし0℃に保存され、前記育苗棚は縦横方向に複数段配置された棚部材によって構成され、前記光源はハロゲンランプであって前記低温室内の天井側から前記育苗庫内の前記各棚部材間の空間位置に所定の間隔で吊り具によって連続的または断続的に昇降可能に吊下げられ、かつ設定時間中、庫内で上下動して前記低温花芽分化植物を均等に照射する構成とし、さらに前記各光源の吊り具は、庫内の天井側に配置した回転シャフトにそれぞれ巻取りドラムを介して連結され、前記光源が上下限位置に至った場合にリミッタにより逆回転に切換わる構成とされていることを特徴とする光源移動育苗庫。
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