JP3659182B2 - イオン源及びこれを用いる質量分析装置 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、イオン源およびこれを用いる質量分析装置に関し、特に液体中に存在する試料をイオン化して質量分析計に導入するのに適したイオン源およびこれを用いる質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
キャピラリー電気泳動(CE)又は液体クロマトグラフ(LC)は、溶液中に存在する試料の分離ができるが、分離された試料の種類の同定が困難である。一方、質量分析計(MS)は試料を高感度で同定することができるが、混合試料の分離ができない。このため、水等の溶媒に溶解した複数の生体関連物質を分離分析する場合、質量分析計にキャピラリー電気泳動又は液体クロマトグラフを結合させたキャピラリー電気泳動/質量分析計(CE/MS)又は液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)が一般には使用される。
【0003】
キャピラリー電気泳動又は液体クロマトグラフにより分離された試料を質量分析計で分析するためには、溶液中の試料分子を気体状のイオンに変換することが必要である。このようなイオンを得る従来技術として、イオンスプレー法(アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、第59巻(1987年)第2642項から第2646項)等が知られている。このイオンスプレー法では、キャピラリの外周部に沿ってガスが流され、試料溶液が導入されるキャピラリーと、質量分析計にイオン取り込むための細孔(サンプリングオリフィス)との間に、高電圧(3〜6kV)が印加され、キャピラリー先端では強電界が発生している。このような構成のもとで生成する静電噴霧現象により、小さな帯電液滴が生じ、上記のガスにより帯電液滴の中の溶液が気化し、気体状のイオンが生成される。このように生成したイオンはサンプリングオリフィスを介し質量分析計に導入され、質量分析される。上記のガスは、帯電液滴の気化を促進させる他に、キャピラリーの先端で放電が起こるのを抑圧する。
【0004】
キャピラリーに供給される溶液の流量が10μL(マイクロリットル)/分以下で、ガスを流さずにイオン化する方法である、エレクトロスプレー法(ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(Jounal of Phycal Chemistry)、第88巻(1984年)第4451頁から第4459頁)は、イオンスプレー法と区別されているが、イオン生成の原理はイオンスプレー法と同じである。また、大気圧化学イオン化法(アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、第54巻(1982年)第143頁から第146頁)では、キャピラリーの先端の近くに放電を行なう電極を設け、大気圧下に噴霧された液滴を放電によりイオンさせる方式が用いられている。これらの従来の各種のスプレーイオン化法では、高いイオン生成効率を得るためには、直径が約10nm以下の微細な帯電液滴の生成が必要と考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、キャピラリーとサンプリングオリフィスの間には高電圧が印加される。そのため、感電防止策が必要であり、装置の構造は複雑になるという問題がある。キャピラリー電気泳動/質量分析計では、キャピラリー先端に高電圧が印加されるため、キャピラリー電気泳動装置で試料を泳動させるためにさらに高電圧を印加する必要がある。
【0006】
また、静電噴霧現象はキャピラリーの先端やサンプリングオリフィスの表面の汚れに大きく影響され、エレクトロスプレー法やイオンスプレー法では、試料溶液の噴霧を一旦停止すると、同一条件で噴霧を再開しても検出されるイオン強度は異なり、再現性が低い。そのため、検出されるイオン強度が最大となるように、キャピラリー位置を微調整したり、キャピラリー先端やサンプリングオリフィス表面をクリーニングする等の煩雑な作業が、噴霧を再開する毎に必要である。そのため、感電防止のために装置の構造が複雑になり、操作上の障害となる。
【0007】
また、上記従来技術では、試料溶液に、溶媒としてアルコールやアンモニア等の揮発性物質を混合する必要がある。電気伝導度が低い溶媒を用いた場合には、静電噴霧現象が起こらず、静電噴霧現象を生じさせるためには、試料溶液の電気伝導度が10 −13 〜10 −5 Ω −1 cm −1 の範囲とする必要があることが経験的に知られている。これらの条件が満たされない限り、静電噴霧現象が安定に起こらず、溶媒の選択が制限される点で問題がある。
【0008】
また、キャピラリーとサンプリングオリフィスの間に高電圧が印加されるため、イオン源の周辺で放電が起こる可能性があり、引火性溶媒の使用は困難である。このように使用できる溶媒の種類が制限されると、キャピラリー電気泳動又は液体クロマトグラフにより、測定対象物質の分離ができない場合が生じる。
【0009】
本発明の目的は、安全で操作性の高いイオン源を提供し、このイオン源を使用して、安定にイオンを生成し高感度に再現性よく試料の分析ができる質量分析装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、キャピラリー電気泳動又は液体クロマトグラフ等で使用される広範囲の溶媒が使用できるイオン源およびこれを使用した質量分析装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料溶液が導入される細管の端部の外周部にガス流を形成するガス流形成手段を有し、この端部の外周部にガスを大気中に噴出させて、試料溶液をイオン化させるイオン源に特徴がある。また、ガスの流速とガスの中を伝わる音波の速度から定まるマッハ数が少なくとも1から2の範囲であることに特徴がある。さらにガス流形成手段は、ガスが導入されるガス導入口と、ガスが噴出される開口部を有し、開口部には細管の端部が挿入配置され、前記の外周部と開口部の内周面との間に形成される微小空間からガスが噴出される構成とする。また、本発明は以上の特徴を有するイオン源を使用する質量分析装置に特徴がある。
【0012】
以下、より詳細に本発明の特徴を説明すると、試料溶液を大気中に送出するキャピラリーと、キャピラリーの外周面に沿ってキャピラリーの先端部までガス流を形成するために上記の先端部が挿入されるガスガイド管とを具備し、ガスの標準状態(20℃、1気圧)に換算した流量Fと、上記先端部の外周面とガスガイド管との間の空間の、上記先端部の近傍でのキャピラリー中心軸に直交する断面の最小面積Sとから定まるガス流に関する特性値F/Sが所定の範囲にあり、大気中に送出された試料溶液がガス流により先端部近傍においてイオン化されることに特徴があり、上記特性値F/Sの所定の範囲は200m/s〜1000m/sであることが望ましい。試料を効率良くイオン化する点からは、好ましくは350m/s〜700m/s、更に好ましくは500m/s〜600m/sの範囲に上記特性値F/Sを設定する。ここで、F/Sの次元は速度と同じとなるが、実際の噴出ガスの流速とは異なる。流量Fは噴出ガスの流量を標準状態に換算した値である。実際の噴出ガスは1気圧よりも高圧である。
【0013】
なお、試料溶液の流量は1μL(マイクロリットル)/分〜200μL(マイクロリットル)/分とする。
【0014】
キャピラリー先端部での微小空間から噴出されたガスにより、キャピラリー先端において試料溶液の細かな帯電液滴が生成される。ガス流のマッハ数が1に近づくと、より小さな帯電液滴が生成する。噴出されたガスにより、生成した帯電液滴から溶媒が気化して、気体状のイオンが生成する。生成したイオンを質量分析計に導入して分析することができる。
【0015】
キャピラリー先端部での噴出ガス流の特性値F/Sがある値以上になると、キャピラリー先端において、キャピラリーに導入された試料溶液が細分化され、種々の大きさの帯電液滴が生成する。そして少なくとも100nm以下の極めて細かな帯電液滴は容易に、脱溶媒(乾燥)される。溶液中では、中性の試料分子も極めて細かな液滴中ではプロトンやナトリウムイオン等と結合することにより、擬似分子イオンが生成することがあり、質量分析装置で分析可能なイオンが得られると考えられる。
【0016】
キャピラリー先端において生成する液滴の大きさを決める条件は、噴出されるガス流の特性値F/S又はマッハ数が本質的な役割を果たすが、極めて細かな液滴の生成効率においては、考慮すべき他の要素も存在する。即ち、キャピラリー先端において溶液表面と周囲との圧力差がある程度以上大きい必要がある。キャピラリーの肉厚を100μm以下の厚さにして極めて細かな液滴の生成効率を高めることができる。
【0017】
さらに、キャピラリーの中心軸とガスガイド管の中心軸とを一致させて、キャピラリー先端部におけるガスの流速を均一にして、試料溶液の液滴を含む噴出ガスの流れを軸対称に形成し、イオン化の条件の再現性も高めることができる。
【0018】
ガス流の特性値F/Sが一定ならば、試料溶液の液滴の大きさはほぼ一定であり、ガス流量F、ガスの噴出する微小空間の面積Sにはほとんど関係しない。経験的には、ガス流量Fは0.5リットル/分以上であれば充分である。キャピラリーの材質や、キャピラリーに印加する電位は、溶液から生成する液滴の大きさにはほとんど影響しない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の装置構成を示すブロック図である。試料溶液供給部1に溶液試料が供給され、溶液試料は、イオン源2の内部に設けたキャピラリー(細管)(図示せず)に導入される。ガス供給部3から供給されるガスは流量調節計4によりガス流量が調節され、イオン源2に導入されキャピラリーの外周部に沿って流され、キャピラリーの先端部から大気中に、特性値F/Sが約200m/s以上の値のガス流として噴出する。キャピラリーに導入された試料溶液は、キャピラリーの先端部に噴出されたガスにより、微小液滴の他に試料分子の気体状の擬似分子イオンが試料溶液から生成する(以下、このイオン化方法を、新しいスプレーイオン化法である、ソニックスプレー(Sonic Spray)法と呼ぶ)。生成したイオンは、キャピラリーの先端部から質量分析計11に上記のガスにより導入され、質量分析計11で分析される。以下、本発明によるイオン源の構成、およびこのイオン源を使用した分析例をもとにして、本発明によるイオン源の特徴に関して説明する。
【0021】
(第1の実施例)
本実施例では、イオン源は、液体クロマトグラフに結合され、液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)を構成する。液体クロマトグラフにより分離された試料溶液は、図1において、連結管(図示せず)を経て試料溶液供給部1に供給されるか、又は液体クロマトグラフの分離管が試料溶液供給部1に直結されている。
【0022】
図2は、本実施例で使用するイオン源を示す断面図である。試料溶液は100μL(マイクロリットル)/分の流量で、キャピラリー5(ステンレス製、内径100μm、外径300μm)に、図2の左方に配置された試料溶液供給部1から導入される。キャピラリー5はその肉厚が薄い場合、強度的に弱く、湾曲しやすいので、キャピラリー5はキャピラリー保持管(ステンレス製)6により保持固定する。キャピラリー5の先端部の約4mmに部分が、キャピラリー保持管6から露出する。キャピラリー5の外周部に沿ってガスが流され、キャピラリーの先端部で大気中に所定のガス流速をもつガスを噴出させるためのガスガイド管は、ガスガイド管先端部7と、ガスガイド管先端部保持部10とから構成される。
【0023】
キャピラリー5の先端のおけるキャピラリーの中心軸と、ガスガイド管先端部7に形成され、ガスが噴出する出口を形成するための開口部(ガスガイド管の内径の中で最小の内径を有する部分であり、内径は400μmである)の中心軸とが一致するように、キャピラリー5はキャピラリー保持管6を介してガスガイド管先端部保持部10に固定され、ガスガイド管先端部7は直接ガスガイド管先端部保持部10に固定される。ガスガイド管の外側は大気である。キャピラリー5の先端は、図2に示すように寸法Lだけ、上記の開口部の大気側の面へ突出している。
【0024】
ガスガイド管には、ガスボンベ又はコンプレッサーから窒素ガス又は空気が、流量調節計4(図1)とガス導入管8を介して導入され、ガスガイド管先端部7の先端において、上記の開口部内周面とキャピラリー5の外周面で形成される微小空間を通って、ガスは噴出する。この微小空間のキャピラリー5もしくは開口部の中心軸に直交する面での断面積Sとガスガイド管内を流れる流量Fより、上記の微小空間でのガス流の特性値F/Sは求められる。上記の開口部の形が円(内径D)、およびキャピラリー5の長手方向に直交する面での断面の外形が円(外径d)である場合、断面積Sは(数1)で求められる。
【0025】
【数1】
S=π(D 2 −d 2 )/4 …(数1)
ガスの流量Fはマスフローメータの他、パージメータ等の流量計を用いて決定することができる。本発明の実施例では、N 2 ガスの最大流量が10L(リットル)/分(標準状態、20℃、1気圧)、メータの上流側圧力が7気圧の仕様であり、ガス流量が標準状態(20℃、1気圧)での値に1%の精度で較正されて得られるマスフローメータ(ブルックス社製、5850E)を使用した。
【0026】
ガスガイド管先端部7のガス出口ではガスの断熱膨張がおこり、ガスガイド管先端部7とキャピラリー5が冷却される。従って、噴出ガスの温度を室温以上に保ち、生成される液滴の気化を促進するために、ガスガイド管先端部7にヒーター9を設置し、導入されるガスを、50℃から約90℃の間の温度で加熱するのが望ましい。
【0027】
キャピラリー5の先端がガスガイド管先端部7から露出する長さ(露出長L)が2mm以上である場合には、キャピラリー5の先端におけるガスの圧力勾配が低下するためイオン生成効率は低い。このため、キャピラリー5の先端とガスガイド管先端部7の先端との距離を調節するために、ガスガイド管先端部7はガスガイド管先端部保持部10にネジ込まれて固定される。ガスガイド管先端部7のねじ込み位置を調節することにより、イオン、又は極めて細かな帯電液滴の生成効率を最大にすることができる。
【0028】
以上の説明では、ガスガイド管先端部7から、窒素ガス又は空気を噴出させた場合を説明したが、アルゴン等の希ガス又は二酸化炭素を噴出させてもよい。また、ガスを購入するコスト面から、窒素、空気又は二酸化炭素を使用するのが好ましい。さらに好ましくは、水蒸気の含有が少ない乾燥窒素の使用がよい。
【0029】
本実施例では、ガスガイド管先端部7の先端の最も内径の小さい部位の軸方向の厚さを、2mmとした。この厚さは、薄い方がガスガイド管先端部7とキャピラリー5との軸合わせが容易になり、厚さ0.5mm程度が実際の作業操作から好ましい。
【0030】
(第2の実施例)
本実施例では、イオン源は、キャピラリー電気泳動装置に連結され、キャピラリー電気泳動/質量分析計結合装置(CE/MS)を構成する。キャピラリー電気泳動装置により分離された試料溶液は、図1において、連結管(図示せず)を経て試料溶液供給部1に供給されるか、又はキャピラリー電気泳動装置の分離管であるキャピラリーが試料溶液供給部1に直結されている。
【0031】
図3は、本実施例で使用するイオン源を示す断面図である。第1の実施例に示すイオン源と同様に、図3に示すようにガスガイド管は、ガスガイド管先端部7と、ガスガイド管先端部保持部10とから構成される。キャピラリー電気泳動装置では、試料溶液の流量が少なく0.1μL(マイクロリットル)/分以下であり、電気泳動キャピラリーの末端に泳動してくる分離された試料溶液を希釈する。この試料溶液を希釈により、連続的にキャピラリー5に希釈された試料溶液を連続的に流すことができる。希釈用溶媒を加える時に、試料溶液のイオン濃度やpH等を最適化して、測定試料のイオン化の効率を増大させることができる。
【0032】
キャピラリー電気泳動装置により、分離された溶液試料は電気泳動用キャピラリー12から混合ジョイント14に導入され、配管13から20μL(マイクロリットル)/分の流量で導入される希釈用溶媒と混合され、キャピラリー5に導入される。次に、試料はキャピラリー5の先端部でガス導入管8から導入されたガスにより、第1の実施例と同様に、液滴の他に、気体状の試料分子の擬似分子イオンに変換される。
【0033】
キャピラリー5は金属のキャピラリー保持管6を介して混合ジョイント14とガスガイド管先端部保持部10に固定される。キャピラリー電気泳動装置の電気泳動用の電極としてキャピラリー保持管6又は混合ジョイント14が使用される。ガスガイド管先端部7を固定する位置調節用治具15は、ガスガイド管先端部保持部10にネジ16を用いて固定される。位置調節用治具15に設けられたネジ16が貫通する穴は、ネジ外形より大きめに開けられている。このため、位置調節用治具15に固定されたガスガイド管先端部7の位置を、キャピラリー5の中心軸に垂直な平面内で調節して、キャピラリー5とガスガイド管先端部7の中心軸を一致させることができる。作業中に、キャピラリー5の破損を防止するため、ガスガイド管先端部7の先端部分に円周を形成する突起部が設けてある。第1の実施例と同様にして、ガスガイド管先端部7にヒーターを設け噴出ガスを加熱してもよい。
【0034】
質量分析計のサンプリングオリフィス17は、例えば内径を0.3mm、オリフィスの奥行き長さを15mmとする。さらに、サンプリングオリフィス17は、セラミックヒーター18により100℃〜150℃に加熱される。サンプリングオリフィス17の外側(大気圧側)にはカバー19が設置され、サンプリングオリフィス17が噴出ガス及び試料溶液の液滴により冷却されるのを防止している。xyzステージ20によりキャピラリー5の中心軸とサンプリングオリフィス17の中心軸の位置を微調整して一致させ、キャピラリー5の先端部で生成したイオンが効率良く質量分析計に導入される。本実施例のキャピラリー電気泳動/質量分析計結合装置を用いて、溶液試料を効率良く高精度、高感度で分析することができる。
【0035】
質量分析計として四重極型質量分析計を用い、サンプリングオリフィス17に最大数百Vの電圧が印加される場合でも、キャピラリー5、キャピラリー保持管6又はそれらの周囲部の全て、すなわちイオン源全体の電位を接地状態にできる。キャピラリー電気泳動装置で泳動電位は、この電位を接地電位を基準にして与えられる。質量分析計として、イオンを磁場内において質量分離するための加速電圧が4kV程度の磁場型質量分析計を使用する場合、サンプリングオリフィス17に加速電圧と同程度の電圧が印加されるため、キャピラリー5の先端とサンプリングオリフィス17との間で、放電が発生する可能性がある。しかし、カバー19に、接地電位と加速電位の中間的な電圧(例えば、1〜2kV)を印加し、キャピラリー5とサンプリングオリフィス17との間の距離を1cm程度にし、さらに噴出ガスにO 2 やSF 6 等の電子親和力の高いガスを用いて、その結果放電を回避して、キャピラリー5の先端周辺部の電位を接地できる。
【0036】
静電噴霧現象を用いずに全イオン量や多価イオンの生成効率を増加させることができる。静電噴霧現象により多価イオンの生成するには、2.5kV以上の電圧をキャピラリーの先端に印加する必要があるが、本発明では、2.5kV以下の低い電圧を利用して、全イオン量や多価イオンの生成効率を増大できる。
【0037】
本装置においてキャピラリー5の先端近傍の内部に200V程度の電圧差を与えて、キャピラリー5の先端部からでてくる試料溶液の表面に近い部分で、正と負のイオンの分離を起こさせ、試料溶液の表面に近い部分で、正又は負のイオンのいずれかが多い状態とすることができる。従って、本発明のソニックスプレー化法において、ガスの噴出により生成される帯電液滴の電荷密度は高くなり、静電噴霧現象を用いずに全イオン量や多価イオンの生成効率を増大させることができる。
【0038】
(第3の実施例)
以上説明した第1、第2の実施例において、液体クロマトグラフ、キャピラリー電気泳動装置、その他の分析装置で分離された試料溶液をシリンジ、又はシリンジポンプにより、図1に示す試料溶液供給部1に供給して、試料溶液をイオン源2でイオン化させて、質量分析できることは言うまでもない。
【0039】
(第4の実施例)
本発明によるイオン源を使用した測定例をもとにして、本イオン源の特徴に関して以下説明する。本実施例では、以下に記載する全ての質量分析は、特に明記する以外は、以下に示す装置構成、および測定条件で行なった。
【0040】
装置構成として、図2に示したイオン源を用い、サンプリングオリフィスのキャピラリー側に、図3に示したカバー19を設置した。カバー19は直径2mmの穴の開いた厚さ1mmのステンレス製のものを用い、サンプリングオリフィスは内径0.3mmのものを用た。キャピラリー5として石英製のキャピラリー(内径0.1mm、外径0.2mm)を用いた。ガスガイド管の先端部の開口部の内径は、400μmとした。キャピラリー5の先端位置は、ガスガイド管の先端部の開口部(400μm)の大気圧側の面から0.65mmだけ突出させた。質量分析計として、二重収束型質量分析計(日立、M−80)を使用した。開口部(400μm)、キャピラリー5、サンプリングオリフィスのそれぞれの中心軸を、検出されるイオン強度が最大となるように同軸に調整してセットした。
【0041】
測定条件として、キャピラリー先端部、サンプリングオリフィス、カバー19のそれぞれの電位を同電位に設定した。噴出ガスとしてN 2 ガスを用い、噴出ガスの特性値F/Sを550m/sとした。試料溶液(Gramicidin(グラミジン)−S)の流量を40μL(マイクロリットル)/分とした。ガスガイド管は室温に保持され、ヒーター9によりガスガイド管先端部7を加熱せずにイオン強度の測定を行った。
【0042】
(1)本イオン源を使用して得られる質量スペクトル(図4)。
【0043】
図4に、ペプチドの一種であるGramicidin−Sの溶液(濃度1μM、溶媒は50%メタノール水溶液)を試料溶液として得られた質量スペクトルを示す。m/z=140のイオンは、試料溶液中又は大気から混入した不純物に由来するものと考えられる。メタノール由来のCH 3 OH 2 のプラスイオン(m/z=33)はわずかに観測されるが、H 3 Oのプラスイオン又はH 3 Oのプラスイオンに水分子が付加して形成されるクラスターは観測されず、単純なスペクトルが得られ、スペクトルの解析が容易になる。エレクトロスプレー法、イオンスプレー法等の従来の方法では、希薄な試料溶液を用いて質量スペクトルを測定する場合には、溶媒に由来するイオンが強く観測される。本発明では、溶媒に由来するCH 3 OH 2 のプラスイオン強度は、試料溶液濃度を10倍変化させても殆ど変化せず、試料溶液濃度に影響されずに測定対象の試料の質量スペクトルを測定することができる。
【0044】
(2)試料溶液の流量とイオン強度の関係(図5)。
【0045】
図5に、試料溶液流量を変化させたときに、検出されたGramicidin−Sの2価イオンの強度を示す。40μL(マイクロリットル)/分以下の流量では、流量が増大するに従いイオン強度は直線的に増加する。しかし、流量が増加するにつれて、微細な帯電液滴(直径が10nm程度)よりも直径が大きい液滴が優先的に生成され、サンプリングオリフィスの温度が低下するため、40μL(マイクロリットル)/分以上の流量では、流量が増大してもイオン強度の増加は少なくなる。試料溶液流量が10〜60μL(マイクロリットル)/分の範囲にあれば試料を効率良くイオン化することができる。
【0046】
なお、試料溶液流量がゼロの場合においても、ガスガイド管先端部から噴出するガスによって生じる大気圧よりも圧力が低い減圧空間が生じるため、スプレーイオン化法では、試料がイオン化されてゼロでないイオン強度(図5では、図示せず)が得られる。
【0047】
(3)ガスガイド管先端でのガスが噴出する開口部の大きさと、キャピラリーの寸法と、イオン強度との関係。
【0048】
ガス流速とキャピラリーの外径を一定にして、ガスガイド管先端部7の先端部のガス出口の断面積が最も小さい部位での内径を0.4mmから0.5mmに変更しても検出されるイオン強度は変化しなかった。一方、ガス流量を一定にして、ガスガイド管先端部7先端のガス出口である、開口部の内径が0.5mmの場合には、開口部の内径が0.4mmの場合より著しくイオン強度は低く、実質的にイオンは検出されなかった。従って、イオンの生成はガスの流量ではなくガスの流速に依存する。
【0049】
ガスガイド管先端部7先端部の上記の開口部の内径を0.5mmに固定し、肉厚50μmの石英キャピラリー(内径0.1mm、外径0.2mm)と肉厚が約3倍大きい肉厚137.5μmの石英キャピラリー(内径0.1mm、外径0.375mm)とを比較した。ガス流速を同一にしても検出されるイオン強度は肉厚50μmの石英キャピラリーの方が約1桁高く、キャピラリーの肉厚が薄いほどイオン生成効率が高く好ましい。このことはキャピラリーの肉厚が厚くなるとキャピラリーから流れ出る試料溶液に対して、キャピラリー外周部を流れるガスが効果的に作用しなくなるため、イオン化の効率が悪くなるためである。
【0050】
キャピラリーとして石英キャピラリーを使用したが、ステンレスのキャピラリーでもよく、キャピラリーの肉厚が10〜150μmの範囲にあれば、強度的に余裕があり、試料を効率良くイオン化することができる。
【0051】
(4)噴出ガスの特性値F/Sとイオン強度の関係、マッハ数Mの計測(図6)。
【0052】
図6に、Gramicidin−Sを試料とし、溶媒としてメタノール濃度が50%であるメタノール水溶液の試料溶液(試料濃度は1μM)を調整した。次に、試料溶液を40μL(マイクロリットル)/分の流量でキャピラリー5に導入した。噴出ガスには、N 2 およびArを用いた。Gramicidin−Sは、二つのプロトンが付加した2価のプラスイオン(m/z=571)として検出された。
【0053】
図6の測定図は、ガス流の特性値F/Sに対して、上記のGramicidin−Sの2価イオン(m/z=571)のイオン強度をプロットしたのもである。図6中、○はN 2 ガス、□はArガスを用いた場合に観測された相対イオン強度を示す(相対イオン強度の最大値をそれぞれの場合に10とした)。
【0054】
図6に示す矢印C点の条件下では、イオン源のガスガイド管を流れるガス流の上流側のガス圧力は7気圧(P 0 =7気圧)である。また、イオン源の外部の圧力は1気圧(P=1気圧)である。そこで、次に示す等エントロピー流れに対する関係式を用いると、マッハ数Mを求めることができる。
【0055】
【数2】
P 0 /P={1+0.5(γ−1)M 2 }**α …(数2)
(数2)においてα={γ/(γ−1)}であり、**はべき乗を示し、γはガスの比熱比であり、N 2 ガスの場合は1.4である(参考文献:生井武文、松尾一泰;圧縮性流体の力学(理工学社、1977)、H.W.Liepmann,A.Roshko;Elements of Gasdynamics(John Wiley & Sons Inc. NY,1960)。(数2)の関係式を用いてマッハ数Mを求めると、図6中の矢印で示される点Cにおける特性値F/S=1040m/sでは、M=1.93と見積もられる。このことから、図6の実験結果はマッハ数Mが2以下の条件下で得られたものと結論される。
【0056】
気体のような圧縮性流体では、密度変化による屈折率の変化が流体中に存在する。この性質を利用すると、流れを可視化することができる。そこで、N 2 ガスを用いて試料溶液は導入せず、図6中の矢印A、B、Cで示す特性値F/S=345、691、1040m/sの条件下でシュリーレン写真を撮影して、(数2)に基づいてマッハ数Mを求めた。得られる噴出ガスのシュリーレン写真を、図7に模式的に示す。図7(a)は図6の点Aでの特性値F/S=345m/sで得られた噴出ガスのシュリーレン写真の模式図であり、図7(a)中の左方はイオン源の先端部におけるガス流れの状態を模式的に示す側面図であり、キャピラリー先端がイオン源から約0.3mmだけ露出している。噴出ガスは図7(a)中に示されるキャピラリー先端の周囲から右方へ流れる。このシュリーレン写真では、ガス流の輪郭のみがえられる。図6の点B、点Cでの特性値F/S=691、1040m/sで得られたシュリーレン写真を図7(b)に模式的に示す。図7(a)と比較してガス流中に大きな密度変化に対応する縞模様が顕著に現われている。これは超音速流で発生する膨張波であると判断される。点Bでは、キャピラリー先端付近で、超音速流が発生しマッハ数Mは1以上であると結論される。一方、点Aでの特性値F/S=345m/sでは、縞模様が現われずマッハ数Mは1以下である。このことより、図6中の矢印で示されるA点とB点との間、即ちイオン強度が最大となる特性値F/Sを含む領域にM=1となる条件が存在することになる。
【0057】
図6において、噴出ガスの流速のマッハ数Mが1以上の超音速の場合には、キャピラリー先端付近で衝撃波や膨張波が発生し、キャピラリー先端近傍での圧力が変動する。このため、大きい液滴が生成され易くなり、イオンの生成に必要な細かな帯電液滴は生成されにくくなり、観測されるイオン強度が低下すると考えられ、さらに、超音速領域では噴出ガスは断熱膨張により著しく冷却されるため(図6を得る実験では冷却防止のためガスガイド管の加熱はしていない)、帯電液滴の気化が抑制されると考えられるので、図6中の矢印で示されるA点とB点との間、即ちイオン強度が最大となる特性値F/Sを与える約550m/sがマッハ数M=1となる点であると想定される。
【0058】
図6に示した測定結果を得たさいの測定、装置条件は、キャピラリー先端とサンプリングオリフィスの電位を同電位に設定し、ガスガイド管、キャピラリーの温度は、加熱せず、室温である。また、噴出ガスの特性値F/Sが約550m/sの場合に検出されるイオン強度は、キャピラリー先端とサンプリングオリフィス間に3kVの高電圧を印加しても変化しない。従って、図6に示されるイオン強度は、キャピラリーの加熱、キャピラリーに印加され電圧により生成したイオンに基づくものではなく、観測されたイオンの生成は、噴出ガスのみの作用効果によるものであって、本発明のスプレーイオン化法では、キャピラリー先端に印加された電圧、加熱の作用効果は必要としていない。さらに、図6の結果のように、キャピラリーを加熱しない場合でも、以下に説明するように、従来法に比較して十分なイオン強度が得られている。即ち、従来のイオン化法では、直径が10nm以下の帯電液滴の生成は、強電場や加熱を利用する以外に手段がないと考えられていたが、本発明のソニックスプレー法では、噴出ガスと共に試料溶液を大気中に噴出させるだけで、直径が10nm以下の帯電液滴の生成を実現している。
【0059】
一方、ガス流の特性値F/Sを、ガスの噴出により生成されるイオンの量が無視できる5m/sに設定し、キャピラリーとサンプリングオリフィスとの間に3kV程度の高電圧を印加し、静電噴霧現象によりイオンを生成するイオンスプレー法の場合に検出されるイオン強度は、図6に示すイオン強度の最大値の約1/10以下の低い値である。
【0060】
噴出ガスの特性値F/Sを350〜700m/sの範囲に設定して、従来のイオンスプレー法によるイオン強度の約3倍以上のイオン強度が得ることができる。噴出ガスの特性値F/Sを400〜800m/sの範囲に設定することが好ましく、従来のイオンスプレー法によるイオン強度の約6倍以上のイオン強度が得られる。さらに、噴出ガスの特性値F/Sを500〜600m/sの範囲に設定すれば、従来のイオンスプレー法の10倍以上のイオン強度を得ることができ、最も好ましい結果を得ることができる。
【0061】
(5)キャピラリー先端位置に対するサンプリングオリフイス位置ずれと、イオン強度の関係(図8)。
【0062】
キャピラリー5とサンプリングオリフィス17との間の距離を5mmに保持して、第4の実施例において説明したように、イオン源の、ガスガイド管の開口部、キャピラリー5、サンプリングオリフィス17のそれぞれの中心軸を、検出されるイオン強度が最大となるように同軸に調整してセットして(この位置を以下の移動変化の基準の位置(=0)とする)、試料溶液からのイオン強度を測定する。次いで、イオン源全体の位置を水平方向に移動変化させて、それぞれの移動位置において、Gramicidin−Sの2価イオンのイオン強度(試料溶液は、溶媒が50%メタノール水溶液のGramicidin−S溶液(濃度10μM)である)を検出した結果を図8に示す。図8の中央部の相対イオン強度約2.8の鋭いピークは、この鋭いピークを得た時のガス流の特性値F/S(550m/s)をさらに大きくした場合には消失してしまい、かわりに相対イオン強度が約1.6である、幅の広い鈍ったピークとなってしまう。イオン源の移動距離が、−1mmおよび0.5mm付近に小さいピークが出現するが、これらのピークは、サンプリングオリフィス17の前のカバー19の穴(直径2mm)による、噴出ガス流の乱れにより生じたものと考えられる。図8に示す結果は、イオン源全体の位置を垂直方向に移動変化させても同様である。
【0063】
上記の移動距離、1mmの位置は、キャピラリー5の先端部の中心を頂点とし、キャピラリーの中心軸を軸とする、頂角、約22.5度を有する直円錐の底面の円周上にある。即ち、サンプリングオリフィス17の中心位置(1mm)は、この円周上にある。同様にして、移動距離、0.2mmの位置は、キャピラリー5の先端部の中心を頂点とし、キャピラリーの中心軸を軸とする、頂角、約4.5度を有する直円錐の底面の円周上にある。即ち、サンプリングオリフィス17の中心位置(0.2mm)は、この円周上にある。好ましくは上記の頂角22.5度を有する、直円錐の底面の円周内部にサンプリングオリフィスの中心位置を配置することにより、従来のイオンスプレー法により得られるイオン強度の約2.5倍以上のイオン強度が得られる。さらに好ましくは上記の頂角4.5度を有する、直円錐の底面の円周内部にサンプリングオリフィスの中心位置を配置することにより、従来のイオンスプレー法により得られるイオン強度の約6倍以上のイオン強度が得られる。
【0064】
さらに、噴出ガスの特性値F/Sを550m/sから、さらに大きくした超音速の場合でも、従来のイオンスプレー法により得られるイオン強度の約6倍以上のイオン強度が得られる。
【0065】
(6)ガスガイド管の先端からキャピラリーの先端が露出する長さとイオン強度の関係(図9)。
【0066】
図9に、ガスガイド管先端部7の先端の最小内径を有する開口部の大気圧面から、キャピラリー5の最先端が露出する露出長(図2及び図3に示すL)を変化させたときに検出されるイオン強度を示す。露出長Lが1.2mm以上では、イオン強度は低下している。露出長Lが大きくなると、キャピラリーの先端におけるガス流速が実質的に低下して、検出されるイオン強度は低下する。従って、上記の露出長Lは、−0.25〜1.0mmに設定することが好ましい。
【0067】
(7)試料溶液濃度とイオン強度の関係(図10)。
【0068】
図10に、Gramicidin−Sの濃度を変化させたときに検出されるイオン強度を示す。約1μM以下の低濃度領域では、イオン強度は試料濃度に対して直線的に変化して増大する。本発明のイオン化法では、特に約1μM以下の試料溶液の濃度に対して好適である。約2μM以上の試料濃度では、検出されるイオン強度は、約1μM以下の低濃度領域における直線変化とは異なる直線変化を示している。約2μM以上の高濃度領域では試料濃度を変化させてもイオン強度の増加はあまり変化しない理由は、溶液のpHは5程度であり、高濃度領域では試料溶液中のほとんどのプロトンが、Gramicidin−Sに結合しており、試料溶液中のプロトンの枯渇によると考えられる。
【0069】
(第5の実施例)
次に、ガスガイド管の簡単な製作方法を図11に基づいて説明する。図3に示すガスガイド管先端部保持部の変形例を図11に断面図により示す。
【0070】
図11では、図3に示す7、15、16の各部の詳細は図3と同じであり省略した。図11の断面図から明らかなように、円柱材料を使用して単なる孔開け加工のみによる簡単な製作方法でガスガイド管先端部保持部を得ることができる。
【0071】
なお、ガスガイド管を構成する各部の材質は、以上の各実施例において説明した材質以外であってもよく、各種の金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、さらには、フイラー充填の高分子樹脂材料を使用して作成してもよい。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、イオン源を構成するキャピラリー等の各部の電位を接地させたまま、噴出ガスにより試料溶液から、効率よくイオンを生成できる。この結果、従来のイオン化法に比較して、イオン源の構造が単純化され、操作性、安全性が高くなる。また、本発明のイオン源をキャピラリー電気泳動装置に適用し、キャピラリー電気泳動/質量分析計を構成するさい、上記のようにキャピラリーの先端を接地電位にできるため、キャピラリー電気泳動装置では独自に電位を印加でき、装置全体の構成が単純になり、装置の操作が単純となり、操作の安全性も格段に向上する。
【0073】
さらに、従来のイオン化法では、イオンの生成はキャピラリーやサンプリングオリフィスの周囲の汚れの影響を大きく受けるが、本発明の、噴出ガスによリ試料溶液からイオンを生成する、本発明のソニックスプレー法では、従来方法とは異なりキャピラリーやサンプリングオリフィスの周囲の汚れの影響を受けない。
【0074】
また、従来のイオン化法では、検出されるイオン強度はサンプリングオリフィスの周囲やキャピラリーでの汚れの影響を大きく受けるが、本発明の、ソニックスプレー法では、従来方法とは異なり、検出されるイオン強度はキャピラリー周囲の汚れの影響を受けることなく、サンプリングオリフィスの周囲の汚れにあまり影響されず、試料の高感度検出が可能であり、再現性がよい。即ち、キャピラリー先端やガスガイド管を最適な位置に設定することにより、再現性よく試料溶液からイオンを高効率で生成し、検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明のイオン源の第1の実施例を示す断面図。
【図3】本発明のイオン源の第2の実施例、およびサンプリングオリフィスを示す断面図。
【図4】本発明のイオン源を使用して得られた質量スペクトル例を示す図。
【図5】試料溶液流量と検出されるイオン強度の関係を示す図。
【図6】噴出ガスの特性値F/Sとイオン強度の関係を示す図。
【図7】噴出ガスのシュリーレン写真を模式的に示す図。
【図8】キャピラリー先端位置とサンプリングオリフイ位置との位置ずれと、イオン強度の関係を示す図。
【図9】キャピラリー先端位置の露出長とイオン強度の関係を示す図。
【図10】試料溶液濃度とイオン強度の関係を示す図。
【図11】ガスガイド管の簡単な製作方法を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…試料溶液供給部、2…イオン源、3…ガス供給部、4…流量調節計、5…キャピラリー、6…管、7…ガスガイド管先端部、8…ガス導入管、9…ヒーター、10…ガスガイド管先端部保持部、11…質量分析計、12…電気泳動用キャピラリー、13…配管、14…混合ジョイント、15…位置調節用治具、16…ネジ、17…サンプリングオリフィス、18…セラミックヒーター、19…カバー、20…xyzステージ。
Claims (1)
- 試料溶液を送出するキャピラリーと、ガスの噴出面積がSである開口部を有するガスガイド管と、前記ガスガイド管に一定流量のガスを供給するガス流量調節手段とを有し、前記ガス流の流量を標準状態(摂氏20度、1気圧)に換算した流量Fと、前記開口部におけるガスの噴出面積Sから定まる特性値F/Sが500m/s以上600m/s以下であるイオン源と、該イオン源により生成されたイオンを検出する質量分析計と、該質量分析計にイオンを導入するための細孔とを有し、前記キャピラリーの先端部の中心を頂点とし、前記キャピラリーの中心軸を軸とする頂角が4.5度を有する直円錐の底面の円周内部に、前記細孔の中心位置が配置されることを特徴とする質量分析装置。
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