JP3658795B2 - 撒液用チューブ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、農園芸用等において用いられる撒液用チューブに関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来より、野菜や果実の促成栽培が盛んであるが、この種の栽培法の一つとして、例えば、苗の定植の際には活着促進のために上部から細かい雨状の水等の液体の撒液を行い、苗の定植後にはマルチフィルム栽培のようにマルチフィルム下で撒液を行うような栽培がある。
このような栽培法では、先ず水等の液体を撒液するために耕地に撒液用チューブを敷設し、該撒液用チューブからの撒液によって定植時の苗を育成し、さらに、ある時期に耕地の全表面にマルチフィルムを張設し敷設された撒液用チューブにより撒液してその後の苗を栽培する。
ところが、従来における撒液用チューブは単なる円筒状をなしその外周面の適宜箇所に小孔を穿設してなるため、該撒液用チューブを上記のような2種の栽培様式に適する撒液方式に対応させて用いることが難しかった。
また、撒液用チューブはその敷設時に局部部分が反転したまま又は折れたまま敷設されることがあるが、撒液用チューブ内に通液をしてもその通液圧だけでは反転部又は折れ部が整位状態に復元できず、通液後に手先等で手直しを行う必要がある。この手直しを行なわないと、耕地面に向く小孔が現れ、該小孔にゴミや砂等がはまり込み目づまりを発生したり、撒液用チューブが反転および蛇行して撒液が不均一になってしまう、等のことがあった。
さらに、撒液用チューブを折り畳んで偏平状にし、これをレコード巻きにした状態で製品化しているため該撒液用チューブの幅方向における両側端部にくっきりと折り目がつき、この折り目部分(両側端部)が輸送、保管、敷設中に擦れて傷がついたりすると簡単に破れてしまい撒液用チューブとしての本来の機能が損なわれてしまうことがあった。
【0003】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、例えば、苗の定植の際には活着促進のために上部から細かい雨状の水等の液体の撒液を行い、苗の定植後にはマルチフィルム栽培のようにマルチフィルム下で撒液を行うような栽培様式に適する撒液方式に対応し、また、ほぼ一直線状になるように簡単にかつ容易に敷設することができ、これにより、苗の栽培中常に撒液むらを生じることなく、撒液を均一に行うことができる撒液用チューブを提供することにある。さらにまた、フィンの厚さ寸法をチューブ本体の厚さ寸法と同等程度又はそれよりも大きく設定することができ、これにより、従来のようにチューブ本体に折り目がつき難くなり、折り畳んで偏平状にした撒液用チューブの幅方向における両側端部が補強される撒液用チューブを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の撒液用チューブは、上記の課題を解決するために、
撒液用チューブ本体は、非通液時には偏平状であり、通液時には丸みを帯びる長尺状管状体であって、
一対のフィンが、通水時における上記撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の略中心を通る仮想水平面(以下、仮想水平面と記す。)と撒液用チューブ本体の外周面との交線上に位置するように、上記撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられ、
仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面(以下、上側外周面及び下側外周面と記す。)に長手方向に複数の撒液用孔がある繰り返しパターンを有するように穿設されてなり、
下側外周面に穿設される撒液用孔から上記フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離が、上側外周面に穿設される撒液用孔から該フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離より短くなるように形成されている
ことを特徴としている。
【0005】
請求項2記載の発明の撒液用チューブは、上記の課題を解決するために、
下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されていることを特徴としている。
【0006】
【作用】
請求項1記載の構成によれば、一対のフィンが、仮想水平面と撒液用チューブ本体の外周面との交線上に位置するように、撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられている。設けられる一対のフィンは、撒液用チューブに通液した場合に、撒液用チューブ本体が反転したり、蛇行したりしないための支えとなる。このため、撒液用チューブは、例えば耕地に敷設されたときに、撒液用チューブ本体における局部部分の反転や折れを防ぐことができる。
これにより、撒液用チューブ本体は安定し、従って、撒液用チューブ本体をほぼ一直線状になるように簡単にかつ容易に敷設することができる。
【0007】
また、マルチフィルムにより撒液用チューブ本体の上側外周面を被うときに、撒液用チューブ本体の下側外周面とマルチフィルムとの間に空間を確実に形成することができる。
これにより、下側外周面に穿設される撒液用孔がマルチフィルムにより塞がることはない。従って、苗の栽培中常に撒液むらを生じることなく、撒液を均一に行うことができる。
また、仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に複数の撒液用孔がある繰り返しパターンを有するように穿設され、下側外周面に穿設される撒液用孔からフィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離が、上側外周面に穿設される撒液用孔から該フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離より短くなるように形成されている。このため、撒液用チューブは、例えば苗の定植の際には、上側外周面に穿設される撒液用孔から液体を上部に噴出することができる。また、苗の定植後には、下側外周面に穿設される撒液用孔からマルチフィルム下で液体を耕地に撒液むらを生じることなく、均一に撒布することができる。これにより、上記のような2種の栽培様式に適する撒液方式に対応させて用いることができる。
【0008】
さらにまた、フィンの厚さ寸法をチューブ本体の厚さ寸法と同等程度又はそれよりも大きく設定することができる。これにより、従来のように撒液用チューブ本体に折り目がつき難くなり、折り畳んで偏平状にした撒液用チューブの幅方向における両側端部を補強することができる。特にフィンの厚さ寸法をチューブ本体の厚さ寸法の2倍以上にすれば、より補強を強化することができる。
【0009】
請求項2記載の構成によれば、下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されている。このため、撒液用チューブは、下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成されることによって、耕地面に接触又は近接するような小孔が現れず、該小孔にゴミや砂等がはまり込み目づまりを発生することを防ぐことができ、又、撒液用チューブ内の底に徐々に蓄積するようなゴミや砂等による目づまりも防ぐことができる。また、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されることによって、上部からの細かい雨状の撒布が可能になる。
【0010】
【実施例】
本発明の一実施例について図1ないし図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、以下の説明においては、一対のフィンが、通水時における撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の中心を通る仮想水平面と撒液用チューブ本体の外周面との交線上に位置するように、撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられ、かつ、仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に複数の撒液用孔がある繰り返しパターンを有するように穿設されてなり、穿設される撒液用孔のうち、下側外周面に穿設される撒液用孔はフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔は撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されている撒液用チューブを例に挙げることとする。
【0011】
図1に示すように、本実施例にかかる撒液用チューブの本体は、通液時には膨らんで円筒形状を呈する一方、図3に示すように、非通液時には偏平となる。つまり、撒液チューブ本体1は、非通液時には偏平となって収納、運搬等する際の取り扱いが容易となる一方、通液によって液圧がかかると膨らみ、長手方向に直交する断面形状(つまり、図4に示す断面)が略円形状となる。撒液用チューブ本体1の太さ(内径)や厚み(肉厚)は、特に限定されるものではなく、例えば撒液用チューブの用途や長さ、材料、散布する液体の種類や量、液圧、或いは、圧力損失等を考慮して適宜設定すればよい。具体的には、撒液用チューブ本体1の太さ(内径)は、凡そ20mmφ〜50mmφ程度が好適であり、また、厚みは、凡そ100μm〜500μm程度が好適である。
【0012】
尚、撒液用チューブ本体1にかかる液圧は、特に限定されるものではない。例えば、撒布を所望する液体が水であり、撒液用チューブを一般の水道管に直結した場合には、水圧は凡そ1kg/cm2 〜2kg/cm2 程度になる。また、水圧を所定範囲内、例えば0.01 kg/cm2 〜2.5kg/cm2 、好ましくは0.05kg/cm2 〜1kg/cm2 の範囲内で任意に変更させることが可能なポンプ、減圧弁、止水栓等を用いることにより、撒液用チューブ本体1にかかる水圧を適宜調節してもよい。撒液用チューブは、水の他、種々の液体を撒布可能である。
上記撒液用チューブの通液時の撒液状態を図2及び図5に示す。
【0013】
上記撒液用チューブ本体に穿設される撒液用孔3・・・の穿設方法は、特に限定されるものではないが、例えば、いわゆるレーザー穿孔やドリル穿孔、スリット穿孔、針穿孔、ポンチ穿孔等、安価で量産性に優れた方法が好ましい。また、撒液用孔3・・・の直径や個数、或いは、撒液用孔3・・・同士の間隔等は、特に限定されるものではなく、例えば撒液用チューブの用途や、撒布する液体の種類、量、液圧、或いは、撒布を所望する撒布領域の広さ等を考慮して、図8〜図12に示すように、適宜設定すればよい。例えば、撒布を所望する撒布領域の広さ等に応じて、仮想水平面13に対し上側外周面及び/又は下側外周面に穿設される撒液用孔3が撒液用チューブ本体1の長手方向に1〜数列状に形成される(図8、図9、図10に示される例)ように調節し、また、撒布する液体の量等に応じて、撒液用孔3・・・の直径や個数、若しくは、撒液用孔3・・・同士の間隔を調節し、或いは、仮想水平面に対し上側外周面及び/又は下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面及び/又は下側外周面を二等分する仮想中央線に対し両側又は片側の撒液用チューブ本体の外周面に形成される(図8、図9、図10の各々に示される例)ように調節すればよい。具体的には、例えば、撒液用孔3・・・同士の間隔は、凡そ2cm〜30cm程度が好適である。尚、撒液用孔3・・・は、仮想水平面13に対し上側外周面及び下側外周面の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に穿設され、穿設される撒液用孔のうち、下側外周面に穿設される撒液用孔はフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔は撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線4の近傍に位置するように形成されている(図11及び図12を参照)。ここで「下側外周面に穿設される撒液用孔はフィンの近傍に位置する」とは、例えば、下側外周面を二等分する仮想中央線から仮想水平面と撒液用チューブの外周面との交線までの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離を上記交線側より1:1、好ましくは1:2に分割する仮想分割線と上記交線によって挟まれる領域に存在することを意味し、又「上側外周面に穿設される撒液用孔は撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置する」とは、例えば、上側外周面を二等分する仮想中央線から仮想水平面と撒液用チューブの外周面との交線までの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離を上記仮想中央線側より1:1に分割する仮想分割線と上記仮想中央線によって挟まれる領域に存在することを意味する。
【0014】
図4に示すように、一対のフィン2は、撒液用チューブ本体1の通水時における撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の中心を通る仮想水平面13上に位置するように、撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられている。
【0015】
設けられる一対のフィンは、撒液用チューブに通液した場合に、撒液用チューブ本体が反転したり、蛇行したりしないための支えとなる。このため、撒液用チューブは、例えば耕地に敷設されたときに、撒液用チューブ本体における局部部分の反転や折れを防ぐことができる。
これにより、撒液用チューブ本体は安定し、従って、撒液用チューブ本体をほぼ一直線状になるように簡単にかつ容易に敷設することができる。
また、図6に示すように、マルチフィルムにより撒液用チューブ本体の上側外周面を被うときに、撒液用チューブ本体の下側外周面とマルチフィルムとの間に空間を確実に形成することができる。
【0016】
一対のフィンを撒液用チューブに設けるための製造方法は、例えば、図13に示すように、帯状のポリエチレン等のフィルムを2つ重合わせ、重なり合った周縁部をヒートシール等することにより密着状態とし、チューブ状に形成するヒートシール法、押出し成形法や環状スリットの半径方向外側に一対のフィン用スリットを設けたリングダイを用いた押出し成形法等の安価で量産性に優れた方法を好ましくあげることができるが、特に限定されるものではない。
【0017】
フィンの厚み(肉厚)及び幅方向の長さは、特に限定されるものではなく、例えば撒液用チューブの用途や長さ、材料、散布する液体の種類や量、液圧、或いは、圧力損失等を考慮して適宜設定すればよい。具体的には、フィンの厚み(肉厚)は、凡そ100μm〜1000μm程度が好適であり、また、幅方向の長さは、例えば1mm〜25mm程度をあげることができる。
【0018】
フィンは、上記の効果を損なうことがない程度において、図7に示すように、撒液用チューブ本体の長手方向に断続的に設けることもできる。
【0019】
撒液用チューブを構成する材料は、特に限定されるものではないが、屈曲自在性を有し、繰り返し耐圧疲労強度等の機械的強度に優れると共に、耐候性や耐薬品性、耐膨潤性、耐熱性、耐寒性、耐引裂性、耐衝撃性等に優れているものが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、天然ゴム、合成ゴム、或いは、エラストマー等が挙げられる。これら材料は、例えば撒液用チューブの用途等に応じて適宜単独で又は組み合わせて選択される。尚、必要に応じてこれら材料には、紫外線防止剤、抗酸化剤、着色剤、その他の添加剤を含有させることができる。
また、材料が有する屈曲自在性は、収納、運搬等する際に取り扱いが容易になるように、撒液用チューブを巻き取ることが可能な程度であればよい。
【0020】
上記構成の撒液用チューブを用いた撒液としての散水の具体例について、以下に説明する。
具体例1
撒液用チューブの材料を、高圧法LLDPEにカーボン3重量%を添加した熱可塑性樹脂とした。また、撒液用チューブ本体1の太さ(折径)を58mm,厚み(肉厚)を0.13mmとし、フィン3の厚みを0.25mm,長さを3mmとした。さらに、仮想水平面13に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に直径0.3mmの撒液用孔を、図11(1−a)・(1−b)に示すように、下記の配置様式で複数穿設した。
上側外周面(1−a)に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線4から撒液用チューブ本体の長手方向に直交する幅方向に2mm(フィン2から24mm)及び8mm(フィン2から18mm)離れた位置に列状に形成され、かつ形成された同一列上の隣合う撒液用孔間の距離が150mmになるように形成されている。さらに、上側外周面(1−a)における仮想中央線4に対し両側において、該仮想中央線4から等距離にある列上のすべての撒液用孔間の距離が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って等間隔(75mm間隔)になるように形成されている。
また、下側外周面(1−b)に穿設される撒液用孔が仮想中央線4から撒液用チューブ本体の長手方向に直交する幅方向に21mm(フィン2から5mm)離れた位置に列状に形成され、かつ形成された列上の隣合う撒液用孔間の距離が250mmになるように形成されている。さらに、下側外周面(1−b)に穿設されるすべての撒液用孔間の距離が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って等間隔(125mm間隔)になるように形成されている。
上記の条件に基づいて熱板を使用して長帯状フィルムの長手方向に沿った両端部を融着するヒートシール方式によって製造した撒液用チューブを耕地に敷設した。該撒液用チューブは、長手方向における一方の端部は閉じられるとともに、他端部が送水ポンプに接続されるようにセットされた。尚、試験では栽培作物としてイチゴを用いた。
【0021】
撒液用チューブを地面に敷設したところ、フィン2の存在によって撒液用チューブ本体1は安定し、入口圧を0.4 kg/cm2 として通水した場合においても、水圧によって撒液用チューブ本体1がねじれたり、伸びたりすることは殆どなかった。このため、撒液用チューブが反転することを防ぐことができた。つまり、撒液用チューブ本体1をほぼ一直線状になるように簡単かつ容易に敷設することができ、これにより、苗の栽培中常に撒液むらを生じることなく、撒液を均一に行うことができ、その結果、イチゴ苗は良好な状態で定植活着した。さらに、上記の測定を複数回、反復して行ったが、圧力が変化しても、該圧力の変化によって撒液用チューブは、通水時に撒液用チューブ本体にわたって撒液方向を所望の方向及び角度にある程度保つことができ、撒液むらを最小限に抑え込むことができ、所望の領域に苗の上部から細かい雨状の撒水を広範囲にほぼ均一に行うことができた。
【0022】
つぎに、撒液用チューブ本体の上側外周面を被うマルチフィルムを張設した後、再び撒液用チューブに水を通液した。張設されたマルチフィルムにより撒液用チューブ本体の上側外周面に穿設される撒液用孔が被われ、上側外周面に穿設される撒液用孔からの撒布は所々なくなったり、又はその撒水量が減少したりしたが、下側外周面に穿設される撒液用孔はマルチフィルムにより塞がることなく、しかも、撒液が水平方向に飛び直接的に作物にかかるようなことなく、水を耕地に撒液むらを生じることなく、均一に撒布することができた。また、下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成されることによって、耕地面に接触又は近接するような小孔が現れず、該小孔にゴミや砂等がはまり込む目づまりや撒液用チューブ内の底に徐々に蓄積するようなゴミや砂等による目づまりを起こすことはなかった。その結果、マルチフィルム張設後でもイチゴ苗は良好な状態で生育した。
【0023】
具体例2
撒液用チューブの材料を、高圧法LLDPEにカーボン3重量%を添加した熱可塑性樹脂とした。また、撒液用チューブ本体1の太さ(折径)を58mm,厚み(肉厚)を0.13mmとし、フィン3の厚みを0.25mm,長さを3mmとした。さらに、仮想水平面13に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に直径0.4mmの撒液用孔を、図11(2−a)・(2−b)に示すように、下記の配置様式で複数穿設した。
上側外周面(2−a)に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線4から撒液用チューブ本体の長手方向に直交する幅方向に2mm(フィン2から24mm)及び8mm(フィン2から18mm)離れた位置に列状に形成され、かつ形成された同一列上の隣合う撒液用孔間の距離が120mmになるように形成されている。さらに、上側外周面(2−a)に穿設されるすべての撒液用孔間の距離が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って等間隔(30mm間隔)になるように形成されている。
また、下側外周面(2−b)に穿設される撒液用孔が仮想中央線4から撒液用チューブ本体の長手方向に直交する幅方向に21mm(フィン2から5mm)離れた位置に列状に形成され、かつ形成された列上の隣合う撒液用孔間の距離が250mmになるように形成されている。さらに、下側外周面(2−b)に穿設されるすべての撒液用孔間の距離が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って等間隔(125mm間隔)になるように形成されている。
上記の条件に基づいて熱板を使用して長帯状フィルムの長手方向に沿った両端部を融着するヒートシール方式によって製造した撒液用チューブを展張・敷設した後、該撒液用チューブを折り畳んで偏平状にし、これを固くレコード巻きにした状態で収納した。このように展張・敷設と収納を20日間繰り返した後、撒液用チューブの撒液用チューブ本体の長手方向に直交する幅方向の両側端部を調べたが、特にくっきりとした折り目は存在していなかった。さらに、該撒液用チューブを用いて、具体例1と同様な方法で撒水試験を行ったが、撒液用チューブは破れる等により撒液用チューブとしての本来の機能が損なわれてしまうようなことはなかった。
【0024】
上記構成の撒液用チューブは、例えば各種野菜や果物等の果菜、草花等を露地栽培する畑や蔬菜園、ビニルハウス、果樹園等の灌水に好適に用いられる。上記の撒液用チューブを使用する際には、例えば、撒布を所望する撒布領域の広さ等を考慮して適宜地面等に敷設すればよい。
【0025】
尚、本発明にかかる撒液用チューブにより撒布される液体は、水に限定されるものではない。例えば、撒液用チューブを農業や施設園芸等に供することにより、殺虫剤や殺菌剤等の農薬、液体肥料等を好適に撒布することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の撒液用チューブは、以上のように、一対のフィンが、仮想水平面と撒液用チューブ本体の外周面との交線上に位置するように、撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられている構成である。
【0027】
設けられる一対のフィンは、撒液用チューブに通液した場合に、撒液用チューブ本体が反転したり、蛇行したりしないための支えとなる。このため、撒液用チューブは、例えば耕地に敷設されたときに、撒液用チューブ本体における局部部分の反転や折れを防ぐことができる。これにより、撒液用チューブ本体は安定し、従って、撒液用チューブ本体をほぼ一直線状になるように簡単にかつ容易に敷設することができる。
また、マルチフィルムにより撒液用チューブ本体の上側外周面を被うときに、撒液用チューブ本体の下側外周面とマルチフィルムとの間に空間を確実に形成することができる。これにより、下側外周面に穿設される撒液用孔がマルチフィルムにより塞がることはない。従って、苗の栽培中常に撒液むらを生じることなく、撒液を均一に行うことができる。
また、仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に複数の撒液用孔が穿設され、下側外周面に穿設される撒液用孔からフィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離が、上側外周面に穿設される撒液用孔から該フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離より短くなるように形成されている。このため、撒液用チューブは、例えば苗の定植の際には、上側外周面に穿設される撒液用孔から液体を上部に噴出することができる。また、苗の定植後には、下側外周面に穿設される撒液用孔からマルチフィルム下で液体を耕地に撒布することができる。これにより、前記のような2種の栽培様式に適する撒液方式に対応させて用いることができる。
【0028】
さらにまた、フィンの厚さ寸法をチューブ本体の厚さ寸法と同等程度又はそれよりも大きく設定することができる。これにより、従来のようにチューブ本体に折り目がつき難くなり、折り畳んで偏平状にした撒液用チューブの幅方向における両側端部を補強することができるという効果を奏する。
【0029】
本発明の請求項2記載の撒液用チューブは、以上のように、下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されている構成である。
【0030】
このため、撒液用チューブは、下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成されることによって、耕地面に接触又は近接する小孔が現れず、該小孔にゴミや砂等がはまり込み目づまりを発生することを防ぐことができ、又、撒液用チューブ内の底に徐々に蓄積するようなゴミや砂等による目づまりも防ぐことができる。また、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されることによって、上部からの細かい雨状の撒液が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例における撒液用チューブの通液時の斜視図である。
【図2】 本発明の一実施例における撒液用チューブの通液時の撒液状態を示す図である。図中の点線は撒液用孔から噴出される撒液の流れを表している。
【図3】 上記撒液用チューブの非通液時の断面図である。上段図は仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面とも凸状で撒液用チューブ本体がほぼ線対称な偏平状になる例である。中段図は仮想水平面に対し上側又は下側のいずれか一方の撒液用チューブ本体の外周面が凸状で、かつ他方が凹状で撒液用チューブ本体が非線対称な偏平状になる例を示すものである。下段図は撒液用チューブ本体がきわめて高い偏平率で偏平状になる例である。
【図4】 本発明の一実施例における撒液用チューブの通液時の断面図である。
【図5】 本発明の一実施例における撒液用チューブの通液時の撒液状態を示す図である。図中の点線は撒液用孔から噴出される撒液の流れを表している。
【図6】 本発明の一実施例における撒液用チューブのマルチフィルム下での通液時の撒液状態を示す図である。図中の点線は撒液用孔から吐出される撒液の流れを表している。
【図7】 撒液用チューブのフィンの変形例を示すものであり、該撒液用チューブの通液時の斜視図である。フィンは、該撒液用チューブ本体の長手方向に断続的に設けられている例を示すものである。
【図8】 撒液用チューブの通液時の撒液状態を示すものであり、該撒液用チューブの通液時の断面図である。仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に1列状に形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に1列状に形成されている配置様式の例を示すものである。図中の点線は撒液用孔から吐出される撒液の流れを表している。
該図では、仮想水平面に対し上側外周面及び/又は下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面及び/又は下側外周面を二等分する仮想中央線に対し両側又は片側の撒液用チューブ本体の外周面に形成されている配置様式を各々に区分して4種類示している。
【図9】 撒液用チューブの通液時の撒液状態を示すものであり、該撒液用チューブの通液時の断面図である。仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に2列状に形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に1列状に形成されている配置様式の例を示すものである。図中の点線は撒液用孔から噴出される撒液の流れを表している。
該図では、仮想水平面に対し上側外周面及び/又は下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面及び/又は下側外周面を二等分する仮想中央線に対し両側又は片側の撒液用チューブ本体の外周面に形成されている配置様式を各々に区分して4種類示している。
【図10】 撒液用チューブの通液時の撒液状態を示すものであり、該撒液用チューブの通液時の断面図である。仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に3列状に形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に1列状に形成されている配置様式の例を示すものである。図中の点線は撒液用孔から噴出される撒液の流れを表している。
該図では、仮想水平面に対し上側外周面及び/又は下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面及び/又は下側外周面を二等分する仮想中央線に対し両側又は片側の撒液用チューブ本体の外周面に形成されている配置様式を各々に区分して4種類示している。
【図11】 撒液用チューブに穿設される撒液用孔の該撒液用チューブ本体における配置様式の例を示すものであり、該撒液用チューブの非通液時の外周面を仮想水平面に対し上側及び下側に区分し、各々の撒液用チューブの外周面を上部及び下部から見た平面図として表すものである。該図では、撒液用孔の2種類の配置様式
1.(1−a)・(1−b)・・・仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔のうち、2小孔が接近している配置様式
2.(2−a)・(2−b)・・・仮想水平面に対し上側に穿設される撒液用孔同士が撒液用チューブ本体の長手方向に等間隔に形成されている配置様式
を示し、各々の配置様式について、仮想水平面に対し上側の撒液用チューブの外周面を上部から見た平面図を( −a)に示し、仮想水平線に対し下側の撒液用チューブの外周面を下部から見た平面図を( −b)に示した。
【図12】 撒液用チューブに穿設される撒液用孔の該撒液用チューブ本体における配置様式の例を示すものであり、該撒液用チューブの非通液時の外周面を仮想水平面に対し上側及び下側に区分し、各々の撒液用チューブの外周面を上部及び下部から見た平面図として表すものである。該図では、撒液用孔の3種類の配置様式
1.(3−a)・(3−b)・・・仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔同士が撒液用チューブ本体の長手方向に等間隔に形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔同士が撒液用チューブ本体の長手方向に等間隔に形成されている配置様式
2.(4−a)・(4−b)・・・仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線に対し片側のみの撒液用チューブ本体の外周面に形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って下面外周面を二等分する仮想中央線に対し片側のみの撒液用チューブ本体の外周面に形成されている配置様式
3.(5−a)・(5−b)・・・仮想水平面に対し上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に複数列形成され、かつ、仮想水平面に対し下側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に複数列状に形成されている配置様式
を示し、各々の配置様式について、仮想水平面に対し上側外周面の撒液用チューブの外周面を上部から見た平面図を( −a)に示し、仮想水平面に対し下側外周面の撒液用チューブの外周面を下部から見た平面図を( −b)に示した。
【図13】 撒液用チューブのフィンのヒートシール方式による成形製造例を示す図であり、(a)は熱板を使用して融着する、(b)は熱ロールを使用して融着する、(c)は熱風噴出機を使用して融着する、方法である。
【符号の説明】
1 撒液用チューブ本体
2 フィン
3 撒液用孔
4 仮想中央線
5 仮想水平線(通液時における撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の仮想水平面13との交線)
6 熱板
7 熱ロール
8 熱風噴出機
9 圧着ロール
10 フィルムの流れ
11 カッター
12 マルチフィルム
13 仮想水平面(仮想水平線5を通る水平面)
O 撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の中心

Claims (2)

  1. 撒液用チューブ本体は、非通液時には偏平状であり、通液時には丸みを帯びる長尺状管状体であって、
    一対のフィンが、通水時における上記撒液用チューブ本体の長手方向に直交する断面の略中心を通る仮想水平面(以下、仮想水平面と記す。)と撒液用チューブ本体の外周面との交線上に位置するように、上記撒液用チューブ本体の外周面に長手方向に設けられ、
    仮想水平面に対し上側及び下側の各々の撒液用チューブ本体の外周面(以下、上側外周面及び下側外周面と記す。)に長手方向に複数の撒液用孔がある繰り返しパターンを有するように穿設されてなり、
    下側外周面に穿設される撒液用孔から上記フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離が、上側外周面に穿設される撒液用孔から該フィンまでの撒液用チューブの外周面に沿った最短距離より短くなるように形成されている
    ことを特徴とする撒液用チューブ。
  2. 下側外周面に穿設される撒液用孔がフィンの近傍に位置するように形成され、かつ、上側外周面に穿設される撒液用孔が撒液用チューブ本体の長手方向に沿って上側外周面を二等分する仮想中央線の近傍に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の撒液用チューブ。
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