JP3658674B2 - トンネルの補修工法および補修装置 - Google Patents

トンネルの補修工法および補修装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトンネルの補修を合理的かつ迅速に行ない、工期の短縮と工費の低減を図るとともに、補修後のトンネルの強度と能力を向上できるようにしたトンネルの補修工法および補修装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば水力発電用の水路用トンネルは、水に混入した砂利等によって内面が経年的に浸食され、その流体摩擦が次第に増大して流量欠損が顕著になり、発電電力量に影響を生ずるようになるため、定期的にトンネルを補修する必要がある。
【0003】
従来、トンネルの補修工法として、例えば特開平7ー42496号公報では、トンネル内面をはつり後コンクリートで覆工し、その覆工面を補修前のトンネル内面より内側に張り出して施工している。
【0004】
しかし、この補修工法は、トンネル内にはつり機や覆工装置の搬入を要して、小さな内空断面積のトンネルには適用できず、またコンクリートの覆工に際しては、支保工の組み付けや金網の敷設を要して作業が煩雑になり、しかも補修後のトンネルが断面欠損をしているため、導水量が低下し発電電力量が低下して、トンネルの能力が低下してしまう、等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、トンネルの補修を合理的かつ迅速に行ない、工期の短縮と工費の低減を図るとともに、補修後のトンネルの強度と能力を向上できるようにしたトンネルの補修工法および補修装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、覆工壁側に偏在し、かつトンネルと同軸方向に配置する回転軸を備えたカッタ−を設け、該カッタ−をトンネルの円周方向に旋回して覆工壁を切削し、該切削面に複数の覆工補強枠を円周方向に組み付け、前記切削面と覆工補強枠との間に填充材を充填するトンネルの補修工法において、前記カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回し、前記覆工壁の円周方向の全域を切削することによって、覆工壁の切削を合理的かつ速やかに行なえ、トンネルの補修工期の短縮化と工費の低減を図るようにしている。
請求項2の発明は、前記覆工補強枠の内面を、切削面のトンネル内面と略同位置に配置するようにして、補修前後のトンネルの内空面積を略同一にし、補修前後に亘って同様な利用を図れるようにして、例えば水路トンネルの場合に水量低下を防止するようにしている。
請求項3の発明は、覆工壁側に偏在し、かつトンネルと同軸方向に配置する回転軸を備えたカッタ−を設け、該カッタ−をトンネルの円周方向に旋回可能にしたトンネルの補修装置において、前記カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回可能に設け、前記覆工壁の円周方向の全域を切削可能にして、構成および操作が簡単で切削を合理的かつ速やかに行なえ、工期の短縮化と工費の低減を図れるようにしている。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を小形の水路用トンネルの補修に適用した図示の実施形態により説明すると、図1乃至図7において1は円形の内空断面を有する水路用のトンネルで、地山2に被補修部であるコンクリート製の覆工壁3が形成され、該壁3の内面を補修装置4で切削している。
実施形態の場合、上記トンネル1の内径は、205cm〜235cmで鉄道用および道路用トンネルに比べて、非常に小形である。
【0008】
補修装置4は、覆工壁3の内面と略同径の円筒体からなる前胴5と後胴6とで構成され、前胴5の後端部に後胴6の前端部が摺動可能に嵌合され、それらの両端を軸方向に伸縮可能な複数の掘進ジャッキ7で連結している。
前胴5には複数のサイドジャッキ8が外側へ突出可能に設けられ、該ジャッキ8の先端にグリッパプレート9が連結され、これを覆工壁3の内面に接地可能にしている。
図中、10は前胴5の周面に下向きに突設したピッチングジャッキで、その先端を覆工壁3の内面に接地可能にしている。
【0009】
前胴5の前部には、油圧モータ等の一対のカッター旋回用モータ11が設けられ、該モータ11の出力軸に駆動ギヤ12が連結されていて、これらのギヤ12,12がリングギヤ13に噛合している。
リングギヤ13は軸受14を介して、前胴5の軸心を中心に回動可能に設けられ、該ギヤ13にカッター15が同動可能に設けられている。
【0010】
カッター15はドラム状に形成され、その内部にカッター駆動用モータと減速機(図示略)とを装備していて、その基端部をカッター位置調整ジャッキ16に連係している。
カッター位置調整ジャッキ16は、リングギヤ13の放射方向に伸縮可能に設けられ、その先端に連結したカッター15の位置を上記方向へ調整可能にしていて、実施形態の場合、カッター15の外周を前胴5の内側から外側に亙って調整可能にしている。
【0011】
図中、17は前胴5の前端部に設けた凹状の土溜りで、該土溜り17の下端に真空吸引装置(図示略)に連通する排土管18の一端が配置され、その他端が後胴6の後方へ配管されている。
後胴6の内部には、リング状のエレクタ19がガイド20を介して後胴6の軸心を中心に回動可能に設けられ、その一端に複数の吸着具21、この実施形態ではバキュームグリップを備えたエレクタ22の基端部が回動可能に枢着されていて、後胴6に搬入した覆工補強枠23を吸着保持し、これを所定位置へ移動可能にしている。
【0012】
覆工補強枠23は実施形態の場合、堅牢なF.R.P等の合成樹脂で構成され、これはトンネル1の内面と略同形な円弧状の曲面板に成形され、その板厚は2.0cm〜2.5cmで、その軸方向の両端に互いに係合可能な凸部24と凹部25とを備え、これらを後胴6内の円周方向に配置し、かつ隣接する覆工補強枠23とは凹凸部25,24を係合して組み付けている。
【0013】
図中、26は覆工補強枠23の外周面に形成した補強凸部で、トンネル1の円周方向に沿ってビード状に形成され、該補強枠23と覆工壁3との間にモルタルやコンクリート等の填充材27を充填している。
28は後胴6の後端部に突設した逆テールシールで、填充材27を裏込め注入する際、覆工壁3と後胴6との空隙を閉塞可能にしている。
【0014】
このように構成したトンネルの補修工法および補修装置を用いてトンネル1を補修する場合は、覆工補強枠23の製作を要する。
覆工補強枠23は実施形態の場合、合成樹脂製であるから、従来のコンクリートまたは鋼鉄製のセグメントに比べて、これを安価かつ容易に製作でき、しかも軽量であるから、その取り扱いが至便になる。
【0015】
次にトンネル1を実際に補修する場合は、トンネル1の開口端部に補修装置4を搬入し、グリッパジャッキ8とピッチングジャッキ10とを操作して、これらをトンネル1の内面に押し当て、補修装置4を固定する。
【0016】
この後、カッター旋回用モータ11,11を駆動し、それらの駆動ギヤ12,12を同方向に回転させると、これらのギヤ12,12と噛合するリングギヤ13が前胴5の軸心を中心に回転し、該ギヤ13に一体的に装着したカッター15が上記ギヤ13と同動して、トンネル1の円周方向に旋回する。
【0017】
一方、これと前後してカッター15を駆動回転させ、またカッター位置調整ジャッキ16を操作し、これを所要量伸縮させて、覆工壁3の補修に必要なカッター15の切削量を調整する。
実施形態の場合、カッター15の調整範囲は、図2のようにカッター外面が前胴5の外側に突出する最大位置から、前胴5の内側に位置する最小位置に設定されている。
【0018】
上記調整後、当該状態を維持して、カッター15を回転させながらトンネル1の円周方向に旋回し、覆工壁3内面の凹凸部や粗面部を切削して除去する。
この場合、カッター15はリングギヤ13に沿って真円状に旋回するから、その軌跡はリングギヤ13と同心円の真円を描き、覆工壁3の内面を正確かつ精密に切削する。
しかも、上記切削代は覆工壁3の補修に必要な最小限に抑制しているから、覆工壁3を全て切削する補修法に比べて、切削量を可及的に抑制し、切削作業の小規模化とその短期化を図れるとともに、工事の安全性を確保する。
【0019】
こうして、カッター15がトンネル1の円周方向に一旋回し、覆工壁3の内面をカッター15の幅分切削したところで、カッター旋回用モータ11,11の駆動を停止し、カッター15の旋回を停止するとともに、カッター15の回転を停止する。
そして、サイドジャッキ9とピッチングジャッキ10とを縮小し、これらを覆工壁3から引き離し後、掘進ジャッキ7を縮小し、前胴5を反力端にして後胴6を前胴5側へ引き寄せ、後胴6をトンネル1内に引き入れる。
【0020】
次に掘進ジャッキ7を伸長し、後胴6を反力端にして前胴5を前方へ押し出し、これにカッター15を同動させて、該カッター15をその幅分前方へ移動させたところで、サイドジャッキ9とピッチングジャッキ10とを伸長し、これらを覆工壁3に押し当て、補修装置4を固定する。
【0021】
この後、カッター旋回用モータ11,11を駆動し、カッター15をトンネル1の円周方向に旋回するとともに、カッター15を駆動回転させ、またカッター位置調整ジャッキ16を前述と同様に伸縮調整して、カッター15を回転させながらトンネル1の円周方向に旋回し、覆工壁3内面の凹凸部や粗面部を切削し除去する。
【0022】
こうして、カッター15がトンネル1の円周方向に一旋回し、覆工壁3の内面をカッター15の幅分切削したところで、カッター旋回用モータ11,11の駆動を停止し、カッター15の旋回を停止するとともに、カッター15の回転を停止する。
そして、前述と同様にサイドジャッキ9とピッチングジャッキ10とを縮小し、これらを覆工壁3から引き離し後、掘進ジャッキ7を縮小し、前胴5を反力端にして後胴6を前胴5側へ引き寄せ、後胴6をトンネル1内に引き入れる。
【0023】
次に掘進ジャッキ7を伸長し、後胴6を反力端にして前胴5を前方へ押し出し、これにカッター15を同動させて、該カッター15をその幅分前方へ移動させたところで、サイドジャッキ9とピッチングジャッキ10とを伸長し、これらを覆工壁3に押し当て、補修装置4を固定する。
【0024】
この後、カッター旋回用モータ11,11を駆動し、カッター15をトンネル1の円周方向に旋回するとともに、カッター15を駆動回転させ、またカッター位置調整ジャッキ16を前述と同様に伸縮調整して、カッター15を回転させながらトンネル1の円周方向に旋回し、覆工壁3内面の凹凸部や粗面部を切削し除去する。
【0025】
以後、補修装置4は前胴5と後胴6とを交互に伸縮させて蠕動しながらトンネル1内を移動し、同時にカッター15による切削が進行する。
この場合、後胴6内には合成樹脂製の覆工補強枠23が搬入されているから、これが従来の鋼鉄若しくはコンクリート製のセグメントに比べて軽量で、後胴6の動作が円滑かつ軽快になり、このための掘進ジャッキ7の小能力化を図れる。
また、切削片はトンネル1の底部に落下し、これが前胴5の前進時に掬われて土溜り17に収容され、排土管18に吸引されてトンネル1の外部に搬出される
【0026】
こうして覆工壁3が所定幅切削され、実施形態ではカッター15の幅の略3倍分切削したところで、エレクタ19,22を駆使し作業者が覆工補強枠23を組み付ける。
覆工補強枠23は予め後胴6に所定量搬入され、その平滑な内面、つまり補強凸部26と反対側をエレクタ22を介して吸着具21で保持し、この後エレクタ19を回動し、エレクタ22をトンネル1の円周方向に旋回させて、覆工補強枠23を切削後の覆工壁3の所定位置に位置付ける。
【0027】
すなわち、覆工補強枠23は補強凸部26を外側にして、覆工壁3の切削面の内側に位置付けられ、かつその内面は切削前の覆工壁3の内面と同位置に配置されていて、軸方向に隣接する覆工補強枠23に対し、それらの凹凸部24,25を係合して連結され、円周に隣接する覆工補強枠23に対しては、それらの端面を突き合わせて組み付ける。
【0028】
このように覆工補強枠23の組み付けに際しては、凹凸部24,25を係合して連結しているから、従来のセグメントのような煩雑なボルト締め作業を要せず簡便に行なえ、しかも上記補強枠23は堅固で大重量のセグメントに比べて、合成樹脂製で軽量であるから、上記係合作業やその移動作業を容易に行なえる。
【0029】
こうして覆工補強枠23を後胴6内で組み付け、これが後胴6の前進に伴って後胴6から抜け出て、覆工壁3の切削面と相対したところで、注入ホース(図示略)を天端側または底部側の覆工補強枠23の所定位置に差し込み、該ホースにモルタル等の填充材27を圧送し、該填充材27を覆工壁3と覆工補強枠23との間で、逆テールシール28と事前に打設した填充材27との間に充填する。
その際、逆テールシール28を介して、後胴6の後端部外周の填充材27の打設スペースを閉塞し、当該部以前の填充材27の充填を阻止する。
【0030】
填充材27は上記打設スペース内を下方から充填し、その注入圧が覆工補強枠23の内側、つまりトンネル1の中心方向に座屈荷重として作用する一方、覆工補強枠23は外側に突設した補強凸部26によって、剛性が向上し上記座屈荷重に対抗する。
【0031】
填充材27は充填後硬化し、該填充材27に覆工補強枠23の補強凸部26が埋め込まれて、填充材27との一体性が向上するとともに、覆工補強枠23によってトンネル1の内面を支持しているから、従来のような無筋コンクリートによる補修法に比べて、大きな曲げ応力や引張荷重、圧縮荷重に耐えられ、トンネル強度が向上する。
しかも、覆工補強枠23には前述のように、填充材27の注入圧による座屈応力が作用し、つまりプリストレス状態に置かれているから、これがトンネル1内を流れる用水の水圧に対抗し得、その分高水圧に耐えられる。
【0032】
また、覆工補強枠23の内面は切削前のトンネル1の内面と同径に形成されているから、補修の前後においてトンネル1の断面欠損がなく、補修前と同様な導水量と発電電力量を得られる。
しかも、用水に接する覆工補強枠23の内面は平滑面に形成され、従来のようなコンクリート製の接触面に比べて、表面粗度が小さく流体摩擦を抑制できるから、安定した導水量と発電電力量とを確保できる。
【0033】
こうして、覆工壁3の内面を切削しながら覆工補強枠23を組み付け、該枠23と覆工壁3との間に填充材27を裏込め注入し、トンネル1の補修を行なう。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回し、前記覆工壁の円周方向の全域を切削するようにしたから、覆工壁の切削を合理的かつ速やかに行なえ、トンネルの補修工期の短縮化と工費の低減を図ることができる。
請求項2の発明は、前記覆工補強枠の内面を、切削面のトンネル内面と略同位置に配置するようにしたから、補修前後のトンネルの内空面積を略同一にし、補修前後に亘って同様な利用を図れ、例えば水路トンネルの場合に水量低下を防止することができる。
請求項3の発明は、カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回可能に設け、覆工壁の円周方向の全域を切削可能にしたから、構成および操作が簡単で、覆工壁の切削を合理的かつ速やかに行なえ、工期の短縮化と工費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図で、トンネル補修の施工状況を示している。
【図2】本発明の補修装置の実施形態を示す断面図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図2の右側面図である。
【図5】本発明による補修部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明に適用した覆工補強枠の実施形態を示す斜視図である。
【図7】図1のAーA線に沿う断面図で、若干拡大図示している。
【符号の説明】
1 トンネル
3 覆工壁
4 補修装置
5 前胴
6 後胴
7 掘進ジャッキ
15 カッター
23 覆工補強枠
26 補強凸部
27 填充材

Claims (3)

  1. 覆工壁側に偏在し、かつトンネルと同軸方向に配置する回転軸を備えたカッタ−を設け、該カッタ−をトンネルの円周方向に旋回して覆工壁を切削し、該切削面に複数の覆工補強枠を円周方向に組み付け、前記切削面と覆工補強枠との間に填充材を充填するトンネルの補修工法において、前記カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回し、前記覆工壁の円周方向の全域を切削することを特徴とするトンネルの補修工法。
  2. 前記覆工補強枠の内面を、切削前のトンネル内面と略同位置に配置する請求項1記載のトンネルの補修工法。
  3. 覆工壁側に偏在し、かつトンネルと同軸方向に配置する回転軸を備えたカッタ−を設け、該カッタ−をトンネルの円周方向に旋回可能にしたトンネルの補修装置において、前記カッタ−をトンネルの円周方向の全域に亘って旋回可能に設け、前記覆工壁の円周方向の全域を切削可能にしたことを特徴とするトンネルの補修装置。
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