JP3657836B2 - 除振継ぎ手 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と、振動発生源となる真空ポンプ、空気圧縮機、冷凍機、液送ポンプのような装置との連結、あるいは、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と、上記のような振動発生源が連結された真空容器あるいは床振動等の除振が不可能な真空容器との連結など、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と振動発生源が真空保持等のために隔絶できない場合において、振動発生源からの振動を除振し連結が可能な除振継ぎ手に関する。
【0002】
また、これら真空容器の連結においては、例えば、放射光を用いた露光装置のように光源から精密機器までの距離が定められており、連結部位における間隔の変化が許容されないような装置間の除振連結において、振動発生源からの振動を除振しかつ連結部位における間隔を一定に保って連結が可能な除振継ぎ手に関する。
【0003】
【従来の技術】
半導体の微細化の進展により、露光装置や検査装置等の半導体装置においては、ナノメートルオーダーの精度を要求されるようになってきている。これらの精密装置では、床振動や装置内で発生する振動が精度低下の大きな要因となるため、装置の除振が非常に重要になる。一方、成膜装置やエッチング装置等の半導体のプロセス装置の大半は真空装置であり、これらの装置においては、装置内の真空容器間でプロセスウェハを真空用ロボットで搬送している。半導体の微細化は今後ますます進展し、露光装置の光源は真空紫外線、電子あるいはイオンビーム等の荷電粒子線が用いられるようになり、真空あるいは減圧雰囲気が必須となり、ナノメートルオーダーの精度を要求される精密装置が真空容器に格納されることになる。また、露光装置が真空装置になれば、プロセスウェハの汚染を回避する目的から、露光装置と他のプロセス装置は真空的に連結され、搬送ロボットにより大気に暴露されることなく装置間を搬送されることになる。
【0004】
しかしながら、真空装置の除振においては、真空ポンプ等の排気装置は多くの場合それ自身が振動源であり、真空的に保持した状態で振動を遮断することは相反することになり実現が困難であった。また、半導体製造ライン全体を除振するのは、コスト的に採算がとれず、除振を必要とする真空精密装置と他の除振されていない真空装置との連結が必要となり、真空ポンプ以外にこれら除振されていない真空容器も振動源となる。
【0005】
これまでの真空容器の除振においては、真空容器に連結される真空ポンプ等をベローズを用いて真空的に保持した状態で連結し、真空によってベローズがつぶれようとする力を、ゴム等の弾性構造体によって支えたり、直角エルボーの両端に設けられたベローズを直交するワイヤーによって支えたり(特開平8−145270号)する継ぎ手が用いられた。しかし、ゴム等の弾性構造体を用いた継ぎ手では、ゴム等の弾性構造体を介して振動が一部伝達したり、真空と大気圧との差圧によって生じる力によりゴム等の弾性構造体が変形し、ロボットアーム等でウェハを搬送するような連結部位における距離の精度が要求される半導体装置間の連結には使えないなどの難点があった。また、直角エルボーで連結する継ぎ手では、直線的な接続ができず、継ぎ手の連結部を介してロボットアーム等でのウェハの搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過には使えないなどの難点があった。
【0006】
また、真空保持を必要としない通常の床振動の除振においては、除振台が広く用いられている。これらは、ハニカム構造あるいは石等でできたテーブルを、空気バネとしてベロクティブ制御された除振機構により支持し、テーブル上に振動源から隔絶した状態で精密機器を搭載するものである。これら除振台は、テーブル上に精密機器を隔絶した状態で搭載する必要があり、真空機器との接続あるいは他の真空容器との接続には不向きでありこのような用途に用いることは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と振動発生源を真空的に保持した状態で、振動発生源からの振動を遮断し、かつ、連結部位における距離を一定に保って除振連結が可能な除振継ぎ手を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明の除振継ぎ手は、両端の取り付けフランジが正対し内部の中空ベローズは直線的に接続され、かつ、基本的に取り付け方向が自由であるため、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と、真空ポンプ等の振動発生源の接続のみならず、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と、上記のような振動発生源が連結された真空容器あるいは床振動等の除振が不可能な真空容器との連結など、接続方法に関する制限を排し、継ぎ手を介してのロボットアーム等でのウェハの搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過を可能とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の除振継ぎ手は、ベースプレートに一端を固定されたベローズと、前記ベローズの両端間の距離を一定に保つように支持する第1の弾性構造体と、前記ベローズに力を作用するように配置された第2の弾性構造体とを備え、前記第2の弾性構造体から前記ベローズに作用する前記力の方向が、前記ベローズの両端間が所定の距離にあるとき前記ベローズの中心軸に垂直な方向となり、前記ベローズの両端間の距離が前記所定の距離からずれた状態にあるときそのずれを拡大する方向となるように構成されことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記ベローズの両端間が前記所定の距離にあるとき前記第2の弾性構造体から前記ベローズに作用する力がゼロとなるように構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記第2の弾性構造体は圧縮状態に配置されることにより生じる復元力が前記ベローズに作用するように構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記第2の弾性構造体は、一部を前記ベースプレートに固定され、かつ、座屈形状に配置された板バネであることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記第1の弾性構造体は、バネであることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記第1の弾性構造体は、前記バネに加えて、前記ベローズ間の距離を測定する変位検出器と、前記変位検出器により測定された値が一定になるように伸縮して調整する空気静圧アクチュエータと、前記変位検出器及び空気静圧アクチュエータを制御する振動抑制制御器とから構成されることを特徴とするものである。
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記ベローズ内の圧力が大気圧より低く、外部が大気圧であることを特徴とするものである。
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記ベローズ内の圧力が大気圧より高い流体で、外部が大気圧であることを特徴とするものである。
また本発明は、前記除振継ぎ手において、前記ベローズの両端にフランジを有し、そのフランジは正対し、前記ベローズの中心軸と直交することを特徴とするものである。
【0015】
本発明は、両端にフランジを有する中空ベローズとベローズ内を真空にした際に両端フランジに発生する力を支え、かつ両端フランジの振動を伝達しないような懸架機構とからなる。両端のフランジは正対し、ベローズの中心軸と直交するため、継ぎ手を介しての、ロボットアーム等でのウェハを搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過を可能とすることを特徴とする。懸架機構は両端のフランジに連結された一対のベースプレートと、フランジ間に配置され、ベローズ内を真空にした際に両端フランジに発生する力を支えるバネ等の弾性構造体と、この弾性構造体の共振周波数を低くする除振機構とからなる。
【0016】
ベローズ内を真空あるいは高圧にした際にベローズ内外の差圧により両端フランジに発生する力と弾性構造体の反発力が釣り合うように弾性構造体を設計することにより、使用状態においてフランジの間隔を一定に保つことが可能となる。これまでのゴム等の弾性構造体を用いた継ぎ手では、ゴム等の弾性構造体に差圧により発生する力の支持と除振の二つの機能を持たせていたが、この場合、ゴム等の弾性構造体を介して振動が一部伝達することを防ぐことができなかったり、ゴム等の弾性構造体の変形によりフランジ間隔が変化してしまったりの問題があった。本発明においては、懸架機構が有する弾性構造体の高剛性のバネ等を用いて、差圧により発生する力を支持しあくまでフランジ間隔を一定に保つことを目的に用いる点が異なる。これにより、大口径のベローズを用いたり、高圧の流体を流す場合においても、バネ等の弾性構造体の反発力を最適に設計することにより、同様の性能を得ることができる。
【0017】
本発明においては、懸架機構が有する弾性構造体に高剛性のバネ等を用いることにより、懸架機構の持つ共振周波数が高くなり懸架機構を介して振動が伝達することを、懸架機構の持つ除振機構により実効的に懸架機構の持つ共振周波数を下げることにより除振を実現する。
【0018】
座屈形状の弾性構造体からなる受動型機構を用いる場合には、板バネ等の座屈形状の弾性構造体を差圧を支持するバネ等の弾性構造体に対し直交するように配置し、板バネにあらかじめ力をかけて座屈させることにより、負の剛性により実効的にバネ等のバネ定数を小さくする。座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構により、実効的な懸架機構の固有振動数を極めて低い値にし振動を伝達しないようにする機構に関しては、重量搭載物を除振支持する除振台として用いられているが、本発明においては、懸架機構が有する弾性構造体に高剛性のバネ等を用いることにより、懸架機構の持つ共振周波数が高くなり懸架機構を介して振動が伝達することを防ぐための除振機構として用いており、振動を遮断するための除振機構としては、座屈形状の弾性構造体からなる受動型機構に変えて、変位検出器とアクチュエータと振動抑制制御器とから構成された能動型除振機構を用いることも可能である。
【0019】
本発明の除振継ぎ手は、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と振動発生源をベローズにより連結し、真空的に保持した状態で、懸架機構に内蔵されたバネによりベローズ内を真空にした際に両端フランジに発生する力とバネの反発力との釣り合いにより、ベローズが真空による差圧でつぶれること無く支持し、フランジの面間隔を一定に保つことを実現する。さらに、この釣り合いの位置において、負の剛性を持つバネ機構により、フランジ両端に発生する力を支えるバネのバネ定数を実効的にほとんどゼロまで小さくすることによって、懸架機構全体の共振周波数を極めて低く抑え、フランジ両端での振動の伝達を遮断することを可能とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態例を詳細に説明する。
【0021】
[実施形態例1]
図1は本発明の実施形態例1であり、座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構を有する方式の除振継ぎ手を説明する図である。座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構により、実効的な懸架機構の固有振動数を極めて低い値にし振動を伝達しないようにする機構に関しては、例えば、特表平8−504255号や特表平9−508195号に見ることができるが、本発明では、重量搭載物を除振支持する変わりに、両端にフランジを有するベローズからなる配管が、大気圧との差圧から発生する力を受け収縮あるいは伸張しようとするのを、ベローズの外周に配置したバネにより支持し、かつ、懸架機構の固有振動数を極めて低い値にするために座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構を用いるものであり、座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構はあくまで一つの除振機構の例に過ぎない。以下に、図1により、ベローズ内が真空である場合を例にとり説明する。
【0022】
1は除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器へ接続するための真空フランジ、2は真空ポンプ等の振動発生源、あるいは、振動発生源が連結された真空容器あるいは床振動等の除振が不可能な真空容器との連結をするためのフランジ、3は真空を保持する中空ベローズ、4はベローズ3内を真空にした際に両端フランジ1,2に発生する力を支えるバネ、5は座屈形状の弾性構造体の持つ負の剛性により実効的にバネ4のバネ定数を小さくする除振機構、6はフランジ1と連結されたベースプレート、7はフランジ2と連結されたベースプレートである。
【0023】
フランジ1と2はベローズ3により真空的に連結されており、かつ、フランジ1と2は正対し、ベローズ3の中心軸と直交するため、ベローズ3を介しての、ロボットアーム等でのウェハの搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過が可能である。フランジ1と2はそれぞれベースプレート6と7に固定され、ベローズ3により真空的に連結されており、かつ、フランジ1と2の間にはバネ4が配置される。バネ4は、ベローズ3内を真空にした際に両端のフランジ1,2に発生する力を支えるように設計され、その力F0 は、ベローズ3の内径をd、ベローズ3内の真空と大気との差圧をPとすると、
0 =(π/4)d2
である。本実施形態例1では、このベローズ3内を真空にした際にフランジ1,2に発生する力を支持するバネ4の配置としてベローズ3と同軸に配置した1つのバネ4を用いているが、ベローズ3の外径の外側に配置し、かつすべてのバネを総合したバネ定数kがF0 を支持するに満足すれば、ベローズ3の外側のある円周をn等分する位置に、n本のバネを配置しても発明の効果は、なんら変わりがない。また、本実施形態例1では中空ベローズ3内の圧力が真空で、外側が大気圧の場合について説明しているが、中空ベローズ内が高圧のガスあるいは液体等の流体で、外側が大気圧の場合についても、高圧の流体と大気圧との差圧Pを用いることにより、全く同様に用いることが可能である。
【0024】
フランジ1および2をそれぞれ機器に接続し、ベローズ3内を真空にすると、フランジ1,2には真空と大気圧との差圧によりF0 なる力が発生し、ベローズ3が収縮するが、これによりバネ4には収縮量x0 に比例してkx0 なる反発力が発生し、F1 =kx0 となる位置で釣り合う。これにより、フランジ1および2はベローズ3で真空配管され、バネ4により支持されることになるが、この状態では懸架機構はkのバネ定数で定まる固有振動数で振動することになり、一般的にF0 として比較的大きな力を支える必要があるため、バネ定数kは大きくなり懸架機構全体はバネ4を介してフランジ2からフランジ1へと振動発生源の振動を伝達してしまうことになる。
【0025】
そこで、バネ4と直交する位置に配置された除振機構5の板バネに両側から板バネを圧縮する方向にあらかじめ力をかけ座屈状態にして、図1の矢印A方向に力が加わる状態にしておくと、バネ4の伸縮の変位方向の変位に対してバネ4と除振機構5のバネで生じる力を打ち消しあうことが可能になる。すなわち、バネ4の伸縮の変位方向に変位が発生しない釣り合いの位置では、これらあらかじめかけた力は互いにキャンセルし(図1)、ベローズの伸縮方向には何も力を及ぼさない。ひとたびいずれかの方向に変位Δxが発生すると、図2に示すように、板バネに加えられた力は、F3 で示すように変位を助長する方向に働く。逆にバネ4は変位Δxに対してF2 に示すように引き戻す方向に働く。従って、除振機構5の板バネの力を適当に選び、2F3 =F2 とすることにより、バネ4の釣り合いの位置の近傍において、バネ4の伸縮方向の変位に対してバネ4と除振機構5のバネで生じる力を打ち消しあうことが可能になる。これは、板バネ4がいわゆる正のバネ定数を持つのに対し、除振機構5の板バネが負のバネ定数を持つこととして考えることができる。この二つのバネのバランスにより、フランジ1,2に真空と大気圧との差圧により発生するF0 なる力をバネ4で支持するもののあたかもそのバネのバネ定数がゼロになったような挙動を示す。従って、この状態では懸架機構はkのバネ定数で定まる固有振動数は極めて低くなり、懸架機構全体はフランジ2からフランジ1へと振動発生源の振動を伝達しなくなる。これにより、本発明の除振懸架機構はベローズの中心軸と直交する方向に関する振動も遮断することができ、フランジの間隔を保持したままで、いかなる方向の振動も伝達しない除振継ぎ手を提供する。
【0026】
[実施形態例2]
図3は本発明の実施形態例2であり、変位検出器とアクチュエータと振動抑制制御器とから構成された能動型除振機構を有する方式の除振継ぎ手を説明する図である。1は除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器へ接続するための真空フランジ、2は真空ポンプ等の振動発生源、あるいは、振動発生源が連結された真空容器あるいは床振動等の除振が不可能な真空容器との連結をするためのフランジ、3は真空を保持する中空ベローズ、4はベローズ内を真空にした際にフランジ両端に発生する力を支えるバネ、6はフランジ1と連結されたベースプレート、7はフランジ2と連結されたベースプレート、8はベースプレート6と7間距離を測定する変位センサ、9は空気静圧アクチュエータ、10は空気ダンパ、11はピエゾアクチュエータ、12は流量調節弁、13は逃げ防止ばね、14は給気孔である。
【0027】
実施形態例1と同様に、フランジ1,2はベローズ3により真空的に連結されており、かつ、フランジ1と2は正対し、ベローズ3の中心軸と直交するため、ベローズ3を介しての、ロボットアーム等でのウェハを搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過が可能である。フランジ1,2はそれぞれベースプレート6,7に固定され、ベローズ3により真空的に連結されており、かつ、フランジ1と2の間にはバネ4が配置される。バネ4は、実施形態例1と同様に、ベローズ3内を真空にした際にフランジ1,2両端に発生する力を支えるように設計される。本実施形態例2では、このベローズ3内を真空にした際にフランジ1,2両端に発生する力を支持するバネ4の配置としてベローズ3と同軸に配置した1つのバネ4を用いているが、ベローズ3の外径の外側に配置し、かつすべてのバネを総合したバネ定数kがベローズ3内を真空にした際にフランジ1,2両端に発生する力を支持するに満足すれば、ベローズ3の外側のある円周をn等分する位置に、n本のバネを配置しても発明の効果は、なんら変わりがない。また、本実施形態例2では中空ベローズ3内の圧力が真空で、外側が大気圧の場合について説明しているが、中空ベローズ内が高圧のガスあるいは液体等の流体で、外側が大気圧の場合についても、高圧の流体と大気圧との差圧Pを用いることにより、全く同様に用いることが可能である。
【0028】
フランジ1,2をそれぞれ機器に接続し、ベローズ3内を真空にすると、両端のフランジ1,2には真空と大気圧との差圧による力が発生し、ベローズ3が収縮するが、これによりバネ4には収縮量に比例して反発力が発生し、これらの力が釣り合う位置で釣り合う。これにより、フランジ1,2はベローズ3で真空配管され、バネ4により支持されることになるが、この状態では懸架機構はバネ4のバネ定数で定まる固有振動数で振動することになり、一般的にバネ4は比較的大きな力を支える必要があるため、バネ定数kは大きくなり懸架機構全体はバネ4を介してフランジ2からフランジ1へと振動発生源の振動を伝達してしまうことになる。
【0029】
そこで、変位センサ8と空気静圧アクチュエータ9およびこれらを制御する振動抑制制御器とから構成された能動型除振機構によりベースプレート6と7間の距離を一定に保つように制御することにより、ベースプレート6と7の間の振動の伝達を遮断する。すなわち、ベースプレート6と7間距離は変位センサ8により測定され、測定された値が常に一定になるように、空気静圧アクチュエータ9を伸縮させ調整する。このような系の固有振動数はフランジ1,2に取り付けられた装置の等価質量と、空気静圧アクチュエータ9の弾性係数と弾性バネ4の弾性係数との和で決まる等価弾性係数とで決まり、非常に低く押さえることができる。このため、応答性の比較的遅い空気静圧アクチュエータであってもアクティブフィルタとして振動を伝達しない防振機能を実現することができる。
【0030】
空気静圧アクチュエータ9は、給気孔14から一定の静圧空気を給気し、この給気流量と流量調節弁12からの排気量とがバランスした一定の圧力で空気ダンパ10は膨らんでいる。ピエゾアクチュエータ11が伸びると流量調節弁12からの排気量が増え空気ダンパ10は縮み常に一定のアクチュエータ間隔を保つことが可能である。
【0031】
本実施形態例2では、空気静圧アクチュエータ9を用いた能動型除振機構について説明したが、変位センサ8で検出された変位量に対して、十分なストロークと応答性を有するアクチュエータであれば、いかなるアクチュエータを用いても発明の効果はなんら変わりがない。
【0032】
また、本実施形態例2では、実施形態例1において、受動型の除振機構を用いたのに対して、能動型の除振機構を用いる例について示したものであり、本発明の除振継ぎ手の除振機構について限定するものではない。すなわち、本実施形態例2においてもベローズ3の中心軸と直交する方向に関する振動の遮断については、実施形態例1で示した板バネ等のように、ベローズ3の中心軸と直交する方向に関して低い剛性を有するビームによりベースプレートに連結する方法を用いても良いし、実施形態例2においてベローズ3の中心軸方向に用いたのと同様に、変位検出器とアクチュエータと振動抑制制御器とから構成された能動型除振機構をベローズ3の中心軸と直交する方向に設けて用いても良い。
【0033】
本発明は、両端にフランジを有する中空ベローズであって、両端のフランジの振動を伝えない剛性の弱い中空ベローズと、該中空ベローズの内外の圧力差により発生する力とバランスしてフランジ間隔を一定に保つ懸架機構であって、両端のフランジの振動を伝えない除振機構を有する懸架機構とからなることを特徴とする除振継ぎ手であって、除振機構の構成の違いによっては発明の効果はなんら変わりがない。
【0034】
図4は本発明の実施形態例1を用いて実際に除振された実験データを示す。固定側(フランジ2側)の振動に比べて除振側(フランジ1側)の振動が減少していることが確認できる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、除振を必要とする精密装置等が格納された真空容器と、真空ポンプ等の振動発生源、あるいは振動発生源が連結された真空容器または床振動等の除振が不可能な真空容器とを連結し真空的に保持した状態で、懸架機構により、ベローズが真空による差圧でつぶれること無くフランジの面間隔を一定に保って支持し、かつ、両端のフランジでの振動の伝達を遮断することを可能とする。
【0036】
また、本発明は、直線的な配置をとることにより、接続方法に関する制限を排し、継ぎ手を介してのロボットアーム等でのウェハの搬送や、電子ビーム、イオンビーム、光等の透過を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例1を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態例1を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態例2を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態例1を用いて実際に除振された実験データを示す周波数−加速度特性図である。
【符号の説明】
1 真空フランジ
2 フランジ
3 中空ベローズ
4 バネ
5 除振機構
6 ベースプレート
7 ベーズプレート
8 変位センサ
9 空気静圧アクチュエータ
10 空気ダンパ
11 ピエゾアクチュエータ
12 流量調節弁
13 逃げ防止ばね
14 給気孔

Claims (9)

  1. ベースプレートに一端を固定されたベローズと、
    前記ベローズの両端間の距離を一定に保つように支持する第1の弾性構造体と、
    前記ベローズに力を作用するように配置された第2の弾性構造体と
    を備え、
    前記第2の弾性構造体から前記ベローズに作用する前記力の方向が、前記ベローズの両端間が所定の距離にあるとき前記ベローズの中心軸に垂直な方向となり、前記ベローズの両端間の距離が前記所定の距離からずれた状態にあるときそのずれを拡大する方向となるように構成されことを特徴とする除振継ぎ手。
  2. 請求項1記載の除振継ぎ手において、
    前記ベローズの両端間が前記所定の距離にあるとき前記第2の弾性構造体から前記ベローズに作用する力がゼロとなるように構成されたことを特徴とする除振継ぎ手。
  3. 請求項1又は2記載の除振継ぎ手において、
    前記第2の弾性構造体は圧縮状態に配置されることにより生じる復元力が前記ベローズに作用するように構成されたことを特徴とする除振継ぎ手。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の除振継ぎ手において、
    前記第2の弾性構造体は、一部を前記ベースプレートに固定され、かつ、座屈形状に配置された板バネであることを特徴とする除振継ぎ手。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の除振継ぎ手において、
    前記第1の弾性構造体は、バネであることを特徴とする除振継ぎ手。
  6. 請求項記載の除振継ぎ手において、
    前記第1の弾性構造体は、
    前記バネに加えて、
    前記ベローズ間の距離を測定する変位検出器と、
    前記変位検出器により測定された値が一定になるように伸縮して調整する空気静圧アクチュエータと、
    前記変位検出器及び空気静圧アクチュエータを制御する振動抑制制御器とから構成されることを特徴とする除振継ぎ手。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の除振継ぎ手において、
    前記ベローズ内の圧力が大気圧より低く、外部が大気圧であることを特徴とする除振継ぎ手。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の除振継ぎ手において、
    前記ベローズ内の圧力が大気圧より高い流体で、外部が大気圧であることを特徴とする除振継ぎ手。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の除振継ぎ手において、
    前記ベローズの両端にフランジを有し、そのフランジ正対し、前記ベローズの中心軸と直交することを特徴とする除振継ぎ手。
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