JP3657425B2 - 有機溶剤回収方法及び回収装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状に整形された活性炭素繊維(略語:ACF)を吸着要素とする吸着素子を吸着缶内に垂直に配置してなる溶剤回収装置及び該装置を用いた有機溶剤含有被処理ガスからの有機溶剤回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種工業において、洗浄工程、乾燥工程より排出される、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、MEK等のケトン類;トリクレン、パークレン等の塩素系溶媒等の各種有機溶剤を含有する排ガス(原ガス)をACFを吸着要素とした吸着素子に供給して吸着させ、該吸着素子を通過して清浄化された処理ガスを系外に排出すると共に、該有機溶剤を吸着している吸着素子に加熱気体(例:空気)や加熱水蒸気を供給して有機溶剤を脱着回収する工程は、広く知られ、工業的に採用されている(例えば、特公昭54−30917号公報、特公平4−66605号公報、実公平58−37456号公報)。
【0003】
前記有機溶剤を含有する排ガスからの有機溶剤回収方法に使用される従来の装置には、筒状に整形されたACFを吸着要素とする吸着素子を、吸着缶内に内壁から隔てて垂直に配置して該吸着素子の外側に外室と、該吸着素子の内側に内室を形成した有機溶剤回収装置がある。該有機溶剤回収装置では、有機溶剤含有排ガスと脱着ガスが交互に通過することにより、吸着と脱着が順次行なわれている。通常、前記吸着缶を2基(2ユニット)以上並列に配置し、各々の吸着缶を吸着と脱着に、或いは処理のタイミングをずらして使い分け、並行して脱着処理及び吸着処理を連続的に行う方式が採用されている。
【0004】
ACFを吸着要素とする溶剤回収方法及び回収装置は、ACFの特性、即ち、極めて低濃度の有機溶剤でも吸着できる特性や、吸着速度が速いという特性を利用し、オンラインで効率的に排ガス処理と溶剤回収が出来るという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ACFを吸着要素とする吸着素子を配置した溶剤回収装置を用いて有機溶剤を吸着させ、次いで有機溶剤を吸着している吸着素子に水蒸気を供給して有機溶剤を脱着させる場合には、吸着素子が直径の細いACFがフェルト状に高い密度で整形されていることに起因して、脱着工程で用いた水蒸気が吸着素子内下部及び吸着缶底部に、有機溶剤を含んだ水蒸気やドレンとして溜りやすい傾向がある。
【0006】
特に、筒状のACF吸着素子を垂直に吸着缶に配設した場合や、被処理ガスとして供給された有機溶剤含有排ガス(原ガス)の温度が低い場合には、脱着工程において、吸着素子内下部及び吸着缶内底部に有機溶剤を含んだ水蒸気及びドレンが残留しやすい。
【0007】
ところで、ACFを吸着要素とする吸着素子を配置した従来の有機溶剤回収装置の吸着缶には、通常、脱着工程において吸着缶内底部に残存するドレンは、吸着缶底部に設けた排出口より排出されるが、ガスの排出に関しては吸着缶内上部に処理済ガス排出口しかないため、脱着工程終了時においては、吸着缶内底部に有機溶剤ガスを含む水蒸気が残存している。同時に、上記したように、吸着素子内下部には、有機溶剤を含んだ水蒸気とドレンが残存している。
【0008】
上記のような、脱着工程終了後においても吸着缶内底部及び吸着素子内下部に残留している、有機溶剤を多量に含んだ水蒸気及びドレンは、引き続き行われる吸着工程において、吸着素子を通過する被処理ガス(原ガス)によって処理済側下部に押し出される。その結果、処理済側下部の有機溶剤を含む水蒸気及びドレンにより、有機溶剤ガスが吸着缶内上部に処理済ガス排出口から系外へ排出されることがあり、特に、吸着工程切換え初期には多量の有機溶剤が系外へ排出されることがある。
【0009】
このような場合の対策として、
▲1▼脱着用ガスとしての水蒸気を供給した後、有機溶剤含有被処理ガスを吸着工程初期に風量を絞り、吸着缶が十分に冷却された後に風量の絞りを開放する方法や、
▲2▼過剰の水蒸気を供給し、有機溶剤を多量に含んだ水蒸気と完全に置換する方法、
等が考えられる。
【0010】
しかしながら、前記▲1▼の方法は、有機溶剤の排出は抑制されるが不十分であり、さらに工程が複雑になるだけでなく吸着時に使用できないという問題点がある。また前記▲2▼の方法は、過剰の水蒸気を供給するため、一時的に清浄ガスの排出が阻害され、しかもランニングコストが高くなる等の問題を有する。
【0011】
したがって本発明は、このようなACFを吸着要素とする吸着素子を有する溶剤回収装置及び溶剤回収方法において、水蒸気による脱着工程を行った後の、吸着素子に含まれる有機溶剤含有水蒸気・ドレン、及び溶剤回収装置の下部に残存する有機溶剤含有水蒸気・ドレンにより、系外へ排出されるガスが汚染されることを改善し、簡単な工程及び装置の改善によって、前記問題を解決することができる有機溶剤回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するために、本発明の有機溶剤回収装置は、筒状に整形された活性炭素繊維を吸着要素とする吸着素子を、吸着缶内に内壁から隔てて垂直に配置することにより、該吸着素子の外側に外室と、該吸着素子の内側に内室を形成した吸着缶を有する有機溶剤回収装置であって、かつ、該吸着缶は、
(1)有機溶剤含有被処理ガスを前記外室に供給するための被処理ガス供給口と、
(2)前記内室の頂部から清浄ガスを排出するための処理済ガス排出口と、
(3)前記内室の底部から有機溶剤含有ガスを被処理ガス供給側へ還流させるための底部排出口及び還流路と、
(4)前記内室の下部から脱着用水蒸気を供給するための水蒸気供給口と、
(5)脱着された有機溶剤を水蒸気と共に前記外室から排出するための水蒸気排出口を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の有機溶剤回収方法は、筒状に整形された活性炭素繊維を吸着要素とする吸着素子を吸着缶内に垂直に配置してなる有機溶剤回収装置を用い、有機溶剤含有被処理ガスを該吸着素子に通過させることによって、該被処理ガス中に含まれる有機溶剤を該吸着素子に吸着させ且つ該吸着素子を通過してなる処理済ガスを系外に排出させる吸着・清浄化工程、並びに該吸着素子に吸着している有機溶剤を水蒸気で脱着して有機溶剤を回収する脱着・回収工程を含む有機溶剤回収方法において、脱着によって再生された後の吸着素子に、有機溶剤含有被処理ガスを供給し、該吸着素子の下層部以外を通過してなる浄化された処理済ガスを系外に排出し、該吸着素子の下層部から排出された有機溶剤を含むガスを被処理ガス供給側へ還流供給することを特徴とする。
【0014】
前記方法において、吸着缶内底部に残留したドレンは、通常の手段により、吸着缶底より抜き出し、凝縮系を経て回収溶剤と凝縮水とに分離処理される。
【0015】
前記吸着素子の下層部を通過した処理済ガスを被処理ガス供給側へ還流供給する時期は、吸着・清浄化工程の初期に行うことが望ましい。しかしながら、該処理済ガスを常時被処理ガス供給側へ還流供給してもよい。
【0016】
本発明によれば、被処理ガスの温度がどのような場合でも、吸着缶底部に溜まった脱着時に使用した水蒸気のドレン及び吸着素子下部に溜まった有機溶剤含有水蒸気(高湿度ガス)・ドレンに起因する有機溶剤ガスが、吸着工程開始時に系外へ排出される処理済ガス系に混入することなく吸着缶底部の開口部から排出され、有機溶剤を含むガスは被処理ガス供給側へ還流される。したがって、本発明は、吸着工程初期に多量の有機溶剤が系外に排出されることを抑制できる。
【0017】
また、本発明の有機溶剤回収装置の機構は単に吸着缶底部に開口部を設け、被処理ガスの供給側の既存の配管に接続するだけで構成されるため、コスト面でも非常に安価に実現することができ、装置構成もシンプルである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明を図面によって説明する。
【0019】
図1は、本発明の有機溶剤回収装置を単純化して示した概念図である。
【0020】
図2は、2連の吸着缶が並列的に設けられ、各吸着缶で吸着と脱着を交互に行うことができる本発明の有機溶剤回収装置を単純化して示した概念図である。実用的に使用するには、通常、2連以上の複数の吸着缶を設置し、各々の吸着缶の運転時間をずらして交互に吸着と脱着とを行うサイクルを連続的に行うことが望ましい。
【0021】
図1、図2において、1及び2は吸着素子を内部に配置した吸着缶、3〜10、13及び14は弁(バルブ)、11は凝縮装置、12は吸着素子である。
【0022】
吸着缶1、2内には円筒状の吸着素子12が、吸着缶1、2の内壁から一定の距離を隔てて垂直に配置されており、吸着素子12の外側に外室15と、吸着素子12の内側に内室16が形成されている。
【0023】
吸着缶1、2には、有機溶剤含有被処理ガスを外室15内に供給するための被処理ガス供給口17と、該被処理ガス供給口17への有機溶剤含有ガスの流入をコントロールする弁3と、吸着素子12を通過して内室16へ移動した後の清浄化された処理済ガスを系外へ排出するための処理済ガス排出口18と、該処理済ガス排出口18からの処理済ガスの排出をコントロールする弁5と、吸着素子12に吸着している有機溶剤を脱着するための水蒸気を供給する内室16の低部に設けた水蒸気供給口19と、該水蒸気供給口19への水蒸気の流入をコントロールする弁7と、水蒸気によって脱着された有機溶剤を高濃度に含む水蒸気を排出するための、外室15の下方に設けた水蒸気排出口20と、該水蒸気排出口20からの有機溶剤含有水蒸気の排出をコントロールする弁10と、内室16の底部に滞留する有機溶剤含有ガス及びドレンを排出するための底部排出口21及び該有機溶剤含有ガス及びドレンの排出をコントロールする弁13が設けられている。
【0024】
該弁13の下流側には内室16の底部から排出される有機溶剤含有ガス及びドレンについて液体とガスを分離するための気液分離機23が配置されている。さらに該気液分離機23で分離されるガスを被処理ガス供給側へ還流させるための還流路22が設けられている。また、気液分離機23から排出される液体は後記する凝縮装置11へ移送され有機溶剤が回収できるようになっている。
【0025】
前記水蒸気供給口19は、吸着素子12の内側の内室16に水蒸気を供給し、吸着素子12の外側の外室15に向かって水蒸気が吸着素子12を通過するように設けるのが、水蒸気の温度低下を防止する上で好ましい。
【0026】
前記被処理ガス供給口17は、水蒸気の流れと反対に被処理ガスが外室15に供給できるように且つ吸着素子12の中心に向かって被処理ガスが吸着素子12を通過できるように設けるのがACFの脱着効率を向上させる上で好ましい。
【0027】
前記吸着缶1、2の外室15には、弁10を介して凝縮装置11が連結されている。該凝縮装置11は外室15から脱着して排出される有機溶剤含有水蒸気を凝縮して有機溶剤と水に分離して有機溶剤を回収する機能を有する。
【0028】
本発明の有機溶剤回収装置に使用される吸着素子に使用されるACFは、一般的な吸着素子材料としての、アクリロニトリル繊維、レーヨン、フェノール系繊維、ピッチ系繊維等から誘導されたACFが使用できる。本発明の有機溶剤回収装置における吸着素子に使用されるACFは、ACF織物、マット等のシート物を通気性支持体に巻き付けてACF層を形成するか、又は層高を厚くし自己支持性の筒袋とし、円筒状に整形したものが用いられる。
【0029】
上記本発明の有機溶剤回収装置を用いた有機溶剤回収方法を、本発明を単純化して説明するために、吸着缶が一基の場合を例にして図1に基づいて次に説明する。
【0030】
有機溶剤含有ガス(被処理ガス)G1は、弁3を経て、被処理ガス供給口17から吸着缶1の外室15内に供給される。このとき脱着用水蒸気供給サイドの弁7、及び有機溶剤含有水蒸気排出サイドの弁9は閉とされている。吸着素子12に供給された被処理ガスG1は吸着素子12の層を通過し、被処理ガスG1に含有される有機溶剤は吸着素子12に吸着固定される。吸着素子12を通過してなる吸着済ガスのうち、内室16の下層以外に存在する清浄化されている処理済ガスG2は処理済ガス排出口18から弁5を開にして系外に排出される。
【0031】
一方、被処理ガスG1の供給圧力によって、吸着素子12の下層において水蒸気・ドレンと共に有機溶剤も押し出され、内室16の下層に残存することになる。更に、この残留水蒸気やドレンには、多量の有機溶剤が溶解しており、しかも温度が高いから徐々に有機溶剤が気化し、高濃度の有機溶剤を含むガスが内室16の下層に存在することになるが、この吸着素子12に溜まる有機溶剤・水蒸気及びドレンは吸着工程の時間経過と共に徐々に減少する。
【0032】
吸着缶1内に残る水蒸気及びドレンの内、底部に溜まったドレンは、吸着工程開始時に一時的に缶内圧力が原ガスによって高められたときに、一気に缶底から排出され、吸着素子の下層部に残留した水蒸気及びドレンは、徐々に缶底から排出され同時にこの水蒸気及びドレンに含まれる有機溶剤が排出される。
【0033】
バルブ13が開とされて、このような有機溶剤を含む底部排出成分は吸着缶1低部の底部排出口21から排出され、気液分離機23で液体とガスに分けられ、液体は凝縮装置11へ移送して有機溶剤を回収すると共に、有機溶剤を含有するガスは還流路22を通じて被処理ガス供給側へ還流ガスG3として還流し、被処理ガスと合流して再度吸着缶1内で処理される。気液分離機23には、冷却機構を備え、排出ガス中の水分を可及的に除去すると共に、ガス温度を低くすることが還流ガスの吸着効率を高める意味から好ましい。
【0034】
被処理ガス供給側へ還流される還流ガスG3(底部排出口21からの排出ガス量)は、供給ガス量の0.1〜10vol%、好ましくは0.5〜5vol%でよい。
【0035】
被処理ガスが吸着素子12の下層を通過してなる処理済ガスの有機溶剤の濃度は、吸着工程初期には比較的高いが、吸着工程が進行して吸着素子12が乾燥すると共に減少する。吸着素子12が完全に乾燥したときには、吸着阻害はなくもはや還流の必要はないので、この時点で還流路22の弁13を閉として、内室16内のガスの全量を清浄化された処理済ガスとして処理済ガス排出口18から系外に排出することができる。
【0036】
しかしながら、被処理ガス供給側への還流供給の時期は、吸着工程初期の比較的高い濃度の有機溶剤が内室16底部に溜まる時期だけではなく、吸着工程の全期間であってもよく、任意な時期を適宜選択することができる。なお、被処理ガスを供給する吸着工程時に、還流路22の弁13を開とし、吸着素子12の層を通過した処理済ガスのうち、内室16の下層のガスの一定量を常時還流系に戻すプログラムで運転することは、装置の簡素化、運転の簡素化の上で好ましい。
【0037】
還流路22の弁13を閉じるタイミング及び系外放出ガスと還流ガスG3との比は、装置運転の実績データにより行うこともできるが、処理済ガス排出口18に濃度センサーを設置し、経過状況を監視しながら、自動的又は手動によって行うこともできる。
【0038】
このようにすることによって、簡単な機構によって特別な乾燥機構を必要とせず溶剤回収を行うことが出来る。しかしながら、本発明では乾燥機構を必ずしも排除するものではなく、乾燥工程を併用することも可能である。脱着の終了後、次回の吸着の前に十分新鮮な空気を送風してやることにより脱着水蒸気によって湿った吸着素子を乾燥、冷却しておくことも好適な例として推奨される。すなわち、脱着後乾燥のためのガスを供給する際、吸着素子12を通過した後のガスも同様に、吸着素子12の上層部を通過したガスは系外に、下層部を通過したガスは弁13を開いておき還流路22に戻し、乾燥するまで還流させることもできる。
【0039】
吸着工程終了後、被処理ガス供給系の弁3を閉とすると共に、脱着系の弁7を開とし、脱着媒体としての水蒸気が吸着素子12を通過することによって吸着素子12に吸着固定されている有機溶剤を水蒸気によって脱着し、脱着された有機溶剤を排出するための水蒸気排出口20から、有機溶剤含有水蒸気を弁10を通じて凝縮装置11に供給し、脱着媒としての水と有機溶剤とに分離し、有機溶剤を回収する。
【0040】
上記の操作は、図1に示す吸着缶が一基の場合の有機溶剤回収装置に基づいて説明しているが、吸着缶が2基以上の場合の実用的な有機溶剤回収装置においても、同様な操作手順が適用できる。
【0041】
例えば、図2に示す吸着缶1,2が二基(二ユニット)の場合の有機溶剤回収装置では、一方の吸着缶1側において弁3、弁5、弁13を開とし、弁7を閉にしておけば、有機溶剤を含むガスは還流路22を流れ、再度、吸着缶1において吸着が行われ、浄化された処理済ガスは系外へ排出される。この時、吸着缶2側において弁8、弁10を開とし、弁4、弁6、弁14を閉にすれば、水蒸気による脱着がS1、S2方向流れで行われ、脱着ガスは凝縮装置11に送られ、凝縮されて有機溶剤が回収される。更に一定時間が経過すると前記各弁の開閉をすべて逆転し、吸着缶1で今度は脱着が行われ、且つ吸着缶2で吸着が行われる。
【0042】
【実施例】
〔実施例〕
図2に示す前記した二基の吸着缶を有する有機溶剤回収装置を用いて下記の通り実施した。
【0043】
容積0.35m3 の吸着缶に、フェノール系繊維から誘導されたACF4kgを通気性支持体に巻き付け円筒状に整形し、吸着層を形成した吸着素子を直立配置し、吸着缶を形成した。この吸着缶を2連配置し、交互に吸着と脱着を繰り返した。
【0044】
還流ガスを含む原ガスとして塩化メチレンを約5,000ppm含有する空気を5Nm3 /minの流速で吸着を行った。吸着缶上部の処理済ガス排出口からの塩化メチレン排出濃度は吸着開始後より徐々に上がり始め、ピーク時には20ppmとなったが、その後、減りつづけ吸着開始8分後には測定装置の測定下限を超えたため測定することができなかった。
【0045】
また、内室下層の処理済ガスを弁13から排出して原ガスに還流する還流ガスの量は原ガス流量の0.9%とした。この還流ガスの塩化メチレン濃度は10,000ppmであった。図3に、本実施例において処理済ガス排出口から排出される処理済ガスの塩化メチレン濃度(曲線A)と、底部排出口から排出される還流ガスの塩化メチレン濃度(曲線B)を、横軸に時間(分)、縦軸に塩化メチレン濃度(ppm)としたグラフで示す。
【0046】
原ガスを5Nm3 /minの流速で8分間吸着素子に供給し吸着処理を行った後、吸着缶1の原ガス系の弁3を閉とし、脱着系の弁7を開として140℃の水蒸気を6分間、蒸気量0.52kg/ACFkgで供給し、吸着素子に固定されている有機溶剤を脱着し、凝縮装置で有機溶剤を凝縮し回収を行った。以上の結果、塩化メチレンの回収率は99.8%であった。
【0047】
図5に、還流ガスの量(内室ガス中の下層ガスの抜き取り%)を横軸とし、吸着缶上部の処理済ガス排出口からの処理済ガスの塩化メチレン排出ピーク濃度(ppm)を縦軸としたグラフを示す。
【0048】
〔比較例〕
上記実施例の装置を利用して、還流系の回路をすべて閉とした方法で実施した。
【0049】
原ガスとして塩化メチレンを約5,000ppm含有する空気を5Nm3 /minの流速で吸着を行った。吸着缶上部の処理済ガス排出口からの塩化メチレン排出濃度は吸着開始後より徐々に上がり始め、ピーク時には250ppmとなったが、その後減りつづけたが、吸着開始8分後でも85ppmもの溶剤含有ガスが排出された。図4に、この比較例において処理済ガス排出口から排出される処理済ガスの塩化メチレン濃度を、横軸に時間(分)、縦軸に塩化メチレン濃度(ppm)としたグラフで示す。
【0050】
原ガスを5Nm3 /minの流速で8分間吸着素子に供給し吸着処理後、吸着缶の原ガス系弁を閉とし、脱着系弁を開として140℃の水蒸気を6分間供給し吸着素子に固定されている有機溶剤を脱着し、凝縮装置で有機溶剤を凝縮し回収を行った。以上の結果、塩化メチレンの回収率は98.0%であった。
【0051】
【発明の効果】
従来の有機溶剤回収装置では、系外へ排出される処理済ガス中の有機溶剤濃度を押さえるために必要以上の吸着素子を使用していたが、本発明によれば、従来に比較してより少ない量の吸着素子で同様の有機溶剤排出防止効果を発揮し、効率のよい、有機溶剤回収装置及び有機溶剤回収方法を提供できる。
【0052】
本発明によれば、大気中への拡散をほとんどなくすることができ、大気汚染の防止に資するところも極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機溶剤回収装置を単純化して示した概念図である。
【図2】2連の吸着缶が並列的に設けられ、各吸着缶で吸着と脱着を交互に行うことができる本発明の溶剤回収装置を単純化して示した概念図である。
【図3】実施例において処理済ガス排出口から排出される処理済ガスの塩化メチレン濃度(曲線A)と、底部排出口から排出される還流ガスの塩化メチレン濃度(曲線B)を、横軸に時間(分)、縦軸に塩化メチレン濃度(ppm)としたグラフで示す。
【図4】比較例において処理済ガス排出口から排出される処理済ガスの塩化メチレン濃度を、横軸に時間(分)、縦軸に塩化メチレン濃度(ppm)としたグラフで示す。
【図5】還流ガスの量(内室ガス中の下層ガスの抜き取り%)を横軸とし、吸着缶上部の処理済ガス排出口からの処理済ガスの塩化メチレン排出ピーク濃度(ppm)を縦軸としたグラフを示す。
【符号の説明】
1、2 吸着缶、
3〜10、13,14 弁
11 凝縮装置、
12 吸着素子
15 外室
16 内室
17 被処理ガス供給口
18 処理済ガス排出口
19 水蒸気供給口
20 水蒸気排出口
21 底部排出口
22 還流路
23 気液分離機

Claims (5)

  1. 筒状に整形された活性炭素繊維を吸着要素とする吸着素子を、吸着缶内に内壁から隔てて垂直に配置することにより、該吸着素子の外側に外室と、該吸着素子の内側に内室を形成した吸着缶を有する有機溶剤回収装置であって、かつ、
    該吸着缶は、
    (1)有機溶剤含有被処理ガスを前記外室に供給するための被処理ガス供給口と、
    (2)前記内室の頂部から清浄ガスを排出するための処理済ガス排出口と、
    (3)前記内室の底部から有機溶剤含有ガスを被処理ガス供給側へ還流させるための底部排出口及び還流路と、
    (4)前記内室の下部から脱着用水蒸気を供給するための水蒸気供給口と、
    (5)脱着された有機溶剤を水蒸気と共に前記外室から排出するための水蒸気排出口を有することを特徴とする有機溶剤回収装置。
  2. 筒状に整形された活性炭素繊維を吸着要素とする吸着素子を吸着缶内に垂直に配置してなる有機溶剤回収装置を用い、有機溶剤含有被処理ガスを該吸着素子に通過させることによって、該被処理ガス中に含まれる有機溶剤を該吸着素子に吸着させ且つ該吸着素子を通過してなる処理済ガスを系外に排出させる吸着・清浄化工程、並びに該吸着素子に吸着している有機溶剤を水蒸気で脱着して有機溶剤を回収する脱着・回収工程を含む有機溶剤回収方法において、脱着によって再生された後の吸着素子に、有機溶剤含有被処理ガスを供給し、該吸着素子の下層部以外を通過してなる浄化された処理済ガスを系外に排出し、該吸着素子の下層部から排出された有機溶剤を含むガスを被処理ガス供給側へ還流供給することを特徴とする有機溶剤回収方法。
  3. 前記吸着素子の下層部を通過してなる有機溶剤を含むガスを被処理ガス供給側へ還流供給する時期は、吸着・清浄化工程の初期に行うことを特徴とする請求項2記載の有機溶剤回収方法。
  4. 前記吸着素子の下層部を通過してなる処理済ガスを被処理ガス供給側へ還流供給する時期は、常時行うことを特徴とする請求項2記載の有機溶剤回収方法。
  5. 前記被処理ガス供給側へ還流供給する有機溶剤を含むガスの割合は、吸着缶へ供給する被処理ガスの供給量に対して0.1〜10vol%である請求項2、3又は4記載の有機溶剤回収方法。
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