JP3655974B2 - 鮮度保持剤および鮮度保持剤を収納した容器ならびに容器を備えた食品収納容器 - Google Patents

鮮度保持剤および鮮度保持剤を収納した容器ならびに容器を備えた食品収納容器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品を衛生的に且つ新鮮に保存する鮮度保持剤および鮮度保持剤を収納した容器ならびに容器を備えた食品収納容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品の流通・保存時の衛生的な保存方法として、特開平7−20784号公報に開示されているように、わさびの辛み成分であるイソチオシアン酸アリルを含有する鮮度保持用ラベルを用いた保存容器が提案されている。
【0003】
その鮮度保持ラベルを図7及び図8に示している。鮮度保持ラベル1は、イソチオシアン酸エステル蒸気が透過しやすい易透過性の基材2と、この基材2の上に形成されたイソチオシアン酸エステルを含有する鮮度保持層3と、この鮮度保持層3の上に剥離可能に形成された剥離層4を備えている。
【0004】
この剥離層4を図8に示したように剥がすことにより、図9に示した保存容器である包装容器5に貼り付け可能になる。この包装容器の上方の包装材料6はイソチオシアン酸エステル蒸気が透過しにくいフィルムであり、下方の包装材料7は透過しやすいフィルムで構成されている。
【0005】
そして、包装容器5内部に食品8を収納保存するというものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来提案されている鮮度保持ラベルは、防菌防カビ剤であるイソチオシアン酸エステル層が薄いフィルム層であるため、レトルト食品等の個包装のように少量の食品保存にしか適用できないという課題があった。従って、大きな食品収納容器には適用が困難で、寿命が短いという課題があった。
【0007】
また、イソチオシアン酸エステルが発散しすぎて、かえって野菜に褐変などの損傷を与えてしまうなどの課題があった。
【0008】
本発明はこのような鮮度保持剤において、大きな食品収納容器に適用できて長期間の鮮度保持効果を賦与できる鮮度保持剤及びこれを用いた食品収納容器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明の鮮度保持剤は、昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時に昇華あるいは揮発しやすいようにしたものである。
【0010】
また、本発明の容器は、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤を封入し、温度によってガス透過性を制御できる感温素材を設けたものである。
【0011】
さらに、本発明の食品収納容器は、前記容器を着脱自在に取付けたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器と、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにしたものであり、防菌防カビ剤の無駄な消費を抑えて合理的な発散をすることができ、特に食品の冷蔵保存時に合理的で長期間の防菌防カビ手段とすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器であって、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤であり、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにしたものであり、安全に長期間食品の保存に適用することができる。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、ガス透過膜がポリウレタン系の形状記憶樹脂からなるものであり、構造が簡単で低コストで防菌防カビ剤の発散を温度コントロールすることができる。
【0015】
また請求項4に記載の発明は、昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器であって、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤であり、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにした容器を着脱自在に取付けたものであるから、比較的多量の食品を長期間安全に保存でき、鮮度保持剤の取り換えも簡単な食品収納容器を提供することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図6を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の容器の要部断面図を示し、9は本発明の一実施例における容器で、上面を開口した本体10と蓋体11から構成され、容器9内部に昇華性あるいは揮発性の天然抽出物抗菌剤12からなる鮮度保持剤が封入されている。
【0017】
また、前記蓋体11には通気孔13が形成され、この通気孔13を塞ぐように感温素材である形状記憶樹脂フィルムを主体とするガス透過膜14が設けられている。
【0018】
このガス透過膜14は、図2の断面図に示したように形状記憶樹脂フィルム15の表面にドット加工した接着剤16により不織布や織布等の繊維17を積層したものである。
【0019】
尚、前記形状記憶樹脂フィルム15としてはポリウレタン系の形状記憶樹脂(三菱重工業製「ダイアリィ」)が用いられる。
【0020】
また、前記天然抽出物抗菌剤12はイソチオシアン酸アリルやヒノキチオールを主成分とした食品に安全な薬剤が使用される。尚、イソチオシアン酸アリルを主成分とした薬剤としては、西通製の「ワサガード」やミドリ十字製の「ワサオーロ」等、ヒノキチオールを主成分とした薬剤としては成和化成製品等がある。
【0021】
尚、容器9は、図示しないが使用されるまではガス不透過性の包装袋に密封されるか、ガス不透過性のフィルムで蓋11の通気孔13を塞がれた状態としたものである。
【0022】
以上のように構成された容器9について、以下にその動作を説明する。
前記容器9を冷蔵庫などに入れて、食品の鮮度保持をしようとすると、容器9内部に封入された昇華性あるいは揮発性の天然抽出物抗菌剤12の発散量は、その周囲温度により変化する。
【0023】
すなわち、夏季などにおいて冷蔵庫の扉開閉が頻繁なときや、品温の高い食品を収納して冷蔵庫内の温度が上昇した時には天然抽出物抗菌剤12の発散量が多くなり、逆に冷蔵庫内の温度が低く食品の品温が低い時には天然抽出物抗菌剤12の発散量が少なくなるというものである。
【0024】
更に図4を用いて本発明の容器9の天然抽出物抗菌剤12の発散量と温度の関係を説明する。
【0025】
図中曲線Aは、前記形状記憶樹脂フィルム15で構成されるガス透過膜14を使用した場合の容器9中の抗菌剤の発生量と温度の関係を示し、曲線Bは、仮に感温素材でない一般のポリプロピレンなどの樹脂フィルムを使用した場合の抗菌剤の発生量と温度の関係を示したものである。
【0026】
つまり、一般の樹脂フィルムの場合は、温度上昇とともに徐々に抗菌剤の発散量が増加する。一方、本発明におけるガス透過膜の場合は、形状記憶樹脂フィルムのガラス転移に伴って分子間空隙の大きさが急激に変化する温度領域が存在するため、図4に示した如く第一の屈曲点T1と第二の屈曲点T2が現れる。
【0027】
すなわち一般のフィルムに比べ、所定の温度T1で抗菌剤の発散量を急激に増大させることができる。また逆に所定の温度T2で抗菌剤の発散量を急激に減少させることができる。この温度T1及びT2はポリウレタン系形状記憶樹脂フィルムのガラス転移温度Tgを任意に変えることにより、狙いの温度に設計することが可能なものである。
【0028】
また、図5に低温菌と中温菌の分裂時間に及ぼす温度の影響を示した。
魚肉などの腐敗の原因菌であるシュードモナス菌などの低温菌の分裂時間は、図中曲線Aで示したようになる。一方、大腸菌などの中温菌の分裂時間は、図中曲線Bで示したようになる(なおこれらについては、サイエンスフォーラム社発行の「最新食品微生物制御システムデータ集」1983年発行などに記載されている)。
【0029】
つまり、低温菌は0℃以上で増殖スピードが速くなり、特に10℃以上30℃までが増殖スピードが速く、中温菌は10℃以上で増殖スピードが速くなり、特に20℃以上45℃ぐらいまでが増殖スピードが速い。
【0030】
従って、冷蔵庫に保存する食品には低温に強い細菌やカビが存在し、特に冷蔵庫の除霜運転時や夏季などにおいて扉開閉の多い時や、品温の高い食品を収納した直後などには庫内温度が上昇して低温菌の発育を促進することになる。
【0031】
以上のように本実施例によれば、容器本体10と蓋体11から構成された容器9内部にイソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の昇華性あるいは揮発性の天然抽出物を主成分とする抗菌剤12を封入し、蓋体11に設けられた通気孔13に感温素材であるポリウレタン系の形状記憶樹脂フィルム15を使用したガス透過膜14を設けたものであるから、細菌やカビが増殖しやすくなる高温度状態の時には抗菌剤12が発散しやすく、逆に細菌やカビの増殖が停止する低温度状態の時には抗菌剤12の発散量を極力制御することができる。
【0032】
従って、従来の鮮度保持ラベル1に比べ無駄な抗菌剤の発散をなくし、合理的に抗菌剤12を発散するものであるから、長期間に渡り防菌防カビ力を賦与することができる。また、従来よりも抗菌剤12を多量に封入できるので、大きな食品収納容器や冷蔵庫の中で使用することができる。
【0033】
また、抗菌剤12が発散しすぎたために保存していた野菜が褐変するなどの損傷を与えることも少なくなる利点がある。
【0034】
また、感温素材としてポリウレタン系の形状記憶樹脂フィルム15を使用したガス透過膜14を使用したものであるから、構造が簡単でしかも低コストで抗菌剤12の発散を温度によってコントロールすることができる。
【0035】
また、従来の鮮度保持ラベルと違って比較的多量の抗菌剤12を容器9内に封入することができるので、従来より比較的多量の食品貯蔵に利用することが可能となる。
【0036】
尚、容器9は、図3に示したように、面状の発熱体等のヒータ18を内蔵するセット台19に載置して、ヒータ18の温度制御により抗菌剤12の発散量をコントロールする使い方も可能である。
【0037】
(実施の形態2)
次に第2の実施例について、図6を参照しながら説明する。第1の実施例と第同一構成部品は同一番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
図6において、20は本発明の密閉型の食品収納容器で、容器本体21と、鮮度保持剤入りの容器22を開口部23に着脱自在として設けた蓋体24とからなる。
【0039】
鮮度保持剤入りの容器22の内部にはイソチオシアン酸アリルなどの天然抽出物抗菌剤12が封入され、食品収納容器20内側に位置する鮮度保持剤入りの容器22底面の通気孔25にポリウレタン系形状記憶樹脂からなるガス透過膜14が設けられている。
【0040】
以上のように本実施例によれば、ポリウレタン系形状記憶樹脂からなるガス透過膜14を有する鮮度保持剤入りの容器22が密閉型の食品収納容器20の天面蓋体24に着脱自在に装着されているため、中に収納された野菜等の食品26の品温が高い時は、天然抽出物抗菌剤12が多量に昇華あるいは揮発して細菌の繁殖を抑制する。
【0041】
また、前記密閉型の食品収納容器20が冷蔵庫等に入れられて食品26の品温が低下して、細菌が増殖しない温度(例えばブドウ球菌やサルモネラ菌では6.7℃以下である)になれば前記天然抽出物抗菌剤12が発散しないかごくわずかだけ発散する状態になり、抗菌剤12の無駄な消費を抑制する。
【0042】
また、前記天然抽出物抗菌剤12がイソチオシアン酸アリルの場合においては、容器20内の抗菌剤濃度が高くなりすぎて野菜が褐変する等の損傷を防止する効果もある。
【0043】
従って、細菌が繁殖しやすい高温度状態の時にのみ前記天然抽出物抗菌剤12が発散しやすく、食品26が低温度になって細菌が増殖する心配のない時は抗菌剤12の無駄な発散がないので合理的な防菌防カビ方法を提供することができ、前記天然抽出物抗菌剤12の寿命を延ばすことができる。
【0044】
また、収納した食品26を合理的に長期間鮮度保持することができる。
また、鮮度保持剤入りの容器22が密閉型の食品収納容器20の天面蓋体24に装着されているので、抗菌剤12の取り替えが極めて簡単である。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時に昇華あるいは揮発しやすいようにしたものであるから、極めて合理的な防菌防カビ方法を提供し、防菌防カビ剤の無駄な消費を抑制して寿命を延ばすことができる。
【0046】
また、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤を封入しものであるから、食品に対して安全であり、簡単な構造で抗菌剤の発散を温度によって制御することができる。
【0047】
また、ガス透過膜をポリウレタン系の形状記憶樹脂としたものであるから、構造が簡単で抗菌剤の発散する温度を自由に設計することができる。
【0048】
また、鮮度保持剤入りの容器を着脱自在としたものであるから、抗菌剤の無駄な消費が無く寿命を延ばすことができるとともに、抗菌剤の過度の発散による食品の損傷を防止して、食品を長期間安全に鮮度保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における鮮度保持剤の断面図
【図2】実施の形態1におけるガス透過膜の要部断面図
【図3】実施の形態1における鮮度保持剤の別の使用形態の断面図
【図4】本発明の実施の形態における抗菌剤の発散量と温度の関係を示す説明図
【図5】一般的な細菌の繁殖速度と温度の関係を示す説明図
【図6】本発明の実施の形態2における密閉型食品収納容器の断面図
【図7】従来の鮮度保持ラベルの要部断面図
【図8】従来の鮮度保持ラベルから剥離層を剥離する状態を示す断面図
【図9】従来の鮮度保持ラベルを包装用容器に貼付した概略の状態を示す断面図
【符号の説明】
9 容器
12 天然抽出物抗菌剤
14 感温性ガス透過膜
20 食品収納容器
22 容器
24 蓋体

Claims (4)

  1. 昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器と、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにした鮮度保持剤。
  2. 昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器であって、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤であり、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにした容器。
  3. ガス透過膜がポリウレタン系の形状記憶樹脂からなる請求項2記載の容器。
  4. 昇華性あるいは揮発性の防菌防カビ剤が封入された容器であって、前記容器に形成された通気孔と、前記通気孔を塞ぐように設けられた形状記憶樹脂からなるガス透過膜とを備え、前記防菌防カビ剤は、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤であり、細菌類が繁殖しやすい高温度状態の時には発散量が多くなるようにした容器を着脱自在に取付けてなる食品収納容器。
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