JP3655871B2 - 地下空洞充填用パッカー装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下空洞充填用パッカー装置に関し、特に、地下埋設管等の欠陥部などから土砂等が流出することにより発生した地下空洞を、該地下埋設管等の欠陥部などを利用して効率的に充填するために使用するパッカー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路下の地盤内には、上水道、下水道、或いは都市ガス、電力、通信等の種々の管路が埋設されていることが多く、これらの管路に破損が発生すると、破損部位から漏出した水などによって地盤内の土砂が流失するなどにより、地盤内に空洞が発生することがある。このような空洞を放置しておくと、規模が拡大して路面の陥没につながるばかりでなく、交通の障害となるほか、各種の構築物等の破損をも引き起こすことにもなる。
【0003】
そのため地盤内の空洞が発見されたときには、先ず埋設管等の欠陥が原因であるかどうかが疑われ、調査が行われることが多い。そして空洞の規模や形状の調査結果に基づいて、空洞部分上部の土砂を除去して新たな土砂を充填し、改めて舗装をし直すなどにより、復旧工事を行うのが普通であった。しかしこのように地上から掘削する方法は、大量の土砂を搬出したのち更に埋め戻す必要があるために、工期が長くかかるうえ費用も嵩み、交通の障害となるほか騒音や粉塵などによる環境汚染の問題もある。
【0004】
そこで本発明者は、前述の問題の発生を避けるために、地上から土砂の掘削を行う代わりに小径の孔を穿設し、この孔を介して地下の空洞部分に直接に地上から土砂等を充填して、安定化させる工法を発明し、特許を得ている (特2733755 、特3037929)。しかしこのような工法でも、地盤内に各種の管路や構築物等が複雑に設置されている場合などでは、前記の小径孔を穿設する工事が容易でない場合があるため、上記の工法の不利を避け得る新規な工法として、地下空洞の発生原因となった欠陥を持つ埋設管等を利用して空洞を充填する方法 (特願2001-257877)を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記のような埋設管の近傍に発生した地下空洞を充填する工法を、埋設管の内部から効率的に実施するに適した装置を提供することを目的としたもので、具体的には、下水管等の埋設管内に該装置を導入して固定し、該埋設管の欠陥部等から地下空洞に達する充填材送入孔を掘削し、その後該送入孔から該地下空洞に充填材を送入して固化させ、短時間で効率的に地盤を強化するに用いるパッカー装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置は、埋設管内に設置して該埋設管の近接位置に発生した地下空洞を充填するに用いる装置であって、軸方向に管状通路を有する筒状缶体の前後両側外周に接して膨張収縮が可能な環状中空封止体を設けると共に、該管状通路内には、該筒状缶体の一方端から中央部外周面の一部位に達して外方に開口するガイド管と、該中央部外周面の他部位で外方に向かって開口し該筒状缶体の他方端に達する1以上の排土管とを少なくとも設けてなり、該ガイド管は屈曲制御可能で長尺の小径孔掘削装置と屈曲制御可能で長尺の孔内観察装置と屈曲制御可能で長尺の充填材給送装置とから選ばれた、少なくとも1種以上の作業用装置の挿通を案内できるように構成したものである。
【0007】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置において、前記ガイド管の前記中央部外周面側開口端部に、挿通された前記1種以上の作業用装置の周囲に生ずる隙間を封止する中空封止体が設けられていると、外部の土砂や泥水が装置内、特に前記ガイド管内に流入して内面などを汚損し、或いは作業用装置の挿通を案内する支障となるのを防止できる。
【0008】
更に、前記筒状缶体の一方端側近傍にある前記ガイド管の端部に、前記1種以上の作業用装置の導入口がそれぞれ設けられていると、所望の作業用装置を選択して前記ガイド管内に導入することが容易となり、作業用装置を交換しながら円滑に地下空洞充填の作業を進めることができる。
【0009】
また本発明の地下空洞充填用パッカー装置において、前記排土管の前記中央部外周面側開口端部付近に、泥水吸引用のエジェクタが設けられていると、掘削作業の進行に伴って装置の周囲に流下する土砂や泥水などを、前記排土管内に迅速に吸い上げると同時に、装置の他方端に向かって排出することができ、掘削作業と排土作業とを連携させて効率的に実施することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の地下空洞充填用パッカー装置を、図に基づいて説明する。
図1において、Aは破損箇所などがある下水管等の埋設管であり、Bは、埋設管Aの近傍に発生した地下空洞Fを充填するために、埋設管Aに予め設けた作業用開孔である。そしてCは、埋設管A内に牽引索Dなどによって導入された、本発明の地下空洞充填用パッカー装置である。
【0011】
図に示すパッカー装置Cにおいて、1は軸方向に管状通路1aを備えた筒状缶体であり、その前後の両側部に、外周を取り巻くように環状中空封止体2、2が設けてある。これらの環状中空封止体2、2の内部空間は、管状通路1a内を通して設けた加圧流体管2aと、それぞれ連通している。そして該加圧流体管2aは、地上から埋設管A内を通して引き込まれた延長流体導管2bと接続され、地上の制御装置から供給される加圧空気などの加圧流体は、延長流体導管2bと加圧流体管2aとを経て環状中空封止体2、2を膨張させ、埋設管Aとパッカー装置Cとの間隙を封止できるようになっている。
【0012】
また、上記の筒状缶体1の管状通路1a内には、パッカー装置Cの後方(図において左方)端部付近から中央部までガイド管3が延設されている。このガイド管3の先端は、筒状缶体1の中央部の外周面に達して外方に向かって開口していて、ガイド管3の基端から導入された作業用装置、すなわち、後述するような屈曲制御可能で長尺の小径孔掘削装置と、これと同様な孔内観察装置と、これまた同様な充填材給送装置とから選ばれた作業用装置を導いて、パッカー装置Cの中央部外周面から外方に突出させることができるように、構成されている。
【0013】
このガイド管3の先端部には、ここから突出した作業用装置の周囲に形成される間隙を封止するために、中空封止体3aが設けられており、加圧流体管3bから導入される加圧空気などにより膨張して、ガイド管3内に泥水や土砂等が浸入するのを防止できるようになっている。そしてまた、ガイド管3の先端部付近には、突出した作業用装置が不用意に後退することなどが起こらないように、作業用装置を係止或いは固定する装置などを、設けておくことが望ましい。その一方で、ガイド管3の基端には、パッカー装置Cと組み合わせて用いる1種以上の作業用装置を導入するための、導入口部3cが形成されている。
【0014】
そしてまた、筒状缶体1の中央部外周面の、ガイド管3が開口していない部位、例えば90°又は180°隔たった位置などに、1個以上の開口4、4が設けてある。これらの開口4は、パッカー装置Cの外側での漏水や、掘削作業などに伴って発生する土砂や泥水などを、排出するために設けたもので、開口4それぞれの周囲には、埋設管Aの内面とパッカー装置Cの外面との間隙を封止するための、環状の中空封止体4aが設けてあり、必要に応じて、延長流体導管4cと加圧流体管4bとを経て加圧空気などを導入して、中空封止体4aを膨張させることで、開口4を閉鎖できるように構成してある。
【0015】
その一方で管状通路1a内には、筒状缶体1と軸が平行になるように排土管5が設けてある。この排土管5の後方端と前方端は、それぞれ管状通路1aの後方端付近と前方端付近で開放されているほか、排土管5の中央部から吸引管5aが分岐して前記の開口4に接続されている。そして、該排土管5の後方から吸引管5aの分岐部に隣接する部位まで、先端がノズル状となった細目の加圧流体管6が同軸的に挿設されており、泥水吸引用のエジェクタを形成している。
【0016】
前記の加圧流体管6には、その後方に接続される延長流体導管6aから加圧水又は加圧空気などを供給すると、加圧流体が先端のノズルから噴出することによりエジェクタが働き、開口4近傍の泥水などを吸引して排土管5の前方端から、パッカー装置Cの前方に向かって放出するように作用する。
【0017】
このような本発明のパッカー装置Cを用いて地下空洞を充填するに当たり、パッカー装置Cと共に下水管等の埋設管A内に導入する作業用装置は、少なくとも小径孔掘削装置と孔内観察装置と充填材給送装置とである。そのうち小径孔掘削装置は、埋設管Aの欠陥部等に形成された作業用開孔Bから、地下空洞に通ずる小径の充填材送入孔を設けるための掘削作業用装置であり、例えば長尺の高圧ホースの先端に高圧水ジェットノズルを設けた水ジェット掘削装置などが、好ましく用いられる。こうした水ジェット掘削装置は、高圧ホースが屈曲可能であって、ジェットノズルの方向を制御できるものが、特に好ましい。
【0018】
上記の小径孔掘削装置は、例えば地上などに設置した高圧水ポンプ装置と、ジェットノズルを備えた高圧ホースとからなる。この装置を使用するに際しては、パッカー装置Cのガイド管3の導入口部3cから該高圧ホースを挿入し、ガイド管3に沿って高圧ホースを送り込むと共に、ジェットノズルをガイド管3の先端部から突出させる。そして、必要に応じてジェットノズルの後部などをガイド管3の先端部付近に係止し、中空封止体3aを膨張させてガイド管3と高圧ホースとの間隙を封止したのち、充填材送入孔の掘削を開始するものである。
【0019】
この際のガイド管3に高圧ホースを導入する作業を容易にするために、ガイド管3の導入口部3cに形成した、高圧ホースの太さに応じた径を有する掘削装置導入口3dに、予め長尺で同径の導入ホース3eを接続し、その後方端を地上或いはマンホール位置などに留めておくことが好ましい。こうしておくと、高圧ホースの先端を導入ホース3eの後方端から挿入し、高圧ホースを導入ホース3eの中へ順次に押し込むことで、小径孔掘削装置を円滑にパッカー装置Cに組み込むことができる。
【0020】
また、上記の小径孔掘削装置と併用される孔内観察装置は、該小径孔掘削装置によって掘削された充填材送入孔Eや、該充填材送入孔Eが到達した地下空洞Fの状況を観察して、地下空洞Fに充填材の給送開始時点の判定をするための装置である。この孔内観察装置としては、例えば先端に小型のテレビカメラを設けた可撓性のケーブルを、地上に設置したモニター装置に接続してなる内視鏡式の観察装置が、好ましく用いられる。このような孔内観察装置は、テレビカメラ部の観察方向を自由に調節できるものであることが、特に望ましい。
【0021】
こうした孔内観察装置は、単独に保護チューブの中に挿通した形態の独立の装置として、パッカー装置Cに組み込むことができるが、上記の小径孔掘削装置と組み合わせた上更に太い保護チューブの中に挿通して、複合形態の装置として使用することもできる。これらの独立形態の装置、或いは複合形態の装置の何れであっても、パッカー装置Cに組み込むには、前記の掘削装置導入口3dに接続した導入ホース3eを利用する方法に準じて、同様にして行うことができる。
【0022】
上記のように孔内観察装置を小径孔掘削装置との複合装置として用いると、小径孔掘削装置による掘削作業を実行中に作業状態を観察することができる。また孔内観察装置を独立装置として用いるときは、孔内観察装置をガイド管3の導入口部3c近傍に退避させて掘削作業を実行し、掘削作業を中断し小径孔掘削装置を導入口部3c近傍に退避させて孔内の観察作業を行うことができる。
【0023】
更に、充填材給送装置は、前記の小径孔掘削装置によって掘削された充填材送入孔Eを通じて、地下空洞F並びに該充填材送入孔Eを充填するための装置であり、地上に設置した充填材調整装置及び充填材ポンプ装置と、これから圧送される流動性充填材を送る長尺で可撓性の充填材給送ホースとから構成される。こうした充填材給送装置は、前記の小径孔掘削装置とは別の独立した装置であってもよいが、小径孔掘削装置のジェットノズルの形状を、流動性充填材が給送できるようにすれば、充填材給送装置との兼用にすることもできる。
【0024】
一方、本発明のパッカー装置Cのガイド管3の導入口部3cには、該可撓性の給送ホースの先端部を挿入する給送装置導入口3fが設けてあり、これに予め長尺で同径の導入ホース3gを接続しておいて、その後方端を地上或いはマンホール位置などに止めておくことが好ましい。こうすると、小径孔掘削装置による充填材送入孔Eの掘削が終了した後に、掘削装置を導入口部3c近傍に退避させた後、導入ホース3gを介して給送装置導入口3fからガイド管3内に、充填材給送ホースを導入することができる。
【0025】
上記のような構成を備えた本発明の地下空洞充填用パッカー装置を使用して、埋設管Aの近傍に発生した地下空洞Fを充填する方法を以下に説明する。
図4において、地盤G内に埋設された下水管などの埋設管Aの一部に折損や接合部のずれ等が生じると、地盤G内の圧力を有する地下水が地盤内の土砂等と共に埋設管A内に流入して、地盤G内に地下空洞Fが発生し、次第に成長して上方に向かって発達する。このような地下空洞Fは、例えば超音波による地下構造探査などにより発見されると、地表の近くまで発達していない段階で、早期に土砂などで充填して地盤を補強することが望まれる。
【0026】
そこで、地下空洞Fが発見された場合には、先ず地上から超音波などによる地下構造探査などを行って、地下空洞Fの位置や規模などを調査すると共に、地下空洞Fの発生原因と疑われる埋設管Aに、例えばファイバースコープやテレビカメラ等を導入して、欠陥部の存在を調査する。その結果、地下空洞Fから埋設管Aの欠陥部への土砂流路の存在が推定できたときは、該欠陥部から土砂等の充填材を送り込む通路を設けるのに利用できるかを調査し、利用が可能であると判断されたときは、例えば上流側のマンホールなどから埋設管Aに管壁穿孔機などを導入して、欠陥部などに作業用開孔Bを削孔する。
【0027】
次いで、例えば図1の本発明の地下空洞充填用パッカー装置を準備すると同時に、小径孔掘削装置、孔内観察装置、充填材給送装置などの作業用装置、並びに空洞充填用材料などの各種資材を準備し、更にパッカー装置を載置できると共に、例えば牽引ワイヤなどで遠隔操作するなどにより、載置したパッカー装置を左右に転動させる機構を備えた移動用橇を、必要に応じて用意する。
【0028】
そして、上流側のマンホールなどから埋設管A内に、移動用橇に載せたパッカー装置Cを牽引索Dを用いて引き込み、パッカー装置Cの中央部を作業用開孔Bの位置に合わせてから、パッカー装置Cの前後位置を前方及び後方の牽引索Dによって固定する。更に、パッカー装置Cを転動させて、ガイド管3の先端の開口を作業用開孔Bに正対させた後、環状中空封止体2、2を膨張させ、パッカー装置Cを埋設管Aの内壁に対して固定する。その後、導入ホース3eに小径孔掘削装置と孔内観察装置との複合装置を、また導入ホース3gに充填材給送装置をそれぞれ導入して、パッカー装置Cにそれぞれの作業用装置を組み込む。
【0029】
こうしてパッカー装置Cを埋設管A内に設置したのち、小径孔掘削装置のジェットノズルを、ガイド管3の先端からパッカー装置Cの外側に突出させ、作業用開孔Bに向かわせて係止すると共に中空封止体3aを膨張させて、掘削装置の高圧ホース又はその保護チューブとガイド管3との間隙を封止し、ガイド管3内に土砂等が侵入しないようにする。その後、掘削装置の高圧水ポンプを作動させてノズルから高圧水を噴出させ、作業用開孔Bの位置から地下空洞Fの底位置に向かって、充填材送入孔Eの掘削を開始する。
【0030】
このようにして地盤Gの掘削を始めると、地質の安定性が不足して掘削孔の壁が崩壊しやすいことが分かる場合がある。そのようなときには、一旦掘削を中止して掘削装置を後退させ、代わりに充填材給送装置を前進させて、例えばセメントミルクなどのグラウト剤を注入し、地質の安定性が改良されるのを待って、再び地盤Gの掘削を開始することが望ましい。
【0031】
こうして地盤Gの掘削が進むと、高圧水ジェットによって堀り崩された土砂は泥水となって掘削孔内を逆流し、パッカー装置Cの位置まで流下するが、掘削装置とガイド管3との隙間は中空封止体3aにより封止されているので、泥水はパッカー装置Cの周囲の空間に沿って流下し、パッカー装置Cの前後に設けられた環状中空封止体2、2の間に溜まる。そこで中空封止体4aを収縮させると、泥水は開口4から吸引管5aを通って排土管5内に流入し、延長流体導管6aから加圧流体管6に供給された加圧水又は加圧空気などによって、泥水が排土管5から前方に向かって放出されるばかりでなく、パッカー装置Cの周囲の泥水も開口4から吸引されてパッカー装置Cの前方に向かって放出される。
【0032】
このようにして充填材送入孔Eの掘削と土砂の排出とを平行して進めると、掘削の能力より排土の能力が勝る場合がある。このときは下方に位置する排土管5を優先して使用するために、上方に位置する排土管5に接続する開口4を、中空封止体4aを膨張させて閉鎖することができる。またパッカー装置Cの前方に放出された土砂が堆積することを防ぐために、加圧流体管6から放出する水量を増加させて、パッカー装置Cの前方の土砂を、埋設管Aの下流方向に押し流すようにすることもできる。
【0033】
充填材送入孔Eの掘削状況は、小径孔掘削装置と併設された孔内観察装置によって、逐次に観察することができるので、充填材送入孔Eが地下空洞Fに到達したことを確認したときは、掘削を一時停止して地下空洞Fの形状や規模その他の状況を調査し、充填材送入孔Eの周囲の地質の補強の必要性も検討して、地下空洞Fの充填作業の計画を最終的に決定する。
【0034】
こうして小径孔掘削装置と孔内観察装置を、ガイド管3の導入口部3cまで引き戻したのち、充填材給送装置の充填材給送ホースを給送装置導入口3fから前進させ、更にガイド管3との隙間を中空封止体3aにより封止して、充填材送入孔Eから地下空洞Fに充填材の給送を開始する。このとき用いられる充填材としては、例えば、礫、砂、土等の粒度管理された骨材成分を含む水性のスラリー状組成物などを用いるのがよく、特に粒状の軽量発泡骨材、粘土質の土壌、汚泥の焼却灰などの配合するのが好ましい。更に充填材に減水剤などを使用することも、水の量を低く抑えると共に流動性を高めて、充填材の送入抵抗を低下させるのに有効であり、或いはまた、硬化促進剤などを配合した充填材を用いることも、地下空洞の充填効率を高めるのに効果的である。
【0035】
上記のように充填材の給送を始めると、充填材送入孔Eから漏れて流下する充填材はパッカー装置Cの周囲に入り込む。そこで、パッカー装置Cの周囲の中空封止体4aを膨張させて、すべての開口4を閉鎖しておくと、流下した充填材は環状中空封止体2、2に遮られて、パッカー装置Cの周囲の空間内を満たした後に、充填材送入孔Eからの充填材の流下が止まり、地下空洞Fへの充填が進むようになる。
【0036】
こうして地下空洞F内へ充填材を送入してゆくと、地下空洞Fの充填が進むにつれて充填材の送入抵抗が増大してくる。そこで、送入抵抗の急上昇を確認したところで充填材の送入を停止するようにしてもよく、或いは地上からの超音波探査などによって地下空洞Fの充填状態を調査するか、又は地下空洞Fの近傍にある既設のマンホールなどから、地下空洞Fの頂部付近に達する探査管などを設けて、充填材が該頂部付近に達したか否かを調査するなどした後、充填材の送入を停止するようにしてもよい。
【0037】
更に、地下空洞Fへの充填材の圧入を停止して、送入した充填材中の水が地盤G内に拡散吸収され、充填層の状態が安定するのを待ったのち、地下空洞F内の空隙の状態に応じて、前記と同様な骨材や、発泡スチロールビーズや発泡ガラス質バルーン等の軽質骨材を含む充填材、或いは発泡膨張性の充填材などを追加注入するなどして、残る空隙等の充填を進めることができる。
【0038】
また、充填材などを追加注入したのち、又は追加注入しないままで、例えばセメントミルクなどの骨材結合性組成物を更に注入するなどにより、地下空洞F内や充填材送入孔E内の充填材を結合固化させるようにしても良い。しかし、このような骨材結合性組成物の注入は、地下空洞F内及び充填材送入孔E内の充填材が、パッカー装置Cの撤去後に埋設管A内に流入する恐れがなければ、必ずしも必要ではない。
【0039】
このようにして、地下空洞F内の充填が完了したのち、充填材給送ホースをパッカー装置Cの中空封止体3a位置まで後退させ、次いで中空封止体4aを収縮させて排土管5に接続する開口4を開放し、充填材給送ホースと加圧流体管6とに加圧水等を供給して、パッカー装置Cの外側に溜まった充填材を、排土管5を通してパッカー装置Cの前方へ排出する。そして、埋設管Aとパッカー装置Cとの間に残った充填材の除去が終わったのち、パッカー装置Cの中空封止体3aを収縮させ、充填材給送ホースを給送装置導入口3fの位置まで後退させて、パッカー装置Cを撤去回収する。
【0040】
その後、必要に応じて充填材送入孔Eへの充填材の補充などを行ったうえ、埋設管Aの内壁に設けた作業用開孔Bの補修を行い、更に埋設管Aの内部に残った土砂などを、ジェット水などを用いて下流側のマンホール側に流し出すなどして清掃し、地下空洞Fの充填工事を完了する。
【0041】
【発明の効果】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置を使用すれば、既存の地下の埋設管を利用して、地盤を掘削することなく地下空洞に骨材等を充填する工事を、遠隔操作によって安全且つ効率的に実施することができる。そのため、大掛かりな工事を行う必要がなく、また工数が少なく且つ工期も短くて済み、しかも工事終了後の地盤の強度が高くて欠陥発生の恐れが少なく、路面等の利用を阻害することが殆どないばかりでなく、工事による環境汚染の恐れも殆どなく、しかも工事費用も削減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地下空洞充填用パッカー装置の構造を示す断面図である。
【図2】上記の地下空洞充填用パッカー装置のX−X線に沿った断面図である。
【図3】上記の地下空洞充填用パッカー装置のY−Y線に沿った断面図である。
【図4】地盤内の空洞を充填する状態の説明図である。
【符号の説明】
A 埋設管
B 作業用開孔
C パッカー装置
D 牽引索
E 充填材送入孔
F 地下空洞
G 地盤
1 筒状缶体
1a 管状通路
2 環状中空封止体
2a 加圧流体管
2b 延長流体導管
3 ガイド管
3a 中空封止体
3b 加圧流体管
3c 導入口部
3d 掘削装置導入口
3e 導入ホース
3f 給送装置導入口
3g 導入ホース
4 開口
4a 中空封止体
4b 加圧流体管
4c 延長流体導管
5 排土管
5a 吸引管
6 加圧流体管
6a 延長流体導管
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下空洞充填用パッカー装置に関し、特に、地下埋設管等の欠陥部などから土砂等が流出することにより発生した地下空洞を、該地下埋設管等の欠陥部などを利用して効率的に充填するために使用するパッカー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
道路下の地盤内には、上水道、下水道、或いは都市ガス、電力、通信等の種々の管路が埋設されていることが多く、これらの管路に破損が発生すると、破損部位から漏出した水などによって地盤内の土砂が流失するなどにより、地盤内に空洞が発生することがある。このような空洞を放置しておくと、規模が拡大して路面の陥没につながるばかりでなく、交通の障害となるほか、各種の構築物等の破損をも引き起こすことにもなる。
【0003】
そのため地盤内の空洞が発見されたときには、先ず埋設管等の欠陥が原因であるかどうかが疑われ、調査が行われることが多い。そして空洞の規模や形状の調査結果に基づいて、空洞部分上部の土砂を除去して新たな土砂を充填し、改めて舗装をし直すなどにより、復旧工事を行うのが普通であった。しかしこのように地上から掘削する方法は、大量の土砂を搬出したのち更に埋め戻す必要があるために、工期が長くかかるうえ費用も嵩み、交通の障害となるほか騒音や粉塵などによる環境汚染の問題もある。
【0004】
そこで本発明者は、前述の問題の発生を避けるために、地上から土砂の掘削を行う代わりに小径の孔を穿設し、この孔を介して地下の空洞部分に直接に地上から土砂等を充填して、安定化させる工法を発明し、特許を得ている (特2733755 、特3037929)。しかしこのような工法でも、地盤内に各種の管路や構築物等が複雑に設置されている場合などでは、前記の小径孔を穿設する工事が容易でない場合があるため、上記の工法の不利を避け得る新規な工法として、地下空洞の発生原因となった欠陥を持つ埋設管等を利用して空洞を充填する方法 (特願2001-257877)を提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記のような埋設管の近傍に発生した地下空洞を充填する工法を、埋設管の内部から効率的に実施するに適した装置を提供することを目的としたもので、具体的には、下水管等の埋設管内に該装置を導入して固定し、該埋設管の欠陥部等から地下空洞に達する充填材送入孔を掘削し、その後該送入孔から該地下空洞に充填材を送入して固化させ、短時間で効率的に地盤を強化するに用いるパッカー装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置は、埋設管内に設置して該埋設管の近接位置に発生した地下空洞を充填するに用いる装置であって、軸方向に管状通路を有する筒状缶体の前後両側外周に接して膨張収縮が可能な環状中空封止体を設けると共に、該管状通路内には、該筒状缶体の一方端から中央部外周面の一部位に達して外方に開口するガイド管と、該中央部外周面の他部位で外方に向かって開口し該筒状缶体の他方端に達する1以上の排土管とを少なくとも設けてなり、該ガイド管は屈曲制御可能で長尺の小径孔掘削装置と屈曲制御可能で長尺の孔内観察装置と屈曲制御可能で長尺の充填材給送装置とから選ばれた、少なくとも1種以上の作業用装置の挿通を案内できるように構成したものである。
【0007】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置において、前記ガイド管の前記中央部外周面側開口端部に、挿通された前記1種以上の作業用装置の周囲に生ずる隙間を封止する中空封止体が設けられていると、外部の土砂や泥水が装置内、特に前記ガイド管内に流入して内面などを汚損し、或いは作業用装置の挿通を案内する支障となるのを防止できる。
【0008】
更に、前記筒状缶体の一方端側近傍にある前記ガイド管の端部に、前記1種以上の作業用装置の導入口がそれぞれ設けられていると、所望の作業用装置を選択して前記ガイド管内に導入することが容易となり、作業用装置を交換しながら円滑に地下空洞充填の作業を進めることができる。
【0009】
また本発明の地下空洞充填用パッカー装置において、前記排土管の前記中央部外周面側開口端部付近に、泥水吸引用のエジェクタが設けられていると、掘削作業の進行に伴って装置の周囲に流下する土砂や泥水などを、前記排土管内に迅速に吸い上げると同時に、装置の他方端に向かって排出することができ、掘削作業と排土作業とを連携させて効率的に実施することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の地下空洞充填用パッカー装置を、図に基づいて説明する。
図1において、Aは破損箇所などがある下水管等の埋設管であり、Bは、埋設管Aの近傍に発生した地下空洞Fを充填するために、埋設管Aに予め設けた作業用開孔である。そしてCは、埋設管A内に牽引索Dなどによって導入された、本発明の地下空洞充填用パッカー装置である。
【0011】
図に示すパッカー装置Cにおいて、1は軸方向に管状通路1aを備えた筒状缶体であり、その前後の両側部に、外周を取り巻くように環状中空封止体2、2が設けてある。これらの環状中空封止体2、2の内部空間は、管状通路1a内を通して設けた加圧流体管2aと、それぞれ連通している。そして該加圧流体管2aは、地上から埋設管A内を通して引き込まれた延長流体導管2bと接続され、地上の制御装置から供給される加圧空気などの加圧流体は、延長流体導管2bと加圧流体管2aとを経て環状中空封止体2、2を膨張させ、埋設管Aとパッカー装置Cとの間隙を封止できるようになっている。
【0012】
また、上記の筒状缶体1の管状通路1a内には、パッカー装置Cの後方(図において左方)端部付近から中央部までガイド管3が延設されている。このガイド管3の先端は、筒状缶体1の中央部の外周面に達して外方に向かって開口していて、ガイド管3の基端から導入された作業用装置、すなわち、後述するような屈曲制御可能で長尺の小径孔掘削装置と、これと同様な孔内観察装置と、これまた同様な充填材給送装置とから選ばれた作業用装置を導いて、パッカー装置Cの中央部外周面から外方に突出させることができるように、構成されている。
【0013】
このガイド管3の先端部には、ここから突出した作業用装置の周囲に形成される間隙を封止するために、中空封止体3aが設けられており、加圧流体管3bから導入される加圧空気などにより膨張して、ガイド管3内に泥水や土砂等が浸入するのを防止できるようになっている。そしてまた、ガイド管3の先端部付近には、突出した作業用装置が不用意に後退することなどが起こらないように、作業用装置を係止或いは固定する装置などを、設けておくことが望ましい。その一方で、ガイド管3の基端には、パッカー装置Cと組み合わせて用いる1種以上の作業用装置を導入するための、導入口部3cが形成されている。
【0014】
そしてまた、筒状缶体1の中央部外周面の、ガイド管3が開口していない部位、例えば90°又は180°隔たった位置などに、1個以上の開口4、4が設けてある。これらの開口4は、パッカー装置Cの外側での漏水や、掘削作業などに伴って発生する土砂や泥水などを、排出するために設けたもので、開口4それぞれの周囲には、埋設管Aの内面とパッカー装置Cの外面との間隙を封止するための、環状の中空封止体4aが設けてあり、必要に応じて、延長流体導管4cと加圧流体管4bとを経て加圧空気などを導入して、中空封止体4aを膨張させることで、開口4を閉鎖できるように構成してある。
【0015】
その一方で管状通路1a内には、筒状缶体1と軸が平行になるように排土管5が設けてある。この排土管5の後方端と前方端は、それぞれ管状通路1aの後方端付近と前方端付近で開放されているほか、排土管5の中央部から吸引管5aが分岐して前記の開口4に接続されている。そして、該排土管5の後方から吸引管5aの分岐部に隣接する部位まで、先端がノズル状となった細目の加圧流体管6が同軸的に挿設されており、泥水吸引用のエジェクタを形成している。
【0016】
前記の加圧流体管6には、その後方に接続される延長流体導管6aから加圧水又は加圧空気などを供給すると、加圧流体が先端のノズルから噴出することによりエジェクタが働き、開口4近傍の泥水などを吸引して排土管5の前方端から、パッカー装置Cの前方に向かって放出するように作用する。
【0017】
このような本発明のパッカー装置Cを用いて地下空洞を充填するに当たり、パッカー装置Cと共に下水管等の埋設管A内に導入する作業用装置は、少なくとも小径孔掘削装置と孔内観察装置と充填材給送装置とである。そのうち小径孔掘削装置は、埋設管Aの欠陥部等に形成された作業用開孔Bから、地下空洞に通ずる小径の充填材送入孔を設けるための掘削作業用装置であり、例えば長尺の高圧ホースの先端に高圧水ジェットノズルを設けた水ジェット掘削装置などが、好ましく用いられる。こうした水ジェット掘削装置は、高圧ホースが屈曲可能であって、ジェットノズルの方向を制御できるものが、特に好ましい。
【0018】
上記の小径孔掘削装置は、例えば地上などに設置した高圧水ポンプ装置と、ジェットノズルを備えた高圧ホースとからなる。この装置を使用するに際しては、パッカー装置Cのガイド管3の導入口部3cから該高圧ホースを挿入し、ガイド管3に沿って高圧ホースを送り込むと共に、ジェットノズルをガイド管3の先端部から突出させる。そして、必要に応じてジェットノズルの後部などをガイド管3の先端部付近に係止し、中空封止体3aを膨張させてガイド管3と高圧ホースとの間隙を封止したのち、充填材送入孔の掘削を開始するものである。
【0019】
この際のガイド管3に高圧ホースを導入する作業を容易にするために、ガイド管3の導入口部3cに形成した、高圧ホースの太さに応じた径を有する掘削装置導入口3dに、予め長尺で同径の導入ホース3eを接続し、その後方端を地上或いはマンホール位置などに留めておくことが好ましい。こうしておくと、高圧ホースの先端を導入ホース3eの後方端から挿入し、高圧ホースを導入ホース3eの中へ順次に押し込むことで、小径孔掘削装置を円滑にパッカー装置Cに組み込むことができる。
【0020】
また、上記の小径孔掘削装置と併用される孔内観察装置は、該小径孔掘削装置によって掘削された充填材送入孔Eや、該充填材送入孔Eが到達した地下空洞Fの状況を観察して、地下空洞Fに充填材の給送開始時点の判定をするための装置である。この孔内観察装置としては、例えば先端に小型のテレビカメラを設けた可撓性のケーブルを、地上に設置したモニター装置に接続してなる内視鏡式の観察装置が、好ましく用いられる。このような孔内観察装置は、テレビカメラ部の観察方向を自由に調節できるものであることが、特に望ましい。
【0021】
こうした孔内観察装置は、単独に保護チューブの中に挿通した形態の独立の装置として、パッカー装置Cに組み込むことができるが、上記の小径孔掘削装置と組み合わせた上更に太い保護チューブの中に挿通して、複合形態の装置として使用することもできる。これらの独立形態の装置、或いは複合形態の装置の何れであっても、パッカー装置Cに組み込むには、前記の掘削装置導入口3dに接続した導入ホース3eを利用する方法に準じて、同様にして行うことができる。
【0022】
上記のように孔内観察装置を小径孔掘削装置との複合装置として用いると、小径孔掘削装置による掘削作業を実行中に作業状態を観察することができる。また孔内観察装置を独立装置として用いるときは、孔内観察装置をガイド管3の導入口部3c近傍に退避させて掘削作業を実行し、掘削作業を中断し小径孔掘削装置を導入口部3c近傍に退避させて孔内の観察作業を行うことができる。
【0023】
更に、充填材給送装置は、前記の小径孔掘削装置によって掘削された充填材送入孔Eを通じて、地下空洞F並びに該充填材送入孔Eを充填するための装置であり、地上に設置した充填材調整装置及び充填材ポンプ装置と、これから圧送される流動性充填材を送る長尺で可撓性の充填材給送ホースとから構成される。こうした充填材給送装置は、前記の小径孔掘削装置とは別の独立した装置であってもよいが、小径孔掘削装置のジェットノズルの形状を、流動性充填材が給送できるようにすれば、充填材給送装置との兼用にすることもできる。
【0024】
一方、本発明のパッカー装置Cのガイド管3の導入口部3cには、該可撓性の給送ホースの先端部を挿入する給送装置導入口3fが設けてあり、これに予め長尺で同径の導入ホース3gを接続しておいて、その後方端を地上或いはマンホール位置などに止めておくことが好ましい。こうすると、小径孔掘削装置による充填材送入孔Eの掘削が終了した後に、掘削装置を導入口部3c近傍に退避させた後、導入ホース3gを介して給送装置導入口3fからガイド管3内に、充填材給送ホースを導入することができる。
【0025】
上記のような構成を備えた本発明の地下空洞充填用パッカー装置を使用して、埋設管Aの近傍に発生した地下空洞Fを充填する方法を以下に説明する。
図4において、地盤G内に埋設された下水管などの埋設管Aの一部に折損や接合部のずれ等が生じると、地盤G内の圧力を有する地下水が地盤内の土砂等と共に埋設管A内に流入して、地盤G内に地下空洞Fが発生し、次第に成長して上方に向かって発達する。このような地下空洞Fは、例えば超音波による地下構造探査などにより発見されると、地表の近くまで発達していない段階で、早期に土砂などで充填して地盤を補強することが望まれる。
【0026】
そこで、地下空洞Fが発見された場合には、先ず地上から超音波などによる地下構造探査などを行って、地下空洞Fの位置や規模などを調査すると共に、地下空洞Fの発生原因と疑われる埋設管Aに、例えばファイバースコープやテレビカメラ等を導入して、欠陥部の存在を調査する。その結果、地下空洞Fから埋設管Aの欠陥部への土砂流路の存在が推定できたときは、該欠陥部から土砂等の充填材を送り込む通路を設けるのに利用できるかを調査し、利用が可能であると判断されたときは、例えば上流側のマンホールなどから埋設管Aに管壁穿孔機などを導入して、欠陥部などに作業用開孔Bを削孔する。
【0027】
次いで、例えば図1の本発明の地下空洞充填用パッカー装置を準備すると同時に、小径孔掘削装置、孔内観察装置、充填材給送装置などの作業用装置、並びに空洞充填用材料などの各種資材を準備し、更にパッカー装置を載置できると共に、例えば牽引ワイヤなどで遠隔操作するなどにより、載置したパッカー装置を左右に転動させる機構を備えた移動用橇を、必要に応じて用意する。
【0028】
そして、上流側のマンホールなどから埋設管A内に、移動用橇に載せたパッカー装置Cを牽引索Dを用いて引き込み、パッカー装置Cの中央部を作業用開孔Bの位置に合わせてから、パッカー装置Cの前後位置を前方及び後方の牽引索Dによって固定する。更に、パッカー装置Cを転動させて、ガイド管3の先端の開口を作業用開孔Bに正対させた後、環状中空封止体2、2を膨張させ、パッカー装置Cを埋設管Aの内壁に対して固定する。その後、導入ホース3eに小径孔掘削装置と孔内観察装置との複合装置を、また導入ホース3gに充填材給送装置をそれぞれ導入して、パッカー装置Cにそれぞれの作業用装置を組み込む。
【0029】
こうしてパッカー装置Cを埋設管A内に設置したのち、小径孔掘削装置のジェットノズルを、ガイド管3の先端からパッカー装置Cの外側に突出させ、作業用開孔Bに向かわせて係止すると共に中空封止体3aを膨張させて、掘削装置の高圧ホース又はその保護チューブとガイド管3との間隙を封止し、ガイド管3内に土砂等が侵入しないようにする。その後、掘削装置の高圧水ポンプを作動させてノズルから高圧水を噴出させ、作業用開孔Bの位置から地下空洞Fの底位置に向かって、充填材送入孔Eの掘削を開始する。
【0030】
このようにして地盤Gの掘削を始めると、地質の安定性が不足して掘削孔の壁が崩壊しやすいことが分かる場合がある。そのようなときには、一旦掘削を中止して掘削装置を後退させ、代わりに充填材給送装置を前進させて、例えばセメントミルクなどのグラウト剤を注入し、地質の安定性が改良されるのを待って、再び地盤Gの掘削を開始することが望ましい。
【0031】
こうして地盤Gの掘削が進むと、高圧水ジェットによって堀り崩された土砂は泥水となって掘削孔内を逆流し、パッカー装置Cの位置まで流下するが、掘削装置とガイド管3との隙間は中空封止体3aにより封止されているので、泥水はパッカー装置Cの周囲の空間に沿って流下し、パッカー装置Cの前後に設けられた環状中空封止体2、2の間に溜まる。そこで中空封止体4aを収縮させると、泥水は開口4から吸引管5aを通って排土管5内に流入し、延長流体導管6aから加圧流体管6に供給された加圧水又は加圧空気などによって、泥水が排土管5から前方に向かって放出されるばかりでなく、パッカー装置Cの周囲の泥水も開口4から吸引されてパッカー装置Cの前方に向かって放出される。
【0032】
このようにして充填材送入孔Eの掘削と土砂の排出とを平行して進めると、掘削の能力より排土の能力が勝る場合がある。このときは下方に位置する排土管5を優先して使用するために、上方に位置する排土管5に接続する開口4を、中空封止体4aを膨張させて閉鎖することができる。またパッカー装置Cの前方に放出された土砂が堆積することを防ぐために、加圧流体管6から放出する水量を増加させて、パッカー装置Cの前方の土砂を、埋設管Aの下流方向に押し流すようにすることもできる。
【0033】
充填材送入孔Eの掘削状況は、小径孔掘削装置と併設された孔内観察装置によって、逐次に観察することができるので、充填材送入孔Eが地下空洞Fに到達したことを確認したときは、掘削を一時停止して地下空洞Fの形状や規模その他の状況を調査し、充填材送入孔Eの周囲の地質の補強の必要性も検討して、地下空洞Fの充填作業の計画を最終的に決定する。
【0034】
こうして小径孔掘削装置と孔内観察装置を、ガイド管3の導入口部3cまで引き戻したのち、充填材給送装置の充填材給送ホースを給送装置導入口3fから前進させ、更にガイド管3との隙間を中空封止体3aにより封止して、充填材送入孔Eから地下空洞Fに充填材の給送を開始する。このとき用いられる充填材としては、例えば、礫、砂、土等の粒度管理された骨材成分を含む水性のスラリー状組成物などを用いるのがよく、特に粒状の軽量発泡骨材、粘土質の土壌、汚泥の焼却灰などの配合するのが好ましい。更に充填材に減水剤などを使用することも、水の量を低く抑えると共に流動性を高めて、充填材の送入抵抗を低下させるのに有効であり、或いはまた、硬化促進剤などを配合した充填材を用いることも、地下空洞の充填効率を高めるのに効果的である。
【0035】
上記のように充填材の給送を始めると、充填材送入孔Eから漏れて流下する充填材はパッカー装置Cの周囲に入り込む。そこで、パッカー装置Cの周囲の中空封止体4aを膨張させて、すべての開口4を閉鎖しておくと、流下した充填材は環状中空封止体2、2に遮られて、パッカー装置Cの周囲の空間内を満たした後に、充填材送入孔Eからの充填材の流下が止まり、地下空洞Fへの充填が進むようになる。
【0036】
こうして地下空洞F内へ充填材を送入してゆくと、地下空洞Fの充填が進むにつれて充填材の送入抵抗が増大してくる。そこで、送入抵抗の急上昇を確認したところで充填材の送入を停止するようにしてもよく、或いは地上からの超音波探査などによって地下空洞Fの充填状態を調査するか、又は地下空洞Fの近傍にある既設のマンホールなどから、地下空洞Fの頂部付近に達する探査管などを設けて、充填材が該頂部付近に達したか否かを調査するなどした後、充填材の送入を停止するようにしてもよい。
【0037】
更に、地下空洞Fへの充填材の圧入を停止して、送入した充填材中の水が地盤G内に拡散吸収され、充填層の状態が安定するのを待ったのち、地下空洞F内の空隙の状態に応じて、前記と同様な骨材や、発泡スチロールビーズや発泡ガラス質バルーン等の軽質骨材を含む充填材、或いは発泡膨張性の充填材などを追加注入するなどして、残る空隙等の充填を進めることができる。
【0038】
また、充填材などを追加注入したのち、又は追加注入しないままで、例えばセメントミルクなどの骨材結合性組成物を更に注入するなどにより、地下空洞F内や充填材送入孔E内の充填材を結合固化させるようにしても良い。しかし、このような骨材結合性組成物の注入は、地下空洞F内及び充填材送入孔E内の充填材が、パッカー装置Cの撤去後に埋設管A内に流入する恐れがなければ、必ずしも必要ではない。
【0039】
このようにして、地下空洞F内の充填が完了したのち、充填材給送ホースをパッカー装置Cの中空封止体3a位置まで後退させ、次いで中空封止体4aを収縮させて排土管5に接続する開口4を開放し、充填材給送ホースと加圧流体管6とに加圧水等を供給して、パッカー装置Cの外側に溜まった充填材を、排土管5を通してパッカー装置Cの前方へ排出する。そして、埋設管Aとパッカー装置Cとの間に残った充填材の除去が終わったのち、パッカー装置Cの中空封止体3aを収縮させ、充填材給送ホースを給送装置導入口3fの位置まで後退させて、パッカー装置Cを撤去回収する。
【0040】
その後、必要に応じて充填材送入孔Eへの充填材の補充などを行ったうえ、埋設管Aの内壁に設けた作業用開孔Bの補修を行い、更に埋設管Aの内部に残った土砂などを、ジェット水などを用いて下流側のマンホール側に流し出すなどして清掃し、地下空洞Fの充填工事を完了する。
【0041】
【発明の効果】
本発明の地下空洞充填用パッカー装置を使用すれば、既存の地下の埋設管を利用して、地盤を掘削することなく地下空洞に骨材等を充填する工事を、遠隔操作によって安全且つ効率的に実施することができる。そのため、大掛かりな工事を行う必要がなく、また工数が少なく且つ工期も短くて済み、しかも工事終了後の地盤の強度が高くて欠陥発生の恐れが少なく、路面等の利用を阻害することが殆どないばかりでなく、工事による環境汚染の恐れも殆どなく、しかも工事費用も削減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の地下空洞充填用パッカー装置の構造を示す断面図である。
【図2】上記の地下空洞充填用パッカー装置のX−X線に沿った断面図である。
【図3】上記の地下空洞充填用パッカー装置のY−Y線に沿った断面図である。
【図4】地盤内の空洞を充填する状態の説明図である。
【符号の説明】
A 埋設管
B 作業用開孔
C パッカー装置
D 牽引索
E 充填材送入孔
F 地下空洞
G 地盤
1 筒状缶体
1a 管状通路
2 環状中空封止体
2a 加圧流体管
2b 延長流体導管
3 ガイド管
3a 中空封止体
3b 加圧流体管
3c 導入口部
3d 掘削装置導入口
3e 導入ホース
3f 給送装置導入口
3g 導入ホース
4 開口
4a 中空封止体
4b 加圧流体管
4c 延長流体導管
5 排土管
5a 吸引管
6 加圧流体管
6a 延長流体導管
Claims (7)
- 埋設管内に設置して該埋設管の近接位置に発生した地下空洞を充填するに用いる装置であって、軸方向に管状通路を有する筒状缶体の前後両側外周に接して膨張収縮が可能な環状中空封止体を設けると共に、該管状通路内には、該筒状缶体の一方端から中央部外周面の一部位に達して外方に開口するガイド管と、該中央部外周面の他部位で外方に向かって開口し該筒状缶体の他方端に達する1以上の排土管とを少なくとも設けてなり、該ガイド管は屈曲制御可能で長尺の小径孔掘削装置と屈曲制御可能で長尺の孔内観察装置と屈曲制御可能で長尺の充填材給送装置とから選ばれた、少なくとも1種以上の作業用装置の挿通を案内できることを特徴とする、地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記ガイド管の前記中央部外周面側開口端部に、挿通された前記1種以上の作業用装置の周囲に生ずる隙間を封止する中空封止体が設けられている、請求項1に記載の地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記筒状缶体の一方端側近傍にある前記ガイド管の端部に、前記1種以上の作業用装置の導入口がそれぞれ設けられている、請求項1又は2に記載の地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記排土管の前記中央部外周面側開口端部付近に、泥水吸引用のエジェクタが設けられている、請求項1乃至3のいずれかに記載の地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記小径孔掘削装置が圧力水ジェット式掘削装置である、請求項1乃至4のいずれかに記載の地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記孔内観察装置が、内視鏡式モニタテレビ装置である、請求項1乃至5のいずれかに記載の地下空洞充填用パッカー装置。
- 前記充填材給送装置が、可撓ホース付スラリーポンプ装置である、請求項1乃至6のいずれかに記載の地下空洞充填用パッカー装置。
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