JP3654768B2 - トラップシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、チタン酸バリウム/ストロンチウム等の高誘電体又は強誘電体薄膜を基板上に気相成長させる薄膜気相成長装置に使用されるトラップシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体産業における集積回路の集積度の向上はめざましく、現状のメガビットオーダから、将来のギガビットオーダを睨んだDRAMの研究開発が行われている。かかるDRAMの製造のためには、小さな面積で大容量が得られるキャパシタ素子が必要である。このような大容量素子の製造に用いる誘電体薄膜として、誘電率が10以下であるシリコン酸化膜やシリコン窒化膜に替えて、誘電率が20程度である五酸化タンタル(Ta2O5) 薄膜、あるいは誘電率が300程度であるチタン酸バリウム(BaTiO3) 、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)又はこれらの混合物であるチタン酸バリウムストロンチウム等の金属酸化物薄膜材料が有望視されている。また、さらに誘電率が高いPZT、PLZT、Y1等の強誘電体の薄膜材料も有望視されている。
【0003】
ところで、このような素材の成膜を行う方法として、化学気相成長(CVD)が有望とされており、この場合、成膜室内で原料ガスを被成膜基板に安定的に供給する必要がある。原料ガスは、常温で固体のBa(DPM)2、Sr(DPM)2 などを液状化し、さらに気化特性を安定化させるために有機溶剤(例えばTHFなど)を混合させたものを気化器で加熱し気化することによって生成される。
【0004】
この種の薄膜気相成長装置においては、気化器で気化させた原料ガスを成膜室に供給する原料ガス流路の他に、この供給流路から分岐するバイパス流路を設けており、成膜していない時や、気化状態が安定するまでの原料ガスをこのバイパス流路内を流し、これに設けたトラップ装置で原料ガスの成分をトラップして、しかる後に大気に排気するようにしている。
【0005】
このように、トラップ装置を備えたバイパス流路を設けると、トラップ装置の内部に付着した付着物を除去するため、必要に応じて、或いは定期的にトラップ装置の内部を洗浄する必要がある。この種の洗浄は、トラップ装置を取り外して別の場所で行っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トラップ装置の洗浄を別の場所で行うと、作業性が悪いばかりでなく、特に、トラップ装置を通過してバイパス流路を流れる原料ガスや処理ガスの量が非常に多い場合には、トラップ装置の交換頻度が高くなる、あるいは、トラップ装置を大型化しなければならない等の不具合が生じた。
【0007】
また、成膜中に気化器に気化された原料ガスがバイパス流路を流れないようにするため、このバイパス流路の入口付近には、一般に電磁弁等の開閉弁が設けられているが、この種の原料ガスは、気化させることが一般に困難で、気化器の2次側に未気化物や変質物が流出してしまうことが多い。そして、これらの未気化物や変質物が気化器の2次側に流出すると、図3に示すように、開閉弁10の内部を流れて弁シート12や弁体14に付着して、弁のシール性を失わせたり、弁の合わせ面を傷つけることがあった。
【0008】
なお、開閉弁自体を保温、加熱したとしても、それが不完全で温度が低下した場合には、弁体内で原料の再凝縮が発生し、また加熱し過ぎると原料ガスが変質して付着してしまう。
【0009】
この発明は上記に鑑み、ガス流路に備えられたトラップ装置の内部を該トラップ装置を取り外すことなく、短時間で確実に洗浄することができ、またガス流路の開閉を確実に行うことができるようにした原料ガス排気システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、ガス流路においてガス中に含まれる成分をトラップするトラップ装置と、前記トラップ装置の内部に付着した付着物を溶解させる洗浄液を該トラップ装置の内部に供給し循環させる洗浄流路と、前記トラップ装置を前記ガス流路と洗浄流路のいずれかに選択的に連絡する弁装置とを有し、前記洗浄流路の途中に、前記付着物を溶解させた洗浄液を回収する洗浄液タンクと、前記洗浄液を前記トラップ装置内の温度における略蒸気圧以上に加圧する加圧手段を設けたことを特徴とするトラップシステムである。
【0011】
これにより、トラップ装置の内部に洗浄液を流し、この洗浄液にトラップ装置の内部に付着したガス中の成分を溶解させて効率的に洗浄することができ、トラップ装置の稼動効率を向上させることができる。洗浄液として、洗浄液能力が高く、しかも成分を高い割合で溶解させることができるような適当な溶剤を用いることにより、トラップされた成分をスペースを取らずに容易に保管したり移送したりすることができ、処理や再利用が容易となる。あるいは、溶剤としては原料液自体の溶媒を使用することで、不特定の成分の混入を防ぐことができる。
【0012】
また、トラップ装置でトラップした原料ガスの成分を洗浄液と共に洗浄液タンクに回収して再利用することができる。
【0013】
さらに、洗浄液を液状のままトラップ装置の内部に導いて、トラップ装置の内部を効率的に洗浄することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、ガス流路においてガス中に含まれる成分をトラップするトラップ装置と、前記トラップ装置の内部に付着した付着物を溶解させる洗浄液を該トラップ装置の内部に供給し循環させる洗浄流路と、前記トラップ装置を前記ガス流路と洗浄流路のいずれかに選択的に連絡する弁装置とを有し、前記洗浄流路の途中に、前記付着物を溶解させた洗浄液を回収する洗浄液タンクと、前記洗浄液を加温する加温手段を設けたことを特徴とするトラップシステムである。これにより、洗浄液の温度を高め、付着物の溶解速度及びこの飽和溶解度を高めて洗浄効果を高めることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、例えば液状のBa(DPM)2 ,Sr(DPM)2 等を有機溶剤(例えばTHFなど)中に溶解させた液体原料を気化器20で気化させて原料ガスを生成し、このガス原料と酸素含有ガスとを混合させつつ、成膜室(反応室)22内で一定の温度に加熱した基板に噴射して、この基板上に金属酸化物薄膜を気相成長させる成膜システムを示すものである。
【0018】
気化器20には、上流側の液体原料源に繋がる液体原料流路26と、液体原料をその気化温度以上に加熱するヒータ24が設けられている。また、下流側には、気化した原料ガスを排出する原料ガス流路28を有しており、これは気化器20の下流で開閉弁32a、成膜室22及びトラップ装置36aに繋がる成膜流路29と、開閉弁32b、トラップ装置36bを有するバイパス流路30に分岐し、それぞれの流路に設けた開閉弁32c,32dの下流で再度合流してポンプ38に繋がっている。
【0019】
トラップ装置36a,36bは、この例においては、液体窒素のような液体または冷却された空気等の冷却用熱媒体を流通させることにより、原料ガスの成分をトラップ部に付着させてこれを排ガスから除去する低温トラップであるが、トラップの作用や構造はこれに限られるものではない。各トラップには、図示しない熱媒体供給源に接続された冷却媒体供給流路40及び排出流路42がそれぞれ備えられている。
【0020】
バイパス流路30のトラップ装置36bには、この内部に付着した付着物を除去する洗浄装置が設けられている。すなわち、このトラップ装置36bの入口側及び出口側にそれぞれ開閉弁32e,32fを介して洗浄流路44が接続されている。この洗浄流路44は、THF等の溶剤を主体とする洗浄液46を貯蔵する洗浄液タンク48、洗浄液タンク48の洗浄液46を加圧しながら順次送出する循環ポンプ52、洗浄液46から固形成分を除去するフィルタ56を有する循環流路として構成されている。フィルタ56の下流側には、トラップ装置36bの内部にHe等のパージガスを注入するパージガス注入流路58が開閉弁32gを介して接続されている。
【0021】
この洗浄液タンク48には、洗浄液46を加温するヒータ50と、洗浄液46の液面をHeガス等のガスで加圧する加圧装置54が設けられている。加圧装置54は、洗浄液46が液体状態でトラップ装置36bの内部に流入するように、洗浄液46をこのトラップ装置36b内における蒸気圧以上に加圧するために設けられており、循環ポンプ52のみで洗浄液46を蒸気圧以上に加圧できるような場合には必ずしも必要ではない。しかしながら、加圧装置54を備えることによって、循環ポンプ52の吸込み側で低圧となって、洗浄液46が循環ポンプ52の吸込み側で一部で気化してしまうことを防止することができる。もちろん、洗浄領域の出口末端部に蒸気圧以上のクラッキング圧の逆止弁を設け、洗浄領域内に圧力を掛けるようにしてもよい。
【0022】
次に、この実施の形態の成膜装置の作用を説明する。成膜工程においては、バイパス流路30内の開閉弁32b,32dを閉とし、成膜流路29側の開閉弁32a,32cを開として気化した原料ガスを成膜室22に導いて成膜を行なう。成膜処理が済んで次の被処理基板を成膜室22に供給する間は、成膜流路29側の開閉弁32a,32cを閉とし、バイパス流路30内の開閉弁32b,32dを開として、原料ガスをバイパス流路28に導き、トラップ装置36bを動作して原料ガス成分をトラップした後、ポンプ38により放出する。
【0023】
所定時間のトラップ処理を行って、トラップ装置36b内に所定量の付着物が堆積すると、以下のようにして洗浄工程を行なう。先ず、バイパス流路30内の開閉弁32b,32dを閉じ、加圧装置54を介して洗浄液タンク48内の洗浄液46の液面を、トラップ装置36b内の温度における洗浄液の蒸気圧以上の圧力に加圧し、洗浄液タンク48のヒータ50で洗浄液46を加温しておく。そして、循環ポンプ52を駆動し、開閉弁32eを開いて洗浄液46をトラップ装置36bの内部に充満させる。この時、トラップ装置36b内は真空雰囲気にあるので洗浄液は迅速に、かつ完全に液充させた状態にすることができる。その後、液体を循環させることで洗浄部位を完全に液で濡らしながら洗浄液を流すことができるため、洗浄効果を高めることができる。
【0024】
加圧装置54の加圧により、洗浄液46はトラップ装置36b内の温度で気化せずに、液体の状態で流入し、付着物を溶解させて効率的にトラップ装置36bの内部を洗浄する。また、ヒータ50で洗浄液46を加温しているので、付着物の溶解速度及び飽和溶解度が高くなっており、これによっても洗浄効果が高められる。
【0025】
さらに、洗浄流路44の他の開閉弁32fを開いて洗浄液46を循環させる。トラップ装置36bでトラップした原料ガスの成分は洗浄液タンク48中の洗浄液46の濃度を上昇させて洗浄液タンク48内に順次蓄積する。THFのように原料ガス成分が高濃度で溶解するような溶媒を洗浄液46として選ぶことにより、洗浄液タンク48の容積を大きくしたり、洗浄液46の交換を頻繁に行なう必要がない。
【0026】
所定の量の原料ガスが溶解すると、洗浄液46の体積も増えて洗浄能力が低下するので、洗浄液46を交換する。液換えのタイミングは、洗浄液46の容積、質量、比重、光の透過量、誘電率、粘度等の種々のパラメータの変化により検知することができる。
【0027】
この例では、洗浄液46は液体原料の溶媒と同じであるので、タンク48内の洗浄液を成分調整等行って液体原料として再利用することができる。この場合でも、多量の原料ガスを洗浄液46に溶解させることができるので保管や移動が便利でかつ場所を取らない。なお、洗浄液タンク48に低濃度の洗浄液46を連続的に補充しつつ高濃度の洗浄液を抜き出すようにして洗浄液濃度を維持するようにしてもよい。
【0028】
そして、循環ポンプ52を停止した後、パージガス注入流路58の開閉弁32gを開いてパージガスをトラップ装置36bの内部に導入し、トラップ装置36b内の洗浄液46を全て洗浄液タンク48に回収して、洗浄流路44の両開閉弁32e,32fを閉じる。そして、バイパス流路30内の排気ポンプ38側の開閉弁32dを開き、排気ポンプ38を作動させて真空排気し、トラップ装置36b内に残った残留洗浄液を蒸発させて排気し、洗浄を完了する。
【0029】
上記の実施の形態においては、バイパス流路36のトラップ装置36bの内部を洗浄するようにした例を示しているが、成膜流路30のトラップ装置36aの内部を洗浄する同様の洗浄流路を設けても良いことは勿論である。
【0030】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示すものである。この実施の形態が先の実施の形態と異なる点は、気化器20とトラップ装置36bの間のバイパス流路30に開閉弁が設けられておらず、ここに開閉弁32hを介してパージガス注入流路60が接続されている点、及び液体原料流路26が開閉弁32j,32kを介して気化器20の上流で洗浄液タンク48に繋がるベント流路60aに分岐している点である。これにより、洗浄流路44は、洗浄液タンク48、ポンプ52、フィルタ56、開閉弁32e、トラップ装置36bの出口、トラップ装置の入口、バイパス流路30、原料ガス流路28、気化器20、液体原料流路26、開閉弁32k、ベント流路60aを経由して洗浄液タンク48に戻るように形成される。
【0031】
このように構成された第2の実施の形態のトラップシステムにおいては、成膜時においてバイパス流路30内の原料ガスの流れを遮断する時には、成膜流路29の開閉弁32a,32cを開くとともに開閉弁32dを閉じる。開閉弁32hを開いて気化器とトラップ装置36bの間の流路にガス注入流路60から微量のAr等のキャリアガスを流す。これにより、成膜工程では大部分の原料ガスは成膜流路29側に流れ、キャリアガスにより一部の原料ガスがトラップ装置36bに流入するのも防止される。
【0032】
このような構成により、未気化物や変質物を含むガスが流れる流路に、これらが付着しやすい弁構造を設けることなく流路の切換を行なうようにしており、従って、弁体や弁シートへのこれらの物質の付着による弁機能の劣化の問題が無く、バイパス流路30の開閉を確実に行うことができる。
【0033】
気化器20が安定化するまでの時間あるいは成膜が終わった時は、先の実施の形態と同様に、成膜流路29の開閉弁32a,32cを閉じ、ガス注入流路60の開閉弁32hも閉じ、バイパス流路30の開閉弁32dを開いてトラップ装置36bでのトラップ処理を行なう。そして、トラップ装置36bを洗浄する時は、さらにバイパス流路30の開閉弁32dを閉じ、洗浄流路44の開閉弁32eを開いて、洗浄液46を洗浄液タンク48、ポンプ52、フィルタ56、開閉弁32e、トラップ装置36bの出口、トラップ装置36bの入口、バイパス流路30、原料ガス流路28、気化器20、液体原料流路26、開閉弁32k、ベント流路60aの順に流す。これにより、トラップ装置36bと気化器20とを同時に洗浄することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガス流路からトラップ装置を取り外すことなく、洗浄液によってトラップ装置の内部に付着したガス中の成分を溶解させて効率的に洗浄することができ、トラップ装置の稼動効率を向上させることができる。洗浄液として、洗浄液能力が高く、しかも成分を高い割合で溶解させることができるような適当な溶媒を用いることにより、トラップされた成分をスペースを取らずに容易に保管したり移送したりすることができ、処理や再利用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す概略系統図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す概略系統図である。
【図3】本発明が解決しようとする課題の説明に付する開閉弁の断面図である。
【符号の説明】
20 気化器
22 成膜室
28 原料ガス流路
30 バイパス流路
32a〜32h 開閉弁
34 処理ガス流路
36a,36b トラップ装置
44 洗浄流路
46 洗浄液
48 洗浄液タンク
50 ヒータ(加温手段)
52 循環ポンプ(加圧手段)
54 加圧装置(加圧手段)
60 ガス注入流路
Claims (2)
- ガス流路においてガス中に含まれる成分をトラップするトラップ装置と、
前記トラップ装置の内部に付着した付着物を溶解させる洗浄液を該トラップ装置の内部に供給し循環させる洗浄流路と、
前記トラップ装置を前記ガス流路と洗浄流路のいずれかに選択的に連絡する弁装置とを有し、
前記洗浄流路の途中に、前記付着物を溶解させた洗浄液を回収する洗浄液タンクと、前記洗浄液を前記トラップ装置内の温度における略蒸気圧以上に加圧する加圧手段を設けたことを特徴とするトラップシステム。 - ガス流路においてガス中に含まれる成分をトラップするトラップ装置と、
前記トラップ装置の内部に付着した付着物を溶解させる洗浄液を該トラップ装置の内部に供給し循環させる洗浄流路と、
前記トラップ装置を前記ガス流路と洗浄流路のいずれかに選択的に連絡する弁装置とを有し、
前記洗浄流路の途中に、前記付着物を溶解させた洗浄液を回収する洗浄液タンクと、前記洗浄液を加温する加温手段を設けたことを特徴とするトラップシステム。
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