JP3653966B2 - 高周波誘導加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘導加熱装置に関し、さらに詳しくは、金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を介してキャップを容器の栓体または口部等に、もしくは、上記積層体を直接容器の口部等にヒートシールするのに適した高周波誘導加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
輸液用容器の栓体に、衛生上の観点から、プラスチックキャップを、金属箔およびプラスチックフィルムを含む剥離容易性の積層体を介してヒートシールするには高周波誘導加熱が適している。従来の高周波誘導加熱によるヒートシールは、内部を冷却水が貫流する高周波誘導加熱コイル導管によってヒートシール部を押圧することによって行なっていたが、この場合、次のような問題があった。
【0003】
すなわち、栓体は、直径が小さい、例えば約30mmであるので、これに適合する高周波誘導加熱コイル導管を作製するのが困難である。また、ヒートシールを、全自動的に、かつ量産的に行なうには、前後の工程との移送の容易性や、所要面積が小さくてよい等の利点のあるターレット方式が好ましいが、この場合、回転するターレットに設けられた高周波誘導加熱コイルへの給電が困難である。このことは、積層体を介してキャップを容器の直径が小さい口部等に、もしくは積層体を直接容器の直径が小さい口部等にヒートシールする場合についてもいえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、作製が容易で構造が簡単であり、かつヒートシールを全自動的に、かつ量産的に行なうことが可能なターレット方式にしても給電が容易な、金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を介してキャップを容器の直径が比較的小さい栓体または口部等に、もしくは積層体を直接容器の直径が比較的小さい口部等にヒートシールするのに適した高周波誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を介してキャップを容器の栓体または口部等に、もしくは、金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を直接容器の口部等にヒートシールするための高周波誘導加熱装置であって、該装置は、電気良導電性金属よりなり、前記キャップもしくは積層体の上方に位置するターレット盤と、少なくとも1個の内側孔部を包囲するように、前記ターレット盤の上方の定位置に近接して配設された高周波誘導コイルを備え、前記ターレット盤は、周辺部に沿って設けられ、中空孔を有する円板状内方突出部を下方に備えた複数の外側孔部と、これら複数の外側孔部とそれぞれ中心が同一半径上にあり、該外側孔部の内側に近接して設けられた、該外側孔部より大径な内側孔部と、前記同一半径上にある外側孔部と内側孔部とを接続するスリットを有し、前記ターレット盤の回転に伴い、前記内側孔部が高周波誘導コイルの下方を通過したときに、該内側孔部の表面近傍に渦電流を発生させ、この渦電流を前記スリットに沿って前記外側孔部まで流し、該外側孔部の前記円板状内方突出部の先端部に沿ってほぼ一周させることにより、該円板状内方突出部の先端部に大きな電流密度の渦電流を流し、前記金属箔を加熱する構成としてある。
【0006】
このように構成すると、電気良導電性金属よりなるターレット盤の回転に伴い、内側孔部が高周波誘導コイルの下方を通過すると、電磁誘導作用と表皮効果によって渦電流が内側孔部の上部コーナ表面近傍を流れようとする。この場合、渦電流は、スリット4の上流側(渦電流の流れ方向に対する)側面に突き当たる。そこで渦電流は、外側孔部と内側孔部の間のスリットの上流側側面部分を下降した後、円板状内方突出部の先端部に沿いほぼ一周する。その後、渦電流はスリットの下流側側面に沿って上昇し、内側孔部の上部コーナ表面近傍を流れる。内側孔部は外側孔部より大径であるので、円板状内方突出部の先端部は、内側孔部より内径が遥かに小さい。従って、先端部には、大きな電流密度の渦電流が流れる。この先端部によってヒートシールするべき箇所を押圧すると、この渦電流による電磁誘導作用によって、積層体の金属箔層が加熱されるのでヒートシールが行なわれる。
【0007】
ヒートシールするべき箇所を押圧する円板状内方突出部の先端部の直径を小さくすることは容易である。高周波誘導コイルは、ターレット盤の上方に近接して配設されているので、給電が容易である。ターレット盤に、複数の外側孔部および、円板状内方突出部を有する内側孔部を形成すればよいのであるから、作製が容易で構造が簡単である。ターレット盤には、複数の外側孔部および内側孔部が形成されているので、ヒートシールを全自動的に、かつ量産的に行なうことが可能である。同様のことは、積層体を介してキャップを容器の直径が比較的小さい口部等に、もしくは積層体を直接容器の直径が比較的小さい口部等にヒートシールする場合にもいえる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記円板状内方突出部の下方に浅い凹部を形成し、この浅い凹部は、内径が、該円板状内方突出部の上方の深い凹部の内径より大きく、かつエラストマーが収納された構成としてある。
このように構成すると、浅い凹部の内径が、円板状内方突出部の上方の深い凹部の内径より大きいので、渦電流が外側孔部の下方に向って流れ難くなる。そのため、円板状内方突出部の先端部の電流密度が高くなり易く、ヒートシールが一層容易になる。
また、ヒートシール部より外側のキャップ部分が加熱され難くなる。
さらに、浅い凹部にエラストマーが収納されているので、ヒートシールの際に、ヒートシールされるべき箇所にほぼ均一な弾性圧が加わるので、均一なヒートシールが可能であり、また衝撃力によって装置や容器が変形するおそれがない。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記円板状内方突出部の先端部下側を凸部とした構成としてある。
このように構成すると、円板状内方突出部の先端部下側が凸部となっていると、凸部に流れる電流が大きくなり、ヒートシールされるべき部分に電流が集中するので、ヒートシールが一層容易になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1において、1はターレット盤であって、電気良伝導性の金属(例えばアルミニウム)よりなる比較的厚い(例えば厚さ約4cm)円板より形成されており、固着された回転軸9の周りに矢印A方向に連続回転する。ターレット盤1には、周辺部に沿い複数の(図では12個の)外側孔部2が等間隔に形成されており、その内側に近接して、外側孔部2と中心が同一半径上にあり、外側孔部2より直径が遥かに大きい内側孔部3が形成されている。
【0011】
内側孔部3と外側孔部2は、幅w(図4)が極めて狭く(例えばw=1mm)、かつ半径に沿うスリット4を介して接続している。図1、図2に示すように、高周波誘導コイル5が、2個の内側孔部3を包囲するように、ターレット盤1に近接して、その上方の定位置に配設されている。高周波誘導コイル5は、高周波電源(図示されない)に接続する。ターレット盤1の上面に内側孔部3の半径方向内方に近接して、欠円部を有する円周溝6が形成されており、溝6は欠円部6aの両端部から中心軸9の方に向って短い平行部6bを形成している。溝6の全長に沿って冷却水導管7が埋め込まれている。7aは冷却水の入口部、7bは冷却水の出口部である。内側孔部3は全体が円筒形である。
【0012】
図3に示すように、外側孔部2は、深い上部凹部2a、上部凹部2aの底部に位置し、中空孔2bを有する円板状内方突出部2b1の中空孔2b、および円板状内方突出部2b1の下方の浅い下部凹部2cよりなっている。中空孔2bの内径は、後記の栓体16の環状突起部16aの直径より僅かに小さく定められている。内方突出部2b1の先端部(内端部)2b’1の下側は、下面が平坦な凸部11となっている。凸部11の下面は、後記の押し上げられた環状突起部16aの真上に位置するように形成されている。
【0013】
下部凹部2cの内径は、上部凹部2aの内径より僅かに大きい。下部凹部2cの凸部11の半径方向外側の凸部11下面より上の部分に、電気絶縁性を有しかつ比較的硬い材料、例えば、ベークライトよりなる薄いリング状体13が着設されている。リング状体13は、ヒートシールの際に加熱により軟化したキャップ17のヒートシール部、すなわち、環状突起部16aより外側の部分が押圧により反り上がるのを防ぐのに役立つ。下部凹部2cの凸部11とリング状体13の下方の部分には、耐熱性エラストマーであるシリコンゴム10(弾性弗素ゴム等でもよい)が、下面がターレット盤1の下面とほぼ一致するように収納されている。
【0014】
外側孔部2の上部凹部2aに、円筒状の電気絶縁性高透磁率材料、例えば、フェライト8が上下動可能に設けられている。フェライト8は、後記の渦電流12を引き寄せる作用があるため、上下動させることによって、加熱効率を調整することができる。実作業の際には、フェライト8を上下動させて、各外側孔部2の加熱効率を均一化させる。
【0015】
ターレット盤1の回転に伴い、内側孔部3が高周波誘導コイル5の下方を通過すると、電磁誘導作用と表皮効果によって、内側孔部3の上部コーナ表面近傍に渦電流12が流れる。スリット4が無い場合は、渦電流は内側孔部3の上部コーナ表面近傍を一周する。しかし、スリット4が設けられている場合は、スリット4に妨げられて単純な一周はできない。この場合、渦電流12は次のように流れる。
【0016】
図4に示すように、渦電流12が内側孔部3の上部コーナ表面近傍を矢印方向に流れようとする場合について説明する。この場合、内側孔部3の上部コーナ表面近傍を流れる渦電流12は、スリット4の上流側側面4aに突き当たる。そこで渦電流12は、外側孔部2と内側孔部3の間のスリット4の上流側側面部分を下降した後、円板状内方突出部2b1の先端部2b’1に沿いほぼ一周する(図3)。その後、図4に示すように、渦電流12はスリット4の下流側側面4bに沿って上昇し、内側孔部3の上部コーナ表面近傍を流れる。円板状内方突出部2b1の先端部2b’1は、内側孔部3より内径が遥かに小さいので、先端部2b’1には、大きな電流密度の渦電流12が流れる。
【0017】
図3において、16は輸液用ボトル(図示されない)の栓体、17はポリプロピレンよりなるキャップである。栓体16の上面を含む外側部はポリプロピレンよりなっている。栓体16の上面には、環状突起部16aが形成されている。18は剥離用積層体であって、図5に示すように、上からポリプロピレン層18a、アルミニウム箔層18b、剥離剤(例えばパラフィンよりなる)層18cおよびポリプロピレン層18dよりなっている。
【0018】
キャップ17の栓体16へのヒートシールは、次のようにして行なわれる。ターレット盤1より下方に同軸に配設された、栓体載置用ターレット(図示されない)の昇降可能な台座(図示されない)に、送入ステーションP(図1)において外側孔部2の真下に載置され栓体16は、ヒートシール・ステーションHに達したとき、自動的に行なわれる台座の上昇によって図3に示す位置、すなわち、キャップ17がシリコンゴム10をやや凹ませて、キャップ17と栓体16の環状突起部16aの間に適当な押圧力が加わる位置まで押し上げられる。
【0019】
これにより、円板状内方突起部2b’1を流れる渦電流12による電磁誘導によって、剥離用積層体18のアルミニウム層18bに渦電流が流れ、アルミニウム層18bが加熱される。この熱によって、キャップ17と積層体18の上部ポリプロピレン層18aが熱融着し、栓体16の環状突起部16aと積層体18の下部ポリプロピレン層18dが熱融着して、ヒートシールが行なわれる。キャップ17がヒートシールされた栓体16は、元の高さまで下降した後、送出ステーションSから次工程は送られ、輸液が充填されたボトルに溶着される。
【0020】
輸液ボトルは、使用直前にキャップ17を引っ張り上げると、積層体18は剥離剤層18cから分離するので、キャップ17は容易に容器15から除去できる。その後、ゴム管に連結された中空針を栓体16に穿し込んで、ゴム管を通して輸液を人体に注入する。
キャップ17、栓体16の外側部および積層体18を構成するプラスチックは、ポリプロピレン以外の、適当な熱可塑性プラスチックであってもよい。
【0021】
【発明の効果】
本発明の高周波誘導加熱装置は、作製が容易で構造が簡単であり、かつ金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を介してキャップを容器の直径が比較的小さい栓体または口部等に、もしくは積層体を直接容器の直径が比較的小さい口部等にヒートシールを全自動的に、かつ量産的に行なうことが可能で、かつ給電が容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の実施の1形態である高周波誘導加熱装置の平面図である。
【図2】 図2は、図1のII―II線に沿う縦断面図である。
【図3】 図3は、図1の装置を用いて、ヒートシールを行なっている状態を示す要部縦断面図である。
【図4】 図4は、図1の装置において渦電流の流れる状態を示すための要部平面図である。
【図5】 図5は、図3のV部の拡大図であって、積層体の構成を示すための説明用図面である。
【符号の説明】
1 ターレット盤
2 外側孔部
2b 中空孔
2b1 円板状内方突出部
2c 下部凹部(浅い凹部)
3 内側孔部
4 スリット
5 高周波誘導コイル
10 シリコンゴム(エラストマー)
11 凸部
16 栓体
17 キャップ
18 剥離用積層体(積層体)
18a ポリプロピレン層(プラスチック層)
18b アルミニウム箔層(金属箔層)
18d ポリプロピレン層(プラスチック層)
Claims (3)
- 金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を介してキャップを容器の栓体または口部等に、もしくは、金属箔層とプラスチックフィルム層を含む積層体を直接容器の口部等にヒートシールするための高周波誘導加熱装置であって、
該装置は、
電気良導電性金属よりなり、前記キャップもしくは積層体の上方に位置するターレット盤と、
少なくとも1個の内側孔部を包囲するように、前記ターレット盤の上方の定位置に近接して配設された高周波誘導コイルを備え、
前記ターレット盤は、
周辺部に沿って設けられ、中空孔を有する円板状内方突出部を下方に備えた複数の外側孔部と、
これら複数の外側孔部とそれぞれ中心が同一半径上にあり、該外側孔部の内側に近接して設けられた、該外側孔部より大径な内側孔部と、
前記同一半径上にある外側孔部と内側孔部とを接続するスリットを有し、
前記ターレット盤の回転に伴い、前記内側孔部が高周波誘導コイルの下方を通過したときに、該内側孔部の表面近傍に渦電流を発生させ、
この渦電流を前記スリットに沿って前記外側孔部まで流し、該外側孔部の前記円板状内方突出部の先端部に沿ってほぼ一周させることにより、該円板状内方突出部の先端部に大きな電流密度の渦電流を流し、前記金属箔を加熱することを特徴とした高周波誘導加熱装置。 - 前記円板状内方突出部の下方に浅い凹部を形成し、この浅い凹部は、内径が、該円板状内方突出部の上方の深い凹部の内径より大きく、かつエラストマーが収納されていることを特徴とした請求項1記載の高周波誘導加熱装置。
- 前記円板状内方突出部の先端部下側を凸部としたことを特徴とする請求項2記載の高周波誘導加熱装置。
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