JP3653633B2 - 履物底 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、草履、サンダル、運動靴、トレーニングシューズ、リハビリ用靴等の履物に用いる疲労を感じさせない履物底と、それに使用するクッション作用付与具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、靴底に弾性体を埋設して歩行を楽にする考案が数多く提案されている。例えば特開平10−66604号公報には、合成ゴム、ウレタンゴムよりなる発泡体、圧縮コイルばね、空洞によるエアクッション、皿ばね、板ばね等の弾性体を埋設して靴底にクッション性を付与した構造が提案されているが、何れも常にクッション作用を持つものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、歩行時には、踵から踏出し、次に底全体を接地させた後、次の踏み出し時に踵に押し上げる力を与えて、前進時の体重の移動を助ける作用があるものとすることができ、通常の歩行時や収納時には、押し上げ力を発揮しない状態とすることが出来る履物底とそれに使用するクッション作用付与具を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の第1の発明は樋状受具と、この樋状受具内に屈曲部を挿入し、その屈曲部の両側にそれぞれ埋設部を一連に備え、その埋設部の成す角をV状又は略水平にした板ばね片と、この板ばね片の前記屈曲部を押して前記埋設部の成す角を変化させるカムを備え且つ端部に回動用係合部を設けた切換軸と、前記樋状受具の両端に固着する前記切換軸の軸受と、前記切換軸を回動する駆動手段とから成るクッション作用付与具を履物底本体の屈曲部に埋設したことを特徴とする履物底である。
【0005】
前記埋設部は履物底本体に固定してもよいし、一方又は双方を移動可能に埋設してもよい。
【0006】
請求項3記載の第2の発明は、樋状受具と、この樋状受具内に屈曲部を挿入し、その屈曲部の両側にそれぞれ埋設部を一連に備え、その埋設部の成す角をV状又は略水平にした板ばね片と、この板ばね片の前記屈曲部を押して前記埋設部の成す角を変化させるカムを備え且つ端部に回動用係合部を設けた切換軸と、前記樋状受具の両端に固着する前記切換軸の軸受と、切換軸を回動する駆動手段とから成るクッション作用付与具である。
【0007】
前記第1及び第2の発明において、樋状受具は金属や合成樹脂などで構成し、その外側に樋状受具がしっかりと履物底本体に固定されるように埋設固定板を固定したり、板ばね片の屈曲部を逆Ω状や三角形状あるいはム状とすることもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施例を示すもので、Aはクッション作用付与具、Bは合成ゴムからなる履物底本体である。
【0009】
図2はクッション作用付与具の要部の拡大平面図、図3は同拡大正面図、図4は同拡大左側面図、図5は図3のX−X線断面図で、1は図6及び図7に示すように外側面に埋設固定板2、2を設けた断面C字状の樋状受金具、3は図8及び図9に示すように、前記樋状受金具1内に挿入する逆Ω状の屈曲部4を備え、その両側にリブ5及び透孔6を設けた埋設部7と埋設部8を一連に設け、埋設部7と埋設部8の成す角をV状にした板ばね片で、自由な状態では図9に示すようにV状となっている。
【0010】
9は図10及び図11に示すように前記板ばね片3の逆Ω状の屈曲部4の両側内縁4a,4bを押して両側内縁間を拡大縮小させる断面が扇形のカム10を備え、且つ端部に回動用係合部11(実施例ではマイナス溝)及び雄ねじ部12を設けた切換軸、13、13は図12に示すように段部13aをに設け、この段部13aを前記樋状受金具1の両端に半田、溶接等で固着した前記切換軸の軸受、14は切換軸9の雄ネジ部12に螺合するナットである。
【0011】
しかして、クッション作用付与具Aの組立は、先ず樋状受金具1内に側面より板ばね片3の屈曲部4を挿入し、次にその屈曲部4内に切換軸9を側面より挿入し、軸受13を切換軸9の両端より挟み込むように差し込み、樋状受金具1と軸受13を接着剤で接着又は半田あるいは溶接等で固定した後、切換軸9の雄ねじ部12にナット14を螺合する。この時扇形のカム10は図13の(b)の状態となり、カム10の巾狭側の10bが上になり、靴底製造時に履物底Bへの埋設が困難となるので、切換軸9のドライバー係合部11のマイナス溝にドライバー等を差し込み、カム10の巾広側10aが上になるように180度回動して屈曲部4の両側内縁4a,4b間を拡大して埋設部7と埋設部8を水平にする。最後に切換軸9の雄ねじ部12にナット14をスパナ等で締め付けカム10をその位置で軸受13に固定する。
【0012】
以上のように構成されたクッション作用付与具Aを、図1及び図13に示すように履物底本体Bに埋設部7を爪先側に,埋設部8を踵側にそれぞれ埋設することにより履物底本体Bにクッション性を付与したり、付与しない状態とすることができる。なお、履物底本体Bに埋設する場合、埋設後カム及び回動部が履物底の構成材料と固着して回動不能とならないように、離型剤を塗布する等の予防措置を施すことは勿論である。
【0013】
本クッション作用付与具Aを埋設した履物底は、図13の(a)に示すように、切換軸9を回動して巾広側10aを上にした場合、巾広側10aが屈曲部4の両側内縁4a,4b間に割り込んで両側内縁間を拡げるため、履物底本体Bは平面状になって通常の履物底と同様になる。従って収納に不具合になることはない。
【0014】
一方、切換軸9を回動して巾狭部10bを上にすると、図13の(b)及び(c)に示したように履物底本体BはV状となり、板ばね片3によりクッション性を付与されるので、この履物底本体Bを用いた履物を着用して歩行する時、踵より足の指先への体重の移動が促進され、バランス良く歩き易くなる。
【0015】
そして板ばね片3により反発力が体重を押し上げてくれるので、踵やアキレス腱の疲労を感じさせず、長時間の歩行に十分対応してくれる履物を提供することが出来る。
【0016】
以上説明した第1の実施例では,埋設部の一方を爪先側の土踏まず部に、また他方を踵側に埋設したが、この場所のみに限定されるものではなく、クッション作用を付与しようとする屈曲部、例えば爪先部と土踏まず部間に埋設してもよい。
【0017】
なお、この実施例では切換軸9を回動する駆動手段として、切換軸9にドライバー係合部11を設け、且つ切換軸9が不用意に回動しないようにナット14で締め付ける構造としたが、この構造に限定されるものではない。
【0018】
図14は本発明の第2の実施例を示すもので、A1はクッション作用付与具、B1は合成ゴムからなる履物底本体である。
【0019】
1’は図15に示すように嵌め込み溝16を有する合成樹脂製又は金属製樋状受具、31は図16(a)に示すように、前記樋状受具1’内の嵌め込み溝16内に挿入する三角状に屈曲された屈曲部41を備え、その両側に埋設部71と、透孔6を設けた埋設部81をそれぞれ一連に設けた板ばね片で、自由な状態では図16(b)に示すように略水平な状態になっている。
【0020】
91は図17に示すように前記板ばね片31の三角状屈曲部41の底辺部を押圧する断面が長方形のカム101を備え、且つ一方の端部に雄ねじ部12を設けた切換軸、131、132は図18,図19に示すように前記樋状受具1’の両端に嵌め込み接着剤で固着した前記切換軸91の軸受で、軸受131の軸孔にはゴム製防水用パッキン131aが設けられている。14’は切換軸91の雄ネジ部12に螺合したナットである。
【0021】
しかして、クッション作用付与具A1の組立は、先ず樋状受具1’内に板ばね片31の屈曲部41を挿入し、次にその屈曲部41内に切換軸91を挿入し、軸受131,132を切換軸91の両端に取付けた後、樋状受具1’と軸受131,132を接着剤で固定し、切換軸91の雄ねじ部12に袋ナット14’を螺合し、接着剤で雄ネジ部12に固定する。
【0022】
そしてこのクッション作用付与具A1の履物底本体B1への取付けは、埋設部81を履物底本体B1の踵部に埋設して固定し、埋設部71は履物底本体B1の土踏まず部に移動自在に取付ける。この実施例では図20に示すように、履物底本体B1に凹部15を設け、硬質合成樹脂製の補強カバー16aを履物底本体B1に接着して空洞を形成してその中を埋設部71が移動するように構成した。
【0023】
クッション作用性を付与する際には切換軸91を90°回動してカム101を縦にすると、樋状受具1’の両側上縁で支承されている三角状屈曲部41の内側下面が押されるため、埋設部71は樋状受具1’内へ引張られ、板ばね片31全体がV状になる。その結果、図20の(b)のように履物底本体B1はV状となり、板ばね片31によりクッション性が付与される。
【0024】
なおこの実施例ではクッション性を付与する際に中底17が盛り上らないように弾力性のある硬質合成樹脂製の補強カバー16a,16bを中底17とクッション作用付与具の間に設け、またクッション作用が損なわれないようにV字状になる支点位置に切れ目16cを設けてある。
【0025】
また、この第2の実施例では埋設部81を履物底に接着固定したが、図21に示す本発明の第3の実施例のように埋設部71と埋設部81がそれぞれ樋状受具方向へ移動できるようにしてもよい。この時補強カバー16a,16b,16dを設け、前述と同様にクッション性を損なわないように切れ目16cを支点の位置にくるようにしている。
【0026】
図22は本発明の第4の実施例を示す拡大断面図で、踵側の埋設部81を短くした板ばね片32を用いても前記実施例と同様のクッション効果を得ることができる。
【0027】
この第4の実施例では、両埋設部71及び81を共に移動するように構成されており、カム101を回動して三角状屈曲部41の内側下面を下方に押圧すると、板ばね片32全体がV状になり、履物底本体B1はV状になって板ばね片32によるクッション性が付与される。
【0028】
なお、前記第3の実施例及び本実施例で用いた樋状受具1’において、内懐が広い構造としたのは、カム101の作動時に屈曲部41の変形が樋状受具1’の内面に接触せずに円滑に行われるようにするためである。
【0029】
図23はカム101の他の実施例を示すもので、第3及び第4の実施例において、2段階に板ばね片32の角度を変更し得るようカム101の突出長さをW1とW2の2種類としたもので、これにより切換軸91を回動して、板ばね片32のV状変形角度を2段に切り替えられる。
【0030】
図24は第5の実施例の拡大断面図を示すもので、図22に示す第4の実施例では、土踏まず側の埋設部71を長くし、踵側の埋設部81を短くしたが、この第5の実施例は逆に土踏まず側の埋設部71を短くし、踵側の埋設部81を長くしたものである。
【0031】
このように埋設部の長さを逆にしても、カム101の回動により、埋設部71と埋設部81の成す角を図24(a)のように水平に、また図24(b)のようにV状に変化させ、履物底本体B1にクッション状を付与し得ることは第4の実施例と同様である。
【0032】
図25は複数のクッション作用付与具A1を履物底B2に埋設した第6の実施例を示すもので、図25(a)は各クッション付与具A1、A1を略水平にした状態、図25(b)はカム101を回動させてそれぞれのクッション付与具A1、A1をV状にした状態を示したものである。ここで図25(b)の状態では、歩行・走行時に踵に体重がかかるのを踵側のクッション作用付与具では上向きの力によるクッション作用により、足、アキレス腱、ひざ関節等にかかる衝撃を緩和すると共に指先方向の力により歩行などがよりリズミカルでスムーズに行われるように作用する。同様に指先のクッション作用付与具では指先に体重がかかる時に上方の力によるクッション作用と指先方向への力が生じ歩行を補助する効果がある。また、バレーボールやバスケットボール等のジャンプを必要とするスポーツに、本発明にかかる履物底を使用することにより、上方へのクッション作用により高いジャンプ力を得ることができ、着地時の足にかかる衝撃を緩和することができる。また、クッション性を付与する個所が複数となったとき、歩行や運動や好みに合わせてクッション作用ありなしの組み合わせを自由にすることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、長時間の歩行に疲労を感じさせない履物を提供することができ、しかも、従来のこの種の考案では考えられなかったクッション作用のない状態に簡単に切換えることが出来る履物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例の平面図。
【図2】 クッション作用付与具の要部の拡大平面図。
【図3】 同拡大正面図。
【図4】 同拡大左側面図。
【図5】 図3のX−X線断面図。
【図6】 樋状受金具の拡大平面図。
【図7】 同拡大正面図。
【図8】 板ばね片の拡大平面図。
【図9】 同拡大正面図。
【図10】 切換軸の拡大平面図。
【図11】 同拡大正面図。
【図12】 軸受の拡大正面図と拡大側面図。
【図13】 平常時とクッション作用を付与した時の状態説明図。
【図14】 本発明の第2実施例の平面図。
【図15】 樋状受金具の拡大平面図と拡大側面図。
【図16】 板ばね片の拡大平面図と拡大側面図。
【図17】 切替軸の拡大平面図と拡大側面図。
【図18】 軸受の拡大正面図と拡大側面図。
【図19】 軸受の拡大正面図と拡大側面図。
【図20】 本発明の第2の実施例の平常時とクッション作用を付与した時の状態説明図。
【図21】 本発明の第3の実施例の平常時とクッション作用を付与した時の状態説明図。
【図22】 本発明の第4の実施例の平常時とクッション作用を付与した時の拡大縦断側面図。
【図23】 切換軸の他の実施例を示す拡大断面図。
【図24】 本発明の第5の実施例の平常時とクッション作用を付与した時の拡大縦断側面図。
【図25】 本発明の第6の実施例の平常時とクッション作用を付与した時の状態説明図。
【符号の説明】
1 樋状受金具
2 埋設固定板
3 板ばね片
4 屈曲部
5 リブ
6 透孔
7,8 埋設部
9 切換軸
10 カム
11 回動用係合部
12 雄ねじ部
13 軸受
14 ナット

Claims (5)

  1. 樋状受具と、この樋状受具内に屈曲部を挿入し、その屈曲部の両側にそれぞれ埋設部を一連に備え、その埋設部の成す角をV状又は略水平にした板ばね片と、この板ばね片の前記屈曲部を押して前記埋設部の成す角を変化させるカムを備え且つ端部に回動用係合部を設けた切換軸と、前記樋状受具の両端に固着する前記切換軸の軸受と、前記切換軸を回動する駆動手段とから成るクッション作用付与具を履物底本体の屈曲部に埋設したことを特徴とする履物底。
  2. 一方又は双方の埋設部を移動可能に埋設したことを特徴とする請求項1記載の履物底。
  3. 樋状受具と、この樋状受具内に屈曲部を挿入し、その屈曲部の両側にそれぞれ埋設部を一連に備え、その埋設部の成す角をV状又は略水平にした板ばね片と、この板ばね片の前記屈曲部を押して前記埋設部の成す角を変化させるカムを備え且つ端部に回動用係合部を設けた切換軸と、前記樋状受具の両端に固着する前記切換軸の軸受と、切換軸を回動する駆動手段とから成るクッション作用付与具。
  4. 樋状受具の外側に埋設固定板を設け、且つ板ばね片の屈曲部を逆Ω状としたことを特徴とする請求項3記載のクッション作用付与具。
  5. 板ばね片の屈曲部を三角形状としたことを特徴とする請求項3記載のクッション作用付与具。
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