JP3651836B2 - 有機性廃棄物の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、厨芥等の生ごみ単独または、し尿、浄化槽汚泥、下水汚泥、家畜糞尿、余剰汚泥等と混合した、生ごみを含む有機性廃棄物を嫌気性消化し、その消化物を堆肥にする有機性廃棄物の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、し尿や有機性汚泥の処理方法として湿式酸化法が知られている。この湿式酸化法とは、ジンマーマン法と呼ばれる液相酸化法で特定温度で水が液相を保持する圧力の下に水中の有機物を空気等の酸素含有ガスの酸素を利用して酸化分解する方法である。かような湿式酸化法においては、被湿式酸化処理物を加熱するのに必要な熱量を、酸化反応で生ずる酸化熱で充足させ、自燃させている。
【0003】
例えば、特公昭46−1511号公報、特公昭63−25839号公報、特公昭63−49560号公報等には、下水汚泥やし尿を嫌気性消化槽で嫌気性消化し、次いでこの嫌気性消化槽からの消化汚泥を湿式酸化した後、固液分離し、その分離液を再び前記嫌気性消化槽に返送することが示されている。このように湿式酸化した後の分離液を嫌気性消化槽に返送することにより、嫌気性消化槽で発生するメタンガス量を増加させ、得られたメタンガスを発電や燃料に使用してエネルギーの回収をより効率的にしようとするものである。
【0004】
一方、下水汚泥やし尿を、嫌気性消化を行なわずに直接に湿式酸化した後、固液分離し、固形分である脱水汚泥を好気性発酵して、肥料や土壌改良材等に使用できる堆肥(コンポスト)にすることが、特公昭56−51040号公報に記載されている。かような堆肥化方法においては、嫌気性消化を行なって有機成分が低くなった消化汚泥は対象としていない。すなわち、嫌気性消化槽で生成する消化汚泥は、生物処理を経た後の有機成分の低いものであるため、通常は脱水してその脱水汚泥を乾燥焼却処分するのが一般的であり、ごくまれに堆肥化が行われるだけであり、その堆肥の品質も有機成分が少ないため低品質の堆肥しか得られなかった。有機成分の少ない消化汚泥を湿式酸化したものでは、さらに有機成分が酸化分解されて減少してしまい、もはや堆肥化の対象にならなかった。
【0005】
近年、下水汚泥やし尿以外に、厨芥等の生ごみやその他の有機成分の多い有機性廃棄物を混合して資源化したり、消化日数を30〜60日から10〜20日前後にして有機成分の多い消化汚泥を排出するようにして資源化することが行われだした。この方法として、例えば特開平9−201599号公報等には、多種類の有機性廃棄物を嫌気性消化してメタンガスを回収すると共に、その消化汚泥をコンポスト化して回収することが示されている。
【0006】
消化汚泥を堆肥化する上記した従来方法の一般的工程を図8を参照して説明すると、必要に応じて破砕した有機スラリーや濃縮汚泥のごとき各種有機性廃棄物を、混合貯留槽で混合、水分調整して原料汚泥となし、メタン回収工程へ供給する。メタン回収工程では、嫌気性消化槽で原料汚泥を嫌気性消化処理してメタンガスを含むバイオガスを回収する。次いで、脱水工程で消化スラリー(消化汚泥)を機械的脱水した後、得られた脱水汚泥を水分調整工程で加熱乾燥して水分調整汚泥とし、堆肥化工程で好気性発酵して、肥料や土壌改良材等に使用する堆肥を得る。メタン回収工程で回収されたバイオガスは、温水や蒸気の発生装置の熱源として利用され、得られた温水や蒸気は各処理工程の加熱又は加温用エネルギーとして用いられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら図8に示した従来方法は、消化スラリーが難脱水性のため脱水用薬剤を多量に使用しなければならず、しかも脱水工程後に得られた脱水汚泥が80〜90質量%と高い含水率のため、効果的な堆肥化を行えるように水分調整する際の加熱乾燥に多量の熱量を必要とする。
【0008】
また、このようにしてせっかく製造した堆肥ではあるが、需要に季節変動が大きく、長期に保管しなくてはならないことが多く、さらに近年堆肥そのものがだぶつき傾向にある。
【0009】
また、生ゴミを嫌気性消化した後に堆肥化する場合には、堆肥中にポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニルなどの微小プラスチック片等が混入しているため品質が低く、上記事情に加えて用途先がかなり少ないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記したごとき従来方法における問題点を解消することを目的とするもので、被湿式酸化処理物を加熱するのに必要な熱量を、酸化反応で生ずる酸化熱で充足させる従来の湿式酸化法とは異なり、特定の条件で酸素の供給を制限して部分酸化を施し、これを従来の嫌気性消化スラリーを堆肥化する図8に示す従来方法の水分調整工程に代えることによって、熱効率が向上し従来方法に比してエネルギー消費が極めて少なくて済み、微小プラスチック片の混入もない高品質の堆肥が得られ、必要に応じて堆肥製造量を調整して堆肥製造量を減らしメタンガス量を増加できるような、新規かつ改良された有機性廃棄物の処理方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためなされた請求項1に記載の本発明に係る有機性廃棄物の処理方法は、
生ごみを含む有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化槽で嫌気性消化処理してメタンガスを回収するメタン回収工程と、
前記メタン回収工程後の消化処理スラリーを、温度が150〜200℃で、かつ該消化処理スラリーの液相を保持する圧力で、処理時間を15〜60分とする条件で、酸素供給量が該消化処理スラリーのCODCr値の5〜25質量%に相当する酸素含有ガスを供給して部分分解する可溶化工程と、
前記可溶化工程からの処理物の少なくとも一部を脱水機で脱水して含水率70質量%以下とする脱水工程と、
前記脱水工程後の脱水物を好気性発酵して堆肥とする堆肥化工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記した請求項1の発明においては、生ごみを含む有機性廃棄物は流動性を保持できるように水分調整されてスラリーに形成され、嫌気性消化槽で嫌気性消化処理されてメタンガスが回収される。
【0013】
嫌気性消化槽としては、各種嫌気性リアクターが使用できる。さらには、酸発酵とメタン発酵とを別々の槽に分けた二槽式のものや、し尿処理で行われている適切な加温と攪拌が行われる第一消化槽と主として消化汚泥の沈殿分離を行う第二消化槽とからなる二槽式のものでもよい。嫌気性消化には中温発酵と高温発酵とがあるがいずれの方式を採用しても差し支えない。
【0014】
可溶化工程において供給する酸素供給量は、嫌気性消化処理を施した消化処理スラリーのCODCr値の5〜25質量%になるように制限される。このCODCr値とは、JIS K0102(1998)工業排水試験法に規定される二クロム酸カリウムによる酸素消費量である。例えば、消化処理スラリーのCODCr値が50g/Lである場合、消化処理スラリー1リットルと、2.5〜12.5gの酸素量を含む酸素含有ガスとを混合することを意味する。酸素含有ガスとしては、爆発や有害物含有などの危険性がない酸素含有ガスであればよく、空気、酸素富ガス、純酸素、さらには原動機やボイラーの排ガス等が挙げられる。
この可溶化工程は、上記割合で酸素を供給するのであれば、消化処理スラリーと酸素含有ガスを連続的に供給して処理する連続式や、所定量の消化処理スラリーと酸素含有ガスとを反応器に密閉した後処理する回分式のいずれの方式を採用しても差し支えない。
【0015】
可溶化工程ではこのように酸素量を制限するので、消化処理スラリーは部分的に酸化されて部分分解することになる。そのため、被湿式酸化処理物を加熱するのに必要な熱量を、酸化反応で生ずる酸化熱で充足させる、すなわち、自燃させる従来の湿式酸化法とは異なり、温度を上記150〜200℃に維持するには、外部から加熱し続けなければならない。かかる加熱は、間接加熱やスチーム等を直接処理スラリーに接触させる直接加熱のいずれでもよい。本発明の可溶化工程では、このように加熱し続けなければならないにもかかわらず、これに要する熱量は、従来の嫌気性消化スラリーを脱水し加熱乾燥して水分調整した後堆肥化する図8に示した方法における水分調整工程で使用する熱量よりも少なくて済む。
【0016】
また、可溶化工程では酸素供給量を上記したように制限しているので、従来の湿式酸化処理スラリーの如く強熱減量成分率(強熱減量VS/全蒸発残留物TS)を35〜50質量%まで低下させることなく、60〜75質量%程度に維持することができるため、後段の堆肥化工程での自己発酵を可能なものとすることができる。
【0017】
しかも、かかる可溶化工程においては、メタン回収工程での嫌気性消化に際して嫌気性微生物が分解できなかった有機成分が部分分解されて可溶化され、再び嫌気性微生物が分解可能なものが液相や固相に形成されと共に、固相に残る有機固形分の減量化がなされる。
【0018】
この減量化により、従来の嫌気性消化スラリーを脱水し加熱乾燥して水分調整した後堆肥化する図8に示した方法に比して、有機性廃棄物スラリーの単位処理当たりの堆肥生成量を少なくできるため、堆肥がだぶつき傾向にある社会状況に対応できる。
【0019】
さらに、この可溶化工程の処理物は、有機成分の部分酸化によって、極めて脱水性がよくなる。したがって、外部から水分調整剤を添加しなくても脱水機で容易に含水率70質量%以下に脱水できる。また、脱水汚泥の含水率を大幅に低くできるので、堆肥化において必要により行われる加温のエネルギー量が大幅に低減される。
【0020】
また、可溶化工程の処理物は、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル等の微小プラスチック片が分解除去され、かつ殺菌され病原菌等も死滅しているので衛生学的にも安全性の高い品質の堆肥原料となる。
【0021】
なお、本発明における“生ごみ”とは、家庭から排出される厨芥や残飯等のごみ、または食堂、ホテル等から排出される事業系の厨芥や残飯類、若しくは水産加工、蓄肉加工、農林加工等の動植物処理施設から排出される残査等の有機性廃棄物を意味する。
【0022】
請求項2に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項1に係る有機性廃棄物の処理方法において、前記可溶化工程の熱源に、前記メタン回収工程で得られたメタンガスの熱量を利用することを特徴とする。
【0023】
上記した請求項2の発明にあっては、可溶化工程の熱源を、メタン回収工程で得られたメタンガス量で十分にまかなうことが可能である。さらに、前述したように、本発明の可溶化工程に要する熱量は、従来の嫌気性消化スラリーを脱水し加熱乾燥して水分調整した後堆肥化する図8に示した方法の水分調整工程に必要な熱量よりも少なくて済むため、余剰のメタンガスを発電や他の用途に振り分けることが可能である。
【0024】
請求項3に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項1または2に係る有機性廃棄物の処理方法において、前記可溶化工程からの処理物の一部を脱水せずに前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給し、その供給量を調整することにより、前記堆肥化工程からの堆肥製造量および前記メタン回収工程のメタンガス発生量を調整することを特徴とする。
【0025】
上記した請求項3の発明にあっては、可溶化工程からの処理物の脱水工程さらには堆肥化工程への供給量が減少し、嫌気性消化槽への供給量が増加することにより、堆肥製造量を減らしてメタンガス量を増加させることができる。一方、可溶化工程からの処理物の全量または大部分を脱水工程さらには堆肥化工程へ供給する場合には、嫌気性消化槽への返送量が減少またはゼロとなるため、堆肥製造量を増加させメタンガス量を減少させることができる。可溶化工程からの処理物を嫌気性消化槽へ返送する場合には、建設する嫌気性消化槽の容量を大きくしなければならないという経済性を考慮しても、可溶化工程からの処理物の20〜30質量%程度を嫌気性消化槽に返送することが可能となり、これにより堆肥製造量を約10〜20質量%の範囲内で調整でき、堆肥の製造量を需要の季節変動に合わせて調整できるという利点が得られる。
【0026】
請求項4に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項1〜3の何れか1つに係る有機性廃棄物の処理方法において、前記脱水工程後の脱水物の一部を前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給し、その供給量を調整することにより、前記堆肥化工程からの堆肥製造量および前記メタン回収工程のメタンガス発生量を調整することを特徴とする。
【0027】
上記した請求項4の発明にあっては、脱水工程後の脱水物の堆肥化工程への供給量が減少し、嫌気性消化槽への供給量が増加することにより、堆肥製造量を減らしてメタンガス量を増加させることができる。一方、脱水工程からの脱水物の全量または大部分を堆肥化工程へ供給する場合には、嫌気性消化槽への返送量が減少またはゼロとなるため、堆肥製造量を増加させメタンガス量を減少させることができる。したがって、請求項3の発明とほぼ同等に堆肥の製造量を需要の季節変動に合わせて調整することが可能である。さらに、脱水物を嫌気性消化槽に返送するので、請求項3のように可溶化工程からの処理物を脱水せずに返送する場合に比べて、含水率の大きい有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化槽で処理できる。
【0028】
請求項5に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項1〜4の何れか1つに係る有機性廃棄物の処理方法において、前記脱水工程からの脱水分離液の少なくとも一部を前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給することを特徴とする。
【0029】
上記した請求項5の発明にあっては、脱水分離液中に残存する未分解有機成分を再度嫌気性消化さらには可溶化することができるため、嫌気性消化によるメタンガスの発生量を増加できると共に、廃水処理系の負荷を低減できる。
【0030】
請求項6に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項2に係る有機性廃棄物の処理方法において、前記メタン回収工程で得られたメタンガスの一部をボイラの燃料とし、そのボイラからのスチームを前記可溶化工程の加熱熱源に利用し、かつ前記メタンガスの残りの少なくとも一部を発電機を備えた原動機の燃料とすると共に、該原動機からの排ガスの熱により水を加熱して得られた温水を前記嫌気性消化槽の加温熱源に利用することを特徴とする。
【0031】
上記した請求項6にあっては、より効率的にエネルギーを回収でき、可溶化工程に要する熱源を発電と切り離すことによってフレキシビリティーをより一層もたせることが可能となり、原料である有機性廃棄物スラリーの性状が変化しメタン発生量が変化しても安定して可溶化工程を運転できる。
【0032】
請求項7に係る有機性廃棄物の処理方法は、請求項1〜6の何れか1つに係る有機性廃棄物の処理方法において、前記メタン回収工程のメタン発酵日数が7〜20日であり、前記可溶化工程の液相を保持する圧力が絶対圧0.5〜2.5MPaであり、前記堆肥化工程の好気性発酵日数が5〜20日であることを特徴とする。
【0033】
上記した請求項7の発明にあっては、好ましく安定してメタンガスの発生と堆肥化が行える。なお、より好ましくは、メタン回収工程のメタン発酵日数が12〜18日であり、可溶化工程の液相を保持する圧力が絶対圧0.7〜2.0MPaであり、堆肥化工程の好気性発酵日数が7〜14日である。可溶化工程の液相を保持する圧力をゲージ圧力1MPa未満で行うことによって、高圧ガス保安法が適用されなくなるため、より安価な装置で本発明を実施することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、図1を参照して各工程毎に説明する。
1.有機性廃棄物(原料汚泥)のメタン回収工程
分別された厨芥等の生ごみ(固形廃棄物)1をコンベヤやパワーシャベル等によって破砕選別装置2に投入し、8mm以下の大きさに破砕した後、生ごみ中の軽量物(プラスチック細片類)と重量物(金属類やガラス類)とを選別除去し、濃度8〜12質量%の粥状にした有機スラリー3を作製し、有機スラリー移送ポンプ4により混合貯留槽5に移送する。
【0035】
一方、夾雑物を除去したし尿や浄化槽汚泥等の液状廃棄物6、6′は、それぞれ供給ポンプ7、7′により遠心分離型やスクリュープレス型等の濃縮装置8、8′に凝集剤と共に送られ、濃度7〜13質量%の濃縮汚泥9、9′を作製し移送ポンプ10、10′により混合貯留槽5に移送され、前述の有機スラリー3と混合され貯留される。また、濃縮分離液11、11′は生物処理系70にて処理される。
【0036】
混合貯留槽5において全蒸発残留物(TS)濃度8〜12質量%に調整された原料汚泥12は投入ポンプ13により嫌気性消化槽14へ投入される。嫌気性消化における処理条件は、槽内温度が32〜38℃の中温発酵(または53〜57℃の高温発酵でもよい)、水理学的滞留日数(HRT)が7〜20日、好ましくは12〜18日とする。なお、嫌気性消化槽14は一般的には酸生成相とメタン生成相とを一緒にした一槽式で行なわれるが、一槽を二つの槽に分割してもよく、あるいは従来から使用されている別々の槽とした二槽式、さらには温度等を変えて消化効率を向上させる多槽式及び固定床式などいずれの構造でもよい。しかし、消化槽からの放熱や消化液の移送などを考慮すると一槽式か二槽式が好ましい。
【0037】
メタン回収工程において回収されたバイオガス15(メタンガス濃度が58〜65体積%)は、ガスホルダー16に貯留され、発電装置17及び/又は加温用ボイラー18などの燃料として使用し、得られた温水19及び/又は蒸気20は、嫌気性消化槽14の加温や後述する可溶化設備50及び堆肥化装置42等への加温及び保温に利用される。嫌気性消化槽14の加温及び保温は、バイオガス15の一部を発電装置17の原動機17aの燃料として用い、原動機冷却水用熱交換器17c及び/又は原動機排ガス用熱交換器17dより得られた温水19を嫌気性消化槽14の外側に設けられたジャケットなどに通水することによって行なわれる。なお、図1の発電装置17における17bは、原動機17aにより駆動される発電機を、17eは原動機排ガスを表している。
【0038】
嫌気性消化槽14から排出された消化スラリー21は、自然流下またはポンプなどにより消化スラリー貯留槽22に移送され貯留される。
【0039】
2.消化スラリーの可溶化工程
消化スラリー貯留槽22内の消化スラリー21は、多段うず巻型や一軸式などの消化スラリー供給ポンプ23によって第一熱交換器24、第二熱交換器25及び反応塔26と順次に移送され、部分的な酸化処理により部分分解されて酸化処理スラリー27とされる。第一熱交換器24においては、消化スラリー21と反応塔26から排出された高温の酸化処理スラリー27との熱交換が行われ、第二熱交換器25においては、第一熱交換器24で温められた消化スラリー21と、嫌気性消化槽14から回収したバイオガス15の一部を熱料として用いた加温用ボイラー18にて得られる蒸気20との熱交換が行われ、消化スラリーは140〜190℃に昇温された状態で反応塔26に入る。
【0040】
反応塔26において消化スラリー21は、自己の酸化熱にて温度がさらに5〜10℃上がるため、温度が150〜200℃好ましくは160〜180℃、時間が15〜60分好ましくは20〜40分、絶対圧力が0.5〜2.5MPa(所要処理温度における液相保持圧力)好ましくは0.7〜2.0MPaの条件で部分酸化処理される。
【0041】
酸素の供給は、空気28を圧縮するコンプレッサー29のスナッパー(圧縮空気貯槽)から流量調整弁(FCV)30を介して反応塔26の下部へ注入される。酸素供給量は、消化スラリー21のCODCr値に対して5〜25質量%相当分、好ましくは10〜20質量%相当分となるように流量調整弁30によって制御される。酸素供給量の制御要領は、消化スラリーのCODCr濃度を通常1日1回以上測定し、次式▲1▼の計算で得られた必要空気流量を流量調整弁30でその都度設定することによって行なわれる。
【0042】
A=C×K×1/0.21×22.4/32×Q ……式▲1▼
式中、A:必要空気流量(L(Normal)/h)
C:消化スラリーのCODCr濃度(g/L)
K:係数(酸素供給率=0.05〜0.25)
Q:消化スラリーの流量(L/h)
【0043】
また、消化スラリーにおける懸濁物質(SS)濃度とCODCr濃度との関係を予め求めておき、反応塔26に流入する消化スラリーのSS濃度を汚泥濃度計(MLSS計)などで連続的に測定し、その値から予め求めておいた上記関係からCODCr濃度を得た後、式▲1▼で算出される空気流量を連続して流量調整弁30により制御調整することによっても行なえる。
【0044】
なお、酸素の反応塔26への供給箇所は反応塔26下部に限定されるものではなく、第二熱交換器25から流出してくる消化スラリー21に酸素を合流させて反応塔26へ供給してもよく、消化スラリー供給ポンプ23から流出してくる消化スラリー21に酸素を合流させて第一熱交換器24の入口に供給しても差し支えない。さらに、酸素源は空気28に限定されるものではなく、爆発や有害性物質含有などの危険性がない酸素含有ガスであればよく、場合によっては発電装置17及び加温用ボイラー18からの排ガスを用いることも可能である。その場合は、排ガス中の残存酸素濃度を測定し、その酸素濃度に応じた必要排ガス量を供給するようにすればよい。
【0045】
酸化処理条件の中で圧力は、反応塔26内での液相を保持するためには所要処理温度に対応した圧力となるが、現在日本国内では圧力容器及び製造設備などについては各種の規制がある。その中で、規制の最も厳しい高圧ガス保安法の対象から逃れるにはゲージ圧力を1MPa未満(常用の温度において)にしなければならないため、前述したように処理温度を150〜180℃とすることが好ましい。それでも、蒸気圧の関係から処理温度が170〜180℃となる場合には、反応塔26内の気相はやや湿り状態となるが、反応塔26から排出された気相を含む酸化処理スラリー27は第一熱交換器24において温度80℃以下に冷やされるため、気相内の水分は復水(ドレン)となって酸化処理スラリーに還流される。従って、大気圧の状態となる気液分離器32からの酸化処理排ガス33中には水分がほとんどなくなるため問題はない。また、反応塔26への酸素供給量を少なく制限していることも、温度180℃で絶対圧力1.1MPa未満においても反応塔26内の液相が保持できる一因ともなっている。
【0046】
反応塔26から排出された酸化処理スラリー27は、第一熱交換器24を経て液温50〜80℃となって圧力制御弁(PCV)31に流れ、ここで反応系内の圧力を一定に保ちながら絶対圧0.5〜2.5MPaから大気圧の0.1MPaまで減圧された後、気液分離器32に流入し、酸化処理スラリー27と酸化処理排ガス33に分離される。酸化処理排ガス33は、生物処理系70の曝気用ガスの一部として用いられ、該曝気槽の微生物によって生物脱臭されて大気に放出されるか、または、脱臭設備60により処理されて大気放出される。一方、酸化処理スラリー27は酸化処理スラリー移送ポンプ34によって酸化処理スラリー貯留槽35に流入する。
【0047】
3.酸化処理スラリーの脱水工程及び堆肥化工程
酸化処理スラリー貯留槽35から酸化処理スラリー27は、酸化処理スラリー供給ポンプ36によりフィルタープレスやベルトプレスなどの脱水装置37に供給され、無薬注あるいは高分子凝集剤の微量添加によって脱水処理が行なわれる。なお、脱水装置は上記で例示した種類に限定されるものではなく、公知の脱水装置であればいかなる種類の装置を用いても差し支えない。脱水装置33から排出される脱水分離液38は脱水分離液移送ポンプ39によって生物処理系70に移送され処理される。一方、得られた脱水汚泥40はスクリュー式やベルト式などのコンベヤ41によって横型パドル式や多段縦型パドル式などの堆肥化装置42に投入され、堆肥43が製造される。堆肥化の条件は、温度が45〜60℃、空気通気量が発酵槽単位体積当り10〜40L(Normal)/L・hおよび滞留日数が5〜20日である。なお、堆肥化装置は上記で例示した形式に限定されるものではなく、公知の堆肥化装置であればいかなる形式の装置を用いても差し支えない。また、堆肥化装置42への空気28の供給はブロワー44によって行なわれ、堆肥化装置42の加温並びに保温は、前述した嫌気性消化槽14から回収されたバイオガス15の一部を発電装置17の燃料として用い、原動機冷却水用熱交換器17c及び/又は原動機排ガス用熱交換器17dより得られた温水19を堆肥化装置42の外側に設けられたジャケットなどに通水することによって行なわれる。
【0048】
本発明の方法によれば、図8に示した従来方法に比べて堆肥製造量を最大約55質量%減量させることができる。堆肥の需要量には季節的変動があり、製造した堆肥を貯蔵しておく場所が必要となってくるが、その貯蔵容積は一般的にかなり大きなものとなる。堆肥の貯蔵量を少しでも低減させる方法として、図2に示すように、酸化処理スラリー貯留槽35から酸化処理スラリー供給ポンプ36によって脱水装置37へ移送される酸化処理スラリー27の一部を、脱水装置37へ移送せずに、バルブ45の切り換えによって前段のメタン回収工程の混合貯留槽5に返送する場合がある。あるいはまたは、この酸化処理スラリー27の一部を、嫌気性消化槽14とは別に設置された図示しない嫌気性消化槽(固定床法又は浮遊法などいずれでもよい)へ移送して、嫌気性消化槽14におけると同様に嫌気性消化処理を行ってメタンガスを回収する場合もある。
【0049】
さらに、酸化処理スラリー27ではなく、図3に示したように、脱水装置37から排出される脱水汚泥40の一部をスクリュー式やベルト式などのコンベヤ41’によって前段のメタン回収工程の混合貯留槽5へ返送する場合がある。あるいはまたは、この脱水汚泥40の一部を、嫌気性消化槽14とは別に設置された嫌気性消化槽(図示せず)へ移送して、嫌気性消化槽14におけると同様に嫌気性消化処理を行ってメタンガスを回収する場合もある。
【0050】
酸化処理スラリー27または脱水汚泥40を嫌気性消化槽14へ返送し、あるいは別途設置した嫌気性消化槽へ移送する上述した方法を実施できる理由は、部分酸化を既に受けた酸化処理スラリー27が再度嫌気性消化できるものに分解されるためである。従って、可溶化工程において、可溶化工程の処理条件を高くすることによって、消化スラリー12中のSSを効果的に減量でき(例えば処理温度160℃で酸素供給率10質量%の場合で消化スラリー21中のSSを約20質量%減量できる)、堆肥製造量を大幅に減少できるとともに、バイオガス(メタンガス)生成量を大幅に増加させてエネルギー回収量を増加させることが可能となる。嫌気性消化槽の容量や返送負荷による経済性を考慮しても、返送率及び移送率は30質量%程度は可能である。
【0051】
図4に、酸化処理スラリー27を混合貯留槽5へ返送しない場合と返送した場合における堆肥製造量とバイオガス生成量を比較した例を示す。また、図8の従来方法における場合についても図4に併せて示す。図4からわかるように、可溶化工程の処理条件によってSS減少量は異なってくるが、温度160℃で酸素供給率が10質量%の条件で酸化処理し酸化処理スラリーの30質量%を返送した場合、返送しない場合と比べると、堆肥製造量は約17質量%(従来方法と比べると約28質量%)減量でき、バイオガス生成量は約9体積%増量できる。また、温度200℃で酸素供給率が25質量%の条件で酸化処理し酸化処理スラリーの30質量%を返送した場合、返送しない場合に比べると、堆肥製造量は約10質量%(従来方法と比べると約60質量%)減量でき、バイオガス生成量は約2体積%増量できる。なお、脱水汚泥40を返送した場合の堆肥製造量の減量およびバイオガス発生量の増加も、酸化処理スラリー27を返送した場合とほぼ同様な結果となる。
【0052】
一方、堆肥製造量の調整はできないがバイオガスの生成量を増加させる方法として、図5に示すように、脱水工程から排出される脱水分離液38の少なくとも一部を生物処理系70へ移送せずに、バルブ46の切り換えによって破砕選別装置2またはメタンガス回収工程の混合貯留槽5へ濃度調整用水の代替として返送する場合もある。あるいはまた、この脱水分離液38の少なくとも一部を、嫌気性消化槽14とは別に設置された嫌気性消化槽(図示せず)へ移送する場合もある。ちなみに、酸化処理スラリー27や脱水汚泥40を混合貯留槽5へ返送せず、脱水分離液38だけを破砕選別装置2や混合貯留槽5に全量返送した場合、約7体積%のバイオガス生成量の増加ができる。
【0053】
さらに図6に示すように、酸化処理スラリー貯留槽35からの酸化処理スラリー27、脱水汚泥40及び脱水分離液38を前段のメタン回収工程の混合貯留槽5へ返送する場合には、3種のもののうちの1種だけを返送してもよいし、複数種を同時に並行して返送してもよい。また、これら3種のものを別途設置された嫌気性消化槽(図示せず)へ移送する場合でも、3種のもののうちの1種だけを移送してもよいし、複数種を同時に並行して移送してもよい。
【0054】
本発明の可溶化工程では、酸素供給量を制限して部分酸化に止めるため、被湿式酸化処理物を加熱するのに必要な熱量を、酸化反応で生ずる酸化熱で充足させる、すなわち自然させる従来の湿式酸化法とは異なり、温度を150〜200℃に維持するには、外部から加熱し続けなければならない。かかる加熱は、熱交換器によるスチーム等の間接加熱や消化スラリーに直接スチーム等を接触させる直接加熱のいずれでもよい。本発明の可溶化工程では、このように加熱し続けなければならないにもかかわらず、これに要する熱量は、従来の嫌気性消化スラリーを脱水し加熱乾燥して水分調整した後堆肥化する図8に示した方法における水分調整工程で使用する熱量よりも少なくて済む。
【0055】
また、可溶化工程では、酸素供給量を制限しているため、従来の湿式酸化処理スラリーの如く強熱減量成分率(VS/TS)を35〜50質量%まで低下させることなく、60〜75質量%程度に保つことができるため、後段の堆肥化工程での自己発酵を可能なものとすることができると共に、強熱減量成分の分解率を考慮しても、製造される堆肥の乾燥重量当りの強熱減量成分率を40〜60質量%に保つことができる。さらに、可溶化工程では、メタン回収工程からの消化スラリーの極端な分解が抑えられているので、肥料成分として必要な窒素分を減少させることがなく、得られた堆肥のC/N比は推奨基準値を十分達成にすることができる。
【0056】
しかも、かかる可溶化工程においては、メタン回収工程での嫌気性消化で嫌気性微生物が分解できなかった有機成分が部分分解されて可溶化され、再び嫌気性微生物が分解可能なものが液相や固相に形成されと共に、固相に残る有機固形分の減量化が図られる。さらに、この可溶化工程の処理物は、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル等のプラスチック類の微小片等が分解除去され、かつ殺菌され病原菌等も死滅しているため衛生学的にも安全性の高い品質の堆肥の原料となると共に、脱水性が極めてよくなる。
【0057】
従って、可溶化工程からの酸化処理スラリーは脱水機で容易に含水率70質量%以下に脱水できる。また、脱水汚泥の含水率を大幅に低くできるので、堆肥化において必要により行われる加温のエネルギー量が大幅に低減される。
【0058】
【実施例】
本発明方法を、各工程毎に行なった一連の実施例を参照して以下に説明する。また、実施例の結果をまとめて表1に示す。なお、表中に示すTS(蒸発残留物)、VS(強熱減量)、SS(懸濁物質)及びVSS(揮発性浮遊物質)の濃度は、JIS−K0102(1998)の14項に記載の方法で求めた数値である。
【0059】
1.メタン回収工程について
ほとんどが厨芥である事業系生ごみを破砕してTS濃度11質量%程度に調整した有機スラリー0.83kgと、夾雑物を除去したし尿及び浄化槽汚泥をそれぞれTS濃度12質量%程度に濃縮した濃縮汚泥を容量比3:2で混ぜ合わせたもの0.22kgと、を攪拌混合し原料汚泥を作製した。この原料汚泥を体積約20L(有効体積17L程度)の一槽式嫌気性消化槽に1日1回セミバッチ方式にて投入し嫌気性消化処理を行なった。なお、原料汚泥のTS濃度は約11質量%であり、強熱減量成分率(VS/TS)は約89質量%程度であった。
【0060】
消化の条件は、温度が35〜37℃、滞留日数が16日程度で行なった。この消化処理の結果は、表1からわかるように、VS減少率が約66質量%、TS減少率が約60質量%であった。一方、バイオガス生成量は投入VS質量1kg当り0.62m3 程度であり、メタンガス濃度は約61体積%であった(メタンガス発生量では投入VS質量1kg当り約0.38m3 となる)。得られた消化スラリーは、TS濃度が約4.6質量%で強熱減量成分率(VS/TS)が約76質量%程度であり、SS濃度が約4.0質量%で懸濁物質中の揮発成分率(VSS/SS)が約77質量%程度の性状であった。なお、消化スラリー中には目視ではあるがポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル等のプラスチック微小片がかなり混在していた。
【0061】
2.可溶化工程について
前記メタン回収工程で得られた消化スラリーを体積約0.76Lのオートクレーブテスト機に1日2回投入しバッチ式で部分酸化処理して可溶化した。酸化処理条件は、温度が160℃、圧力が0.9MPa及び時間が30分であり、酸素供給量は消化スラリーの酸素要求量(CODCr値)の10質量%相当分とした。この酸化処理の結果は、表1からわかるように、VS減少率が約10質量%、SS減少率が約20質量%,VSS減少率が約23質量%であった。得られた酸化処理スラリーは、TS濃度が約4.3質量%で強熱減量成分率(VS/TS)が約74質量%程度であり、SS濃度が約3.2質量%で懸濁物質中の揮発成分率(VSS/SS)が約73質量%程度の性状であった。なお、酸化処理スラリー中にはポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル等の微小片の混在は目視では全く認められなかった。さらに、酸化処理スラリー中の細菌類は完全に死滅していたことから、衛生学的に問題ないことが認められた。
【0062】
オートクレーブテスト機における酸化処理温度とCST(Capillary Suction Time 下水試験方法)値及びVSS減少率の関係を表2に、酸素供給量(消化スラリーのCODCr値に対する質量%)とCST値及びVSS減少率の関係を表3にそれぞれ示す。CST値はろ過比抵抗値と密接な関係があり、CST値が低くなるに伴いろ過比抵抗値が低くなる、つまり脱水性が良好になってくることを表す値である。表2および表3から、CST値は、処理温度が高くなる程低くなり(脱水性が良くなり)、酸素供給量が多くなる程低くなる(脱水性が良くなる)ことがわかる。また、酸素供給量を多くする程VSS減少率が大きくなり、消化スラリー中の汚泥の可溶化も大きくなることがわかる。この可溶化工程は、消化スラリーを部分酸化させ可溶化(VSS量を減少)によって調質する(懸濁物質中の揮発成分率(VSS/SS)の低下などを行う)ことを目的にしているが、可溶化させる量があまり多くなると後段の堆肥化工程で製造される堆肥の品質(基準値)が保持できなくなるため、VSS減少率が約60質量%以下となるような処理条件に留めることが望ましい。
【0063】
3.脱水工程について
前記可溶化工程で得られた酸化処理スラリーの脱水をヌッチェテスト機にて行なった。その結果、水分調整剤等を添加せずとも含水率が約63質量%の脱水汚泥が得られ、脱水分離液のSS濃度は約1.48g/Lであった。また、脱水汚泥の強熱減量成分率(VS/TS)は約74質量%となった。表1の脱水汚泥及び脱水分離液の分析結果から、消化スラリーのVSS量のうち約10質量%が部分酸化によって分解除去され、約13質量%が脱水分離液に可溶化しているものと推察される。従って、脱水分離液における溶解性のBOD濃度は約5g/Lとかなり高くなっている。
【0064】
4.堆肥化工程について
前記の脱水工程で得られた脱水汚泥を体積約1Lの攪拌機付き容器に投入し、約10日間の好気性発酵で堆肥を製造した。表1に示した分析結果から、得られた堆肥はSS減少率が約10質量%(図8の従来方法では約15質量%)、VS減少率が約10質量%、強熱減量成分率(VS/TS)が約71質量%、炭素/窒素質量比(C/N)が約13であり、し尿汚泥堆肥における品質規準値を十分満足するものであった。また、得られた堆肥中にはポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニルなどの微小片は目視ではほとんど認められず、小松菜による発芽試験においても何ら問題がなかったことから、品質の高い堆肥であることがわかる。
【0065】
5.エネルギー収支の検討について
上記実施例の結果を基に、実施設規模(処理量がし尿40kL/日、浄化槽汚泥60kL/日及び生ごみ質量20t/日)における本発明方法と従来方法(図8)のエネルギー収支を算出した。なお、上記規模における原料汚泥(嫌気性消化槽流入物)のTS濃度は10.8質量%で、その質量は45.36t/日程度となり、嫌気性消化槽から回収されるメタンガス量は約1530m3 (Normal)/日(メタンガス濃度を60体積%としてバイオガス量では約2550m3 (Normal)/日)である。本発明方法と従来方法のエネルギー収支算出結果を表4ならびに図7にまとめて示す。なお、各工程の温度はメタン回収工程が35℃、可溶化工程が170℃、水分調整工程が80℃及び堆肥化工程が60℃である。また、メタンガスの発熱量は35.79MJ/m3 (Normal)、ボイラー熱回収効率を80%、発電装置の発電効率を25%、発電装置排ガスからの熱回収効率は50%と設定した。
【0066】
図7および表4から、各工程においての使用熱量総計は、本発明方法で17825MJ/日程度、従来方法で52920MJ/日程度であり、本発明方法におけるような可溶化工程によって、従来方法の水分調整工程に使用される熱量が大幅に低減できることがわかる。なお、本発明方法の脱水工程で得られる脱水汚泥の含水率は65質量%、従来方法の脱水工程で得られる脱水汚泥の含水率は85質量%、乾燥工程で得られる汚泥の含水率は60質量%として算出している。また、両方法での堆肥化工程における使用熱量の違いは、上記含水率の違いによるほかに、本発明方法では可溶化によって脱水汚泥量が減る反面、VS/TS比は低くなり自己発熱量が少なくなるためによるものである。
【0067】
表4の算出結果によると、従来方法では、回収されたメタンガスのボイラー燃料によって得られる熱量(約43807MJ/日)を施設の加温及び保温用に全量使用してもなお不足するため、外部(施設外)からのエネルギー約9113MJも必要となる。これに対して本発明方法では、回収されたメタンガスの極一部(104m3 (Normal)/日程度)は可溶化工程において使用されるが、残りのメタンガス(1426m3 (Normal)/日程度)は発電装置の燃料に使用でき、約3544kwh/日の電力が得られる上に、その廃ガス熱量による温水回収によって約25518MJ/日の熱量が得られるため、メタン回収工程(嫌気性消化槽)及び堆肥化工程(堆肥化装置)の加温及び保温用熱量を賄えるだけでなく余剰熱量も得られる。
【0068】
なお以上の説明においては、湿式酸化装置をベースとして本発明の可溶化工程を実施する形態を説明したが、消化スラリーとスチームとを直接接触させて特定の温度で加熱することにより有機物を熱変性させ脱水性を改善するポーチャスプロセスに代表される熱処理装置を使用することもでき、この場合も、温度が150〜200℃で、かつ消化スラリーの液相を保持する圧力で、処理時間を15〜60分とする条件で、酸素供給量が消化スラリーのCODCr値の5〜25質量%に相当する酸素含有ガスを供給することにより可溶化工程を実施することができる。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜7の発明によれば、可溶化工程において酸素供給量を制限することにより、強熱減量成分率(VS/TS)を比較的高く保つことができ、後段の堆肥化工程での自己発酵を可能なものとすることができる。さらに、嫌気性消化で嫌気性微生物が分解できなかった有機成分を可溶化するため、再び嫌気性微生物が分解可能なものが液相や固相に形成できると共に、固相に残る有機固形分の減量化ができる結果、有機性廃棄物スラリーの単位処理当たりの堆肥生成量を小さくできて、堆肥がだぶつき傾向にある社会状況に対応した処理方法とすることができる。
【0074】
また、可溶化工程において、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニル等の微小なプラスチック片等が分解除去され、殺菌もされ、さらに脱水性の改善がなされるため、脱水助剤の無添加あるいは極少量の添加で低い含水率の脱水汚泥が得られるので、衛生学的にも安全性の高い品質の堆肥を得ることができる。
【0075】
しかも、これらの作用効果を、従来の嫌気性消化スラリーを脱水し加熱乾燥して水分調整した後堆肥化する図8に示した方法の水分調整工程に必要な熱量よりも少ない熱量で達成でき、経済的な資源循環型の廃棄物処理が行なえる。
【0076】
特に請求項2の発明によれば、可溶化工程で必要な熱量をメタン回収工程で得られたメタンガスの熱量で十分にまかなうことが可能であり、余剰のメタンガスを発電や他の用途に振り分けることができる。
【0077】
また請求項3または4の発明によれば、可溶化工程からの処理物中に残存する未分解有機成分を再度嫌気性消化さらには可溶化することができると共に、嫌気性消化槽に供給する処理物の供給量が増加するため、堆肥需要の季節変動に合わせて堆肥製造量を調整したり、発電等に使用できる汎用性の高いメタンガス量を増加させることができる。
【0078】
特に請求項4の発明によれば、脱水工程後の脱水物を嫌気性消化槽に供給するため、含水率の大きい有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化槽に供給しても効果的に嫌気性消化槽で処理することが可能となる。
【0079】
請求項5の発明によれば、脱水工程からの脱水分離液中に残存する未分解有機成分を再度嫌気性消化さらには可溶化することができるため、嫌気性消化によるメタンガスの発生量を増加できると共に、廃水処理系の負荷を低減を図ることができる。
【0080】
請求項6によれば、本発明の処理方法全体を、フレキシビリティーを持った、より効率的にエネルギーを回収するシステムとすることができ、原料である有機性廃棄物スラリーの性状が変化してメタン発生量が変化する場合でも安定して可溶化工程を運転できる。
【0081】
請求項7の発明によれば、メタン回収工程、可溶化工程および堆肥化工程を全体的に効率よく運転できる結果、好ましく安定したメタンガスの発生と堆肥化を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本的な実施例を示すフローシート。
【図2】 本発明の変形実施例を示すフローシート。
【図3】 本発明の別な変形実施例を示すフローシート。
【図4】 本発明の図2に示す変形実施例を基本実施例および従来方法と比較するSS量およびメタンガス生成量指数図
【図5】 本発明の更に別な変形実施例を示すフローシート。
【図6】 本発明の更に別な変形実施例を示すフローシート。
【図7】 実施設規模における本発明方法と従来方法のエネルギー収支比較図
【図8】 従来の堆肥化処理方法の例を示すブロックフロー。
【符号の説明】
1:固形廃棄物(生ごみ等)
3:有機スラリー
5.混合貯留槽
6.液状廃棄物
9.濃縮汚泥
12.原料汚泥
14.嫌気性消化槽
15.バイオガス
17.発電装置
21.消化スラリー
26.反応塔
27.酸化処理スラリー
37.脱水装置
38.脱水分離液
40.脱水汚泥
42.堆肥化装置
50.可溶化設備
Claims (7)
- 生ごみを含む有機性廃棄物スラリーを嫌気性消化槽で嫌気性消化処理してメタンガスを回収するメタン回収工程と、
前記メタン回収工程後の消化処理スラリーを、温度が150〜200℃で、かつ該消化処理スラリーの液相を保持する圧力で、処理時間を15〜60分とする条件で、酸素供給量が該消化処理スラリーのCODCr値の5〜25質量%に相当する酸素含有ガスを供給して部分分解する可溶化工程と、
前記可溶化工程からの処理物の少なくとも一部を脱水機で脱水して含水率70質量%以下とする脱水工程と、
前記脱水工程後の脱水物を好気性発酵して堆肥とする堆肥化工程と、
を備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。 - 前記可溶化工程の熱源に、前記メタン回収工程で得られたメタンガスの熱量を利用することを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記可溶化工程からの処理物の一部を脱水せずに前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給し、その供給量を調整することにより、前記堆肥化工程からの堆肥製造量および前記メタン回収工程のメタンガス発生量を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記脱水工程後の脱水物の一部を前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給し、その供給量を調整することにより、前記堆肥化工程からの堆肥製造量および前記メタン回収工程のメタンガス発生量を調整することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記脱水工程からの脱水分離液の少なくとも一部を前記メタン回収工程の前記嫌気性消化槽または別の嫌気性消化槽に供給することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記メタン回収工程で得られたメタンガスの一部をボイラの燃料とし、該ボイラからのスチームを前記可溶化工程の加熱熱源に利用し、かつ前記メタンガスの残りの少なくとも一部を発電機を備えた原動機の燃料とすると共に、該原動機からの排ガスの熱により水を加熱して得られた温水を前記嫌気性消化槽の加温熱源に利用することを特徴とする請求項2に記載の有機性廃棄物の処理方法。
- 前記メタン回収工程のメタン発酵日数が7〜20日であり、前記可溶化工程の液相を保持する圧力が絶対圧0.5〜2.5MPaであり、前記堆肥化工程の好気性発酵日数が5〜20日であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の有機性廃棄物の処理方法。
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