JP3651352B2 - Srモータの制御方法及びsrモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、SRモータ(スイッチド・リラクタンス・モータ)の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁石を用いないタイプのモータとしてSRモータが知られている。SRモータは、筒状のヨークに複数の内向きに突出する突極を一体形成してなるステータ(固定子)と、外向きに突出する複数の突極を有するロータ(回転子)とを同軸上に配置し、ステータの突極に巻線コイルを装着して構成される。
【0003】
ロータの突極とステータの突極の数は、相互に倍数関係になっていない偶数個に設定される。例えば、ロータの突極の数が4に対してステータの突極の数が6、ロータの突極の数が6に対してステータの突極の数が8、ロータの突極の数が8に対してステータの突極の数が12、という如くである。
【0004】
ステータの一対の対向する巻線コイル(場合によりさらに複数の巻線コイル)に電流を流して、ステータの突極からロータの突極へ向かう磁束を発生させ、ロータの突極をステータの突極に引き付けることで、トルクを発生させる。このとき、ステータとロータのある突極同士が対向すると、他の突極同士にずれが生じており、逐次ずれた突極を選んでその巻線コイルに通電すればロータの突極が連続的に引き付けられ、ロータを軸回りに回転させることができる。
【0005】
このようなSRモータは、発電機として機能させることも可能である。図14(a)及び(b)はSRモータを発電電動機として用いる場合の従来の駆動回路を示す回路図である。この駆動回路は、ステータの突極に装着された巻線コイルのうち、同一の相を構成する複数の巻線(巻線組)についてそれぞれ設けられている。例えば、ステータの突極の数が6でロータの突極の数が4の3相モータの場合には、各相(U相、V相、W相)はそれぞれ互いに対向する一対の巻線コイルにより構成され、これらの一対の巻線コイルはそれぞれ直列に接続されて巻線組とされ、これらの巻線組のそれぞれについて該駆動回路が設けられる。なお、本願明細書中においては、巻線コイル又は巻線とは、単一の巻線コイルのみならず、同一の相を構成する複数の巻線コイル(巻線組)をもいうものとする。
【0006】
同図に示されているように、巻線コイルCの始端T1を、スイッチ素子(パワートランジスタ)SW1を含むパワー素子を介して電源Eに接続するとともに、ダイオードD1を介して接地する。当該巻線コイルCの終端T2をダイオードD2を介して電源Eに接続するとともに、スイッチ素子SW2を含む同様なパワー素子を介して接地する。
【0007】
図15はスイッチ素子SW1及びSW2の作動の制御内容を説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0008】
インダクタンスLが低下している時期において、ロータの回転角が所定の角度(θon)になったときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンして巻線コイルCに電圧を印可すると、図14(a)に示されているように、電流はスイッチ素子SW1、巻線コイルC、スイッチ素子SW2の経路で流れ、この間、電源Eからエネルギが供給されトルクが発生する。
【0009】
次に、インダクタンスLが低下している時期において、ロータの回転角が他の所定の角度(θoff)になったときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオフすると、図14(b)に示されているように、巻線コイルCに生じる起電力によって、ダイオードD1、巻線コイルC、ダイオードD2の経路で電流が流れ、電源Eにエネルギが回生される。このようにスイッチ素子SW1及びSW2の作動を制御することにより、供給エネルギよりも回生エネルギを大きくすることができ、これにより発電機として機能させることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の制御方法では、特に低回転域では起電力が小さく、大電流が流れてしまうため、スイッチ素子を含むパワー素子として電流容量の大きいものを採用する必要があり、コストが高いという問題があった。また、巻線銅損が大きくなってしまい効率的でないという問題があった。さらに、これに伴い、トルクリプルも大きいという問題もあった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、コストの低減、高効率的で性能の向上を図ることができるSRモータの制御方法及びSRモータを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するため、本発明のSRモータの制御方法は、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータの制御方法において、前記巻線に電力を供給する供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記巻線に生じる起電力を回収する回生モードを行い、該検出電流値が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記巻線の両端を同電位とする還流モードを行い、両者を交互に繰り返す繰り返しモードを行うとともに、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを前記ロータの回転角変化に応じて変化させたことを特徴とする。
【0013】
本発明のSRモータの制御方法によると、供給モードと回生モードに加えて還流モードを新設し、供給モードを行った後に回生モードと還流モードを交互に繰り返すようにしている。供給モードの実行後に回生モードを実行すると、巻線に流れる電流は減少するが、還流モードを実行すると、電流が再び増大するから、回生モードと還流モードとを交互に実行することにより、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができる。
【0014】
また、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記繰り返しモードを行うようにしたので、低電流で大きな出力を得ることができる。
【0015】
さらに、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記回生モードを行い、該検出電流が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記還流モードを行うようにしたので、巻線を流れる電流をある範囲にコントロールすることができる。
【0016】
本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返しモードにおける前記回生モードと前記還流モードとを切換えるスイッチング周期を一定とし、スイッチング一周期の中で前記回生モードとする時間と前記還流モードとする時間との比率を変化させて巻線を流れる電流値を制御するようにできる。
【0017】
本発明のSRモータの制御方法において、前記巻線の抵抗をR、前記巻線のインダクタンスの変化率を(dL/dθ)として、前記ロータの単位時間あたりの回転数が、−R/(dL/dθ)よりも大きい場合にのみ、前記回生モード及び前記還流モードを行うことが望ましい。かかる回転数よりも低回転域においては、還流モードを実行しても電流が上昇しないので、電流ピークは低くできても、出力が低下してしまうからである。
【0018】
本発明のSRモータの制御方法において、前記ロータの単位時間あたりの回転数をω、前記電源の電圧をEとして、前記第1電流値を、−E/(R+(dL/dθ)・ω)よりも小さい値に設定することが望ましい。かかる電流値よりも大きくなると、回生モードの実行中に電流が増え続けるため、上記のような制御を行うことができなくなるからである。
【0019】
(2)本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返しモードを行う繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記巻線に接続されたモード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定することが望ましい。このときの前記電流振幅Δiは、前記巻線の抵抗をR、前記ロータの単位時間あたりの回転数をω、前記電源の電圧をE、前記第1電流値をim 、前記巻線の瞬時インダクタンスをLm 、前記巻線のインダクタンスの変化率を(dL/dθ)として、下式により決定することができる。
【0020】
Δt=Δi・ELm /(α(E−α)) …[1]
但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im
【0021】
このSRモータの制御方法によれば、電流振幅Δiを、繰り返し期間中における電流変化の周期(互いに連続する二つのモード(回生モード、還流モード)のそれぞれの実行時間の和に相当する時間)Δtが、モード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期(オン−オフ−オン又はオフ−オン−オフに要する最小時間)Δt0 以上となるように設定したので、スイッチ手段に破損を生じさせない範囲で、電流振幅Δiを小さくすることができる。従って、発電量を多くでき、発電量のバラツキを低減でき、さらに電流リプルも低減されるので、電源や該電源に付属する部品(例えば、電源に並列接続されるコンデンサ等)の負荷が軽減される。
【0022】
(3)上記目的を達成するため、本発明のSRモータの制御方法は、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータの制御方法において、前記巻線に電力を供給する第1供給モードを行った後に、前記巻線に生じる起電力を回収する回生モードと前記巻線に電力を供給する第2供給モードとを交互に繰り返す繰り返しモードを行うことを特徴とする。この場合において、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記繰り返しモードを行うことができる。
【0023】
このSRモータの制御方法によると、供給モードを行った後に、回生モードと還流モードを交互に繰り返すのではなく、回生モードと供給モード(第2供給モード)を交互に繰り返すようにしている。供給モードの実行後に回生モードを実行すると、巻線に流れる電流は減少するが、供給モードを実行すると、電流が再び増大するから、回生モードと供給モードとを交互に実行することにより、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができる。特に、低回転域においては、還流モードにおける電流の増加は緩やかなため、その分回生モードの実行時間が短くなって発電量が少なくなるが、供給モードにおける電流の増加は還流モードと比較して大きく、速やかに第1電流値に達することになるので、その分回生モードの実行時間を長くすることができる。また、ロータの回転数が極めて低い場合には回生モードを実施しても電流が上昇しないことは上述した通りであるが、本請求項のように、還流モードに代えて供給モードを実施するようにすれば、極低回転域においても電流を上昇させることができ、したがって、極低回転域においても発電することが可能となる。
【0024】
上記目的を達成するため、本発明のSRモータの制御方法は、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータの制御方法において、前記巻線に電力を供給する第1供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線に生じる起電力を回収する回生モードと前記巻線に電力を供給する第2供給モードとを交互に繰り返す第1繰り返しモード、及び前記回生モードと前記巻線の両端を同電位とする還流モードとを交互に繰り返す第2繰り返しモードを混在的に行うことを特徴とする。
【0025】
このSRモータの制御方法によると、供給モード(第1供給モード)後の繰り返し期間において、回生モードを行った後、電力を消費することなく巻線に流れる電流を上昇させる還流モード、又は電力は消費するが巻線に流れる電流を速やかに上昇させる供給モード(第2供給モード)を、適宜に選択して混在的に実施することにより、両者のメリットを享受することができ、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができる。
【0026】
この場合において、前記第1繰り返しモード及び前記第2繰り返しモードをこの順に行うようにできる。インダクタンスが低下する期間においては、インダクタンスが比較的に大きい時期では還流モードの実行による電流の上昇は緩やかなため、回生モードの実行時間が短縮されてエネルギの回生量は小さくなるが、このとき還流モードに代えて供給モードを実行することにより電流が速やかに上昇するから、それだけ回生モードの実行時間が増加し、エネルギの回生量が多くなる。一方、インダクタンスが比較的に小さい時期では還流モードの実行による電流の上昇はインダクタンスが比較的に大きい時期よりも速やかなので、供給モードによるまでもなく、この時期には還流モードの実行により電力を消費することなく電流を上昇させることにより、全体として発電量を多くすることができる。
【0027】
本発明のSRモータの制御方法において、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記回生モードを行い、該検出電流が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記第2供給モード又は前記還流モードを行うようにできる。このSRモータの制御方法によれば、巻線を流れる電流をある範囲にコントロールすることができる。
【0028】
本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返しモードにおける前記回生モードと前記還流モードとを切換えるスイッチング周期を一定とし、スイッチング一周期の中で前記回生モードとする時間と前記還流モード又は第2供給モードとする時間との比率を変化させて巻線を流れる電流値を制御するようにできる。
【0029】
(4)本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返しモードを行う繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記巻線に接続されたモード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定することができる。このときの電流振幅Δiは、前記巻線の抵抗をR、前記ロータの単位時間あたりの回転数をω、前記電源の電圧をE、前記第1電流値をim 、前記巻線の瞬時インダクタンスをLm 、前記巻線のインダクタンスの変化率を(dL/dθ)として、下式により決定することができる。
【0030】
Δt=Δi・2ELm /(E2 −α2 ) …[2]
但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im
【0031】
このSRモータの制御方法によれば、電流振幅Δiを、繰り返し期間中における電流変化の周期(互いに連続する二つのモード(回生モード及び供給モード又は還流モード)のそれぞれの実行時間の和に相当する時間)Δtが、モード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期(オン−オフ−オン又はオフ−オン−オフに要する最小時間)Δt0 以上となるように設定したので、スイッチ手段に破損を生じさせない範囲で、電流振幅Δiを小さくすることができる。従って、発電量を多くでき、発電量のバラツキを低減でき、さらに電流リプルも低減されるので、電源や該電源に付属する部品(例えば、電源に並列接続されるコンデンサ等)の負荷が軽減される。
【0032】
(5)本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返し期間の全体に渡って前記電流振幅Δiを一定となるように制御することができる。このように、電流振幅Δiを一定にすると、発生するトルクが回転角に対してほぼ一定となり、トルクリプル(トルク脈動)が低減される。
【0033】
このように電流振幅Δiを一定とする場合には、前記電流振幅Δiを求めるための数式である[1]式又は[2]式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記巻線の最小インダクタンスを用い、請求項19記載のように前記繰り返し期間の終了時点における前記巻線のインダクタンスを用い、あるいは前記繰り返し期間の終了時点における前記ロータの回転角をθoff として、前記ロータの回転角がθoff −(Δt/2)・ωにおける前記巻線のインダクタンスを用いることができる。
【0034】
また、本発明のSRモータの制御方法において、前記電流振幅Δiを、前記繰り返し期間内における電流変化の周期が一定となるように、前記ロータの回転角に応じて変化させることができる。この場合において、請求項22記載のように、前記電流振幅Δiを求めるための数式である[1]式又は[2]式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記巻線の電流が最初に前記第1電流値に到達した時点での前記ロータの回転角θm におけるインダクタンスを用いて演算した電流振幅をΔi1 、前記繰り返し期間の終了時点での前記ロータの回転角θoff におけるインダクタンスを用いて演算した電流振幅をΔi0 としたときに、前記ロータの回転角がθm からθoff まで変化するのに応じて前記電流振幅ΔiをΔi1 からΔi0 まで直線的に変化させるように制御することができる。
【0035】
このSRモータの制御方法によれば、繰り返し期間の開始から終了に至る全期間において、スイッチ手段の実際のスイッチング動作を最小スイッチング周期あるいはそれに近い周期で実施することができるので、発電量をさらに多くすることができる。
【0036】
(6)本発明のSRモータの制御方法において、前記供給モード又は前記第1供給モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に前記巻線を流れる電流が前記第1電流値に達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が始まる角度よりも前の角度で開始するようにできる。この場合において、前記インダクタンスが低下する期間が始まる角度として、前記ステータの突極と前記ロータの突極とが完全に相対した時点での前記ロータの角度を0(ゼロ)、前記ロータの突極の円弧角をθR 、前記ステータの突極の円弧角をθS として、(θR −θS )/2で表される角度を用いることができる。さらにこの場合において、前記供給モードの開始角度θonを、前記巻線の最大インダクタンスをL1 、前記巻線の最小インダクタンスをL0 、前記巻線抵抗をR、電源電圧をE、前記第1電流値をim 、前記ロータの回転速度をω、前記巻線のインダクタンスが低下する期間が始まる角度を0(ゼロ)、該期間が終わる角度をθ1 として、下式で表される範囲内で設定するようにできる。
【0037】
【数3】
但し、KL =(L1 −L0 )/θ1 、A=KL ・ω/Rである。
【0038】
上記のように供給モード(又は第1供給モード)を開始する時期を設定することにより、ロータの回転に伴い巻線のインダクタンスが低下する期間におけるより早い時期から繰り返しモードを実行することができるようになるので、それだけ回生モードの実行時間を長くすることが可能であり、従って、発電量を多くすることができる。
【0039】
また、本発明のSRモータの制御方法において、前記繰り返しモードの終了と同時に行う最後の回生モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間の経過後に前記巻線を流れる電流がゼロに達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が終わる角度よりも前の角度で開始するようにできる。この場合において、前記インダクタンスが低下する期間が終わる角度として、前記ステータの突極と前記ロータの突極とが完全に相対した時点での前記ロータの角度を0(ゼロ)、前記ロータの突極の先端の回転方向両端のなす角度をθR 、前記ステータの突極の先端の回転方向両端のなす角度をθS として、θ0 +(θR +θS )/2で表される角度を用いることができる。さらにこの場合において、前記最後の回生モードの開始角度θoff を、前記巻線の最大インダクタンスをL1 、前記巻線の最小インダクタンスをL0 、前記巻線抵抗をR、電源電圧をE、前記第1電流値をim 、前記ロータの回転速度をω、前記巻線のインダクタンスが低下する期間が始まる角度を0(ゼロ)、該期間が終わる角度をθ1 として、下式で表される範囲内で設定するようにできる。
【0040】
【数4】
但し、KL =(L1 −L0 )/θ1 、A=KL ・ω/Rである。
【0041】
上記のように最後の回生モードを開始する時期を設定することにより、ロータの回転に伴い巻線のインダクタンスが低下する期間におけるより遅い時期まで繰り返しモードを実行することが可能となるので、それだけ回生モードの実行時間を長くすることができ、従って、発電量を多くすることができる。
【0042】
さらに、本発明のSRモータの制御方法において、前記電源電圧Eとして、電圧計測手段を用いて計測した値を用い、あるいは前記巻線抵抗Rとして、基準温度での前記巻線の抵抗値を温度計測手段を用いて計測した温度に基づいて補正した値を用いるようにできる。運転中における実際の状態における電圧値又は実際の状態により近い状態における巻線の抵抗値を用いて上述の演算を行うことにより、演算結果の信頼性、正確性をより向上することができる。
【0043】
なお、「ステータの突極とロータの突極とが完全に相対した時点」とは、ステータの突極の先端のロータ回転方向の両端の中点と、ロータの突極の先端のロータ回転方向の両端の中点とが相対した時点をいう。また、「ロータの突極の円弧角(θR )」とは、ロータの回転軸に直交する平面において、ロータの突極の先端のロータ回転方向の両端とロータの回転中心とをそれぞれ結んだ線のなす角度をいい、「ステータの突極の円弧角(θS )」とは、ロータの回転軸に直交する平面において、ステータの突極の先端のロータ回転方向の両端とロータの回転中心とをそれぞれ結んだ線のなす角度をいう。
【0044】
(7)上記目的を達成するため、本発明のSRモータは、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータにおいて、前記巻線の始端と電源の一方の極とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、前記巻線の終端と電源の他方の極とを選択的に接続する第2スイッチ手段と、前記巻線の始端と前記電源の他方の極との間に介装された該始端へ向かう方向にのみ電流を流す第1ダイオード手段と、前記巻線の終端と前記電源の一方の極との間に介装された該電源の一方の極へ向かう方向にのみ電流を流す第2ダイオード手段と、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードを行い、該検出電流値が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記第1及び第2スイッチ手段の一方を接続し他方を切断する還流モードを行い、両者を交互に繰り返し行うよう制御するとともに、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを前記ロータの回転角変化に応じて変化させるよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0045】
また、本発明のSRモータは、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータにおいて、前記巻線の始端と電源の一方の極とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、前記巻線の終端と電源の他方の極とを選択的に接続する第2スイッチ手段と、前記巻線の始端と前記電源の他方の極との間に介装された該始端へ向かう方向にのみ電流を流す第1ダイオード手段と、前記巻線の終端と前記電源の一方の極との間に介装された該電源の一方の極へ向かう方向にのみ電流を流す第2ダイオード手段と、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第1供給モードを行った後、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードと前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第2供給モードとを交互に繰り返し行うよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0046】
さらに、本発明のSRモータは、偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータにおいて、前記巻線の始端と電源の一方の極とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、前記巻線の終端と電源の他方の極とを選択的に接続する第2スイッチ手段と、前記巻線の始端と前記電源の他方の極との間に介装された該始端へ向かう方向にのみ電流を流す第1ダイオード手段と、前記巻線の終端と前記電源の一方の極との間に介装された該電源の一方の極へ向かう方向にのみ電流を流す第2ダイオード手段と、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第1供給モードを行った後、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードと前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第2供給モードとを交互に繰り返す第1繰り返しモードを行い、次いで、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードと前記第1及び第2スイッチ手段の一方を接続し他方を切断する還流モードとを交互に繰り返す第2繰り返しモードを行うよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0047】
本発明のSRモータにおいて、前記巻線を流れる電流を検出する電流検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電流検出手段により検出された検出電流が第1電流値に達したならば前記回生モードを行い、該検出電流が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記第2供給モード又は前記還流モードを行うよう制御するようにできる。
【0048】
このSRモータによると、供給モード(第1供給モード)の実行後に、回生モードと還流モードを交互に実行し、回生モードと供給モード(第2供給モード)を交互に実行し、あるいは回生モードと供給モード(第2供給モード)及び回生モードと還流モードを適宜に実行するようにしている。供給モードの実行後に回生モードを実行すると、巻線に流れる電流は減少するが、供給モード又は還流モードを実行すると、電流が再び増大するから、これらを交互に実行することにより、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができる。
【0049】
本発明のSRモータにおいて、前記制御手段は、前記回生モード及び前記第2供給モード又は前記還流モードを繰り返す繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記第1及び第2スイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定することができる。
【0050】
この場合における前記電流振幅Δiは、前記繰り返し期間の全体に渡って一定とし、あるいは前記繰り返し期間内における電流変化の周期が一定となるように、前記ロータの回転角に応じて変化させるように制御することができる。
【0051】
本発明のSRモータによれば、電流振幅Δiを、繰り返し期間中における電流変化の周期(互いに連続する二つのモード(回生モード及び供給モード又は還流モード)のそれぞれの実行時間の和に相当する時間)Δtが、モード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期(オン−オフ−オン又はオフ−オン−オフに要する最小時間)Δt0 以上となるように設定したので、スイッチ手段に破損を生じさせない範囲で、電流振幅Δiを小さくすることができる。従って、発電量を多くでき、発電量のバラツキを低減でき、さらに電流リプルも低減されるので、電源や該電源に付属する部品(例えば、電源に並列接続されるコンデンサ等)の負荷が軽減される。
【0052】
本発明のSRモータにおいて、前記供給モード又は前記第1供給モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に前記巻線を流れる電流が前記第1電流値に達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が始まる角度よりも前の角度で開始するようにできる。また、本発明のSRモータにおいて、前記繰り返しモードの終了と同時に行う最後の回生モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間の経過後に前記巻線を流れる電流がゼロに達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が終わる角度よりも前の角度で開始するようにできる。
【0053】
本発明のSRモータによれば、繰り返しモードを実行する時間をより長くすることが可能であるから、発電量を多くすることでき、高効率的な発電を行うことができる。
【0054】
【発明の効果】
(1)本発明によれば、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができ、従って、スイッチ素子等の駆動回路部品として低容量の部品を採用することができるから、SRモータの低コスト化を実現することができる。また、巻線銅損、トルクリプルや音振等が小さくなり、SRモータの性能を向上することができる。特に、スイッチング一周期の中で前記回生モードとする時間と前記還流モードとする時間との比率を変化させる制御を実施するための構成として、汎用的なPWM制御回路部品を採用することが可能であるために、SRモータの制御回路を汎用部品を用いて簡易に実現でき、製造コストを低減できると言う効果も得られる。また、本発明によれば、高効率的で安定した制御を行うことができる。
【0055】
(2)本発明によれば、スイッチ手段(スイッチ素子等)を破壊しない範囲で、発電量を増大するとともに、発電量のバラツキを低減することができ、さらに電源等を構成する回路部品の負荷を軽減することができる。
【0056】
(3)本発明によれば、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができ、従って、スイッチ素子等の駆動回路部品として低容量の部品を採用することができるから、SRモータの低コスト化を実現することができる。また、巻線銅損、トルクリプルや音振等が小さくなり、SRモータの性能を向上することができる。加えて、極めて低回転域においても、発電やトルク制御が可能になる。特に、スイッチング一周期の中で前記回生モードとする時間と前記還流モードとする時間との比率を変化させる制御を実施するための構成として、汎用的なPWM制御回路部品を採用することが可能であるために、SRモータの制御回路を汎用部品を用いて簡易に実現でき、製造コストを低減できると言う効果も得られる。
【0057】
(4)本発明によれば、スイッチ手段(スイッチ素子等)を破壊しない範囲で、発電量を増大するとともに、発電量のバラツキを低減することができ、さらに電源等を構成する回路部品の負荷を軽減できる。
【0058】
(5)本発明によれば、発電量をさらに増大することができる。
【0059】
(6)本発明によれば、繰り返しモードを実行する時間をより長くすることが可能であるから、発電量を多くすることでき、高効率的な発電を行うことができる。
【0060】
(7)本発明によれば、電流ピークを低く抑えつつ高出力を実現することができ、従って、スイッチ素子等の駆動回路部品として低容量の部品を採用することができるから、低コストなSRモータが提供される。また、巻線銅損、トルクリプルや音振等が小さくなり、高性能なSRモータが提供される。
【0061】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態のSRモータ(スイッチド・リラクタンス・モータ)の構成を示す平面図である。図2は同じく駆動回路の構成を示す回路図であり、(a)は供給モード、(b)は回生モード、(c)は還流モードを示している。この実施形態のSRモータ1は、ステータの突極の数を6、ロータの突極の数を4とした3相モータであり、例えば、車両のエンジンに直結されて使用される発電機としても機能する発電電動機である。
【0062】
まず、図1を参照する。SRモータ1は、回転子としてのロータ2、固定子としてのステータ3及びこれらを収容する図示しないモータハウジングなどを備えて構成される。
【0063】
ロータ2は複数(この実施形態では4個)の突極2aを有するロータコア4の中心に形成された貫通穴に出力軸(シャフト)5を挿入して一体的に固定して構成され、この出力軸5はモータハウジングにベアリングを介して支持されている。ロータコア4は、この実施形態では、プレス装置により打ち抜き加工された複数の磁性鋼板を積層して一体化することにより構成されている。出力軸5の単位時間あたりの回転数(rpm)は図示しない回転数検出装置により計数される。
【0064】
ステータ3はステータコア6及び複数の巻線コイル7を備えて構成される。ステータコア6は略円筒状のヨーク部の内側に半径方向に突出する複数(この実施形態では6個)の突極3aを一体的に設けて構成されている。ステータコア6は、この実施形態では、プレス装置により打ち抜き加工された複数の磁性鋼板を積層して一体化することにより構成されている。ステータ3はモータハウジングの内側に固定される。
【0065】
巻線コイル7はステータコア6の6個の突極にそれぞれ設けられており、互いに対向する一対の巻線コイル7は直列に接続されて巻線組とされ、これらの3つの巻線組により、各相(U相、V相、W相)が構成される。巻線コイル7はステータコア6の突極3aに直接的に巻回され、あるいは樹脂等からなるボビンに巻回されて装着される。ロータ2はステータ3の突極3aとの間に所定のギャップをもつように、同軸上に挿入配置される。
【0066】
巻線コイル7に電流を流して、ステータ3の突極3aからロータ2の突極2aへ向かう磁束を発生させ、その近傍に存在するロータ2の突極2aを引き付けることで、トルクを発生させる。ステータ3とロータ2のある突極2a,3a同士が対向すると、他の突極2a,3a同士にずれが生じており、逐次ずれた突極を選んでその巻線コイルに通電することにより、即ち、U相を構成する巻線コイル、V相を構成する巻線コイル、W相を構成する巻線コイルに逐次通電することにより、ロータ2の突極2aが連続的に引き付けられ、ロータ2を軸回りに回転させることができる。
【0067】
このSRモータの駆動回路は、図2に示されているように構成されている。なお、以下の説明では、U相を構成する巻線組についての駆動回路を説明するが、他のV相、W相についての駆動回路も同じ構成である。
【0068】
U相を構成する一対の巻線コイル7からなる巻線組Cの始端T1は、スイッチ素子(パワートランジスタ)SW1を含むパワー素子を介して電源E(例えば、車両のバッテリの+極)に接続されているとともに、ダイオードD1を介して接地(バッテリの−極に接続)されている。この巻線組Cの終端T2は、ダイオードD2を介して電源Eに接続されているとともに、スイッチ素子SW2を含む同様なパワー素子を介して接地されている。
【0069】
巻線組Cの終端T2には図示は省略するが、電流検出器が設けられている。各スイッチ素子SW1,SW2の作動は、電流検出器の検出電流等に基づいて、図示しない制御装置により制御される。
【0070】
この実施形態の制御装置は、3つの制御モード、即ち、供給モード、回生モード及び還流モードを適宜に行う。供給モードは、巻線組Cに電力を供給するモードであり、図2(a)に示されているように、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオン(ON)するモードである。この供給モードを行うことにより、電流はスイッチ素子SW1、巻線組C、スイッチ素子SW2の経路で流れ、この間、電源Eからエネルギが供給されトルクが発生する。
【0071】
回生モードは、巻線組Cに生じる起電力を回収するモードであり、図2(b)に示されているように、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオフ(OFF)するモードである。この回生モードを行うことにより、電流はダイオードD1、巻線組C、ダイオードD2の経路で流れ、この間、電源Eにエネルギが回生される。スイッチ素子SW1及びSW2のオン及びオフのタイミングを適宜に設定して、即ち、供給モードと回生モードを適宜に実行して、供給エネルギよりも回生エネルギを大きくすることにより、このSRモータを発電機として機能させることができる。
【0072】
還流モードは、本発明により新たに設けられたモードで、巻線組Cの両端を同電位に設定する、即ち、図2(c)に示されているように、スイッチ素子SW2をオン(ON)にし、スイッチ素子SW1をオフ(OFF)に設定するモードである。同図の場合、この還流モードを行うことにより、電流はダイオードD1、巻線組C、スイッチ素子SW2の経路で流れ、この間、エネルギ収支は無く、電流は還流する。なお、還流モードは、スイッチ素子SW1をオン(ON)にし、スイッチ素子SW2をオフ(OFF)に設定することにより実現してもよい。
【0073】
図3は、各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0074】
これらの図に示されているように、この実施形態では、インダクタンスLの上昇後期で、ロータが所定の回転角θonにあるときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンして、供給モードを開始する。これにより、巻線組Cに流れる電流が上昇する。次いで、インダクタンスLが下降に転じた時点あるいはその後の下降期間中において、上述の電流検出器により検出された巻線電流(検出電流)が予め決められた所定の上限値im となった場合に、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオフして回生モードを実行する。これにより、巻線電流は下降する。次いで、上述の電流検出器により検出された検出電流が予め決められた所定の下限値となった場合に、スイッチ素子SW1はオフのままで、スイッチ素子SW2をオンすることにより、還流モードを実行する。これにより、巻線電流は再び上昇する。
【0075】
以下、同様にして、検出電流が所定の上限値となった場合に還流モードを、所定の下限値になった場合に回生モードを交互に繰り返し行い、ロータが所定の回転角θoff となったときに(インダクタンスLが下降から横ばいに転じる時点よりも前の時点で)、この回生モードと還流モードの繰り返し制御を終了し、その後電流が零になるまで回生モードを実行する。
【0076】
この実施形態によると、供給モードを行った後、巻線電流が所定の上限値及び下限値の範囲内となるように、回生モードと還流モードを交互に繰り返すようにしているので、ロータの回転数が低回転域にある場合であっても、巻線電流が突出的に大きくなることが防止され、所定値以下に保たれる。従って、スイッチ素子SW1,SW2をそれぞれ含むパワー素子やダイオードD1,D2、その他の駆動回路を構成する部品として、その電流容量が小さいものを採用することができ、そのような部品は容量が大きいものと比較して一般に安価であるので、SRモータの低コスト化を図ることができる。
【0077】
また、回生モードの実行により巻線電流は低下するが、還流モードの実行により当該巻線電流は上昇(回復)するので、巻線電流を所定の範囲(上限値と下限値の範囲)内にある状態で持続でき、電流ピークを低く抑えても出力が減少せず、ないしは出力をさらに高くすることも可能である。
【0078】
さらに、上述の実施形態では、供給モードを巻線のインダクタンスLの上昇後期に行い、回生モードと還流モードを、巻線のインダクタンスLが下降期間中において継続的に行うようにしているので、発電効率が高い。
【0079】
ここで、供給モードにおける回路方程式は、巻線端子間電圧をV、巻線抵抗をR、巻線電流をi、その変化率を(di/dt)、ロータの単位時間あたりの回転数をω、巻線のインダクタンスをL、その変化率を(dL/dθ)とすると、
L(di/dt)=V−Ri−(dL/dθ)iω …[3]
である。
【0080】
還流モードにおいては、巻線端にかかる電圧は0Vなので、[3]式にV=0を代入して、
L(di/dt)=−(R+(dL/dθ)ω)i
であり、このとき、
−(R+(dL/dθ)ω)i>0 …[4]
ならば、電流は増加する。iは構造的に正の値しかとらず、還流モードは巻線のインダクタンスの下降期間に行われるので、(dL/dθ)は負である。
【0081】
従って、[4]式は、
ω>−R/(dL/dθ) …[5]
となり、この[5]式が還流モードにおいて電流が増加するための最低回転数条件となる。
【0082】
参考として、ごく一般的な値である、R=0.2Ω、(dL/dθ)=−(10mH−1mH)/30°を代入すると、ω>55rpmと、非常に低回転から使用することができる。
【0083】
次に、回生モードにおいて、巻線端にかかる電圧は逆バイアスであり、従って、[3]式にV=−E(Eは電源電圧)を代入して、
L(di/dt)=−E−(R+(dL/dθ)ω)i
となり、ここで、
−E−(R+(dL/dθ)ω)i<0 …[6]
ならば、電流は減少する。即ち、[6]式の左辺が正であると、電流は増え続け、制御ができなくなる。
【0084】
ここで、[4]式の条件は満たしていると仮定すると、
i<−E/(R+(dL/dθ)ω) …[7]
であり、この[7]式が回生モードにおいて電流が減少するための最大電流条件となる。参考として、ごく一般的な値である、E=100V、ω=1000rpmを代入すると、i<58Aとなる。
【0085】
図4はこの実施形態の構成を採用した場合のシミュレーション結果を示す図であり、図16はこれと対比するための従来構成を採用した場合のシミュレーション結果を示す図であり、これらの図において、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を、(d)は同じくロータの回転角(横軸)とトルクの関係を示している。
【0086】
これらはいずれも700rpm・1kW出力時のシミュレーション結果であり、同一の出力を実現するのに、電流ピークは従来の540Aに対して300Aと大幅に低減することができた。これに伴い、トルクのピークも減少して一定化され、トルクリプルも小さくなることが理解される。
【0087】
次に、回生モードと還流モードを繰り返す繰り返し期間において、モード切り換えのタイミングを制御するための電流値である上限値im 及び下限値について説明する。なお、本願明細書中においては、該上限値と該下限値の差に相当する値を電流振幅Δiという。
【0088】
電流振幅Δiは、小さいほどSRモータにとって有利であるといえる。回生モードと還流モードを繰り返した後、ロータの回転角がθoff となった時点で該繰り返し制御を終了して、その後は電流が零になるまで回生モードが実行されるが、このθoff の瞬間における電流値のとり得る範囲は、電流振幅Δiが小さいほど当然に小さく、したががって、θoff を経過後の回生モードにおける発電量のバラツキは小さくなるからである。また、電流振幅Δiが小さいと、トルク脈動も低減され、さらには平均電流が高くなるので、その分だけ発電量も増大するからである。
【0089】
しかし、一方において、電流振幅Δiを小さくすると、スイッチ素子SW1,SW2のスイッチング周波数が高くなることが問題となる。通常、スイッチ素子にはその仕様上許容されるスイッチング周波数の最大値が決められており、それ以上で動作させた場合には、適正な動作が保証されず、最悪の場合には破損に至る場合もある。
【0090】
したがって、理想的には、回生モードと還流モードを繰り返す繰り返し期間における電流変化の周期、つまり回生モードとこれに続く還流モードのそれぞれの実行時間の和に相当する時間Δtを、スイッチ素子SW1,SW2の最小スイッチング周期(最大スイッチング周波数の逆数)Δt0 に一致させることが望ましい。
【0091】
電流振幅Δiと繰り返し期間における電流変化の周期Δtとの関係は、以下のように求めることができる。
【0092】
即ち、SRモータの回路方程式は、巻線端子間電圧をV、巻線抵抗をR、巻線電流をi、その変化率を(di/dt)、ロータの単位時間あたりの回転数をω、ロータの回転角θにおける巻線のインダクタンスをL(θ)、その変化率を(dL/dθ)とすると、
di/dt={V−[R+ω(dL/dθ)]i}/L(θ) …[8]
である。
【0093】
[8]式において、電流振幅Δiは十分に小さいものとしてiはim (一定)、ここでは低速回転を議論するのでL(θ)はLm (一定)とすると、電流の時間に対する変化率(di/dt)は、回転数、電圧が決まれば一定となる。即ち、回生モード(添え字として1を付す)においては、V=−E(Eは電源電圧)を代入して、
di1 /dt1 ={−E−[R+ω(dL/dθ)]im }/Lm …[9]
である。
【0094】
還流モード(添え字として2を付す)においては、V=0を代入して、
di2 /dt2 =−[R+ω(dL/dθ)]im /Lm …[10]
である。
【0095】
このときの電流振幅Δiはそれぞれのモードで等しいので、
di1 =−Δi, di2 =Δi …[11]
となる。また、繰り返し期間における電流変化の周期(回生モードとこれに続く還流モードの実行時間の和に相当する時間)Δtは、
Δt=dt1 +dt2 …[12]
である。
【0096】
したがって、[9]式〜[12]式より、
Δt=Δi・ELm /(α(E−α)) …[13]
但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im である。
【0097】
この[13]式のΔtが、スイッチ素子SW1,SW2の最小スイッチング周期(最大スイッチング周波数の逆数)Δt0 に対して、
Δt≧Δt0 …[14]
となる電流振幅Δiを求め、これに基づき繰り返し制御用の電流の上限値及び下限値を設定することにより、スイッチ素子SW1,SW2のスイッチング動作が限界を超えてしまうことがなく、破損などの問題が生じることがない。
【0098】
ここで、[14]式の等号が成り立つようにΔiを設定するのが最も望ましい。スイッチ素子SW1,SW2に破損を生じることなく、最も発電量のバラツキを少なくし、かつ最も発電量を多くすることができるからである。
【0099】
次に、前記[13]式におけるインダクタンス(瞬時インダクタンス)Lm の決め方について説明する。図3に示されているように、回生モードと還流モードの繰り返し期間における電流振幅Δiを上述したように一定にすると、巻線のインダクタンスLが回転に伴って低下する期間において、時間経過に伴ってスイッチング周波数は高くなる。即ち、繰り返し期間における電流変化の最後の1周期(図3(c)A部参照)において、スイッチング周波数が最大となる。これはインダクタンスLが小さくなって電流応答が速くなるためである。したがって、当該最後の1周期のスイッチング周波数がスイッチ素子SW1,SW2の最大スイッチング周波数を超えないように、電流振幅Δiを設定すれば、繰り返し期間の全期間に渡ってスイッチ素子SW1,SW2の実際のスイッチング周波数が最大スイッチング周波数を超えることがない。
【0100】
この場合、[13]式の瞬時インダクタンスLm に最小インダクタンスL0 を代入して、電流振幅Δiを算出することができる。巻線の実際のインダクタンスは最小インダクタンスL0 よりも小さくなることはないので、かかる最小インダクタンスL0 を用いて演算することにより、繰り返し期間の全期間においてスイッチ素子SW1,SW2の実際のスイッチング周波数が最大スイッチング周波数を超えることがないからである。
【0101】
但し、回生モードと還流モードの繰り返し期間はロータが所定の回転角θoff で終了されるが、このθoff は、図5にも示されているように、巻線のインダクタンスLが回転に伴って低下している期間内、つまり、最小インダクタンスL0 を迎えるより前の角度に設定される場合があり、この場合には、最小インダクタンスL0 を用いて求められた電流振幅Δiでは、スイッチ素子SW1,SW2のスイッチング能力を余すことになる。
【0102】
この場合には、[13]式のインダクタンスLm にθoff 時のインダクタンスL2 を代入して、電流振幅Δiを算出するようにすれば、最小インダクタンスL0 を用いた場合よりも、繰り返し期間での電流変化の最後の1周期における実際のスイッチング周波数がスイッチ素子SW1,SW2の最大スイッチング周波数に接近するので、発電量を多くすることができる。なお、このようにθoff 時のインダクタンスL2 を用いて制御する場合には、θoff は各種の条件によってある範囲で変化するので、マイクロコンピュータ等からなるコントローラの記憶装置に、使用するθoff の範囲における該θoff とインダクタンス値の関係を予め記憶保持しておき、逐次[13]式を用いて演算して電流振幅Δiを求める必要がある。
【0103】
また、θoff 時のインダクタンスL2 を用いて電流振幅Δiを求めた場合であっても、当該θoff 時のインダクタンスL2 は繰り返し期間の最後の1周期が終了した後におけるインダクタンスであるので、[13]式を用いて演算される周期Δt(dt1 +dt2 )は最小スイッチング周期Δt0 よりも僅かではあるが大きい。したがって、さらに電流振幅Δiを小さくしたい場合には、[13]式のインダクタンスLm にロータの回転角が(θoff −(Δt/2)・ω)であるときのインダクタンス(θoff 半周期前インダクタンス)L3 を代入して、電流振幅Δiを算出するとよい。このθoff 半周期前インダクタンスL3 は、図5に示されているように、繰り返し期間の最後の1周期のほぼ中間の時点におけるインダクタンスであり、該最後の1周期についての平均インダクタンスと仮定することができる。したがって、このときの周期ΔtはΔt0 に極めて近い値になると予測され、発電量を最大限まで大きくすることができると考えられる。
【0104】
第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態を図面を参照して説明する。上述した第1実施形態では、回生モードと還流モードの繰り返し制御のための電流の上限値im 及び電流振幅Δiは、回生モードと還流モードの繰り返し期間の全体において、一定としたが、この第2実施形態では、時間の経過(ロータの回転角)に伴って電流振幅Δiを積極的に変化させるようにしている。なお、SRモータの全体構成や駆動回路の構成は上述した第1実施形態と同様なので、その説明は省略することにする。
【0105】
上述した第1実施形態では、繰り返し期間における電流変化の最後の1周期に係るスイッチング周期Δtがスイッチ素子SW1,SW2の最小スイッチング周期Δt0 を超えないようにΔiを設定したが、この電流振幅Δiが一定となるようにスイッチング周期を制御した場合、繰り返し期間の前期(図3(c)のB部参照)においては、実際のスイッチング周期は、最小スイッチング周期よりも長いものとなり、スイッチ素子SW1,SW2のスイッチング能力を余すことになる。したがって、この時期における電流振幅Δiを当該最後の1周期における電流振幅Δiよりも小さく設定することにより、さらに発電量を多くすることが可能である。
【0106】
これを図6を参照して説明する。まず、インダクタンスLの上昇後期で、ロータが所定の回転角θonにあるときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンして、供給モードを開始すると、電流が増加し、電流についての所定の上限値im に到達するが、その時点でのロータの回転角をθm を検出する。この角度θm の時点におけるインダクタンス(初回im 到達時インダクタンス)L4 は予めコントローラの記憶装置に記憶保持されているものとし、第1実施形態における[13]式のインダクタンスLm にこの初回im 到達時インダクタンスL4 を代入してこのときの電流振幅Δiを演算する(この値をΔi1 とする)。なお、θoff 時の電流振幅Δiは[13]式にθoff 時インダクタンスL2 が代入されて演算済みである(この値をΔi2 とする)。
【0107】
そして、ロータの回転角θがθm からθoff まで変化するのに対して、電流振幅ΔiをΔi1 からΔi2 まで直線的に変化させる。これにより、図7に示されているように、回生モードと還流モードを繰り返す期間の全域において、実際のスイッチング周期Δtがほぼ一定となり、しかも最小スイッチング周期Δt0 とほぼ一致することになり、発電量を最大とすることが可能である。ここで、図7は、第2実施形態における各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0108】
また、スイッチング周期Δtを一定にするには、PWM電流制御を用いる方法もある。PWM電流制御では、電流指令値im と検出電流値の差分を取り、この差分値と予め設定した周期の三角波とを比較し、オンデューティとオフデューティを生成する。このことを示すのが図17の回路図である。この図の構成によれば、前記差分値と予め設定した周期の三角波との比較値(コンパレータ出力)が正の場合、スイッチ素子SW2がオンされ還流モードとなり、一方負の場合、スイッチ素子SW2がオフされ回生モードとなる。このように、PWM電流制御によれば、前記予め設定した周期で回生モードと還流モードが繰り返される。この繰返し周期は電流振幅を小さくする点で、極力小さく設定することが望まれ、スイッチ素子SW1,SW2の最小スイッチング周期に応じて決められる。図18は以上のようなPWM電流制御を適用した際の電流波形であり、周波数一定の回生モードと還流モードの繰返し波形となる。なお、前記三角波は鋸波によっても代用可能である。
【0109】
第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態を図面を参照して説明する。上述した第1及び第2実施形態は、供給モードを実施した後、回生モードと還流モードを繰り返し実施するものであるが、この第3実施形態は、供給モード(第1供給モード)を実施した後、回生モードと供給モード(第2供給モード)を繰り返し実施するようにしたものである。
【0110】
図8は、本発明の第3実施形態における各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0111】
これらの図に示されているように、この実施形態では、インダクタンスLの上昇後期で、ロータが所定の回転角θonにあるときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンして、供給モード(第1供給モード)を開始する。これにより、巻線に流れる電流が上昇する。次いで、インダクタンスLが下降に転じた時点あるいはその後の下降期間中において、巻線電流(検出電流)が予め決められた所定の上限値im となった場合に、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオフして回生モードを実行する。これにより、巻線電流は下降する。次いで、当該上限値から所定の電流振幅Δiだけ降下して、所定の下限値となったならば、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンすることにより、供給モード(第2供給モード)を実行する。これにより、巻線電流は再び上昇する。
【0112】
以下、同様にして、検出電流が所定の上限値となった場合に回生モードを、所定の下限値になった場合に供給モードを交互に繰り返し行い、ロータが所定の回転角θoff となったときに(インダクタンスLが下降から横ばいに転じる時点よりも前の時点で)、この回生モードと供給モードの繰り返し制御を終了し、その後電流が零になるまで回生モードを実行する。
【0113】
上述した第1実施形態のように、回生モードと還流モードを繰り返す制御方法では、低回転域で使用する場合には、還流モードにおける電流の増加は緩やかなため、その分回生モードの実行時間が短くなって発電量が少なくなるが、供給モードにおける電流の増加は還流モードと比較して大きく、速やかに上限値に達することになるので、その分回生モードの実行時間を長くすることができ、発電量を多くすることができる。また、ロータの回転数がさらに低い極低回転域においては、還流モードを実施しても電流が上昇しないことは上述した通りであるが、この第3実施形態では、還流モードに代えて供給モードを行うようにしたので、極低回転域においても問題なく使用することができるようになる。
【0114】
この第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、回生モードと供給モードを繰り返す繰り返し期間において、モード切り換えのタイミングを制御するための電流値である上限値及び電流振幅Δiを用いており、該電流振幅Δiは、小さいほどSRモータにとって有利であることは上述した第1実施形態と同じである。したがって、そのための制御もほぼ同じであるから、その説明は省略する。
【0115】
但し、還流モードに代えて供給モードを実施するようにしてるため、電流振幅Δiに関する上述の[10]式を変更して、下記の[15]式を用いる必要がある。即ち、供給モードにおいては、V=Eであるから、[8]式にこれを代入して、
di2 /dt2 ={E−[R+ω(dL/dθ)]im }/Lm …[15]
となる。
【0116】
したがって、[9],[11],[12],[15]式より、
Δt=Δi・2ELm /(E2 −α2 ) …[16]
となる。但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im である。
【0117】
この[16]式のΔtが、スイッチ素子SW1,SW2の最小スイッチング周期(最大スイッチング周波数の逆数)Δt0 に対して、上述の[14]式となる電流振幅Δiを求め、これに基づき繰り返し制御用の電流の上限値及び下限値を設定することになる。
【0118】
回生モードと供給モードの繰り返し制御のための電流振幅Δiは、回生モードと供給モードの繰り返し期間の全体において、ほぼ一定とできることは、上述した第1実施形態と同じであり、前記[16]式におけるインダクタンス(瞬時インダクタンス)Lm の決め方についても、上述した第1実施形態と同じである。 また、該電流振幅Δiは、回生モードと供給モードの繰り返し期間において、時間の経過(ロータの回転角)に伴って電流振幅Δiを積極的に変化させるようにできることは、上述した第2実施形態と同じである。
【0119】
第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態を図面を参照して説明する。上述した第1実施形態は、供給モードを実施した後、回生モードと還流モードを繰り返し実施するものであり、上述した第3実施形態は、供給モード(第1供給モード)を実施した後、回生モードと供給モード(第2供給モード)を繰り返し実施するものであるが、この第4実施形態は、これらを混在させるようにしたものである。
【0120】
図9は、本発明の第4施形態における各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線印可電圧(縦軸)の関係を、(c)は同じくロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0121】
これらの図に示されているように、この実施形態では、インダクタンスLの上昇後期で、ロータが所定の回転角θonにあるときに、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンして、供給モード(第1供給モード)を開始する。これにより、巻線に流れる電流が上昇する。次いで、インダクタンスLが下降に転じた時点あるいはその後の下降期間中において、巻線電流(検出電流)が予め決められた所定の上限値im となった場合に、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオフして回生モードを実行する。これにより、巻線電流は下降する。次いで、当該上限値から所定の電流振幅Δiだけ降下して、所定の下限値となったならば、スイッチ素子SW1及びSW2を同時にオンすることにより、供給モード(第2供給モード)を実行する。これにより、巻線電流は再び上昇する。
【0122】
以下、同様にして、検出電流が所定の上限値となった場合に回生モードを、所定の下限値になった場合に供給モードを交互に繰り返し行い(第1繰り返しモード)、ロータの回転角が所定の角度に達した時点で、若しくは所定の数周期を実施した時点で、回生モードと還流モードを繰り返し実施する(第2繰り返しモード)。即ち、回生モードを実行して、巻線電流が当該上限値から所定の電流振幅Δiだけ降下して、所定の下限値となったならば、スイッチ素子SW1をオフしてスイッチ素子SW2をにオンすることにより、還流モードを実行することを繰り返す。
【0123】
その後、ロータが所定の回転角θoff となったときに(インダクタンスLが下降から横ばいに転じる時点よりも前の時点で)、この回生モードと供給モードの繰り返し制御を終了し、その後電流が零になるまで回生モードを実行する。
【0124】
上述した第1実施形態のように、インダクタンスが低下する期間に回生モードと還流モードを繰り返し実行した場合、繰り返し期間の比較的前期(即ち、インダクタンスが比較的に大きい時期)では還流モードの実行による電流の上昇は緩やかなため、回生モードの実行時間が短縮されてエネルギの回生量が小さくなってしまう。この第4実施形態は、このときの還流モードに代えて供給モードを実行することにより電流が速やかに上昇するから、それだけ回生モードの実行時間が増加し、エネルギの回生量を多くすることができる。一方、繰り返し期間の比較的後期(即ち、インダクタンスが比較的に小さい時期)では還流モードの実行による電流の上昇はインダクタンスが比較的に大きい時期よりも速やかなので、供給モードによるまでもなく、この時期には還流モードの実行により電力を消費することなく電流を上昇させることにより、全体として発電量を多くすることができる。
【0125】
この第4実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、回生モードと供給モードを繰り返す繰り返し期間において、モード切り換えのタイミングを制御するための電流値である上限値及び電流振幅Δiを用いており、該電流振幅Δiは、小さいほどSRモータにとって有利であることは上述した第1実施形態と同じである。したがって、そのための制御もほぼ同じであるから、その説明は省略する。このときの電流振幅Δiに関する上述の各式については、回生モードと供給モードを繰り返し行う第1繰り返しモードでは、上述した第3実施形態で説明したものを、回生モードと還流モードを繰り返し行う第2繰り返しモードでは、上述した第1実施形態で説明したものを用いることになる。
【0126】
繰り返し制御のための電流振幅Δiは、回生モードと供給モード又は還流モードの繰り返し期間の全体において、ほぼ一定とできることは、上述した第1実施形態と同じであり、また、該電流振幅Δiは、回生モードと供給モードの繰り返し期間において、時間の経過(ロータの回転角)に伴って電流振幅Δiを積極的に変化させるようにできることは、上述した第2実施形態と同じである。
【0127】
第5実施形態
以下、本発明の第5実施形態を図面を参照して説明する。この第5実施形態は、上述した第1〜第4実施形態における、繰り返しモードの開始と同時に終了される供給モード又は第1供給モード(以下、最初の供給モードともいう)の開始時期、及び該繰り返しモードの終了と同時に開始される回生モード(以下、最後の回生モードともいう)の開始時期について、発電量を増大する観点から最適化を図るものである。
【0128】
図10は、本発明の第5施形態における最初の供給モードの開始時期について説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)はロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。図11は第1電流値を種々に設定した場合における供給モードの開始時期と発電量との関係を示す図である。図12は、本発明の第5施形態における最後の回生モードの開始時期について説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)はロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【0129】
まず、図10を参照する。ロータがある角度θonに達した時点で最初の供給モードが開始され、巻線を流れる電流が上昇し、所定の上限値im に達した時点で、該最初の供給モードが終了され、これと同時に繰り返しモードが開始される。繰り返しモードでは、回生モードと還流モード又は供給モード(第2供給モード)が繰り返され、ロータがある角度θoff に達した時点で該繰り返しモードが終了され、これと同時に最後の回生モードが開始され、巻線を流れる電流は減少し、ついにはゼロに達し、本制御方法の1周期が終了する。ここで、発電量は回生モードにおける全回生電力と供給モードにおける供給電力の差分として得られる。
【0130】
従って、電流の所定上限値im が決められたとき、最初の供給モードが開始されるタイミングθonは、発電量に影響を及ぼす重要なファクターである。この最初の供給モードの開始角度θonを0<θon<θ1 の間に設定すればインダクタンスが減少する期間であるので電流の立ち上りは速く供給電力を少なくできる。ここで、巻線のインダクタンスがロータの回転に伴って低下する期間が開始された時点、即ち巻線のインダクタンスが最大インダクタンスL1 に達した時点におけるロータの回転角度を0(ゼロ)とし、巻線のインダクタンスがロータの回転に伴って低下する期間が終了した時点、即ち、最小インダクタンスL0 に達した時点におけるロータの回転角度をθ1 としている。
【0131】
しかし、θonをこのような範囲に設定すると、回生・還流(又は供給)を繰り返す期間が最初の供給モードを行う分だけ短くなるので回生電力も少なくなり、結果として発電量が小さくなる。そこでθon<0の方向に進角すると、回生・還流を繰り返す期間が多くなり回生電力を増すことができる。但し、進角し過ぎるとインダクタンスが増加する期間であるので電流の立ち上りが遅く供給電力が増えてしまうことから、やはり結果として発電量が小さくなる。これらのことから、θonに応じて供給電力と回生電力のバランスが変化し、θonについて発電量を最大とする最適値が存在することが理解できる。
【0132】
その最適値範囲は、図10(b)に示すように、θon1 ≦θon≦θon2 である。θon2 は巻線のインダクタンスが回転にともなって低下し始める角度であり、図10では0と一致している。また、θon1 はθ=θon2 (=0)において電流が所定上限値im に到達するためのオンタイミングを与える角度である。
【0133】
図11はオンタイミングθonを変化させた際の発電量をシミュレーションにより求めた図であり、電流上限値im をそれぞれ6,7,8Aとした場合を示している。同図において、横軸はロータの回転角θ(deg)であり、縦軸は1相あたりの発電量(W)である。ロータの回転角θ=0は、ステータの突極とロータの突極とが完全に向かい合っている状態、即ち、ステータの突極の先端のロータ回転方向の両端の中点と、ロータの突極の先端のロータ回転方向の両端の中点とが相対した時点である。このθ=0を基準として、同図中、両方向矢印で示す他方(左側)の位置における角度がθ=0において巻線電流が上限値im に到達するためのオンタイミングである。同図から明らかなように、各電流上限値im について、発電量を最大とするためのθonは、図11中、両方向矢印で示した範囲内に入っていることが確認でき、この範囲(θon1 からθon2 範囲)内で最初の供給モードを開始(スイッチ素子SW1,SW2を同時にオン)することにより、高効率的な発電を行うことができることが理解される。
【0134】
次に、このような最初の供給モードの開始時期(θon)と同様に、最後の回生モードが開始されるタイミングθoff も、発電量に影響を及ぼす重要なファクターである。θoff をθ1 よりも遅角すれば、回生電力は多くできるが、インダクタンスが一定の期間であるので電流の立ち下がりが速く最後の回生モードにおける回生電力が少なくなり、結果として発電量が小さくなる。
【0135】
一方、θoff をθ1 よりも進角すれば、インダクタンスが減少する期間であるので電流の立ち下がりが遅く最後の回生モードにおける回生電力は増えるが、進角し過ぎると回生・還流(又は供給)を繰り返す期間が短くなってしまうため、やはり結果として発電量が小さくなる。これらのことから、θoff についても発電量を最大とする最適値が存在することが理解できる。
【0136】
その最適値範囲は、図12に示すように、θoff1≦θoff ≦θoff2である。θoff2はロータの回転にともなって巻線のインダクタンスが最小値になり始める角度であり、図ではθ1 に一致している。θoff1は、ロータの回転角θ=θoff2(=θ1 )において電流が0に到達するためのオフタイミングを与える角度である。このθoff1からθoff2の範囲内で最後の回生モードを開始(スイッチ素子SW1,SW2を同時にオフ)することにより、高効率的な発電を行うことができることが理解される。
【0137】
以上説明してきたように、最初の供給モードの開始時期(角度)θon及び最後の回生モードの開始時期(角度)θoff を、それぞれの最適値範囲に制御することによって、発電量を最大にすることが可能となる。
【0138】
なお、実機におけるインダクタンス波形はこれまで図示したような角のある三角波形とはならない(角が滑らかな曲線になる)ので、インダクタンスが減少し始める角度θon2 及びインダクタンスが最小値になり始める角度θoff2を正確に規定できないが、インダクタンス波形は理想的にはモータの形状から求めることが可能であり、それらの角度は次式で得ることができる。
【0139】
θon2 ={(ロータ突極円弧角θR )−(ステータ突極円弧角θS )}/2
θoff2={(ロータ突極円弧角θR )+(ステータ突極円弧角θS )}/2
【0140】
また、この式によれば、インダクタンス波形が、例えば、図13に示すような台形波となるモータにおいても、それらの角度を規定することが可能である。
【0141】
このように、ロータのインダクタンスがロータの回転に伴い低下する期間が開始される角度θon2 及びロータのインダクタンスがロータの回転に伴い低下する期間が終了される角度θoff2は計算で求めることができた。
【0142】
次に、ロータの角度θ=0で巻線電流が上限値im に達するための供給モードの開始角度θon1 及びロータの角度θ=θ1 で巻線電流がゼロに達するための最後の回生モードの開始角度θoff1を、電源電圧、モータ定数、回転速度及び電流の所定上限値im から計算で求める方法を説明する。
【0143】
まず、θon1 を求める。巻線のインダクタンスが回転にともなって増加する期間において、最初の供給モードを開始する場合、インダクタンスを図10(a)に示した三角波で近似とすると、ある角度θにおける電流値は回路方程式から次式で与えられる。
【0144】
【数5】
但し、KL =(L1 −L0 )/θ1、A=KL・ω/Rである。
【0145】
ここで、L1 は巻線の最大インダクタンス、L0 は巻線の最少インダクタンス、Rは巻線の抵抗、Eは電源電圧、im は電流の所定上限値、ωは回転速度である。また、インダクタンスがL1 となるロータ角度、もしくはステータ突極とロータ突極とが完全に向かい合うロータ角度をθ=0として、θ1 はロータの回転に伴って巻線のインダクタンスが最小値になり始める角度、もしくは、{(ロータ突極円弧角θR )+(ステータ突極円弧角θS )}/2で計算される角度である。
【0146】
[17]式にθon1 の条件、即ちロータ角度θ=0にて巻線電流i=im を代入し、θonについて解けばθon1 が求まる。
【0147】
【数6】
【0148】
従って、電源電圧E、モータ定数、回転速度ωおよび電流の所定上限値im が与えられたとき、θonを次式の範囲に制御することによって、任意のθoff に対して発電量を最大にすることが可能である。
【0149】
【数7】
【0150】
次に、θoff1を求める。巻線のインダクタンスが回転にともなって減少する期間において、最後の回生モードを開始する場合、インダクタンスを図10(a)に示した三角波で近似し、電流振幅Δiは所定上限値im に対して十分小さいと仮定すると、ある角度θにおける電流値は回路方程式から次式で与えられる。
【0151】
【数8】
但し、KL = (L1 −L0 )/θ1、A=KL・ω/Rである。
【0152】
ここで、L1 は巻線の最大インダクタンス、L0 は巻線の最少インダクタンス、Rは巻線の抵抗、Eは電源電圧、im は電流の所定上限値、ωは回転速度である。また、インダクタンスがL1 となるロータ角度、もしくはステータ突極とロータ突極とが完全に向かい合うロータ角度をθ=0として、θ1 はロータの回転に伴って巻線のインダクタンスが最小値になり始める角度、もしくは、{(ロータ突極円弧角θR )+(ステータ突極円弧角θS )}/2で計算される角度である。
【0153】
[20]式にθoff1の条件、即ちロータ角度θ=θ1 にて巻線電流i=0を代入し、θoff について解けばθoff1が求まる。
【0154】
【数9】
【0155】
従って、電源電圧E、モータ定数、回転速度ω及び電流の所定上限値im が与えられたとき、θoff を次式の範囲に制御することによって、任意のθonに対して発電量を最大にすることが可能である。
【0156】
【数10】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0157】
例えば、ステータ及びロータの突極の数や相数は上述の実施形態に限定されることはなく、他のものであっても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態のSRモータの構成を示す平面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態のSRモータの駆動回路の構成を示す回路図であり、(a)は供給モードを、(b)は回生モードを、(c)は還流モードを示している。
【図3】 本発明の第1実施形態のSRモータの各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【図4】 本発明の第1実施形態のSRモータのシミュレーション結果を示す図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を、(d)はロータ回転角とトルクの関係を示している。
【図5】 本発明の第1実施形態のSRモータの電流振幅の算出に用いるインダクタンスを説明するための図である。
【図6】 本発明の第2実施形態のSRモータの電流振幅の算出に用いるインダクタンスを説明するための図である。
【図7】 本発明の第2実施形態のSRモータの各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【図8】 本発明の第3実施形態のSRモータの各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【図9】 本発明の第4実施形態のSRモータの各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【図10】 本発明の第5施形態における最初の供給モードの開始時期について説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)はロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【図11】 本発明の第5実施形態の第1電流値を種々に設定した場合における供給モードの開始時期と発電量との関係を示す図である。
【図12】 本発明の第5施形態における最後の回生モードの開始時期について説明するための図であり、(a)はロータの回転角(横軸)とインダクタンスL(縦軸)の関係を、(b)はロータの回転角(横軸)と巻線電流(縦軸)の関係を示している。
【図13】 本発明の第5実施形態におけるインダクタンス波形が異なるSRモータの当該波形を示す図である。
【図14】 従来のSRモータの駆動回路の構成を示す図であり、(a)は供給モードを、(b)は回生モードを示している。
【図15】 従来のSRモータの各モードの実行タイミングを説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【図16】 従来のSRモータのシミュレーション結果を示す図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を、(d)はロータ回転角とトルクの関係を示している。
【図17】 本発明の第2実施形態でPWM電流制御を行う場合の回路図である。
【図18】 本発明の第2実施形態でPWM電流制御を行う場合を説明するための図であり、(a)はロータ回転角とインダクタンスの関係を、(b)はロータ回転角と巻線電圧の関係を、(c)はロータ回転角と巻線電流の関係を示している。
【符号の説明】
1…SRモータ
2…ロータ
2a…突極
3…ステータ
3a…突極
4…ロータコア
5…出力軸
6…ステータコア
E…電源
C…巻線組(巻線)
SW1,SW2…スイッチ素子
D1,D2…ダイオード
T1…巻線始端
T2…巻線終端
Claims (30)
- 偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータの制御方法において、
前記巻線に電力を供給する供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記巻線に生じる起電力を回収する回生モードを行い、該検出電流値が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記巻線の両端を同電位とする還流モードを行い、両者を交互に繰り返す繰り返しモードを行うとともに、
前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを前記ロータの回転角変化に応じて変化させたことを特徴とするSRモータの制御方法。 - 前記繰り返しモードを行う繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記巻線に接続されたモード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定したことを特徴とする請求項1記載のSRモータの制御方法。
- 前記巻線の抵抗をR、前記ロータの単位時間あたりの回転数をω、電源電圧をE、前記第1電流値をim 、前記巻線の瞬時インダクタンスをLm 、前記巻線のインダクタンスの変化率を(dL/dθ)として、前記電流振幅Δiは、
Δt=Δi・ELm /(α(E−α))
但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im
により決定されることを特徴とする請求項2記載のSRモータの制御方法。 - 偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータの制御方法において、
前記巻線に電力を供給する第1供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線に生じる起電力を回収する回生モードと前記巻線に電力を供給する第2供給モードとを交互に繰り返す第1繰り返しモード、及び前記回生モードと前記巻線の両端を同電位とする還流モードとを交互に繰り返す第2繰り返しモードを混在的に行うことを特徴とするSRモータの制御方法。 - 前記第1繰り返しモード及び前記第2繰り返しモードをこの順に行うことを特徴とする請求項4記載のSRモータの制御方法。
- 前記繰り返しモードにおける前記回生モードと前記還流モードとを切換えるスイッチング周期を一定とし、スイッチング一周期の中で前記回生モードとする時間と前記還流モード又は第2供給モードとする時間との比率を変化させて巻線を流れる電流値を制御することを特徴とする請求項4又は5記載のSRモータの制御方法。
- 前記繰り返しモードを行う繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記巻線に接続されたモード切換用のスイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定したことを特徴とする請求項4又は5記載のSRモータの制御方法。
- 前記巻線の抵抗をR、前記ロータの単位時間あたりの回転数をω、電源電圧をE、前記第1電流値をim 、前記巻線の瞬時インダクタンスをLm 、前記巻線のインダクタンスの変化率を(dL/dθ)として、前記電流振幅Δiは、
Δt=Δi・2ELm /(E2 −α2 )
但し、α=−(R+ω(dL/dθ))im
により決定されることを特徴とする請求項7記載のSRモータの制御方法。 - 前記繰り返し期間の全体に渡って前記電流振幅Δiを一定としたことを特徴とする請求項7又は8記載のSRモータの制御方法。
- 前記電流振幅Δiを求めるための数式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記巻線の最小インダクタンスを用いることを特徴とする請求項9記載のSRモータの制御方法。
- 前記電流振幅Δiを求めるための数式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記繰り返し期間の終了時点における前記巻線のインダクタンスを用いることを特徴とする請求項9記載のSRモータの制御方法。
- 前記電流振幅Δiを求めるための数式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記繰り返し期間の終了時点における前記ロータの回転角をθoff として、前記ロータの回転角がθoff −(Δt/2)・ωにおける前記巻線のインダクタンスを用いることを特徴とする請求項9記載のSRモータの制御方法。
- 前記電流振幅Δiを、前記繰り返し期間内における電流変化の周期が一定となるように、前記ロータの回転角に応じて変化させることを特徴とする請求項2,3,7又は8記載のSRモータの制御方法。
- 前記電流振幅Δiを求めるための数式における前記瞬時インダクタンスLm として、前記巻線の電流が最初に前記第1電流値に到達した時点での前記ロータの回転角θm におけるインダクタンスを用いて演算した電流振幅をΔi1 、前記繰り返し期間の終了時点での前記ロータの回転角θoff におけるインダクタンスを用いて演算した電流振幅をΔi0 としたときに、前記ロータの回転角がθm からθoff まで変化するのに応じて前記電流振幅ΔiをΔi1 からΔi0 まで直線的に変化させることを特徴とする請求項13記載のSRモータの制御方法。
- 前記供給モード又は前記第1供給モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に前記巻線を流れる電流が前記第1電流値に達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が始まる角度よりも前の角度で開始することを特徴とする請求項1,4又は5記載のSRモータの制御方法。
- 前記インダクタンスが低下する期間が始まる角度として、前記ステータの突極と前記ロータの突極とが完全に相対した時点での前記ロータの角度を0、前記ロータの突極の円弧角をθR 、前記ステータの突極の円弧角をθS として、(θR −θS )/2で表される角度を用いることを特徴とする請求項15記載のSRモータの制御方法。
- 前記繰り返しモードの終了と同時に行う最後の回生モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間の経過後に前記巻線を流れる電流がゼロに達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が終わる角度よりも前の角度で開始することを特徴とする請求項1,4又は5記載のSRモータの制御方法。
- 前記インダクタンスが低下する期間が終わる角度として、前記ステータの突極と前記ロータの突極とが完全に相対した時点での前記ロータの角度を0、前記ロータの突極の先端の回転方向両端のなす角度をθR 、前記ステータの突極の先端の回転方向両端のなす角度をθS として、(θR +θS )/2で表される角度を用いることを特徴とする請求項18に記載のSRモータの制御方法。
- 前記電源電圧Eとして、電圧計測手段を用いて計測した値を用いることを特徴とする請求項17又は20記載のSRモータの制御方法。
- 前記巻線抵抗Rとして、基準温度での前記巻線の抵抗値を温度計測手段を用いて計測した温度に基づいて補正した値を用いることを特徴とする請求項17又は20記載のSRモータの制御方法。
- 偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータにおいて、
前記巻線の始端と電源の一方の極とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、
前記巻線の終端と電源の他方の極とを選択的に接続する第2スイッチ手段と、
前記巻線の始端と前記電源の他方の極との間に介装された該始端へ向かう方向にのみ電流を流す第1ダイオード手段と、
前記巻線の終端と前記電源の一方の極との間に介装された該電源の一方の極へ向かう方向にのみ電流を流す第2ダイオード手段と、
前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する供給モードを行った後、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に、前記巻線を流れる電流を検出し、該検出電流が第1電流値に達したならば前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードを行い、該検出電流値が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記第1及び第2スイッチ手段の一方を接続し他方を切断する還流モードを行い、両者を交互に繰り返し行うよう制御するとともに、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを前記ロータの回転角変化に応じて変化させるよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とするSRモータ。 - 偶数個の突極を有するステータと、該ステータの突極の個数に対して倍数関係にない偶数個の突極を有するロータと、該ステータに巻回された巻線とを備えたSRモータにおいて、
前記巻線の始端と電源の一方の極とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、
前記巻線の終端と電源の他方の極とを選択的に接続する第2スイッチ手段と、
前記巻線の始端と前記電源の他方の極との間に介装された該始端へ向かう方向にのみ電流を流す第1ダイオード手段と、
前記巻線の終端と前記電源の一方の極との間に介装された該電源の一方の極へ向かう方向にのみ電流を流す第2ダイオード手段と、
前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第1供給モードを行った後、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードと前記第1及び第2スイッチ手段を同時に接続する第2供給モードとを交互に繰り返す第1繰り返しモードを行い、次いで、前記第1及び第2スイッチ手段を同時に切断する回生モードと前記第1及び第2スイッチ手段の一方を接続し他方を切断する還流モードとを交互に繰り返す第2繰り返しモードを行うよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とするSRモータ。 - 前記巻線を流れる電流を検出する電流検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電流検出手段により検出された検出電流が第1電流値に達したならば前記回生モードを行い、該検出電流が該第1電流値よりも低い第2電流値に達したならば前記第2供給モード又は前記還流モードを行うよう制御することを特徴とする請求項24記載のSRモータ。 - 前記制御手段は、前記回生モード及び前記第2供給モード又は前記還流モードを繰り返す繰り返し期間における電流変化の周期をΔt、前記第1及び第2スイッチ手段の最小スイッチング周期をΔt0 として、前記第1電流値と前記第2電流値の差である電流振幅Δiを、Δt≧Δt0 となるように設定したことを特徴とする請求項23又は25記載のSRモータ。
- 前記電流振幅Δiを、前記繰り返し期間の全体に渡って一定とすることを特徴とする請求項25記載のSRモータ。
- 前記電流振幅Δiを、前記繰り返し期間内における電流変化の周期が一定となるように、前記ロータの回転角に応じて変化させることを特徴とする請求項23又は25記載のSRモータ。
- 前記供給モード又は前記第1供給モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間中に前記巻線を流れる電流が前記第1電流値に達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が始まる角度よりも前の角度で開始することを特徴とする請求項23又は25記載のSRモータ。
- 前記繰り返しモードの終了と同時に行う最後の回生モードを、前記巻線のインダクタンスが前記ロータの回転に伴い低下する期間の経過後に前記巻線を流れる電流がゼロに達するような角度であって、該インダクタンスが低下する期間が終わる角度よりも前の角度で開始することを特徴とする請求項23又は25記載のSRモータ。
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