JP3650453B2 - 温度感知形の開閉弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被計測体の温度変化を感知して弁体の開閉動作を行うことにより、流体流通路を流れる流体の流れを制御する温度感知形の開閉弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
被計測体の温度変化を感知して流体通路内に設けられた弁体の開閉を行い、流体流通路内における流体の流れを制御する温度感知形の開閉弁が知られている。このような開閉弁の一例としては、エンジンのインレットマニホールドを暖めるための予熱装置に設けられた開閉弁がある。この開閉弁は、インレットマニホールドに沿って設けられた冷却水管(流体流通路)を流れるエンジン冷却水(流体)のON−OFF制御を行うもので、寒冷時には前記冷却水管にエンジン冷却水を流して、エンジン冷却水の排熱によりインレットマニホールドを暖め、燃料の霧化を促進させてアイシングの防止を図るとともに、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の有害物質の発生量を低減させるものである。そして、暖機運転によりエンジンの温度が一定以上になったときに、前記冷却水管内の弁体を閉じてエンジン冷却水の流れを止め、ベーパロックやパーコレーションの発生を防止する。
【0003】
図4は、エンジンの予熱装置に設けられた温度感知形の開閉弁の従来例にかかり、その全体構成を説明する縦断面図である。この開閉弁は、予熱装置を構成する冷却水管の途中部位に設けられている。
被計測体であるシリンダ壁面Sの温度変化を感知し、ピストンロッド6を一側(図において下側)および他側(同上側)に進退移動させるサーモエレメントEは、シリンダ壁面Sに形成された取付部Saに螺着されている。サーモエレメントEは、シリンダ壁面Sの温度変化によって膨張または収縮するワックス(熱膨張体)を内蔵する温度感知部4と、このワックスの膨張により他側に移動するピストンロッド6とからなっている。符号5′はピストンロッド6の進退移動を案内するピストンガイドである。
【0004】
サーモエレメントEの上部には有底筒状のカバー2′が嵌着されている。このカバー2′の底部には流体流出穴2aが、側部には流体流入穴2bがそれぞれ形成されていて、流体流入穴2bからカバー2′内に流入したエンジン冷却水が、流体流出穴2aからカバー2′外へ排出されるようになっている(エンジン冷却水の流れる方向を図中矢印で示す)。カバー2′とサーモエレメントEとの間にはパッキンやOリング等のシール部材12が設けられていて、カバー2′内のエンジン冷却水がカバー2′外へ漏出しないようになっている。
【0005】
ピストンガイド5′から突出するピストンロッド6の先端には、ピストンロッド6の軸線Cと同一の軸線上に軸状の弁体取付部材7′が取り付けられている。この弁体取付部材7′の一側には、プッシュナット等によりリテーナ11が取り付けられ、他側には円盤状の弁体10′が設けられている。弁体10′の中央には一側から他側に貫通する穴10a′が形成されていて、弁体取付部材7′の他端はこの穴10a′を挿通しているとともに、他端に形成された係合部7f′により弁体10′と係脱自在である。そして、リテーナ11と弁体10′との間に設けられた小径の圧縮コイルばね8(以下、ばね8と記載)により、弁体10′は常時他側に向けて付勢されているとともに、カバー2′の底部とリテーナ11との間に設けられた大径の圧縮コイルばね9(以下、ばね9と記載)により、リテーナ11を介してピストンロッド6が復帰方向(一側方向)に付勢されている。従って、シリンダ壁面Sの温度低下によりワックスが収縮すると、ピストンロッド6および弁体10はばね9の付勢力により強制的に一側へ移動させられる。
【0006】
上記態様により、寒冷期におけるエンジンの始動時には、ワックスが収縮状態にあってばね9の付勢力によりピストンロッド6,弁体取付部材7′および弁体10′が一側へ移動した状態にあり、弁体10′が流体流出穴2aを開いてエンジン冷却水の流通を可能にしている。インレットマニホールドは、冷却管内を流れるエンジン冷却水の排熱によって暖められる。
暖機運転によりシリンダ壁面Sの温度が上昇すると、この温度変化は温度感知部4で感知される。すなわち、温度感知部4内のワックスの膨張によりピストンロッド6,弁体取付部材7′および弁体10′が他側へ移動する。シリンダ壁面Sの温度が所定温度以上になると、弁体10′が流体流出穴2aを完全に閉じるので、エンジン冷却水の流通が規制され、インレットマニホールドの過度の温度上昇が防止される。なお、弁体10′が流体流出穴2aを完全に閉じた後もワックスは膨張を続けるが、弁体取付部材7′の余剰の移動は、弁体10′と弁体取付部材7′の係合部7f′との係合が解除され、弁体取付部材7′の先端が流体流出穴2aに挿入されることにより吸収される。
【0007】
ところで、上記したような従来の温度感知形の開閉弁においては、以下のような問題がある。
すなわち、弁体10′および弁体取付部材7′はピストンロッド6に片持ち状態で取り付けられているため、開閉弁1′にエンジンの運転やエンジン冷却水の脈動流による振動が伝えられると、弁体10′および弁体取付部材7′の先端がカバー2′内で振動し、長期間使用するうちに弁体取付部材7′が疲労折損するおそれがある。
また、従来の開閉弁1′において弁体10′を開閉させるための機構は、サーモエレメントEの他に弁体取付部材7′,リテーナ11、ばね8,9等の多数の部品から構成されているため、製造コストが高価になるという問題がある。
さらに、制御しようとする流体(上記の場合ではエンジン冷却水)と異なる被計測体(上記の場合ではシリンダ壁面S)の温度変化を感知して弁体10′の開閉を行う開閉弁1′においては、被計測体以外から伝えられる熱をできるだけ遮断することが望ましいが、上記した従来の開閉弁1′においてはカバー2′内に流入したエンジン冷却水の一部が、ピストンガイド5′とリテーナ11との間の空間13に浸入し、この空間13内のエンジン冷却水の熱の一部がピストンガイド5′やピストンロッド6を経て温度感知部4に伝えられ、弁体10′を誤作動させるおそれがあるという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、振動に強く長寿命であるとともに低廉なコストで製造することのできる温度感知形の開閉弁を得ること、その第2の目的は、制御しようとする流体以外の被計測体の温度変化を感知して弁体の開閉を行う開閉弁にあって、前記流体からの熱影響をできるだけ小さくし、誤差動のない信頼性の高い温度感知形の開閉弁を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために本発明の開閉弁は、被計測体の温度変化により膨張、収縮する熱膨張体を一側に内蔵し、この熱膨張体の膨張,収縮により他側に設けたピストンロッドを進退移動させるサーモエレメントと、前記被計測体の温度変化による前記ピストンロッドの進退移動により流体流通路の開閉を行う弁体と、この弁体を前記ピストンロッドに取り付ける弁体取付部材とからなる温度感知形の開閉弁において、前記流体流通路の途中部位に設けられ、流体流入穴および流体流出穴が形成されるとともに前記弁体を収納し、前記弁体が前記流体流入穴または前記流体流出穴のいずれか一方を閉じることにより流体の流通を規制する開閉部と、前記弁体取付部材に設けられ、前記ピストンロッドの進退移動とともに前記流体流出穴または前記流体流入穴に嵌脱自在であるとともに、前記流体流出穴または流体流入穴に嵌入されたときに、弾性変形により前記流体流出穴または流体流入穴の穴内面と密着して前記流体の流通を規制する弁体と、前記流体流出穴または前記流体流入穴が前記開閉部内に開口する穴周縁に沿って突出形成され、前記弁体取付部材の先端が振動しないように規制するガイドと、このガイドに形成された流体の流通部と、前記開閉部内に設けられ、前記弁体を復帰方向に付勢する付勢手段とからなることを特徴とする。
また、前記ガイドは、前記流体流出穴または前記流体流入穴から抜脱した前記弁体と当接して前記弁体取付部材の先端の振動を規制するものであって、かつ、前記流体流出穴または前記流体流入穴の穴径よりも若干大きい円周上に沿って設けたものとしてもよい。
【0010】
また第2の目的を達成するために本発明の温度感知形の開閉弁は、前記弁体取付部材は、ピストンロッドに取り付けられる基部と、この基部から突出する軸部とからなり、前記基部の前記流体流入穴から前記ケース内に流入した流体が前記基部の他側面に沿って流れるように、前記弁体が前記流体流出穴を全開した状態において前記他側面と同一高さ位置で開口していることを特徴とする。また、前記流体流入穴は、前記開閉部内に流入した流体に渦が発生するように前記開閉部の中心軸線よりも左右いずれかの方向に偏心した位置に開口するように設けられ、かつ、前記流体の渦が前記流体流出穴に向けて移動するように、前記開閉部内には渦案内手段を設けたものとしてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の実施形態において開閉弁は、インレットマニホールドの予熱装置に設けられ、シリンダ壁面の温度変化を感知して前記インレットマニホールドへのエンジン冷却水のON−OFF制御を行うものとして説明するが、本発明の開閉弁はエンジンの予熱装置に限らず他の分野にも適用できるものである。
図1(イ)は本発明の第1の実施形態にかかり、開閉弁の全体構成を説明する縦断面図、図1(ロ)は図1(イ)のX−X方向矢視断面図、図2は図1(イ)の開閉弁の主要部の拡大図で、弁体が流体流出穴に嵌入された状態を示すものである。各図においてエンジン冷却水(流体)の流れる方向を矢印で示している。また、以下の説明において、「一側」というときには図面の下側を、「他側」というときには図面の上側を指すものとし、従来例と同一部位,同一部材には同一の符号を付して、詳しい説明は省略した。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。サーモエレメントEにシール部材12を介して取り付けられたカバー2(開閉部)の底部には流体流出穴2aが、側部には流体流入穴2bが形成されている。なお、この第1の実施形態では、側部または底部のいずれからエンジン冷却水が流入するものであってもよく、従って、側部に流体流出穴2aを、底部に流体流入穴2bを設けるものとしてもよい。
【0013】
[弁体の構成の説明]
ピストンロッド6の先端には、弁体取付部材7を介してゴムや樹脂等の弾性体からなる弁体10が取り付けられている。この弁体10は、弁体取付部材7の周囲に張り出すように形成されているとともに、カバー2の底部に設けられた流体流出穴2aに嵌脱自在である。そして、弁体10が流体流出穴2aに嵌入されたときに、弁体10が弾性変形して流体流出穴2aの穴内周面に押し付けられ、エンジン冷却水の流通を規制する。弁体10の形状は、流体流出穴2aにスムースに嵌脱できるよなものであることが望ましい。この実施例において弁体10は、図示するように一側,他側の両方にテーパ状が形成されるとともに、他側の中央に穴10aが穿設されていて弁体10が変形しやすいようになっている。
なお、弁体10の弁体取付部材7への取り付けは、図示するように弁体取付部材7に取付部7dを形成し、接着や焼付け等により固着するものとしてもよいが、特に弁体取付部材7を樹脂により形成するような場合には、弁体10と弁体取付部材7とを射出成形により一体に形成することもできる。
【0014】
[ガイドおよび流体流通部の説明]
流体流出穴2aがカバー2内に開口する開口部の周縁には、流体流出穴2aと同心状の円周の外側に沿って、所定間隔で複数個(この実施形態では均等間隔で3個)のガイド3がピストンロッド6の軸線Cと平行に突設形成されている。このガイド3は、射出成形等により樹脂製のカバー2と一体に形成するものとしてもよいし、ガイド3をカバー2とは別体に形成し、カバー2の底部に接着または溶着するものとしてもよい。ガイド3のカバー2の底部からの突出量は、ピストンロッド6が最も他側へ移動したときにおいてガイド3と弁体取付部材7とが干渉しないもので、かつ、ピストンロッド6が最も一側へ移動した場合においても弁体10とガイド3との当接状態を維持して弁体取付部材7の振動を防止することができるものでなければならない。
また、この実施形態においてガイド3,3間の各空間部が、弁体10が流体流出穴2aから抜脱されたときにエンジン冷却水が流通する流体流通部3a,3aとして形成されている。
【0015】
図1(ロ)において符号Dは、ガイド3が配置された前記円周の径を示している。そして、この実施形態において前記円周の径Dは流体流出穴2aの穴内径dよりの若干大きく、かつ、流体流出穴2aから抜脱した状態にある弁体10の外径と略同一になるように形成されている。そして、弁体10の外周縁にガイド3が当接することにより、弁体取付部材7の先端部の振動を防止するようになっている。
このように、前記円周の径Dを流体流出穴2aの穴内径dより大きく形成したのは、仮に円周の径Dを流体流出穴2aの穴内径dと略同一とすると、弁体10には常時変形方向に付加が作用することになり、長期間使用するうちに弾性体の経時変化によって弁体10が流体流出穴2aの穴内周面と密着できなくなるおそれがあるからである。
【0016】
なお、ガイド3は、弁体取付部材7の先端部または弁体10と当接して、弁体取付部材7の先端部の振動を防止することができるものであればよいから、上記の態様のものには限られない。例えば、側面に流体流通部が形成された円筒状のガイド3を、流体流通穴2aと同心状に配置してカバー2の底部に取り付け、円筒状の内周面で弁体取付部材7または弁体10の横方向の移動を規制して振動を防止するものとしてもよいし、カバー2の内周面から弁体取付部材7に向けてガイドを突出形成し、このガイドで弁体取付部材7の先端部を支持するように構成してもよい。
【0017】
[弁体取付部材の構成]
弁体取付部材7は、先端に弁体10を取り付け、ピストンロッド6の進退移動とともに流体流出穴2aに嵌脱できる軸部7bを有していればよい。
この実施形態において弁体取付部材7は、ピストンロッド6の先端に取り付けられた基部7aと、この基部7aの他側面7cからピストンロッド6の軸線C上に延出する軸部7bとからなっていて、全体として側面視凸状に形成されている。なお、弁体取付部材7を側面視して凸状に形成することにより、軸部7bの長さを短くして曲げや座屈に対する強度を強くすることができ、弁体取付部材7を折損しにくいものとすることができる。また、弁体支持部材7を熱伝導性の低い樹脂材で形成することが可能になり、エンジン冷却水による温度感知部4への熱影響を小さくすることができるという特徴がある。
【0018】
基部7aは、後述する付勢手段としての圧縮コイルばね9(以下、ばね9と記載)が外嵌できるように、ばね9の内径よりも若干小さい外径の円柱形状に形成されている。基部7aの外周面には鍔状のばね受け部7gが突出形成されていて、このばね受け部7gに、ピストンロッド6を復帰方向(ワックスの膨張によりピストンロッド6が移動する方向と逆方向)に付勢する付勢手段としてのばね9の一端が係合している。ワックスの膨張により他側に向けて移動したピストンロッド6は、このばね9により弁体取付部材7を介して一側(復帰方向)に向けて付勢される。
符号7eは基部7aの一側面7hに形成された穴で、弁体取付部材7はピストンロッド6の先端をこの穴7eに嵌入することにより、ピストンロッド6の先端に取り付けられている。
【0019】
[流体流入穴の説明]
流体流入穴2bは、カバー2を介して流体流出穴2aに連通できるのであれば、カバー2のどの位置に設けてもよい。
この実施形態において流体流入穴2bは、流体流入穴2bからカバー2内に流入したエンジン冷却水が他側面7cに沿って流れるように、ピストンロッド6が最も一側へ移動したときにおいて、他側面7cを含む平面から他側に開口するようになっている。すなわち、図示するように、他側面7cと流体流入穴2bの一側周縁とは同一レベルに位置している。
また、ピストンガイド5はその他側面5aが平坦状に形成されていて、基部7aの一側面7hと密着するようになっている。そのため、基部7aとピストンガイド5との間に図4に示すような余計な空間13が形成されず、ピストンガイド5側に回り込んだエンジン冷却水との接触面積も小さくなって温度感知部4への熱影響を小さくすることができる。さらに、前述したように、ピストンロッド6が一側へ移動した状態において流体流入穴2bからカバー2内に流入したエンジン冷却水の殆どは、基部7aの他側面7cに沿って流体流出穴2a側に回り込むので、ピストンガイド5側に回り込むエンジン冷却水の量を少なくすることができ、この意味においても温度感知部4に与えるエンジン冷却水の熱影響を小さくすることができる。
【0020】
[第1の実施形態の作用の説明]
次に、上記構成の開閉弁1の作用を説明する。
寒冷期のエンジン始動時においては、インレットマニホールドに沿って配管された冷却水管内にエンジン冷却水を流通させるべく、ピストンロッド6が最も一側へ移動した位置にあって弁体10を開いている。流体流入穴2bからカバー2内に流入したエンジン冷却水は、図1(イ)中矢印で示すように、ガイド3,3間の流体流通部3aを通って流体流出穴2aに流れる。このとき、エンジンの運転による振動やエンジン冷却水の脈動等による振動が弁体支持部材7に伝達されるが、弁体取付部材7の先端は弁体10がガイド3に当接することにより周囲から支持されているので振動が防止される。
シリンダ壁面Sの温度が上昇すると、この温度上昇は温度感知部4に感知され、膨張したワックスがピストンロッド6を押し出し、弁体取付部材7および弁体10を他側へ移動させる。シリンダ壁面Sの温度が所定温度以上になると、弁体10は流体流出穴2aに嵌入されて流体流出穴2aの穴内面と密着するので、エンジン冷却水の流れが規制される。
シリンダ壁面Sの温度が下降すると、ワックスが収縮するのでピストンロッド6,弁体取付部材7および弁体10は復帰用のばね9の付勢力によって一側へ押し戻され、弁体10は流体流出穴2aから抜脱してエンジン冷却水の流通を可能にする。
【0021】
[第2の実施形態の説明]
次に、図3に従って本発明の第2の実施形態について説明する。なお、図3において第1の実施形態と同一部位,同一部材には同一の符号を付して、詳しい説明は省略した。
図3は、本発明の第2の実施形態にかかり、開閉弁の主要部の拡大断面図である。
以下に説明する本発明の第2の実施形態において上記の第1の実施形態と異なる点は、カバー2の側面に形成された流体流入穴2cが、ピストンロッド6の軸線C(この実施形態のおいて開閉部であるカバー2の中心軸線と一致する)から左右方向(図3に向かって左右方向)いずれかに偏心した位置に設けられていることである。
流体流入穴2cを偏心させる方向は、ばね9の巻き方向が、図3の他側から見て、右巻き(時計方向巻き)の場合には図3に向かって軸線Cよりも右側、左巻きの場合には同左側である。これは、カバー2内に発生したエンジン冷却水の渦が、ばね9の巻き方向に沿って流体流出穴2a側へ移動することができるようにするためである。
【0022】
すなわち、カバー2内に流入したエンジン冷却水は、流体流入穴2cが軸線Cから偏心した位置に設けられていることにより、カバー2の内周面に沿って流れて渦状になるが、カバー2内にはその内周面に沿ってコイル状のばね9が設けられているため、ばね9の巻き方向に沿ってエンジン冷却水の渦を他側へ移動させる力が作用し、エンジン冷却水はばね9に沿ってスムースに流体流出穴2a側へ流れることができるわけである(エンジン冷却水の流れを図3中矢印で示す)。なお、この実施形態ではばね9の巻き方向に沿ってエンジン冷却水の渦を流体流出穴2a側へ移動させるものとしたが、ばね9の代わりに別個の渦案内手段をカバー2内に形成し、前記渦を流体流出穴2a側へ移動させるようにしてもよい。このような渦案内手段としては、例えば、カバー2の内周面や基部7aの他側面7cに螺旋状または傾斜状の溝や突起を設けるものとしてもよいし、流体流入穴2cをカバー2に対して傾斜するように設け、流体流入穴2cから流入したエンジン冷却水がそのまま流体流出穴2aに向かうようにしてもよい。
開閉弁1をこのように構成することにより、カバー2側から温度感知部4側に流れようとするエンジン冷却水の量をさらに減少させることができ、カバー2内のエンジン冷却水の流れによる温度感知部4への熱影響をさらに減少させることができる。
【0023】
[その他]
本発明の好適な実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、上記第1および第2の実施形態では流体としてエンジン冷却水を一例に挙げて説明したが、流体は水,油のような液体に限らずエアやその他のガスのような気体であってもよい。
また、上記第1および第2の実施形態において付勢手段は、弁体取付部材7を介してピストンロッド6を復帰方向に付勢する圧縮コイルばね9であるとして説明したが、ワックスの膨張によるピストンロッド6の移動方向と逆方向(復帰方向)にピストンロッド6を付勢して復帰させることができるものであれば、ゴム等の他の付勢手段でもよく、また、弁体10を直接付勢するようにしてもよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、上述したように構成されているので、以下のような効果を奏する。▲1▼ 弁体取付部材をピストンロッド側だけでなく先端側でも支持するようにしたので、エンジン等の振動や流体の脈動流等によるピストンロッド先端部の振動を規制することができ、弁体支持部材の折損等を防止して開閉弁の寿命を飛躍的に向上させることができる。
▲2▼ 弁体と一体になった弁体取付部材と復帰用の付勢手段とからなる簡素な構成であるので、組立コストや材料コストを大幅に低減させて安価な開閉弁を提供することができる。
【0025】
また、制御しようとする流体以外の被計測体の温度変化を感知して弁体の開閉を行う開閉弁においては、さらに以下のような効果を奏する。
▲1▼ 部品点数の減少により弁体取付部材の形状の自由度を高めることができるので、弁体取付部材とピストンガイドとの間の余計な空間を無くすことができ、ピストンガイドと流体との接触面積を可能な限り小さくして流体の熱影響を受けにくい誤動作のない信頼性の高い開閉弁を得ることができる。
▲2▼ 流体流入穴を偏心した位置に設けたもの、および渦案内手段を開閉部内に設けたものは、流体流入穴から流体流出穴へ効率良く流体を流すことができるので、開閉部内を流れる流体が温度感知部に与える熱影響をさらに減少させることができ、弁体の開閉動作をより正確なものとすることができる。
▲3▼ 弁体取付部材の強度を高めることができるので、弁体支持部材を熱伝導性の低い樹脂材で形成することが可能になり、流体による温度感知部への熱影響を小さくすることができ、上記効果をさらに高めることができる。
このように、本発明によれば、低価格で信頼性も高く、かつ長寿命の温度感知形の開閉弁を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(イ)は本発明の第1の実施形態にかかり、開閉弁の全体構成を説明する縦断面図、図1(ロ)は(イ)のX−X方向矢視断面図である。
【図2】図1(イ)の開閉弁の主要部の拡大縦断面図で、弁体が流体流出穴に嵌入された状態を示すものである。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかり、主要部の縦断面図である。
【図4】温度感知形の開閉弁の従来例にかかり、エンジンのインレットマニホールドを予熱する予熱装置に設けられる開閉弁の全体構成を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
C ピストンロッドの軸線
E サーモエレメント
S シリンダ壁面(被計測体)
Sa 取付部
1,1′ 開閉弁
2,2′ カバー(開閉部)
2a 流体流出穴
2b,2c 流体流入穴
3 ガイド
3a 流体流通部
4 温度感知部
5,5′ ピストンガイド
6 ピストンロッド
7,7′ 弁体取付部材
7a 基部
7b 軸部
7c 他側面
7d 穴
7e 穴
7f′ 係合部
7g ばね受け部
7h 一側面
8 ばね
9 ばね(付勢手段)
10,10′ 弁体
10a 穴
11 リテーナ
12 シール部材
13 空間部
Claims (5)
- 被計測体の温度変化により膨張、収縮する熱膨張体を一側に内蔵し、この熱膨張体の膨張,収縮により他側に設けたピストンロッドを進退移動させるサーモエレメントと、前記被計測体の温度変化による前記ピストンロッドの進退移動により流体流通路の開閉を行う弁体と、この弁体を前記ピストンロッドに取り付ける弁体取付部材とからなる温度感知形の開閉弁において、
前記流体流通路の途中部位に設けられ、流体流出穴および流体流入穴が形成されるとともに弁体を収納し、前記弁体が前記流体流入穴または前記流体流出穴のいずれか一方を閉じることにより流体の流通を規制する開閉部と、
前記弁体取付部材に設けられ、前記ピストンロッドの進退移動とともに前記流体流出穴または前記流体流入穴に嵌脱自在であるとともに、前記流体流出穴または流体流入穴に嵌入されたときに、弾性変形により前記流体流出穴または流体流入穴の穴内面と密着して前記流体の流通を規制する弁体と、
前記流体流出穴または前記流体流入穴が前記開閉部内に開口する穴周縁に沿って突出形成され、前記弁体が前記流体流入穴または前記流体流出穴を開いたときに弁体取付部材の先端を支持して振動しないように規制するガイドと、
このガイドに形成された流体流通部と、
前記開閉部内に設けられ、前記弁体を復帰方向に付勢する付勢手段とからなること、
を特徴とする温度感知形の開閉弁。 - 前記ガイドは、前記流体流出穴または前記流体流入穴から抜脱した前記弁体と当接して前記弁体取付部材の先端の振動を規制するものであって、かつ、前記流体流出穴または前記流体流入穴の穴内径よりも大きい径を有する円周に沿って設けたこと、
を特徴とする請求項1に記載の温度感知形の開閉弁。 - 前記弁体取付部材は、ピストンロッドに取り付けられる基部と、この基部から突出し前記弁体を取り付ける軸部とからなり、前記流体流入穴は、前記流体流入穴から前記開閉部内に流入した流体が前記基部の他側面に沿って流れるように、前記ピストンロッドが最も一側に移動している状態において前記他側面を含む平面から他側に開口していること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度感知形の開閉弁。 - 前記流体流入穴は、前記開閉部内に流入した流体に渦が発生するように前記開閉部の中心軸線よりも左右いずれかの方向に偏心した位置に開口するように設けられ、かつ、前記流体の渦が前記流体流出穴に向けて移動できるように、前記開閉部内に渦案内手段を設けたこと、
を特徴とする請求項3に記載の温度感知形の開閉弁。 - 前記開閉部には前記渦案内手段の代わりにコイルばねを嵌装し、このコイルばねで前記弁体を復帰方向に付勢するようにしたこと、
を特徴とする請求項4に記載の温度感知形の開閉弁。
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