JP3650310B2 - 高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車に同乗する高年齢者のためのシ−トベルトシステムに関し、殊に、ベルトの取扱いをバリアフリ−としたシ−トベルトシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、高年齢者、障害者など、身体の一部または全部に機能を低下している人や、子供など、健全な人(健常者)と同じ行動ができない人に対し、特別の配慮をするようになった。
【0003】
すなわち、高年齢者や障害者もそれぞれ生活自立し、社会に積極的に関与することが、健全な社会の必須であり、そのため、ハンディの状態を正しく把握し、設備や道具などの使いにくさ(バリア)を排除する、つまりバリアフリ−がクロ−ズアップされるようになった。
【0004】
このバリアフリ−の一つに、年齢が高くなるにつれて身体的機能が低下するので、その低下した能力を補う方法があり、例えば乗用車におけるバリアフリ−は次のように考えられている。
【0005】
例えば車への乗降は、下肢で荷重を支えて身体の重心の高さを移動させる作業であるから、姿勢を制御する神経系の機能の低下および下肢筋力の低下(加齢による筋の萎縮)により、その乗降動作に困難をきたす。
【0006】
そのため、座席からの立上りにおける下肢の筋負担に関して、高年齢者は若年者より下肢の負担が大きいのを、手すりを使うと下肢への負担は低減し、筋負担も顕著に減少する、とされている。
【0007】
また、例えばドアの開閉に関する操作力と操作し易い高さの関係について、若年層(20歳代前半)、高年齢者(70歳代前後)、80歳代の比較によると、高齢になるほど操作し易い高さの許容範囲が狭くなり、既存の車内装備に適応し難い高年齢者の特性が現れてくる。つまり、高年齢者は後方、上方へ手を伸ばすのがつらくなる特性が現れる。
【0008】
一方、乗用車には当該自動車が衝撃を受けた場合、同乗者が座席の前方に移動するのを防止するため、シ−トベルトおよび該シ−トベルト取付装置を備えることが義務付けられている。
【0009】
そして、このシ−トベルト取付装置は、乗降に際し支障とならない位置に備えることも制約されている。
【0010】
このシ−トベルトは一般的に2点式、3点式および4点式があり、フロントシ−トには3点式が、リアシ−トには2点式がそれぞれ用いられているが、最近、リアシ−トにも3点式が用いられるようになった。
【0011】
リアシ−トに用いられる3点式シ−トベルトは、特にショルダ−ベルトは、一般にリアピラ−の上下中間部に設けた取出口から引出され、車種によってはこの取出口の上部に設けた上部スリップガイド付アンカ−を通して吊下されており、このベルトの途中または先端には、スライド自在に嵌合したタングプレ−トを設け、このタングプレ−トがリアシ−トに一体化されたバックルに挿入・解離されるようになっている。
【0012】
そこで、リアシ−トに乗込んだ同乗者は、着座後、例えばタングプレ−トを把持してシ−トベルトリトラクタ−から、その巻込力に抗してベルトを引出し、腰を拘束するラップベルトと上体を拘束するショルダ−ベルトを着用した後、タングプレ−トをバックルへ挿入する。
【0013】
ところで、従来よりシ−トベルト一般について、その快適性や利便性に関し、ベルトが取りにくい、バックルへタングプレ−トを挿入することや解離することがしにくい、等の苦情があって、各種の解決策が提案されている。
【0014】
例えば次のような提案もされている。
【0015】
すなわち、ドライバ−(健常者)用シ−トベルトについて、このシ−トベルトがフロントシ−トから離れているので取りにくいことを解消するため、タングプレ−ト自体またはその近傍に指掛け部ないしグリップ部を設け、これを利用してシ−トベルトを容易に引出すことを提案している(実開昭60−110056号公報、実開平2−38253号公報参照)。
【0016】
ところで、かかる健常者を対象にした提案を、高年齢者たる同乗者が使用するシ−トベルトに適用したところ、次のような問題のあることが判明した。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
(1)指掛け部ないしグリップ部は一般の健常者たるドライバ−を対象にしているため、小型化されていても指1本でも掛かれば操作できるようになっているが、高年齢者がこれを操作しようとすれば、指1本では困難で手を後方および/または上方へ伸ばす必要が生じ、高年齢者にとってつらく、ひいては、ベルトが扱いにくい。
【0018】
(2)本来、高年齢者には指がよく曲がらない人、肘の間接が動きにくい人、握力が衰えた人、手や指の力が非常に弱くなった人等が多いが、これらの人には、かかる指掛け部ないしグリップ部はバリアフリ−用品としては好ましくない。
【0019】
そこで本発明は、別途試行錯誤の上、高年齢者に好都合な専用のシ−トベルトのバリアフリ−用品を提供することを目的するものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、乗用車のシ−トに設けたショルダ−ベルト2aがピラ−3の取出口から取出されて、該ショルダ−ベルト2aに設けた金属製タングプレ−ト6が吊下されているシ−トベルトシステムにおいて、把持部11と一体になった長寸の棒体部12と、該棒体部12と一体になった板状取付部13とからなる合成樹脂製グリップ10の該取付部13を、前記タングプレ−ト6をそのままにしたアタッチメントとして、該タングプレ−ト6のベルト挿通板9に、バリアのハンディに合せて着脱自在に固設する高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステムにあって、前記板状取付部13を2つ割りに形成して、前記ベルト挿通板9を包むよう挟持して安全性を確保すると共に、該板状取付部13の挟持部19に、前記ベルト挿通板9の挿通孔9aに挿通した前記ショルダ−ベルト2aがスライド移動に支障のないよう切欠凹部26を設けたことを特徴とする高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステムにある。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明を添付図面に示す実施の形態例により詳細に述べる。
【0022】
図1は本発明の実施の形態例の全体斜視図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2の分解斜視図、図4は他の実施の形態例の全体斜視図である。
【0023】
本実施の形態例のシ−トベルトシステムは、前記のようなハンディのある高年齢者が同乗する乗用車のリアシ−ト用の3点式シ−トベルトに好都合であるが、フロントシ−ト用の3点式シ−トベルトにも適用できるものである。
【0024】
先ず、本発明の実施の形態例の高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステムの概要を述べる。
【0025】
図1に示すシ−トベルトシステムは、JISD4604の付図にも示されているきわめて標準的な骨格図であるが、リアシ−ト1には、ショルダ−ベルト2aとラップベルト2bとが連接したウエッピング2が装備されている。
【0026】
このショルダ−ベルト2aの中間部は、リアピラ−3に取付けられた上部スリップガイド(ウエッピング2の方向を変更して正姿勢の状態にする部材)付アンカ−4に通してあって、また、その基端部はシ−トベルトリトラクタ−5に巻取られている。
【0027】
また、その先端側にはラップベルト2bが連接されると共に、タングプレ−ト6がスライド自在であるが、所定の所で固定されるようになっている。つまり、ショルダ−ベルト2aにタングプレ−ト6が設けられている。このタングプレ−ト6はリアシ−ト1の横に設けたバックル7に挿入・解離自在になっている。
【0028】
このバックル7は車体フレ−ム8に前方斜め上向きになって固設されている。したがって、同乗者がベルト着用すれば、ショルダ−ベルト2aがアンカ−4とバックル7とで衝撃時に身体を強固に支持することになる。
【0029】
以上のようなシ−トベルトシステムにおいて、本実施の形態例では図2に示すように、前記タングプレ−ト6のベルト挿通板(または、バックル側スリップガイド付のタングプレ−トであれば、そのスリップガイド)9に、次のようなグリップ10をタングプレ−ト6はそのままで、アタッチメントとして取付けている。
【0030】
このグリップ10は軟質合成樹脂(SBS)製の射出成形品で、球状把持部11と、この球状把持部11と一体になった(別体で螺着してもよい)棒体部12と、この棒体部12と一体化した板状取付部13と、から大略構成されている。
【0031】
そして、このグリップ10の板状取付部13は、一般の既設の金属製タングプレ−ト6のベルト挿通板9に取付けられ、しかも、このグリップ10はウエッピング2の不使用時には、上部スリップガイド付アンカ−4より下方にぶらさがり、その上、金属製のタングプレ−ト6にガッチリと取付けられ、ベルトが捩じれ姿勢でなければ、常に車体前方に向け略水平状に突出できる状態になっている。
【0032】
そのため、このグリップ10に乗降時身体が当接しても、合成繊維製帯体であるショルダ−ベルト2aが揺れて、その乗降には支障を与えない。
【0033】
したがって、高年齢者たる同乗者がリアシ−ト1に着座して、当該同乗者のすぐ横で並び肩近傍ないし胴近傍で前方に向け突出できるグリップ10を把持して、ショルダ−ベルト2aを巻込力に抗しながら引出し、肩に掛けてから持ち直すことなく、タングプレ−ト6をバックル7に挿入すると、ベルトの着用ができる。
【0034】
この着用後は、グリップ10はリアシ−ト1の横で前方斜め下向きの状態になるので、車内のデッドスペ−スを利用することになり、シ−ト上を占拠したり、隣の乗者を邪魔しない。
【0035】
特に、肩近傍または胴近傍で前方に向け略水平状になっているグリップ10を把持するので、ベルトの取扱いが高年齢者(指がよく曲がらなかったり、肘の関節が動くにくかったり、握力が衰えていたり等の人)にとって好都合となり、ひいては、バリアフリ−としての好個な用品にすることができる。
【0036】
次に、本実施の形態例のグリップ10を詳細に述べる。
【0037】
図2および図3において、図3(A)は分解斜視図、(B)は他の実施例の要部斜視図であるが、グリップ10は、前記のように球状把持部11と、この球状把持部11と一体成形された棒体部12と、この棒体部12に一体化した板状取付部13と、からなり、この球状把持部11の大きさはピンポン球大で、しかも、外面に多数の小突起14,14…を一体成形して突出している。
【0038】
したがって、この球状把持部11は高年齢者や、特に手の小さい女性の高年齢者にとっても滑りにくく握り易い大きさであり、しかも、多数の小突起14を握ったり離したりすることによって掌の血行を促す健康器具にもなる。
【0039】
棒体部12の長さは約10〜15cmで、先細り状になっていて、ここを、たとえ2本の指で挟んで掴持しても握り易くしている。したがって、このグリップ10では把持する形態を多様化している。
【0040】
この棒体部12または球状把持部11をハンディに合せて掴み、ショルダ−ベルト2aをシ−トベルトリトラクタ−5から引出すが、このグリップ10は軟質とはいえ折れ曲る等の変形することなく、そのままタングプレ−ト6をバックル7へ持ち直すことなく挿入することができるのである。
【0041】
板状取付部13は合成樹脂成形製で、2つ割に形成されて、棒体部12を両側から挟持てビス15で固着して一体化している。
【0042】
すなわち、棒体部12の基部には小径のジャ−ナル16を設け、このジャ−ナル16に嵌合溝17とビス貫通孔18′を設けている。
【0043】
一方、板状取付部13には、前記ジャ−ナル16を挟持するジャ−ナル用挟持部18と、前記タングプレ−ト6のベルト挿通板9を挟持するベルト挿通板用挟持部19とを一体形成している。
【0044】
そして、これらのジャ−ナル用挟持部18とベルト挿通板用挟持部19とはそれぞれ対向した略同一形状の部材で構成し、2本のビス15,20で縫付け接合する。
【0045】
そのため、一方のジャ−ナル用挟持部18にはビス15を螺合するボス21を設け、他方のジャ−ナル用挟持部18にはビス15を挿通する貫通孔20′を設けている。
【0046】
また、一方のベルト挿通板用挟持部19にはビス20を螺合するボス23を設け、他方のベルト挿通板用挟持部19にはビス20を挿通する貫通孔24を設けている。
【0047】
更に、両ジャ−ナル用挟持部18,18にはその内側に対向して、前記嵌合溝17に嵌合する円弧状リブ25をそれぞれ設けてジャ−ナル16の抜止めを図りガッチリと一体化してグリップ10の向きをセット後不動にしている。
【0048】
また、両ベルト挿通板用挟持部19,19には、ベルト挿通板9の挿通孔9aに挿通したショルダ−ベルト2aがスライド移動するのに支障ないように切欠凹部26をそれぞれ設けている。
【0049】
なお、この板状取付部13のベルト挿通板用挟持部19にはその両板体の外周に折曲げ辺27を設け、ベルト挿通板9の挟持時、これらの折曲げ辺27,27を当接するようにして、若干の厚みのあるベルト挿通板9を完全に包むと共に、板状取付部13を補強し、シ−トベルトシステムとしての安全性・信頼性・意匠性を確保している。
【0050】
なお、図3(B)に示す棒体部28は若干折曲させ、したがって、前記板状取付部13で挟持するとき、太矢印Aのように180°回転させて挟持すれば、球状把持部11の高さの変更ができ、使用者の体格やハンディの状態に合わせることができる。
【0051】
次に、本発明の他の実施の形態例のシ−トベルトシステムについて述べる。
【0052】
図4において、このシ−トベルトシステムは乗用車のフロント補助シ−トに適用したもので、ショルダ−ベルト2aはセンタ−ピラ−29の上下中間部に設けた取出口30から取出されている。
【0053】
この取出口30の上方には上部スリップガイド付アンカ−31にショルダ−ベルト2aは通され、その先端にタングプレ−ト6が固着されている。
【0054】
このタングプレ−ト6に前記図2、図3で示したグリップ10が不使用時、前方略水平に突設されている。
【0055】
したがって、このシ−トベルトシステムでも、本実施の形態例のグリップ10を取付けると、使用者たる高年齢者は容易にベルトの取扱いができる。そして、このグリップ10はセンタ−ピラ−29からそれ程突出していないので、車への乗降には支障をきたさない。
【0056】
なお、図中、32はアジャスタブルアンカ−、33はサイドドアを示す。
【0057】
以上のショルダ−ベルト2aはアンカ−等を介して吊下されているが、アンカ−を埋込んだ上部の取出口から直接引出され吊下するものでもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、同乗者シ−ト横で上部または上下中間部からぶらさがっている水平状のグリップを掴んでベルトを着用するので、高年齢者にとってベルト取扱いが容易となり、ベルト着用率が上り、それだけ身体事故を防止することができる。
【0059】
殊に、吊下した金属製タングプレ−トに長寸のグリップを固着しているので、ベルトが捩じれない限り、フロントシ−トではグリップは概ね前方水平向きで高年齢者に並び、当該ハンディのある高年齢者が掴み易くなり、特に、把持部か棒体部かを、ハンディに合せて右手または左手で把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態例の全体斜視図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【図3】 図2の分解斜視図である。
【図4】 他の実施の形態例の全体斜視図である。
【符号の説明】
1…リアシ−ト、2…ウエッピング、2a…ショルダ−ベルト、3…リアピラ−、6…タングプレ−ト、7…バックル、10…グリップ、11…把持部、12…棒体部、13…取付部
Claims (1)
- 乗用車のシ−トに設けたショルダ−ベルト2aがピラ−3の取出口から取出されて、該ショルダ−ベルト2aに設けた金属製タングプレ−ト6が吊下されているシ−トベルトシステムにおいて、
把持部11と一体になった長寸の棒体部12と、該棒体部12と一体になった板状取付部13とからなる合成樹脂製グリップ10の該取付部13を、前記タングプレ−ト6をそのままにしたアタッチメントとして、該タングプレ−ト6のベルト挿通板9に、バリアのハンディに合せて着脱自在に固設する高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステムにあって、
前記板状取付部13を2つ割りに形成して、前記ベルト挿通板9を包むよう挟持して安全性を確保すると共に、
該板状取付部13の挟持部19に、前記ベルト挿通板9の挿通孔9aに挿通した前記ショルダ−ベルト2aがスライド移動に支障のないよう切欠凹部26を設けたことを特徴とする高年齢者バリアフリ−用シ−トベルトシステム。
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