JP3649964B2 - 光磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射によって、情報が記録または再生される光磁気記録媒体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、書き換え可能な光記録媒体として、光磁気記録媒体が実用化されている。このような光磁気記録媒体では、光磁気記録媒体上に集光された半導体レーザから出射される光ビームのビーム径に対して、記録用磁区である記録ビット径及び記録ビット間隔が小さくなってくると、再生特性が劣化してくるという欠点が生じている。
【0003】
このような欠点は、目的とする記録ビット上に集光された光ビームのビーム径内に隣接する記録ビットが入るために、個々の記録ビットを分離して再生することができなくなることが原因である。
【0004】
上記の欠点を解消するものとして、特開平6−150418号公報に、室温において面内磁化状態であり温度上昇と共に垂直磁化状態となる再生層と、記録層とを具備し、両者の間に非磁性中間層を設け、再生層と記録層とを静磁結合させた構造の光磁気記録媒体が提案されている。この方式では、光ビームスポット内の熱分布を利用し、ある温度しきい値よりも高い温度領域だけで、記録層から再生層に転写された磁区情報を再生する。これにより、集光された光ビームのビーム径内に隣接する記録ビットが入る場合においても、個々の記録ビットを分離して再生することが可能となる。
【0005】
また、特開平9−231631号公報には、再生層と記録層の間に金属膜層又は誘電体層/金属膜層を設けた構成が提案されている。この構成により再生層に存在する磁化から発生する漏洩磁界を制御でき、さらに膜からの反射光を積極的に利用することができるため良好な再生特性が得られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特開平6−150418号公報や特開平9−231631号公報では、さらに小さい記録ビット径及び記録ビット間隔で記録再生しようとした場合、良好な記録再生特性が得られない。特に、小さいマーク長での再生信号品質が充分でないため、今まで以上に高密度な記録再生が行えず、記憶容量を大きくできないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、再生信号品質並びに記録特性を改善し、より高密度記録再生が可能な光磁気記録媒体及びその製造方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明の光磁気記録媒体は、光入射側から順に、光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記誘電体層の間に、誘電体層に隣接させて前記再生磁性層よりも熱伝導率の高い金属膜を備えたことを特徴としている。
【0009】
第2の発明の光磁気記録媒体は、第1の発明の光磁気媒体において、前記金属膜の膜厚が30nm以下であることを特徴としている。
【0010】
第3の発明の光磁気記録媒体は、第1の発明の光磁気媒体において、前記金属膜の膜厚が6nm以下であることを特徴としている。
【0011】
第4の発明の光磁気記録媒体は、第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の光磁気媒体において、前記金属膜がAl,AlNi,AlSi,AlTi,AgTiのいずれかを少なくとも含むことを特徴としている。
【0012】
第5の発明の光磁気記録媒体は、第1の発明〜第4の発明のいずれかに記載の光磁気記録媒体において、前記記録磁性層の前記再生磁性層とは反対側に、前記記録磁性層よりも熱伝導の良い放熱層を有していることを特徴としている。
【0013】
第6の発明の光磁気記録媒体は、第1の発明〜第5の発明の光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記金属膜との間に、膜厚が1nm以上10nm以下の誘電体層を有していることを特徴としている。
【0014】
第7の発明の光磁気記録媒体は、光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記再生磁性層の前記記録層側に隣接して、膜厚が6nm以下であり前記再生磁性層よりも熱伝導率の高い金属膜を備えたことを特徴としている。
【0015】
第8の発明の光磁気記録媒体は、光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記誘電体層における前記再生磁性層との界面部分に、前記再生磁性層の構成金属とは異種の金属が、前記誘電体層の他の部分よりも、多く存在することを特徴としている。
【0016】
第9の発明の光磁気記録媒体は、光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記誘電体層の間に、誘電体層に隣接させて前記再生磁性層より熱伝導率が高い熱応答改善膜を備えていることを特徴としている。
【0017】
第10の発明の光磁気記録媒体の製造方法は、第1の発明〜第7の発明のいずれかに記載の光磁気媒体の製造方法であって、前記金属膜は少なくともAlを成分としており、前記金属膜を、純度が99.9%以下のAlターゲットをスパッタして作製することを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の光磁気記録媒体の特徴について説明する。
【0019】
本発明の光磁気記録媒体は、室温で面内磁化を示し臨界温度以上に加熱されると垂直磁化を示す再生磁性層と、該再生磁性層と静磁的に結合する記録磁性層とを備えた光磁気記録媒体について、本発明者が鋭意研究を行った結果によるものであり、再生磁性層に近接して金属膜等を設けたものである。
【0020】
まず、光磁気記録媒体において従来用いられていた金属層について説明する。
【0021】
従来、ミニディスク(MD)等に用いられている光磁気記録媒体は、図6に示すように、基板100上に透明誘電体層101,光磁気記録再生層102,透明誘電体層103,金属反射層104が順に形成された構成となっている。このような構成において、金属反射層104は、光磁気記録再生層102を透過した光を反射することで、光磁気記録再生層102に入射した光との干渉効果によってカー回転角を改善すべく、設けられている。また、干渉効果を上げるため、上記のごとく、金属反射層104と光磁気記録再生層102との間に透明誘電体層103が設けられている。
【0022】
このように、従来においては、金属層は一般的に入射光を反射してカー回転角を増大するために用いられており、また、透明誘電体層との関係においては、干渉効果を生じさせるために、光磁気記録再生層に隣接して透明誘電体層,金属膜の順に形成されるのが常であった。
【0023】
ところが、本発明者の研究により、室温で面内磁化を示し臨界温度以上に加熱されると垂直磁化を示す再生磁性層を有した光磁気記録媒体においては、上記従来の光磁気記録媒体の構成に反して、再生磁性層に接して(あるいは近接して)金属膜等(特に反射膜としてほとんど機能しない程に薄い金属膜等)を設けることで、以下に示すように、高記録密度を実現するのに優れた特性が得られることが、初めて見出された。また、誘電体膜との関係においては、再生磁性層側から金属膜等,誘電体膜をこの順に設けた構成において良好な記録再生特性が得られることが、初めて見出された。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0025】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の形態を図1に基づいて説明すれば以下の通りである。本実施の形態では、光磁気記録媒体として、基板側から光入射を行う光磁気ディスクを適用した場合について説明する。
【0026】
本実施の形態に係る光磁気ディスクは、図1に示すように、基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、金属膜4、誘電体層5、記録磁性層6、誘電体層7、放熱層8、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造を有している。なお膜面側から光入射を行う光磁気ディスクの場合は基板1、オーバーコート層9を入れ替えた構造となる。
【0027】
再生磁性層3は、その磁気特性が、室温において面内磁化状態であり、温度上昇して臨界温度以上となると垂直磁化状態となるように組成調整されている膜を有している。さらに再生特性を向上させるための磁性層を付加していても良い。例えば、室温で面内磁化を示し、再生温度で磁化が消失する低キュリー温度の磁性層が付加されていても良い。
【0028】
金属膜4は再生磁性層3より熱伝導率の高い材料からなっている。この金属膜4は、後に考察する原理からするとこれに限られるものではなく、再生磁性層3よりも熱伝導率の高い材料からなる層(以下、熱応答改善層と記す)であれば置き換えが可能である。
【0029】
記録磁性層6は、垂直磁化を示す磁性層を有している。さらに記録特性を向上させるための磁性層を付加していても良い。例えば、記録温度近傍で記録磁性層6よりも保磁力の小さな垂直磁化の磁性層(記録補助層)を付加しても良い。
【0030】
放熱層8は、記録磁性層6より熱伝導率の高い層である。
【0031】
(実施例1)
次に、本実施の形態の具体例を示す。
【0032】
(1)構成
基板1は0.6mm厚のポリカーボネート製基板である。この基板にオーバーコート層を除く各層がスパッタリングによって積層されている。
【0033】
基板1のガイドトラックが形成されている側の面に、透明誘電体層2として、AlNが厚さ65nm形成されている。
【0034】
透明誘電体層2上に、再生磁性層3として2層の磁性層(GdFeCo,GdFe)が形成されている。まず、GdFeCo層が厚さ25nm形成され、次にGdFe層が厚さ15nm形成されている。GdFe層は再生特性を向上させるために設けている。GdFeCo層の磁化方向は、室温ではほぼ面内(つまり再生磁性層3の膜面内方向)にあり、160℃〜180℃程度の温度で面内方向から垂直方向に移行する。GdFe層は室温からそのキュリー温度まで面内磁化状態を保っており、キュリー温度は約150℃である。
【0035】
再生磁性層3の上に、金属膜4としてAlが厚さ2nm形成されている。Alは3Nの純度のターゲットをスパッタリングしたものを用いた。なお、このような薄い膜厚では、金属膜4は反射膜として機能はほとんど有していない。
【0036】
金属膜4の上に、誘電体層5としてAlNが厚さ3nm形成されている。
【0037】
誘電体層5の上に、記録磁性層6として2層の磁性層(TbFeCo,GdFeCo)が形成されている。まずTbFeCoが50nm形成され、次にGdFeCoが15nm形成されている。GdFeCoは記録磁界感度を向上させるために設けられている。TbFeCo層は室温から垂直磁化膜であり、キュリー温度は約240℃である。GdFeCo層は室温から垂直磁化膜であり、キュリー温度は約280℃である。
【0038】
記録磁性層6上に、誘電体層7としてAlNが10nm形成されている。誘電体層7上に、放熱層8としてAlNiが20nm形成されている。放熱層8上に、紫外線硬化樹脂をスピンコートにより塗布し、紫外線を照射することによってオーバーコート層9が形成されている。
【0039】
(2)記録再生特性
上記光磁気ディスクについて、記録再生特性を測定した。測定したのは[1]C/N,[2]最小記録パワー,[3]記録パワーマージン,[4]再生パワーマージンである。なお、比較のため、従来例として金属層4を設けていない光磁気ディスクの測定も行った。結果を表1に示す。なお、従来例の構成は図5に示すように基板91、透明誘電体層92、再生磁性層93、誘電体層94、記録磁性層95、誘電体層96、放熱層97、オーバーコート層98となっている。従来例の構成は金属層4を有していない点を除き、実施例1の光磁気ディスクと同様であるが、誘電体層96のAlNの厚さを5nmとしている。
【0040】
【表1】
特性測定条件は、
光ピックアップ:半導体レーザ波長=640m,対物レンズ開口数=0.6
ディスク線速度=5.0m/sec
基板トラック形状:ランド/グルーブ幅=0.5μm/0.5um,グルーブ深さ=50nm
記録方式:光パルス磁界変調方式(光パルスduty=30%、記録磁界強度=200Oe),ランド/グルーブ記録変調方式(NRZI最短記録マーク長=0.21μm)
である。
【0041】
また、C/Nを除く3項目は、最短マーク長さ0.21μmのNRZIランダム変調パターンを記録し、再生信号のBER(ビットエラーレート)を測定した結果に基づくものである。また、BERの評価しきい値を1×10-4として、この値よりもエラーが良くなるパワー範囲を示したものが、項目[3]記録パワーマージンと項目[4]再生パワーマージンである。
【0042】
[1]C/N
0.4μm長さの繰り返し磁区を記録し、そのC/Nを測定した結果である。本実施例の光磁気ディスクによれば従来ディスクに比して、約1.5dBの改善が確認された。
【0043】
金属膜4の挿入によりC/Nが向上した理由(原理)は、本発明者が推察するに、次のようなものであると考えられる。
【0044】
光入射面側から入射された光ビームは、まず再生磁性層3に吸収され熱に変わる。この再生磁性層3にたまった熱は、膜面方向と膜厚方向の両方に広がろうとするが、再生磁性層3背面に金属膜4を設けているため、金属膜4側(膜厚方向)へより熱が流れるようなる。従って、再生磁性層3中においては、金属膜4を設けたことにより膜面内方向への熱の広がりを押さえることができる。このため、光ビーム照射時の媒体温度分布がより急峻になり、これにより、C/Nが向上したものと推察される。以下、さらに詳しく説明する。
【0045】
本実施例のように、面内から垂直に磁化方向が移行する再生磁性層3を用いたMSR(磁気的超解像)媒体においては、光ビームスポット内の温度分布を利用し、ある温度しきい値よりも高い温度領域(実効アパーチャー)だけで、記録磁性層6から再生磁性層3に転写された磁区情報を再生する。しきい値よりも低い温度領域は再生磁性層3が面内磁化であるために記録磁性層6の磁化情報は見えてこない(マスク領域)。
【0046】
ところが、再生磁性層3の磁化が面内から垂直に移行するためには有限の温度範囲が当然必要である。ディジタル状に変化する訳では無い。そのため、実効アパーチャーとマスク領域の間(実効アパーチャーを取り巻くドーナツ状領域)では、再生磁性層3の磁化方向が斜め方向を向いており、これは再生時のノイズとなり信号品質を劣化させる。この領域は一般的にはグレー領域と呼ばれる。
【0047】
本実施例では上記のように媒体の温度分布を急峻にできるため、上記グレー領域を狭小化することができ、ノイズを抑制して、C/Nを向上できたものと考えられる。
【0048】
更に、次のような効果も考えらえる。
【0049】
媒体の温度分布を急峻にすることができれば、再生磁性層3中での熱の停滞を無くして効率よく記録磁性層に熱が伝わるようになり、時間的な熱応答性(熱レスポンス)が向上し、これによってもC/Nを向上できる。理由は次の通りである。
【0050】
記録再生においては、当然のことながらディスクが回転しており、光ビームスポットがディスク上を移動している。そして、熱レスポンスが良くなると、光ビームスポットの中心と記録媒体の熱中心(温度の一番高い部分)のずれを極力小さくすることができる。例えば、特開平6−150418号公報で示されたMSR媒体においては、温度分布中心が記録磁性層の情報を読み出す部分であり、光ビームスポット中心は光強度の一番強い箇所であるので、熱レスポンスを良好にして、光ビームスポット中心と熱中心を近づけることで、より大きな信号強度が得られ、C/Nを向上することができる。
【0051】
[2]最小記録パワー
BERを1×10-4以下とするために必要な最小記録パワーは、小さいほどレーザを低出力とすることができるため有利である。また、更に高速のデータ転送速度を要求される場合、つまりディスク線速度が高い場合にも有利である。
【0052】
表1より、実施例1の光磁気ディスクにより従来例に比して、1mWの改善効果があることが分かる。改善の理由は、上記[1]C/Nの項で記した原理に準じると、以下のように説明できる。
【0053】
金属膜4を設けたため、再生磁性層3にたまった熱が金属膜4側(膜厚方向)へ流れやすくなっている。金属膜4の熱は、金属膜4が充分薄く熱容量が小さいため、金属膜4の面内に留まることなく記録磁性層6側へと流れる。つまり、金属膜4が、再生磁性層3の余分な熱を記録磁性層6へ伝達する役割を果たすため、より低パワーの光ビームで記録に必要な熱を得ることができる。このため、最小記録パワーが低下する。
【0054】
[3]記録パワーマージン
本実験は一般にランド/グルーブ記録と呼ばれる高密度化に最も有利な形態に基づくものであり、まず任意のランドにある記録パワーPwaで記録を行う。次に、同じ記録パワーで隣接する両側のグルーブともに記録を行う。その後、元のランドに戻りそのBERを測定する。この一連の測定を記録パワーを変えて繰り返し行う。記録パワーの下限は[2]の最小記録パワーで説明した通りである。上限は次のように決まる。記録パワーが高くなりすぎるとクロスライトが生じてしまう。つまり、グルーブに記録が行われる際に先に記録されているランドの記録情報を乱してしまう現象が生じる。この乱れが大きくなるとランドのBERが悪化する。そして、BERが1×10-4よりも悪くなった点が記録パワー上限値となる。
【0055】
表1の結果から、本光磁気ディスクにおいては従来の光磁気ディスクと同等の記録パワーマージンが得られることが分かる。このように、本発明によれば、最小記録パワーを低くできる([2]参照)利点を得ることができるにもかかわらず、記録パワーマージンを悪化させない。一般に、低い記録パワーで済む媒体は、高記録パワーにおいては容易にクロスライトが生じる傾向があるが、本光磁気ディスクではそのような傾向は見られなかった。これは熱応答改善膜4の膜厚が2nmと薄いため、膜厚方向への熱流れが支配的であり、膜面内方向への熱拡散によるクロスライト現象が生じにくくなっているためと考えられる。尚、このクロスライト現象はトラックピッチが狭いほど顕著であることは言うまでもない。表2にその一例を示す。
【0056】
【表2】
上表から分かるように、0.6μmトラックピッチにおいては、0.5μmに比べほぼ2倍の記録パワーマージンを持つことがわかる。また、後述する(実施例2)ように、金属膜4の膜厚が厚くなると膜面内方向への熱拡散によるクロスライト現象が顕著になるため記録パワーマージンから見た熱応答改善膜4の膜厚上限値が決まるが、表2に示すようにその上限値は本記録媒体を適用するトラックピッチにおいて大きく変わるものである。もちろん、熱改善応答膜4の材料、その熱伝導率の大小にも依存することは明らかである。
【0057】
[4]再生パワーマージン
まず、再生パワーマージンの測定方法について説明する。記録パワーマージン測定で求められた中心記録パワーでランド及びその両隣接グルーブに記録を行い、ランドのBERを再生パワーを変えて測定し、BERが1×10-4よりも良くなる範囲を求めた。従来ディスクと比べ大幅にマージンが広がっていることがわかった。表1における結果をグラフで示したものが図2である。
【0058】
本発明によりマージンが大きくなった理由は、上記[1]で記した原理に準じれば、ひとつはC/Nが増大し([1]参照)、BER値そのものが良くなった(図2参照)ことであり、もうひとつは、熱応答性が良くなったために膜面内方向への熱広がりが抑えられた結果、隣接するグルーブからのクロストークが減少したことである。MSRディスクにおいては、再生パワーが高くなるに従い、その実効アパーチャーが大きくなるため、高い再生パワーにおいては隣接するトラック(この場合はグルーブ)に記録された信号混入の程度が増す、即ちクロストークが増大しBERが悪化する。ところが、図2からも明らかなように本発明ディスクは従来ディスクと比べ、よりも高い再生パワーにおいても良好なBERを示している。つまり、従来ディスクに比べクロストーク低減効果が大きくなっている。このように本発明の熱応答改善膜4は再生時のクロストーク低減効果もあることが明らかとなった。
【0059】
以上説明したように、本実施例によればC/N,最小記録パワー,記録パワーマージン,再生パワーマージンを向上することができる。このような効果をもたらす原理は、金属膜4により再生磁性層3における熱の広がりを抑制できたことにあると考えられ、この点からすれば、金属膜4の代わりに再生磁性層3よりも熱伝導性の良好な材料からなる層(熱応答改善膜)を設けても良い。
【0060】
なお、以上の説明では、耐環境性を増大するために誘電体層5を設けていたが、上記の原理によれば、熱伝導率の悪い膜である誘電体層5を取除けば、再生磁性層3の熱をより記録磁性層6側に逃し易くなり、効果がより向上する可能性もある。つまり、基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、金属膜(熱応答改善膜)4、記録磁性層6、誘電体層7、放熱層8、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造でも構わない。
【0061】
(実施例2)
次に、実施例1の金属膜4の膜厚を2〜30nmの範囲で変えた場合の特性差を調べた。また、基板1も0.6mmと1.2mmの2種類の厚さのものを用いた。その他の膜構成は実施例1と同じである。結果を表3に示す。また、測定条件を表4に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
条件A,Bでまず大きく異なる点は記録マークピッチである。条件Aは上述の実施例1と同じ条件である。ランド/グルーブの幅がほぼ0.5μm/0.5μmでありランド/グルーブ双方に記録を行うため、記録マークの半径方向間隔は0.5μmである。これに対して、条件Bはランド/グルーブの幅が約0.6μm/0.35μmとランドが広くランドのみをデータエリアとして使用する基板を用いた場合の測定である。グルーブには記録を行わないため記録マークの半径方向間隔は0.95μmであり、条件Aに比べ非常に広い。
【0064】
次に、異なる点はディスク線速度と記録パルスdutyである。一般に線速度が低い程、また記録パルスdutyが大きい程、記録に要するパワーは少なくて済む。逆に言うと媒体内での熱の広がりは線速度が遅いほど大きくなりクロスライトは生じ易くなる。
【0065】
条件A,Bともに10nmを越えると記録パワーマージンは減少し、最小記録パワーは増大している。記録パワーマージン減少の理由は、本発明者が推察するに、膜厚増加に伴い、金属膜4中での膜面内方向への熱広がりが増すことによりクロスライトが大きくなったと考えられる。
【0066】
最小記録パワーが増大する理由は、上記膜中での熱拡散も含め金属膜4での熱吸収が膜厚増加に伴い大きくなるためと考えられる。再生パワーマージンについては金属膜4を設けない従来ディスク(0nm)と比べいずれの膜厚であってもマージンが大きくなっている。条件Aで20nm,30nmでマージンが若干低下する理由は、熱の膜面内方向への広がりが増加しクロストークが増加したためと思われる。条件Bにおいては記録マークピッチが広いために20,30nmであっても再生パワーマージンの低下が見られないと予想される。
【0067】
実用上必要な記録パワーマージン値は+−8%程度以上が好ましいこと、並びに光ピックアップの有する最大記録パワーの2点から本発明の金属膜4の膜厚の上限を見積もることができる。最大記録パワー値は、例えば条件Aで用いた光ピックアップの場合、搭載しているレーザは現在入手可能なものの中で定格出力が最も大きいもの(連続発光使用時の最大出力30mW)のひとつを用いているが、レンズその他の光学部品による光損失のため、30%パルス発光における最大記録パワーは13.5mW程度である。同様の理由で条件Bの光ピックアップの場合は8mW程度である。最大記録パワー以上での記録はレーザ破壊につながるため本実験では行っていない。従って、記録パワー感度の悪いディスクサンプルでは記録パワーマージンの上限側がクロスライトで決まるのでは無く最大記録パワーで決まってしまう。
【0068】
表3から分かるように、実験結果の条件A下においては、記録パワーマージン(+−8%以上)の観点から約20nmが上限となる。つまり、記録マークピッチが0.5μmと非常に狭い場合にはクロスライトが主因となり20nm程度が上限となる。
【0069】
ところが、条件Bの場合、上限はクロスライトでは無く、最大記録パワー上限で決まっている。膜厚が30nmの場合においても、最大記録パワー8mWで記録した場合のクロスライトによるBER悪化はわずかであり1×10-4よりも悪くならなかった。従って、条件Bの様に記録マークピッチが0.95μmと比較的広い場合には30nmであっても良好な特性を得ることができる。しかしながら、半導体レーザ寿命、電力消費の観点から同じ性能であれば記録に要するパワーは低い方が良いことは明らかである。金属膜4を設けない従来ディスクの記録パワー感度に対し10%程度の記録パワーロスを許容するとすれば20nm以下程度が膜厚としては好ましい。
【0070】
加えて、表3の結果から、金属膜4の膜厚が6nm程度以下となれば、金属膜4が無い場合に比して、記録パワーロスが無く、再生パワーマージンが広がるといった非常に好適な効果が得られ、より望ましいことが分かる。
【0071】
なお、上記結果は、誘電体層5を取り除いた構成においても同様であり、金属膜4の膜厚としては6nm以下が最も望ましい。
【0072】
(実施例3)
次に、実施例1の金属膜4の材料を変えた場合の特性差について検討した結果について示す。なお、ここで述べる光磁気ディスクの膜構成は実施例1と同じである。また、金属膜4の膜厚は2nmである。実験条件は実施例2の表4の条件Aと同じである。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
Al膜は純度4N(99.99%),3N(99.9%)及びJIS規格準拠(Al純度99.5%以上)の3種のAlターゲットをArガスを用いてスパッタリングしたものを比較した。AlNi,AlSi,AlTiは、それぞれNi5atomic%,Si5atomic%,Ti5atomic%の組成の膜を用いた。また、AgTiは、Ti5atomic%の組成の膜を用いた。
【0074】
繰り返し記録特性においては、記録時の温度上昇が原因でAl膜に局所的な結晶化が生じ、繰り返し記録回数が増すに従い、結晶化の程度、結晶粒サイズの拡大が進行し再生時のノイズが徐々に上昇し信号品質を下げてしまうと考えられる。Al純度が高いほどこの現象が顕著であった。4N−Al膜を用いた場合は103回の記録/消去で1dB程度のC/N劣化が観測された。3N−Alの場合は105回以上の繰り返し記録でもわずかなC/N低下であり、AlNi,AlSi,AlTi,AgTi膜の場合は更に小さなC/N低下であった。実用的には3Nよりも純度が低いターゲットを用いて作製したAl膜かAlNi,AlSi,AlTi,AgTiが好適であることがわかった。
【0075】
AlNi,AlSi,AlTiにおいては、Ni,Si,Ti添加量を増やすほど熱伝導率が低下する。Al膜の変質を防止できる添加量であれば添加量は少ない方が好ましい。これは膜の熱伝導率が再生磁性層3のそれよりも高く、その差が大きいほど再生磁性層3内の熱滞留を少なくすることができるからである。ただし上述の如く、本発明の効果は、再生磁性層3の熱伝導率よりも高い膜を熱応答改善膜4として用いれば得られることは明らかであり、添加量、また材料はここに実験結果として示したものに限定されるものではない。
【0076】
尚、純度4NのAlターゲットを用いてスパッタリングで作製したAl膜の場合、繰り返し記録に関係無く、Al膜の無い場合に比べて、わすかではあるが再生時のノイズ上昇が観測される場合があった。これは、純度が高すぎる場合、スパッタリングの条件(スパッタガス圧力、到達真空度、RF/DC放電の違いなど)によっては作製したAl膜が白濁化することがあり(局所的な結晶化により光散乱が生じるため白濁して見える)、この白濁化現象が原因となり、わずか2nmの膜厚においても再生時のノイズ上昇が生じるものと考えられる。このため不純物を添加し白濁化現象を抑えたAlNi,AlSi,AlTiではそのようなノイズ上昇は観測されなかった。また、純度の低い3N,JIS規格Alを用いて作製したAl膜においてもノイズ上昇は観測されなかった。
【0077】
近年、青色レーザ等の短波長レーザを光磁気記録媒体の光源として使用することが検討されているが、これらのレーザ光はエネルギーが高いため、光磁気記録媒体が温度上昇し易くなる。この場合、本願発明における金属膜4は熱伝導性の優れたものであることが好ましい。熱伝導性の優れたものとしてはAg,Au,Cu及びそれらの化合物があるが、Au及びAu化合物はコスト高になるため、使用が難しい。このため、金属膜4としてはAg,Cu及びそれらの化合物が望ましい。但し、Agは変質(白濁、腐食などの特性変化)されやすい金属であるから、上述したAgTiのようなAg化合物(他に例えばAgPdTi)の使用がより望ましい。また、Cu及びCu化合物はAg化合物と比べて光学反射率が低く、MSR媒体においては光学的特性の低下がAg化合物に比べて大きくなる。
【0078】
(実施例4)
次に、実施例1の熱応答改善膜4としてAlNiを用い、その膜厚及びNi添加量を変えた場合の特性差を調べた。膜構成は実施例1と同じである。実験条件は実施例2の表4の条件Aと同じである。AlNiは、他の材料AlSi,AlTiに比べると同じ添加量においては、熱伝導率が低いと予想されたのでこの実験を行った。熱伝導率が低いと膜中に熱が滞留し易くなるため、特に記録マークピッチ(半径方向)が狭い場合においては記録クロストークに悪影響がでるものと予想される。そのため、材料をAlNiとし、かつ最も熱伝導率が低くなると思われるNi添加量を上げた10atomic%の膜についても調べた。結果を表6に示す。
【0079】
【表6】
Ni添加量10atomic%,20nmのAlNi膜を用いた場合に、記録パワーマージンがわずかに+−8%を下回る以外は、ほぼ良好な結果が得られた。この実験から、最も熱伝導率が悪くなると予想されるAlNi(Ni10atomic%)を用い、かつ極めて狭い0.5μm記録マークピッチの場合の検証においても20nm以下であれば良好な結果が得られることがわかった。
【0080】
また、少なくともAlNi(Ni10atomic%)よりも熱伝導率の高い材料であれば20〜30nm程度以下の膜厚で良好な結果が得られるであろうことが予想できる。
【0081】
加えて、熱伝導率が低くなると思われる10atomic%の膜においても、特に良好な効果が得られるのは、金属膜4の膜厚が6nm以下であることが表6から分かる。この結果は、誘電体層5を取り除いた構成においても同様である
以上示した本実施の形態の実施例における金属膜4は、実施例1において説明したように、再生磁性層3よりも熱伝導の高い材料からなる熱応答改善膜であっても良い。
【0082】
また、本実施の形態(実施例1〜4を含む)の光磁気ディスクには、金属膜(熱応答改善膜)4が明らかな境界を有する”膜”として存在するものだけでなく、再生磁性層3の構成物とは異なる金属(熱応答改善材料)の高濃度領域として存在するものをも含む。例えば、誘電体層5における再生磁性層3との界面部分に、再生磁性層3の構成金属とは異種の金属が誘電体層5の他の部分よりも多く存在している光磁気ディスクも含まれる。
【0083】
〔実施の形態2〕
本発明の実施の形態を図3に基づいて説明すれば以下の通りである。本実施の形態は実施の形態1において、放熱層を取除いた形態である。本実施の形態では、光磁気記録媒体として、基板側から光入射を行う光磁気ディスクを適用した場合について説明する。
【0084】
本実施の形態に係る光磁気ディスクは、図3に示すように、基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、金属膜4、誘電体層5、記録磁性層6、誘電体層7、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造を有している。膜面側から光入射を行う光磁気ディスクの場合は基板1、オーバーコート層9を入れ替えた構造となる。
【0085】
(実施例5)
本実施例は実施例1において、放熱層8を取除いた形態である。基板1の厚さは1.2mmとしている。また、金属膜4として膜厚2nmのAlNi(Ni5atomic%)を用いている。その他の層は実施例1と同様である。測定は表4の条件Bと同条件で行った。
【0086】
比較例として、本実施例の誘電体層7、オーバーコート層9の間に放熱層を有する構成を用いて、評価を行った。この構成は、実施例2における金属膜4の膜厚2nmのもので、かつ、材料をAl(3N)よりAlNi(Ni5atomic%)に変更したものである。結果を表7に示す。
【0087】
【表7】
表7より、本実施例では放熱層8のある実施例2より再生パワーマージンが若干狭くなっていることがわかる。しかしながら、実用上好ましい再生パワーマージン値は±12%以上程度であることから、本実施例の構成でも、実用上使用可能であることがわかった。
【0088】
再生パワーマージンが狭くなった理由は、放熱層8が無いことにより、再生磁性層3から記録磁性層6への熱の流れが減少し、熱応答性が悪くなり、C/Nが減少したためと考えられる。
【0089】
また、最小記録パワーを0.5mW程小さくできることがわかる。これは、放熱層8が無いので、光磁気媒体全体の熱容量が小さくなり、より低パワーの光ビームで記録に必用な熱を得ることができるためと思われる。
【0090】
本形態は、あまり高密度な記録再生を必要としない、もしくは、最小記録パワーを低く押さえる必要のある(レーザーの寿命や電力消費を重視する)光磁気記録媒体に有効である。
【0091】
本実施例においても、実施例1と同様に、誘電体層5を取除くことが可能である。つまり基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、金属膜4、記録磁性層6、誘電体層7、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造でも構わない。但し、この場合、誘電体層5がある場合に比して、耐環境性に難がある。
【0092】
また、金属膜4は、再生磁性層3よりも熱伝導の高い材料からなる熱応答改善膜であっても良い。さらに、本実施の形態の光磁気ディスクには、金属膜(熱応答改善膜)4が明らかな境界を有する”膜”として存在するものだけでなく、再生磁性層3の構成物とは異なる金属(熱応答改善材料)の高濃度領域として存在するものをも含む。例えば、誘電体層5の再生磁性層3側に他の部分よりも高濃度に金属を有している光磁気ディスクも含まれる。
【0093】
また、本実施の形態においても、金属膜4の膜厚としては30nm以下、さらには6nm以下であることが望ましい。
【0094】
〔実施の形態3〕
本発明の実施の形態を図4に基づいて説明すれば以下の通りである。本実施の形態は実施の形態1において、再生磁性層と金属膜の間に、誘電体層を設けた形態である。本実施の形態では、光磁気記録媒体として、基板側から光入射を行う光磁気ディスクを適用した場合について説明する。
【0095】
本実施の形態に係る光磁気ディスクは、図4に示すように、基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、誘電体層10、金属膜4、誘電体層5、記録磁性層6、誘電体層7、放熱層8、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造を有している。膜面側から光入射を行う光磁気ディスクの場合は基板1、オーバーコート層9を入れ替えた構造となる。
【0096】
(実施例6)
本実施例の形態は実施例1において、再生磁性層3と金属膜4の間に、誘電体層10として、膜厚3nmのAlNを設けた形態である。また、金属膜4として膜厚2nmのAlNi(Ni5atomic%)を用いている。その他の層は実施例1と同様である。測定は実施例1と同条件にて行った。比較例として、実施例1で用いた従来例と、本実施例の誘電体の無い構成例を用いた。この構成は実施例3の金属膜4の材料がAlNi(Ni5atomic%)のものである。結果を表8に示す。
【0097】
【表8】
表8より、本実施例の各特性は、実施例3より若干劣っていることが分かった。しかし、従来ディスクよりも向上しており、実用上充分な値となっている。このため、本実施例の構成でも実用上使用可能であることが分かった。
【0098】
また、本実施例では、熱に対し安定な誘電体層10を再生磁性層3に接して配しているため、再生磁性層3中に別の原子が混入しにくくなり、繰り返し記録特性や長期信頼性がより向上する。実施例3の表5の結果より、純度3N以下のAlであれば繰り返し記録特性が実用上充分良好であることが分かっている。しかしながら、より過酷な条件においては、繰り返し記録特性や信頼性が問題となる可能性もある。本形態は、上記のような問題が起こったときに有効と思われる。
【0099】
表8に示した各特性の低下の原因は、熱伝導率の悪い誘電体層10を、再生磁性層3と金属膜4の間に設けることで、金属膜4による再生磁性層3の熱を逃す効果が減少したためであると推察できる。誘電体層10の膜厚が厚いと熱応答改善膜4の効果がより減少するのは明らかである。従って、誘電体層10の膜厚は、薄い膜厚(10nm以下)であることが望ましい。
【0100】
また、成膜安定性を考慮すると、誘電体膜10の膜厚は1nm以上であることが望ましい。
【0101】
本実施例においても、実施例1と同様に熱伝導率の悪い膜である誘電体層5を取除くことが可能である。つまり、基板1、透明誘電体層2、再生磁性層3、誘電体層10、金属膜4、記録磁性層6、誘電体層7、放熱層8、オーバーコート層9が、この順にて積層された構造もありうる。但し、この場合、誘電体層5がある場合に比して、耐環境性に難がある。
【0102】
また、本実施例の放熱層8の無い構造もあり得る。この構造における、効果については実施例5に準じる。
【0103】
また、金属膜4は、再生磁性層3よりも熱伝導の高い材料からなる熱応答改善膜であっても良い。さらに、本実施の形態の光磁気ディスクには、金属膜(熱応答改善膜)4が明らかな境界を有する”膜”として存在するものだけでなく、再生磁性層3の構成物とは異なる金属(熱応答改善材料)の高濃度領域として存在するものをも含む。例えば、誘電体層5の再生磁性層3側に他の部分よりも高濃度に金属を有している光磁気ディスクも含まれる。
【0104】
【発明の効果】
本発明では、再生磁性層に近接して金属層を有しているため、光磁気記録媒体の記録再生特性を向上させることができる。このためより高密度の記録再生が可能となる。
【0105】
また、金属膜の膜厚を30nm以下とすれば、クロスライトや最大記録パワーを悪化させることがない。
【0106】
また、金属膜の膜厚を6nm以下とすれば、記録パワーロスがほとんど無く、再生パワーマージンが広がる。
【0107】
さらに、記録磁性層の再生磁性層と反対側に、記録磁性層より熱伝導率の高い放熱層を設ければ、再生磁性層の熱をより記録磁性層側に逃がすことができ、再生特性をより向上させることができる。
【0108】
また、熱に対し安定な誘電体層を再生磁性層と金属層との間に膜厚1nm以上10nm以下で設ければ、繰り返し記録特性や長期信頼性がより向上する。
【0109】
また、本発明の製造方法によれば、繰り返し記録特性が良好であり、かつ、良好な再生信号を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光磁気ディスクの記録媒体の膜構成を示す図である。
【図2】実施例1における再生パワーマージンの測定結果を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る光磁気ディスクの記録媒体の膜構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る光磁気ディスクの記録媒体の膜構成を示す図である。
【図5】比較例の膜構成を示す図である。
【図6】従来の光磁気記録媒体の膜構成を示す図である。
【符号の説明】
2 透明誘電体層
3 再生磁性層
4 金属増(熱応答改善層)
5 誘電体層
6 記録磁性層
7 誘電体層
8 放熱層
9 オーバーコート層
10 誘電体層
Claims (10)
- 光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記誘電体層の間に、誘電体層に隣接させて前記再生磁性層よりも熱伝導率の高い金属膜を備えたことを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1に記載の光磁気媒体において、前記金属膜の膜厚が30nm以下であることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1に記載の光磁気媒体において、前記金属膜の膜厚が6nm以下であることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光磁気媒体において、前記金属膜がAl,AlNi,AlSi,AlTi,AgTiのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光磁気記録媒体において、前記記録磁性層の前記再生磁性層とは反対側に、前記記録磁性層よりも熱伝導の良い放熱層を有していることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1乃至請求項5に記載の光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記金属膜との間に、膜厚が1nm以上10nm以下の誘電体層を有していることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、
前記再生磁性層の前記記録層側に隣接して、膜厚が6nm以下であり前記再生磁性層よりも熱伝導率の高い金属膜を備えたことを特徴とする光磁気記録媒体。 - 光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記誘電体層における前記再生磁性層との界面部分に、前記再生磁性層の構成金属とは異種の金属が、前記誘電体層の他の部分よりも、多く存在することを特徴とする光磁気記録媒体。
- 光入射側から順に、少なくとも室温において面内磁化状態であり温度上昇に伴い垂直磁化状態となる磁性層を有する再生磁性層と、誘電体層と、垂直磁化膜からなる磁性層を有する記録磁性層とを積層した光磁気記録媒体において、前記再生磁性層と前記誘電体層の間に、誘電体層に隣接させて前記再生磁性層より熱伝導率が高い熱応答改善膜を備えていることを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の光磁気媒体の製造方法であって、前記金属膜は少なくともAlを成分としており、前記金属膜を、純度が99.9%以下のAlターゲットをスパッタして作製することを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
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