JP3649962B2 - ガス中の窒素酸化物および硫黄化合物の除去方法並びに装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化雰囲気ガスに存在する硫黄酸化物および窒素酸化物を硫化水素および窒素にまで変換させる脱硫および脱硝方法およびこれに用いられる装置に関する。詳しく述べると本発明は、経時的に安定な脱硫ないし脱硝効率を発揮する脱硝、脱硫方法並びに装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所、白動車などより生ずる排ガスには、硫黄酸化物(SOx),窒素酸化物(NOx)が含有されており、これが大気汚染や酸性雨の原因の一つとなっている。排ガス中のSOx、NOxの処理方法としては、既に多くの提案がなされている。
【0003】
NOxの処理方法としては、乾式プロセスとして、例えば、触媒を用いた接触分解法および接触還元法、多孔性吸着剤による吸着法、溶融アルカリによる吸収法、また湿式プロセスとしてアルカリ水溶液等を用いた吸収法、亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリなどを用いた酸化吸収法、錯塩生成吸収法、還元法などが知られており、一方、SOxの処理方法としても、アルカリ水溶液、溶融アルカリ等を用いた吸収法などが知られている。
【0004】
この中で、特に溶融炭酸塩を用いた吸収法は、ガス中のSOx,NOxを同時に吸収除去できるものではあるが、従来、SOx,NOxを吸収させた後の溶融炭酸塩の処理が考慮されておらず、また経時的な吸収率の低下が大きいため、実用化困難であった。また排ガス中にCO2が含まれている場合、脱硝効率が15%以下になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これまでの方法では、時間の経過に従って脱硫および脱硝効率が低下するため、脱硫および脱硝設備のほかに、溶融炭酸塩や触媒などを再生する設備が必要となり、複雑なシステムとなる。また触媒の再生時に生じる廃液または廃棄物が問題となる。このため時間に対して安定な脱硫および脱硝効率を維持し、窒素酸化物を無害な物質に変換する脱硝方法が要望されていた。
【0006】
そこで、本発明は安定した脱硫および脱硝効率をもち、さらに窒素酸化物を無害な物質に変換する脱硝・脱硫方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明にかかるガス中の窒素酸化物の除去方法は、溶融炭酸塩を含有する吸収剤に、窒素酸化物を含有する処理対象ガスを前記溶融炭酸塩に対する酸化雰囲気となるように調整して接触させる一方、前記吸収剤に前記酸化雰囲気との接触とは区画して前記溶融炭酸塩に対する還元雰囲気となる水素含有ガスを接触させ、前記酸化雰囲気において前記溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触した処理対象ガス中の前記窒素酸化物を溶融炭酸塩中の炭酸イオンと置換反応を起こさせて硝酸イオンおよび亜硝酸イオンとして前記溶融炭酸塩中・吸収剤中に吸収させる共に、前記溶融塩中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを前記還元雰囲気と接触させた際に還元雰囲気中の水素と反応させて窒素として還元雰囲気側に放出させると共に前記溶融炭酸塩を再生するようにしている。
【0008】
また、請求項2記載の発明にかかるガス中の硫黄化合物の除去方法は、溶融炭酸塩を含有する吸収剤に、硫黄酸化物を含有する処理対象ガスを前記溶融炭酸塩に対する酸化雰囲気となるように調整して接触させる一方、前記吸収剤に前記酸化雰囲気との接触とは区画して前記吸収剤の溶融炭酸塩に対する還元雰囲気となる水素含有ガスを接触させ、前記酸化雰囲気において前記溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触した処理対象ガス中のSOxを溶融炭酸塩中の炭酸イオンと置換反応を起こさせて硫酸イオンおよび硫黄イオンとして前記溶融炭酸塩中・吸収剤中に存在させると共に、前記溶融炭酸塩中の硫酸イオンおよび硫黄イオンを前記還元雰囲気と接触させた際に還元雰囲気中の水素と反応させて硫化水素(H 2 S)として還元雰囲気側に放出させると共に前記溶融炭酸塩を再生するようにしている。
【0010】
これらの場合、処理対象ガス中のNOxは溶融炭酸塩と反応して溶融炭酸塩中に硝酸イオン及び亜硝酸イオンを生成し、またSOxは溶融炭酸塩と反応して溶融炭酸塩中に硫酸イオン及び硫黄イオンを生成する。即ち、処理対象ガス中からNOxやSOxを除去して浄化する。そして、溶融炭酸塩中のこれらイオンは、還元雰囲気の水素と接触したとき、水素と反応して窒素および硫化水素を生成して溶融炭酸塩を再生する。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の方法において、吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触が、それぞれの雰囲気に対する吸収剤の接触面を構造的に区画することで時間的に並行して行われるようにしている。この場合、処理対象ガスの浄化と溶融炭酸塩の再生とが同時に進行する。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の方法において、吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触が時間的に区画されて交互に繰り返し行われるようにしている。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の方法において、酸化雰囲気中には二酸化炭素ガスが、また還元雰囲気中には二酸化炭素ガスおよび水がそれぞれ添加されるようにしている。この場合、二酸化炭素ガスが炭酸塩の分解を防ぎ、水は炭素析出を防ぐ。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項3記載の方法において、溶融炭酸塩を少なくとも含有する吸収剤により電解質層を形成し、この電解質層の一方の面に酸化雰囲気を連通させる金属製または金属酸化物製多孔体を正極として接触させ、他方の面に還元雰囲気を連通させる金属製または金属酸化物製多孔体を負極として接触させ、処理対象ガスを浄化すると同時に燃料電池として発電させるようにしている。
【0015】
更に、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法において、窒素酸化物および/または硫黄化合物を含有するガスが、燃焼プラントより排出される燃焼排ガスとしている。この場合、環境空気の浄化を可能とする。
【0016】
また、請求項8記載の発明にかかるガス処理装置は、請求項1または2記載の方法において用いられる装置であって、溶融炭酸塩を含浸させた多孔体により吸収剤を形成し、その一方の面を酸化雰囲気との接触面、他方の面を還元雰囲気との接触面とすると共に、当該多孔体によって酸化雰囲気の流通領域と還元雰囲気の流通領域を区画してなる構造を有するようにしている。
【0017】
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載のガス処理装置において、吸収剤を含浸させた多孔体の両側を、さらに別の多孔体で挟持する構造を有するようにしている。
【0018】
更に、請求項10記載の発明は、請求項9記載のガス処理装置において、吸収剤を含浸させた多孔体を挟む別の多孔体は金属製または金属酸化物製であり、酸化雰囲気側に燃焼プラントから排出される燃焼排ガスを導入すると共に還元雰囲気側に水素を含む還元性ガスを導入して、処理対象ガスを浄化すると共に燃料電池として発電するようにしている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本発明は、溶融炭酸塩を少なくとも含有する吸収剤を用いて、ガス中の窒素酸化物および/または硫黄酸化物を除去する方法であって、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を含有する処理対象ガスに必要に応じて酸素含有ガスを添加して溶融炭酸塩を少なくとも含有する吸収剤に酸化雰囲気として当該ガスを接触させる一方、酸化雰囲気との接触とは区画して吸収剤を水素含有ガスからなる還元雰囲気と接触させるものである。尚、処理対象ガスとしては、燃焼プラントから排出される燃焼排ガスが例に挙げられるが、この場合排ガス中に酸素が残存しているので特に酸素を添加することもなくそのまま処理対象ガスとして吸収剤に接触させても良いし、不足分の酸素を添加してから吸収剤に接触させるようにしても良い。
【0021】
酸化雰囲気において溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触したNOxは、溶融炭酸塩中に吸収され、炭酸イオンと置換反応を起こし、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンとなる。このようにして溶融塩中に存在する硝酸イオンおよび亜硝酸イオンは、還元雰囲気と接触した際、水素(H2)と反応して窒素(N2)として還元雰囲気側に放出される。
【0022】
また、酸化雰囲気において溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触したSOxは、溶融炭酸塩中に吸収され、炭酸イオンと置換反応を起こし、硫酸イオンおよび硫黄イオンとなる。このようにして溶融塩中に存在する硫酸イオンおよび硫黄イオンは、還元雰囲気と接触した際、H2と反応して硫化水素(H2S)窒素として還元雰囲気側に放出される。
【0023】
このように本発明においては、NOxおよびSOxの吸収剤として機能する溶融炭酸塩が、還元雰囲気に接触することで、吸収した窒素および硫黄成分を放出できるため、長時間にわたる操作においても当該吸収剤のNOxおよびSOxの吸収能の低下が生じない。
【0024】
なお、本発明においては、被処理ガス中にNOxおよびSOxが双方存在すると、上記したような反応が並行して進行するため、脱硝と脱硫とが同時に行われることが可能である。
【0025】
本発明において、吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触は、時間的に区画されて交互に繰り返し行われるものであってもよいが、好ましくは吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触がそれぞれの雰囲気に対する吸収剤の接触面を構造的に区画することで、時間的に並行して行われるものである。即ち、この形態においては、吸収剤による酸化雰囲気からのNOxおよび/またはSOxの除去と同時に、吸収剤から還元雰囲気への吸収した窒素および硫黄成分を放出が行われるため、吸収剤のNOxおよび/またはSOxの吸収能の経時的変化が少なく、効率のよい操作が可能となるためである。
【0026】
この形態は、具体的には、例えば板状あるいはシート状の多孔体により少なくとも溶融炭酸塩を含有させた吸収剤を保持し、その一方の面をNOxおよび/またはSOxを含有する酸化雰囲気ガスとの接触面と、他方の面を還元雰囲気との接触面とすると同時に、当該多孔体(以下、吸収剤保持多孔体と呼ぶ)によって酸化雰囲気ガスの流通領域と還元雰囲気ガスの流通領域を区画してなる構造、即ち、当該多孔体を酸化雰囲気ガスの流通領域である第1セルと還元雰囲気ガスの流通領域である第2セルとを気密に区画するセルセパレーターとして機能させた構造を有する後述するような装置を用いることによって、容易に実施することが可能である。
【0027】
なお、この場合における酸化雰囲気ガスの流れに対する還元雰囲気ガスとの流れの方向は、特に限定されるものではなく、並行流、対向流、交差流のいずれであってもよい。
【0028】
一方、時間的に区画して吸収剤を酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に接触させる場合は、溶融炭酸塩の接触面を2つ設ける必要はなく、1つのみであっても良い。この場合、少なくとも溶融炭酸塩の接触部位においては、酸化雰囲気ガスと還元雰囲気ガスとが同じ系内を流通することとなるために、その雰囲気の切替時においては、一方の雰囲気ガスの流通を停止した後、一旦、例えば窒素ガスのような不活性ガスによって系内より当該雰囲気ガスを完全に排除した後、他方の雰囲気ガスを系内に導入させる必要がある。
【0029】
本発明において、処理対象としてのNOxおよび/またはSOxを含有するガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば火力発電所、ボイラ、工業加熱炉などの燃焼プラントからの燃焼排ガスやトンネル内での自動車の排ガス排気設備などが例示できる。
【0030】
本発明においては、このような被処理ガスには、吸着剤に含有される溶融炭酸塩に対する酸化雰囲気となるように、必要に応じて純酸素、空気などといった酸素含有ガスを添加される。さらに酸化雰囲気中には、CO2を添加することが炭酸塩の分解を抑制し吸収剤の長寿命化を図る上で望ましいが、当該酸化雰囲気におけるO2に対するCO2のモル比(O2/CO2)が小さな値となる程に脱硝脱硫効率が低下するため、あまり多量のCO2を添加することは望ましくない。酸化雰囲気中のO2濃度ないしはNOxおよび/またはSOx濃度によっても左右される。
【0031】
さらに、溶融炭酸塩と接触させる酸化雰囲気におけるNOxおよび/またはSOxの濃度としては、特に限定されるものではない。しかしながら、当該反応系を燃料電池として発電させることを併せて行う態様においては、NOxおよび/またはSOxは許容濃度以下とする必要があり、NOxは約20〜50ppm、SOxは約5ppm程度とすることが望ましい。
【0032】
また酸化雰囲気中は、N2、Ar、CO2、O2等のガス成分を含有することができ、このうちN2は酸素雰囲気ガス全体の約70容量%程度までは含有可能である。
【0033】
一方、還元雰囲気は、H2を主成分として、例えば還元雰囲気ガス全体の約10容量%以上で構成される。還元雰囲気におけるH2濃度が高い程脱硝および脱硫効率が高くなる。
【0034】
なお還元雰囲気中には、好ましくは、CO2が添加されることが、上記したと同様に炭酸塩の分解を抑制し吸収剤の長寿命化を図る上で望ましく、さらにH2Oが添加されることが炭素の析出を防ぐ上で望ましい。例えば、CO2は還元雰囲気ガス全体の約10容量%〜約60容量%、またH2Oはガスとして還元雰囲気ガス全体の約20容量%〜約35容量%程度の割合で配合される。
【0035】
本発明において吸収剤中に含まれる炭酸塩は、接触する酸化雰囲気および還元雰囲気において分解しない安定なものであれば特に限定されるものではなく、例えばリチウム、カリウム、ナトリウムなどの各種アルカリ金属の炭酸塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩等をそれぞれ単独で、またはこれら化合物の任意の組成比による2種またはそれ以上の混合物、あるいは2ないしそれ以上の成分の共晶塩として使用可能である。
【0036】
しかしながら、当該反応系を燃料電池として発電させることを併せて行う態様においては、導電率が大きく、具体的には例えば1.0Ω−1・cm−1以上でかつ融点の比較的低い、具体的には例えば融点が550℃以下であるものが望ましく、例えば、LiとKが62:38(モル比)の割合の炭酸リチウムと炭酸カリウムとの共晶塩(融点488℃)、LiとNaが53:47(モル比)の割合の炭酸リチウムと炭酸ナトリウムとの共晶塩(融点496℃)などを用いることが望ましい。
【0037】
本発明において用いられる吸収剤は、上記したような炭酸塩を少なくとも含有するものであれば良く、炭酸塩自体によって構成されることも可能であるが、反応時において炭酸塩は溶融状態にあるため、前記したように吸収剤に酸化雰囲気と還元雰囲気とを同時に接触させる態様などにおいては、溶融状態にある炭酸塩を安定的に所定部位に保持するために、この炭酸塩に対して安定的で表面積の大きな保持体・多孔体、望ましくは板状あるいはシート形状の多孔体に炭酸塩を含浸させることが望まれる。
【0038】
吸収剤を保持する多孔体を構成する材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、金、Ni、Pdなどの金属、あるいはγ−LiAlO2、α−LiAlO2、ZrO2などの金属酸化物等の各種材質によって構成され得る。しかしながら、当該反応系を燃料電池として発電させることを併せて行う態様においては、当該保持体ないし多孔体は絶縁性である必要があり、γ−LiAlO2、α−LiAlO2などを用いることが望ましい。さらに、γ−LiAlO2を多孔体として用いる場合、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化マグネシウムなどを添加して、LiAlO2の炭酸塩に対する安定性(相変化の防止、粒成長の防止)を向上させることができる。
【0039】
さらに、本発明において、吸収剤保持多孔体を、更に別の多孔体で挟むことで脱硫および脱硝効率を高めることができる。これら多孔体は、酸化雰囲気及び還元雰囲気における反応の比表面積を高めると共に、反応を促進する触媒作用を持つ。なお、この多孔体には、それ自身の空孔容積の約20%から40%に相当する量の溶融炭酸塩を浸透させる必要がある。ここで、吸収剤保持多孔体を挟む別の多孔体は、吸収剤保持多孔体と同じ材質でも良いし、また異なる材質でも良い。即ち、少なくとも溶融炭酸塩に対して安定(相変化の防止、粒成長の防止)であれば、絶縁性を有している材料であっても、金属または金属酸化物のような導電性を有するものでも良い。そして、導電性を有する金属製または金属酸化物製の多孔体を採用する場合、当該反応系を燃料電池として機能させ、処理対象ガスを浄化すると同時にそれを利用して発電させることが可能となる。この態様においては、吸収剤保持多孔体を挟持するこの金属製ないし金属酸化物製(金属酸化物も電気伝導性であることが要求される。)多孔体は、発電反応をもたらす構造上で必須のものであり、上記したような触媒作用を持つと同時に集電機能も発揮する。前記酸化雰囲気と接触する正極側は、例えば、高温酸化雰囲気で安定なNiO、CoO、MgO、Auなどの電子導電性の各種金属酸化物が、また還元雰囲気と接触する負極側は、例えば、多孔性ニッケル、Au、Pdなどの金属製多孔体が、それぞれ好ましく例示できる。
【0040】
本発明において、吸収剤の酸化雰囲気および還元雰囲気との接触は、前記したような吸収剤に含有される炭酸塩が凝固または蒸発しない温度条件範囲で行なわれる。この条件は使用される炭酸塩の種類、酸化雰囲気中に含まれるNOxおよび/またはSOxの濃度等によっても左右される。また、吸収剤と接触させる酸化雰囲気および還元雰囲気の流通流量としては、流量が多くなれば単位時間当たりの脱硝、脱硫量は増加するが、除去効率は低下するので、所望する除去率に応じて適宜流量を選択すべきである。
【0041】
なお、本発明において、当該反応系を燃料電池として発電させることを併せて行う態様においては、燃料電池として発電を行うための固有の運転条件、例えば、運転温度、ガス温度、ガス組成、還元雰囲気側と酸化雰囲気側との圧力差等を満たす必要があるが、これらの運転条件は溶融炭酸塩型燃料電池の分野において公知の技術内容に基づき適当に設定可能である。
【0042】
以上述べたような本発明に係る窒素酸化物および硫黄化合物の除去方法を実施するにおいて好適に用いられ得る処理装置は、上記したように、溶融炭酸塩を少なくとも含有させた吸収剤を多孔体により保持し、その一方の面を酸化雰囲気との接触面、他方の面を還元雰囲気との接触面とすると共に、当該多孔体によって酸化雰囲気の流通領域と還元雰囲気の流通領域を区画してなる構造を有するものである。
【0043】
この処理装置において、使用される炭酸塩およびこれを含浸させる多孔体シート等に関しては上記に説明した通りである。
【0044】
さらに本発明に係るこの処理装置は、基本的に燃料電池の構造を有するので、燃料電池として必要とされる条件を満たすことにより、窒素酸化物および硫黄化合物の除去と同時に燃料電池として機能させることが可能である。
【0045】
図1は、本発明に係るガス処理装置の一実施態様の使用状態における構造を模式的に示す図面である。当該実施態様のガス処理装置は、燃料電池としての機能を兼ね備えたものであって、ハウジング10内に形成された2つのセル、即ち処理ガス供給管6と処理済みガス排気管7とを備えSOx及び/またはNOxを含んだ処理対象ガスたる酸化雰囲気ガス4を流通させる第1セル11と、還元ガス供給管8と還元側ガス排気管9とを備え水素を含んだ還元雰囲気ガス8を流通させる第2セル12とが、溶融炭酸塩を染み込ませてなる多孔体即ち吸収剤保持多孔体1によって気密に区画されている。更に、この吸収剤保持多孔体1の両面には、酸化雰囲気側の金属製多孔体(以下、酸化雰囲気側多孔体と呼ぶ)3と還元雰囲気側の金属製多孔体(以下、還元雰囲気側多孔体と呼ぶ)2とで挟持されている構造を有している。この装置構造の場合は、燃料電池として必要とされる運転条件などをさらに満たすことにより、窒素酸化物および硫黄化合物の除去と同時に燃料電池として発電することが可能であるということである。
【0046】
この装置において、吸収剤保持多孔体1に含浸させた炭酸塩が凝固または蒸発しない範囲において、SOx、NOxを含んだガス4が供給管6から送られ、装置の第1セル内11に到達すると、ガス4中に含まれるSOx,NOxは吸収剤保持多孔体1に吸収され、吸収剤保持多孔体1内においてSOxを硫酸イオンおよび硫黄イオンに変換し、NOxを硝酸イオンおよび亜硝酸イオンに変換される。そして、SOx,NOxが除去され浄化されたガス4’は排気管7から排出される。他方、第2セル12側では、供給管8から供給される還元ガス5中に含まれるH2と、硫酸イオンおよび硫黄イオンとを反応させ、第2セル12内へH2Sとして放出させ、さらにH2を硝酸イオンおよび亜硝酸イオンと反応させ、N2として放出し、排気管9からH2S,N2を含むガス5’として排出される。このようにして、常時、SOx,NOxを吸収した炭酸塩を再生していることとなり、脱硫および脱硝効率の時間変化も小さくなる。
【0047】
なお、同時にこの装置においては、還元雰囲気側多孔体2より構成される負極側で、還元雰囲気に含まれる水素1分子が、吸収剤保持多孔体の1つの炭酸イオンと反応して水および二酸化炭素を1分子づつ生成すると共に2個の電子を電極へと送り、この電子は外部回路(図示せず)を通って反対側の酸化雰囲気側多孔体3より構成される正極に到達し、この正極側では、酸化雰囲気に含まれる二酸化炭素1分子および酸素1/2分子が電極より供給される2個の電子と反応して1つの炭酸イオンを生成し、全体として水素1分子と酸素1/2分子により水が生成するという化学反応によって発電が行われるものである。
【0048】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明する。
(実施例1)
吸収剤として炭酸リチウムと炭酸カリウムを62:38のモル比で混合した溶融炭酸塩を用い、当該吸収剤を保持するための多孔体としてリチウムアルミネイト(0.9mm厚×110m長×110mm巾、空孔率60%、中央空孔径2μm)を用いた。酸化雰囲気側多孔体にはNiO(0.9mm厚×110mm長×110mm巾、空孔率50%、中央空孔径6μm)を用い、還元雰囲気側多孔体にはNi(0.9mm厚×110mm長×110mm巾、空孔率54%、中央空孔径5μm)を用いた。吸収剤を保持し易くするため、中央空孔径を最も小径とし、NiOよりも溶融炭酸塩をはじきやすい(濡れ性)性質があるNiで製作されている還元雰囲気側多孔体が最も大径の空孔径とされている。尚、作動温度は650℃である。また、酸化雰囲気の供給ガス組成(容積比、以下同じ)はN2/CO2/O2=55/60/15、SO210ppm、ガス流速1046ml/minである。還元雰囲気での供給ガス組成はH2/CO2/H2O=64/16/20、ガス流速327ml/minである。この条件における脱硫効率はほぼ100%で安定する。
(実施例2)
実施例1で用いた装置を用い、作動温度は650℃に設定した。酸化雰囲気の供給ガス組成はN2/CO2/O2=55/60/15,NOx20ppm、ガス流速1046ml/minである。還元雰囲気での供給ガス組成はH2/CO2/H2O=64/16/20、ガス流速327ml/minである。この条件における脱硝効率は約60%で安定していた。図2に脱硝効率の時間変化を示す。
【0049】
さらに燃料電池としての作用があり、出力密度1.3kW/m2で発電した。(実施例3)
実施例1で用いた装置を用い、作動温度は650℃、還元雰囲気での供給ガス組成はH2/CO2/H2O=64/16/20、ガス流速1046ml/minに設定した。さらに、酸化雰囲気の供給ガス組成はN2/CO2/O2=55/60/15、NOx20ppmに設定し、脱硝効率とガス流速の関係を図3に示す。酸化ガス雰囲気側の供給ガス流速が増えるほど、単位時間あたりの脱硝される絶対量は増えるが、脱硝効率は低下する。
(実施例4)
実施例1で用いた装置を用い、酸化雰囲気側のガス組成を変化させ脱硝効率の変化を測定した。供給NOx濃度は50ppmである。得られた結果を図4に示す。図4に示されるように、O2/CO2の比が大きいほど脱硝効率は高くなる。
【0050】
また還元雰囲気側のH2濃度を変化させ脱硝効率の変化を測定した。得られた結果を図5に示す。図5に示されるように、H2濃度が大きいほど脱硝効率は高くなる。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は安定した脱硫および脱硝効率をもち、さらに窒素酸化物を無害な物質に変換でき、同時に脱硫および脱硝ができる方法として期待される。また処理装置を特定の構造とすることにより、脱硫および脱硝操作と同時に燃料電池として電気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るガス処理装置の一実施態様の使用状態における構造を模式的に示す図面である。
【図2】 本発明の実施例において得られた脱硝効率の時間変化を示すグラフである。
【図3】 本発明の実施例において得られた脱硝効率と酸化雰囲気ガス流量との関係を示すグラフである。
【図4】 本発明の実施例において得られた脱硝効率と酸化雰囲気ガスにおけるO2/CO2の比との関係を示すグラフである。
【図5】 本発明の実施例において得られた脱硝効率と還元雰囲気ガスにおけるH2濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 吸収剤保持多孔体
2 還元雰囲気側多孔体
3 酸化雰囲気側多孔体
4 SOx、NOxを含んだ酸化雰囲気の処理対象ガス
4’SOx、NOxを除去して浄化されたガス
5 水素含んだ還元性ガス
5’H2S、N2を運び出す還元性ガス
10 ガス処理装置のハウジング
11 第1セル
12 第2セル
Claims (10)
- 溶融炭酸塩を含有する吸収剤に、窒素酸化物を含有する処理対象ガスを前記溶融炭酸塩に対する酸化雰囲気となるように調整して接触させる一方、前記吸収剤に前記酸化雰囲気との接触とは区画して前記溶融炭酸塩に対する還元雰囲気となる水素含有ガスを接触させ、前記酸化雰囲気において前記溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触した処理対象ガス中の前記窒素酸化物を溶融炭酸塩中の炭酸イオンと置換反応を起こさせて硝酸イオンおよび亜硝酸イオンとして前記溶融炭酸塩中・吸収剤中に吸収させる共に、前記溶融塩中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを前記還元雰囲気と接触させた際に還元雰囲気中の水素と反応させて窒素として還元雰囲気側に放出させると共に前記溶融炭酸塩を再生することを特徴とするガス中の窒素酸化物の除去方法。
- 溶融炭酸塩を含有する吸収剤に、硫黄酸化物を含有する処理対象ガスを前記溶融炭酸塩に対する酸化雰囲気となるように調整して接触させる一方、前記吸収剤に前記酸化雰囲気との接触とは区画して前記吸収剤の溶融炭酸塩に対する還元雰囲気となる水素含有ガスを接触させ、前記酸化雰囲気において前記溶融炭酸塩を含有する吸収剤に接触した処理対象ガス中のSOxを溶融炭酸塩中の炭酸イオンと置換反応を起こさせて硫酸イオンおよび硫黄イオンとして前記溶融炭酸塩中・吸収剤中に存在させると共に、前記溶融炭酸塩中の硫酸イオンおよび硫黄イオンを前記還元雰囲気と接触させた際に還元雰囲気中の水素と反応させて硫化水素(H 2 S)として還元雰囲気側に放出させると共に前記溶融炭酸塩を再生することを特徴とするガス中の硫黄化合物の除去方法。
- 前記吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触が、それぞれの雰囲気に対する前記吸収剤の接触面を構造的に区画することで時間的に並行して行われるものであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- 前記吸収剤に対する酸化雰囲気の接触および還元雰囲気の接触が時間的に区画されて交互に繰り返し行われるものであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- 溶融炭酸塩を含有する吸収剤により電解質層を形成し、この電解質層の一方の面に前記酸化雰囲気を連通させる金属製または金属酸化物製多孔体を正極として接触させ、他方の面に前記還元雰囲気を連通させる金属製または金属酸化物製多孔体を負極として接触させ、前記処理対象ガスを浄化すると同時に燃料電池として発電させることを特徴とする請求項3記載の方法。
- 前記酸化雰囲気中には二酸化炭素ガスが、また前記還元雰囲気中には二酸化炭素ガスおよび水がそれぞれ添加されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
- 窒素酸化物および/または硫黄化合物を含有する処理対象ガスが、燃焼プラントより排出される燃焼排ガスであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
- 請求項1または2記載の方法において用いられる装置であって、溶融炭酸塩を含浸させた多孔体により前記吸収剤を形成し、その一方の面を酸化雰囲気との接触面、他方の面を還元雰囲気との接触面とすると共に、前記多孔体によって前記酸化雰囲気の流通領域と前記還元雰囲気の流通領域を区画してなる構造を有することを特徴とするガス処理装置。
- 前記吸収剤を含浸させた多孔体の両側を、さらに別の多孔体で挟持する構造を有することを特徴とする請求項8に記載のガス処理装置。
- 前記吸収剤を含浸させた多孔体を挟む前記別の多孔体は金属製または金属酸化物製であり、前記酸化雰囲気側に燃焼プラントから排出される燃焼排ガスを導入すると共に前記還元雰囲気側に水素を含む還元性ガスを導入して、前記処理対象ガスを浄化すると共に発電することを特徴とする請求項9記載のガス処理装置。
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