JP3647895B2 - アレルギー性疾患予防及び治療剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はアレルギー性疾患予防及び治療剤に関し、詳細には感作細胞表面上におけるアレルゲンとIgEとの架橋構造の形成を阻害することによりアレルギー性疾患を予防及び治療する医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、種々のアレルギー性疾患が注目を集めているが、アレルギー症状を引き起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれる。スギ、ヒノキ、シラカバ、ブタクサ、ホソムギなどの花粉は空中に飛散して、花粉症を引き起こす花粉アレルゲンである。これらの花粉アレルゲンによって引き起こされるアレルギーはI型アレルギーと呼ばれ、IgE抗体がI型アレルギー発症に重要な役割を演じている。
【0003】
これらの花粉アレルゲンの中で重大な社会問題となっているスギは、目の痛みや充血等のアレルギー性結膜炎、くしゃみや鼻詰まり、鼻水等の鼻アレルギーの症状を呈し、その数は一千万人とも言われている。
【0004】
I型アレルギーの発症機序は、大きく次の3段階に分けられる。
第1段階:ヒト体内に侵入したアレルゲンはマクロファージなどの抗原提示細胞に取り込まれ分解されてペプチドとなる。このペプチドの一部(T細胞が認識するエピトープ)は自己のMHCタンパクと複合体を形成し、T細胞にその抗原性を伝え、T細胞を活性化する。活性化されたT細胞は種々のサイトカインを放出し、これらのサイトカインはB細胞に作用してB細胞の分化、増殖を促し、アレルゲン特異的なIgE抗体を産生する。産生されたIgE抗体は標的細胞である皮膚、粘膜に存在する肥満細胞や末梢血に存在する好塩基球の細胞表面に存在するIgEレセプターに結合して感作状態が成立する。
【0005】
第2段階:再び侵入したアレルゲンは感作状態の細胞表面で2分子以上のIgE抗体と結合し、アレルゲンを介して架橋構造を形成する。この架橋構造の形成が引き金となって肥満細胞や好塩基球に多量含まれるヒスタミン、ロイコトリエン等の化学伝達物質が遊離する。
【0006】
第3段階:遊離したこれらの化学伝達物質は平滑筋の収縮や毛細血管透過性の増加をもたらし、前記の種々のアレルギー症状を発症する。
【0007】
現在I型アレルギーの抗アレルギー剤として臨床に用いられているのは、ほとんどが前記の第2あるいは第3段階を作用点とした薬剤であり、それらはいずれも抗原非特異的な薬剤であり、特定のアレルギー反応により生ずる症状のみを抑制するものではない。
【0008】
スギ花粉の主要アレルゲンには2種の全く異なるタンパクがあり、それぞれCry jI 、Cry jIIと呼ばれる。Cry jIとCry jIIに対しての145名のスギ花粉症患者血清の反応性は、134名(92.4%)がCry jI及びCry jIIの両者に反応し、Cry jIのみに反応した患者が6名(4.
1%)、Cry jIIのみに反応した患者が5名(3.4%)であった(1993年第43回日本アレルギー学会、橋本ら、日獣大、予研、国立相模原病院、林原生化研)。つまり、スギ花粉症の発症には、Cry jI及びCry jIIのどちらも重要であることが示された。
【0009】
Cry jIのcDNAは既に本発明者らによりクローニングされ、その推定全アミノ酸配列が明らかにされた〔Sone T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,199,619−625(1994)〕。その結果、Cry jIはErwinia chrysanthemi由来のペクテートリアーゼ A及びEとそれぞれ39%、37%の部分的な配列が一致しており、更にErwinia carotovora由来のペクテートリアーゼ A及びBとそれぞれ24%、28%の部分的な配列が一致していた。更にスギ花粉から精製したCry jIがペクテートリアーゼ活性を持つことが報告された〔谷口美文 他、アレルギー、1992年、3月号、304頁〕。また、欧米、特に北米で発症頻度の高い花粉アレルギーの原因物質であるブタクサの花粉アレルゲンであるAmb aI及びAmb aIIがトマト由来のペクテートリアーゼのアミノ酸配列に類似しているという報告がある〔Griffith I.J.,et al.,Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.,96,296−304,1991〕。これらのことから北米での主要アレルギーの原因物質であるブタクサ花粉アレルゲンと日本での主要アレルギーの原因物質であるスギ花粉アレルゲンにおいて、ペクテートリアーゼの酵素活性を持つアレルゲンという共通点が存在することになる。事実、Cry jIの2種のcDNAクローンと報告されているブタクサのAmb aI.1 とAmb aIIの2種のアミノ酸配列を比較すると46−48%の一致が認められる〔Sone
T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,199,619−625(1994)〕。
【0010】
一方、Cry jIIのcDNAも本発明者らがクローニングし、推定全アミノ酸配列を明らかにした(特願平5−276773号)。このCry jIIは、図1〜4に示すようにアボガド、トマト、とうもろこし由来のポリガラクツロナーゼにそれぞれ43%、40%、34%の部分配列の一致が認められ、そしてスギ花粉から精製したCry jIIがポリガラクツロナーゼ活性を持つことが報告された〔黒瀬真弓 他、第6回日本アレルギー学会春季臨床大会、アレルギー、1994年、2月号、360頁〕。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように種々の花粉症のアレルゲンの構造が遺伝子レベルで解明されつつあるが、未だ当該アレルゲンと抗体との反応を抗原特異的に阻害する抗アレルギー剤の開発はなされていない。
従って、本発明の目的はアレルゲンの構造や機能に基づき、抗原特異的にアレルゲンと抗体との反応を阻害し、安全性と有効性に優れたアレルギー性疾患予防及び治療剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、アレルギー患者IgE抗体とアレルゲンとの結合反応を阻害する物質を探索すべく検討した結果、ペクテートリアーゼ及びポリガラクツロナーゼの共通の基質であるポリガラクツロン酸、その塩及びそのエステルがこの結合反応を阻害し、感作細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制することから、アレルギー性疾患の予防及び治療に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリガラクツロン酸、その塩又はそのエステルを有効成分として含有する花粉に起因するアレルギー性疾患の予防または治療剤を提供するものである。
【0014】
本発明に用いられるポリガラクツロン酸は、ガラクツロン酸残基からなるポリウロン酸であれば特に制限されないが、天然に存在するD−ガラクツロン酸がαl→4結合しているペクチン酸が好ましい。またポリガラクツロン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩等が挙げられる。また、エステルとしてはメチルエステル、エチルエステルなどのアルキルエステルが挙げられる。更に、これらポリガラクツロン酸、その塩及びそのエステルいずれの場合も天然のペクチンやペクチン酸を分解して低分子量化したもの、例えばガラクツロン酸の2量体や3量体等のオリゴマーでもよい。
【0015】
これらのポリガラクツロン酸類は花粉アレルギー患者の静脈血より得た好塩基球画分に花粉アレルゲンを作用させて生じるヒスタミンの遊離を強力に阻害することから、例えばスギ、ヒノキ、シラカバ、ブタクサ、ホソムギ等の花粉症の予防及び治療に有用である。また、ペクチン等は既に食物繊維等として食品に使用されており安全性は確立している。
【0016】
本発明の予防及び治療剤は、前記有効成分を単独又は必要に応じて当該有効成分に賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、被覆剤、乳化剤、懸濁化剤、溶剤、安定化剤、吸収助剤、軟膏基剤等を適宜添加し、常法により経口投与用、注射投与用、直腸内投与用、外用などの剤形に製剤化することによって得られる。
【0017】
経口投与用の製剤としては、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁剤等が;注射投与用の製剤としては、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、点滴注射用の製剤などが;直腸内投与用の製剤としては、坐薬軟カプセル等が;外用としては、軟膏剤、ローション剤、リニメント剤等が好ましい。その他、点眼液、点耳液とすることもできる。
【0018】
本発明の予防及び治療剤の投与量は投与方法、症状、体重などによっても異なるが、通常1〜1000mg/日が好ましい。
【0019】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0020】
実施例1
ファルマシア社製診断薬のスギアレルゲン(t17)に対して陽性(RAST値3)であるスギ花粉症患者の静脈血を、ヘパリン加注射筒で採血し、ヒスタミン測定用ヒスタミンキット“栄研”(栄研化学株式会社製)付属の遊離試験用緩衝液で2倍に希釈した。96穴V底マイクロプレートにこれを50μl 入れた。ポリガラクツロン酸(SIGMA社製)を最終濃度3.4、1mg/ml、340、100、30μg /mlとなるように燐酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、これらを100μl ずつプレートに加えた。更にスギ花粉アレルゲンCry jIを最終濃度50μg /mlとなるように50μl ずつマイクロプレートに入れ(Cry jIを加えないコントロール系の場合はPBSのみ加えた。)、37℃30分間反応させ、マイクロプレートを遠心してその上清50μl を取り、これをヒスタミンキット“栄研”で測定した。
【0021】
この結果を図5に示した。Cry jI非存在下ではポリガラクツロン酸濃度に関係なくヒスタミンの遊離はほとんど認められなかった。これに対してCry jIが50μg /ml存在下では、ポリガラクツロン酸濃度に依存してヒスタミン遊離が阻害され、3.4mg/ml濃度で30μg /ml濃度に比べ94%の阻害を示した。340μg /mlのポリガラクツロン酸濃度で約50%の阻害を示した。一方、ポリガラクツロン酸濃度3.4及び1mg/mlでは、スギ花粉アレルゲンCry jI存在下及び非存在下でも赤血球の溶血が認められたが、この濃度以下の溶液では溶血が認められなかった。しかし、ヒスタミンを主に遊離する好塩基球を含む白血球は細胞の形態変化が認められないことや、Cry jI非存在下でもこれらの高濃度のポリガラクツロン酸が存在してもヒスタミンの遊離が認められないことから本試験には影響を与えなかった。おそらく赤血球の溶血は高濃度のポリガラクツロン酸溶液がゲル化を生じることから、浸透圧に対する感受性が高いものと考えられる。
【0022】
【発明の効果】
種々のアレルギー性疾患、特に花粉症に対し抗原特異的で、安全に各種症状を予防又は治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cry jIIのアミノ酸配列とアボガド、トマト及びとうもろこし由来のポリガラクツロナーゼのアミノ酸配列との相同性を示す図の一部である。
【図2】Cry jIIのアミノ酸配列とアボガド、トマト及びとうもろこし由来のポリガラクツロナーゼのアミノ酸配列との相同性を示す図の一部である。
【図3】Cry jIIのアミノ酸配列とアボガド、トマト及びとうもろこし由来のポリガラクツロナーゼのアミノ酸配列との相同性を示す図の一部である。
【図4】Cry jIIのアミノ酸配列とアボガド、トマト及びとうもろこし由来のポリガラクツロナーゼのアミノ酸配列との相同性を示す図の一部である。
【図5】抗原抗体反応によるスギ花粉症患者好塩基球からのヒスタミンに対するポリガラクツロン酸の阻害効果を示す図である。
Claims (3)
- ポリガラクツロン酸、その塩またはそのエステルを有効成分として含有する花粉に起因するアレルギー性疾患の予防または治療剤。
- ポリガラクツロン酸が、D−ガラクツロン酸がα1→4結合しているペクチン酸である請求項1記載のアレルギー性疾患の予防または治療剤。
- 花粉が、スギ花粉である請求項2記載のアレルギー性疾患の予防または治療剤。
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1994
- 1994-06-10 JP JP12874794A patent/JP3647895B2/ja not_active Expired - Fee Related
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