JP3647849B2 - 合成樹脂製窓材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニル系樹脂製窓材の廃材又は該窓材を製造するときに発生する廃材を再使用した合成樹脂製窓材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂は、その優れた機械的強度や耐候性、さらに金属材料に比べて格段に小さい熱伝導率を有することから、寒冷地の住宅などの窓材として広く使用されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂製の窓材は、所期の形状に異形押出成形された形材を適宜切断して部材を作成し、この様にして得られた各部材を溶接するなどして窓枠や框に組み立てて使用されている。この部材を作成する時に発生する形材の端材(廃材)の量は全体の10%にも達するため、該端材は粉砕して押出成型の際に原料の一部として再使用されている。
【0004】
ところで、上記形材には、表面保護の目的でその外表面には手で容易に剥離可能なオレフィン系樹脂フィルムが貼付されいるのが一般的であり、上記端材(廃材)の再使用に際しては異種ポリマーの混入による物性低下を防止するため、該フィルムを除去する必要があった。
【0005】
ところが、一般に端材の大きさや形状は一定ではないため、上記フィルムの除去作業を機械化することは難しく、該作業は手作業で行われるのが普通であり、労力及び作業効率の点で問題があった。
【0006】
また、近年は、耐候性を改良したり、窓材をカラー化するために塩化ビニル樹脂基体の表面を透明、若しくは様々な色に着色したアクリル系樹脂で被覆することが行われている。
【0007】
このような窓材の廃材を再使用するに際しては、アクリル系樹脂の混入により、得られる窓材が好ましくない色に着色したりするのを防ぐため、前記保護フィルムの除去に加えてアクリル系樹脂の被覆層を除去するという新たな操作を行わなければならない。ところが、上記アクリル系樹脂の被覆層は、基体に強固に融着しているため、その除去は前記保護フィルムの除去に比べて遥かに困難である。
【0008】
このように、従来は、塩化ビニル系樹脂製窓材の廃材をリサイクルするに当たっては、保護フィルムやアクリル系樹脂被覆層を除去する必要があり、操作性や効率の点で問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、保護フィルムやアクリル系樹脂被覆層を除去するという煩雑な操作をすることなしに、塩化ビニル系樹脂製窓材の廃材を再利用して、強度、耐候性、及び美観といった性能の点で未使用樹脂を用いて製造した製品と遜色のない合成樹脂製窓材を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく、先ず、前記廃材をそのまま粉砕し、得られた粉砕物(以下、リサイクルパウダーともいう。)を未使用の塩化ビニル系樹脂パウダー(以下、未使用の樹脂パウダーをバージンパウダーともいう。)に混ぜて使用する方法について検討を行ったところ、製品窓材について強度、耐候性及び色調といった性能に悪影響を及ぼさないリサイクルパウダーの配合量はリサイクルパウダーの種類によって大きく異なっており、しかもその量は多い場合でも30重量%程度が限度であることが分かった。
【0011】
このため、上記方法でリサイクルする場合には、リサイクルパウダーの種類や配合量を制御・管理しなければならず、この様な制御・管理を手動で行うのは操作が煩雑で手間がかかり、また自動で行うためには新たな装置を導入する必要がある。
【0012】
そこで、本発明者等は、リサイクルパウダーの種類や配合量を特に制御・管理することのない方法として、リサイクルパウダーとバージンパウダーを別々に共押出しすることを発想し、その方法について検討を行った。
【0013】
その結果、オレフィン系樹脂のように塩化ビニル系樹脂に対して相溶性の乏しい樹脂が混入した場合には、押出成形をする際の成形性や成形体の強度が悪化するという問題があることが判明した。そして、該問題を解決すべく更に検討を行った結果、(i)リサイクルパウダーの粒径や嵩比重を制御することにより成形性の低下を防止し、実用上充分な強度を有する成形体が得られること、(ii)少なくとも屋外に対面する部分の表層をバージンパウダーで形成すれば実用上充分な耐候性が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を平均粒子径0.50〜1.5mmの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように共押出して異形押出成形することを特徴とする合成樹脂製窓材の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を嵩比重0.40〜0.60g/ccの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように共押出して異形押出成形することを特徴とする合成樹脂製窓材の製造方法も提供する。
【0016】
なお、本発明で言う窓材とは、建物用開口部材と同義であり、窓框、これを構成する縦框材、横框材、窓枠、これを構成する縦枠材、及び横枠材等を含む概念である。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、図1を用いて本発明の製造対象である合成樹脂製窓材を説明する。
【0018】
図1は、本発明の方法により製造された合成樹脂製窓材を用いて構成された窓1の概略を示す図である。該窓1は、窓枠5にガラス4が固定されて構成されている。また、窓枠5は、そのコーナー部6において、横断面の形が一定でその寸法が長さに比べて小さい形材である窓枠材11が溶着されて構成されている。
【0019】
また、図2は、窓1が建物開口部2に設置されたときの断面図を示す。窓1は、窓枠5がネジ止め等の固定手段により建物壁3に固定されて使用される。
【0020】
図3は、図2の一部拡大図であり、窓枠材11の断面がより明りょうに示されている。図3に示されるように、窓枠材11は、中空であり、その構成層は、材質の異なる2種類の層11a及び11bからなっている。層11aは、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材由来のリサイクル樹脂を主成分とする組成物(A)で形成された部分(a)であり、層11bは、未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)で形成された部分(b)である。なお、上記各組成物の詳細については本発明の製造方法のところで詳述する。
【0021】
一般に、層11aのようなリサイクル樹脂を多く含む樹脂の成形体は耐候性が悪いのであるが、雨や雪等の水分との接触や紫外線照射等が避けられない屋外に対面する部分の表層を耐候性の高い未使用の樹脂で形成する(被覆する)ことにより、リサイクル樹脂を使用しない製品と同等の耐候性を得ることが出来る。
【0022】
ここで、屋外に対面する部分とは、使用時に常に外気と直接接する部分を意味する。
【0023】
なお、図3に示される窓枠材11では、外部に露出する全ての面(外面)の表層が前記組成物(B)で構成されているが、リサイクル樹脂の粉砕条件を選べば全ての外面の表層を前記組成物(B)で形成しなくとも実用上問題のない強度のものを得ることが出来る。とくに、屋内に対面する外面については、その環境が屋外に比べて著しく穏やかであるため、必ずしもその表層部を前記組成物(B)で形成する必要はない。
【0024】
但し、一般に前記組成物(A)は着色していることが多いため、製品の色調が黒色や暗褐色である場合のように、リサイクル樹脂の着色が問題とならないような場合を除き、全外表面を組成物(B)で被覆するのが好ましい。なぜならば、塩化ビニル系樹脂又はアクリル系樹脂のバージンパウダーを使用した場合は色調の制御が容易であり明度の高い、所望の色調の外観を有する窓枠を容易に得ることが出来るからである。この場合、下地の色の影響を受けないためには、表層部の層11bの厚さは、0.2mm以上、特に0.5mm以上であることが好ましい。図4に、耐候性および審美性が特に要求される部分の表層のみが前記組成物(B)からなる態様の窓枠材11’の断面図を示す。
【0025】
また、外面の表層に位置する層11aは、必ずしも単一の層である必要はなく、例えば、塩化ビニル系樹脂を主成分とする層の上にアクリル系樹脂を主成分とする層が積層されたような二層構造を取ることも出来る。このときアクリル系樹脂層は、塩化ビニル系樹脂層の全面を覆うようにしてもよいし、特に耐候性が要求される部分のみを選択的に覆うようにしても良い。従来技術で説明したように、耐候性(特に退色や変色防止)や色調調節の観点からは、寧ろこの様な構造を取ることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明の合成樹脂製窓材は、少なくとも前記部分aと前記部分bとからなっていればよく、必ずしもこれら部分のみで構成される必要はない。例えば、補強や耐変形性を高めることを目的として、金属や木材等で構成される部分を導入してもよい。
【0027】
以上、窓枠材11について説明したが、図示しない他の窓材についても同様である。
【0028】
上記構造の合成樹脂製窓材を、本発明では、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を、平均粒子径0.50〜1.5mmの粉体に粉砕するか、または嵩比重0.40〜0.60g/ccの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように共押出して異形押出成形することにより製造する。
【0029】
上記組成物(A)は、合成樹脂製窓材の部分(a)の原料となるものである。ここで使用される廃材は、塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなるものであれば特に限定されないが、その組成が明らかで、しかもその変動が少ないことから、オレフィン系樹脂製の保護膜が貼付された塩化ビニル系樹脂製の窓材用形材の端材、又は表面層がアクリル系樹からなる脂塩化ビニル系樹脂製の窓材用形材あるいはその表面にオレフィン系樹脂製の保護膜が貼付された窓材用形材の端材等の廃材を使用するのが好適である。
【0030】
ここで、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、およびアクリル系樹脂としては、合成樹脂製窓材の原料として一般的に使用される公知の樹脂が使用出来る。
【0031】
このような塩化ビニル系樹脂を例示すれば、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニルを主体とした共重合体;及びアクリル系ゴム変性塩化ビニル樹脂等のゴム変性塩化ビニル樹脂等を挙げることが出来る。
【0032】
また、オレフィン系樹脂を例示すれば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよび、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。これら樹脂は1種類単独であっても複数種類が混合されたものであっても良い。
【0033】
また、アクリル系樹脂を例示すれば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−プロピル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸sec−ブチル、ポリアクリル酸t−ブチル、ポリアクリル酸オクチル、ポリアクリル酸エチルヘキシルなどのポリアクリル酸エステル類;ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタアクリル酸エチル、ポリメタアクリル酸n−プロピル、ポリメタアクリル酸イソプロピル、ポリメタアクリル酸n−ブチル、ポリメタアクリル酸イソブチル、ポリメタアクリル酸sec−ブチル、ポリメタアクリル酸t−ブチル、ポリメタアクリル酸オクチル、ポリメタアクリル酸エチルヘキシルなどのポリメタアクリル酸エステル類等が挙げられる。これら樹脂は1種類単独であっても複数種類が混合されたものであっても良い。
【0034】
これら各樹脂には、熱安定剤、滑材、紫外線安定剤、安定化助剤、着色剤(顔料)、可塑剤及び充填剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0035】
前記廃材における上記各樹脂の含有割合は特に限定されないが、リサイクルしたときの成形性や製品強度等の観点から、塩化ビニル系樹脂100重量部に対してアクリル系樹脂1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部、及び/又はオレフィン系樹脂0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部であるのが好適である。なお、これら3種の樹脂の他にも、塩化ビニル系樹脂に対して相溶性を有する樹脂であれば、5重量部程度まで含むことも出来る。塩化ビニル系樹脂に対して相溶性を有する樹脂としてはAES樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
【0036】
一般的な塩化ビニル系樹脂製窓材、或いは該窓材用の形材の廃材は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アクリル系樹脂が2〜5重量部、オレフィン系樹脂0.2〜2重量部程度となっているので、本発明の製造方法で何ら問題なく使用することが出来る。
【0037】
本発明の製造方法に於いては、押出機にかけるため上記廃材は粉砕されてから使用される。この時の粉砕粒子の性状は、成形性や成形体の強度に影響を与えるため重要である。すなわち、成形体の強度をリサイクル樹脂を使用しない製品と同等レベルにするためには、平均粒子径0.50〜1.5mm、特に0.50〜1.2mmの粉体に粉砕するのが重要である。また、良好な成形性を得るためには、粉砕した粉体の嵩比重を0.40〜0.60g/cc、特に0.40〜0.50g/ccの範囲にすることが重要である。上記の2つの条件、特に何れについても好適な条件を同時に満足するときには、成形性もよく、成形体の強度も高くなる。
【0038】
なお、ここで、平均粒子径はJISZ8801の標準ふるいを用いる方法で求めた値であり、嵩密度はJISK6721に定められた嵩比重測定器により測定される値である。
【0039】
塩化ビニル系樹脂にオレフィン系樹脂のように相溶性の低い樹脂を混ぜたリサイクル原料は、オレフィン系樹脂の分散不良による強度低下やばらつきが起こったり、押出機へリサイクルパウダーを導入するためのホッパーからのパウダー落下不良が起こったり、押出機スクリューへの食い込み不良が起こったりする傾向があるが、粉砕粒子の性状を上記のように制御することによりこの様な問題を回避することが可能となる。
【0040】
廃材を粉砕するときの粉砕方法は、特に限定されず、公知の粉砕機を用いて行うことが出来るが、効率および粉砕粒子の粉末性状の制御が容易であることから高速渦流粉砕機(ターボミル)を用いるのが好適である。なお、ターボミルを用いた場合には、固定刃と回転刃の間隔や回転刃の回転数を調整することにより、簡単に粉砕粒子の嵩比重、粒子径を調整することが出来る。
【0041】
前記組成物(A)としては、上記のように粉砕して得た粉体をそのまま使用することが出来るが、必要に応じて顔料やバージンパウダーを添加することも出来る。
【0042】
未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)は、本発明の合成樹脂製窓材の部分(b)の原料となるものである。該組成物(B)は、劣化していない未使用の樹脂が主成分であるため、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層を前記組成物(B)で形成することにより、耐候性の良好な窓材とすることが出来る。
【0043】
ここで使用される塩化ビニル系樹脂やアクリル樹脂は未使用のものであれば特に限定されず、組成物(A)の説明で前記したものと同じ種類のものが使用出来る。これら樹脂は粉末状であってもペレット状であってもよく、上記2種類の樹脂はそれぞれ単独で使用しても、混合して使用しても良い。
【0044】
また、該組成物(B)には、必要に応じて、熱安定剤、滑材、紫外線安定剤、安定化助剤、着色剤(顔料)、可塑剤及び充填剤等の添加剤が配合されていてもよい。さらに、耐候性や色調に影響を与えない範囲であればリサイクル樹脂を添加することも出来る。
【0045】
本発明の製造方法に於いては、前記組成物(A)と前記組成物(B)とを、それぞれ異なる押出機に供給して共押出し、溶融若しくはゲル化した両組成物を一組の共通ダイに導き、ダイ内部あるいはダイ開口部において該両組成物を、最終的に得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように接触させ、単一の形材に異形押出成形する。
【0046】
本発明の製造方法の好ましい態様として、リサイクルパウダー(A)、塩化ビニル系樹脂を主成分とするバージンパウダー(B1)、及びアクリル系樹脂を主成分とするバージンパウダー(B2)をそれぞれ別の押出機に供給して共押出し、上記(A)からなる部分の外側に上記(B1)及び(B2)が、(B2)が最外層になるように異形押出成形する方法を挙げることが出来る。
【0047】
このとき、ダイとしては、目的とする窓材の構造に応じたダイを適宜用いればよく、使用する押出機の数も窓材の構造や用いる樹脂組成物の種類に応じて適宜決定すればよい。また、成形温度、溶融樹脂の温度等の成形条件も従来の塩化ビニル系樹脂製窓材を異形押出成形により製造するときの条件と特に変わるところはなく、使用する各組成物の組成、ダイ、および押出機に応じて、最適な条件を適宜設定すればよい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
シャノンウィンド(登録商標:株式会社トクヤマ製)を製造するときに発生した、ポリエチレン製保護フィルムが貼付された形材の端材をターボミル(ターボ工業株式会社製)を用いて、平均粒子径1.0mm、嵩密度0.5g/ccの粉末に粉砕した。なお、該粉末の樹脂組成は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、オレフィン系樹脂(ポリエチレン)2重量部、アクリル系樹脂(PMMA)4重量部であった。また、嵩密度の調節はターボミルの固定刃と回転刃の隙間を調節することにより行い、嵩密度の測定はJISK6721に定められる嵩比重測定器を用いて行った。また、平均粒子径はJISZ8801の標準ふるいを用いる方法で求めた。
【0050】
得られた粉末(リサイクルパウダー)、及び未使用の塩化ビニル樹脂100重量部に対し、安定剤3.5重量部、滑剤1.5重量部、無機充填剤5重量部、強化剤と加工助剤合わせて6重量部を配合した組成物からなるバージンパウダーを、それぞれ60mmコニカル二軸押出機、及び35mmコニカル二軸押出機に供給し、図5(b)に示す横断面構造の窓枠用形材7を成形した。成形はシリンダー温度165〜200℃、金型温度180〜200℃、溶融樹脂温度190〜200℃の温度条件で行ったが、成形性は良好で問題なく成形することが出来た。
【0051】
なお、図5(b)において、Wtは各層の全体の厚さを示し、Wbはバージンパウダーで形成された層7bの厚さを示し、Waはリサイクルパウダーで形成された層7aの厚さを示す。本実施例では面71、72、73a、及び73bに対応する層のWtは全て同じ2.5mmとし、Wbは窓枠に構成したときに枠外側に位置するようになる層71については2.0mm(Wb/Wt=0.8)、枠の内側に位置するようになる層72については0.9mm(Wb/Wt=0.36)、枠の内外の側面に位置するようになる層73aおよび73bについてはともに1.3mm(Wb/Wt=0.52)とした。
【0052】
得られた窓枠用形材を長さ30cmに切断し、低温落錘試験用の試験片を作成した。得られた試験片50個について10個ずつ5回に分けて「硬質ポリ塩化ビニル製窓枠用形材(JISK6785)の低温落錘試験」に準じて低温落錘試験を行ったところ、試験片10個当たりの割れた試験片は各試験とも1個以下であった。なお、上記JIS規格における合格基準は試験片10個中2個以上割れないことである。
【0053】
また、同様に作成した試験片60個のそれぞれの両断面をアルミホイルで保護して内部に光や水分が当たらないようにしてWS形装置のウェザオメータ中に放置して耐候性の促進暴露試験(JIS A−1415)を行った。促進暴露試験は、ウェザオメータ中に放置後、250時間後、500時間後、1000時間後にそれぞれ20個ずつ試験片を取り出し、上記と同様に落錘試験を行った。その結果、試験片10個当たりの割れた試験片の平均個数は、250時間後のもので0個、500時間後のもので0.5個、1000時間後のもので1個であった。
【0054】
この結果は、屋外での長期の使用に充分耐える耐候性があることを示すものである。
【0055】
実施例2〜4および比較例1〜2
粉砕した粉末性状を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にして成形を行ったところ全ての場合とも問題なく成形することが出来た。また、得られた窓枠用形材について実施例1と同様にして耐候性試験前後の低温落錘試験を行った。その結果、実施例2〜4では成形性、耐候性とも良好であったが、平均粒子径が小さすぎる比較例1では粉砕時の熱履歴による強度低下が、また平均粒子径が大きすぎる比較例2ではオレフィン系樹脂の分散不良による強度低下が見られた。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例3〜8
バージンパウダーを使用せずに、リサイクルパウダーのみを用い、更に、リサイクルパウダーの粉末性状を表3にした他は実施例1と同様にして成形を行った。このとき、比較例3〜6では問題なく成形できたが、比較例7ではパウダーのホッパーからの落下不良がみられ、比較例8ではスクリューへの食い込み不良が見られた。
【0058】
成形性に問題なく得られた窓枠用形材について実施例1と同様にして耐候性試験前後の低温落錘試験を行った。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
上記比較例の結果から、リサイクルパウダーを使用した成形体であっても、粉末性状を制御すれば成形性に問題なく、窓材として実用可能な強度のものが得られることが分かった。しかしながら、耐候性については、1000時間後の値が1.5〜2.0と高くなっており、屋内で使用するには問題ないが、屋外で長期間使用するには問題があることが分かった。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂製窓材の効率的なリサイクル技術を提案するものである。従来、合成樹脂製窓材をリサイクルするためには、オレフィン系樹脂製保護フィルムやアクリル系樹脂層を除去するという面倒な作業をする必要があったが、本発明の製造方法によれば、この様な操作をすることなしに新しい合成樹脂製窓材に再利用することが出来る。
【0062】
また、本発明の製造方法により得られる合成樹脂製窓材は、リサイクル樹脂を使用しない従来の合成樹脂製窓材と比べて強度や耐候性等の性能において遜色のない優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は、本発明の合成樹脂製窓材である窓の概略図である。
【図2】 本図は、図1に示す窓を建物開口部に設置したときの断面図である。
【図3】 本図は、図2の一部拡大図である。
【図4】 本図は、別の態様の本発明の合成樹脂製窓枠材の断面図である。
【図5】 本図は、実施例1で製造した窓枠用形材を溶着して得た溶着試料のの概略図(a)およびそのX−X’断面図(b)である。
【符号の説明】
1・・・窓
11・・・窓枠材
11a・・・組成物(A)で形成された層
11b・・・組成物(B)で形成された層
2・・・建物開口部
3・・・建物壁
4・・・ガラス
5・・・窓枠
6・・・コーナー
7・・・窓枠用形材
7a・・・組成物(A)で形成された層
7b・・・組成物(B)で形成された層
71・・・窓枠に構成したときに枠外側に位置する層(乙)
72・・・窓枠に構成したときに枠内側に位置する層(甲)
73a、b・・・窓枠に構成したときに枠内外の側面に位置する層(丙)
Claims (2)
- 塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を平均粒子径0.50〜1.5mmの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように共押出して異形押出成形することを特徴とする合成樹脂製窓材の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂とオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂とを含んでなる廃材を嵩比重0.40〜0.60g/ccの粉体に粉砕し、得られた粉砕物を主成分とする組成物(A)と未使用の塩化ビニル系樹脂又は未使用のアクリル系樹脂を主成分とする組成物(B)とを、得られる合成樹脂製窓材の少なくとも屋外に対面する部分の表層が前記組成物(B)で形成されるように共押出して異形押出成形することを特徴とする合成樹脂製窓材の製造方法。
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