JP3647602B2 - ガス燃料吸蔵固形燃料及びその製造方法 - Google Patents

ガス燃料吸蔵固形燃料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス燃料吸蔵固形燃料及びその製造方法に関し、より詳しくは多孔質材料に多量の低級炭化水素系燃料ガスを吸蔵させてなる新規且つ有用なガス燃料吸蔵固形燃料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エネルギー源としてメタンやメタンを主成分とする天然ガス、或いはエタン、プロパン、ブタン等の低級炭化水素に注目が集められている。ところがそれらはガスであるため、その取り扱にはそれに応じた細心の注意が必要である。ガスは気体の状態のままでは非常に大きい体積を有し且つ比重が小さい。このため、例えばガスの貯蔵や輸送に際して、その貯蔵効率や輸送効率を上げるため、高圧による圧縮や液化などによりガスの体積を小さくし、密度を上げる手法が採られている。
【0003】
一方、固形燃料としては木炭等の植物系燃料のほか、石炭や石油等の鉱物系燃料や動物系燃料など、これまで各種タイプのものが製造され市販されており、暖房用や、料理用の加熱用からキャンプにおける煮炊用と云うように広く利用されている。しかし固形燃料は一般に火つきが悪く時間がかかり、また一般に火力が弱く、持続時間が短いなどの欠点があり、さらには煙が出やすいので衛生的にも悪いなどの問題もある。
【0004】
ところで、本発明者等は、活性炭やセラミックス等の多孔質材料に対して、それらの細孔内部でホストとなる物質と貯蔵しようとするガスとを常温又はこれら温度に近い温度、低圧、常圧又はこれら圧力に近い圧力という穏和な条件で接触させることにより、きわめて短時間で、しかも例えば多孔質材料の単位体積あたり180倍(標準状態に換算)以上もの体積に相当する多量のガスを貯蔵し、また輸送することができるガス貯蔵方法及び輸送方法を先に開発している(特願平8ー37526号)。
【0005】
図1は上記多孔質材料の特性を裏付ける1例を示すものである。装置としては後述図4に示す装置を使用した。比表面積1765m2 /g、平均細孔径が1.13nm(ナノメートル)、細孔容積0.971cc/g、真比重2.13g/cc、見かけ比重0.694g/ccであるピッチ系の活性炭0.0320g(0.0461cc)に対し、まず水0.0083gを吸着させた後、温度30℃において0.2気圧のメタンガスを導入した。また比較のため、水を吸着させない点を除き、同じ条件でメタンガスを導入した場合についても実施した。図1にはこのときの活性炭1g当りに吸着したメタン重量の経時変化を示している。図1中活性炭に水を予め吸着させてからメタンを吸着させた場合の重量変化は○(白丸)印でプロットし、また活性炭に直接メタンを吸着させた場合を●(黒丸)印でプロットしている。
【0006】
図1のとおり、活性炭に対してまず水を吸着させ、次いでメタンガスを導入した場合には、活性炭はメタン導入時以降急速にメタンを吸収し始め、0.2時間(h)経過後のメタン吸着量は活性炭1g当り15ミリモルを超え、0.5時間経過時には17ミリモル前後にも至り、以降この吸蔵量を維持している。この時点での導入メタンガスの圧力が0.2気圧(温度30℃)である点を考慮するとメタンの吸着速度及び吸着量は従来の吸着剤に比べて卓越していると云える。
【0007】
これに対して、従来のように活性炭に対して水を吸着させることなく、メタンガスを導入した場合には、メタンを僅かに吸着するだけで、上記と同じ雰囲気で時間が経過してもその吸着量には何の変化も現われていない。この点、例えば特開昭49ー104213号の方法によれば、圧力タンク内に珪酸ゲル、モレキュラーシーブ、活性炭などを収容し、約68気圧(1000psia)もの圧力をかけてメタンを貯蔵しているが、この技術においては同じ吸着剤を使用しているにも拘わらず、そのような高圧の加圧操作を必要不可欠としている。
【0008】
表1は、図1に示した活性炭1g当たりの吸着メタンの量を比較したものである。表1のとおり例えば0.2時間経過後の時点で、同じ活性炭にメタンを直接吸着させた場合のメタン吸着量は僅かに0.18ミリモルであったのに対して、水を予め共存させた場合には12.08ミリモルとなり、その比は67倍であった。また0.9時間経過した時点では、活性炭への直接吸着の場合は同じく0.18ミリモルであるのに対し、水を共存させた場合のメタン吸着量は16.46ミリモルとなり、その比は91倍である。
【0009】
【表 1】
Figure 0003647602
【0010】
さらに、活性炭の見掛けの体積1ccを基準として、水を共存させた場合におけるメタン吸着量を0℃、1気圧の標準状態に換算すると183ccとなる。この結果によれば、僅かに0.2気圧の圧力において、標準状態換算で活性炭の単位体積当たり、正に183倍もの体積のメタンが吸着されたことを示すものである。なお、その後(0.9時間経過後)吸着量は僅かに減少はするが、最終的には11.77ミリモルで平衡に達し、それ以降は変化はない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においてはガス燃料や固体燃料における前記のような諸問題点に鑑み、多孔質物質について、従来の技術、認識からは全く予想できない上記図1及び表1に示すような事実に着目し、燃料ガスを多量に吸蔵させた多孔質材料を固形燃料そのものとして利用し、応用するようにしたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、多孔質材料を水やアルコール等のホストとなる物質と共に用いることで、常温又はその近辺の温度において、また減圧下でも、常圧ないし10.68気圧(ゲージ圧で10kg/cm2 )以下という低圧力下においても多量の低級炭化水素系燃料を吸蔵させてなるガス燃料吸蔵固形燃料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多孔質材料に対して、ホストとなる物質を吸着させた後に又はホストとなる物質を吸着させると同時に、低級炭化水素系燃料ガスを接触させることにより得られたガス燃料吸蔵固形燃料を提供する。
【0014】
また本発明は、多孔質材料に対して、ホストとなる物質を吸着させた後に又はホストとなる物質を吸着させると同時に、低級炭化水素を含む燃料ガスを接触させることを特徴とするガス燃料吸蔵固形燃料の製造方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明における、上記多孔質材料としては、細孔を有する多孔性の材料であれば特に限定はなく、好ましくはその比表面積が100m2 /g以上の多孔性材料が使用できる。また水やアルコール類、或いはこれと同等の機能を有するホストとなる化合物に対して反応したり、溶解してしまうものでない限り(すなわち実質上溶解、反応などの悪影響を及ぼさないものである限り)、その材質、製法、形状如何を問わず使用でき、さらには細孔の形状や細孔の径の分布について均一性も必要としない。
【0016】
本発明における上記多孔質材料としては、それらの性質を有する多孔性材料であれば何れも使用できる。その例としては活性炭(含:多孔質カーボン)やセラミックスを挙げることができ、その中でも活性炭が特に好適に用いられる。活性炭はそれ自体も燃料となり、また安価でしかも容易に入手可能であるため、この点でもきわめて有利である。なお、セラミックスの場合には燃料として使用した後、灰分(固形物)として残るため、それが灰分として残っても差し支えない場合に使用される。
【0017】
また、本発明におけるホスト(host)となる物質の例としては水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、蟻酸、酢酸等の有機酸類、ベンゾキノン等のキノン類などが挙げられる。その中でも特に好ましくは水又はアルコール類が使用される。
【0018】
本発明によれば、活性炭やセラミックスなどの多孔質材料に対し、その細孔内部でホストとなる化合物と吸蔵させようとする燃料ガスとを常温、常圧又はこれら温度や圧力に近い穏和な条件で接触させる。これによりきわめて短時間で、しかも例えば多孔質材料の単位体積あたり180倍(標準状態に換算)以上もの体積に相当する多量の燃料ガスを吸蔵させることができる。本発明で吸蔵され用いられる燃料ガスとしては、ガス燃料として用いられる低級炭化水素であれば限定はなく、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の低級炭化水素又はそれらの2種以上の混合ガスが挙げられ、また天然ガスや都市ガスであってもよい。
【0019】
それら燃料ガスの多孔質材料への吸着、吸蔵操作時の圧力としては、常圧ないし10.68気圧(ゲージ圧で10kg/cm2 )以下という低圧力下とは限らず、例えば0.2気圧というような減圧下においても吸蔵させることができる。また10.68気圧(ゲージ圧で10kg/cm2 )を超える高い圧力下でも、圧力に対応してさらに多量の燃料ガスを吸蔵させることができる。
【0020】
このように本発明のガス燃料吸蔵固形燃料の製造に際しては、別途特殊な冷却装置等を何も必要とせず、また特殊な圧力設備も必要としないため、この点でもきわめて有利である。本ガス燃料吸蔵固形燃料においては、多孔質材料が活性炭である場合、それ自体燃料であるのに加え、これに吸蔵された燃料ガスも燃料そのものであり、しかも活性炭にはその容積の180倍以上というような多量の燃料ガスを吸蔵できるため、固形燃料として小容量(コンパクト)で強力な火力が得られる。
【0021】
また、多孔質材料、例えば活性炭にはその容積の180倍以上というような多量の燃料ガスを吸蔵できるが、その吸蔵量はその吸蔵能力100%まで吸蔵させる場合のほか、ガス吸蔵固形燃料としての必要量のガスを吸蔵させ、火力(発熱量)の異なるガス吸蔵固形燃料として供することができる。すなわち、本ガス吸蔵固形燃料においては、多孔質材料への燃料ガスの吸蔵量を固形燃料としての必要火力(発熱量)に応じて自由に制御することができる。
【0022】
■また、例えば活性炭の場合、粉末状、粒状、繊維状その他の各種形状で各種の細孔径と大きい比表面積を有するものが容易に入手可能であり、またその細孔径分布と比表面積は、液体窒素温度における窒素吸着量及び吸着等温線測定により容易に確認することができる。この活性炭材料は比表面積がきわめて大きく、このためその表面に非常に多くの分子(燃料ガス分子)を吸着することができる。そこに吸着された分子は、吸着量を制御することにより、その殆んどが細孔内の表面に露出した状態にすることができる。
【0023】
これらの材料は、その細孔径が例えば数ナノメートル乃至数十ナノメートルというように十分に小さいため、その細孔表面に吸着された分子は高圧条件下にあるような挙動を示すが、この挙動自体は擬高圧効果と呼ばれる現象と称される現象である。このように通常は高圧でのみ起こるような相変化や反応などが、細孔を有する多孔質材料を用いることにより、より低圧、低温という穏和な条件で起ることがあるが、本発明における吸蔵効果には、その理由は詳細には不明であるが、恐らくこのような現象も関与しているものと推認される。
【0024】
一方、本発明におけるホストとなる物質としては、幾つかの分子が集まったときに水素結合を介してある構造をとり得る物質であれば特に限定はなく、前述のとおりその例としては水、アルコール類、その他有機酸類やキノン類などが挙げられ、その中でも特に水やアルコール類が好適に用いられる。なお、ホストとなる物質としては、硫化水素や尿素等も使用し得るが、燃料としての燃焼時に亜硫酸ガスや窒素酸化物(NOx)等を生じるため、硫化水素や尿素等は当該問題が解決された上で使用される。
【0025】
これまで知られた技術知識によれば、これらのホストとなる物質はある範囲の大きさをもつガス分子〔ゲスト(guest)分子と呼ばれる〕と共存したときに包接化合物を形成することにより、ガス分子同志が非常に近い位置で結晶化して安定化する。この現象はホストとなる物質とゲストとなるガス分子とがある圧力、温度条件において共存すると、ホストとなる物質が水素結合を介してゲストとなるガス分子とともに或る一定の立体構造、たとえばホストがゲストを取り囲むようなかご状の構造などを構成する現象であり、この包接化合物は通常低温、高圧の条件で生成する。
【0026】
これに対して、本発明においては、細孔を有する多孔質材料の高い吸着能力及び細孔内の上記擬高圧効果と、ガスの包接化合物形成という特性とを組み合わせて利用することにより、そのような高圧を必要とせずに、しかも多量の燃料ガスを迅速に吸蔵することができる。本発明の方法で得られるガス吸蔵能力は、これまで知られている包接化合物におけるゲスト対ホストの分子の数の比を大きく上回っており、そのような既知の包接化合物形成の原理のみによってこの現象を説明することはできない。本発明においては細孔を有する多孔質材料と包接化合物との組み合わせによる何らかの相乗効果、すなわち新規且つ有用な何らかの原理により有効な優れたガス吸蔵作用が生起しているものと思われる。
【0027】
本発明に係るガス燃料吸蔵固形燃料において、多孔質材料に燃料ガスを吸蔵させる具体的態様としては、(1)容器内に多孔質材料を収容した後、ホストとなる物質を供給して吸着させ、次いで燃料ガスを導入する、(2)容器内にホストとなる物質を吸着させた多孔質材料を収容した後、燃料ガスを導入する、(3)容器内に多孔質材料を収容した後、ホストとなる物質と燃料ガスとを同時に導入する、(4)、(1)〜(3)の態様の2種以上を併用する等の各種手法により行うことができる。
【0028】
上記(1)〜(4)の態様において、ホストとなる物質は噴霧や含浸等によって供給、吸着させてもよいが、好ましくは蒸気として供給され、導入される。なお上記(3)の態様では蒸気と低級炭化水素ガスを同時に導入するが、この場合には、例えば低級炭化水素ガスの流速、温度等を調整し、或いはそれらの導管の内径に工夫を加えること等により、蒸気の凝縮などによる不都合が起こらないよう配慮する必要がある。
【0029】
この場合、それらの何れの態様においても低圧でも吸着させ吸蔵することができるため、その容器として高圧容器を必要としない。その際、勿論高圧容器を用いても差し支えなく、また本発明のガス燃料吸蔵固形燃料の製造に際しては、例えば10.68気圧(ゲージ圧で10kg/cm2 )を超える圧力でも燃料ガスを同様に吸着、吸蔵させることができるが、この場合にはそれに耐え得る高圧容器が使用される。
【0030】
上記のようにして得られたガス燃料吸蔵固形燃料は製造時には粉末状、粒状、繊維状等の形状であるが、そのまま固形燃料として使用してもよく、また従来における粉炭、豆炭、練炭のように各種の形状とすることができる。この場合ピッチ、ふのり、パルプ廃液その他の結合剤を加えて練り、一定の形状に成形する。その形状は長方形、卵形等のほか、従来における豆炭、穴あき練炭、たどん等の形とすることができる。また、必要に応じて、それら成形に際して木炭、石炭、無煙炭、コークスなどの粉末と混合してもよい。
【0031】
本固形燃料は、大量の燃料ガスを吸蔵しているため、燃料としての燃焼時には従来の固形燃料とガス燃料と合わせた利点が得られる。すなわち(1)従来の固形燃料に比べて着火が容易である。(2)多孔質材料として活性炭を用いた場合には、活性炭自体も燃料となり、灰が残らないか少ないので、あと始末が容易である。(3)燃焼ガス(燃焼により生成するガス)に有害ガスや臭いがなく、クリーンである。(4)気体燃料の欠点として、▲1▼一般に圧力をもっているから漏れやすい、▲2▼空気中へ漏れると爆発する危険がある、▲3▼貯蔵や輸送にタンクや鉄管などの資材がいる等の欠点があるが、本固形燃料にはそのような問題がないか少ない。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例により限定されないことは勿論である。まず実施例で使用したガス燃料吸蔵固形燃料の製造装置の概略を説明し、次いでこの装置を用いた具体的な製造例を記載している。
【0033】
図4は本実施例で使用した製造装置の構成を示した図である。図4中、1は低級炭化水素ガス用の高圧ボンベ、2、4、6、8及び10は弁、3はレギュレータ、5はガス導管、7は水蒸気を発生させる機構、9は圧力計である。また、11は耐圧容器、12は天秤、13は天秤12の傾きを検出する機構及びその傾きを電磁的な力により水平に保つ機構であり、14は低級炭化水素ガスを吸着しハイドレート状物を形成する多孔質材料、15は参照用重り(ガスを吸着しない)である。また16は真空ポンプである。
【0034】
この装置を操作するに当たっては、まず真空ポンプ16により耐圧容器11及び導管5内を真空引きした後、多孔質材料14に水を吸着させる。水の吸着は次の手順で行う。まず水蒸気発生機構7から供給される水蒸気を、弁6を開とすることによりガス導管5を介して耐圧容器11へ供給し、耐圧容器11内に飽和水蒸気雰囲気を形成して多孔質材料14に水を十分に吸着させる。
【0035】
その後、再度真空ポンプ16で適宜減圧することにより所定の水蒸気雰囲気を形成し過剰の吸着水の脱着を行う。この後、弁4及び8を閉にして導管5内を十分減圧し、導管5内の水分を完全に除去しておく。次いで、こうして準備された多孔質材料14に低級炭化水素系燃料ガスを接触させる。高圧ボンベ1中の低級炭化水素ガスをレギュレータ3によって厳密に制御しつつ系内に導入することにより耐圧容器11内に所定圧のガス雰囲気Sを形成する。
【0036】
多孔質材料14に対する水及び低級炭化水素系燃料ガスの吸着、吸蔵の計測は天秤12の多孔質材料14側が、水及び低級炭化水素ガスにより重量が増加することにより下がろうとするのを電磁的な力により水平に保ち、それに要する電気量から吸着水量及び吸着低級炭化水素ガス量を計算するという手法により、それぞれ精密に行った。なお、雰囲気温度の保持については、以上の装置本体を恒温槽に収納することにより実施した。図4中その恒温槽の記載は省略している。
【0037】
図2及び図3は上記のような装置を用いて製造したガス燃料吸蔵固形燃料の特性を示している。前記図1及び表1の結果を得たものと同じ活性炭0.0320g(0.0461cc)に対して、まず水0.0083gを吸着させた後、温度30℃において、それぞれ0気圧から20気圧までのメタンガスを導入し、これら各圧力において平衡に達した後の吸着量を測定した。図2は、図3における圧力0気圧から20気圧までのうち、0気圧から1.5気圧までにおける推移を横軸方向に拡大して示している。
【0038】
両図中、活性炭に水を予め吸着させてからメタンを吸着させた場合の重量変化は○(白丸)印でプロットし、また活性炭に直接メタンを吸着させた場合を●(黒丸)印でプロットしている。図2のとおり活性炭に対して水を吸着させた後、メタンガスを導入した場合には、メタンは圧力がきわめて低圧であっても、急速に吸蔵される。また活性炭に直接メタンを吸着させた場合には1.5気圧で活性炭1g当り1ミリモル程度であるのに対して、活性炭に対して水を吸着させた後にメタンガスを導入した場合には同じ1.5気圧で13ミリモルものメタンを吸蔵している。
【0039】
【表 2】
Figure 0003647602
【0040】
表2は、図2に示した活性炭1g当たりの吸着メタンの量を比較したものである。表2のとおり例えば0.2気圧で吸着平衡に達したメタンの量を比較した場合、水が共存する場合では、その吸着量11.77ミリモルであるのに対して、活性炭に直接吸着させた場合には僅かに0.18ミリモルであり、その比は65倍であった。また1.5気圧で吸着平衡に達したメタンの量を比較した場合、水が共存する場合には13.08ミリモルであるのに対して、活性炭に直接吸着させた場合では0.88ミリモルに過ぎず、その比は15倍であった。
【0041】
また、図3は活性炭に対して図2に示した圧力条件よりさらに高圧下でメタンを接触させた場合の測定結果であり、図2に示す1.5気圧までのデータも併わせてプロットしている。図3から明らかなとおり、水が共存する場合にはメタン圧力1.5気圧以降、その吸蔵量は圧力上昇とともに漸次増加して行き、メタン圧力20気圧では活性炭1g当り21ミリモルものメタンを吸蔵している。
【0042】
これに対して活性炭に直接メタンを吸着させた場合には、メタン吸着量は圧力上昇とともに僅かずつ増加するだけであり、20気圧の段階ですら僅かに5ミリモル程度であるに過ぎない。また活性炭に水を共存させた場合には僅か1気圧程度のメタン圧力で活性炭1g当り12ミリモルものメタンを吸着するが、これは水を共存させずに、活性炭に直接メタンを接着させた場合の20気圧における吸着量(約5ミリモル)の2倍以上もの吸着量に相当している。
【0043】
また、図3に基づき、活性炭に水を吸着させた後にメタンを吸着させた場合について、活性炭1ccを基準にして各圧力下で吸着されたメタン量を標準状態における体積に換算すると、それぞれ、0.7気圧で191cc、1.5気圧で203cc、5.0気圧で271cc、10気圧で290cc、20気圧で326ccとなる。このように本発明によれば、減圧下や常圧ないし5気圧というような低圧下における優れた吸着、吸蔵作用に加え、10気圧、或いは20気圧ないしそれ以上というような加圧下においてもさらに有効な吸蔵効果が得られることを示している。
【0044】
本発明の材料の製造装置としては基本的には図4に示すような装置を用いることができるが、図5はその製造装置の態様例を示す図である。17は低級炭化水素系燃料ガスの導管であり、例えば天然ガス等のガス貯槽に連なっている。18はホストとなる物質の蒸気を発生させる機構、19は反応容器である。容器19中には多孔質材料20が充填され、網目体や多孔板で保持されている。ガス燃料吸蔵固形燃料の製造時には例えば弁21を閉、弁22、23を開とし、蒸気発生機構18により蒸気を発生させて導管24、25を経て容器19に導入させる。次いで弁21を開とし低級炭化水素ガスを容器19に導入させる。なお、蒸気は導管25とは別個の導管により容器19へ導入させるようにしてもよい。また蒸気の発生は減圧のほか、加熱によってもよい。
【0045】
上記のような操作によって、低級炭化水素ガスは多孔質材料中に急速に吸着される。上記操作例では多孔質材料に予め蒸気を導入した後に低級炭化水素ガスを導入しているが、低級炭化水素ガスを蒸気と同時に導入するようにしてもよことは勿論である。この場合には例えば低級炭化水素ガスの流速、温度等を調整し、或いは導管(図5で云えば25)の内径に工夫を加えること等により、蒸気の凝縮などによる不都合が起こらないよう配慮する必要がある。
【0046】
【発明の効果】
本発明のガス燃料吸蔵固形燃料は、多孔質材料に大量の低級炭化水素系燃料ガスを吸蔵させることができるため、コンパクト(小容量)で強い火力(大きな発熱量)が得られる。またその吸蔵量を自由に設定できるため所望火力(発熱量)に応じたガス燃料吸蔵固形燃料とすることができる。また、安価に入手可能な多孔質材料と水やアルコール類等を使用でき、その製造に際しても常温、常圧、或いはそれらの近辺というような穏和な条件下、短時間に大量の燃料ガスを取り込むことができ、その際特殊な圧力容器や特殊な冷却装置を必要としないなど、実用上もきわめて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】活性炭1g当りに吸着したメタン量の経時変化について、水を共存させた場合と直接メタンに接触させた場合とで比較した図(温度30℃、圧力0.2気圧)。
【図2】活性炭1g当りに吸着したメタン量の圧力に伴う変化を、水を共存させた場合と直接メタンに接触させた場合とで比較した図(温度30℃、0〜1.5気圧)。
【図3】活性炭1g当りに吸着したメタン量の圧力に伴う変化を、水を共存させた場合と直接メタンに接触させた場合とで比較した図(温度30℃、0〜20気圧)。
【図4】実施例で使用した製造装置構造の概略を示す図。
【図5】ガス燃料吸蔵固形燃料の製造装置の態様例を示す図。
【符号の説明】
1 被吸着ガス用の高圧ボンベ
2、4、6、8及び10 弁
3 レギュレータ
5 ガス導管
7 水蒸気を発生させる機構
9 圧力計
11 耐圧容器
12 天秤
13 天秤の傾きを検出し、その傾きを水平に保つ機構
14 多孔質材料
15 参照用重り
16 真空ポンプ
S 耐圧容器11内のガス雰囲気
17 低級炭化水素系燃料ガス導管
18 蒸気を発生させる機構
19 反応容器
20 多孔質材料
21〜23 弁
24〜25 導管

Claims (8)

  1. 多孔質材料に対して、ホストとなる物質を吸着させた後に又はホストとなる物質を吸着させると同時に、低級炭化水素系燃料ガスを接触させることにより得られたガス燃料吸蔵固形燃料。
  2. 多孔質材料が活性炭であり、ホストとなる物質が水、アルコール類、有機酸類又はキノン類である請求項1記載のガス燃料吸蔵固形燃料。
  3. 吸蔵させた低級炭化水素系燃料ガスがメタン、エタン、プロパン、ブタン等の低級炭化水素又はそれらの2種以上の混合ガスである請求項1記載のガス燃料吸蔵固形燃料。
  4. 吸蔵させた低級炭化水素系燃料ガスが天然ガス又は都市ガスである請求項1記載のガス燃料吸蔵固形燃料。
  5. 多孔質材料に対して、ホストとなる物質を吸着させた後に又はホストとなる物質を吸着させると同時に、低級炭化水素を含む燃料ガスを接触させることを特徴とするガス燃料吸蔵固形燃料の製造方法。
  6. 多孔質材料が活性炭であり、ホストとなる物質が水、アルコール類、有機酸類又はキノン類である請求項5記載のガス燃料吸蔵固形燃料の製造方法。
  7. 吸蔵させる低級炭化水素系燃料ガスがメタン、エタン、プロパン、ブタン等の低級炭化水素又はそれらの2種以上の混合ガスである請求項5記載のガス燃料吸蔵固形燃料の製造方法。
  8. 吸蔵させる低級炭化水素系燃料ガスが天然ガス又は都市ガスである請求項5記載のガス燃料吸蔵固形燃料の製造方法。
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