JP3647282B2 - マゼンタトナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷、トナージェット方式記録などに適用されるマゼンタトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今のパーソナル・ユーザーを対象としたコンピューター機器の低価格化に伴い、映像による情報伝達機構もビジュアルな世界からフルカラーによる映像コミュニュケーションが幅広く浸透しつつある。この様なニーズの元、出力手段の一つであるプリンターや複写機の如き画像形成装置においても低級機市場を中心にフルカラー化が急速に進んでおり、一般ユーザーにおいてもカラー画像がより身近なものとなりつつある。
【0003】
この様なフルカラーによる出力機器としては一般的に、熱転写方式、インクリボン方式、インクジェット方式といった数多くの方法があるが、全体としては電子写真方式によるものが大多数を占めている。一般に電子写真方式は光導電性物質を利用し種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧或いは溶剤蒸気により定着し、カラー画像を得るものである。
【0004】
フルカラーの場合は、色材の3原色であるイエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナーの3色の有彩色トナー又はそれに黒色トナーを加えた4色のトナーを用いて色の再現を行うものである。例えば、原稿からの光をトナーの色と補色の関係にある色分解光通過フィルターを通して光導電層上に静電潜像を形成する。次いで現像工程及び転写工程を経てカラートナーは支持体に保持される。次いで前述の工程を順次複数回行い、レジストレーションを合わせつつ、同一支持体上にカラートナーは重ね合わされ、定着によって最終のフルカラー画像が得られる。
【0005】
近年、フルカラー画像においては、高画質化,高精細化への要求はますます高まりつつある。印刷を見なれた一般ユーザーにとっては、フルカラー複写画像はまだまだ満足できるレベルではなく、より印刷に近づいたレベル、より写真に近づいたレベルを望んでいる。すなわち、複写画像における広い画像面積でのベタ画像の均一性,ハーフトーン画像の均一性,高濃度から低濃度までの広いダイナミックレンジの実現が望まれ、高画像濃度出力を可能とするトナー,印刷並の色調のトナー,OHP透明性(光透過性)に優れたトナー及び耐光性に優れたトナーの開発が急務となってきた。
【0006】
従ってトナーに用いられる着色剤としても、当然、着色力が高く、色の鮮明性及び透明性に優れ、かつ耐光性にも優れ、加えて、樹脂中の分散性にも優れた着色剤が強く望まれているのが実状である。
【0007】
一方でカラー複写機がコントローラーを介してコンピューターと接続され、高品位カラープリンターとして使われるケースが増加するにつれて、システム全体を色管理するカラーマネージメントシステムが提案される様になってきた。その結果特定のユーザーにおいては、電子写真方式のカラー複写機で出力される出力画像がプロセスインキをベースとした印刷の出力画像と色味の点で一致することを強く望む様になり、プロセスインキと同様の色調を有するトナーというものも要求される様になってきた。
【0008】
これまでマゼンタトナー用顔料としてはいくつか提案されているが、色の鮮明性と透明性に優れ、かつ耐光性にも優れるという点でキナクリドン系の顔料が広く用いられてきた。
【0009】
特開昭49−27228、特開昭57−54954及び特開平1−142559号公報等は、2,9−ジメチルキナクリドンを単独で含有したトナーを開示している。このトナーは、確かに耐光性には優れているものの、十分に鮮やかなマゼンタトナーとは言い難かった。
【0010】
特開昭64−9466号公報は、キナクリドン系顔料とキサンテン系染料またはキサンテン系染料をレーキ化した顔料とを組み合わせ、トナーの鮮やかさを向上させようとしたことを開示している。このトナーは、まだ充分な鮮やかさが得られていなかったし、色が変化し、画像を長時間放置すると変色してしまうという問題点があった。
【0011】
特開平1−154161号公報は、マゼンタトナーの透明性を向上させようとして、平均粒径が0.5μm以下のキナクリドン系顔料を用いることを開示している。トナーの透明性は顔料と樹脂、そして樹脂への分散方法とその程度によって決まるものであって、必ずしも透明性の高いマゼンタトナーは得られていなかった。
【0012】
一方で、フルカラー画像の場合は、色材の3原色であるイエロートナー,マゼンタトナー,シアントナーの3色の有彩色トナー又はそれに黒色トナーを加えた4色のトナーで色再現するものであり、目的とする色調の画像を得るためには、他色とのバランスが重要であり、マゼンタトナーの色調を若干変えようという試みもなされている。
【0013】
例えば、特公昭63−18628号公報は、置換されたキナクリドン2種を含有する化合物の混合物を開示しており、特開昭62−291669号公報は、2,9−ジメチルキナクリドンと、無置換のキナクリドンとの混晶をマゼンタ用着色剤として用いることを記載しており、目的とする色相を有し、かつトナーの摩擦帯電性の改善をも目的とした着色剤として提案されている。
【0014】
しかしながら、2,9−ジメチルキナクリドンを単独で用いた時よりも全体として赤味の方向へ色味はシフトしているものの、オフセット印刷用のマゼンタインキの色相と比較すると青味が強く、改善すべき点が多く残されていた。
【0015】
一方で、トナー中に存在する着色剤の分散性向上を目的とした検討も多くなされている。
【0016】
特開昭61−117565号公報及び特開昭61−156054号公報は、溶剤に結着樹脂,着色剤及び荷電制御剤などをあらかじめ溶解し、該溶剤を除去しトナーを得る方法を開示しているが、これらは荷電制御剤の分散性の制御が難しい事、及び溶剤が最終製品であるトナーに残存し好ましくない臭気を与える事の如き問題点を有している。
【0017】
特開昭61−91666号公報は、ハロゲン系溶剤を用いたトナー製造方法を開示しているが、この製造方法は、ハロゲン系溶剤が強い極性を有しているため、使用される着色剤が制限されるという不具合を有している。
【0018】
特開平4−39671号公報,特開平4−39672号公報及び特開平4−242752号公報は、ニーダー中で加熱及び加圧を加えながらトナーを製造する方法を開示しているが、該方法はなるほど着色剤の分散には好ましいが、トナーを構成する結着樹脂の分子鎖が強力な混練負荷によって切断され、高分子中の部分的低分子量化が促進されることになる。そのため定着工程での高温オフセットが発生しやすくなる。とりわけフルカラー複写においては、3色又は4色のトナーが層状に積層されたものを定着するため、耐高温オフセットのラチチュードは白黒トナーの場合よりははるかにきびしく、高分子中のわずかな分子切断が容易に高温オフセットを生ずる原因となる。
【0019】
特開平5−34978号公報は、樹脂と顔料の水性プレスケーキとを混練機に仕込み、加熱混練して顔料の樹脂への分散を達成しているが、該方法はなるほど顔料の分散には好ましいが、トナーの色味及び色再現性をも考慮した顔料については一切ふれていない。
【0020】
また、一般に現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分系現像剤を使用する場合は、キャリアとの摩擦によってトナーを所要の帯電量及び帯電極性に帯電せしめ、静電引力を利用して静電荷像を現像するものである。従って良好な可視画像を得るためには、主としてトナーの摩擦帯電性が良好であることが必要である。
【0021】
今日上記の様な問題に対して、キャリアコア材、キャリアコート材の探索やコート量の最適化、或はトナーに加える電荷制御剤、流動性付与剤の検討、更には母体となるバインダーの改良の如き現像剤を構成する材料において優れた摩擦帯電性を達成すべく多くの研究がなされている。
【0022】
近年、複写機又はプリンターの高精細、高画質化の要求に応えるべく、当該技術分野では、カラートナーの粒径を細かくして高画質カラー化を達成しようという試みがなされている。トナーの粒径が細かくなると単位重量当りの表面積が増え、トナーの帯電量が大きくなる傾向にあり、画像濃度薄や、耐久劣化が発生しやすくなる。加えて、トナーの帯電量が大きいために、トナー粒子同士の付着力が強く、流動性が低下し、トナー補給の安定性や補給トナーへのトリボ付与に問題が生じやすい。
【0023】
さらに、カラートナーの場合は、磁性体やカーボンブラックの如き黒色の導電性物質を含まないので、帯電をリークする部分がなく一般に帯電量が大きくなる傾向にある。この傾向は、特に負帯電性能の高いポリエステル系バインダーを使用した時に、より顕著である。
【0024】
特にカラートナーにおいては、下記に示すような特性が強く望まれている。
(1)定着したカラートナーは、光に対して乱反射して、色再現を妨げることのないように、トナー粒子の形が判別できないほどのほぼ完全溶融に近い状態となることが重要である。
(2)そのトナー層の下にある異なった色調のトナー層を妨げない透明性を有するカラートナーであることが重要である。
(3)構成する各カラートナーはバランスのとれた色相及び分光反射特性と十分な彩度を有していることが重要である。
【0025】
このような観点から多くの結着樹脂に関する検討がなされており、上記の特性を満足するカラートナーが待望されている。今日当該技術分野においてはポリエステル系樹脂がカラートナー用結着樹脂として多く用いられているが、ポリエステル系樹脂を有するカラートナーは一般に温湿度の影響を受け易く、低湿下での帯電量過大、高湿下での帯電量不足といった問題が起こりやすく、広範な環境においても安定した帯電量を有するカラートナーの開発が待望されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決したマゼンタトナーを提供することにある。
【0027】
すなわち本発明の目的は、
(1)低濃度から高濃度までの広いダイナミックレンジをカバーする高着色力を有し、
(2)彩度、明度が高く、
(3)OHP透明性に優れ、
(4)着色剤の分散性に優れ、
(5)高耐光性を有し、
(6)色調がプロセスインキのマゼンタと合っている
マゼンタトナーを提供することにある。
【0028】
さらに本発明の目的は、
(7)良好な定着性及び混色性を示し、
(8)温湿度等の環境に左右されにくく常に安定し、かつ充分な摩擦帯電性を有し、
(9)画像品質を高める光沢性が高く、
(10)高温オフセットが十分に防止され、定着可能温度が広く、
(11)現像器内、すなわち、スリーブ、ブレード、塗布ローラーなどの部品へのトナー融着がなく、
(12)クリーニング性が良好であり、感光体へのフィルミングをしない
マゼンタトナーを提供することにある。
【0029】
さらに本発明の目的は、
(13)カブリがなく、
(14)ハイライト再現性に優れ、
(15)ベタ均一性に優れ、
(16)耐久安定性に優れた、
マゼンタトナーを提供することにある。
【0030】
本発明の更なる目的は、流動性に優れ、且つ現像忠実性と転写性に優れたマゼンタトナーを提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及びマゼンタ着色剤を含有するマゼンタカラートナー粒子を有するマゼンタトナーにおいて、
該結着樹脂は、酸価が2〜25mgKOH/gであるポリエステル樹脂であり、該マゼンタ着色剤は、下記式(I)
【0032】
【化5】
で示される化合物であり、
該マゼンタカラートナー粒子に、平均一次粒子径0.01〜2μmの疎水化処理された酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体が外添されており、
該マゼンタトナーは、重量平均粒径が3〜15μmであることを特徴とするマゼンタトナーに関する。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、マゼンタトナーに適用できるマゼンタ着色剤について、鋭意検討したところ、マゼンタ着色剤として下記式(I)
【0034】
【化6】
で示される化合物(以下、「化合物(I)」と称す)を用いることにより、目的とする良好な色相のマゼンタトナーが得られ、しかも上記の化合物(I)がカラートナーの帯電安定化に顕著な効果があり、特に結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合に、その効果は非常に顕著であることを見い出したものである。以下に詳細に説明する。
【0035】
本発明で使用する化合物(I)は、下記式(1),(2)又は(3)で示されるβ−ナフトール誘導体から合成し得る。また、この方法に何ら限定されるものではない。
【0036】
【化7】
【0037】
本発明で使用する化合物(I)は耐候性に優れた有彩色顔料であり、結着樹脂への分散性が良好であり、鮮やかな色相のマゼンタトナーを調製し得る。
【0038】
一方、
【0039】
【化8】
上記構造式で示される2,9−ジメチルキナクリドン(以下化合物(V)と記す。)は、鮮やかなマゼンタ色を示し、これをトナー用着色剤として用いたとき、着色力の高いトナーが得られる。ただ、プロセスインキのマゼンタの色相と比較したとき、青味が強いという特徴を有している。
【0040】
また、プロセスインキ用マゼンタ顔料として、これまでカーミン系の顔料が広く用いられており、これをトナーに応用した例もいくつか報告されている。ただカーミン系の顔料が、耐光性に乏しく、キナクリドン系の顔料と比較するとその差は歴然である。
【0041】
本発明者らは、耐光性に優れ、明度及び彩度が高く、色再現性の広いマゼンタトナーであって、プロセスインキのマゼンタの色相とあったマゼンタトナーについて鋭意検討した結果、化合物(I)を用いたときに上述の目的が達成できることを見い出したものである。
【0042】
これは、従来一般に用いられている例えばカーミン系の赤顔料と2,9−ジメチルキナクリドンとのブレンドでは、より高明度,高彩度を望む場合、到底達成し得なかったものである。
【0043】
また本発明のトナーは、耐光性にも優れ、画像サンプルを市販のウェザーメーターで、JIS K7102にほぼ準じて、長期の暴露テストを行った際も、ほとんど色彩の変化は見られなかった。
【0044】
色彩の変化の度合は下式のΔEで定量的に評価した。
【0045】
【数1】
【0046】
化合物(I)をマゼンタ着色剤(顔料)として含有しているマゼンタトナーは赤味にシフトした色相を示し、フルカラー画像形成用マゼンタトナーとして好ましい分光特性を有している。さらに、化合物(I)を含有しているマゼンタトナーは、明度及び彩度も高い。フルカラー画像において人肌色の再現性が重要であるが、化合物(I)を含有するマゼンタトナーを使用すると人肌色も良好に再現することが可能であり、さらに、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)でOHPシートに形成されているカラー画像を投影しても透明性に優れている。また、化合物(I)を含有しているマゼンタトナーは、多数枚耐久時においても、画像濃度が安定しており、カブリのない鮮明な画像が長期に渡って得られる。
【0047】
本発明のトナーにおいては、化合物(I)が、結着樹脂100重量部に対して1〜15重量部好ましくは3〜12重量部、より好ましくは4〜10重量部含有されていることが望ましい。1重量部より少ない時は、トナーの着色力が低下してしまい、これではいくら顔料の分散性を向上しても高画像濃度の高品位画像が得られ難い。一方、15重量部より多い時は、トナーの透明性が低下してしまい、トラペン透明性が低下してしまう。加えて、人間の肌色に代表される様な、中間色の再現性も低下してしまう。更にはトナーの帯電性も不安定になり低温低湿環境下でのカブリ、高温高湿環境下でのトナー飛散といった問題も引き起こす。
【0048】
本発明において、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。なぜならば、ポリエステル樹脂は、定着性に優れ、カラートナーに適しているからである。
【0049】
但し、ポリエステル樹脂は、負帯電能が強く帯電が過大になりやすいが、化合物(I)を使用することにより、その弊害は改善され、優れたマゼンタトナーが得られる。
【0050】
すなわち、化合物(I)を用いたトナーは、低温低湿環境下での帯電量過大防止、ならびに高温高湿環境下での帯電量低下抑制に効果を発揮する。
【0051】
その理由は定かではないが、ポリエステル末端のカルボキシル基やヒドロキシル基と、化合物(I)分子中の水酸基や、カルボニル基との一部水素結合、もしくは、静電的な結合のために結着樹脂と顔料との相溶性が高まり、その結果として着色剤の分散性が向上し帯電が安定化するものと考えられる。
【0052】
また高温高湿下での帯電量低下抑制は、先に示した良好な顔料分散性ゆえに、顔料が結着樹脂末端の官能基への水の吸着をブロックし、それゆえ、高温高湿環境下においても高い帯電量が得られ、かつ、安定しているものと予想している。
【0053】
それゆえ、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いたとき、長期の耐久において、カブリのない安定した画像濃度の高品位画像が得られる。
【0054】
特に、次式
【0055】
【化9】
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
で代表されるビスフェノール誘導体もしくは置換体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸またはその酸無水物またはその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)とを共縮重合したポリエステル樹脂がシャープな溶融特性を有するのでより好ましい。
【0056】
特にポリエステル樹脂の酸価が2〜25mgKOH/gであるとき、各環境において優れた帯電安定性が得られる。
【0057】
すなわち、酸価が2mgKOH/gより小さいときには、トナーはチャージアップ傾向を示し低温低湿環境下で画像濃度薄を起こしやすい。
【0058】
一方、酸価が25mgKOH/gより大きいときには、帯電の経時安定性に乏しく、耐久とともに帯電量が低下する傾向を示し、特に高温高湿環境下ではトナー飛散、カブリといった画像欠陥が生じやすくなる。
【0059】
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が好ましくは1,500〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000、重量平均分子量(Mw)が好ましくは6,000〜100,000、より好ましくは10,000〜90,000であり、Mw/Mnが好ましくは2〜8であることが良い。上記条件を満足しているポリエステル樹脂は熱定着性が良好で、着色剤の分散性が向上し、トナーの帯電量の変動が少なくなり、画像品質の信頼性が向上する。
【0060】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1,500未満の場合又は重量平均分子量(Mw)が6,000未満の場合には、いずれも定着画像表面の平滑性は高く見た感じの鮮やかさはあるものの、耐久においてオフセットが発生しやすくなり、また、耐保存安定性が低下し、現像器内でのトナー融着及びキャリア表面にトナー成分が付着するトナースペントの発生といった新たな問題も懸念される。さらに、マゼンタカラートナー粒子の製造時のトナー原料の溶融混練時にシェアーがかかり難く、マゼンタ着色剤の分散性が低下し易く、よってトナーの帯電量の変動が生じ易い。
【0061】
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が50,000を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が100,000を超える場合には、いずれも、耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、また、仮に着色剤の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0062】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが2未満の場合には、一般に得られるポリエステル樹脂は、分子量自体が小さくなることから、前述の分子量が小さい場合と同様に耐久によるオフセット現象、耐保存安定性の低下、現像器内でのトナー融着及びキャリアのトナースペントが生じ易くなり、さらにトナーの帯電量のばらつきが生じ易い。
【0063】
ポリエステル樹脂のMw/Mnが8を超える場合には、耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ないし、また、仮に着色剤の分散の程度をコントロールできたとしても、画像部での表面平滑性が低下してしまい、色再現性が低下し易くなってしまう。
【0064】
本発明のマゼンタトナーは、必要に応じて荷電制御剤をさらに含有しても良い。荷電制御剤としては、芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物が挙げられる。好ましくは、サリチル酸金属塩、サリチル酸金属錯体、アルキルサリチル酸金属塩、アルキルサリチル酸金属錯体、ジアルキルサリチル酸金属塩、ジアルキルサリチル酸金属錯体が挙げられる。金属元素としては、クロム、アルミニウム及び亜鉛が良い。
【0065】
これら荷電制御剤をマゼンタカラートナー粒子中に含有させる場合、その含有量としては、3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の範囲が好適ではあるが、マゼンタトナーにおいては色調に影響を与えない範囲であれば必ずしも制約されるものではない。
【0066】
上記含有量で荷電制御剤を使用すると帯電量の初期変動が少なく、現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、結果的にカブリや画像濃度ダウンといった画像品質を損ねることがなく好ましい。
【0067】
本発明のマゼンタトナーにおいては、必要に応じて、滑剤としての脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミ)、フッ素含有重合体微粉末(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド及びテトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体の微粉末)、或いは、酸化スズ及び酸化亜鉛の如き導電性付与剤を添加しても良い。
【0068】
更に、本発明において、マゼンタカラートナー粒子は、離型剤を含有しても良い。例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、エステルワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、飽和直鎖脂肪酸類、不飽和脂肪酸類、飽和アルコール類、多価アルコール類、脂肪酸アミド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、不飽和脂肪酸アミド類、芳香族系ビスアミド類が挙げられる。
【0069】
マゼンタカラートナー粒子における離型剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部が良い。離型剤の含有量が20重量部を超える場合には、耐ブロッキング性や耐高温オフセット性が低下しやすく、また、0.1重量部より少ない場合には、離型効果が少ない。
【0070】
これらの離型剤は、通常、樹脂を溶剤に溶解し、樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、混練時に混合する方法で結着樹脂に含有されるのが好ましい。
【0071】
マゼンタカラートナー粒子の製造にあたっては;熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機によって構成材料を良く混練した後、機械的に粉砕し、粗粉砕を分級してトナーを得る方法;結着樹脂溶液中に着色剤の如き材料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法;が適用できる。
【0072】
本発明において、マゼンタトナーの重量平均粒径は、3〜15μm、好ましくは4〜12μmが良い。マゼンタトナーの重量平均粒径が3μm未満の場合には、帯電安定化が達成しづらくなり、耐久において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。マゼンタトナーの重量平均粒径が15μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまう。
【0073】
本発明のマゼンタトナーにおいては、マゼンタカラートナー粒子に流動性向上剤として、平均一次粒子径0.01〜2μmの疎水化処理された酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体を外添していることが良い。
【0074】
外添剤としての流動性向上剤においては、マゼンタトナーの流動性を高めるばかりでなく、マゼンタトナーの帯電性を阻害しないことも重要な因子となる。
【0075】
したがって、酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体は、表面が疎水化処理されていることが良く、それにより流動性の付与と帯電の安定化を同時に満足することが可能となる。
【0076】
酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体は、疎水化処理されていることにより、帯電量を左右する因子である水分の影響を除外し、高湿下及び低湿下での帯電量の格差を低減することでマゼンタトナーの環境特性を向上させることが可能になる。さらに、疎水化処理工程中に一次粒子の凝集を防ぐことが可能となり、二次凝集の少ない外添剤は、マゼンタトナーにより均一な帯電付与を行うことが可能になる。
【0077】
本発明においては、特に平均一次粒子径が0.01〜2μmの酸化チタン微粉体又はアルミナ微粉体が流動性が良好で負荷電性マゼンタトナーの帯電が均一となり、結果としてトナー飛散、カブリが生じにくくなるので好ましい。さらに、マゼンタカラートナー粒子表面に埋め込まれにくくなりトナー劣化が生じにくく、多数枚耐久性が向上する。この傾向は、シャープメルト性のカラートナーにおいてより顕著である。
【0078】
酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体の平均一次粒子径が0.01μm未満の場合には、マゼンタカラートナー粒子表面に、処理微粉体が埋め込まれ易くなり、トナー劣化が早く生じやすく、耐久性が低下しやすい。この傾向はシャープメルト性のカラートナーに適用した場合、より顕著である。
【0079】
また、2μmを超える場合には、流動性が低下しマゼンタトナーの帯電が不均一となりやすく、結果としてトナーの飛散、カブリ等が生じやすく、高画質なトナー画像を生成しにくくなる。
【0080】
本発明のマゼンタトナーにおいては、酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体の添加量が好ましくは0.5〜5.0重量%、より好ましくは0.7〜3.0重量%、さらに好ましくは1.0〜2.5重量%が良い。上記範囲を満足しているマゼンタトナーの流動性が良好であり、安定な帯電量を維持し得、トナー飛散が生じにくい。
【0081】
本発明のマゼンタトナーを二成分系現像剤として用いる場合、使用されるキャリアとしては、例えば表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き磁性金属、それらの磁性合金、それらの磁性酸化物及びそれらの磁性フェライトなどが使用できる。
【0082】
キャリアがキャリアコアを被覆材で被覆したキャリアの場合、キャリアコアの表面を被覆材として樹脂で被覆する方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアコアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法がいずれも適用できる。
【0083】
キャリアコアの被覆材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属錯体、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂を単独或は複数で用いるのが適当であるが、必ずしもこれに制約されない。
【0084】
上記材料の処理量は、適宜決定すれば良いが、一般には総量でキャリアに対し0.1〜30重量%(好ましくは0.5〜20重量%)が好ましい。
【0085】
キャリアの平均粒径は10〜100μm、好ましくは20〜70μmを有することが好ましい。
【0086】
特に好ましいキャリアとしては、磁性フェライトコア粒子の如き磁性コア粒子の表面をシリコーン樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂及びメタクリレート系樹脂の如き樹脂を0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%コーティングし250メッシュパス・400メッシュオンのキャリア粒子が70重量%以上である上記平均粒径を有するコート磁性フェライトキャリアが挙げられる。
【0087】
上記コート磁性フェライトキャリアは粒径分布がシャープな場合、本発明のマゼンタトナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。
【0088】
本発明におけるマゼンタトナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜13重量%、より好ましくは4重量%〜10重量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2重量%未満では画像濃度が低くくなりやすく、15重量%を超える場合ではカブリや機内飛散が生じやすく、現像剤の耐用寿命が短くなる傾向にある。
【0089】
次に、本発明のマゼンタトナーを適用し、電子写真法によりフルカラー画像を形成する方法を図1を参照しながら説明する。
【0090】
図1は、電子写真法によりフルカラーの画像を形成するための画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1の画像形成装置は、フルカラー複写機又フルカラープリンタとして使用される。フルカラー複写機の場合は、図1に示すように、上部にデジタルカラー画像リーダ部、下部にデジタルカラー画像プリンタ部を有する。
【0091】
画像リーダ部において、原稿30を原稿台ガラス31上に載せ、露光ランプ32により露光走査することにより、原稿30からの反射光像をレンズ33によりフルカラーセンサ34に集光し、カラー色分解画像信号を得る。カラー色分解画像信号は、増幅回路(図示せず)を経てビデオ処理ユニット(図示せず)にて処理を施され、デジタル画像プリンタ部に送出される。
【0092】
画像プリンタ部において、像担持体である感光ドラム1は、たとえば有機光導電体を有する感光層を有し、矢印方向に回転自在に担持されている。感光ドラム1の回りには、前露光ランプ11、コロナ帯電器2、レーザ露光光学系3、電位センサ12、色の異なる4個の現像器4Y、4C、4M、4B、ドラム上光量検知手段13、転写装置5およびクリーニング器6が配置されている。
【0093】
レーザ露光光学系において、リーダ部からの画像信号は、レーザ出力部(図示せず)にてイメージスキャン露光の光信号に変換され、変換されたレーザ光がポリゴンミラー3aで反射され、レンズ3bおよびミラー3cを介して、感光ドラム1の面上に投影される。
【0094】
プリンタ部は、画像形成時、感光ドラム1を矢印方向に回転させ、前露光ランプ11で除電した後に感光ドラム1を帯電器2により一様にマイナス帯電させて、各分解色ごとに光像Eを照射し、感光ドラム1上に静電荷像を形成する。
【0095】
次に、所定の現像器を作動させて感光ドラム1上の静電荷像を現像し、感光ドラム1上にトナーによるトナー画像を形成する。現像器4Y、4C、4M、4Bは、それぞれの偏心カム24Y、24C、24M、24Bの動作により、各分解色に応じて択一的に感光ドラム1に接近して、現像を行なう。
【0096】
転写装置は、転写ドラム5a、転写帯電器5b、記録材を静電吸着するための吸着帯電器5cおよびこれと対向する吸着ローラ5g、そして内側帯電器5d、外側帯電器5e、分解帯電器5hを有している。転写ドラム5aは、回転駆動可能に軸支され、その周面の開口域に転写材を担持する転写材担持体である転写シート5fが、円筒上に一体的に調節されている。転写シート5fにはポリカーボネートフィルムの如き樹脂フィルムが使用される。
【0097】
転写材はカセット7a、7bまたは7cから転写シート搬送系を通って転写ドラム5aに搬送され、転写ドラム5a上に担持される。転写ドラム5a上に担持された転写材は、転写ドラム5aの回転にともない感光ドラム1と対向した転写位置に繰り返し搬送され、転写位置を通過する過程で転写帯電器5bの作用により、転写材上に感光ドラム1上のトナー画像が転写される。
【0098】
トナー画像は、図1に示す如く、感光体から直接転写材へ転写されても良く、また、感光体上のトナー画像を中間転写体へ転写し、中間転写体からトナー画像を転写材へ転写しても良い。
【0099】
上記の画像形成工程を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(B)について繰り返し、転写ドラム5上の転写材上に4色のトナー画像を重ねたカラー画像が得られる。
【0100】
このようにして4色のトナー画像が転写された転写材は、分離爪8a、分離押上げコロ8bおよび分離帯電器5hの作用により、転写ドラム5aから分離して加熱加圧定着器9に送られ、そこで加熱加圧定着することによりトナーの混色、発色および転写材への固定が行なわれて、フルカラーの定着画像とされたのちトレイ10に排紙され、フルカラー画像の形成が終了する。他方、感光ドラム1は、表面の残留トナーをクリーニング器6で清掃して除去された後、再度、画像形成工程に供せられる。クリーニング部材としては、ブレード以外にファーブラシ又は不織布、あるいはそれらの併用等を用いてもよい。
【0101】
転写ドラム5aに対しては、転写シート5fを介して対向された電極ローラ14とファーブラシ15、およびオイル除去ローラ16とバックアップブラシ17が設置されており、転写ドラム5aの転写シート5f上の付着粉体や、転写シート5f上の付着オイルを除去するために、清掃が行なわれる。このような清掃は、画像形成の前または後に行ない、また、ジャム、つまり紙詰まり発生時には随時行なう。
【0102】
所望のタイミングで偏心カム25を動作させ、転写ドラム5aと一体化している29カムフォロワ5iを作動させることにより、転写シート5fと感光ドラム1との間のギャップを任意に設定可能な構成としている。たとえば、スタンバイ中、または電源オフ時には転写ドラム5aと感光ドラム1の間隔を離すことができる。
【0103】
上記画像形成装置によって、フルカラー画像が形成される。上記画像形成装置においては、単色モード又は多色モードによって、単色の定着画像又は多色の定着画像を形成することができる。
【0104】
次に各物性の測定方法について以下に説明する。
【0105】
トナーの粒度分布の測定
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積及び個数各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた重量基準のトナーの重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0106】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0107】
酸価の測定方法
サンプル2〜10gを200〜300mlの三角フラスコに秤量し、メタノール:トルエン=30:70の混合溶媒約50mlを加えて樹脂を溶解する。溶解性が悪いようであれば少量のアセトンを加えてもよい。0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用い、あらかじめ標定されたN/10苛性カリ〜アルコール溶液で滴定し、アルコールカリ液の消費量から次の計算で酸価を求める。
【0108】
酸価=KOH(ml数)×N×56.1/試料重量
(ただしNはN/10KOHのファクター)
【0109】
トナーの摩擦帯電量の測定方法
図2は摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。底に500メッシュのスクリーン53のある金属製の測定容器52に、複写機又はプリンターの現像スリーブ上から採取した二成分系現像剤を約0.5〜1.5g入れ金属製のフタ54をする。この時の測定容器52全体の重量を秤りW1(g)とする。次に吸引機51(測定容器52と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口57から吸引し風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行いトナーを吸引除去する。この時の電位計59の電位をV(ボルト)とする。ここで58はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW2(g)とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)は下式の如く算出される。
【0110】
試料の摩擦帯電量(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
(但し、測定条件は23℃,60%RHとする。)
【0111】
測定に用いるキャリアは、250メッシュパス・350メッシュオンのキャリア粒子が70〜90重量%有するコートフェライトキャリアを使用する。
【0112】
酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子の平均粒径の測定方法
一次粒子径は、酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子を透過電子顕微鏡で観察し、視野中の3万乃至5万倍に拡大した300個の0.005μm以上の粒子径を測定して平均粒子径を求め、トナー粒子上の分散粒子径は走査電子顕微鏡で観察し視野中の3万乃至5万倍に拡大した300個の酸化チタン微粒子及びアルミナ微粒子をXMAにより定性し、その粒子径を測定して平均粒子径を求める。
【0113】
【実施例】
実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0114】
<実施例1>
・ポリエステル樹脂No.1 100重量部
(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー、
酸価:10.8mgKOH/g)
・負荷電性制御剤 4重量部
(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物)
・下記化合物(I) 5重量部
【0115】
【化10】
【0116】
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行い、二軸式押し出し機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。更に得られた微粉砕物を多分割分級装置で微粉及び粗粉を同時に厳密に除去して、重量平均径8.0μmのマゼンタカラートナー粒子を得た。
【0117】
一方、流動性向上剤及び帯電安定化剤として親水性酸化チタン微粉体(一次平均粒子径0.02μm、BET比表面積140m2/g)100重量部に対してn−C4H9−Si(OCH3)3の20重量部を使用して表面処理し、一次平均粒子径0.02μm,疎水化度70%の疎水性酸化チタン微粉体Aを得た。
【0118】
マゼンタカラートナー粒子100重量部と、疎水性酸化チタン微粉体A1.5重量部とを混合して、マゼンタカラートナー粒子表面に疎水性酸化チタン微粒子を有するマゼンタトナー1を調製した。
【0119】
上記マゼンタトナー1とシリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(平均粒径30μm)とを、トナー濃度が5重量%になる様に混合し、二成分系マゼンタ現像剤とした。
【0120】
上記二成分系マゼンタ現像剤を市販の普通紙フルカラー複写機(カラーレーザー複写機CLC700、キヤノン製)に導入して複写試験を行ったが、常温常湿環境(23℃,60%)下で5万枚の耐久試験においても画像濃度が1.7〜1.8と高い画像濃度を示し、帯電特性においても初期変動も少なく約−22mC/kg〜−25mC/kgの間で安定的に推移した。
【0121】
5万枚耐久後の感光ドラム表面は、トナー融着によるフィルミングもみられず、この間、クリーニング不良も一度も発生しなかった。
【0122】
5万枚耐久複写でも定着ローラーへのオフセットは全く生じなかった。耐久後の定着ローラー表面を目視により観察したが、トナーによる汚染はなかった。
【0123】
5万枚耐久後の現像剤中のキャリア表面をSEMにて観察したところ、トナースペントはほとんど見られなかった。
【0124】
さらに、高温高湿環境(30℃,80%)下、及び低温低湿環境(15℃,10%)下で5万枚の耐久試験を行ったが、カブリ、飛散等も発生せず、画像濃度もほぼ安定に推移した。
【0125】
カラー複写画像の評価方法として、画像表面のグロス(光沢度)を測定することにより、カラー画像の良否を判定する方法がある。すなわち、グロス値が高いほど画像表面が平滑でつやのある彩度の高いカラー品質と判断され、逆にグロス値が低いと、くすんだ彩度のとぼしい、画像表面があれたものと判断される。実施例1においてコントラスト電位300Vでのグロスは21%であった。
【0126】
グロス(光沢度)の測定には、日本電色社製VG−10型光沢度計を用いた。測定にあたっては、まず定電圧装置により6Vにセットし、次いで投光角度、受光角度をそれぞれ60°に合わせ、0点調整及び標準板を用い、標準設定の後に試料台の上に前記試料画像を置き、さらに白色紙を3枚上に重ね測定を行い、標示部に示される数値を%単位で読みとった。
【0127】
得られた画像の色度は目標とするものが得られた。すなわちa*=75.2 b*=−2.3 L*=46.3であった。
【0128】
トナーの色調は1976年に国際照明委員会(CIE)で規格された表色系の定義に基づき、定量的に測定した。その際、画像濃度は1.70に固定し、a*、b*(a*、b*は色相と彩度を示す色度)、L*(明度)を測定した。測定器にはX−Rite社製分光測色計タイプ938を用い、観察用光源はC光源、視野角は2°とした。
【0129】
さらにトランスペアレンシーフィルムに形成したカラー画像をオーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影したOHP画像の透明性も良好なものであった。
【0130】
上記の実施例におけるOHP画像の透明性については、市販のオーバーヘッドプロジェクターを用いて、トランスペアレンシーフィルムに形成したカラー画像を投影して、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0131】
(評価基準)
○:透明性に優れ、明暗ムラも無く、色再現性も優れる。(良)
△:若干明暗ムラがあるものの、実用上問題ない。(可)
×:明暗ムラがあり、色再現性に乏しい。(不可)
【0132】
また得られたベタ画像(画像濃度1.70)の耐光性をJIS K7102にほぼ準じて確認したところ、400時間光照射後の画像もほぼ初期と同様の画像濃度(1.68)を示し、色相変化もほとんど見られなかった(ΔE=2.8)。なお光源にはカーボンアークランプを使用した。
【0133】
色相変化は下記式のΔE値を求め定量的に評価した。
【0134】
【数2】
【0138】
<比較例1>
実施例1で用いた化合物(I)に代えて、C.I.Pigment Red 57:1を用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー2を調製した。
【0139】
実施例1と同様にして評価したところ、高温高湿環境下での初期帯電量が低く、これは用いた顔料中に含まれるCaイオンへの水の付加のためと推察している。
【0140】
また、a*=74 b*=2 L*=45.0であり、実施例1と比べると、赤味が強く、耐光性も劣っていた。
【0141】
<実施例2>
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、ポリエステル樹脂No.2(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー,酸価:4.0mgKOH/g)を用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー3を得た。実施例1と同様にして評価したところ、低温低湿環境下での耐久で20000枚目あたりから画像濃度が低下しはじめたものの、実用レベル内であった。
【0142】
<実施例3>
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、ポリエステル樹脂No.3(プロポキシ化ビスフェノールAとフマール酸との縮合ポリマー,酸価:20.2mgKOH/g)を用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー4を得た。実施例1と同様にして評価したところ、高温高湿環境下で若干帯電量が低下したものの、画像上問題は発生しなかった。
【0143】
<比較例2>
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、酸価1.8mgKOH/gのポリエステル樹脂No.4を使用することを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー5を得た。実施例1と同様にして評価したところ、常温常湿環境下では特に問題なかったが、低温低湿環境下での耐久において、10000枚目あたりから画像濃度が低下し、カブリが若干発生しはじめた。
【0144】
<比較例3>
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、酸価28mgKOH/gのポリエステル樹脂No.5を使用することを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー6を得た。実施例1と同様にして評価したところ、常温常湿環境下では初期の画像濃度が高く、多数枚耐久においても良好であったが、高温高湿環境下では、徐々にマゼンタトナーの帯電量が低下し、それにともなって画像濃度が上昇し、飛散及びカブリが若干発生しはじめた。
【0145】
<比較例4>
実施例1で用いたポリエステル樹脂No.1に代えて、スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体No.6(Mw:3万、Mn:9000、酸価:0mgKOH/g)を結着樹脂として用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー7を調製した。実施例1と同様にして評価したところ、各環境下において良好な結果が得られたが、実施例1のマゼンタトナーと比較してイエロートナー及びシアントナーとの混色性に劣っていた。すなわち、彩度及び明度の高いレッド及びブルーの画像が得られなかった。
【0146】
<比較例5>
実施例1で用いた化合物(I)に代えて、C.I.Pigment Red 5を用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー8を調製した。実施例1と同様にして評価したところ、ポリエステル樹脂中における顔料分散が悪いせいか、OHP透明性に欠ける画像となってしまった。
【0147】
<比較例6>
実施例1で用いた化合物(I)に代えて、C.I.Pigment Red 170を用いることを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー9を調製した。実施例1と同様にして評価したところ、高温高湿下における帯電量が低下し、それにともなって画像濃度が上昇し、飛散及びカブリが生じはじめた。また、a*=73 b*=2 L*=44.0であり、実施例1と比較して色調もやや赤味にシフトしていた。
【0148】
<実施例4>
実施例1で用いた疎水性酸化チタン微粉体Aに代えて、親水性のアルミナ微粉体(一次平均粒径:0.02μm、BET比表面積:130m2/g)100重量部に対してiso−C4H9−Si(OCH3)3を17重量部使用して表面処理した一次粒子径0.02μm,疎水化度70%の疎水性アルミナ微粉体Bを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー10を調製し、実施例1と同様にして評価した。
【0149】
各環境下において良好な耐久性を示し、耐光性、色相ともに実施例1とほぼ同じ傾向を示した。
【0150】
<比較例7>
実施例1で用いた疎水性酸化チタン微粉体Aに代えて、親水性のシリカ(一次平均粒径:0.007μm、BET比表面積:380m2/g)100重量部に対してヘキサメチルジシラザンを20重量部使用して表面処理した一次粒子径0.007μm,疎水化度65%の疎水性シリカ微粉体Cを用いたことを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー11を調製し、実施例1と同様にして評価した。低温低湿環境下での耐久において2000枚目をすぎたあたりからトナーの帯電量が上昇しはじめ、画像濃度が低下し、5000枚目で耐久を中断した。また、高温高湿環境下での耐久においては、徐々にトナーの帯電量が低下しはじめ、トナー飛散、カブリが目立ちはじめたので、同じく5000枚目で耐久を中断した。
【0155】
<実施例5>
実施例1で用いた負帯電性制御剤を抜いたことを除いては、実施例1と同様にしてマゼンタトナー12を調製した。実施例1と同様にして評価したところ、実施例1に比べて、やや帯電安定性に欠け、濃度変動が大きいものの、実用レベルのトナーが得られた。
【0156】
各実施例及び比較例のトナー構成を表1に、及び評価結果を表2に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【発明の効果】
本発明のマゼンタトナーは、特定のポリエステル樹脂を結着樹脂として用い、マゼンタ着色剤としてβ−ナフトール誘導体である化合物(I)を含有するマゼンタカラートナー粒子に、疎水化処理された特定の平均一次粒径の酸化チタン微粉体又はアルミナ微粉体が外添されていることから、良好な色相を示し、優れた色再現性を有し、高温高湿環境下でのトナーの摩擦帯電量の低下が抑制され、かつ、低温低湿環境下での摩擦帯電量の過大が抑制され、環境安定性に優れており、また定着されたマゼンタ画像の耐光性に優れた画像を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマゼンタトナーを用いる画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】トナー及び外添剤の摩擦帯電量を測定するための装置の概略図である。
【符号の説明】
51 吸引機
52 測定容器
53 スクリーン
54 フタ
55 真空計
56 風量調節弁
57 吸引口
58 コンデンサー
59 電位計
Claims (6)
- 該疎水化処理された酸化チタン微粉体又は酸化アルミニウム微粉体は、平均一次粒子径が0.01〜0.2μmであることを特徴とする請求項1に記載のマゼンタトナー。
- 該結着樹脂100重量部に対して、式(I)で示される該マゼンタ着色剤が1〜15重量部含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマゼンタトナー。
- 該マゼンタトナーは、負帯電性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマゼンタトナー。
- 該マゼンタトナーは、さらに芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を含有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマゼンタトナー。
- 該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、無色、白色又は淡色である請求項5に記載のマゼンタトナー。
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