JP3647009B2 - 電子ビームを用いた微細孔膜の製造法 - Google Patents
電子ビームを用いた微細孔膜の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属す技術分野】
本発明は、0.2nm〜200um径のサイズに絞った電子ビームを膜表面に照射後、化学エッチング処理を施すことにより多数の孔を形成した微細孔膜の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高分子フィルムやコンタクトレンズに貫通孔を形成させて機能性を付与するなどの付加価値を高める技術は従来から種々の方法で行われている。たとえば、高分子フィルムでは、精密ろ過膜や眼外ろ過膜などの多孔性膜として広範な分野で応用されているが、このような多孔性膜の製造方法は、
▲1▼ 高分子フィルムを延伸する機械的方法。
▲2▼ 高分子の溶解度差を利用する化学的方法。
▲3▼ 溶剤可溶の固体微粒子を混入後、溶出する方法。
▲4▼ 焼結による方法、及び
▲5▼ 気泡入り高分子シートの圧潰による方法などによって行われている。
【0003】
また、近年では、高分子フィルムに原子炉から発生した中性子を含む高エネルギーの荷電粒子(イオン)を照射して、ポリマー鎖が切断された飛跡を作り、この飛跡をアルカリ性溶液や酸性溶液などを用いて処理(エッチング)することによって多孔膜を得るエッチング法が提案されている(例えば、特公昭52−3987号公報、特開昭54−11971号公報、特開昭54−117546号公報、及び特開平5−51479号公報)。
【0004】
更にまた、コンタクトレンズでは、酸素透過性を高めたり、涙液の通過を良くして、角膜の細胞呼吸を妨げないようにするための手段として、放電、レーザー光線やイオン照射などによる穿孔化技術が提案されている(例えば、特開昭49−53451号公報、特開昭49−75348号公報、特開昭58−29627号公報、特開平1−500577号公報、特開平1−298312号公報、及び特開平5−19132号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
精密ろ過膜や限外ろ過膜などの多孔性膜の製造方法で行われる穿孔化技術で得られるものは、三次元網目状、独立気泡型、連通型などの不規則な孔を有するものや連続的に孔径が変わるものなど多種多様であり、その孔径も不均一である。
【0006】
また、イオン照射後、化学エッチング処理により多孔膜を製造する穿孔化技術では、孔径が均一でほぼ完全な円筒状の孔を有する膜を得ることができるが、孔の位置や孔の形状コントロールはできない。しかも、そのイオン照射装置は大型であり、高価なものになり、その操作も容易でない。
【0007】
さらに、レーザー光線による穿孔化技術では、孔の位置、大きさ、形状、数などのコントロールに難があり、再現性の面で問題がある。この場合、孔径は500μm以上になり、それ以下の微細孔を作ることは不可能である。
【0008】
したがって、本発明の目的は孔の位置、大きさ、形状、数などがコントロールされた均一の孔を有する微細孔膜を製造するところにある。具体的には、ここで言う微細孔膜はナノメーターサイズ(nm)からマイクロメーターサイズ(μm)の孔径をもつ膜である。
【0009】
本発明の微細孔化技術と似ているのにイオン照射後、化学エッチング処理を施すことによって孔を形成させるエッチング法による穿孔化技術がある。この技術は膜表面にエネルギーをもったアルゴンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオン、金イオン、ウランイオンなどの重イオンを照射し、その後水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性溶液中に照射した膜を浸潰することによって孔を形成するものである。これによって、孔径が均一でほぼ完全な円筒状の孔を有する膜を得ることができる。
【0010】
しかし、この技術ではイオン一個一個をコントロールして照射する方法でないためにエッチングによって出現した孔は重なりあったり、離れたりして、孔の位置がバラバラである(不均一分布)。しかも、孔の形状は円柱状のみであり、イオンの選択およびその調整などのテクニックを用いても形状を変えることはできない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、これらの問題点を解決するために、イオンビームに代わる電子ビームを用いた穿孔化技術を確立した。電子ビーム装置はイオン照射装置に比べて小型であり、操作も容易である。この電子ビームを用いた膜の穿孔化は膜表面に電子線ビームを照射後、化学エッチング処理によって行うものであり、重イオンに比べて物質に与えるダメージが極端に低い電子線を用いたところに特徴がある。
【0012】
即ち、本発明は、膜の表面に電子ビームを照射した後に、アルカリ溶液、酸性溶液、酸化剤などによる化学エッチング処理を施すことによって多数の孔を形成する微細孔膜を製造する方法であり、その電子ビーム照射は、20〜2000keVのエネルギー、10μA〜1mAの総電流値をもつ電子ビームを0.2nm〜200μm径のサイズに絞って照射することによって行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
もともとこのエッチング法は高エネルギーの荷電粒子(イオン)を照射して、ポリマー鎖が切断された飛跡を作り、この飛跡をアルカリ性溶液や酸性溶液などを用いて処理(エッチング)することによって多孔膜を得る方法である。したがって、ここでのイオン照射の役割が、ポリマー鎖を切断するためのものであることから、照射されたイオンが物質に対してどの程度のダメージを与えたかによって、エッチング処理後の孔形成は決まる。一般的には、ポリマー鎖の切断の程度(物質に対するダメージの大きさ)は重いイオンほど、またエネルギーの低いイオンほど大きい。
【0014】
さらに、重イオンと電子では、イオンの方が数千倍から数十万倍の大きさでダメージを与える。このことは、電子線を単に膜表面に照射しても孔形成は不可能であることを示している。どうすれば孔形成が可能になるか。一つの考えは、重イオンと同じ効果(同じ程度のダメージ)を与える量を照射してやることである。そのためには、電子線のビーム径を絞って一点に集中して照射を行えば短時間照射でイオンと同じダメージ状態を創ることができる。イオン照射装置と違って電子ビーム発生装置は容易にビーム径を絞ることができる。この電子線ビームの照射技術とエッチング処理技術によって、微細孔膜の製造が可能になった。
【0015】
この場合、孔径は電子ビーム径とエッチング処理条件のコントロールによって、ナノメーターサイズ(nm)からマイクロメーターサイズ(μm)が可能になった。また、孔の位置は照射サンプル台(ステージ)の可動および電子ビームのスキャニングによって任意に選択可能になった。更にまた、孔の形状は電子線ビームのスキャニングによって任意の形、たとえば四角形、菱形、楕円形などが可能になった。
【0016】
本発明において使用される膜は、一例としてポリエチレンテレフタレート、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリステレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレートなどを挙げることができるが、種類は問わない。
【0017】
本発明において使用されるエッチング処理剤の一例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ溶液、硫酸、硝酸などの酸性溶液、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤などを挙げることができる。特に、重クロム酸カリウムの硫酸溶液、過マンガン酸カリウムを含むアルカリ溶液、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ溶液などの酸化性溶液が好ましい。また、この酸化性溶液エッチング処理剤に、アルコールや界面活性剤を添加したものも用いることができる。次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0018】
【実施例1〜2】
12μmの厚さをもつポリエチレンテレフタレート(実施例1)と6μmの厚さをもつポリエチレンナフタレート(実施例2)のフィルムに 加速電圧200KeV、総電流値100μAの電子ビームを1μm径に絞って5秒間照射した。その後、照射フィルムを6規定の水酸化ナトリウム水溶液中に漬けて、60℃、1時間処理した。処理後、フィルムを水洗し、乾燥させて電子顕微鏡観察したところ、各々円柱状の貫通孔が得られた。
結果
ボリエチレンテレフタレート(実施例1)18μm径貫通孔
ポリエチレンナフタレート(実施例2)6μm径貫通孔
【0019】
【実施例3〜6】
12μmの厚さをもつポリエチレンテレフタレートのフィルムに加速電圧200KeV、総電流値100μAの電子ビームを0.4μm径(実施例3)、lμm径(実施例4)、10μm径(実施例5)、100μm径(実施例6)に絞って5秒間照射した。その後、照射フィルムを6規定の水酸化ナトリウム水溶液中に漬けて、60℃、10分間処理した。処理後、フィルムを水洗し、乾燥させて電子顕微鏡観察したところ、各々円柱状の貫通孔が得られた。
結果
0.4μmビーム径(実施例3)0.7μm径の貫通孔
1μmビーム径(実施例4)1.2μm径の貫通孔
10μmビーム径(実施例5)13μm径の貫通孔
100μmビーム径(実施例6)50μm径の貫通孔
【0020】
【実施例7】
7μmの厚さをもつポリイミドのフィルムに加速電圧200KeV、総電流値100μAの電子ビームをlμm径に絞って5秒間照射した。その後、照射フィルムを30%次亜塩素酸ナトリウムの6規定水酸化ナトリウム溶液中に漬けて、60℃、1時間間処理した。処理後、フィルムを水洗し、乾燥させて電子顕微鏡観察したところ、2μm径の円柱状の貫通孔が得られた。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、膜の表面に電子ビームを照射した後に化学エッチング処理を施して多数の孔を形成する方法であるので、この孔の形成に、従来の重イオンを用いた穿孔化技術に比べて処理対象物質に与えるダメージが極端に低い電子線を用いることができ、また電子ビーム装置という操作の容易な小型装置を使用することができる利点がある。
【0022】
また、本発明は、膜の表面に電子ビームを照射する際に、20〜2000keVのエネルギー、10μA〜1mAの総電流値をもつ電子ビームを0.2nm〜200μm径のサイズに絞って照射することによって、孔の位置、大きさ、形状、数などがコントロールされた均一の孔を有する微細孔膜を製造することができる利点がある。
Claims (1)
- 膜の表面に電子ビームを照射した後に、アルカリ溶液、酸性溶液、酸化剤などによる化学エッチング処理を施すことによって多数の孔を形成することからなる微細孔膜を製造する方法において、ポリエチレンフタレート、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリエチレンナフタレートからなる膜の表面に、20〜2000keVのエネルギー、10μA〜1mAの総電流値をもつ電子ビームを0.2nm〜200μm径のサイズに絞って照射することを特徴とする前記方法。
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JP34142197A JP3647009B2 (ja) | 1997-12-11 | 1997-12-11 | 電子ビームを用いた微細孔膜の製造法 |
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JP34142197A JP3647009B2 (ja) | 1997-12-11 | 1997-12-11 | 電子ビームを用いた微細孔膜の製造法 |
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JPH11170378A JPH11170378A (ja) | 1999-06-29 |
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1997
- 1997-12-11 JP JP34142197A patent/JP3647009B2/ja not_active Expired - Fee Related
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