JP3645448B2 - コンクリート壁面のデザイン構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートブロック(例えば、擁壁用ブロック)を用いて構築されたコンクリート壁面のデザイン構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
擁壁用ブロック(L型ブロックや大型積みブロック等)については、そのコンクリートブロック自体に、目地溝によって区画された区画隆起部(例えば、擬石状隆起部やタイル状隆起部)を形成することによって石垣デザインやタイルデザインを施したもの等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンクリートブロックの単体に石垣デザイン等を施す場合、そのデザインの範囲がコンクリートブロックの範囲内に制限されてしまう。従って、このコンクリートブロックを構築しながらコンクリート壁面を形成していくと、デザインがコンクリートブロック単位で途切れてしまう。即ち、ブロック間継ぎ目によりデザインが分断されて、連続したデザインを表現することができないという問題が生じる。
【0004】
又、コンクリートブロックに区画隆起部による石垣デザイン等を施したとしても、その表面がコンクリート地肌のままであると、時の経過に伴う風化、老化、酸性雨等によって表面に汚れや黒ずみが生じたり、又、部分的に雨水の流れ跡が着くなど、外観上の見栄えが悪くなるといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、複数のコンクリートブロックを構築してコンクリート壁面を形成する場合に、デザインがブロック間継ぎ目により分断されることなく、連続したデザインを表現でき、又、コンクリート壁面に区画隆起部によるデザインを施すに当たって、従来の問題点である表面の汚れに着目し、逆にこの汚れを利用してデザインを施すことができるようにしたコンクリート壁面のデザイン構造を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明(請求項1)のコンクリート壁面のデザイン構造は、
複数のコンクリートブロックによって構築されたコンクリート壁面であって、各コンクリートブロックには、目地溝によって区画された区画隆起部が形成されると共に、端部に目地溝の溝底面に連続した平面部が形成され、この平面部は隣合うコンクリートブロック間においてブロック間継ぎ目を介して連続するように形成され、この連続した平面部において、周囲に目地溝間隔を保持してブロック間継ぎ目を覆う状態に隆起パネル部材が取り付けられ、
前記隆起パネル部材を含めた全区画隆起部のうち、一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌を汚損抑制処理した汚損抑制面に形成され、他の区画隆起部の表面がコンクリート地肌のままの地肌面に形成されている構成とした。
【0007】
この場合のコンクリート壁面としては、擁壁用ブロック(L型ブロックや大型積みブロック等)や間知ブロック、法面ブロック等を用いて構築されたコンクリート壁面がある。
【0008】
このようなコンクリート壁面において、隣合うコンクリートブロックに跨るように連続した平面部に、隆起パネル部材を周囲に目地溝間隔を保持しながらブロック間継ぎ目を覆う状態に取り付けるものである。
このように、隆起パネル部材が平面部に取り付けられるため、この隆起パネル部材はコンクリートブロックに形成されている区画隆起部と同様の外観を呈することになるし、又、隆起パネル部材が隣合うコンクリートブロック間に跨って配設されるため、ブロック間継ぎ目によってデザインが分断されることがなく、区画隆起部と隆起パネル部材とによる連続したデザインをコンクリート壁面上に表現することができる。
【0009】
又、汚損抑制面は、コンクリート地肌に防カビ剤や撥水剤(例えば、商品名コンフィックスSM−7恒和化学工業株式会社製、商品名スリーロンジーZ−500スリーボンドユニコム株式会社製等のシアン化合物系)、また、透明塗料(例えば、商品名ダイスコート600D大日精化工業株式会社製)を塗布することにより雨水やホコリによる汚れを抑制したものである。又、地肌面はコンクリート地肌のままの面であり、汚れを許容したものである。即ち、長期的には地肌面は汚れが付き、汚損抑制面は汚れが付きにくくなり、この汚れの差がデザインになるもので、この点がデザインの基本である。従って、汚れが抑制されることによってコンクリート地色のままに維持された汚損抑制面と、汚れによって黒ずみが生じた地肌面との間では明度に差が生じ、この明度差によるコントラストを利用したデザインを表現することができる。特に、雨の日には、地肌面が雨を吸い込んで黒ずみ、一方の汚損抑制面は雨水をはじいて白く見えるため明度差が大きくなる。このように明度差を生じさせることが汚損抑制面の技術効果であり、これにより自然の力を利用して壁面表情に変化を与えることができる。
【0010】
又、本発明(請求項2)のコンクリート壁面のデザイン構造は、
複数のコンクリートブロックによって構築されたコンクリート壁面であって、各コンクリートブロックには、目地溝によって区画された区画隆起部が形成されると共に、端部に目地溝の溝底面に連続した平面部が形成され、この平面部は隣合うコンクリートブロック間においてブロック間継ぎ目を介して連続するように形成され、この連続した平面部において、周囲に目地溝間隔を保持してブロック間継ぎ目を覆う状態に隆起パネル部材が取り付けられ、
隆起パネル部材を含めた全区画隆起部のうち、一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌を汚損抑制処理した汚損抑制面に形成され、他の区画隆起部のうちの一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌のままの地肌面に形成され、残りの区画隆起部の表面が塗料により塗装を施こした塗装面と、顔料により着色を施こした着色面と、コンクリート地肌をハツリ加工したハツリ面と、コンクリート地肌を研磨加工した研磨面のうちから選択した1種類又は2種類以上の面に形成されている構成とした。
【0011】
このように、汚損抑制面及び地肌面に加えて、塗装面、着色面、ハツリ面、研磨面を形成するようにすると、それだけデザインパターンが広くなり、多様なデザインを表現することができる。
【0012】
尚、上記した塗装面を形成するための塗装処理としては、コンクリート地肌にシーラを塗布した上から塗料を塗布して塗膜を形成させることになる。この場合の塗料としては、合成樹脂バインダ塗料、透湿性塗料、骨材含有塗料等を使用できるもので、特に制限はない。又、塗料の塗布については、スプレー装置を用いた吹き付け塗装や刷毛塗り塗装により行うことができる。又、コンクリート地肌にシーラを塗布しただけのもの(塗料を塗布しないもの)についても本発明で言う塗装面に含めるものとする。
【0013】
又、着色面を形成するための着色処理としては、水に溶かした顔料をコンクリート地肌に塗布したり、粉末の顔料をコンクリート地肌に塗布したのち上から透明クリア(トップコート)でコーティングすることにより顔料を含浸させるもの。
あるいはコンクリート型枠の内面に顔料、骨材、樹脂を接着剤により仮付けした状態でコンクリート成型することで、コンクリート面に転写によって顔料を含浸させるもの。
又、コンクリート地肌に着色剤と発色剤と促進剤とを塗布して反応させることにより着色させるもの等がある。
【0014】
又、ハツリ面を形成するためハツリ加工としては、ハンディータイプの電動工具に装着した多数の針棒材でコンクリート地肌を叩打する機械的なハツリ加工、ウオータジェットガンから高圧水を壁面に向けて噴射するハツリ加工、砂粒や金属粒を噴射するサンドブラストによるハツリ加工のいずれを使用してもよい。
このようにハツリ加工されたハツリ面は、コンクリート表面が粗く削られて骨材や砕石が露出した状態になり、あたかも自然石を割ったような感じになる。
尚、このハツリ面はコンクリート表面が粗く削られて骨材や砕石が露出した状態になるため、その表面が雨水やホコリによって汚れやすくなる。このため、ハツリ面を撥水剤や防カビ剤の塗布によって汚損抑制処理したり、あるいはハツリ面の上から透明な塗料等を塗布すれば、雨水やホコリによるハツリ面の汚れを抑制することができる。又、ハツリの程度は、鉄筋のかぶりに影響がない深さで行なうことになる。
【0015】
研摩面は、コンクリート地肌を回転砥石や回転ワイヤブラシを用いて研摩加工したもので、研摩部分が光沢を持つと同時にコンクリート地肌のままの部分に比べて黒く(濃い灰色)なって、いわゆる黒光りした状態になる。
即ち、塗装面や着色面と異なり、新たなデザイン技術としてこれをコンクリートに利用することにより、コンクリートでありながら、自然石を磨いた状態になり、自然な風合いを表現して、美観を向上することができる。尚、この研摩面を汚損抑制処理してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳述する。尚、以下に述べる各実施の形態において、同一構成部分は図面の符号を同一にする。図1は実施の第1形態であって、コンクリート壁面のデザイン構造を示す斜視図、図2はその断面図である。
【0017】
このコンクリート壁面のデザイン構造は、コンクリートブロック1,1(L型ブロック)を左右方向に継ぎ合わせながらコンクリート壁面10を構築したものである。
このコンクリートブロック1には、その表面中程部分に、目地溝20によって区画された複数個の区画隆起部21が擬石状に形成され、又、表面左右端縁部に、目地溝20の溝底面に連続した平面部22が形成され、この平面部22は左右に隣合うコンクリートブロック1,1間において、ブロック間継ぎ目11を介して連続するように形成されている。
そして、この連続した平面部22,22において、隆起パネル部材3が周囲に目地溝間隔30を保持してブロック間継ぎ目11を覆う状態に取り付けられる。
この隆起パネル部材3は、コンクリートによって擬石状に形成され、隣合うコンクリートブロック1,1間に跨る状態で、連続した平面部22,22に対して取り付けられる。
【0018】
尚、隆起パネル部材3の平面部22に対する取り付けは、接着剤による接着、ビス止め、ボルト止め等を用いて行なうことができる。
又、この実施の形態では、各コンクリートブロック1のデザイン(区画隆起部21の形状や配列)を同一にし、又、各ブロック間継ぎ目11に3枚の隆起パネル部材3を取り付けるようにしたが、各コンクリートブロック1のデザインを異にしてもよいし、各ブロック間継ぎ目11に設ける隆起パネル部材3の形状や数は任意に設定できる。
【0019】
又、このコンクリート壁面10において、全ての区画隆起部21の表面が汚損抑制面4(図中点模様を付して示す)に形成され、全ての隆起パネル部材3の表面が地肌面5に形成されたデザイン構造になっている。
尚、他の形態として、例えば、全ての区画隆起部21の表面を地肌面5に形成し、全ての隆起パネル部材3の表面を汚損抑制面4に形成することもできるし、あるいは、区画隆起部21の中で一部の表面を汚損抑制面4に形成し、他の表面を地肌面5に形成することもできるし、又、隆起パネル部材3の中で一部の表面を汚損抑制面4に形成し、他の表面を地肌面5に形成することもできる。
【0020】
従って、このコンクリート壁面10のデザイン構造では、隣合うコンクリートブロック1,1間において、連続した平面部22,22に隆起パネル部材3を周囲に目地溝間隔30を保持しながらブロック間継ぎ目11を覆う状態に取り付けるものである。
このように、隆起パネル部材3が平面部22,22に取り付けられるため、この隆起パネル部材3は区画隆起部21と同様の外観を呈することになるし、又、隆起パネル部材3が隣合うコンクリートブロック1,1間に跨って配設されるため、ブロック間継ぎ目11によってデザインが分断されることがなく、区画隆起部21と隆起パネル部材3とによる連続した石垣状デザインをコンクリート壁面10上に表現することができる。
【0021】
又、汚れが抑制されることによってコンクリート地色のままに維持された汚損抑制面4と、汚れによって黒ずみが生じた地肌面5とが形成されているため、この汚損抑制面4と地肌面5の間では明度に差が生じ、この明度差によるコントラストを利用したデザインを表現することができる。
【0022】
次に、図3は実施の第2形態であって、コンクリート壁面のデザイン構造を示す斜視図である。
このコンクリート壁面のデザイン構造は、コンクリートブロック1(積み上げブロック)を左右方向及び上下方向に継ぎ合わせながらコンクリート壁面10を構築したものである。
これに伴って、コンクリートブロック1の表面中程部分に、目地溝20によって区画された複数個の区画隆起部21がタイル状に形成され、又、表面左右端縁部及び表面上下端縁部に、目地溝20の溝底面に連続した平面部22が形成されている。
又、隆起パネル部材3は、コンクリートによってタイル状に形成され、そして、この隆起パネル部材3は、隣合うコンクリートブロック1,1間に跨る状態で、連続した平面部22,22に対して取り付けられる。
この場合、左右方向に隣合うコンクリートブロック1,1間と、上下方向に隣合うコンクリートブロック1,1間と、コンクリートブロック1の角部で左右、上下、斜め方向に隣合うコンクリートブロック1,1,1,1間に、それぞれ隆起パネル部材3が周囲に目地溝間隔30を保持してブロック間継ぎ目11を覆う状態に取り付けられている。尚、上下方向の隆起パネル部材3は横長に形成され、全体としては1枚でありながら、中央に形成した浅目地溝31によって左右に隆起部3a,3aが区画形成されたものとなっている。
【0023】
又、このコンクリート壁面10では、全ての区画隆起部21の表面が地肌面5に形成され、又、左右方向及び上下方向の隆起パネル部材3が汚損抑制面4(図中点模様を付して示す)に形成され、又、角部に取り付けられる4枚の隆起パネル部材3の表面が、塗装面6と、着色面7と、ハツリ面8と、研磨面9に形成されたデザイン構造になっている。
このように、汚損抑制面4及び地肌面5に加えて、塗装面6、着色面7、ハツリ面8、研磨面9を形成すると、それだけデザインパターンが広くなり、多様なデザインを表現することができる。
尚、塗装面、着色面、ハツリ面、研磨面を組合せる場合、実施の形態のように、塗装面6、着色面7、ハツリ面8、研磨面9の全てを組合せるようにしてもよいし、この中から選択した1つを組合せるようにしてもよい。
例えば、角部に取り付けられる4枚の隆起パネル部材3の表面を全てハツリ面8に形成して、汚損抑制面4と地肌面5とハツリ面8の組合せにすることもできる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を図面により説明したが、具体的な構成はこれに限定されるものではない。
例えば、区画隆起部及び隆起パネル部材の形状は、擬石状やタイル状に限られず、円形、多角形でもよい。
又、隆起パネル部材については、コンクリートにより形成したもの以外に、例えば、鉄平石(自然石)を所定の形状に成形して用いることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明(請求項1)のコンクリート壁面のデザイン構造にあっては、上記のように構成したので、コンクリート壁面に区画隆起部によるデザインを施す場合に、デザインがブロック間継ぎ目により分断されることなく、連続したデザインを表現することができる。
【0026】
又、汚れが抑制されることによってコンクリート地色のままに維持された汚損抑制面と、汚れによって黒ずみが生じた地肌面との間の明度差によるコントラストを利用したデザインを表現することができる。特に、雨の日には、地肌面が雨を吸い込んで黒ずみ、一方の汚損抑制面は雨水をはじいて白く見えるため明度差が大きくなる。このように明度差を生じさせることが汚損抑制面の技術効果であり、これにより自然の力を利用して壁面表情に変化を与えることができる。
【0027】
又、本発明(請求項2)のコンクリート壁面のデザイン構造にあっては、汚損抑制面及び地肌面に加えて、塗装面、着色面、研磨面、ハツリ面の中から任意に選択して組み合わせことができるため、デザインパターンが広くなり、多様なデザインを表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の第1形態であって、コンクリート壁面のデザイン構造の斜視図である。
【図2】 その断面図である。
【図3】 実施の第2形態であって、コンクリート壁面のデザイン構造の斜視図である。
【符号の説明】
1 コンクリートブロック
10 コンクリート壁面
11 ブロック間継ぎ目
20 目地溝
21 区画隆起部
22 平面部
3 隆起パネル部材
30 目地溝間隔
4 汚損抑制面
5 地肌面
6 塗装面
7 着色面
8 ハツリ面
9 研磨面

Claims (2)

  1. 複数のコンクリートブロックによって構築されたコンクリート壁面であって、各コンクリートブロックには、目地溝によって区画された区画隆起部が形成されると共に、端部に目地溝の溝底面に連続した平面部が形成され、この平面部は隣合うコンクリートブロック間においてブロック間継ぎ目を介して連続するように形成され、この連続した平面部において、周囲に目地溝間隔を保持してブロック間継ぎ目を覆う状態に隆起パネル部材が取り付けられ、
    前記隆起パネル部材を含めた全区画隆起部のうち、一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌を汚損抑制処理した汚損抑制面に形成され、他の区画隆起部の表面がコンクリート地肌のままの地肌面に形成されていることを特徴としたコンクリート壁面のデザイン構造。
  2. 複数のコンクリートブロックによって構築されたコンクリート壁面であって、各コンクリートブロックには、目地溝によって区画された区画隆起部が形成されると共に、端部に目地溝の溝底面に連続した平面部が形成され、この平面部は隣合うコンクリートブロック間においてブロック間継ぎ目を介して連続するように形成され、この連続した平面部において、周囲に目地溝間隔を保持してブロック間継ぎ目を覆う状態に隆起パネル部材が取り付けられ、
    隆起パネル部材を含めた全区画隆起部のうち、一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌を汚損抑制処理した汚損抑制面に形成され、他の区画隆起部のうちの一部の区画隆起部の表面がコンクリート地肌のままの地肌面に形成され、残りの区画隆起部の表面が塗料により塗装を施こした塗装面と、顔料により着色を施こした着色面と、コンクリート地肌をハツリ加工したハツリ面と、コンクリート地肌を研磨加工した研磨面のうちから選択した1種類又は2種類以上の面に形成されていることを特徴としたコンクリート壁面のデザイン構造。
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