JP3642638B2 - 加入者線路測定方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電話加入者線路の正常性を確認する目的で、抵抗および容量の複合インピーダンスを示す電話加入者線路(加入者端末を含む)を、交換機局舎等から測定する加入者線路測定方法およびその測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバケーブルによる通信網整備の一環として交換機局舎からユーザビル等の遠隔地に加入者インタフェース装置が分離設置された上、加入者端末各々は加入者線(メタリック加入者線)を介し一旦その加入者インタフェース装置に収容し、更に光ファイバケーブルを介し交換機局舎に収容する形態がとられている。
【0003】
同形態において、加入者線路の正常性を確認する目的で、抵抗および容量の複合インピーダンスを示す加入者線路を、加入者インタフェース装置内の加入者線路測定装置を用いて測定している。例えば、加入者端末の送受話器を戻した状態(オンフック)では、1〜3μFの容量が測定できれば加入者線路は正常、容量が零であれば断線または線路が短絡状態であると判断できる。複合インピーダンスの測定の際、加入者端末の容量の残存電荷や容量への充電不足は測定精度に影響するため、加入者端末の容量の電荷を十分放電した状態、または充電されている状態でその測定を行う。
【0004】
充放電する際、加入者端末のベルコイルに充電電流および放電電流が規定値以上流れると加入者端末は鳴動する。そのため、特開平3−163369号公報,特開昭60−131474号公報に記載されているように、高インピーダンスで終端して充放電をすることで充電電流および放電電流を制御し、鳴動を防いでいる。しかし、この方法は、高インピーダンスで充放電を行うために長時間を要する。そこで、従来技術の充放電時間を短縮する方法として、終端インピーダンスを順次切り替える方式が考えられていた。
【0005】
従来の放電方式の構成を図7に示す。Z1,Z2,・・・,Znは、高インピーダンスから低インピーダンスへ切り替え可能な終端部とする。Z1,Z2,・・・,Znは、スイッチとインピーダンスを直列に接続した回路で実現でき、スイッチのオン/オフによりインピーダンスを切り替えることができる。2は加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部、31はモニタ部でモニタされた電荷量により放電時に終端するインピーダンスを決定する判断部、61は判断部の出力により放電インピーダンスを変化させる終端制御部である。モニタ部31でモニタされた加入者端末の容量に充電されている電荷量が多い初期状態では終端の放電インピーダンスを大きくし、電荷量が少なくなるに従って終端の放電インピーダンスを小さくすることで放電電流を制御し、加入者端末の容量に充電されている電荷を加入者端末を鳴動させることなく放電している。
【0006】
図9に従来方式を用いた場合の放電時間に対する加入者端末の容量間の電圧の波形図を示す。図の縦軸は電圧Vc、横軸は時間tを表す。この波形図から、加入者端末の容量に充電されている電荷の量に応じて、順次、放電インピーダンスが切り換えられていることがわかる。
【0007】
従来の充電方式の構成図を図8に示す。放電の際と同様に、充電する際、充電電流により加入者端末が鳴動することを防ぐために加入者端末の容量に充電されている電荷量が少ないときには終端の充電インピーダンスを大きくし、電荷量が多くなるに従って終端の充電インピーダンスを小さくすることで充電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく充電している。
【0008】
ここで、従来方式を用いた場合の放電を、具体的な数値を挙げて説明する。今、50Vの定電圧源で3μFの容量に十分充電し、充電された電荷を従来方式を用いて99.9%放電するのに必要な時間を求めることにする。加入者端末のベルコイルに0.5mA以上の電流が流れると加入者端末が鳴動すると仮定し、加入者端末の容量間の電圧をVm、加入者端末の容量をC、放電抵抗をR、放電時間をt、t秒間放電した後の加入者端末の容量間の電圧をVcとおく。放電抵抗に1kΩ,10kΩ,100kΩの3種類の抵抗を用いる場合、最初に加入者端末の容量は50Vに充電されているので、加入者端末の鳴動を防ぐために100kΩの放電抵抗で終端して放電を行う。ベルコイルに0.5mA以上の電流が流れると加入者端末は鳴動するため、加入者端末の容量間の電圧が5Vになれば10kΩの放電抵抗で終端して放電しても鳴動しない。100kΩの放電抵抗で終端し、加入者端末の容量間の電圧が5Vになるまで放電するために必要な時間は、式(1)より0.69秒と求められる。
【0009】
t = − C × R × ln(Vc/Vm) ・・・(1)
同様に、10kΩでの放電時間は0.069秒となる。更に1kΩの放電抵抗に切り替えて最初に加入者端末の容量に充電されていた電荷量の99.9%を放電するには0.0069秒の時間が必要になる。よって、従来方式で放電した場合には合計0.77秒必要となる。充電の場合も同様である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、今後は、ユーザビル等に設置されていた加入者インタフェース装置を屋外に設置するようになるため、現行の加入者インタフェース装置を更に小型化・経済化することが必要である。同装置の小型化を実現するためには、加入者線路測定装置も同時に小型化し且つ同等のサービスを行うため従来と同等機能を持たせなければならない。しかし、加入者線路測定装置は50V程度の電圧測定を行うために電力部品が必要となり集積化が困難である。
【0011】
特に上記従来技術を用いて、加入者端末の容量に充電されている電荷の放電および充電を行う際、電力部品で構成される複数のインピーダンスを切り替えることで充電電流および放電電流を制御し鳴動を防いでいるため、ハードウエア量が多くなる。また、放電時の容量の残存電荷や充電時の充電不足は測定精度に影響するが、充電電流および放電電流を抑制する必要上、高インピーダンスで終端して充放電を行っており測定精度を確保するために測定に長時間を要した。
【0012】
本発明では、これらの問題を解決し、より小型化・経済化を図り且つ短時間で従来技術と同等の精度で加入者線路を測定する方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による加入者線路測定方法は、加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定方法において、前記複合インピーダンスを測定する際、加入者線路に接続された加入者端末の容量に充電されている電荷を放電する場合、または、前記容量に定電圧源を用いて電荷を充電する場合、加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で、低インピーダンスと高インピーダンスとで交互に加入者線路を終端することにより、加入者端末のベルを鳴動させることなく前記容量の放電または充電を行うようにしたものである。
【0014】
この方法における前記低インピーダンスは、好ましくは、加入者端末の容量の放電時または充電時に、放電または充電電流により加入者端末を鳴動させるに足るインピーダンスであり、前記高インピーダンスは、加入者端末を鳴動させないインピーダンスとする。
【0015】
この方法により、加入者端末が鳴動するような放電電流または充電電流が加入者端末に流れても、その時間はベルの作動時間より短い時間間隔(瞬時)であるため、ベルの鳴動までに至らない。しかも、初めから低インピーダンスで終端して充放電を行うため充放電時間の短縮が可能となる。また、終端インピーダンスは、高インピーダンスと低インピーダンスの2種のみとなるためハードウエア量を縮小できる。
【0016】
この方法を実施するための加入者線路測定装置は、加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量に充電されている電荷を放電させる放電回路を備え、
該放電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より放電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
該判断部の判断結果が放電未完了の間、前記時間制御部により設定された放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の放電インピーダンスを交互切り替え制御し、前記判断結果が放電完了のときに前記終端部の放電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部とを有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の放電インピーダンスを交互に切り替えることによって放電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく加入者端末の容量に充電されている電荷を放電させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明による他の加入者線路測定装置は、加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量を充電する充電回路を備え、
該充電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
該終端部と直列に接続された定電圧源と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より充電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の充電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
前記判断部の判断結果が充電未完了の間、前記時間制御部により設定された充電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の充電インピーダンスを交互切り替え制御し、判断結果が充電完了のときに前記終端部の充電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部を有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の充電インピーダンスを交互に切り替えることによって充電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく且つ高速に加入者端末の容量に電荷を充電することを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明による別の加入者線路測定装置は、加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量の充電または放電を選択的に行う充放電回路を備え、
該充放電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充放電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
該終端部と直列に接続される定電圧源と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より充放電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の充放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
前記判断部の判断結果が充放電未完了の間、前記時間制御部により設定された充放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の充放電インピーダンスを交互切り替え制御し、判断結果が充放電完了のときに前記終端部の充放電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部と、
前記定電圧源を前記終端部に選択的に接続する切替手段とを有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の充放電インピーダンスを交互に切り替えることによって充放電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく加入者端末の容量の充放電を行うことを特徴とする。
【0019】
これらの装置によって、前記方法を実施でき、加入者端末を鳴動させることなく、その容量の充放電を高速に行うことが可能となる。また、ハードウエア量を減少させ、小型化・経済化を図ることができる。
【0020】
前記時間制御部は、前記終端部の高インピーダンスと低インピーダンスの2種のインピーダンスの交互切り替え時間間隔を等時間間隔に設定することができる。
【0021】
あるいは、前記時間制御部は、前記終端部の高インピーダンスと低インピーダンスの2種のインピーダンスの交互切り替え時間間隔のうち、低インピーダンスの時間間隔を可変設定することもできる。これは、充放電電流は一定ではなく、現在の電荷量に応じて変化することに着目したものである。
【0022】
低インピーダンスの時間間隔を可変とする場合、前記時間制御部は、前記可変設定を加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて行うことが可能である。例えば、放電時には、電荷量の多いときには低インピーダンスの時間間隔を短くし、電荷量が減って行くにつれて順次時間を長くしていく。また、充電時には、電荷量の少ないときには低インピーダンスの時間間隔を短くし、電荷量が増えて行くにつれて順次時間を長くしていく。このような制御により、さらに充放電に要する時間を短縮することができる。
【0023】
但し、低インピーダンスの時間間隔の可変制御は、現在の電荷量によらずに、予め定めた時間から順次時間を長くしていくことも可能である。この場合は、電荷量に応じて充放電時間を設定することはできないが、制御が容易となる
前記終端部は、1つの低インピーダンスの抵抗と、該抵抗に直列に接続されたスイッチとにより構成することができる。この場合、高インピーダンスは開放(無限大)となり、高インピーダンスのための回路要素(抵抗)が不要となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図1から図6により説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態を示す加入者線路測定装置の構成、特に加入者端末の容量の放電のための概念的構成を示す。
【0026】
図1において、1は加入者線路接続端子、2は加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部、3は放電の完了および未完了を判断する判断部、4は高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスに交互切り替え可能な終端部、5は前記終端部の放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部、6は前記終端部の放電インピーダンスを交互切り替え制御する終端制御部である。同図は、本発明の動作原理を示したものであり、簡単化のため加入者線路のインピーダンスを純容量Ctelとして動作説明を行う。
【0027】
時間制御部5は、終端部4の低インピーダンスと高インピーダンスの2種の放電インピーダンスの交互切り替え間隔を加入者端末のベルの動作時間よりも十分短い時間間隔に設定する。容量Ctelに充電されている電荷を放電する際、終端制御部6は時間制御部5により設定された切り替え時間間隔で終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスに交互に切り替える。ここでの「低インピーダンス」とは、加入者端末の容量に充電されている電荷をこのインピーダンスで終端して放電すると、少なくともその放電の初期時に、放電電流により加入者端末が鳴動してしまうインピーダンスである。また、ここでの「高インピーダンス」とは、このインピーダンスで終端して放電しても加入者端末は鳴動しないインピーダンスである。(後述する充電時も同様である。)ここでは一例として、終端部4は低インピーダンスの抵抗とスイッチを直列に接続した回路で構成し、終端制御部6の制御によりスイッチをオン/オフすることで低インピーダンスと高インピーダンス(無限大)の2種の放電インピーダンスを交互に切り替えることができる回路とする。これによりハードウエア量が低減される。勿論、有限の高インピーダンスの抵抗を追加して、低インピーダンスの抵抗と切り替えるようにしてもよい。
【0028】
モニタ部2として、加入者端末の電圧をモニタする電圧モニタを用いることで加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタすることができる。
【0029】
容量Ctelに充電されている電荷の放電時、低インピーダンスで放電している時には、加入者端末のベルは動作しようとするが、ベル動作時間より十分短い時間間隔で高インピーダンスに切り替えるため、ベルが鳴動する前にベルは復旧する。したがってベルは鳴動しない。ベルが復旧したら再度、低インピーダンスに切り替え、ベルが鳴動する前に高インピーダンスに切り替える。このような動作を繰り返しながら、モニタ部2で加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタする。この電荷量が一定値まで達し判断部3が放電完了と判断すると、終端制御部6は終端部4の放電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する。
【0030】
なお、「ベル動作時間」とは、加入者端末に呼び出し信号が印加されてからベルが鳴動を始めるまでの時間である。また、「復旧」とは、加入者端末が、呼び出し信号が印加される前の状態に戻ることをいう。機械的にベルを鳴動させる加入者端末では、加入者端末に呼び出し信号が印加されると、ベルコイルに電流が流れ磁力が発生する。この磁力によりハンマーを作動させることによりベルを叩き、ベルを鳴動させる。この場合、加入者端末に呼び出し信号が印加されてからハンマーがベルを叩くまでの時間がベル動作時間となる。また、電気的にベルを鳴動させる加入者端末では、送られてきた信号がある決まった周波数であればその信号が呼び出し信号であると判断し、一定以上の呼び出し信号エネルギーを検出すると、加入者端末を電気的に鳴動させる。この場合、加入者端末に呼び出し信号が印加されてから、呼び出し信号の周波数および一定以上の呼び出し信号エネルギーが検出されるまでの時間がベル動作時間となる。
【0031】
このようにして、加入者端末を鳴動させることなく且つ高速に加入者端末の電荷を放電することができる。
【0032】
図10に本発明の方式を用いた場合の放電時間に対する加入者端末の容量間の電圧を示す。この図から分かるように、本発明では初めから低インピーダンスを用いて放電を行うので、短時間のオン期間でも相当の電荷を急速に放電させることができ、オン期間とオン期間との間にオフ期間をおいても、図9の従来の場合に比べて十分に高速に放電を行うことができる。かつ、図9の従来の場合と同様に加入者端末を鳴動させることを防止できる。
【0033】
図2は、図1と同様に、加入者端末の容量を放電させる回路であるが、図1の時間制御部5を具体化したものとして時間制御部51を用いるものである。すなわち、図1の時間制御部5については、特にインピーダンス切替のオン、オフの時間間隔について具体的に言及しなかったが、図2の時間制御部51は、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスの交互切り替え間隔を加入者端末のベルの動作時間よりも十分短い時間間隔に且つ一定に設定するものである。本方式は、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスの交互切り替え間隔を一定としているため、終端部4の制御の方法が簡単となる。
【0034】
ここで、従来技術で述べた放電例と同じ条件下で充電された電荷を、上記の本実施の形態を用いて99.9%放電するのに必要な時間を求める。放電にはスイッチと直列に接続した1kΩの抵抗を放電インピーダンスとして用い、終端部4のスイッチをオン/オフすることで放電電流を制御する。今、スイッチをオンとして放電する時間及びスイッチをオフとしてベルを復旧させる時間をともに0.01秒に設定する。t秒間放電したときの加入者端末の容量間の電圧Vcは、式(2)で求められる。
【0035】
Vc = Vm × exp(−t/(C × R)) ・・・(2)
スイッチを0.01秒オンさせ放電したときのVcは1.83Vとなる。0.01秒の間スイッチをオフしてベルを復旧させた後、0.01秒間スイッチをオンさせ放電した時のVcは0.067Vとなる。同様に、次にスイッチをオンさせ放電した時のVcは0.0025Vとなり、最初に加入者端末の容量に充電されていた電荷量の99.9%以上を放電できたことになる。よって、本実施の形態での測定方法では合計0.05秒ではじめの電荷量の99.9%を放電することができる。このように、本実施の形態によれば、放電時間が0.77秒かかる従来技術より少ないハードウエア量で、しかも放電時間の短縮も図れる。
【0036】
図3は、図1の時間制御部5を具体化したものとして、時間制御部52を用いるものである。時間制御部52は、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を、モニタ部2でモニタした加入者端末の容量に充電されている電荷量(現在の量)によって低インピーダンスでの放電時間を変化させるものである。
【0037】
すなわち、時間制御部52は、終端部4の低インピーダンスと高インピーダンスの2種の放電インピーダンスの交互切り替え間隔を、モニタ部2でモニタした加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて可変とするものである。すなわち、電荷量が多い時には低インピーダンスでの放電時間を短く、電荷量が少ないときには低インピーダンスでの放電時間を長く設定する。容量Ctelに充電されている電荷を放電する際、終端制御部6は時間制御部52により設定された切り替え時間間隔で終端部4の放電インピーダンスを低インピーダンスと高インピーダンスに交互に切り替える。
【0038】
放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔の一例を図11に示す。この例では、高インピーダンス(HZ)での放電時間は、ベルが復旧するまでの時間でよいため、一定とし、低インピーダンス(LZ)での放電時間のみを変化させることで放電電流の制御を行っている。その可変の仕方は、容量Ctelに充電されている電荷量が多いときは短く、少なくなるにつれて順次長くしていくものである。このように、モニタ部2でモニタされた加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて終端部4の制御を行うため、図2に示した例と比べると制御方法は複雑になるが測定時間は短縮される。但し、制御方法が複雑になるといっても、時間制御部52はプロセッサ等によるソフト制御により容易に実現できるため、図2に示した例と同等のハードウエア量で実現することが可能である。
【0039】
なお、低インピーダンス(LZ)での放電時間の可変の仕方は、容量Ctelに充電されている電荷量に関係なく、初め図2と同じ時間間隔とし、その後、段階的に長くしていくものであってもよい。この時間間隔の変更は、1回のみで、それ以降は同じ時間間隔を用いるようにすることも可能である。
【0040】
図4は、本発明の一実施の形態を示す加入者線路測定装置の構成、特に加入者端末の容量の充電回路の概念的構成を示す。7は加入者端末の容量に充電するための定電圧源である。この定電圧源7が終端部4と接地との間に追加され、モニタ部2および判断部3が加入者端末の容量の放電ではなく充電をモニタ検出する以外は、図1の場合と同様である。
【0041】
時間制御部5は、図1の場合と同じく、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充電インピーダンスの交互切り替え間隔を加入者端末のベルの動作時間よりも十分短い時間間隔に設定する。容量Ctelに電荷を充電する際、終端制御部6は時間制御部5により設定された切り替え時間間隔で終端部4の充電インピーダンスを高インピーダンスと低インピーダンスに交互に切り替える。低インピーダンスで充電している時には加入者端末のベルは動作しようとするが、ベルの動作時間より十分短い時間間隔で高インピーダンスに切り替えるため、ベルが鳴動する前にベルは復旧する。したがって、ベルは鳴動しない。モニタ部2でモニタした加入者端末の容量に充電されている電荷量が一定値まで達し充電が完了したと判断すると、判断部3からの制御により終端制御部6は終端部4の充電インピーダンスの交互切り替えを停止制御し充電を停止する。このようにして、加入者端末を鳴動させることなく且つ高速に加入者端末の容量に電荷を充電することができる。
【0042】
図5は、図4と同様の充電回路であり、図4の時間制御部5を具体化したものとして、時間制御部51を用いたものである。この時間制御部51は、図2の放電回路に示した時間制御部51と同じく、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充電インピーダンスの交互切り替え間隔を加入者端末のベルの動作時間よりも十分短い時間間隔で且つ一定に設定するものである。充電時の動作は、図4の場合とほぼ同様である。本方式は、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充電インピーダンスの交互切り替え間隔を一定としているため、終端部4の制御の方法が簡単となる。
【0043】
図6は、図4と同様の充電回路であるが、図4の時間制御部を具体化したものとして、時間制御部52を用いたものである。この時間制御部52は、図3の放電回路に示した時間制御部52と同じく、終端部4の高インピーダンスと低インピーダンスの交互切り替え間隔を、モニタ部2でモニタした加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて可変にするものである。但し、この場合は、放電ではなく充電であるため、電荷量が少ないときには低インピーダンスでの充電時間を短く、電荷量が多いときには低インピーダンスでの充電時間を長く設定するものである。本方式は、モニタ部2でモニタされた加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて終端部4の制御を行うため、図5に示した例と比べると制御方法は複雑になるが測定時間は短縮される。但し、時間制御部52はプロセッサ等によるソフト制御により実現できるため、図5に示した例と同等のハードウエア量で容易に実現することが可能である。また、この場合も、低インピーダンスでの充電時間の可変の仕方は、容量Ctelに充電されている電荷量に関係なく、初め図5と同じ時間間隔とし、その後、段階的に長くしていくものであってもよい。
【0044】
図12に、図1の放電回路と図2の充電回路を1つの回路に組み合わせた例を示す。これは、終端部4を接地または定電圧源7のいずれかに選択的に接続するスイッチ8を設けることにより、すべての構成要素を放電回路と充電回路とで共用するようにしたものである。このスイッチ8の切替制御は、放電を行うか、充電を行うかに応じて、プログラムによる自動処理または手動操作により行うことができる。これにより、放電回路と充電回路を別個に用意する必要がなくなり、必要なハードウエア量を軽減することができる。このような放電回路と充電回路の組合せは、図2と図5、図3と図6のそれぞれについても、同様に適用可能である。
【0045】
放電時の残存電荷や充電時の充電不足は測定精度に影響するが、従来方式で測定精度,ハードウエア量を本方式と同等とした場合、充電電流および放電電流による加入者端末の鳴動を防ぐため終端インピーダンスは高インピーダンスでなければならず、充放電に時間がかかる。しかし、本方式では低インピーダンスで終端して充放電を行うため、充放電時間を短縮できる。
【0046】
また、前述した従来方式で測定精度,充放電時間を本方式と同等とした場合、加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて複数のインピーダンスを高インピーダンスから低インピーダンスに順に切り替えて充電電流および放電電流を制御しなければならないため、ハードウエア量が多くなる。しかし、本実施の形態では低インピーダンスとスイッチを直列に接続し、スイッチのオン/オフ制御を行うことで充電電流および放電電流の制御を行うため、ハードウエア量は少なくなる。
【0047】
さらに具体的には、従来技術で述べた例では、終端部は3個の放電抵抗と3個の切り替えスイッチで構成され、放電時間は0.77秒であったが、本実施の形態で述べた例では、終端部は1個の放電抵抗と1個の切り替えスイッチで構成でき、放電時間は0.05秒であった。このように、本実施の形態の方式を用いることで終端部のハードウエア量は従来の3分の1に、放電は従来の6%の時間で行うことが可能となる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、加入者線路の正常性を確認する目的で、加入者線路を測定する際に、加入者端末を鳴動させることなく、その容量を短時間に放電または充電することができる。また、そのためのハードウエア量を低減し、測定装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す加入者線路測定装置、特に放電回路の概念的構成を示す回路図である。
【図2】図1の加入者線路測定装置の構成の具体例を説明するための回路図である。
【図3】図1の加入者線路測定装置の構成の他の具体例を説明するための回路図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す加入者線路測定装置、特に充電回路の概念的構成を示す回路図である。
【図5】図4の加入者線路測定装置の構成の具体例を説明するための回路図である。
【図6】図4の加入者線路測定装置の構成の他の具体例を説明するための回路図である。
【図7】従来の放電方式の構成を示す回路図である。
【図8】従来の充電方式の構成を示す回路図である。
【図9】従来の放電方式を用いた場合の放電時間に対する加入者端末の容量間の電圧を示す波形図である。
【図10】本発明の放電方式を用いた場合の放電時間に対する加入者端末の容量間の電圧を示す波形図である。
【図11】図3および図6における時間制御部の高インピーダンスと低インピーダンスの交互切り替え時間間隔の一例を示すタイミング図である。
【図12】図1と図4の加入者線路測定装置を組み合わせた構成を示す回路図である。
【符号の説明】
1 ・・・加入者線路接続端子
2 ・・・モニタ部
3 ・・・判断部
31・・・判断部(従来技術)
4 ・・・終端部
5 ・・・時間制御部
6 ・・・終端制御部
7 ・・・定電圧源
8 ・・・スイッチ
51・・・時間制御部
52・・・時間制御部
61・・・終端制御部(従来技術)
Claims (12)
- 加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定方法において、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタステップと、
前記モニタステップにおいてモニタした電荷量に基づいて、充放電が完了したか、あるいは充放電が未完了かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおける判断結果が充放電未完了の間、前記加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で、低インピーダンスと高インピーダンスとで交互に加入者線路を終端することにより、加入者端末のベルを鳴動させることなく前記容量の放電または充電を行う充放電ステップと、を行うこと
を特徴とする加入者線路測定方法。 - 前記低インピーダンスは、加入者端末の容量の放電時または充電時に、放電または充電電流により加入者端末を鳴動させるに足るインピーダンスであり、前記高インピーダンスは、加入者端末を鳴動させないインピーダンスとすることを特徴とする請求項1記載の加入者線路測定方法。
- 前記加入者線路を終端する低インピーダンスと高インピーダンスの2種のインピーダンスを等時間間隔で交互に切り替えることを特徴とする請求項1または2記載の加入者線路測定方法。
- 前記加入者端末の容量に充電されている電荷の現在量に応じて、低インピーダンスでの放電または充電時間を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の加入者線路測定方法。
- 前記低インピーダンスでの放電または充電の時間を、順次長くしていくことを特徴とする請求項1または2記載の加入者線路測定方法。
- 加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量に充電されている電荷を放電させる放電回路を備え、
該放電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の放電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より放電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
該判断部の判断結果が放電未完了の間、前記時間制御部により設定された放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の放電インピーダンスを交互切り替え制御し、前記判断結果が放電完了のときに前記終端部の放電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部とを有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の放電インピーダンスを交互に切り替えることによって放電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく加入者端末の容量に充電されている電荷を放電させることを特徴とする加入者線路測定装置。 - 加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量を充電する充電回路を備え、
該充電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
該終端部と直列に接続された定電圧源と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より充電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の充電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
前記判断部の判断結果が充電未完了の間、前記時間制御部により設定された充電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の充電インピーダンスを交互切り替え制御し、判断結果が充電完了のときに前記終端部の充電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部を有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の充電インピーダンスを交互に切り替えることによって充電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく且つ高速に加入者端末の容量に電荷を充電することを特徴とする加入者線路測定装置。 - 加入者端末を含む加入者線路の正常性を確認するために、加入者線路上での抵抗成分および容量成分を含む複合インピーダンスを非加入者端末側から測定する加入者線路測定装置であって、
加入者端末の容量の充電または放電を選択的に行う充放電回路を備え、
該充放電回路は、
加入者端末に接続された加入者線路を、高インピーダンスと低インピーダンスの2種の充放電インピーダンスに交互切り替え可能に終端する終端部と、
該終端部と直列に接続される定電圧源と、
前記加入者端末の容量に充電されている電荷量をモニタするモニタ部と、
該モニタ部でモニタした電荷量より充放電の完了および未完了の判断をする判断部と、
前記終端部の充放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔を設定する時間制御部と、
前記判断部の判断結果が充放電未完了の間、前記時間制御部により設定された充放電インピーダンスの交互切り替え時間間隔で前記終端部の充放電インピーダンスを交互切り替え制御し、判断結果が充放電完了のときに前記終端部の充放電インピーダンスの交互切り替えを停止制御する終端制御部と、
前記定電圧源を前記終端部に選択的に接続する切替手段とを有し、
加入者端末のベルの動作時間よりも短い時間間隔で前記終端部の充放電インピーダンスを交互に切り替えることによって充放電電流を制御し、加入者端末を鳴動させることなく加入者端末の容量の充放電を行うことを特徴とする加入者線路測定装置。 - 前記時間制御部は、前記終端部の高インピーダンスと低インピーダンスの2種のインピーダンスの交互切り替え時間間隔を等時間間隔に設定することを特徴とする請求項6、7、または8記載の加入者線路測定装置。
- 前記時間制御部は、前記終端部の高インピーダンスと低インピーダンスの2種のインピーダンスの交互切り替え時間間隔のうち、低インピーダンスの時間間隔を可変設定することを特徴とする請求項6、7、または8記載の加入者線路測定装置。
- 前記時間制御部は、前記可変設定を加入者端末の容量に充電されている電荷量に応じて行うことを特徴とする請求項10記載の加入者線路測定装置。
- 前記終端部は、1つの低インピーダンスの抵抗と、該抵抗に直列に接続されたスイッチとにより構成されることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の加入者線路測定装置。
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